日経俳句会第230回例会

双歩句「夫婦喧嘩」が最高8点、二席は明生・操・水兎句並ぶ

「暑中見舞」と「素麺」を詠む

日経俳句会は令和6年7月例会(通算230回)を7月17日(水)に鎌倉橋の日経広告研究所会議室で開いた。梅雨明け目前の蒸し暑さの中、12人が元気な顔を見せ句会に臨んだ。兼題は「暑中見舞」と「素麺」。38人から112句の投句があり、6句選(欠席は5句)の結果、嵐田双歩さんの「冷素麺夫婦喧嘩のうやむやに」が8点で一席となった。二席6点には加藤明生さんの「添書きの文字の細さよ夏見舞」、久保田操さんの「またひとつ老舗閉店竹落葉」、星川水兎さんの「蓮の葉を回る雨つぶ池之端」の3句が並んだ。三席5点は中嶋阿猿さんの「書くことも来ることもなし暑中見舞い」をはじめ8句が入った。このほか4点6句、3点11句、2点18句、1点34句で、全体にまんべんなく点が入った印象だった。

なお句会の席上、岩田三代さんが俳号「千虎(ちこ)」を名乗ることを表明、拍手で了解された。由来は髪をおかっぱにしたところ、友人から「NHK番組のチコちゃんに似ている」とチコと呼ばれるようになり、この愛称に漢字をあてたもの。兼題別の高点句(三点以上)は以下の通り。

「暑中見舞」

添書きの文字の細さよ夏見舞             加藤 明生

書くことも来ることもなし暑中見舞い         中嶋 阿猿

夏見舞おもて面まで続きけり             星川 水兎

絵手紙に似合ふ癖字や夏見舞             嵐田 双歩

貝描く暑中見舞に海の音               篠田  朗

安否まず問ひて問はれて夏見舞            水口 弥生

薄墨や優しき筆の夏見舞               池村実千代

墨痕に気合の暑中見舞かな              今泉 而云

色褪せし暑中見舞いに母の文字            岩田 三代

ご無沙汰をラインで交はす夏見舞           久保田 操

下手な絵に生きているぜと夏見舞           中村 迷哲

「素麺」

冷素麺夫婦喧嘩のうやむやに             嵐田 双歩

古のラガー揃ひて冷素麺               池村実千代

FMはギターの調べ冷素麵              和泉田 守

素麵に孫の健啖ほれぼれと              今泉 而云

つれあひの霊に索麺供へたり             金田 青水

素麺をたらいで冷やす子沢山             杉山 三薬

箸握り流し素麺待てる子ら              徳永 木葉

冷素麺妻病褥の笑顔かな               廣上 正市

当季雑詠

またひとつ老舗閉店竹落葉              久保田 操

蓮の葉を回る雨つぶ池之端              星川 水兎

自販機を落ちて響きし夜のビール           今泉 而云

旧盤のだるい曲聴く夏の夜              植村 方円

三文字の暖簾くぐりて泥鰌鍋             中野 枕流

富士山に縦じま見えて夏来たる            野田 冷峰

勘違いと言い放つ君夏の果              向井 愉里

無精菜園バット胡瓜の不貞寝する           大澤 水牛

理由なく諍ふ夫婦梅雨の雷              中村 迷哲

ゆつくりとグライダー行く夏木立           溝口戸無広

《参加者》【出席12人】嵐田双歩、池村実千代、岩田千虎、植村方円、大澤水牛、金田青水、澤井二堂、篠田朗、杉山三薬、堤てる夫、中村迷哲、向井愉里。

【投句参加26人】和泉田守、伊藤健史、今泉而云、大沢反平、岡田鷹洋、岡松卓也、加藤明生、工藤静舟、久保道子、久保田操、斉藤早苗、須藤光迷、高井百子、高橋ヲブラダ、谷川水馬、徳永木葉、中嶋阿猿、中野枕流、野田冷峰、旙山芳之、廣上正市、星川水兎、増田浩志、溝口戸無広、水口弥生、横井定利。

(報告 中村迷哲)

 

 

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酔吟会第169回例会

12人が「夕立」「五輪」を詠む

春陽子「夏蒲団」「大仏の背」「ストロー」で高位占める

鷹洋「傘のチャンバラ」、三代は席題「五輪」で気を吐く

酔吟会は令和6年7月例会(通算第169回)を13日午後1時から江東区の芭蕉記念館で開催した。兼題は「夕立」、席題に岩田三代さんがまもなく開催される「五輪」を設定、雑詠を含め投句5句、選句6句(うち特選1句)の結果、首位の7点句に玉田春陽子さんの「蹴られても足元にゐる夏蒲団」と「日盛りや大仏は背の小窓開け」の2句、さらに、大澤水牛さんの「ご先祖が揃って乗れるお化け茄子」の計3句が入った。次点の5点句には玉田春陽子さんの「ストローの端を噛む癖夏の果」と岡田鷹洋さんの「夕立晴れ傘のチャンバラ帰り道」が入った。三席の4点句では、岩田三代さんが「ブレイキンなにそれ五輪夏のパリ」、「五輪待つ星に戦のやまぬ夏」、「夕立や乾きし土の濡れゆく香」と、なんと3句も入り、さらに須藤光迷さんの「轆轤ひく窓の守宮に見詰められ」も連なった。高得点句を連発する作者が多く、作者が春陽子、三代と判明するたびに、他の参加者からため息のもれる句会となった。兼題別の高点句(三点以上)は次の通り。

「夕立」

夕立晴れ傘のチャンバラ帰り道      岡田 鷹洋

夕立や乾きし土の濡れゆく香       岩田 三代

やむまでといふが夕立の罪つくり     大澤 水牛

大夕立広重の絵の人となる        廣田 可升

「五輪」

ブレイキンなにそれ五輪夏のパリ     岩田 三代

五輪待つ星に戦のやまぬ夏        岩田 三代

五輪より右派だ左派だとパリの夏     杉山 三薬

「雑詠」

蹴られても足元にゐる夏蒲団       玉田春陽子

ご先祖が揃って乗れるお化け茄子     大澤 水牛

日盛りや大仏は背の小窓開け       玉田春陽子

ストローの端を噛む癖夏の果       玉田春陽子

轆轤ひく窓の守宮に見詰められ      須藤 光迷

<句会参加者12人>岩田三代、大澤水牛、岡田鷹洋、金田青水、久保道子、杉山三薬、須藤光迷、谷川水馬、玉田春陽子、徳永木葉、廣田可升、向井愉里。

(報告 廣田可升)

 

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番町喜楽会第218回例会

 

双歩句「黙祷」最高9点、二席は水兎句「育休男子」

17人で「半夏生」「蝉」詠む

番町喜楽会は令和6年7月例会(通算第218回)を7月1日(月)、東京・九段下の千代田区生涯学習館で開催した。17人から投句があり、この夜の句会には9人が顔を揃えた。兼題は「半夏生」と「蝉」。選句6句(欠席者は5句)で句会を進めた結果、嵐田双歩さんの「黙祷の長き一分蝉時雨」が9点で一席を飾った。二席には星川水兎さんの「初めての育休男子半夏生」の6点句、三席には大澤水牛さんの「消せば来る迷惑メール梅雨じめり」の4点句が続いた。以下、3点5句、2点15句、1点30句という結果で、3点以上の高得点句が少なく、点数がばらけた結果となった。兼題別の高点句(3点以上)は下記のとおり。

「半夏生」

初めての育休男子半夏生               星川 水兎

大店の大きな暖簾半夏生               嵐田 双歩

「蝉」

黙祷の長き一分蝉時雨                嵐田 双歩

杖借りていざ初蝉の立石寺              徳永 木葉

当季雑詠

消せば来る迷惑メール梅雨じめり           大澤 水牛

トマト嫌いだけど大好きオムライス          須藤 光迷

四股ひとつ踏めぬ身となり蟾蜍            須藤 光迷

武蔵野のハケに湧く水湧く螢             中村 迷哲

《参加者》【出席9人】大澤水牛、金田青水、田中白山、須藤光迷、玉田春陽子、中村迷哲、廣田可升、前島幻水、向井愉里。【投句参加8人】嵐田双歩、斉山満智、高井百子、谷川水馬、堤てる夫、徳永木葉、星川水兎、山口斗詩子。

(報告・廣田可升)

 

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日経俳句会上期合同句会を開催

37人が「万緑」を詠む

反平句「病窓万緑」が最高点、二席に戸無広句「光堂」

日経俳句会は6月19日(水)、内神田の日経広告研究所会議室で令和6年の上期合同句会(通算38回)を開いた。今年は梅雨入りが大幅に遅れているものの、前日は大雨で涼しかった。当日は嘘のように晴れ上がり、戻ってきた暑さの中、15人が出席し和やかな句会となった。兼題の「万緑」に37人から110句が集まり、事前選句の結果、大沢反平さんの「病窓に万緑がある生きてゐる」が9点を獲得、一席に輝いた。二席には溝口戸無広さんの「万緑の更に奥なる光堂」が8点で、三席には星川水兎さんの「万緑や我も緑になる日まで」、和泉田守さんの「厚み増す薬手帳や六月尽」、玉田春陽子さんの「ごきげんな風に干さるるアロハシャツ」が7点で並んだ。また、5点句には髙橋ヲブラダさん「古本をメルカリに出し梅雨に入る」や和泉田さん、溝口さんの句が入り、同じ作者の高点句が目立った。以下、4点8句、3点13句、2点19句、1点24句だった。

句会終了後、暑気払いを兼ねた懇親会が開かれ、別会場から駆けつけた高井百子さんも加わり、グラスを手に会員同士の親睦を深めた。兼題別の高点句(3点以上)は以下の通り。

「万緑」

病窓に万緑がある生きてゐる           大沢 反平

万緑の更に奥なる光堂              溝口戸無広

万緑や我も緑になる日まで            星川 水兔

万緑に鉄橋響き渡りけり             溝口戸無広

万緑や神の気配の熊野道             中村 迷哲

万緑や土中に潜む貝塚層             廣田 可升

万緑をずいと真っ赤なケーブルカー        大澤 水牛

万緑の中へすたすた山頭火            金田 青水

万緑に深き傷あり地震津波            須藤 光迷

万緑やトトロひょっこり顔を出す         徳永 木葉

万緑の真っただ中へティーショット        中村 迷哲

万緑へ一日二便のバス降りる           廣田 可升

「当季雑詠」

厚み増す薬手帳や六月尽             和泉田 守

ごきげんな風に干さるるアロハシャツ       玉田春陽子

寛解の妻寝息たて夏まひる            和泉田 守

古本をメルカリに出し梅雨に入る         髙橋ヲブラダ

ラムネ抜く昭和の音の響きあり          加藤 明生

病得て写生を友に茄子胡瓜            須藤 光迷

夏や子の自立か無口始まりぬ           高井 百子

新茶汲む妻の手元の若やげり           中村 迷哲

走るより速く耳かく梅雨の犬           星川 水兔

昼顔や巣鴨に今もちんどん屋           星川 水兔

父の日や昼酒少しもう少し            嵐田 双歩

ひたひたと過去歩きゆく木下闇          岩田 三代

路地裏の匂ひ懐かし枇杷盛る           久保田 操

何ごとも笑ひ飛ばして立葵            谷川 水馬

素足たのしむペディキュアは海の色        玉田春陽子

夜泣きの子抱けば卯の花腐しかな         徳永 木葉

雨の路地ホルンの楽隊カタツムリ         中沢 豆乳

《参加者》【出席15人】嵐田双歩、池村実千代、今泉而云、植村方円、大澤水牛、金田青水、篠田朗、杉山三薬、玉田春陽子、堤てる夫、中野枕流、中村迷哲、廣田可升、星川水兎、向井愉里。【投句参加23人】和泉田守、伊藤健史、岩田三代、大沢反平、岡田鷹洋、岡松卓也、加藤明生、工藤静舟、久保道子、久保田操、澤井二堂、須藤光迷、高井百子、高橋ヲブラダ、谷川水馬、徳永木葉、中沢豆乳、中嶋阿猿、旙山芳之、廣上正市、藤野十三妹、溝口戸無広、横井定利。

(報告 嵐田双歩)

 

 

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番町喜楽会第217回例会

青水句「夏の雲」が最高5点、二席に白山句と水兎句

「夏の川」と「十薬」を詠む

番町喜楽会は令和6年6月例会(第217回)を6月1日(土)、東京・九段下の千代田区生涯学習館で開催した。18人から投句があり、9人が顔を揃えた。兼題は「夏の川」と「十薬」。選句6句(欠席者は5句)で句会を進めた結果、金田青水さんの「何しとる死ぬの待っとる夏の雲」が5点でトップ、二席には田中白山さんの「十薬や初転勤の一軒家」と星川水兎さんの「十薬や漬物石の捨て置かれ」が4点で続いた。以下、3点10句、2点17句、1点22句という結果だった。兼題別の高点句(3点以上)は次の通り。

「夏の川」

夕まずめ網うつ老父夏の川              池内 的中

夏川や女人高野へ太鼓橋               谷川 水馬

少女らの素足のびやか夏の川             山口斗詩子

「十薬」

十薬や初転勤の一軒家                田中 白山

十薬や漬物石の捨て置かれ              星川 水兎

十薬や母校はとうに廃校に              向井 愉里

当季雑詠

何しとる死ぬの待っとる夏の雲            金田 青水

ひつじぐさ咲くやシャブリのコルク抜く        大澤 水牛

明易の夫婦は寡黙散歩道               高井 百子

浜風の旨味ぞ鯵の一夜干し              玉田春陽子

カーテンの光濾過して薄暑かな            玉田春陽子

時の日や光年といふ時間軸              徳永 木葉

こだわりの固形石鹼夏衣               星川 水兎

《参加者》【出席者9人】池内的中、大澤水牛、金田青水、田中白山、谷川水馬、玉田春陽子、廣田可升、前島幻水、向井愉里。【投句参加9人】嵐田双歩、斉山満智、須藤光迷、高井百子、堤てる夫、徳永木葉、中村迷哲、星川水兎、山口斗詩子。

(報告 谷川水馬)

 

 

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日経俳句会第229回例会

百子句「衣替」最高14点、二席に卓也句、三席に光迷句

38人が「葛餅」「葉桜」詠む

日経俳句会は令和6年の5月例会(通算229回)を5月15日(水)に鎌倉橋の日経広告研究所会議室で開いた。ケガなどで欠席が相次ぎ、出席は見学者を含め12人にとどまったが、高点句が多く盛り上がった句会となった。体調を崩していた堤てる夫さんが4ヵ月ぶりに元気な姿を見せ、句座に加わった。兼題は「葛餅」と「葉桜」。38人から114句の投句があり、6句選(欠席は5句)の結果、高井百子さんの「母の手に似る手の皺や衣替」が14点と圧倒的な支持を集めた。二席9点には岡松卓也さんの「くろもじの先を葛餅逃げ回る」が続き、三席8点には須藤光迷さんの「葉桜や老には老の矜恃あり」が入った。また6点句には大澤水牛さんの「医者通ひ葉桜日々に色を増し」をはじめ4句が並び、5点5句、4点6句、3点12句と高点句が30句にのぼった。このほか2点16句、1点30句だった。この日は入会希望で日経OBの増田浩志さんが見学に訪れ、選句に加わった。兼題別の高点句(3点以上)は以下の通り。

「葛餅」

くろもじの先を葛餅逃げ回る             岡松 卓也

木漏日や吉野葛餅うすにごり             須藤 光迷

旧交を葛餅に蜜掛けながら              嵐田 双歩

酒も呑む葛餅も喰ふ師匠かな             谷川 水馬

葛餅の武骨な色も味も江戸              水口 弥生

ぷるるんと葛餅揺れて雲流る             岩田 三代

くず餅の講釈長し奈良生れ              廣上 正市

葛餅や病友やうやく快方へ              大沢 反平

葛餅の少し透かせて皿の青              谷川 水馬

蜜なめて葛餅残す孫娘                堤 てる夫

「葉桜」

葉桜や老には老の矜恃あり              須藤 光迷

医者通ひ葉桜日々に色を増し             大澤 水牛

葉桜やきらきら光る隅田川              嵐田 双歩

葉桜や上野は緑の風を呼び              澤井 二堂

葉桜や白壁揺るる武家屋敷              加藤 明生

華やぎの去って葉桜影深く              久保田 操

葉桜や洒々落々と孫連れて              谷川 水馬

葉桜もひと目千本風青し               中沢 豆乳

葉桜や足取り軽く杖の人               中嶋 阿猿

葉桜の勢い花の記憶消す               向井 愉里

葉桜や訪ふ人も無き風の音              横井 定利

当季雑詠

母の手に似る手の皺や衣替              高井 百子

ナナハンの縦一列に風薫る              植村 方円

病窓に光のはねる五月かな              横井 定利

点滴の刻む命や五月闇                岡田 鷹洋

キャンパスの杜を貫き五月来る            溝口戸無広

老木も若木もすべて柿若葉              中村 迷哲

天秤の揺れに任せて金魚売り             野田 冷峰

活鯵と出刃包丁の三十度               伊藤 健史

自販機でしばし休憩つばくらめ            旙山 芳之

《参加者》【出席12人】嵐田双歩、今泉而云、大澤水牛、金田青水、澤井二堂、篠田朗、杉山三薬、堤てる夫、中村迷哲、星川水兎、向井愉里、(見学)増田浩志。【投句参加27人】池村実千代、和泉田守、伊藤健史、岩田三代、植村方円、大沢反平、岡田鷹洋、岡松卓也、加藤明生、工藤静舟、久保道子、久保田操、須藤光迷、高井百子、高橋ヲブラダ、谷川水馬、徳永木葉、中沢豆乳、中嶋阿猿、中野枕流、野田冷峰、旙山芳之、廣上正市、藤野十三妹、溝口戸無広、水口弥生、横井定利。

(報告 中村迷哲)

 

 

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酔吟会第168回例会

兼題「夏めく」と席題「嫉妬」

「母の日」を詠んだ愉里さんが金的

5月11日(土)午後1時から深川・芭蕉記念館で第168回酔吟会例会が行われた。この日の兼題は「夏めく」で、恒例の席題は徳永木葉さん出題の「嫉妬・妬み」。出席者は9人と少なかったが、脳出血リハビリ中の岡田鷹洋さんが「脳の訓練のため特別投句参加」し、参加10人・投句総数50句の例会となった。選句6句で句会を進めた結果、向井愉里さんの雑詠句「母の日や母でも子でもあり多忙」が9点獲得で断然の天位に輝いた。二席は6点で席題句の「薫風に妬みそねみを吹き流し」(水牛)、三席は同じく席題句「嫉み合ふ式部と納言卯波立つ」(木葉)と雑詠「かたまって出番待つかに踊子草」(春陽子)が5点で並んだ。以下、4点1句、3点4句、2点6句、1点10句だった。3点以上の作品は以下の通り。

「夏めく」

すらり脚ずんぐり脚や夏めきぬ        大澤 水牛

「嫉妬・妬み」

薫風に妬みそねみを吹き流し         大澤 水牛

嫉み合ふ式部と納言卯波立つ         徳永 木葉

夜濯ぎや嫉妬軽々流したり          金田 青水

妬むほど隣の畑の整ひて           向井 愉里

「当季雑詠」

母の日や母でも子でもあり多忙        向井 愉里

かたまって出番待つかに踊子草        玉田春陽子

菜園の衛兵交替葱坊主            大澤 水牛

若葉風監視カメラの見え隠れ         玉田春陽子

《参加者》嵐田双歩、岩田三代、大澤水牛、金田青水、杉山三薬、谷川水馬、玉田春陽子、徳永木葉、向井愉里。(特別投句参加)岡田鷹洋。

(報告 大澤水牛)

 

 

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番町喜楽会第216回例会

17人参加「扇」と「初鰹」を詠む

須藤光迷さんの鯉幟句が9点でトップ

番町喜楽会は令和6年5月例会(通算第216回)を5月6日、東京・九段下の千代田区生涯学習館で開催した。17人から投句があり、8人が顔を揃えた。兼題は「扇」と「初鰹」。選句は6句(欠席者は5句)で句会を進めた結果、須藤光迷さんの「徴兵の無き国を生き鯉幟」が9点で一席を飾った。二席には中村迷哲さんの「幕あいに扇子波立つ演舞場」の6点句、三席には廣田可升さんの「長考の閉じては開く扇かな」の5点句が続いた。以下、4点句が4句、3点句が6句、2点句が10句、1点句が19句という結果であった。この日の句会には、板橋宿吟行の折りにケガをされた田中白山さんが久々にお元気な姿を見せられ、お世話になった皆さんにと、上野広小路の老舗“うさぎや”のどら焼きが参加者にふるまわれた。

「扇」

幕あいに扇子波立つ演舞場             中村 迷哲

長考の閉じては開く扇かな             廣田 可升

激論も泥酔も見た古扇               金田 青水

扇閉じ宴の余韻持ち帰る              斉山 満智

パタパタと扇子であおぐ汗と嘘           斉山 満智

香ぐはしき扇の微風隣りより            前島 幻水

「初鰹」

酌み交はす土佐の地酒や初鰹            廣田 可升

焼き藁の炎爆ぜるや初鰹              高井 百子

「雑詠」

徴兵の無き国を生き鯉幟              須藤 光迷

ただ歩く新緑の中まだ生きる            山口斗詩子

雨戸繰る音も軽やか夏来る             嵐田 双歩

見詰めあい動かぬ妻と青蛙             須藤 光迷

弁慶も幼な顔なり五月雛              玉田春陽子

≪参加者≫【出席者8人】大澤水牛、金田青水、田中白山、玉田春陽子、中村迷哲、廣田可升、前島幻水、向井愉里。【投句参加9人】嵐田双歩、斉山満智、澤井二堂、須藤光迷、高井百子、谷川水馬、堤てる夫、徳永木葉、山口斗詩子。

(報告・廣田可升)

 

 

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向島百花園で番町連句会開催

4月20日土曜日、墨田区の向島百花園で番町喜楽会の伝統行事の一つである連句会を行った。連句常連メンバーの10人が汗ばむ陽気の下、隅田川歩道橋を渡り、三囲神社はじめ向島墨堤散歩を経て、百花園内の「御成の間」で『春惜しむ』と題した歌仙36句一巻を巻き収めた。発句は捌き手の水牛が百花園に来る途中詠んだ「墨堤の句友十人春惜しむ」とし、席順に従って詠みつないで行く「膝送り」方式で歌仙三十六句一巻を巻いた。

番町連句歌仙「春惜しむ」

1. 墨堤の句友十人春惜しむ        大澤 水牛

2.  猫の子横切る三囲の庭        廣田 可升

3. 春日傘鉢の水呑む鳥のいて       金田 青水

4.   遊歩道には鈴蘭の花         向井 愉里

5.  月涼し岸辺にゆるる舫ひ舟       玉田春陽子(月)

6.    贅尽したる手造り弁当        嵐田 双歩

(ウ)

7.  七夕にインバウンドのざわめけり      須藤 光迷

8.    外人の問ふ獺祭忌とは         今泉 而云

9. いざなはれ秋七草の百花園        谷川 水馬

10.   力車の上のレンタル和服        前島 幻水

11. なけなしでおごりおごられ除夜の鐘      可升

12.   空徳利に若水を汲む            水牛

13. 佐保姫のスカイツリーにまつはれり      愉里

14.   長命寺よりあふぐ春月           青水(月)

15. 誕生は昭和十年遠蛙             双歩

16.   まだ現役よねじりはちまき         春陽子

17. 四股踏んでどすこいどすこい花の散る     而云(花)

18.   乗込鯛の鍋をはみ出す           光迷

(ナオ)
19. 隣りよりたけのこ飯のおすそ分け      幻水

20.  谷中千駄木若葉風吹く          水馬

21. 築地塀切れたる路地にあの子待つ      水牛

22.  明日またねに馬追の声          可升

23. 右ひだり桟敷のなかを阿波踊        青水

24.  母の形見の秋袷だす           愉里

25. 突出しは今日も枝豆縄のれん        春陽子

26.  やけに身に入む石橋の上         双歩

27. 湯上りの夕餉ゆったり雪の宿        光迷

28.  どてら羽織りて大鯉を見に        而云

29. 地下街に迷ひて帰宅冬の月         水馬(月の座)

30.  タワーマンション階数はさて       幻水

(ナウ)

31. 朝焼けの干潟狭しと百千鳥         可升

32.  寝坊はだめとやかましきこと       水牛

33. 黄砂降り目薬入れる旅支度         愉里

34.  流水の里クレソン茂る          青水

35. ハンバーグ花片も添へテラス席       双歩(花)

36.  競ふ大声過疎のイベント         春陽子(挙句)

 

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日経俳句会第228回例会

一席は十三妹句「痛き色」の13点

38人が「春惜しむ」「躑躅」詠む

日経俳句会は4月17日(水)、神田・鎌倉橋の日経広告研究所会議室で4月例会(通算228回)を開いた。これまでの花冷えの日々から一変、この日は、一気に夏のような気温になって、身体が反応できないほどの夕べ。熱心な句友12人が集まって、気温に負けない暑い議論が繰り広げられた。

「春惜しむ」と「躑躅」の兼題に、38人から112句の投句があり、6句選(欠席は5句)の結果、一席は13点と断トツの人気を集めた藤野十三妹さんの「病む身には痛き色なり紅つつじ」だった。二席は須藤光迷さんの「来世また連れ添いゆかん花筏」が7点で続き、三席6点句は水兎句「練切の小さき花びら春惜しむ」、三代句「絶壁を穿ちて紅き山躑躅」、方円句「満開の桜車内をどよめかす」、迷哲句「ひび割れし棚田潤す穀雨あり」の4句が並んだ。以下、5点4句、4点6句、3点7句、2点24句、1点30句だった。兼題別の高点句(3点以上)は以下の通り。

「春惜しむ」

練切の小さき花びら春惜しむ             星川 水兎

惜春や宵のカーテン閉めかねる            溝口戸無広

春惜しむ免許返納迷ふ日々              中嶋 阿猿

惜春や明治男の消えたりと              大澤 水牛

薹のたつ庭のルッコラ春惜しむ            岡松 卓也

淡き陽に淡き浮雲春惜しむ              久保田 操

向き合ひて言葉少なに春惜しむ            中野 枕流

「躑躅」

病む身には痛き色なり紅つつじ            藤野十三妹

絶壁を穿ちて紅き山躑躅               岩田 三代

植込のつつじ昭和の富士銀行             嵐田 双歩

山裾に刺繍編み込む躑躅かな             溝口戸無広

テーブルのやうに真四角花躑躅            星川 水兎

つつじ垣四角四面のきゅうきゅうと          廣上 正市

当季雑詠

来世また連れ添いゆかん花筏             須藤 光迷

満開の桜車内をどよめかす              植村 方円

ひび割れし棚田潤す穀雨あり             中村 迷哲

眠る子のズシリと腕に花疲れ             嵐田 双歩

NHK「坂本龍一ラストデーズ」観て

桜散るまさにその時指タクト             堤 てる夫

鰊来ぬ浜に名残の御殿かな              岩田 三代

様変はる街に変はらぬ桜かな             久保田 操

小座敷に残り香ゆかし桜餅              中沢 豆乳

花柄の杖の見上げる夕桜               星川 水兎

紫木蓮拳ひらくよ今日佳き日             水口 弥生

《参加者》【出席12人】嵐田双歩、今泉而云、植村方円、大澤水牛、岡田鷹洋、金田青水、澤井二堂、篠田朗、杉山三薬、中村迷哲、星川水兎、向井愉里。【投句参加26人】池村実千代、伊藤健史、岩田三代、大沢反平、岡松卓也、加藤明生、工藤静舟、久保道子、久保田操、斉藤早苗、須藤光迷、高井百子、高橋ヲブラダ、谷川水馬、堤てる夫、徳永木葉、中沢豆乳、中嶋阿猿、中野枕流、野田冷峰、旙山芳之、廣上正市、藤野十三妹、溝口戸無広、水口弥生、横井定利。

(報告 嵐田双歩)

 

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