番町喜楽会第221回例会

18人参加、「秋冷」と「新酒」を詠む

秋霖吹き飛ばす佳句あまた

番町喜楽会は令和6年10月例会(通算第221回)を5日午後5時50分から東京・九段下の千代田区生涯学習館で開催した。10月に入っても1日、2日と30度が続くなんとも異常な令和6年だが、3日から雨が降り始め、一転涼しくなった。5日も引き続き雨。「秋霖(しゅうりん)」である。しかしもともと秋霖は9月のものであるはず。今年は夏がひどく長引いたために、秋雨前線が出張るのがずれてしまったようだ。そういえば曼珠沙華も秋彼岸には咲かず、今頃になって満開になっている。政界も「とてもなれないだろう」と言われ続けてきたイシバさんが大逆転で総理大臣になったし、県議会が全会一致で解職決議案を通して辞めさせたパワハラ兵庫県知事が出直し選挙にしゃあしゃあと出馬、もしかしたら当選してしまうかも、などと言われている。世の中なんともおかしくなってきた。この夜の句会の出席者は9人とこじんまりだったが、佳句がたくさん出て、合評会もにぎやかなものとなった。兼題は「秋冷」と「新酒」。投句は18人から89句あり、選句6句で句会を進めた結果、天の位には中村迷哲さんの「秋冷や見知らぬ駅に降りる通夜」が9点獲得で座り、地の位には須藤光迷さんの「悔しかろ新酒つくれぬ能登の蔵」が7点で治った。人の位は5点で向井愉里さんの「久留里まで角打列車新酒酌む」と迷哲さんの「なぜ能登や天に問いたき秋出水」の2句が選ばれた。続く4点句には廣田可升さんの「秋冷の朝五枚刃の剃り心地」と斉山満智さんの「気に入りのぐい呑み出して新酒かな」の2句が並んだ。以下3点7句、2点13句、1点19句と続いた。                       兼題別の高点句(3点以上)は次の通り。

「秋冷」

秋冷や見知らぬ駅に降りる通夜    中村 迷哲

秋冷の朝五枚刃の剃り心地      廣田 可升

秋冷やそろそろできる猫団子     斉山 満智

秋冷を連れて下界へケーブルカー   中村 迷哲

秋冷の鍋を揺らして粉ふきいも    星川 水兎

秋冷や寒い暑いと老夫婦       田中 白山

「新酒」

悔しかろ新酒つくれぬ能登の蔵    須藤 光迷

久留里まで角打列車新酒酌む     向井 愉里

気に入りのぐい呑み出して新酒かな  斉山 満智

新酒酌む椅子の揃はぬ隅の席     玉田春陽子

ありがたや新酒を交はす友のあり   澤井 二堂

「当季雑詠」

なぜ能登や天に問いたき秋出水    中村 迷哲

乳がんの疑い晴れたりカンナ燃ゆ   山口斗詩子

【参加者】(出席9名)大澤水牛、金田青水、須藤光迷、田中白山、玉田春陽子、中村迷哲、廣田可升、前島幻水、向井愉里。(投句参加9名)嵐田双歩、斉山満智、澤井二堂、高井百子、谷川水馬、堤てる夫、徳永木葉、星川水兎、山口斗詩子。 (報告大澤水牛)

 

 

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日経俳句会第232回例会

 

35人参加、「冷やか」と「唐辛子」を詠む

光迷句「別姓」が最高10点、二席7点に4人が並ぶ

日経俳句会は令和6年の9月例会(通算232回)を9月18日(水)夕に鎌倉橋の日経広告研究所会議室で開いた。昼間は残暑が厳しく、出席は11人にとどまったが。高点句が多く充実した句会となった。兼題は「冷やか」と「唐辛子」。35人から105句の投句があり、6句選(欠席は5句)の結果、須藤光迷さんの「別姓に何の支障が秋刀魚焼く」が10点を集め一席となった。二席7点には中嶋阿猿さんの「秋冷の谷より満ちて奥箱根」と溝口戸無広さんの「冷やかや小樽硝子は海の色」、大澤水牛さんの「荒庭にあかあかとあり鷹ノ爪」、横井定利さんの「白湯一杯飲んで出かける敬老日」の4句が並んだ。三席6点には嵐田双歩さんの「冷やかや船屋に寄する波の音」が入ったほか、5点3句、4点8句、3点13句と続き、高点句が30句を数えた。2点は16句、1点は24句だった。なお暑さで体調を崩し投句を休んでいた今泉而云さんが久々に顔を出し、選句に加わった。兼題別の高点句(三点以上)は以下の通り。

「冷やか」

秋冷の谷より満ちて奥箱根              中嶋 阿猿

冷やかや小樽硝子は海の色              溝口戸無広

冷やかや船屋に寄する波の音             嵐田 双歩

冷やかな畳にごろり旅帰り              谷川 水馬

手水舎に掬ふ一勺冷やかに              久保田 操

カウベルに夕冷えまさる山の牧            徳永 木葉

冷やかやガラリ変わったお品書            中沢 豆乳

不用意に座るベンチの冷ゆるかな           水口 弥生

冷やかや芭蕉坐像の隅田風              横井 定利

「唐辛子」

荒庭にあかあかとあり鷹ノ爪             大澤 水牛

干し上げて赤に紅増す唐辛子             篠田  朗

唐辛子吊るし山家の道しるべ             杉山 三薬

朝市や婆の商う鷹の爪                須藤 光迷

知事殿に土産どっさり唐辛子             中沢 豆乳

生き難き世にピンと立つ唐辛子            伊藤 健史

箸で退けやっぱり食べる唐辛子            植村 方円

唐辛子入りの瓜漬け成田山              金田 青水

信濃では蕎麦に南蛮磯五郎              高井 百子

当季雑詠

別姓に何の支障が秋刀魚焼く             須藤 光迷

白湯一杯飲んで出かける敬老日            横井 定利

秋うららお風呂沸いたと電子音            嵐田 双歩

もういいよもういいよねと秋の蝉           久保田 操

写経終へ出でたる庭に秋の蝶             谷川 水馬

秋めくや肺の奥まで風通す              植村 方円

アサギマダラ見よ我が庭の藤袴            高井 百子

雨ごとに色くすみゆく秋の森             溝口戸無広

猛暑日がにじり寄ってく秋彼岸            杉山 三薬

廃校の軒先借りて柿吊す               中沢 豆乳

銀河濃しつまらぬ悩み薄くなる            旙山 芳之

脳外科のCTセーフ夏終る              藤野十三妹

《参加者》【出席11人】嵐田双歩、池村実千代、今泉而云、大澤水牛、金田青水、澤井二堂、篠田朗、杉山三薬、堤てる夫、中村迷哲、向井愉里。【投句参加25人】伊藤健史、岩田千虎、植村方円、大沢反平、岡田鷹洋、岡松卓也、加藤明生、久保道子、久保田操、須藤光迷、高井百子、高橋ヲブラダ、谷川水馬、徳永木葉、中沢豆乳、中嶋阿猿、中野枕流、野田冷峰、旙山芳之、廣上正市、藤野十三妹、星川水兎、溝口戸無広、水口弥生、横井定利。

(報告 中村迷哲)

 

 

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酔吟会第170回例会

 

11人で「身に入む」「稲・米」を詠む

首位7点は席題出題者の三薬さん、次点に4人が並ぶ

酔吟会は令和6年の9月例会(通算第170回)を14日午後1時から江東区の芭蕉記念館で開催した。兼題は「身に入む」、杉山三薬さんから出題された席題は「稲もしくは米」。雑詠を含め投句5句、選句6句(うち特選1句)の結果、首位の7点句に杉山三薬さんの「そぞろ寒娘が米を借りにくる」が入り、席題出題者の面目躍如と大喜び。次点の6点句は、大澤水牛さんの「身に入むや組立トイレ講習会」、嵐田双歩さんの「爪割れて齢身に入む夕べかな」、向井愉里さんの「身に入むやひと月先の再検査」、玉田春陽子さんの「稲刈りて風の見えなくなりにけり」と4句も並ぶ盛況。三席5点句には廣田可升さんの「身に入むや類想類句といふ奈落」、4点句には金田青水さんの「蕎麦屋にて頼む残暑のカツカレー」と続いた。高得点9句のうち、半数以上の5句が兼題の「身に入む」の句となった。会員の高齢化とともに、日常的に身に入む経験が多くなったことの反映だろうか。兼題別の高点句(3点以上)は次の通り。

「身に入む」

身に入むや組立トイレ講習会      大澤 水牛

爪割れて齢身に入む夕べかな      嵐田 双歩

身に入むやひと月先の再検査      向井 愉里

身に入むや類想類句といふ奈落     廣田 可升

身に入むや青シート屋根並ぶ町     徳永 木葉

「稲・米」

そぞろ寒娘が米を借りにくる      杉山 三薬

稲刈りて風の見えなくなりにけり    玉田春陽子

ペダル踏む右も左も稲穂波       廣田 可升

「当季雑詠」

蕎麦屋にて頼む残暑のカツカレー    金田 青水

<句会参加者11人>嵐田双歩、大澤水牛、岡田鷹洋、金田青水、久保道子、杉山三薬、須藤光迷、玉田春陽子、徳永木葉、廣田可升、向井愉里。

(報告 廣田可升)

 

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番町喜楽会第220回例会

 

首位に迷哲、水兎、斗詩子鼎立

19人が「二百十日」と「曼殊沙華」を詠む

番町喜楽会は令和6年9月例会(通算第220回)を2日午後6時半から東京・九段下の千代田区生涯学習館で開催した。台風10号が迷走し気を揉んだものの、晴天となった。ただし、出席者は9人にとどまり、いささか寂しい感じ。兼題は「二百十日(厄日も可)」と「曼殊沙華」。雑詠を含め投句5句、選句6句(欠席者は5句)の結果、首位に中村迷哲さんの「庭の鉢居間にあふれる厄日かな」、星川水兎さんの「残り物チャーハンにして厄日過ぐ」、山口斗詩子さんの「母の裾ぎゅっとにぎりて秋日傘」の3句が並んだ。次点は4点の6句、三席は3点の4句だった。兼題別の高点句(3点以上)は次の通り。

「二百十日(厄日)」

庭の鉢居間にあふれる厄日かな       中村 迷哲

残り物チャーハンにして厄日過ぐ      星川 水兎

田んぼ消ゆ二百二十日の濁流に       金田 青水

二百十日蝉の亡き骸そっと掃く       斉山 満智

掌に欠伸をしまひ厄日過ぐ         玉田春陽子

「曼殊沙華」

高麗人の築きし土手や曼殊沙華       中村 迷哲

奈良明日香石舞台へと曼殊沙華       金田 青水

曼珠沙華ここにカルメン立たせたし     堤 てる夫

つかのまに老いたる団地曼珠沙華      廣田 可升

「当季雑詠」

母の裾ぎゅっとにぎりて秋日傘       山口斗詩子

田畑の相続難し鉦叩            高井 百子

鉦叩き今宵小さな旅支度          星川 水兎

首相候補こんな顔ぶれ秋寂し        堤 てる夫

<句会出席者、9人>池内的中、大澤水牛、金田青水、須藤光迷、田中白山、玉田春陽子、中村迷哲、廣田可升、向井愉里。<投句参加者、10人>嵐田双歩、斉山満智、澤井二堂、高井百子、谷川水馬、堤てる夫、徳永木葉、星川水兎、前島幻水、山口斗詩子。  (報告 須藤光迷)

 

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日経俳句会第231回例会

明生句「孫と嫁」が最高12点、二席は光迷句「タワマン」

参加36人で「盆」と「ばった」を詠む

日経俳句会は8月21日(水)、神田・鎌倉橋の日経広告研究所会議室で8月例会(通算231回)を開いた。連日の厳しい残暑とゲリラ豪雨はこの日も続き、夕方には品川駅前が水浸しになるなど各地で雷雨に見舞われた。幸い会場周辺は打ち水程度の雨量で済み、いくらか涼しくなった。出席者は11人。残暑の中、熱のこもった議論が続いた。兼題は「盆」と「ばった(飛蝗、螇蚸)」。36人から108句の投句があり、6句選(欠席者は5句選)の結果、加藤明生さんの「孫と嫁残暑を置いて帰りけり」が12点を得て一席に輝いた。二席は須藤光迷さんの「稲光タワマン墓のごとく立ち」が9点で続き、三席には双歩句「存分に仏間冷やすも盆用意」、木葉句「先祖より先に孫来て盆に入る」、水兎句「銀の匙磨くも母の盆支度」、定利句「ヘルメットバイクに置きて盆の僧」の兼題4句が6点で並んだ。以下、5点5句、4点8句、3点8句、2点12句、1点36句だった。兼題別の高点句(3点以上)は以下の通り。

「盆」

存分に仏間冷やすも盆用意              嵐田 双歩

先祖より先に孫来て盆に入る             徳永 木葉

銀の匙磨くも母の盆支度               星川 水兔

ヘルメットバイクに置きて盆の僧           横井 定利

盆淋し家系にひとり残されて             大沢 反平

姿なき鳩も烏も盆休み                久保田 操

とげとげの心丸めて盆支度              篠田  朗

ヴィトン下げあの娘降り立つ盆の駅          杉山 三薬

墓じまい額寄せ合ふ盆の夜              中村 迷哲

久方の妹の寝息盆の家                向井 愉里

親戚もいまやちりぢり盂蘭盆会            大澤 水牛

お供えは草原の花阿蘇の盆              久保 道子

迎え火やなつかし声をふっときく           池村実千代

「ばった(飛蝗、螇蚸)」

出迎へはおんぶ飛蝗よ里帰り             金田 青水

球拾ふ多摩の川原やばった飛ぶ            谷川 水馬

ひと文句ありそなバッタのくろ目玉          中沢 豆乳

睨み合ふ飛蝗の構えレスリング            高井 百子

ライン上動かぬバッタ手で扇ぐ            旙山 芳之

ばつた跳ぶ草撓みたる刹那かな            溝口戸無広

当季雑詠

孫と嫁残暑を置いて帰りけり             加藤 明生

稲光タワマン墓のごとく立ち             須藤 光迷

新涼の安堵の朝や喜寿迎ふ              高井 百子

八月やピースホープは煙草の名            嵐田 双歩

ひと差し指で休む蜻蛉や露天風呂           星川 水兎

原爆忌おこりじぞうの悲しき目            岩田 千虎

かさぶたの剥がれるやうに蝉果つる          中嶋 阿猿

猫達と夫に一献遠花火                藤野十三妹

《参加者》【出席11人】嵐田双歩、岩田千虎、大澤水牛、金田青水、澤井二堂、篠田朗、堤てる夫、中野枕流、中村迷哲、星川水兎、向井愉里。【投句参加25人】池村実千代、和泉田守、伊藤健史、今泉而云、植村方円、大沢反平、岡田鷹洋、岡松卓也、加藤明生、久保道子、久保田操、杉山三薬、須藤光迷、高井百子、高橋ヲブラダ、谷川水馬、徳永木葉、中沢豆乳、中嶋阿猿、旙山芳之、廣上正市、藤野十三妹、溝口戸無広、水口弥生、横井定利。

(報告 嵐田双歩)

 

 

 

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番町喜楽会第219回例会

久々に全会員19名参加、投句総数95句

最長老白山氏「卒寿の坂」で最高9点獲得

猛暑の中「秋の声」と「流星」を詠み合う

番町喜楽会は令和6年8月例会(通算第219回)を8月3日(土)午後6時から、東京・九段下の千代田区生涯学習館で開催した。番町喜楽会は一時は会員が35人にも膨れ上がったのだが、寄る年波に一人去り二人欠けと現有会員は19人になっている。それも「夜間外出を控えておりますので」とか「ちょっと不具合」とかで句会場に出て来られない人も多くなった。というわけで、この夜も出席者は10人とこじんまり。しかし、俳句以外ほとんど用の無い当番幹事水牛のしつこい投句催促メールに辟易したか、次々に投句が寄せられ、ついに19人全員の投句95句が勢揃い、全員が選句した。

今回の兼題は「秋の声」と「流星・流れ星」。選句7句(欠席者は5句)で句会を進めた結果、田中白山さんの「卒寿への最後の坂の残暑かな」が断然の9点で一席を飾った。二席は6点で玉田春陽子さんの「占いの客待つ路地や秋の声」と廣田可升さんの「なき人はよき人ばかり流れ星」の2句、三席5点は「白桃やアダムもイヴも知らぬ味 春陽子」だった。さらに「夜の更けて一人弓引く秋の声 的中」「広島や炎暑にゆがむアスファルト 双歩」の2句が4点で続いた。以下、3点6句、2点16句、1点31句という結果だった。兼題別の高点句(3点以上)は下記のとおり。

「秋の声」

占いの客待つ路地や秋の声              玉田春陽子

夜の更けて一人弓引く秋の声             池内 的中

神宿る社中磐座(いわくら)秋の声          堤 てる夫

風鈴の吊るされしまま秋の声             高井 百子

AIの解らぬものに秋の声               星川 水兎

「流星・流れ星」

なき人はよき人ばかり流れ星             廣田 可升

流れ星夫婦で違ふ願ひ事               中村 迷哲

「当季雑詠」

卒寿への最後の坂の残暑かな             田中 白山

白桃やアダムもイヴも知らぬ味            玉田春陽子

広島や炎暑にゆがむアスファルト           嵐田 双歩

常連のひとり欠けたり夏の果て            金田 青水

阿波踊目指し毎朝スクワット             谷川 水馬

《参加者》【出席10人】池内的中、大澤水牛、金田青水、須藤光迷、高井百子、田中白山、玉田春陽子、堤てる夫、前島幻水、向井愉里。【投句参加9人】嵐田双歩、斉山満智、澤井二堂、谷川水馬、徳永木葉、中村迷哲、廣田可升、星川水兎、山口斗詩子。

(報告・大澤水牛)

 

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日経俳句会第230回例会

双歩句「夫婦喧嘩」が最高8点、二席は明生・操・水兎句並ぶ

「暑中見舞」と「素麺」を詠む

日経俳句会は令和6年7月例会(通算230回)を7月17日(水)に鎌倉橋の日経広告研究所会議室で開いた。梅雨明け目前の蒸し暑さの中、12人が元気な顔を見せ句会に臨んだ。兼題は「暑中見舞」と「素麺」。38人から112句の投句があり、6句選(欠席は5句)の結果、嵐田双歩さんの「冷素麺夫婦喧嘩のうやむやに」が8点で一席となった。二席6点には加藤明生さんの「添書きの文字の細さよ夏見舞」、久保田操さんの「またひとつ老舗閉店竹落葉」、星川水兎さんの「蓮の葉を回る雨つぶ池之端」の3句が並んだ。三席5点は中嶋阿猿さんの「書くことも来ることもなし暑中見舞い」をはじめ8句が入った。このほか4点6句、3点11句、2点18句、1点34句で、全体にまんべんなく点が入った印象だった。

なお句会の席上、岩田三代さんが俳号「千虎(ちこ)」を名乗ることを表明、拍手で了解された。由来は髪をおかっぱにしたところ、友人から「NHK番組のチコちゃんに似ている」とチコと呼ばれるようになり、この愛称に漢字をあてたもの。兼題別の高点句(三点以上)は以下の通り。

「暑中見舞」

添書きの文字の細さよ夏見舞             加藤 明生

書くことも来ることもなし暑中見舞い         中嶋 阿猿

夏見舞おもて面まで続きけり             星川 水兎

絵手紙に似合ふ癖字や夏見舞             嵐田 双歩

貝描く暑中見舞に海の音               篠田  朗

安否まず問ひて問はれて夏見舞            水口 弥生

薄墨や優しき筆の夏見舞               池村実千代

墨痕に気合の暑中見舞かな              今泉 而云

色褪せし暑中見舞いに母の文字            岩田 三代

ご無沙汰をラインで交はす夏見舞           久保田 操

下手な絵に生きているぜと夏見舞           中村 迷哲

「素麺」

冷素麺夫婦喧嘩のうやむやに             嵐田 双歩

古のラガー揃ひて冷素麺               池村実千代

FMはギターの調べ冷素麵              和泉田 守

素麵に孫の健啖ほれぼれと              今泉 而云

つれあひの霊に索麺供へたり             金田 青水

素麺をたらいで冷やす子沢山             杉山 三薬

箸握り流し素麺待てる子ら              徳永 木葉

冷素麺妻病褥の笑顔かな               廣上 正市

当季雑詠

またひとつ老舗閉店竹落葉              久保田 操

蓮の葉を回る雨つぶ池之端              星川 水兎

自販機を落ちて響きし夜のビール           今泉 而云

旧盤のだるい曲聴く夏の夜              植村 方円

三文字の暖簾くぐりて泥鰌鍋             中野 枕流

富士山に縦じま見えて夏来たる            野田 冷峰

勘違いと言い放つ君夏の果              向井 愉里

無精菜園バット胡瓜の不貞寝する           大澤 水牛

理由なく諍ふ夫婦梅雨の雷              中村 迷哲

ゆつくりとグライダー行く夏木立           溝口戸無広

《参加者》【出席12人】嵐田双歩、池村実千代、岩田千虎、植村方円、大澤水牛、金田青水、澤井二堂、篠田朗、杉山三薬、堤てる夫、中村迷哲、向井愉里。

【投句参加26人】和泉田守、伊藤健史、今泉而云、大沢反平、岡田鷹洋、岡松卓也、加藤明生、工藤静舟、久保道子、久保田操、斉藤早苗、須藤光迷、高井百子、高橋ヲブラダ、谷川水馬、徳永木葉、中嶋阿猿、中野枕流、野田冷峰、旙山芳之、廣上正市、星川水兎、増田浩志、溝口戸無広、水口弥生、横井定利。

(報告 中村迷哲)

 

 

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酔吟会第169回例会

12人が「夕立」「五輪」を詠む

春陽子「夏蒲団」「大仏の背」「ストロー」で高位占める

鷹洋「傘のチャンバラ」、三代は席題「五輪」で気を吐く

酔吟会は令和6年7月例会(通算第169回)を13日午後1時から江東区の芭蕉記念館で開催した。兼題は「夕立」、席題に岩田三代さんがまもなく開催される「五輪」を設定、雑詠を含め投句5句、選句6句(うち特選1句)の結果、首位の7点句に玉田春陽子さんの「蹴られても足元にゐる夏蒲団」と「日盛りや大仏は背の小窓開け」の2句、さらに、大澤水牛さんの「ご先祖が揃って乗れるお化け茄子」の計3句が入った。次点の5点句には玉田春陽子さんの「ストローの端を噛む癖夏の果」と岡田鷹洋さんの「夕立晴れ傘のチャンバラ帰り道」が入った。三席の4点句では、岩田三代さんが「ブレイキンなにそれ五輪夏のパリ」、「五輪待つ星に戦のやまぬ夏」、「夕立や乾きし土の濡れゆく香」と、なんと3句も入り、さらに須藤光迷さんの「轆轤ひく窓の守宮に見詰められ」も連なった。高得点句を連発する作者が多く、作者が春陽子、三代と判明するたびに、他の参加者からため息のもれる句会となった。兼題別の高点句(三点以上)は次の通り。

「夕立」

夕立晴れ傘のチャンバラ帰り道      岡田 鷹洋

夕立や乾きし土の濡れゆく香       岩田 三代

やむまでといふが夕立の罪つくり     大澤 水牛

大夕立広重の絵の人となる        廣田 可升

「五輪」

ブレイキンなにそれ五輪夏のパリ     岩田 三代

五輪待つ星に戦のやまぬ夏        岩田 三代

五輪より右派だ左派だとパリの夏     杉山 三薬

「雑詠」

蹴られても足元にゐる夏蒲団       玉田春陽子

ご先祖が揃って乗れるお化け茄子     大澤 水牛

日盛りや大仏は背の小窓開け       玉田春陽子

ストローの端を噛む癖夏の果       玉田春陽子

轆轤ひく窓の守宮に見詰められ      須藤 光迷

<句会参加者12人>岩田三代、大澤水牛、岡田鷹洋、金田青水、久保道子、杉山三薬、須藤光迷、谷川水馬、玉田春陽子、徳永木葉、廣田可升、向井愉里。

(報告 廣田可升)

 

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番町喜楽会第218回例会

 

双歩句「黙祷」最高9点、二席は水兎句「育休男子」

17人で「半夏生」「蝉」詠む

番町喜楽会は令和6年7月例会(通算第218回)を7月1日(月)、東京・九段下の千代田区生涯学習館で開催した。17人から投句があり、この夜の句会には9人が顔を揃えた。兼題は「半夏生」と「蝉」。選句6句(欠席者は5句)で句会を進めた結果、嵐田双歩さんの「黙祷の長き一分蝉時雨」が9点で一席を飾った。二席には星川水兎さんの「初めての育休男子半夏生」の6点句、三席には大澤水牛さんの「消せば来る迷惑メール梅雨じめり」の4点句が続いた。以下、3点5句、2点15句、1点30句という結果で、3点以上の高得点句が少なく、点数がばらけた結果となった。兼題別の高点句(3点以上)は下記のとおり。

「半夏生」

初めての育休男子半夏生               星川 水兎

大店の大きな暖簾半夏生               嵐田 双歩

「蝉」

黙祷の長き一分蝉時雨                嵐田 双歩

杖借りていざ初蝉の立石寺              徳永 木葉

当季雑詠

消せば来る迷惑メール梅雨じめり           大澤 水牛

トマト嫌いだけど大好きオムライス          須藤 光迷

四股ひとつ踏めぬ身となり蟾蜍            須藤 光迷

武蔵野のハケに湧く水湧く螢             中村 迷哲

《参加者》【出席9人】大澤水牛、金田青水、田中白山、須藤光迷、玉田春陽子、中村迷哲、廣田可升、前島幻水、向井愉里。【投句参加8人】嵐田双歩、斉山満智、高井百子、谷川水馬、堤てる夫、徳永木葉、星川水兎、山口斗詩子。

(報告・廣田可升)

 

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日経俳句会上期合同句会を開催

37人が「万緑」を詠む

反平句「病窓万緑」が最高点、二席に戸無広句「光堂」

日経俳句会は6月19日(水)、内神田の日経広告研究所会議室で令和6年の上期合同句会(通算38回)を開いた。今年は梅雨入りが大幅に遅れているものの、前日は大雨で涼しかった。当日は嘘のように晴れ上がり、戻ってきた暑さの中、15人が出席し和やかな句会となった。兼題の「万緑」に37人から110句が集まり、事前選句の結果、大沢反平さんの「病窓に万緑がある生きてゐる」が9点を獲得、一席に輝いた。二席には溝口戸無広さんの「万緑の更に奥なる光堂」が8点で、三席には星川水兎さんの「万緑や我も緑になる日まで」、和泉田守さんの「厚み増す薬手帳や六月尽」、玉田春陽子さんの「ごきげんな風に干さるるアロハシャツ」が7点で並んだ。また、5点句には髙橋ヲブラダさん「古本をメルカリに出し梅雨に入る」や和泉田さん、溝口さんの句が入り、同じ作者の高点句が目立った。以下、4点8句、3点13句、2点19句、1点24句だった。

句会終了後、暑気払いを兼ねた懇親会が開かれ、別会場から駆けつけた高井百子さんも加わり、グラスを手に会員同士の親睦を深めた。兼題別の高点句(3点以上)は以下の通り。

「万緑」

病窓に万緑がある生きてゐる           大沢 反平

万緑の更に奥なる光堂              溝口戸無広

万緑や我も緑になる日まで            星川 水兔

万緑に鉄橋響き渡りけり             溝口戸無広

万緑や神の気配の熊野道             中村 迷哲

万緑や土中に潜む貝塚層             廣田 可升

万緑をずいと真っ赤なケーブルカー        大澤 水牛

万緑の中へすたすた山頭火            金田 青水

万緑に深き傷あり地震津波            須藤 光迷

万緑やトトロひょっこり顔を出す         徳永 木葉

万緑の真っただ中へティーショット        中村 迷哲

万緑へ一日二便のバス降りる           廣田 可升

「当季雑詠」

厚み増す薬手帳や六月尽             和泉田 守

ごきげんな風に干さるるアロハシャツ       玉田春陽子

寛解の妻寝息たて夏まひる            和泉田 守

古本をメルカリに出し梅雨に入る         髙橋ヲブラダ

ラムネ抜く昭和の音の響きあり          加藤 明生

病得て写生を友に茄子胡瓜            須藤 光迷

夏や子の自立か無口始まりぬ           高井 百子

新茶汲む妻の手元の若やげり           中村 迷哲

走るより速く耳かく梅雨の犬           星川 水兔

昼顔や巣鴨に今もちんどん屋           星川 水兔

父の日や昼酒少しもう少し            嵐田 双歩

ひたひたと過去歩きゆく木下闇          岩田 三代

路地裏の匂ひ懐かし枇杷盛る           久保田 操

何ごとも笑ひ飛ばして立葵            谷川 水馬

素足たのしむペディキュアは海の色        玉田春陽子

夜泣きの子抱けば卯の花腐しかな         徳永 木葉

雨の路地ホルンの楽隊カタツムリ         中沢 豆乳

《参加者》【出席15人】嵐田双歩、池村実千代、今泉而云、植村方円、大澤水牛、金田青水、篠田朗、杉山三薬、玉田春陽子、堤てる夫、中野枕流、中村迷哲、廣田可升、星川水兎、向井愉里。【投句参加23人】和泉田守、伊藤健史、岩田三代、大沢反平、岡田鷹洋、岡松卓也、加藤明生、工藤静舟、久保道子、久保田操、澤井二堂、須藤光迷、高井百子、高橋ヲブラダ、谷川水馬、徳永木葉、中沢豆乳、中嶋阿猿、旙山芳之、廣上正市、藤野十三妹、溝口戸無広、横井定利。

(報告 嵐田双歩)

 

 

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