日経俳句会第126回例会

日経俳句会の平成26年第2回例会(通算126回)は2月18日(火)午後6時半、鎌倉橋交差点傍の日経広告研究所(MIFビル)会議室で開かれた。出席17人、大雪で体調を崩した欠席者もいて会場に空席ができた。逆に投句参加が増えて16人、投句総数は161句と賑わいは変わらず。

兼題は「風光る(かぜひかる)」「耕(たがやし)」。選句7句で進めた結果、最高は7点で須藤光迷さんの「次々と柵越す馬や風光る」と、徳永正裕さんの「なに蒔くと決めず耕す畝三筋」の2句。次席6点は、今泉恂之介さんの「水きりの石追ひかけて風光る」と、大澤水牛さんの「菜を蒔くぞ芋も植えるぞ畑打つ」の2句で「双牛競演」。続く5点句は5句、4点句も5句、3点4句。以下2点22句、1点50句。兼題別の高点句(3点以上)は次の通り。

「風光る」

次々と柵越す馬や風光る       須藤 光迷

水切りの石追ひかけて風光る     今泉恂之介

うたた寝と見紛ふ寝釈迦風光る    大下 綾子

風光る祖母の賜割烹着        嵐田 啓明

風光る蒼き魔鏡の古代かな      田中 頼子

風光る円空仏の彫り深く       野田 冷峰

「耕」

なに蒔くと決めず耕す畝三筋     徳永 正裕

耕して花壇一坪生まれけり      直井  正

のけ反りて首回しまた耕せり     高瀬 大虫

耕して土と阿吽の呼吸かな      水口 弥生

耕すや石一つなき父祖の畑      今泉恂之介

耕運機跡継ぎのゐる軽やかさ     大沢 反平

耕せば地中の虫の慌てぶり      杉山 智宥

耕せば陽と混じり合ふ土温し     直井  正

「雑詠」

菜を蒔くぞ芋を植えるぞ畑打つ    大澤 水牛

雪掻きに出て隣人と初対面      杉山 智宥

厨窓つねより明し春の雪       徳永 正裕

十本の笙を温める炭火かな      田中 頼子

参加者(出席)井上庄一郎、今泉恂之介、植村博明、大澤水牛、岡田臣弘、澤井二堂、杉山智宥、須藤光迷、高石昌魚、高瀬大虫、高橋淳ヲブラダ、田中頼子、堤てる夫、直井正、野田冷峰、廣上正市、横井定利(投句参加)嵐田啓明、池村実千代、大倉悌志郎、大熊万歩、大沢反平、大下綾子、加藤明男、金田青水、久保田操、徳永正裕、藤野十三妹、星川佳子、水口弥生、村田佳代、山田明美、吉野光久       (まとめ・堤てる夫)

 

 

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第101回番町喜楽会・三四郎句会合同句会

番町喜楽会は2月15日(土)正午、千代田区一番町の料理店「天重」で第101回例会を三四郎句会との合同句会として開催した。あいにく前日から首都圏は記録的な大雪に見舞われ、東京都心でも三〇センチ近い積雪。このためJR中央線快速、南武線、横浜線、高崎線、川越線、東急東横線、東武東上線がストップしたのをはじめ、首都圏の電車はほとんど全てが運休や大幅遅延となった。

一時は句会中止を決断せざるを得ないかと思われたが、14日午後、谷川水馬幹事が会員に諮ったところ、「やりましょう、出席します」という人が続々。それでは「決行」と決めたはいいが、当日果たして何人集まれるのだろうかと気を揉む幹事団の目の前に、11時過ぎからメンバーが次々に元気な顔を見せ、番町喜楽会10人、三四郎句会5人、合わせて15人が勢揃い、賑やかな合同句会を行うことができた。

合同句会の兼題は「冴返る」と「猫の恋」。合同句会では慣例としている「事前投句・選句方式」によって、句会会場では幹事が集計した選句結果を発表し、最高点句から順々に感想を述べ合って行く合評会を行った。

投句五句、選句六句で行った結果、投句総数145句中の最高点は7点で、井上啓一さん(番町喜楽会)の「冴返る月夜に眠る過疎の村」と「わだかまり溶けゆく春の散歩かな」の2句と、高瀬大虫さん(番町喜楽会)の「奔放に生きしことあり猫の恋」の3句が並んだ。次点の6点句は1句でやはり井上さんの「恋猫の屋根から塀へ神楽坂」と、井上さんが上位4句中3句を占めるという破天荒な結果となった。ご本人は「それでこんな天気になったんでしょう」としきりに照れていた。

続く三席5点句は堤てる夫さん(番町喜楽会)の「冴え返る鳥も止まらぬ石灯籠」、玉田春陽子さん(同)の「足場解く声上下に冴返る」、今泉恂之介さん(番町喜楽会・三四郎句会)の「恋冷めし猫と一人の女かな」の3句だった。以下4点句6句、3点11句、2点20句、1点35句という結果になった。3点句以上の兼題別高得点句は以下の通り。

「冴返る」

冴返る月夜に眠る過疎の村     井上 啓一(番)

冴え返る鳥も止まらぬ石灯籠    堤 てる夫(番)

足場解く声上下に冴返る      玉田春陽子(番)

冴え返る月しらじらと諏訪の湖   河村 有弘(三)

警策の音冴え返る座禅坊      宇佐見 論(三)

冴え返る朝の声明山が哭く     河村 有弘(三)

冴返る村のあらかた山の影     田中 白山(番)

ハンマーの音冴返り石切場     田中 白山(番)

黒板に私語禁ずの字冴返る     玉田春陽子(番)

脳みその輪切写真や冴返る     大澤 水牛(番)

 

「猫の恋」

奔放に生きしことあり猫の恋    高瀬 大虫(番)

恋猫の屋根から塀へ神楽坂     井上 啓一(番)

恋冷めし猫と一人の女かな     今泉恂之介(番・三)

石松もカルメンも居り春の猫    大澤 水牛(番)

鰹節も目刺もいらぬ猫の恋     大澤 水牛(番)

山門の仁王震はす猫の恋      宇佐見 論(三)

猫の恋父子鑑定なき世界      徳永 正裕(番)

老いらくの恋もあらむか猫の恋   山口斗詩子(番)

部屋猫の恋は切なし人に啼く    高瀬 大虫(番)

 

「雑詠」

わだかまり溶けゆく春の散歩かな  井上 啓一(番)

雲水の湯気立ち上がる寒の入り   後藤 尚弘(三)

朱を入れるこけしの口や深雪晴   岡本  崇(三)

春立つや山も田圃も膨らんで    堤 てる夫(番)

寒戻る鉢占領の居間となり     岩沢 克恵(番)

 

「番町喜楽会三四郎句会合同句会参加者」井上啓一、大澤水牛、大下綾子、須藤光迷、高瀬大虫、田中白山、谷川水馬、玉田春陽子、徳永正裕、前島厳水(以上番町喜楽会)、石黒賢一、今泉恂之介、竹居照芳、深瀬久敬、渡辺信(以上三四郎句会)

(まとめ 大澤水牛)

 

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逆回り奥の細道吟行が完結

日経俳句会の通年企画「奥の細道逆回り吟行」は1月25日、草加松原、千住、深川を歩き、芭蕉が六百里の長旅に出で立った採荼庵に辿り着き大団円となった。清澄庭園を散策し、旅の余韻を噛みしめた後、ほど近い料理屋「深はま」で23人が集まる打ち上げ大懇親会を開催した。

平成21年4月、「奥の細道」終着点の大垣市を出発点とし、俳聖の眠る義仲寺から洛西に足を伸ばしたのが第1回。以来、一泊二日の旅を重ねること計9回、生地・伊賀上野などを巡った「番外編」も含め、5年がかりのビッグプロジェクトだった。参加者は延べ168人。

最終回の逆回り吟行に参加したのは、大澤水牛幹事長以下、井上庄一郎、高石昌魚、今泉恂之介、嵐田啓明、大平睦子、岡田臣弘、久保田操、杉山智宥、澤井二堂、高瀬大虫、田中頼子、谷川水馬、玉田春陽子、徳永正裕、野田冷峰、廣上正市、星川佳子、村田佳代、山口斗詩子、堤てる夫(幹事)の21人。

東武伊勢崎線松原団地駅に集合、昨年末に「おくのほそ道の風景地」として名勝とするよう文化審議会答申があったばかりの綾瀬川沿いの松並木遊歩道を散策した。芭蕉文学碑のある北の端から南の札場河岸(ふだばかし)公園まで1㌔半、手入れの行きとどいた松並木と、石畳の通路を挟むように掃き清められた土の路が続く。一般交通路を跨ぐ太鼓橋が二つ、「百代橋」(工事中だった)に「矢立橋」と奥の細道にちなんだ銘版。綾瀬川改修記念の札場河岸公園では、名残を惜しむかのように江戸方向を振り返る「見返りの芭蕉像」が印象的だ。

明治27年、正岡子規と高浜虚子が観梅に草加を訪れたそうで、二基の句碑。子規の句碑には咲き始めの紅梅が枝を伸ばしていた。

梅を見て野を見て行きぬ草加まで  子規

巡礼や草加あたりを帰る雁     虚子

草加駅から北千住へ行き、東武電車浅草行きに乗り換え牛田でさらに京成電車に乗り換え千住大橋駅で下車。日光街道傍に足立市場へ。その一角、二十人も入れば満席という小食堂に十五人、隣り合った蕎麦屋に数人が別れて入る。とても大きな牡蠣フライ、ぶつ切り風の鮪刺し、葱鮪蕎麦など、思い思いにボリュウムたっぷりの昼食にありついた。

芭蕉が知人、門人らに別れを告げた千住大橋の周辺には、「矢立初め」の碑や石柱など奥の細道スポットが幾つかあるが、大型車の往来激しい街道に面した狭いスペース、風情に乏しい。時間をかけて観たのは素盞雄神社。千住宿の文人達が文政三年(一八二〇年)に建てた芭蕉の句碑には、矢立初めの「行春や鳥啼魚の目に泪」の句と、谷文晃の弟子が描いたという線描の芭蕉像。

千住大橋駅から電車を乗り継いで東西線門前仲町駅へ。芭蕉旅立ち時の仮住まい、杉風の別荘だったという採荼庵跡で嵐田名カメラマンによる記念撮影の後、清澄庭園に。園内南の自由広場に「古池やかはづ飛びこむ水の音 はせを」の大きな句碑。庭園の中心にある「大泉水」ではキンクロハジロ、オナガガモなどが鯉の餌に群がり、ぼんやり眺めて日暮れ前のひと時を過ごした。

逆回り大団円宴会場「深はま」には日中の吟行には来られなかった鈴木好夫先生が令夫人と参加され、総勢二十三人というビッグイベントのフィナーレにふさわしい賑やかな席となった。

吟行句会は慣例通りメール句会とし、幹事が取りまとめた選句表で選句し句評を送信する方式で行った。投句3句・選句4句で行った結果、票が拡散し最高点は5点で「逆回り翁振り向く寒の松 睦子」「寒吟行群れを率ゐる赤リュック 昌魚」「望楼の先はみちのく冬日和 正裕」の3句だった。以下4点が2句、3点8句と続いた。

逆回り翁振り向く寒の松      大平 睦子

寒吟行群れを率ゐる赤リュック   髙石 昌魚

望楼の先はみちのく冬日和     徳永 正裕

ふぐ刺にとどむ五年の大吟行    大澤 水牛

たどり来し古池の句碑梅ふふむ   廣上 正市

五年の大団円や春まぢか      廣上 正市

冬温し生年同じ橋渡る       井上庄一郎

鯉の餌掠める鴨のやんちゃ振り   久保田 操

旅終えてまた旅の計寒椿      杉山 智宥

灸もせで歩数伸びたり冬うらら   高瀬 大虫

冬ざれや街を二つに綾瀬川     玉田春陽子

振り返る終りははじめ冬の空    星川 佳子

深川や八寸に春呼び込みて     星川 佳子

(堤てる夫記)

 

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日経俳句会第125回例会

日経俳句会は1月21日(火)午後6時半から鎌倉橋交差点そばの日経第二別館(MIFビル)会議室で、平成26年の初例会(通算125回)を開催した。兼題は「冬の蠅」「福寿草」で投句総数は144句とやや少なめ。年末から年始にかけてのイベント疲れで出席が減ったのか。出席が14人に対して投句参加15人と、投句参加者が上回った。

しかし句会は活発で、選句7句で行った結果、初句会最高点は徳永正裕さんの「用なくて生きるも天寿冬の蠅」でダントツの9点。次席は6点で、大熊万歩さんの「陽気なる一膳飯屋福寿草」と、久保田操さんの「潮風に七千本の懸け大根」の2句。3席は須藤光迷さんの「冬の蠅アベノミクスの記事の上」の5点1句だった。

続く4点句は嵐田啓明さんの「失せ物の手袋いつも右ばかり」、星川佳子さんの「羽に陽をためて飛び立つ冬の蠅」、山田明美さんの「久しぶりいとこにはとこ福寿草」、吉野光久さんの「寄り添ひて妻同い年福寿草」の4句が並んだ。

3点は13句に上り、2点14句、1点33句と続いた。兼題別の3点以上の高点句は次の通り。

「冬の蠅」

用なくて生きるも天寿冬の蠅      徳永 正裕

冬の蠅アベノミクスの記事の上     須藤 光迷

羽に陽をためて飛び立つ冬の蠅     星川 佳子

冬蝿や柱時計のねじの穴        嵐田 啓明

冬蝿も目をつむりたき日和かな     今泉恂之介

窓猫の視線の先の冬の蠅        大澤 水牛

白障子影の動かぬ冬の蠅        高瀬 大虫

冬の蠅終の棲み家と決めしここ     直井  正

まだいたかまだいたのねと冬の蠅    山田 明美

「福寿草」

陽気なる一膳飯屋福寿草        大熊 万歩

久しぶりいとこにはとこ福寿草     山田 明美

寄り添ひて妻同い年福寿草       吉野 光久

福寿草ほつぺのまるい女の子      嵐田 啓明

孤独死の更地なりけり福寿草      大沢 反平

婚を待つ君がうなじや福寿草      澤井 二堂

亡妻の庭福寿草より花ごよみ      野田 冷峰

日曜日玉子サンドと福寿草       星川 佳子

「雑詠」

潮風に七千本の懸け大根        久保田 操

失せ物の手袋いつも右ばかり      嵐田 啓明

鈍色の空へ尖るや葱畑         廣上 正市

福笑ひおバカとなりて癌封じ      吉野 光久

参加者(出席)嵐田啓明、今泉恂之介、大熊万歩、大澤水牛、岡田臣弘、澤井二堂、須藤光迷、高瀬大虫、堤てる夫、徳永正裕、直井正、廣上正市、星川佳子、横井定利。(投句参加)池村実千代、井上庄一郎、植村博明、大倉悌志郎、大沢反平、加藤明男、金田青水、久保田操、杉山智宥、高石昌魚、高橋ヲブラダ、野田冷峰、藤野十三妹、山田明美、吉野光久。

(まとめ・堤てる夫)

 

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番町喜楽会第100回記念・新年句会

番町喜楽会は2003年1月に第1回句会を開催、以後、流渓句会、喜楽会を合併しながら回を重ねて満11年たった1月例会が、記念すべき「第100回」となった。これを祝って1月18日(土)正午から、双牛舎のある番町ハイムの向かい側、ホテル東京グリーンパレスのレストラン「ジャルダン」の一部屋を借り切り、祝賀会を兼ねての句会を開いた。会の半ばで、番町喜楽会の世話人を務めてきた大澤水牛、今泉而雲両氏に感謝するセレモニーが行われ、記念品が贈られた。

この日の兼題は「淑気」と「水洟」で、どちらも一筋縄ではいかない季語。一同大いに苦労の跡がしのばれる句が続々披露された。今回は会食しながらの句会ということで、参加者がまず幹事に投句を送り、幹事が選句表にまとめて送信、それを元に選句して再送信、幹事は選句結果をまとめて句会冒頭で発表し、合評会を始める「事前投句・事前選句方式」で行った。

最高点は9点で須藤光迷さんの「帯解けば小銭こぼるる初詣」の1句。次席がいきなり5点になって「路地裏も塵ひとつなき淑気かな 而雲」の1句、三席4点は「水つ洟リンクの舞ひの泣き笑ひ てる夫」「水洟や夫婦の機微のすれちがひ 白山」「寒の月真上の枝に乗ってをり 白山」「きんきんと星の鳴りだす冬林檎 佳子」「窓あけて露天風呂めく初湯かな 綾子」の5句が並んだ。以下、3点が7句、2点18句、1点27句となった。兼題別の3点以上の句は次の通り。

「淑気」

路地裏も塵ひとつなき淑気かな    今泉 而雲

茶髪にも淑気漂ふ大社        山口斗詩子

「水洟」

水つ洟リンクの舞ひの泣き笑ひ    堤 てる夫

水洟や夫婦の機微のすれ違ひ     田中 白山

水洟をこらへ納豆掻き混ぜる     大澤 水牛

水洟の子等追ひかけて保育ママ    髙橋 楓子

道化師や水洟かむも芸のうち     谷川 水馬

老いの坂水洟かんで独り言      徳永 正裕

「雑詠」

帯解けば小銭こぼるる初詣      須藤 光迷

寒の月真上の枝に乗ってをり     田中 白山

きんきんと星の鳴りだす冬林檎    星川 佳子

窓あけて露天風呂めく初湯かな    大下 綾子

初御空アンパンマンの声の降る    須藤 光迷

侘助や寄る辺無き身に干支六回    野田 冷峰

 

 

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酔吟会第108回例会

酔吟会の平成26年幕開け句会が1月11日(土)午後1時から内神田・鎌倉橋交差点そばの日経第二別館(MIFビル)で行われた。2ヵ月に1回開催の酔吟会だが、回を重ねてこれが第108回、平成8年春に発足して18年目になる。

七草も済み、今日は鏡開き。暖冬とは言え、大陸から押し寄せた寒気が日本列島を覆い、東京近辺でもめずらしく氷が張り霜柱が立つ。寒さの中を長老の藤村詠悟さん、片野涸魚さんはじめ10人が出席、2人が投句参加した。

この日の兼題は「初日」と「大根」。投句5句、選句7句として句会を行った。出席者が少ないせいか、はたまた佳句が多数あったためか、選句はばらばらに分散した。最高点が4点で大沢反平さんの「老骨の塑像なりけり日向ぼこ」の1句のみ。次席3点も「冬晴れや空の広さや田の広さ 反平」「大根の抜いてくれろと飛び出せり 佳子」「煮直して飴色深き大根かな 恂之介」「言問の民家にひそと大根注連 十三妹」の4句に止まった。これではお正月早々淋しいし、兼題の「初日」の句に3点以上の句が無いというので、今回は2点句10句も取り上げることにした。なお1点は27句もあり、投句総数60句のうち42句に点が入るという、大混戦の幕開け句会となった。兼題別の2点以上獲得句は次の通り。

「初日」

産土の杜より出でし初日かな    徳永 正裕

発電の風車の間合初日の出     大澤 水牛

初日はや南に回る寝坊ぐせ     大澤 水牛

まだまだか頬のしばれる初日の出  堤 てる夫

今見てる今だけの富士初日影    久保田 操

胃と生きて今年も初日拝みけり   澤井 二堂

「大根」

大根の抜いてくれろと飛び出せり  星川 佳子

煮直して飴色深き大根かな     今泉恂之介

大根の刃に透き通る桂剥き     久保田 操

冬大根双肌脱いで風の中      大沢 反平

「雑詠」

老骨の塑像なりけり日向ぼこ    大沢 反平

冬晴れや空の広さや田の広さ    大沢 反平

言問の民家にひそと大根注連    藤野十三妹

数の子を仕舞ひ込まれし三箇日   堤 てる夫

初御空ひと影絶えし中禅寺     堤 てる夫

(まとめ 大澤水牛)

 

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川越七福神吟行を開催

日経俳句会と番町喜楽会は合同で1月5日(日)に新春恒例七福神吟行を開催した。今年は「小江戸」をキャッチフレーズに町おこしに注力している埼玉県川越市の「川越七福神」で、参加者は16人。正午過ぎ東武東上線川越駅近くの一番妙善寺(毘沙門天)からスタート、二番天然寺(寿老人)、三番喜多院(大黒天)、四番成田山(恵比寿天)、五番蓮馨寺(福禄寿神)、六番見立寺(布袋尊)、七番妙昌寺(弁財天)と、地図をそのまま舐めるように辿った。途中、喜多院の五百羅漢や観光スポットの蔵の町・時の鐘、菓子屋横丁などに寄り、締め括りは老舗鰻屋「いちのや」で新年会を行った。

朝の天気予報は芳しくなかったが、午後はすっかり好転、寒の入りとは思えぬ穏やかな日和となり、恵まれた初吟行となった。

句会は、今回もこの会独特のメールによる投句・選句方式をとった。吟行途中や懇親会席上で限られた時間内に慌ただしく句を投じ、論じると、まことにまとまりのつかないものになりがちなので、帰宅後、幹事にメール送信し、返送されて来る選句表を元に選句・選評して再送信、それを幹事がまとめて発表する「吟行メール句会」を実施している。

投句は三句以上五句、選句は「天=5点」、「地=3点」、「人=2点」(各1句)「入選=1点」(2句)の計5句とし、採点・集計した。二ケタ得点の好評句は次の通り。

福詣横に逆さに小江戸地図     20点 玉田春陽子(番町喜楽会)

のつけから迷ひ笑ひて福巡り    14点 谷川 水馬(番町喜楽会)

蔵の町リュックにおどる破魔矢かな 12点 須藤 光迷(両会に加入)

七福神福ほどほどに印五つ     12点 山口斗詩子(番町喜楽会)

水清く寒鯉の朱定まれり      10点 嵐田 啓明(日経俳句会)

鬢頭蘆の頭もなでて福詣      10点 大澤 水牛(両会)

空つ風居留守決め込む弁財天    10点 高井 百子(番町喜楽会)

湯豆腐や傘寿の人の陽気酒     10点 徳永 正裕(両会)

参加者=嵐田啓明、池村実千代、今泉恂之介、大澤水牛、片野涸魚、澤井二堂、杉山智宥、須藤光迷、高井百子、谷川水馬、玉田春陽子、堤てる夫、徳永正裕、星川佳子、水口弥生、山口斗詩子、(投句参加)野田冷峰。

(まとめ 堤てる夫)

 

 

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おめでとうございます

平成26年、明けましておめでとうございます。今年もどうぞよろしくお願いいたします。午年の今年は、この「NPO法人双牛舎ホームページ」の拡充に取り組みます。具体的な内容はまだ固まっていませんが、俳句に関する「なんでも辞典」のようなブロックを拵えたり、連句のコーナーを設けたり、あれこれアイデアを練っております。

yahoo!ブログで発信している「みんなの俳句」もおかげさまで皆様のご支持を得て丸6年経過しました。つい先日、2013年12月30日には発足以来の累計訪問者が5万人を超えました。全く宣伝もせず、地味なブログですが双牛舎会員以外の読者もぼつぼつ現れて来たようです。

日本で最初の「俳句振興」を事業の柱に据えたNPO法人双牛舎です。どうぞ一日一回はこのページと「みんなの俳句」をのぞいて下さるようお願いいたします。

俳句振興NPO法人 双牛舎 代表 今泉恂之介 大澤水牛

 

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三四郎句会第27回例会

三四郎句会は12月19日、東京・神田錦町の宗保第二ビル内で平成25年最後を飾る第27回例会を開催した。今回は久しぶりに会員12人全員が出席した。

兼題は「年惜しむ」と「梟(ふくろう)」。三四郎句会に入会して満一年、田村豊生さんの「ふくろうのみつめる森の深さかな」が最高の5点を獲得した。続いて「アンパンマン真中に吊るす聖樹かな」(岡本祟)、「ふくろうの飛び去る影や月青し」(石黒賢一)、「ふくろうの声で酒飲むログハウス」(深瀬久敬)、「短日の妻正座して針に糸」(今泉恂之介)の4句が4点で続いた。

句会終了後、大手町の「景気園」で忘年会を行い、年間の秀句三句を選ぶ全員投票の結果が発表され、上位3句が表彰された。第1位「舫(もやい)杭(ぐい)鴉丸まり時雨かな」(印南進)、第2位「百一歳トマト三本育ており」(竹居照芳)、第3位「いざ行かむ傘寿の先へ更衣」(田村豊生)だった。

(記録 今泉恂之介)

 

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平成25年下期合同句会

 

年末恒例の合同句会は12月17日(火)の年次総会に引き続いて開催、「狐火(きつねび)」「日記買ふ(にっきかふ)」の兼題2句に雑詠1句の合わせて3句を37人(投句参加12人)が詠み、投句総数は111句に上った。

事前投句・事前選句方式(選句5句)で嵐田幹事が集計し、選句結果発表から句会が始まった。その結果、流合研士郎さんの「狐火と見えし旅路の遠灯り」が最高の10点句。次席は大澤水牛さんの「ぽっと狐火秘密保護法成立す」で7点句。三席は金田青水さんの「退院し迷はず十年日記買ふ」と、星川佳子さんの「運不運平たくなれり日記買ふ」の6点2句。

次いで5点が9句、4点3句、3点12句と続いた。以下2点12句、1点34句。兼題別の高点句(3点以上)は次の通り。

「狐火」

狐火と見えし旅路の遠灯り        流合研士郎

ぽっと狐火秘密保護法成立す       大澤 水牛

狐火や森は記憶を閉じたまま       佐々木 碩

原発の廃炉作業や鬼火見ゆ        徳永 正裕

狐火や未練怨念慙愧燃え         澤井 二堂

狐火に逢へず今夜は寺泊         横井 定利

狐火ともイーハトーブ夜汽車とも     吉野 光久

「日記買ふ」

退院し迷はず十年日記買ふ        金田 青水

運不運ひらたくなれり日記買ふ      星川 佳子

砂時計のごとき余生日記買ふ       徳永 正裕

日記買ふこの一年も生きるべく        直井  正

日記買ふ余白余生のせめぎ合い      野田 冷峰

日記買ふもう書きません悪口は      嵐田啓 明

来年の命は知らず日記買ふ        片野 涸魚

日記買ふ東京音頭を口ずさみ       須藤 光迷

見回して日記買ふ娘の薔薇の頬      高橋ヲブラダ

来る年の良きこと願ひ日記買ふ      田中 頼子

空白の日記に詫びて日記買ふ       流合研士郎

「雑詠」

放牧の牛引揚げて山眠る         大倉悌志郎

葱に土寄せて仕舞ひにしたりけり     廣上 正市

逆立ちの尻をふりふり池の鴨       加藤 明男

彗星は太陽に消え毛糸あむ        星川 佳子

乾鮭は古武士の貌や雪催         須藤 光迷

忘年会老ひ先数え全部出る        高瀬 大虫

寝巻とも外着ともつかず着ぶくれて    吉野 光久

恩師なき書斎に杖と冬帽子        今泉恂之介

駅前や石焼芋の間延び声         植村 博明

詫助や結界越しに紅ゆかし        岡田 臣弘

参加者(出席)嵐田啓明、池村実千代、井上庄一郎、今泉恂之介、植村博明、大熊万歩、大澤水牛、大下綾子、岡田臣弘、澤井二堂、杉山智宥、須藤光迷、高石昌魚、高瀬大虫、田中頼子、堤てる夫、徳永正裕、直井正、野田冷峰、廣上正市、藤野十三妹、星川佳子、水口弥生、村田佳代、山田明美(投句参加)大倉悌志郎、大沢反平、片野涸魚、加藤明男、金田青水、久保田操、佐々木碩、高橋ヲブラダ、流合研士郎、藤村詠悟、横井定利、吉野光久

(まとめ 堤てる夫)

 

 

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