番町喜楽会年間優秀作品三句を発表

堤てる夫、星川水兎、谷川水馬三氏が受賞

番町喜楽会は令和4年の全作品1274句から優秀作品3句を選定、2月4日に開催された第202回例会に先立って授賞式を行い、受賞者3名に賞品を贈った。この日は句会出席者が17名と最近にない盛況で、受賞者に対し参加者全員から、惜しみない拍手が送られた。優秀作品賞は令和元年に創設されたもので、今回で4回目となるが、星川水兎さんは最初の複数回受賞者となった。

《令和4年度番町喜楽会最優秀作品》

秋涼のどっと入り込む朝の窓    堤 てる夫

母の日にまるまる母を洗ひたり   星川 水兎

草の芽やちび怪獣に歯が生えた   谷川 水馬

≪選考経過≫

令和4年12月例会終了後、番町喜楽会の一年間の作品集を作成し、この中から今泉而云・大澤水牛両氏に年間代表作品137句を選んでいただきました。さらにこの中から、規定により前年受賞者の句を除いて、3句(3名)を優秀作品賞句として選定していただきました。また、受賞句に準ずる句として、両氏それぞれ次点句3句を選んでいただきました。以下に受賞句と選評、受賞者の言葉、次点句及び選評を掲載いたします。

(報告;番町喜楽会会長廣田可升)

《優秀作品賞の選評と受章者の言葉》

秋涼のどっと入り込む朝の窓    堤 てる夫

【選評】 一読、この場所は東京ではない、と気づき、学生時代、蓼科にあった大学関係の施設での合宿を思い出した。起床時間が来ると、グループのリーダーが各部屋の窓を、次々に開けていくのだ。風がそれこそ「どっと」窓から吹き込み、布団にもぐり込んでいた者どもを叩き起こす。句を眺め、思い出に浸っているうちに、「作者はあの人かな」と気づく。やがてその通りであることが判明した。(今泉而云)

【選評】 「秋が来たぞ」という思いを、これほど勢い良く、印象深く詠んだ句はありません。作者は私と違って早起きなんでしょう。朝早く目覚めるとすぐに雨戸を開け、窓を開ける。途端に明らかに昨日までとは違う空気を感じたというのです。「どっと」という擬音語(副詞)を存分に働かせています。実に爽やかで気持の良い句です。(大澤水牛)

≪受賞の言葉:堤てる夫≫

まさに驚天動地の出来事であります。どれくらいびっくりしたかと言うと、受賞の言葉を思いつかないくらいびっくりしたということです。有難うございました。

母の日にまるまる母を洗ひたり   星川 水兎

【選評】 母の日に母をまるまる洗うとは・・・、何と素晴らしい俳句作品だろうか。私が購読している日経や東京新聞の俳句欄の選者などが「この句をどう評価するか」と考えた。日に何百句、日によっては千句に余るという投句の最上位に選ばなければ、「選者は失格だ」と私は思った。「母をまるまる」という短い言葉の中に満ちる母への思いとその状況。絶賛せずにいられない。(今泉而云)

【選評】 老いた母親をいとおしむ様子がまざまざと描かれて、思わず涙が出て来てしまいました。悲しいからではない、感動からです。この句は「まるまる母を洗ひたり」と、まるで幼児や、あるいは愛犬を入浴させている感じで、むしろ無造作な詠みっぷりに可笑しみを覚え、やがてしみじみとして来るのです。而云さんも言ってましたが、この句は番喜会令和四年の最高傑作ではないかなと思いました。(大澤水牛)

≪受賞の言葉:星川水兎≫

この句で賞をいただくのは、なによりも長生きしてくれた母に感謝しないといけないなと思っています。有難うございました。

 

草の芽やちび怪獣に歯が生えた   谷川 水馬

【選評】 我が家の“ちび怪獣たち”が中年になったいま、実に懐かしく、「ウチの子もそうだった」と思い返さざるを得ない。乳児の歯はまず、下の歯茎が固くなり始め、間もなく白い歯が伸び出して行く。ウチの怪獣たちも活発な方で、日毎の変化の一つ一つが親や祖父母の楽しみになっていた。草の芽との取り合わせは、誰もが素直に受け取ることが出来るだろう。(今泉而云)

【選評】 明らかに「孫俳句」だが、孫とは一言も言っていない。そこが成功の所以でもありましょう。孫俳句にありがちなベタベタな感じが全く無い、読んでいて気分のいい句です。作者にとっては何ものにも代え難い宝物。それを「ちび怪獣」と呼んでいる。ちょうど歯が生え初める頃は活発になり、手当たりしだいに物を掴んではかじったり投げたり・・、オジイチャンは扱いかねることもしばしば。まさに勢い良い草の芽そのまま。取り合わせた季語がとても良かった。(大澤水牛)

≪受賞の言葉:谷川水馬≫

思ったことをそのまま詠んだら句になったというようなことで、次点の方の句を拝見しますと、ほんとうにこの句でいいのかという気がします。とても面映ゆい気持ちですが、有難くいただきます。

《次点三句》

今泉而云選

全山の音閉じ込めて滝凍る     中村 迷哲

【選評】凍て滝が「全山の音をとじ込める」という表現に「全くその通り」と頷いた。長野県や山梨県で、凍て滝を三つほど眺めた記憶があるが、滝の大小に関わらず、その周辺は森閑を極めていた。句をしばらく眺めて気が付けば、我が身も凍て滝に閉じ込められた心地になっていたのであった。

笹舟の疎水に早し夏来たる     廣田 可升

【選評】琵琶湖疎水を流れて行く笹船の様子を、作者から聞いたことがある。石材で築かれた南禅寺の疎水を行く笹舟を思い描き、夏来たる頃の南禅寺周辺の興趣を思わずに居られない。笹船を流すオジサンの様子や表情なども、あたかも我が目で見たように頭の中に浮かんできた。

夜店の灯紅く寂しく灯りけり    塩田 命水

【選評】夜店の灯が「紅く寂しく」とは。状況をしばらく思い描いた末に、ああそうか、と気づいた。コロナ禍の中、とりあえず夏祭りの夜店が開かれたが、「紅く寂しく」は神社へのお参りの人が少なく、夜店のオジサンの表情は冴えないのだ。

大澤水牛選

田水入る一番乗りはあめんぼう   高井 百子

【選評】あめんぼうという奴は水の匂いを嗅ぎつけるのか、水が溜まると真っ先に現れます。子供の頃それが不思議でたまらず、どこから湧いてくるのだろうかと水たまりを見張って居たものです。その頃はアメンボウには羽根があって飛んで来るとは知らなかったのです。この句も田植えで水が引き入れられた田んぼに「あら、もうアメンボが」とびっくりしている様子を詠み止めています。「代掻きの後澄む水に雲の影 悌二郎」という田植え用意の整った静かな一瞬を捉えた佳句がありますが、掲句は雲の影ではなくアメンボが飛んで来たと動きのある景色で、一層面白くしています。

川底の澄みて立夏の神田川     向井 愉里

【選評】本格派の俳句と言ったらいいでしょうか。すっと詠んでいながら風格があります。五月五日の都電荒川線吟行でまず最初に訪れた関口芭蕉庵の道すがらのぞいた神田川の様子です。私もしげしげ見つめたのですが、こんな名句は生まれませんでした。この句は「別にどうと言うことも無いんだが、いい句だなあと思ってしまう」といった句です。立夏の清々しい感じがします。こういう句を詠もうと心がけなさいという教科書かも知れません。

さあ九月怠惰蹴散らし婆の立つ   山口斗詩子

【選評】年寄りの住まいは知らず知らず汚くなっていきます。私ども老夫婦の家がまさにそれです。ちらかすつもりは無いし、昔ほど活発に家事労働をするわけではないのだから、さほど汚れないはずなのに、ふと気がつくと部屋のあちこちに空き箱やら、衣類・洗濯物の類が重なっていたりします。何の気なしに置いたものがいつの間にか溜まっていくのでしょう。それを作者は一念発起、「さあ九月だ」と立ち上がったのです。残暑の八月を越えて、タイミングとしてはちょうど良い時と言えましょう。なんと言っても、この意気軒昂たるところに打たれました。

 

 

 

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日経俳句会第215回例会

水兎句「糸三つ葉」が最高7点、二席に水牛・双歩・木葉句

初句会に38人から112句の投句

日経俳句会は令和5年の初句会(通算215回)を1月18日(水)に鎌倉橋の日経広告研究所会議室で開いた。大寒間近で風邪を引いた人もいて出席は14人だったが、高点句が相次ぎ、寒さを忘れる句会となった。兼題は「雑煮」と「左義長」。38人から112句の投句があり、6句選(欠席は5句)の結果、星川水兎さんの「糸三つ葉ゆるりと結ぶ雑煮椀」が最高7点を得た。二席6点には大澤水牛さんの「日は既に青空にあり雑煮膳」と嵐田双歩さん「左義長や火の粉に混じる一等星」、徳永木葉さん「初みくじ裏を返せば英字版」の3句が並んだ。三席5点には植村方円さんの「この顔を五十年見て雑煮食ふ」をはじめ9句が入る盛況だった。以下、4点6句、3点11句と続き、高点句が30句にのぼった。そのほかは2点18句、1点30句だった。兼題別の高点句(3点以上)は以下の通り。

「雑煮」

糸三つ葉ゆるりと結ぶ雑煮椀             星川 水兎

日は既に青空にあり雑煮膳              大澤 水牛

この顔を五十年見て雑煮食ふ             植村 方円

観戦の合間につくる雑煮かな             中嶋 阿猿

一口の小さき雑煮に老母(はは)の笑み         岩田 三代

焼餅がぷつと息吐く雑煮椀              水口 弥生

今年また雑煮の朝も妻癒えず             大沢 反平

焼き鯊は父のこだわり雑煮出汁            中村 迷哲

雑煮喰う数競い合う子沢山              横井 定利

「左義長」

左義長や火の粉に混じる一等星            嵐田 双歩

浜風にちぎれ飛ぶ火やどんど焼            大下 明古

左義長の火の粉に人の輪の崩れ            須藤 光迷

縄文の遺伝子目覚むどんど焼             中村 迷哲

左義長の残り火で焼く蜜柑かな            中嶋 阿猿

竹の香の振舞い酒やどんどの火            廣上 正市

どんど焼き見つめる子らの瞳燃ゆ           久保田 操

どんど焼き縁起達磨も火達磨に            杉山 三薬

左義長やコロナ払いの願い込め            堤 てる夫

左義長やどんどと燃やせ過ぎし日を          藤野十三妹

 

「当季雑詠」

初みくじ裏を返せば英字版              徳永 木葉

転ぶなよ分ってるわよ今朝の霜            岡田 鷹洋

警策の硬き響きや寒の寺               中村 迷哲

「酌みたし」のくせ字ゆかしき賀状かな        廣上 正市

蝋梅や肌のぬくみの帯を解く             星川 水兎

野を走る一輛なれど初電車              加藤 明生

転寝(うたたね)や夕刊の来ぬ三が日          須藤 光迷

不機嫌が障子ぴしりと閉めにけり           嵐田 双歩

冬晴れやこの大窓のこの青さ             大沢 反平

寒風よここまでおいで大江戸線            杉山 三薬

七日粥食ひて治まる妻の咳              谷川 水馬

《参加者》【出席14人】嵐田双歩、今泉而云、岩田三代、植村方円、大澤水牛、岡田鷹洋、澤井二堂、篠田朗、鈴木雀九、堤てる夫、徳永木葉、中村迷哲、星川水兎、向井愉里。【投句参加24人】池村実千代、伊藤健史、大沢反平、大下明古、荻野雅史、加藤明生、金田青水、工藤静舟、久保田操、杉山三薬、須藤光迷、高井百子、髙石昌魚、高橋ヲブラダ、谷川水馬、中沢豆乳、中嶋阿猿、野田冷峰、旙山芳之、廣上正市、藤野十三妹、溝口戸無広、水口弥生、横井定利。

(報告 中村迷哲)

 

 

 

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酔吟会第160回例会

令和5年新春初句会を江東区森下文化センターで

兼題「初詣」「福寿草」、最高6点は春陽子と可升

酔吟会は1月14日(土)、令和5年の初句会を江東区森下の「森下文化センター」で行った。1週間前に「新春七福神吟行」があったばかりのせいか、出席者は12人と少なかったが、持ち寄った作品を短冊に書くことから始まる伝統的俳句会は和気あいあいとにぎやかに運んだ。終了後は森下の名物焼鳥屋「鳥長」で新年会が繰り広げられ9名が参加。今年の酔吟会が盛会になるようにと杯を挙げた。

例会の兼題は「初詣」と「福寿草」、投句は雑詠を含め5句の計60句。選句6句で進めた結果、最高点は6点で玉田春陽子さんの「シャッターを肩で押し上げ初仕事」と廣田可升さんの「福寿草戦争知らず老いにけり」が並んだ。次点は4点句が4人。昨年度日経俳句会「英尾賞」に輝いた春陽子さんが実力を発揮し「行く先は極楽と決め日向ぼこ」で4点句も獲得。また可升さんも「福寿草置けば日のさす出窓かな」で食い込んだ。他の4点句は谷川水馬さんの「松過ぎのたこ焼き奉行立通し」と須藤光迷さんの「海に入り水母となるや雪女」であった。以下3点句4句、2点句8句。1点句16句であった兼題別の高点句(3点以上)は次の通り。

「初詣」

かしわ手に切れ味のあり初詣        今泉 而云

O脚も生きた証ぞ初詣           岡田 鷹洋

「福寿草」

福寿草戦争知らず老いにけり        廣田 可升

福寿草置けば日のさす出窓かな       廣田 可升

父母の干支九巡り目福寿草           谷川 水馬

淡雪を丸く溶かして福寿草         徳永 木葉

「当期雑詠」

シャッターを肩で押し上げ初仕事      玉田春陽子

海に入り水母となるや雪女         須藤 光迷

松過ぎのたこ焼き奉行立通し        谷川 水馬

行く先は極楽と決め日向ぼこ        玉田春陽子

【参加者12人】嵐田双歩、今泉而云、大澤水牛、岡田鷹洋、金田青水、須藤光迷、高井百子、谷川水馬、玉田春陽子、徳永木葉、廣田可升、向井愉里。

(まとめ 高井百子)

 

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新春恒例七福神吟行

令和5年は新宿繁華街を20人で巡る

日経俳句会と番町喜楽会は合同で1月7日(土)に新宿区内の七社寺を巡る「新宿山ノ手七福神」吟行を催した。快晴、ポカポカ陽気に恵まれた新春恒例の吟行には20人が参加。飲食店街やホテル街を通り抜ける7キロ弱の行程を、一部地下鉄も利用しながら全員がのんびりと巡り終えた。夕暮れとともに神楽坂の料理屋「椿々」にうち揃い、和洋混合の料理を堪能しながら竹酒に酔い、吟行を打ち上げた。吟行後に恒例のメール句会を実施、19人から57句の投句があった。5句選の結果、最高7点には嵐田双歩さんの「銀舎利を黄金に染めて寒卵」と谷川水馬さんの「福詣まづ奪衣婆に睨まれて」並んだ。二席6点には廣田可升さんの「ほろ酔ひを照らす満月松の内」が入り、三席5点は杉山三薬さんの「七並べ七日七草七福神」だった。参加者全員の代表句は以下の通り(三席までの作者は別の句を掲載)

地下鉄の地下道長き七日かな     嵐田 双歩

シャンパンの乾杯となる福詣     今泉 而云

猿の顔欠けし塔あり冬の暮      岩田 三代

飲み屋街縫って巡るや七福神     植村 方円

粥腹のたぷたぷ鳴るや福詣      大澤 水牛

初吟行鳩に米撒く好々爺       岡田 鷹洋

初席やぽつり末廣ビルのかげ     金田 靑水

善き國に辿り着きたり七福神     杉山 三薬

徒歩メトロ七福めぐりハイブリッド  鈴木 雀九

七福神今年も閻魔に怒られて     澤井 二堂

寺社七つ悪所をかすめ初吟行     須藤 光迷

抜弁天水清くして鯉五匹       田中 白山

布袋みてチャック確かめ冬ズボン   谷川 水馬

宴席に傘寿迎へし布袋さま      徳永 木葉

寒の入ホテルに消えた今弁天     中沢 豆乳

肉太の昇太の名札初高座       中村 迷哲

風俗街縫ふて七福詣かな       廣田 可升

外ツ国の人も参詣福の神       前島 幻水

椿々の長屋の奥で初笑ひ       向井 愉里

《参加者》嵐田双歩、今泉而云、岩田三代、植村方円、大澤水牛、岡田鷹洋、金田青水、杉山三薬、鈴木雀九、鈴木玲子(夫人)、澤井二堂、須藤光迷、田中白山、谷川水馬、徳永木葉、中沢豆乳、中村迷哲、廣田可升、前島幻水、向井愉里

(まとめ 中村迷哲)

 

 

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「月並時代千人千句集」と「俳句史百余年の誤解を解く」二部作発信

 

令和5年1月6日、NPO法人双牛舎は代表今泉恂之介(而云)著「月並時代・千人千句集」を発信開始した。

江戸末期から明治中期まで、俳諧(俳句)は大流行、武士階級はもとより上層商人から下町の長屋の大家さん、ご隠居に至るまで、五・七・五の発句作りに没頭した。今日の俳句隆盛を凌駕するような勢いだった。ところが、明治中葉、「発句」を「俳句」として「文芸の一ジャンル」にのし上げた正岡子規が、「写生」に基づく俳句づくりを唱道する過程で、それまでの俳諧の発句を「陳腐、堕落の月並調」と一刀両断に切り捨てた。富裕層の手遊びとも言える俳諧発句を「俳句」として「文学」の一角に据えた子規の功績は偉大だが、一茶以後明治中葉までの作品を全て葬り去ってしまった。子規の遺風をついだ高浜虚子以降の現代俳句界はこれを鵜呑みにして、この時期の俳句を顧みることなく埋没してしまった。これに疑念を抱いた而云さんは、この10数年、これら“月並俳句”の再発掘に取組み、「決して堕落・陳腐ではない」ことを実例を上げながら立証した。それがこの著作「月並時代千人千句集」と「千人千句集への道筋─俳句史百余年の誤解を解く」の二部作。双牛舎ブログのトップページあるいは「みんなの俳句」の左側の「目次」のタイトルをクリックすると現れる。(報告大澤水牛)

 

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第18回日経俳句会賞決定

英尾賞に玉田氏「ストロー」

中村・髙石・向井・杉山氏に俳句会賞

令和4年度『日経俳句会賞』(第18回)の授賞式が12月21日の下期合同句会後に行われた。日経俳句会英尾賞は玉田春陽子「ストローをのぼる空色夏来る」が受賞。日経俳句会賞には中村迷哲「豆腐屋の槽(ふね)満々と寒の水」をはじめ髙石昌魚「年甲斐もなきシャツの色竹の春」、向井愉里「焼芋や女系家族のケセラセラ」、杉山三薬「忠敬も林蔵も居て初歩き」の4作品が選ばれた。髙石、杉山氏は3回目、玉田、中村、向井氏は2回目の受賞。

嵐田選考委員会幹事から選考経過の説明があり、徳永幹事長から受賞者に賞状と副賞が手渡された。この後、大澤水牛、今泉而云両顧問が掛け合いの形で温かみのある句評を披露した。

授賞式に引き続いて年末懇親会を開催。コロナ感染防止に留意し、着席と立食を織り交ぜた形式で実施した。テーブルには缶ビール、日本酒、ワインが並び、ピザや稲荷ずしを肴に歓談の輪が広がった。席上、受賞の5人がそれぞれ喜びを語ったが、三月に膵臓がんが見つかった髙石昌魚氏が「受賞を励みに、病気に負けず句作を続けたい」と決意を述べると、ひときわ大きな拍手が沸いた。

《日経俳句会賞英尾賞》

ストローをのぼる空色夏来る       玉田春陽子

《日経俳句会賞》

豆腐屋の槽(ふね)満々と寒の水     中村 迷哲

年甲斐もなきシャツの色竹の春      髙石 昌魚

焼芋や女系家族のケセラセラ       向井 愉里

忠敬も林蔵も居て初歩き         杉山 三薬

《次点》

大宇宙星が星食う冬の夜徳永       徳永 木葉

海鳴りを聞きて五浦の石蕗の花      岩田 三代

家族葬にてとの便り秋時雨        須藤 光迷

(報告 嵐田双歩)

 

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日経俳句会令和4年度下期合同句会

一席に昌魚、水牛、双歩句が並ぶ

20人が出席し、納めの会

日経俳句会は12月21日、内神田の日経広告研究所会議室で下期合同句会を開いた。強い寒気の影響で秋田や新潟は大雪、都心でも最高気温が10度と冬らしい寒いこの日、今年の納めの会とあって20人が出席し句会は熱気に包まれた。通算35回目となる合同句会には38人から事前投句、兼題の「枯野」ほか当季雑詠の114句が集まった。投句者全員が事前選句した結果、水牛句「朝もやの海となりけり枯野原」、双歩句「歳時記に付箋の増えて十二月」、昌魚句「これからだ三年枠の日記買ふ」がそれぞれ8点で一席に並んだ。二席には光迷句「年の暮れ鏡に喜寿の顔ひとつ」が7点。次いで水牛句「枯野行く歩荷のリズム狂ひ無し」が6点を獲得し、大澤水牛さんは高点句を連発した。この日、日経俳句会賞を受賞した髙石昌魚さんは一席のほか、「粛々とがん共生の年惜しむ」が5点と受賞に花を添えた。5点句は髙石さん含め3人。以下4点6句、3点10句、2点25句、1点29句だった。兼題別の高点句(3点以上)は以下の通り。

「枯野」

朝もやの海となりけり枯野原             大澤 水牛

枯野行く歩荷(ぼっか)のリズム狂ひ無し       大澤 水牛

道祖神肩を寄せ合ふ枯野かな             岩田 三代

茫々と風や陽が行く枯野かな             久保 道子

枯野にも春待つ新芽の息吹あり            澤井 二堂

分け入れば風の優しき枯野かな            谷川 水馬

「当季雑詠」

歳時記に付箋の増えて十二月             嵐田 双歩

これからだ三年枠の日記買ふ             髙石 昌魚

年の暮れ鏡に喜寿の顔ひとつ             須藤 光迷

粛々とがん共生の年惜しむ              髙石 昌魚

身延線枯野に淡く富士の影              中沢 豆乳

住む前は銀杏落葉にあこがれし            旙山 芳之

年暮るゝエンゲル係数高止まり            金田 青水

足音も過去となりゆく師走かな            玉田春陽子

物ぐさの虫起きたるや堀炬燵             徳永 木葉

メモばかり増えて進まぬ年用意            廣田 可升

老夫在りし去年(こぞ)の師走のなつかしき      藤野十三妹

写真には写せぬものに隙間風             横井 定利

父母にさらに近づく年の暮れ             植村 方円

鬼柚子の獅子とも見ゆる湯舟かな           谷川 水馬

年の瀬や一番難所換気扇               玉田春陽子

姉三人八十路独り居年暮るる             堤 てる夫

主無き庭の裸木実は落ちて              堤 てる夫

踏み跡をたどりて迷ふ枯野かな            中村 迷哲

《参加者》【出席20人】嵐田双歩、今泉而云、植村方円、大澤水牛、大沢反平、岡田鷹洋、金田青水、澤井二堂、篠田朗、杉山三薬、鈴木雀九、髙石昌魚、玉田春陽子、堤てる夫、徳永木葉、中村迷哲、廣田可升、藤野十三妹、星川水兎、向井愉里。【投句参加18人】池村実千代、伊藤健史、岩田三代、加藤明生、工藤静舟、久保道子、久保田操、須藤光迷、高井百子、高橋ヲブラダ、谷川水馬、中沢豆乳、中嶋阿猿、旙山芳之、廣上正市、溝口戸無広、水口弥生、横井定利。

(報告 嵐田双歩)

 

 

 

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番町喜楽会第201回例会

春陽子さんの「セーターの伸びた袖」がトップ7点

番町喜楽会は令和4年12月の例会(通算第201回)を12月3日、東京・九段下の千代田区生涯学習館で開催した。17人から投句があり、14人が顔を揃えた。兼題は「大雪(たいせつ)」と「冬帽子」。選句は6句(欠席者は5句) で句会を進めた結果、玉田春陽子さんの「セーターの袖の伸びたる余生かな」(7点句)と、中村迷哲さんの「大雪や湯治場に満つ津軽弁」(6点句)、そして須藤光迷さんの「米粒のごと柊の花こぼれ」(5点句)がトップ争いを繰り広げたが、結局、玉田春陽子さんに凱歌が上がり令和4年掉尾を飾る特選トップの座を射止めた。以下、4点句が4句、3点3句、2点11句、1点20句という結果であった。兼題別の高点句(3点以上)は次の通り。

「大雪」

大雪や湯治場に満つ津軽弁             中村 迷哲

大雪や物は試しと赤パンツ             谷川 水馬

大雪や乾布摩擦の父の背な             嵐田 双歩

「冬帽子」

あの人と遠目に知れる冬帽子            廣田 可升

姉妹にて色違いなる冬帽子             須藤 光迷

八ヶ岳愛した友の冬帽子              堤 てる夫

「雑詠」

セーターの袖の伸びたる余生かな          玉田春陽子

米粒のごと柊の花こぼれ              須藤 光迷

再婚の新居はリノベ冬ぬくし            高井 百子

何にでも一家言あり泥鰌鍋             星川 水兎

≪参加者≫【出席14人】嵐田双歩、大澤水牛、金田青水、須藤光迷、高井百子、田中白山、谷川水馬、玉田春陽子、堤てる夫、徳永木葉、中村迷哲、廣田可升、前島幻水、向井愉里。【投句参加3人】池内的中、澤井二堂、星川水兎。

(報告・谷川水馬)

 

 

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日経俳句会第214回例会

36人が「山眠る」「石蕗の花」を詠む

三代句「五浦」が最高8点、二席に雀九句「蹲の杓」

日経俳句会は令和4年11月例会(通算214回)を16日(水)に鎌倉橋の日経広告研究所会議室で開いた。気温の変化で体調を崩す人もあり出席は13人にとどまったが、高点句が続出し充実の句会となった。兼題は「山眠る」と「石蕗の花」。36人から117句の投句があり、6句選(欠席は5句)の結果、岩田三代さんの「海鳴りを聞きて五浦の石蕗の花」が最高8点を獲得。二席7点には鈴木雀九さんの「蹲の杓置く脇に石蕗の花」が続いた。三席6点には岩田三代さん「水底に古き村抱き山眠る」をはじめ、岡田鷹洋さん「山眠る杜氏の仕込み夜もすがら」と「面会日兄と焼き芋分け合ひて」の二句、今泉而云さん「小春日の納屋に動かぬ機織り機」、廣上正市さん「届かずに木守の柿となりにけり」の計5句が並んだ。以下、5点9句、4点5句、3点9句と、高点句が30句にのぼった。そのほかは2点13句、1点20句だった。兼題別の高点句(3点以上)は以下の通り。

「山眠る」

水底に古き村抱き山眠る                  岩田 三代

山眠る杜氏の仕込み夜もすがら               岡田 鷹洋

にびの空木々薄墨に山眠る                 篠田  朗

大仏は俯き加減山眠る                   須藤 光迷

大伽藍ふところに抱き山眠る                徳永 木葉

山眠る顎まで雲を引き寄せて                溝口戸無広

谺さえ返さぬ山の深眠り                  水口 弥生

又ひとり離村したとや山眠る                金田 青水

新味噌を盛る店先や山眠る                 高井 百子

山眠る牛の尿の音響く                   谷川 水馬

幾星霜石仏を抱き山眠る                  中村 迷哲

「石蕗の花」

海鳴りを聞きて五浦の石蕗の花               岩田 三代

蹲の杓置く脇に石蕗の花                  鈴木 雀久

この道は抜けられません石蕗の花              杉山 三薬

信仰を隠れ継ぐ島石蕗の花                 中村 迷哲

このごろはあるじ見かけず石蕗の花             大下 明古

石蕗咲くや寺に往時の境内図                廣上 正市

クレヨンの色濃く塗りし石蕗の花              植村 方円

房総は雨も暖か石蕗の花                  星川 水兎

「当季雑詠」

小春日の納屋に動かぬ機織り機               今泉 而云

面会日兄と焼き芋分け合ひて                岡田 鷹洋

届かずに木守の柿となりにけり               廣上 正市

千歳飴も裾も玉砂利擦りながら               嵐田 双歩

大宇宙星が星食う冬の夜                  徳永 木葉

文化の日最前列でタカラヅカ                旙山 芳之

里山に柿の点描北信濃                   星川 水兎

蓮枯れてアートだよねと若き声               伊藤 健史

大根炊き匂ひ洩れくる老いの家               大澤 水牛

寒暁も老犬戸口で主人待つ                 澤井 二堂

老いの目を擦り見上げる冬の蝕               堤 てる夫

《参加者》【出席13人】嵐田双歩、岩田三代、植村方円、大澤水牛、岡田鷹洋、金田青水、澤井二堂、篠田朗、杉山三薬、鈴木雀九、堤てる夫、中村迷哲、向井愉里。【投句参加23人】池村実千代、伊藤健史、今泉而云、大沢反平、大下明古、加藤明生、工藤静舟、久保田操、須藤光迷、高井百子、髙石昌魚、高橋ヲブラダ、谷川水馬、徳永木葉、中沢豆乳、中嶋阿猿、旙山芳之、廣上正市、藤野十三妹、星川水兎、溝口戸無広、水口弥生、横井定利。

(報告 中村迷哲)

 

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酔吟会第159回例会

 

14人出席、「酉の市」「帰り花」詠む

会場の芭蕉記念館で「俳画の楽しみ」展を鑑賞

酔吟会は11月12日(土)、江東区常盤の「芭蕉記念館」会議室で11月例会(通算159回)を開催した。句会に先立ち同館で開催中の「俳画の楽しみ」展を野呂達矢芭蕉記念館次長のミュージアムトーク付きで鑑賞した。「俳画の楽しみ」展は、俳文学研究者でもある立正大学文学部教授の伊藤善隆氏のコレクションを中心に展示したもので、参加者は興味深く句会前の鑑賞を楽しんだ。この展示会は来年1月22日まで開かれている。俳画に絞った展覧会は珍しく、非常に珍しい作品が多数展示されており、必見の価値がある。

この日の句会出席は14人。恒例により持ち寄った作品を短冊に書くことから例会が始まった。兼題は「酉の市」と「帰り花」。雑詠を含め投句5句、投句総数70句、選句6句で進めた結果、最高点は玉田春陽子さんの8点「古書の値は鉛筆書きや一葉忌」の1句。次席は6点で「帰り花他人の老いはよく分かる」の杉山三薬句。三席5点には「独り居のよいしょと立ちて葱刻む」の今泉而云句、「玉蒟蒻も小さくなるや芋煮会」の高井百子句、「右膝が冬の初めを報せおり」の向井愉里句が並んだ。4点句は無し。3点句には大澤水牛、岡田鷹洋、高井百子、谷川水馬、廣田可升、向井愉里の6句が入った。2点句は10句、1点句は16句だった。兼題別の高点句(3点以上)は次の通り。

「酉の市」

酉の市未だ見ぬ福を値切りをり            高井 百子

境内は異次元迷路酉の市               向井 愉里

「帰り花」

帰り花他人の老いはよく分かる            杉山 三薬

陽の匂ふ子供の髪や帰り花              谷川 水馬

月食を見逃した夜の帰り花              廣田 可升

「当季雑詠」

古書の値は鉛筆書きや一葉忌             玉田春陽子

独り居のよいしょと立ちて葱刻む           今泉 而云

玉蒟蒻も小さくなるや芋煮会             高井 百子

右膝が冬の初めを報せおり              向井 愉里

錆鮎の姿正して焼かれたる              大澤 水牛

マフラーで隠す補聴器老いの見栄           岡田 鷹洋

 

《参加者十四人》嵐田双歩、今泉而云、大澤水牛、岡田鷹洋、金田清水、久保道子、杉山三薬、須藤光迷、高井百子、谷川水馬、玉田春陽子、堤てる夫、廣田可升、向井愉里。

(まとめ 高井百子・廣田可升)

 

 

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