番町喜楽会年間優秀作品賞を発表

最優秀に幻水句「デジタルの虚実」

優秀作に斗詩子・木葉・てる夫句

番町喜楽会は、2月1日(土)に開催された第224回例会に先立って、令和6年の最優秀作品および優秀作品の表彰を行った。最優秀作品賞は前島幻水さんの「デジタルの世や虚も実も文化の日」が受賞、優秀作品には山口斗詩子、徳永木葉、堤てる夫三氏の作品が選ばれた。選考は大澤水牛氏にお願いし、昨年1年間に月例会や吟行で詠まれた会員の全作品1050句から選び抜かれたもの。受賞者には廣田会長から賞品の図書カードが贈られた。受賞者はそれぞれ喜びを語ったが、今年卒寿を迎える幻水さんにはひと際大きな拍手が送られた。なお1050句から水牛氏が選んだ103句が「令和六年代表作品」として併せて発表された。

〈最優秀作品賞〉

デジタルの世や虚も実も文化の日         前島 幻水

〈優秀作品賞〉

ただ歩く新緑の中まだ生きる           山口斗詩子

から松の散るや十勝に雪近し           徳永 木葉

寒の池鴨とは群れぬ鷺白し            堤 てる夫

(報告 中村迷哲)

 

Posted in 句会報告 | Leave a comment

番町喜楽会第224回例会

17人参加「立春」「クロッカス」を詠む

光迷、愉里が首位並走

「番町喜楽会賞」贈賞式も挙行

番町喜楽会は2月1日、千代田区立生涯学習館(九段下)で第224回例会を行った。1月は恒例の七福神吟行会で代替したため、この日が令和7年の初句会となった。句会に先立ち、恒例の「番町喜楽会賞」贈賞式が行われ、前島幻水、堤てる夫、徳永木葉、山口斗詩子四氏が表彰された。

2月句会には会員17氏から兼題「立春」「クロッカス」と当季雑詠の合計85句が寄せられた(田中白山氏は都合により欠場)。句会には9人が出席し選句・披講、合評会を行った。出席者6句選句、投句参加者5句選句を集計した結果、最高点は須藤光迷さんの「大和路へ誘う友あり春立ちぬ」と向井愉里さんの「百八十卒寿夫婦の年の豆」が5点で並んだ。続く4点には金田青水さんの2句と星川水兎さん、斉山満智さんの合計4句がひしめき合い、3点には6句が押しくら饅頭となった。2月例会の高点句(3点以上)は以下の通り。

「立春」

大和路へ誘う友あり春立ちぬ       須藤 光迷

春立つや庭でスキップするカラス     斉山 満智

立春大吉婆の読経はまだ続く       大澤 水牛

インフルもコロナも逸れて春立ちぬ    高井 百子

立春の裸電球古書の店          徳永 木葉

「クロッカス」

見廻りの猫またぎゆくクロッカス     金田 青水

教室の窓辺一列クロッカス        向井 愉里

「当季雑詠」

百八十卒寿夫婦の年の豆         向井 愉里

春霞スカイツリーを丸呑みに       金田 青水

東京駅二十三番線の春          星川 水兎

いつの間に少年の顔寒稽古        廣田 可升

バレンタイン婆もときめきチョコ用意   山口斗詩子

【参加者】(出席)廣田可升、大澤水牛、金田青水、須藤光迷、高井百子、玉田春陽子、堤てる夫、前島幻水、向井愉里。(投句参加)嵐田双歩、池内的中、斉山満智、澤井二堂、徳永木葉、中村迷哲、星川水兎、山口斗詩子。

(報告 大澤水牛)

 

Posted in 句会報告 | Leave a comment

日経俳句会第235回例会

初句会に34人から投句

方円句「初夢」が最高10点、二席に水牛・三薬句並ぶ

日経俳句会は令和7年の初句会(通算235回)を1月15日(水)に鎌倉橋の日経広告研究所会議室で開いた。昼間の好天に誘われたように12人が顔を揃え、新年らしい賑やかな句会となった。兼題は「春隣」と「雑炊」。34人から102句の投句があり、6句選(欠席は5句)の結果、植村方円さんの「初夢の行方不明となりにけり」が10点を得て一席となった。二席9点は大澤水牛さんの「焼跡に雑炊すする我八歳」と杉山三薬さんの「あれはだめこれも燃やすなどんど焼き」が分け合い、三席6点には中嶋阿猿さんの「小吉のみくじ結びて春隣」など5句が並んだ。以下、5点6句、4点3句、3点11句と続き、高点句が28句にのぼった。そのほかは2点11句、1点27句だった。兼題別の高点句(3点以上)は以下の通り。

「春隣」

両の目のレンズ張替え春隣              杉山 三薬

小吉のみくじ結びて春隣               中嶋 阿猿

春隣り傘寿は喜寿の膝まくら             加藤 明生

着ようかな黄色のセータ春隣             高井 百子

通学路手袋拾い春隣                 旙山 芳之

吸う息のかすかに湿り春隣              岩田 千虎

用済みのネクタイ捨てて春隣             植村 方円

なんとなく鼻むずむずと春隣             大澤 水牛

枝枝に辛夷つぼむや春隣               岡松 卓也

春隣友の上梓の初句集                廣上 正市

「雑炊」

焼跡に雑炊すする我八歳               大澤 水牛

雑炊で締めるつもりが吞み直し            中沢 豆乳

雑炊の二文字が嫌い大嫌い              横井 定利

蘊蓄も講釈も添へ河豚雑炊              嵐田 双歩

おいちいねおじやふうふう吾子笑ふ          岩田 千虎

客おくり一人ゆるりとおじや食ふ           金田 青水

雑炊となればでしゃばる男あり            高橋ヲブラダ

河豚雑炊酒断つ身には誘い無く            堤 てる夫

風邪の床母の雑炊しみわたる             徳永 木葉

 

当季雑詠

初夢の行方不明となりにけり             植村 方円

あれはだめこれも燃やすなどんど焼き         杉山 三薬

駄々っ子や勝つまで続くカルタ会           篠田  朗

初手水昭和百年幕が開く               中野 枕流

初春の移住あいさつ二人半              岡田 鷹洋

おめかしの妻を笑わせ初写真             中村 迷哲

三が日救急搬送けたたまし              久保田 操

こぼさじと空見上げをり寒椿             徳永 木葉

口紅の紅の深さや雪の朝               中嶋 阿猿

《参加者》【出席12人】嵐田双歩、池村実千代、今泉而云(選句のみ)、大澤水牛、金田青水、坂部富士子、篠田朗、杉山三薬、堤てる夫、中村迷哲、星川水兎、向井愉里。【投句参加23人】和泉田守、岩田千虎、植村方円、大沢反平、岡田鷹洋、岡松卓也、加藤明生、工藤静舟、久保道子、久保田操、澤井二堂、須藤光迷、高井百子、高橋ヲブラダ、徳永木葉、中沢豆乳、中嶋阿猿、中野枕流、旙山芳之、廣上正市、藤野十三妹、溝口戸無広、水口弥生。

(報告 中村迷哲)

 

 

Posted in 句会報告 | Leave a comment

酔吟会第172回例会

11人出席「寒四郎」と席題「結」を詠む

首位5点に迷哲「温暖化」、光迷「福寿草」の2句

酔吟会は令和7年の1月例会(第172回)を11日午後1時から江東区の芭蕉記念館で開催した。兼題は「寒四郎」、向井愉里さんから出題された席題は「結」。雑詠を含め投句5句、選句6句(うち特選1句)の結果、首位の5点句に、中村迷哲さんの「温暖化止められぬ星寒四郎」と須藤光迷さんの「余命まだいっぱいあるぞ福寿草」が並んだ。次点の4点句には、玉田春陽子さんの「カツカツと板書ひびけり寒四郎」および「行き先は極楽と決め日向ぼこ」、廣田可升さんの「また覗く転職サイト寒四郎」および「とろとろの結び昆布やおでん鍋」の4句がひしめき合った。兼題の「寒四郎」は難しい季語であり、席題の「結」もなかなか手強いにもかかわらず、高得点句13句の内、兼題句が5句、席題が6句で、雑詠がわずかに2句と、題詠に得点が集まる句会となった。出題者の面目躍如である。兼題別の高点句(3点以上)は次の通り。

「寒四郎」

温暖化止められぬ星寒四郎         中村 迷哲

カツカツと板書ひびけり寒四郎       玉田春陽子

また覗く転職サイト寒四郎         廣田 可升

寒四郎半袖異人こともなげ         徳永 木葉

み仏は素足におはす寒四郎               中村 迷哲

「結」

とろとろの結び昆布やおでん鍋       廣田 可升

元旦に結びし約束もう忘れ         大澤 水牛

駅弁の元祖はお結び寒の旅         杉山 三薬

大銀杏結ひて初場所大の里         徳永 木葉

縁結びスマホに頼る年男          中村 迷哲

初御籤丁寧に結ぶ細き指          向井 愉里

「当季雑詠」

余命まだいっぱいあるぞ福寿草       須藤 光迷

行き先は極楽と決め日向ぼこ        玉田春陽子

<句会参加者、11人>岩田千虎、大澤水牛、岡田鷹洋、金田青水、杉山三薬、須藤光迷、玉田春陽子、徳永木葉、中村迷哲、廣田可升、向井愉里。

(報告 廣田可升)

 

 

 

Posted in 句会報告 | Leave a comment

新春恒例多摩川七福神吟行

7人が滑って転んで福詣

日経俳句会、番町喜楽会合同の新春七福神詣を1月5日、多摩川下流域大田区矢口の「多摩川七福神」で行なった。恒例のこの行事も数えること21回。初回から今回まで参加しているのは、水牛さん一人になってしまった。場所も都内はほぼ行き尽くし、来年はどこか良いところないかと、早くも心配するほど。日本海側、東北北海道の大雪を尻目に、晴天続きの関東地方。この日も雲は少しあるが、風もなく穏やかな冬日和となった。集合場所の東急多摩川線武蔵新田駅に集まったのは、大澤水牛、池村実千代、須藤光迷、廣田可升、向井愉里、中村迷哲、杉山三薬の7人。

この七福神の由来はこうだ。1358年、南北朝時代の関東武将新田義興が、多摩川の矢口の渡を渡る際に、敵足利方に寝返った船頭に船の栓を抜かれ沈没、家臣10人と共に殺された。太平記にも記されたこの事件の顛末を後年、戯作者福内鬼外(平賀源内)が浄瑠璃「神霊矢口渡」として世に広めた。無念の義興の怨霊を鎮めようと建立されたのが新田神社で、同神社を軸に2014年、多摩川七福神が設置された。7人がまず向かったのが新田神社(恵比寿)。七福神巡りの地図、パンフレット類を作り、頑張っている。正月休み最終日とあって人出も多く、境内では南京玉簾など数種の大道芸が行われていた。裏手には謀殺された義興の胴体が埋められたという塚がある。祟りがあるから入ってはいかん、との立札が立ち、頑丈な柵で小山がすっぽり覆われている。薄暗く、なんとなく魔界の雰囲気。

新田神社を出て十寄神社(毘沙門天)、工場跡地に出現した大きなマンションと古びた工場兼住宅が混在する街並を通り抜け、三番目の東八幡神社(弁財天)に詣り、道を渡って多摩川土手に出た。目の前に大きな風景が広がった。遠くに霞む富士。穏やかな正月の陽を受けて、子供たちが、ボードを敷いて滑る「草すべり」に興じていた。見ていた老人たち、米寿間近の人までもが、尻滑りを始めた。二十歳の孫が自慢の実千代バアバも「ズボンだから大丈夫」と華麗に滑って行った。矢口の渡の跡を示す石碑は見当たらず、小さな説明板と、水際の石階段のみ。

さあ、お参り再開。延命寺(寿老人)へと北へ向かって歩く。さらに北へ。氷川神社(大黒天)に着く。残る二ヶ所は東急多摩川線の踏切を渡ってすぐの所にある頓兵衛地蔵(布袋尊)。裏切って義興謀殺に加担した船頭の頓兵衛が、罪を悔いて作った地蔵だとされる。七福神の親分、新田神社からすれば、にっくきトンベエのはずが、これを許して七福神の仲間に加えたわけだ。心が広いというか、客寄せ上手の平賀源内流というか?七番目の矢口中稲荷神社(福禄寿)は武蔵新田駅のホーム裏にひっそりと建ち幟が無ければ素通りしてしまう。かくて無事すべての行程を終了。光迷さんと可升さんは帰宅。五人が駅近くのもつ焼屋へ行く。下町らしい雰囲気の賑やかな店で天候に恵まれた一日を終えた。

吟行句会はいつものようにメール方式で実施。参加者が各3句を投句、5句選の結果、池村実千代さんの「厄年も遠くにありて福詣り」と杉山三薬さんの「町工場名残りの細道冬うらら」がともに4点を得て一席を分け合った。二席3点には三薬、可升、愉里さんの4句が並んだ。参加者の代表句は下記の通り。

厄年も遠くにありて福詣り        池村実千代

敵味方仲良く多摩川七福神        大澤 水牛

多摩堤すべってころんで初笑       杉山 三薬

お神酒受く破魔矢の元祖かたわらに    須藤 光迷

福詣締めはもつ焼き大明神        中村 迷哲

初春の運気呼び込む玉すだれ       廣田 可升

浄瑠璃の舞台辿りて七福神        向井 愉里

(報告 杉山三薬)

 

Posted in 句会報告 | Leave a comment

第20回日経俳句会賞決定

英尾賞に高井氏「根深汁」

横井・大沢・岩田・溝口氏に俳句会賞

《日経俳句会賞英尾賞》

異母妹といふ名の縁根深汁             高井 百子

《日経俳句会賞》

白湯一杯飲んで出かける敬老日     横井 定利

病窓に万緑がある生きてゐる      大沢 反平

ちゃん付けで呼ぶ同窓会冬うらら    岩田 千虎

万緑の更に奥なる光堂         溝口戸無広

《次点》

病む身には痛き色なり紅つつじ     藤野十三妹

はつ冬やほんに小さな秋でした     金田 青水

三文字の暖簾くぐりて泥鰌鍋      中野 枕流

第20回の節目となる令和6年度『日経俳句会賞』の授賞式が、12月18日の下期合同句会後に行われた。英尾賞は高井百子氏の「異母妹といふ名の縁根深汁」が受賞。俳句会賞には横井定利「白湯一杯飲んで出かける敬老日」、大沢反平「病窓に万緑がある生きてゐる」、岩田千虎「ちゃん付けで呼ぶ同窓会冬うらら」、溝口戸無広「万緑の更に奥なる光堂」の4氏4作品が選ばれた。高井氏は2回目の受賞だが英尾賞は初めて。大沢氏は3回目、横井、岩田氏は2回目、溝口氏は初受賞となった。次点には藤野十三妹、金田青水、中野枕流3氏の句が入った。選考委員の嵐田双歩幹事から選考経過の説明があり、中村迷哲幹事長から受賞者に賞状と副賞の図書券が手渡された。この後、大澤水牛顧問が句を読み解きつつ作者の心情に触れた講評を述べ、受賞を称えた。

授賞式に引き続いて年末懇親会を開催、立食形式で歓談した。テーブルには各地の地酒をはじめ、出前の稲荷ずしやピザなどが並び、グラスを手に出席者の会話が弾んだ。受賞の5人(横井、大沢氏は代読)がそれぞれ喜びを語ると大きな拍手が沸いた。

(報告 嵐田双歩)

 

Posted in 句会報告 | Leave a comment

日経俳句会令和6年度下期合同句会

19人が出席し、納めの会

百子句「寒卵」が一席10点、二席に迷哲句と戸無広句

日経俳句会は12月18日(水)夕、内神田の日経広告研究所会議室で下期合同句会を開いた。街はあちこちにイルミネーションが瞬き、師走らしい慌ただしさの中、寒風を突いて19人が一同に会した。ほとんどの高点句の作者が出席していた事もあり、句会は大いに盛り上がった。「水仙」の兼題に、当季雑詠含め37人から110句の投句があり事前選句の結果、一席は高井百子さんの「金賞とシール貼られし寒卵」が10点を獲得、この日発表された日経俳句会賞英尾賞受賞に花を添えた。次いで二席には中村迷哲さんの「越前の波濤眼下に野水仙」と溝口戸無広さんの「水仙のつぼみをほどく朝日かな」が8点で並び、三席には大沢反平さんの「房総の道の明るさ野水仙」、金田青水さんの「米寿への坂を登らん注連飾る」、徳永木葉さんの「教壇に薫る一輪水仙花」の3句が7点で並んだ。以下、6点3句、5点1句、4点8句、3点6句、2点と1点が各20句だった。兼題別の高点句(3点以上)は以下の通り。

「水仙」

越前の波濤眼下に野水仙               中村 迷哲

水仙のつぼみをほどく朝日かな            溝口戸無広

房総の道の明るさ野水仙               大沢 反平

教壇に薫る一輪水仙花                徳永 木葉

水仙の白き一輪黒唐津                篠田  朗

瀬音する厠の水仙無人駅               中沢 豆乳

床の間に古き竹籠水仙花               池村実千代

断崖をゆるやかにして水仙花             星川 水兎

「当季雑詠」

金賞とシール貼られし寒卵              高井 百子

米寿への坂を登らん注連飾る             金田 青水

湯気立てるラガーの声の殺気かな           金田 青水

荒巻の重さに耐えし五寸釘              玉田春陽子

家並の影絵となれり寒夕焼              溝口戸無広

良きことを心に刻む年忘               中野 枕流

片時もスマホ離さず去年今年             植村 方円

縦列のサギ動かざる寒の川              杉山 三薬

口軽く尻重くなる日向ぼこ              玉田春陽子

酔どれて家路は遥か寒昴               徳永 木葉

神主につかず離れず寒雀               中嶋 阿猿

遠き日の唱歌口つく冬の河岸             廣田 可升

立ち読みに耽り半時日記買ふ             和泉田 守

駆け足に色付きて散る冬木立             岡松 卓也

くるくるとドガの踊り子紅葉散る           中沢 豆乳

十二月この一年を肯定し               向井 愉里

《参加者》【出席19人】嵐田双歩、池村実千代、岩田千虎、植村方円、大澤水牛、金田青水、坂部富士子、篠田朗、杉山三薬、高井百子、玉田春陽子、堤てる夫、徳永木葉、中野枕流、中村迷哲、廣田可升、星川水兎、溝口戸無広、向井愉里。【投句参加18人】和泉田守、大沢反平、岡田鷹洋、岡松卓也、加藤明生、久保道子、久保田操、澤井二堂、須藤光迷、高橋ヲブラダ、谷川水馬、中沢豆乳、中嶋阿猿、旙山芳之、廣上正市、藤野十三妹、水口弥生、横井定利。

(報告 嵐田双歩)

 

 

 

Posted in 句会報告 | Leave a comment

番町喜楽会第223回例会

17人が「冬温し」「餅」を詠む

首位は光迷句「美容院」、二席満智句「会えぬ人」

番町喜楽会は令和6年12月例会(通算第223回)を7日(土)午後6時から東京・九段下の千代田区生涯学習館で開催した。この日からぐんと冷え込み、ようやく冬らしくなった。投句者は17人、投句総数83句といつもと同水準だが、句会出席者が7人にとどまった。その代わり、体調不良だった田中白山さんが元気を取り戻し「ぜひとも選句披講と合評会に出席させてください」と出かけて来た。また、年初から「休会」の今泉而云さんも「久しぶりに番喜会の皆さんに会いたくなった」と現れた。こうして〝特別選句参加者〟が2人加わり、句会は大いに盛り上がった。而云さんは「年が明けたら、番喜会に復帰させていただこうと思う」と、やる気が再燃したようである。

今回の兼題は「冬温し」と「餅」。投句5句、選句6句(欠席者は5句)で句会を行った結果、須藤光迷さんが7点句「冬ぬくし妻いそいそと美容院」で前月に引き続きトップの座を占めた。二席には斉山満智さんの6点句「会えぬ人会えぬまま過ぐ年惜しむ」が入った。三席は5点で、玉田春陽子さんの「冬温し長縄跳びの声そろえ」と金田青水さんの「気まぐれな犬に手を焼く冬帽子」の2句が並んだ。以下、4点が4句、3点5句、2点14句、1点20句だった。兼題別の高点句(3点以上)は次の通り。

「冬温し」

冬ぬくし妻いそいそと美容院             須藤 光迷

冬温し長縄跳びの声そろえ              玉田春陽子

全身であくびする猫冬温し              斉山 満智

小津映画寝ころんで見る冬温し            中村 迷哲

「餅」

焼餅のぷうと息して肩下ろす             嵐田 双歩

焼き餅のぷっと膨れて縮みけり            前島 幻水

あんころも大根おろしも餅が好き           嵐田 双歩

一筆箋添へて越後の餅届く              廣田 可升

当季雑詠

会えぬ人会えぬまま過ぐ年惜しむ           斉山 満智

気まぐれな犬に手を焼く冬帽子            金田 青水

冬紅葉かつて鉄路の眼鏡橋              須藤 光迷

雪催ひセリ場に踊る能登の蟹             徳永 木葉

熊の知恵語るマタギの囲炉裏端            中村 迷哲

 

《参加者》【出席7人】大澤水牛、金田青水、須藤光迷、玉田春陽子、廣田可升、前島幻水、向井愉里。【投句参加10人】嵐田双歩、斉山満智、澤井二堂、高井百子、谷川水馬、堤てる夫、徳永木葉、中村迷哲、星川水兎、山口斗詩子

【特別選句参加】今泉而云、田中白山。  (報告 大澤水牛)

 

 

Posted in 句会報告 | Leave a comment

日経俳句会第234回例会

正市句「玉砂利」が最高12点、二席9点に迷哲句「回顧展」

37人が「短日」「白菜」を詠む

日経俳句会は令和6年11月例会(通算234回)を11月20日(水)夕に鎌倉橋の日経広告研究所会議室で開いた。冷え込みに雨も加わり、出席は10人にとどまったが、高点句が多く熱気あふれる句会となった。兼題は「短日」と「白菜」。37人から111句の投句があり、6句選(欠席は5句)の結果、廣上正市さんの「玉砂利の音の尖りや今朝の冬」が12点を集め一席に輝いた。二席9点には中村迷哲さんの「回顧展出でて上野の暮早し」が入り、三席7点には嵐田双歩さんの「白菜や母はいつでも割烹着」、岩田千虎さんの「塩つかみ白菜漬ける母若し」と「ちゃん付けで呼ぶ同窓会冬うらら」、和泉田守さんの「捨てかねてめくる古本冬ぬくし」の4句が並んだ。以下、6点2句、5点5句、4点4句、3点9句と高点句が続いた。2点は19句、1点は28句だった。なお旙山芳之さんの定年に伴い、10月から溝口戸無広さんに日経総務局との窓口幹事を務めてもらうことになった。この日、溝口さんが初めて句会に出席し、幹事就任の挨拶をして、拍手で迎えられた。兼題別の高点句(3点以上)は以下の通り。

「短日」

回顧展出でて上野の暮早し              中村 迷哲

母と子のカフェで宿題暮早し             植村 方円

寝坊には日の短さのことのほか            大澤 水牛

短日や窓辺の妻の老いにけり             大沢 反平

短日やテレビ桟敷はもう結び             工藤 静舟

奈良公園巡るゆつたり日の短か            廣上 正市

短日や病院の帰路はや暗し              藤野十三妹

暮早し飯事遊び店仕舞い               久保田 操

短日や遊び足りぬとこねる駄々            須藤 光迷

赤ワインホットでいかが暮早し            谷川 水馬

短日のステンドグラス淡き翳             溝口戸無広

「白菜」

白菜や母はいつでも割烹着              嵐田 双歩

塩つかみ白菜漬ける母若し              岩田 千虎

白菜漬盛っておんなの長ばなし            杉山 三薬

白菜の身に預けくる重さかな             水口 弥生

ママチャリのうしろ白菜まえ子供           横井 定利

白菜や湯気のむこうに笑み三つ            池村実千代

当季雑詠

玉砂利の音の尖りや今朝の冬             廣上 正市

捨てかねてめくる古本冬ぬくし            和泉田 守

ちゃん付けで呼ぶ同窓会冬うらら           岩田 千虎

鳶三羽追ひつ追はれつ冬そこに            大沢 反平

熱々を噛めば汐の香牡蠣フライ            篠田  朗

もんじゃ焼恋しくなりぬ初時雨            須藤 光迷

鰤起し能登の漁港は閉じたまま            徳永 木葉

解体の日取り決まりて冬に入る            中嶋 阿猿

冬の蝶日の差す宙を惜しみけり            溝口戸無広

《参加者》【出席10人】嵐田双歩、池村実千代、植村方円、大澤水牛、金田青水、杉山三薬、中村迷哲、星川水兎、溝口戸無広、向井愉里。【投句参加27人】和泉田守、伊藤健史、岩田千虎、大沢反平、岡田鷹洋、岡松卓也、加藤明生、工藤静舟、久保道子、久保田操、坂部富士子、澤井二堂、須藤光迷、篠田朗、高井百子、高橋ヲブラダ、谷川水馬、堤てる夫、徳永木葉、中沢豆乳、中嶋阿猿、中野枕流、旙山芳之、廣上正市、藤野十三妹、水口弥生、横井定利。    (報告 中村迷哲)

 

 

Posted in 句会報告 | Leave a comment

酔吟会第171回例会開催

12人が兼題「初冬」と席題「AI(人工知能)」を詠む

首位6点に青水「小さな秋」「胡桃の音」、春陽子「七五三」の3句

5点に双歩「おでん酒」、4点に木葉「白無垢」、水牛「小春日」が並ぶ

酔吟会は令和6年11月例会(通算第171回)を9日午後1時から江東区の芭蕉記念館で開催した。兼題は「初冬」、徳永木葉さんから出題された席題は「AI(人工知能)」。雑詠を含め投句5句、選句6句(うち特選1句)の結果、首位の6点句に、金田青水さんの「はつ冬やほんに小さな秋でした」と「老の掌の胡桃の音や冬日向」の2句が入り、同じく6点句に玉田春陽子さんの「やれ笑へやれ走るなと七五三」が入った。次点の5点句は、嵐田双歩さんの「AIを酔はせてみたしおでん酒」。三席4点句には徳永木葉さんの「初冬の白無垢が行く鳥居下」と大澤水牛さんの「AIにこの小春日はつくれまい」が並んだ。この日の席題「AI」は難問かと思われたが、ふたを開ければ席題の高得点句は5句、一方兼題の「初冬」の句は3句しかなく、時事ネタに強いこの句会の傾向が表れた気もする。兼題別の高点句(3点以上)は次の通り。

「初冬」

はつ冬やほんに小さな秋でした     金田 青水

初冬の白無垢が行く鳥居下       徳永 木葉

切り札をめくればトランプ冬初め    杉山 三薬

「AI(人工知能)」

AIを酔はせてみたしおでん酒     嵐田 双歩

AIにこの小春日はつくれまい     大澤 水牛

深谷葱AI育ちと幟立て        玉田春陽子

答弁はAIまかせ山眠る        廣田 可升

AIに聞けばと言はれ鎌鼬       岩田 千虎

「当季雑詠」

老の掌の胡桃の音や冬日向       金田 青水

やれ笑へやれ走るなと七五三      玉田春陽子

秋の日は晴と決めつけ出で立ちぬ    大澤 水牛

即売所葉付大根泥おまけ        玉田春陽子

短パンに素足の娘炬燵出す       向井 愉里

<句会参加者12人>嵐田双歩、岩田千虎、大澤水牛、岡田鷹洋、金田青水、久保道子、杉山三薬、玉田春陽子、徳永木葉、中村迷哲、廣田可升、向井愉里。

(報告 廣田可升)

 

Posted in 句会報告 | Leave a comment