番町喜楽会第222回例会を開催

天に光迷「造船所」、地に可升「書店」

16人が「文化の日」と「鯔」を詠む

番町喜楽会は令和6年11月例会(通算第222回)を4日午後6時から東京・九段下の千代田区生涯学習館で開催した。秋晴れの好天となったものの、三連休の行楽日和とあってか、投句16人のうち出席は9人にとどまり、いささか寂しい感じだった。兼題は「文化の日」と「鰡(ぼら)」。雑詠を含め投句5句、選句6句(欠席者は5句)の結果、首位に須藤光迷さんの6点句「造船所失せし運河や鰡飛べり」、次点に廣田可升さんの5点句「またひとつ消える書店や文化の日」が入った。三席は4点で7句が並んだ。3点も7句あった。投句総数は80句だった。兼題別の高点句(3点以上)は次の通り。

「文化の日」

またひとつ消える書店や文化の日      廣田 可升

箸で食べるペペロンチーノ文化の日     廣田 可升

駅ピアノふと足止める文化の日       斉山 満智

歌も絵も下手の横好き文化の日       須藤 光迷

穏やかに生きる幸せ文化の日        徳永 木葉

デジタルの世や虚も実も文化の日      前島 幻水

「鰡(ぼら)」

造船所失せし運河や鰡飛べり        須藤 光迷

鰡飛ぶや日に一便の連絡船         嵐田 双歩

あきらめのつかぬ夕暮れ鰡が跳ぶ      斉山 満智

鰡飛んで都会の川の暮れにけり       玉田春陽子

鰡の群見てをり橋の人の群         嵐田 双歩

「当季雑詠」

障子貼る妻の小言を食らいつつ       須藤 光迷

から松の散るや十勝に雪近し        徳永 木葉

詐欺かしら電話の鳴りてそぞろ寒      山口斗詩子

アメリカの枷解けノーベル平和賞      金田 青水

奥多摩の宿のひと品新豆腐         中村 迷哲

【参加者】<句会出席者9人>大澤水牛、金田青水、須藤光迷、高井百子、田中白山、玉田春陽子、堤てる夫、中村迷哲、向井愉里。<投句参加者7人>嵐田双歩、斉山満智、谷川水馬、徳永木葉、廣田可升、前島幻水、山口斗詩子。

(報告 須藤光迷)

 

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吟行報告・猫招く世田谷をトラムで巡る

いつまで経っても本格的秋の来ない10月19日(土)、番町喜楽会、日経俳句会合同の「世田谷線界隈吟行」を行った。今年3月以来7ヶ月ぶりの吟行で、参加者は11名(嵐田双歩、今泉而云、岩田千虎、大澤水牛、金田青水、須藤光迷、玉田春陽子、中村迷哲、水口弥生、向井愉里、杉山三薬)。午後1時、東急世田谷線下高井戸駅に集合。最初の訪問先、招き猫で有名な豪徳寺目指して乗車。世田谷線は、都電荒川線と並ぶ東京の人気トラム。車体に招き猫をペイントしたり、猫の手吊り革を取り入れたりと、猫観光にも熱心。三つ目の駅、宮の坂で下車。まず、駅構内に展示してある古い世田谷線車両を見学する。車両に乗り込んだ一同、子供の頃に乗った都電、市電を思い出したか、遠い目でしばし回想の時間を過ごす。

振り出しはレトロな電車秋吟行         光迷

身に入むやトラムの座席譲られて        而云

宮の坂駅から5分ほど歩いて豪徳寺。招き猫由来略記「鷹狩りに出た彦根藩当主井伊直孝が、とある寺にさしかかったところ、門前の猫が手招きしているように見えた。寺に入り休んでいると突然の雷雨。猫のおかげで濡れずに済んだ」というお話。今、豪徳寺に鎮座している招き猫は、世間一般のような小判は抱えていない。お金より人の縁を大切にすることらしい。この寺、招き猫に呼び寄せられたのか、とにかく外国人観光客の姿が目立つ。境内に何百と並べられた猫との記念写真の掛け声も、ハイチーズ、ヘイ##、ハーイ??、さまざまな言語が飛び交う。招福殿には奉納の招き猫と猫の絵馬が所狭しと並べられ、インスタ映えする光景。絵馬の中には英語やアラビア語らしい文字も混じり、国際色豊かだ。方丈で売られている招き猫の購入券が自動販売機なのは、外国人に分かりやすいようにだろう。

秋うらら猫が客招ぶ豪徳寺           三代

自販機で招き猫売る秋の寺           水牛

秋吟行土産に小さき招き猫           春陽子

寺奥に井伊家の墓所がある。中でも有名なのは、安政の大獄を主導し、桜田門外の変で暗殺された井伊直弼の墓。その近くで、吟行メンバー一同、水牛さんによる、井伊家をめぐる歴史解説に聞き入る。境内で、ひと足遅れで駆けつけた水口弥生さんと合流。猫看板をバックに嵐田プロによる記念撮影。続いて、徒歩数分の世田谷城址公園に向かう。元々吉良家の屋敷だったというから、ここでも歴史上の名が顔をだす。でも、それは看板の説明だけで、遺跡らしいものは、ほとんど残っていない。赤土が剥き出しの小山を子供達が駆け回る。老人一行、足元が悪い中律儀に歩いて、木の実拾いなどを楽しんだ。地価の高い世田谷のど真ん中にこんな荒れ遺跡。もったいないような気がする。

世田谷に銀杏どんぐり秋探し          愉里

戦国の小さき城跡木の実降る          迷哲

30度近い気温のなか、次の目的地、松蔭神社へおよそ15分で到着。松陰神社の由来は、安政の大獄で獄死した吉田松陰の遺骨を、千住の小塚原から、長州藩下屋敷のあったこの地に改葬したことから、この名の神社が生まれた。土曜日の夕方、我々の他に訪れる人は意外に少ない。境内に設けられた松下村塾の実物大建物もひっそりと佇んでいた。少し離れた松陰の墓を訪れたのは我々だけ。

秋深し松陰享年三十歳             青水

松陰の教えに背き蜜柑もぐ           双歩

次いで、光迷さん推奨の「目青(めあお)不動尊」に向かう。世田谷線終点の三軒茶屋で下車。駅近くにある最勝寺が、別名「目青不動尊」。五色不動のひとつだが訪れる人もない、ひっそり寺。当日三軒茶屋で行われていた「大道芸祭り」の喧騒とは別世界。赤青黄白黒の五色不動といっても、全部知っている人は少ないだろう。目黒の秋刀魚、目白の闇将軍と、白と黒は地名として根を張ったが、他の三色はほぼ無名。寺が商売ベタだったのかも。この目青不動尊で本日の訪問日程は終了。先を急いだせいで、「蕎麦屋石はら」での反省会予約時間まで一時間も余ってしまった。皆で入れる飲食店を探すうち、迷哲さんが横丁の小さな喫茶店を見つけてしばし休憩。予約時間の午後5時、全員蕎麦屋へ移動、打ち上げの食事会が始まる。小粋なつまみと蕎麦で7時過ぎまで歓談した。

暑い秋レトロ喫茶に脚和む           三薬

秋時雨蕎麦懐石の果つる頃           弥生

世田谷線吟行の句会は、いつものようにメール方式で開催。参加者がそれぞれ3句を投句し、5句選の結果、中村迷哲さんの「戦国の小さき城跡木の実降る」が6点を得て一席となった。二席5点には須藤光迷さんの「振り出しはレトロな電車秋吟行」が続き、三席4点には而云、春陽子、弥生さんの3句が並んだ。

(報告 杉山三薬)

 

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日経俳句会第233回例会

迷哲句「子らの声」が10点、二席は木葉句・双歩句が並ぶ

「秋深し」「小鳥来る」を詠む

日経俳句会は10月16日(水)、神田・鎌倉橋の日経広告研究所会議室で10月例会(通算233回)を開いた。10月になっても夏日が続き、この日も曇天ながら蒸し暑い夕刻。急に来られなくなった人があって出席者は9人と少なかったが、坂部さんという現役の方が見学に来てくれて選句に参加、計10人の句会となった。「秋深し」と「小鳥来る」の兼題に、34人から102句の投句があり、6句選(欠席は5句)の結果、一席は中村迷哲さんの10点句「子らの声聞こえぬ団地小鳥来る」、二席は嵐田双歩さんの「太陽の匂ひ束ねて今年藁」と徳永木葉さんの「吊るし鮭鬼の貌して風の中」が9点で並んだ。三席は須藤光迷さんの8点句「尻撫でて行く人もあり青蜜柑」だった。以下、7点2句、6点3句、5点1句、4点6句と特定の句に人気が集まった。その他、3点7句、2点21句、1点25句だった。向井愉里さんの紹介で見学に見えた坂部富士子さんは、日経プラザ&サービスの社員で、現在は日経HR本部に出向中。この日は選句に参加してもらった。兼題別の高点句(3点以上)は以下の通り。

「秋深し」

秋深し向う三軒未亡人                藤野十三妹

刈られたる越後の広さ秋深し             溝口戸無広

ごみ出しの猫背の老爺秋深し             谷川 水馬

秋深し明かりの漏れる製本所             徳永 木葉

秋深し荒砥すべらす鍬と鎌              廣上 正市

秋深し他人の空似とすれ違ひ             植村 方円

秋深し煎餅よりも蒸し饅頭              澤井 二堂

風干しの鮎の色錆び秋深し              中沢 豆乳

秋深し仏の指の少し反り               岩田 千虎

秋深しころんじやだめよころぶなよ          横井 定利

「小鳥来る」

子らの声聞こえぬ団地小鳥来る            中村 迷哲

小鳥来て旅の誘いの二つ三つ             中嶋 阿猿

小鳥来る百年蔵の喫茶店               星川 水兎

小鳥来る万年筆をそつと置く             溝口戸無広

小鳥来る知覧の空へ今日もまた            加藤 明生

当季雑詠

太陽の匂ひ束ねて今年藁               嵐田 双歩

吊るし鮭鬼の貌して風の中              徳永 木葉

尻撫でて行く人もあり青蜜柑             須藤 光迷

金継ぎの碗の温もり秋時雨              中嶋 阿猿

主老いて荒れたる庭や薮枯らし            杉山 三薬

秋さぶや隣家の窓の開かぬまま            廣上 正市

虫の音に包まれてゐる家路かな            溝口戸無広

秋時雨ぽつぽつ語る通夜の席             向井 愉里

《参加者》【出席10人】嵐田双歩、大澤水牛、金田青水、坂部富士子(見学)、篠田朗、杉山三薬、堤てる夫、中村迷哲、星川水兎、向井愉里。【投句参加25人】池村実千代、伊藤健史、岩田千虎、植村方円、大沢反平、岡田鷹洋、岡松卓也、加藤明生、久保道子、久保田操、澤井二堂、須藤光迷、高井百子、高橋ヲブラダ、谷川水馬、徳永木葉、中沢豆乳、中嶋阿猿、中野枕流、旙山芳之、廣上正市、藤野十三妹、溝口戸無広、水口弥生、横井定利。  (報告 嵐田双歩)

 

 

 

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番町喜楽会第221回例会

18人参加、「秋冷」と「新酒」を詠む

秋霖吹き飛ばす佳句あまた

番町喜楽会は令和6年10月例会(通算第221回)を5日午後5時50分から東京・九段下の千代田区生涯学習館で開催した。10月に入っても1日、2日と30度が続くなんとも異常な令和6年だが、3日から雨が降り始め、一転涼しくなった。5日も引き続き雨。「秋霖(しゅうりん)」である。しかしもともと秋霖は9月のものであるはず。今年は夏がひどく長引いたために、秋雨前線が出張るのがずれてしまったようだ。そういえば曼珠沙華も秋彼岸には咲かず、今頃になって満開になっている。政界も「とてもなれないだろう」と言われ続けてきたイシバさんが大逆転で総理大臣になったし、県議会が全会一致で解職決議案を通して辞めさせたパワハラ兵庫県知事が出直し選挙にしゃあしゃあと出馬、もしかしたら当選してしまうかも、などと言われている。世の中なんともおかしくなってきた。この夜の句会の出席者は9人とこじんまりだったが、佳句がたくさん出て、合評会もにぎやかなものとなった。兼題は「秋冷」と「新酒」。投句は18人から89句あり、選句6句で句会を進めた結果、天の位には中村迷哲さんの「秋冷や見知らぬ駅に降りる通夜」が9点獲得で座り、地の位には須藤光迷さんの「悔しかろ新酒つくれぬ能登の蔵」が7点で治った。人の位は5点で向井愉里さんの「久留里まで角打列車新酒酌む」と迷哲さんの「なぜ能登や天に問いたき秋出水」の2句が選ばれた。続く4点句には廣田可升さんの「秋冷の朝五枚刃の剃り心地」と斉山満智さんの「気に入りのぐい呑み出して新酒かな」の2句が並んだ。以下3点7句、2点13句、1点19句と続いた。                       兼題別の高点句(3点以上)は次の通り。

「秋冷」

秋冷や見知らぬ駅に降りる通夜    中村 迷哲

秋冷の朝五枚刃の剃り心地      廣田 可升

秋冷やそろそろできる猫団子     斉山 満智

秋冷を連れて下界へケーブルカー   中村 迷哲

秋冷の鍋を揺らして粉ふきいも    星川 水兎

秋冷や寒い暑いと老夫婦       田中 白山

「新酒」

悔しかろ新酒つくれぬ能登の蔵    須藤 光迷

久留里まで角打列車新酒酌む     向井 愉里

気に入りのぐい呑み出して新酒かな  斉山 満智

新酒酌む椅子の揃はぬ隅の席     玉田春陽子

ありがたや新酒を交はす友のあり   澤井 二堂

「当季雑詠」

なぜ能登や天に問いたき秋出水    中村 迷哲

乳がんの疑い晴れたりカンナ燃ゆ   山口斗詩子

【参加者】(出席9名)大澤水牛、金田青水、須藤光迷、田中白山、玉田春陽子、中村迷哲、廣田可升、前島幻水、向井愉里。(投句参加9名)嵐田双歩、斉山満智、澤井二堂、高井百子、谷川水馬、堤てる夫、徳永木葉、星川水兎、山口斗詩子。 (報告大澤水牛)

 

 

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日経俳句会第232回例会

 

35人参加、「冷やか」と「唐辛子」を詠む

光迷句「別姓」が最高10点、二席7点に4人が並ぶ

日経俳句会は令和6年の9月例会(通算232回)を9月18日(水)夕に鎌倉橋の日経広告研究所会議室で開いた。昼間は残暑が厳しく、出席は11人にとどまったが。高点句が多く充実した句会となった。兼題は「冷やか」と「唐辛子」。35人から105句の投句があり、6句選(欠席は5句)の結果、須藤光迷さんの「別姓に何の支障が秋刀魚焼く」が10点を集め一席となった。二席7点には中嶋阿猿さんの「秋冷の谷より満ちて奥箱根」と溝口戸無広さんの「冷やかや小樽硝子は海の色」、大澤水牛さんの「荒庭にあかあかとあり鷹ノ爪」、横井定利さんの「白湯一杯飲んで出かける敬老日」の4句が並んだ。三席6点には嵐田双歩さんの「冷やかや船屋に寄する波の音」が入ったほか、5点3句、4点8句、3点13句と続き、高点句が30句を数えた。2点は16句、1点は24句だった。なお暑さで体調を崩し投句を休んでいた今泉而云さんが久々に顔を出し、選句に加わった。兼題別の高点句(三点以上)は以下の通り。

「冷やか」

秋冷の谷より満ちて奥箱根              中嶋 阿猿

冷やかや小樽硝子は海の色              溝口戸無広

冷やかや船屋に寄する波の音             嵐田 双歩

冷やかな畳にごろり旅帰り              谷川 水馬

手水舎に掬ふ一勺冷やかに              久保田 操

カウベルに夕冷えまさる山の牧            徳永 木葉

冷やかやガラリ変わったお品書            中沢 豆乳

不用意に座るベンチの冷ゆるかな           水口 弥生

冷やかや芭蕉坐像の隅田風              横井 定利

「唐辛子」

荒庭にあかあかとあり鷹ノ爪             大澤 水牛

干し上げて赤に紅増す唐辛子             篠田  朗

唐辛子吊るし山家の道しるべ             杉山 三薬

朝市や婆の商う鷹の爪                須藤 光迷

知事殿に土産どっさり唐辛子             中沢 豆乳

生き難き世にピンと立つ唐辛子            伊藤 健史

箸で退けやっぱり食べる唐辛子            植村 方円

唐辛子入りの瓜漬け成田山              金田 青水

信濃では蕎麦に南蛮磯五郎              高井 百子

当季雑詠

別姓に何の支障が秋刀魚焼く             須藤 光迷

白湯一杯飲んで出かける敬老日            横井 定利

秋うららお風呂沸いたと電子音            嵐田 双歩

もういいよもういいよねと秋の蝉           久保田 操

写経終へ出でたる庭に秋の蝶             谷川 水馬

秋めくや肺の奥まで風通す              植村 方円

アサギマダラ見よ我が庭の藤袴            高井 百子

雨ごとに色くすみゆく秋の森             溝口戸無広

猛暑日がにじり寄ってく秋彼岸            杉山 三薬

廃校の軒先借りて柿吊す               中沢 豆乳

銀河濃しつまらぬ悩み薄くなる            旙山 芳之

脳外科のCTセーフ夏終る              藤野十三妹

《参加者》【出席11人】嵐田双歩、池村実千代、今泉而云、大澤水牛、金田青水、澤井二堂、篠田朗、杉山三薬、堤てる夫、中村迷哲、向井愉里。【投句参加25人】伊藤健史、岩田千虎、植村方円、大沢反平、岡田鷹洋、岡松卓也、加藤明生、久保道子、久保田操、須藤光迷、高井百子、高橋ヲブラダ、谷川水馬、徳永木葉、中沢豆乳、中嶋阿猿、中野枕流、野田冷峰、旙山芳之、廣上正市、藤野十三妹、星川水兎、溝口戸無広、水口弥生、横井定利。

(報告 中村迷哲)

 

 

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酔吟会第170回例会

 

11人で「身に入む」「稲・米」を詠む

首位7点は席題出題者の三薬さん、次点に4人が並ぶ

酔吟会は令和6年の9月例会(通算第170回)を14日午後1時から江東区の芭蕉記念館で開催した。兼題は「身に入む」、杉山三薬さんから出題された席題は「稲もしくは米」。雑詠を含め投句5句、選句6句(うち特選1句)の結果、首位の7点句に杉山三薬さんの「そぞろ寒娘が米を借りにくる」が入り、席題出題者の面目躍如と大喜び。次点の6点句は、大澤水牛さんの「身に入むや組立トイレ講習会」、嵐田双歩さんの「爪割れて齢身に入む夕べかな」、向井愉里さんの「身に入むやひと月先の再検査」、玉田春陽子さんの「稲刈りて風の見えなくなりにけり」と4句も並ぶ盛況。三席5点句には廣田可升さんの「身に入むや類想類句といふ奈落」、4点句には金田青水さんの「蕎麦屋にて頼む残暑のカツカレー」と続いた。高得点9句のうち、半数以上の5句が兼題の「身に入む」の句となった。会員の高齢化とともに、日常的に身に入む経験が多くなったことの反映だろうか。兼題別の高点句(3点以上)は次の通り。

「身に入む」

身に入むや組立トイレ講習会      大澤 水牛

爪割れて齢身に入む夕べかな      嵐田 双歩

身に入むやひと月先の再検査      向井 愉里

身に入むや類想類句といふ奈落     廣田 可升

身に入むや青シート屋根並ぶ町     徳永 木葉

「稲・米」

そぞろ寒娘が米を借りにくる      杉山 三薬

稲刈りて風の見えなくなりにけり    玉田春陽子

ペダル踏む右も左も稲穂波       廣田 可升

「当季雑詠」

蕎麦屋にて頼む残暑のカツカレー    金田 青水

<句会参加者11人>嵐田双歩、大澤水牛、岡田鷹洋、金田青水、久保道子、杉山三薬、須藤光迷、玉田春陽子、徳永木葉、廣田可升、向井愉里。

(報告 廣田可升)

 

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番町喜楽会第220回例会

 

首位に迷哲、水兎、斗詩子鼎立

19人が「二百十日」と「曼殊沙華」を詠む

番町喜楽会は令和6年9月例会(通算第220回)を2日午後6時半から東京・九段下の千代田区生涯学習館で開催した。台風10号が迷走し気を揉んだものの、晴天となった。ただし、出席者は9人にとどまり、いささか寂しい感じ。兼題は「二百十日(厄日も可)」と「曼殊沙華」。雑詠を含め投句5句、選句6句(欠席者は5句)の結果、首位に中村迷哲さんの「庭の鉢居間にあふれる厄日かな」、星川水兎さんの「残り物チャーハンにして厄日過ぐ」、山口斗詩子さんの「母の裾ぎゅっとにぎりて秋日傘」の3句が並んだ。次点は4点の6句、三席は3点の4句だった。兼題別の高点句(3点以上)は次の通り。

「二百十日(厄日)」

庭の鉢居間にあふれる厄日かな       中村 迷哲

残り物チャーハンにして厄日過ぐ      星川 水兎

田んぼ消ゆ二百二十日の濁流に       金田 青水

二百十日蝉の亡き骸そっと掃く       斉山 満智

掌に欠伸をしまひ厄日過ぐ         玉田春陽子

「曼殊沙華」

高麗人の築きし土手や曼殊沙華       中村 迷哲

奈良明日香石舞台へと曼殊沙華       金田 青水

曼珠沙華ここにカルメン立たせたし     堤 てる夫

つかのまに老いたる団地曼珠沙華      廣田 可升

「当季雑詠」

母の裾ぎゅっとにぎりて秋日傘       山口斗詩子

田畑の相続難し鉦叩            高井 百子

鉦叩き今宵小さな旅支度          星川 水兎

首相候補こんな顔ぶれ秋寂し        堤 てる夫

<句会出席者、9人>池内的中、大澤水牛、金田青水、須藤光迷、田中白山、玉田春陽子、中村迷哲、廣田可升、向井愉里。<投句参加者、10人>嵐田双歩、斉山満智、澤井二堂、高井百子、谷川水馬、堤てる夫、徳永木葉、星川水兎、前島幻水、山口斗詩子。  (報告 須藤光迷)

 

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日経俳句会第231回例会

明生句「孫と嫁」が最高12点、二席は光迷句「タワマン」

参加36人で「盆」と「ばった」を詠む

日経俳句会は8月21日(水)、神田・鎌倉橋の日経広告研究所会議室で8月例会(通算231回)を開いた。連日の厳しい残暑とゲリラ豪雨はこの日も続き、夕方には品川駅前が水浸しになるなど各地で雷雨に見舞われた。幸い会場周辺は打ち水程度の雨量で済み、いくらか涼しくなった。出席者は11人。残暑の中、熱のこもった議論が続いた。兼題は「盆」と「ばった(飛蝗、螇蚸)」。36人から108句の投句があり、6句選(欠席者は5句選)の結果、加藤明生さんの「孫と嫁残暑を置いて帰りけり」が12点を得て一席に輝いた。二席は須藤光迷さんの「稲光タワマン墓のごとく立ち」が9点で続き、三席には双歩句「存分に仏間冷やすも盆用意」、木葉句「先祖より先に孫来て盆に入る」、水兎句「銀の匙磨くも母の盆支度」、定利句「ヘルメットバイクに置きて盆の僧」の兼題4句が6点で並んだ。以下、5点5句、4点8句、3点8句、2点12句、1点36句だった。兼題別の高点句(3点以上)は以下の通り。

「盆」

存分に仏間冷やすも盆用意              嵐田 双歩

先祖より先に孫来て盆に入る             徳永 木葉

銀の匙磨くも母の盆支度               星川 水兔

ヘルメットバイクに置きて盆の僧           横井 定利

盆淋し家系にひとり残されて             大沢 反平

姿なき鳩も烏も盆休み                久保田 操

とげとげの心丸めて盆支度              篠田  朗

ヴィトン下げあの娘降り立つ盆の駅          杉山 三薬

墓じまい額寄せ合ふ盆の夜              中村 迷哲

久方の妹の寝息盆の家                向井 愉里

親戚もいまやちりぢり盂蘭盆会            大澤 水牛

お供えは草原の花阿蘇の盆              久保 道子

迎え火やなつかし声をふっときく           池村実千代

「ばった(飛蝗、螇蚸)」

出迎へはおんぶ飛蝗よ里帰り             金田 青水

球拾ふ多摩の川原やばった飛ぶ            谷川 水馬

ひと文句ありそなバッタのくろ目玉          中沢 豆乳

睨み合ふ飛蝗の構えレスリング            高井 百子

ライン上動かぬバッタ手で扇ぐ            旙山 芳之

ばつた跳ぶ草撓みたる刹那かな            溝口戸無広

当季雑詠

孫と嫁残暑を置いて帰りけり             加藤 明生

稲光タワマン墓のごとく立ち             須藤 光迷

新涼の安堵の朝や喜寿迎ふ              高井 百子

八月やピースホープは煙草の名            嵐田 双歩

ひと差し指で休む蜻蛉や露天風呂           星川 水兎

原爆忌おこりじぞうの悲しき目            岩田 千虎

かさぶたの剥がれるやうに蝉果つる          中嶋 阿猿

猫達と夫に一献遠花火                藤野十三妹

《参加者》【出席11人】嵐田双歩、岩田千虎、大澤水牛、金田青水、澤井二堂、篠田朗、堤てる夫、中野枕流、中村迷哲、星川水兎、向井愉里。【投句参加25人】池村実千代、和泉田守、伊藤健史、今泉而云、植村方円、大沢反平、岡田鷹洋、岡松卓也、加藤明生、久保道子、久保田操、杉山三薬、須藤光迷、高井百子、高橋ヲブラダ、谷川水馬、徳永木葉、中沢豆乳、中嶋阿猿、旙山芳之、廣上正市、藤野十三妹、溝口戸無広、水口弥生、横井定利。

(報告 嵐田双歩)

 

 

 

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番町喜楽会第219回例会

久々に全会員19名参加、投句総数95句

最長老白山氏「卒寿の坂」で最高9点獲得

猛暑の中「秋の声」と「流星」を詠み合う

番町喜楽会は令和6年8月例会(通算第219回)を8月3日(土)午後6時から、東京・九段下の千代田区生涯学習館で開催した。番町喜楽会は一時は会員が35人にも膨れ上がったのだが、寄る年波に一人去り二人欠けと現有会員は19人になっている。それも「夜間外出を控えておりますので」とか「ちょっと不具合」とかで句会場に出て来られない人も多くなった。というわけで、この夜も出席者は10人とこじんまり。しかし、俳句以外ほとんど用の無い当番幹事水牛のしつこい投句催促メールに辟易したか、次々に投句が寄せられ、ついに19人全員の投句95句が勢揃い、全員が選句した。

今回の兼題は「秋の声」と「流星・流れ星」。選句7句(欠席者は5句)で句会を進めた結果、田中白山さんの「卒寿への最後の坂の残暑かな」が断然の9点で一席を飾った。二席は6点で玉田春陽子さんの「占いの客待つ路地や秋の声」と廣田可升さんの「なき人はよき人ばかり流れ星」の2句、三席5点は「白桃やアダムもイヴも知らぬ味 春陽子」だった。さらに「夜の更けて一人弓引く秋の声 的中」「広島や炎暑にゆがむアスファルト 双歩」の2句が4点で続いた。以下、3点6句、2点16句、1点31句という結果だった。兼題別の高点句(3点以上)は下記のとおり。

「秋の声」

占いの客待つ路地や秋の声              玉田春陽子

夜の更けて一人弓引く秋の声             池内 的中

神宿る社中磐座(いわくら)秋の声          堤 てる夫

風鈴の吊るされしまま秋の声             高井 百子

AIの解らぬものに秋の声               星川 水兎

「流星・流れ星」

なき人はよき人ばかり流れ星             廣田 可升

流れ星夫婦で違ふ願ひ事               中村 迷哲

「当季雑詠」

卒寿への最後の坂の残暑かな             田中 白山

白桃やアダムもイヴも知らぬ味            玉田春陽子

広島や炎暑にゆがむアスファルト           嵐田 双歩

常連のひとり欠けたり夏の果て            金田 青水

阿波踊目指し毎朝スクワット             谷川 水馬

《参加者》【出席10人】池内的中、大澤水牛、金田青水、須藤光迷、高井百子、田中白山、玉田春陽子、堤てる夫、前島幻水、向井愉里。【投句参加9人】嵐田双歩、斉山満智、澤井二堂、谷川水馬、徳永木葉、中村迷哲、廣田可升、星川水兎、山口斗詩子。

(報告・大澤水牛)

 

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日経俳句会第230回例会

双歩句「夫婦喧嘩」が最高8点、二席は明生・操・水兎句並ぶ

「暑中見舞」と「素麺」を詠む

日経俳句会は令和6年7月例会(通算230回)を7月17日(水)に鎌倉橋の日経広告研究所会議室で開いた。梅雨明け目前の蒸し暑さの中、12人が元気な顔を見せ句会に臨んだ。兼題は「暑中見舞」と「素麺」。38人から112句の投句があり、6句選(欠席は5句)の結果、嵐田双歩さんの「冷素麺夫婦喧嘩のうやむやに」が8点で一席となった。二席6点には加藤明生さんの「添書きの文字の細さよ夏見舞」、久保田操さんの「またひとつ老舗閉店竹落葉」、星川水兎さんの「蓮の葉を回る雨つぶ池之端」の3句が並んだ。三席5点は中嶋阿猿さんの「書くことも来ることもなし暑中見舞い」をはじめ8句が入った。このほか4点6句、3点11句、2点18句、1点34句で、全体にまんべんなく点が入った印象だった。

なお句会の席上、岩田三代さんが俳号「千虎(ちこ)」を名乗ることを表明、拍手で了解された。由来は髪をおかっぱにしたところ、友人から「NHK番組のチコちゃんに似ている」とチコと呼ばれるようになり、この愛称に漢字をあてたもの。兼題別の高点句(三点以上)は以下の通り。

「暑中見舞」

添書きの文字の細さよ夏見舞             加藤 明生

書くことも来ることもなし暑中見舞い         中嶋 阿猿

夏見舞おもて面まで続きけり             星川 水兎

絵手紙に似合ふ癖字や夏見舞             嵐田 双歩

貝描く暑中見舞に海の音               篠田  朗

安否まず問ひて問はれて夏見舞            水口 弥生

薄墨や優しき筆の夏見舞               池村実千代

墨痕に気合の暑中見舞かな              今泉 而云

色褪せし暑中見舞いに母の文字            岩田 三代

ご無沙汰をラインで交はす夏見舞           久保田 操

下手な絵に生きているぜと夏見舞           中村 迷哲

「素麺」

冷素麺夫婦喧嘩のうやむやに             嵐田 双歩

古のラガー揃ひて冷素麺               池村実千代

FMはギターの調べ冷素麵              和泉田 守

素麵に孫の健啖ほれぼれと              今泉 而云

つれあひの霊に索麺供へたり             金田 青水

素麺をたらいで冷やす子沢山             杉山 三薬

箸握り流し素麺待てる子ら              徳永 木葉

冷素麺妻病褥の笑顔かな               廣上 正市

当季雑詠

またひとつ老舗閉店竹落葉              久保田 操

蓮の葉を回る雨つぶ池之端              星川 水兎

自販機を落ちて響きし夜のビール           今泉 而云

旧盤のだるい曲聴く夏の夜              植村 方円

三文字の暖簾くぐりて泥鰌鍋             中野 枕流

富士山に縦じま見えて夏来たる            野田 冷峰

勘違いと言い放つ君夏の果              向井 愉里

無精菜園バット胡瓜の不貞寝する           大澤 水牛

理由なく諍ふ夫婦梅雨の雷              中村 迷哲

ゆつくりとグライダー行く夏木立           溝口戸無広

《参加者》【出席12人】嵐田双歩、池村実千代、岩田千虎、植村方円、大澤水牛、金田青水、澤井二堂、篠田朗、杉山三薬、堤てる夫、中村迷哲、向井愉里。

【投句参加26人】和泉田守、伊藤健史、今泉而云、大沢反平、岡田鷹洋、岡松卓也、加藤明生、工藤静舟、久保道子、久保田操、斉藤早苗、須藤光迷、高井百子、高橋ヲブラダ、谷川水馬、徳永木葉、中嶋阿猿、中野枕流、野田冷峰、旙山芳之、廣上正市、星川水兎、増田浩志、溝口戸無広、水口弥生、横井定利。

(報告 中村迷哲)

 

 

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