「月並時代千人千句集」と「俳句史百余年の誤解を解く」二部作発信

 

令和5年1月6日、NPO法人双牛舎は代表今泉恂之介(而云)著「月並時代・千人千句集」を発信開始した。

江戸末期から明治中期まで、俳諧(俳句)は大流行、武士階級はもとより上層商人から下町の長屋の大家さん、ご隠居に至るまで、五・七・五の発句作りに没頭した。今日の俳句隆盛を凌駕するような勢いだった。ところが、明治中葉、「発句」を「俳句」として「文芸の一ジャンル」にのし上げた正岡子規が、「写生」に基づく俳句づくりを唱道する過程で、それまでの俳諧の発句を「陳腐、堕落の月並調」と一刀両断に切り捨てた。富裕層の手遊びとも言える俳諧発句を「俳句」として「文学」の一角に据えた子規の功績は偉大だが、一茶以後明治中葉までの作品を全て葬り去ってしまった。子規の遺風をついだ高浜虚子以降の現代俳句界はこれを鵜呑みにして、この時期の俳句を顧みることなく埋没してしまった。これに疑念を抱いた而云さんは、この10数年、これら“月並俳句”の再発掘に取組み、「決して堕落・陳腐ではない」ことを実例を上げながら立証した。それがこの著作「月並時代千人千句集」と「千人千句集への道筋─俳句史百余年の誤解を解く」の二部作。双牛舎ブログのトップページあるいは「みんなの俳句」の左側の「目次」のタイトルをクリックすると現れる。(報告大澤水牛)

 

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第18回日経俳句会賞決定

英尾賞に玉田氏「ストロー」

中村・髙石・向井・杉山氏に俳句会賞

令和4年度『日経俳句会賞』(第18回)の授賞式が12月21日の下期合同句会後に行われた。日経俳句会英尾賞は玉田春陽子「ストローをのぼる空色夏来る」が受賞。日経俳句会賞には中村迷哲「豆腐屋の槽(ふね)満々と寒の水」をはじめ髙石昌魚「年甲斐もなきシャツの色竹の春」、向井愉里「焼芋や女系家族のケセラセラ」、杉山三薬「忠敬も林蔵も居て初歩き」の4作品が選ばれた。髙石、杉山氏は3回目、玉田、中村、向井氏は2回目の受賞。

嵐田選考委員会幹事から選考経過の説明があり、徳永幹事長から受賞者に賞状と副賞が手渡された。この後、大澤水牛、今泉而云両顧問が掛け合いの形で温かみのある句評を披露した。

授賞式に引き続いて年末懇親会を開催。コロナ感染防止に留意し、着席と立食を織り交ぜた形式で実施した。テーブルには缶ビール、日本酒、ワインが並び、ピザや稲荷ずしを肴に歓談の輪が広がった。席上、受賞の5人がそれぞれ喜びを語ったが、三月に膵臓がんが見つかった髙石昌魚氏が「受賞を励みに、病気に負けず句作を続けたい」と決意を述べると、ひときわ大きな拍手が沸いた。

《日経俳句会賞英尾賞》

ストローをのぼる空色夏来る       玉田春陽子

《日経俳句会賞》

豆腐屋の槽(ふね)満々と寒の水     中村 迷哲

年甲斐もなきシャツの色竹の春      髙石 昌魚

焼芋や女系家族のケセラセラ       向井 愉里

忠敬も林蔵も居て初歩き         杉山 三薬

《次点》

大宇宙星が星食う冬の夜徳永       徳永 木葉

海鳴りを聞きて五浦の石蕗の花      岩田 三代

家族葬にてとの便り秋時雨        須藤 光迷

(報告 嵐田双歩)

 

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日経俳句会令和4年度下期合同句会

一席に昌魚、水牛、双歩句が並ぶ

20人が出席し、納めの会

日経俳句会は12月21日、内神田の日経広告研究所会議室で下期合同句会を開いた。強い寒気の影響で秋田や新潟は大雪、都心でも最高気温が10度と冬らしい寒いこの日、今年の納めの会とあって20人が出席し句会は熱気に包まれた。通算35回目となる合同句会には38人から事前投句、兼題の「枯野」ほか当季雑詠の114句が集まった。投句者全員が事前選句した結果、水牛句「朝もやの海となりけり枯野原」、双歩句「歳時記に付箋の増えて十二月」、昌魚句「これからだ三年枠の日記買ふ」がそれぞれ8点で一席に並んだ。二席には光迷句「年の暮れ鏡に喜寿の顔ひとつ」が7点。次いで水牛句「枯野行く歩荷のリズム狂ひ無し」が6点を獲得し、大澤水牛さんは高点句を連発した。この日、日経俳句会賞を受賞した髙石昌魚さんは一席のほか、「粛々とがん共生の年惜しむ」が5点と受賞に花を添えた。5点句は髙石さん含め3人。以下4点6句、3点10句、2点25句、1点29句だった。兼題別の高点句(3点以上)は以下の通り。

「枯野」

朝もやの海となりけり枯野原             大澤 水牛

枯野行く歩荷(ぼっか)のリズム狂ひ無し       大澤 水牛

道祖神肩を寄せ合ふ枯野かな             岩田 三代

茫々と風や陽が行く枯野かな             久保 道子

枯野にも春待つ新芽の息吹あり            澤井 二堂

分け入れば風の優しき枯野かな            谷川 水馬

「当季雑詠」

歳時記に付箋の増えて十二月             嵐田 双歩

これからだ三年枠の日記買ふ             髙石 昌魚

年の暮れ鏡に喜寿の顔ひとつ             須藤 光迷

粛々とがん共生の年惜しむ              髙石 昌魚

身延線枯野に淡く富士の影              中沢 豆乳

住む前は銀杏落葉にあこがれし            旙山 芳之

年暮るゝエンゲル係数高止まり            金田 青水

足音も過去となりゆく師走かな            玉田春陽子

物ぐさの虫起きたるや堀炬燵             徳永 木葉

メモばかり増えて進まぬ年用意            廣田 可升

老夫在りし去年(こぞ)の師走のなつかしき      藤野十三妹

写真には写せぬものに隙間風             横井 定利

父母にさらに近づく年の暮れ             植村 方円

鬼柚子の獅子とも見ゆる湯舟かな           谷川 水馬

年の瀬や一番難所換気扇               玉田春陽子

姉三人八十路独り居年暮るる             堤 てる夫

主無き庭の裸木実は落ちて              堤 てる夫

踏み跡をたどりて迷ふ枯野かな            中村 迷哲

《参加者》【出席20人】嵐田双歩、今泉而云、植村方円、大澤水牛、大沢反平、岡田鷹洋、金田青水、澤井二堂、篠田朗、杉山三薬、鈴木雀九、髙石昌魚、玉田春陽子、堤てる夫、徳永木葉、中村迷哲、廣田可升、藤野十三妹、星川水兎、向井愉里。【投句参加18人】池村実千代、伊藤健史、岩田三代、加藤明生、工藤静舟、久保道子、久保田操、須藤光迷、高井百子、高橋ヲブラダ、谷川水馬、中沢豆乳、中嶋阿猿、旙山芳之、廣上正市、溝口戸無広、水口弥生、横井定利。

(報告 嵐田双歩)

 

 

 

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番町喜楽会第201回例会

春陽子さんの「セーターの伸びた袖」がトップ7点

番町喜楽会は令和4年12月の例会(通算第201回)を12月3日、東京・九段下の千代田区生涯学習館で開催した。17人から投句があり、14人が顔を揃えた。兼題は「大雪(たいせつ)」と「冬帽子」。選句は6句(欠席者は5句) で句会を進めた結果、玉田春陽子さんの「セーターの袖の伸びたる余生かな」(7点句)と、中村迷哲さんの「大雪や湯治場に満つ津軽弁」(6点句)、そして須藤光迷さんの「米粒のごと柊の花こぼれ」(5点句)がトップ争いを繰り広げたが、結局、玉田春陽子さんに凱歌が上がり令和4年掉尾を飾る特選トップの座を射止めた。以下、4点句が4句、3点3句、2点11句、1点20句という結果であった。兼題別の高点句(3点以上)は次の通り。

「大雪」

大雪や湯治場に満つ津軽弁             中村 迷哲

大雪や物は試しと赤パンツ             谷川 水馬

大雪や乾布摩擦の父の背な             嵐田 双歩

「冬帽子」

あの人と遠目に知れる冬帽子            廣田 可升

姉妹にて色違いなる冬帽子             須藤 光迷

八ヶ岳愛した友の冬帽子              堤 てる夫

「雑詠」

セーターの袖の伸びたる余生かな          玉田春陽子

米粒のごと柊の花こぼれ              須藤 光迷

再婚の新居はリノベ冬ぬくし            高井 百子

何にでも一家言あり泥鰌鍋             星川 水兎

≪参加者≫【出席14人】嵐田双歩、大澤水牛、金田青水、須藤光迷、高井百子、田中白山、谷川水馬、玉田春陽子、堤てる夫、徳永木葉、中村迷哲、廣田可升、前島幻水、向井愉里。【投句参加3人】池内的中、澤井二堂、星川水兎。

(報告・谷川水馬)

 

 

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日経俳句会第214回例会

36人が「山眠る」「石蕗の花」を詠む

三代句「五浦」が最高8点、二席に雀九句「蹲の杓」

日経俳句会は令和4年11月例会(通算214回)を16日(水)に鎌倉橋の日経広告研究所会議室で開いた。気温の変化で体調を崩す人もあり出席は13人にとどまったが、高点句が続出し充実の句会となった。兼題は「山眠る」と「石蕗の花」。36人から117句の投句があり、6句選(欠席は5句)の結果、岩田三代さんの「海鳴りを聞きて五浦の石蕗の花」が最高8点を獲得。二席7点には鈴木雀九さんの「蹲の杓置く脇に石蕗の花」が続いた。三席6点には岩田三代さん「水底に古き村抱き山眠る」をはじめ、岡田鷹洋さん「山眠る杜氏の仕込み夜もすがら」と「面会日兄と焼き芋分け合ひて」の二句、今泉而云さん「小春日の納屋に動かぬ機織り機」、廣上正市さん「届かずに木守の柿となりにけり」の計5句が並んだ。以下、5点9句、4点5句、3点9句と、高点句が30句にのぼった。そのほかは2点13句、1点20句だった。兼題別の高点句(3点以上)は以下の通り。

「山眠る」

水底に古き村抱き山眠る                  岩田 三代

山眠る杜氏の仕込み夜もすがら               岡田 鷹洋

にびの空木々薄墨に山眠る                 篠田  朗

大仏は俯き加減山眠る                   須藤 光迷

大伽藍ふところに抱き山眠る                徳永 木葉

山眠る顎まで雲を引き寄せて                溝口戸無広

谺さえ返さぬ山の深眠り                  水口 弥生

又ひとり離村したとや山眠る                金田 青水

新味噌を盛る店先や山眠る                 高井 百子

山眠る牛の尿の音響く                   谷川 水馬

幾星霜石仏を抱き山眠る                  中村 迷哲

「石蕗の花」

海鳴りを聞きて五浦の石蕗の花               岩田 三代

蹲の杓置く脇に石蕗の花                  鈴木 雀久

この道は抜けられません石蕗の花              杉山 三薬

信仰を隠れ継ぐ島石蕗の花                 中村 迷哲

このごろはあるじ見かけず石蕗の花             大下 明古

石蕗咲くや寺に往時の境内図                廣上 正市

クレヨンの色濃く塗りし石蕗の花              植村 方円

房総は雨も暖か石蕗の花                  星川 水兎

「当季雑詠」

小春日の納屋に動かぬ機織り機               今泉 而云

面会日兄と焼き芋分け合ひて                岡田 鷹洋

届かずに木守の柿となりにけり               廣上 正市

千歳飴も裾も玉砂利擦りながら               嵐田 双歩

大宇宙星が星食う冬の夜                  徳永 木葉

文化の日最前列でタカラヅカ                旙山 芳之

里山に柿の点描北信濃                   星川 水兎

蓮枯れてアートだよねと若き声               伊藤 健史

大根炊き匂ひ洩れくる老いの家               大澤 水牛

寒暁も老犬戸口で主人待つ                 澤井 二堂

老いの目を擦り見上げる冬の蝕               堤 てる夫

《参加者》【出席13人】嵐田双歩、岩田三代、植村方円、大澤水牛、岡田鷹洋、金田青水、澤井二堂、篠田朗、杉山三薬、鈴木雀九、堤てる夫、中村迷哲、向井愉里。【投句参加23人】池村実千代、伊藤健史、今泉而云、大沢反平、大下明古、加藤明生、工藤静舟、久保田操、須藤光迷、高井百子、髙石昌魚、高橋ヲブラダ、谷川水馬、徳永木葉、中沢豆乳、中嶋阿猿、旙山芳之、廣上正市、藤野十三妹、星川水兎、溝口戸無広、水口弥生、横井定利。

(報告 中村迷哲)

 

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酔吟会第159回例会

 

14人出席、「酉の市」「帰り花」詠む

会場の芭蕉記念館で「俳画の楽しみ」展を鑑賞

酔吟会は11月12日(土)、江東区常盤の「芭蕉記念館」会議室で11月例会(通算159回)を開催した。句会に先立ち同館で開催中の「俳画の楽しみ」展を野呂達矢芭蕉記念館次長のミュージアムトーク付きで鑑賞した。「俳画の楽しみ」展は、俳文学研究者でもある立正大学文学部教授の伊藤善隆氏のコレクションを中心に展示したもので、参加者は興味深く句会前の鑑賞を楽しんだ。この展示会は来年1月22日まで開かれている。俳画に絞った展覧会は珍しく、非常に珍しい作品が多数展示されており、必見の価値がある。

この日の句会出席は14人。恒例により持ち寄った作品を短冊に書くことから例会が始まった。兼題は「酉の市」と「帰り花」。雑詠を含め投句5句、投句総数70句、選句6句で進めた結果、最高点は玉田春陽子さんの8点「古書の値は鉛筆書きや一葉忌」の1句。次席は6点で「帰り花他人の老いはよく分かる」の杉山三薬句。三席5点には「独り居のよいしょと立ちて葱刻む」の今泉而云句、「玉蒟蒻も小さくなるや芋煮会」の高井百子句、「右膝が冬の初めを報せおり」の向井愉里句が並んだ。4点句は無し。3点句には大澤水牛、岡田鷹洋、高井百子、谷川水馬、廣田可升、向井愉里の6句が入った。2点句は10句、1点句は16句だった。兼題別の高点句(3点以上)は次の通り。

「酉の市」

酉の市未だ見ぬ福を値切りをり            高井 百子

境内は異次元迷路酉の市               向井 愉里

「帰り花」

帰り花他人の老いはよく分かる            杉山 三薬

陽の匂ふ子供の髪や帰り花              谷川 水馬

月食を見逃した夜の帰り花              廣田 可升

「当季雑詠」

古書の値は鉛筆書きや一葉忌             玉田春陽子

独り居のよいしょと立ちて葱刻む           今泉 而云

玉蒟蒻も小さくなるや芋煮会             高井 百子

右膝が冬の初めを報せおり              向井 愉里

錆鮎の姿正して焼かれたる              大澤 水牛

マフラーで隠す補聴器老いの見栄           岡田 鷹洋

 

《参加者十四人》嵐田双歩、今泉而云、大澤水牛、岡田鷹洋、金田清水、久保道子、杉山三薬、須藤光迷、高井百子、谷川水馬、玉田春陽子、堤てる夫、廣田可升、向井愉里。

(まとめ 高井百子・廣田可升)

 

 

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日経俳句会・番町喜楽会合同深秋信濃吟行

18人が参加、景色と蕎麦を満喫

番町喜楽会と日経俳句会は合同で、10月30日(日)から一泊二日で信州上田周辺の名所を巡り、新蕎麦を味わう吟行を行った。杉山三薬幹事の提案に、上田在住の堤てる夫・高井百子夫妻が全面協力。18人がマイクロバスをチャーターして、山深い修那羅山の石仏群をはじめ、五島慶太記念館、青木村義民歴史展示室、大法寺の三重塔を見物した。昼食は名店の蕎麦、夜は上田の老舗旅館で信州料理とワイン、地酒を堪能した。翌日は海野宿、小諸、上田城の3コースに分かれて観光、それぞれ句材を得て帰京した。泊りがけの吟行は2019年11月の養老渓谷吟行以来三年ぶり。好天に恵まれ、コロナの憂さを晴らす大満足の吟行となった。吟行を終え恒例のメール句会を実施、18人から54句の投句があった。5句選の結果、星川水兎さんの「木の瘤も拝めば仏秋うらら」が最高8点を獲得。二席7点は廣田可升さんの「義民史に埋まる書棚や冬隣」が占め、三席6点には嵐田双歩さんの「クーポンで美酒酌み交わし秋惜しむ」が入った。このほか5点1句、4点4句、3点7句、2点7句、1点13句で、上位句に点が集まる結果となった。参加者の代表句は以下の通り。

よく晴れて思ひ思ひに拾ふ秋       嵐田 双歩

木の洞に小さき仏や秋の風        今泉 而云

足取りを軽く見せての秋吟行       植村 方円

落葉着る目鼻の欠けし石仏        大澤 水牛

国宝の塔が見守る里の秋         金田 靑水

石仏の顔ににじみし秋憂ひ        澤井 二堂

山澄んで義民偲ばす石仏         杉山 三薬

秋の果を手に手に道の駅あおき      須藤 光迷

エンジンブレイキのバス黄落の道くだる  高井 百子

家々に鈴なりの柿青木村         田中 白山

暮の秋石神仏と睨めつこ         谷川 水馬

海野宿梲(うだつ)に足場冬隣      玉田春陽子

天守閣無き城跡の大銀杏         堤 てる夫

豪商の家は蕎麦屋に秋の蝶        徳永 木葉

格子戸の連なる町屋新酒売る       中村 迷哲

千仏の千様に座し末枯るゝ        廣田 可升

秋晴や旅の始めの地粉蕎麦        星川 水兎

高枝に天狗の気配枯葉落つ        向井 愉里

(まとめ 中村迷哲)

 

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番町喜楽会第200回例会

 

水牛句「席譲る子」が最高6点、二席は水馬句「ママチャリ」

「十一月」と「大根」を詠む

番町喜楽会は令和4年11月の例会(通算第200回)を7日、東京・九段下の千代田区生涯学習館で開催した。18人から投句があり、11人が顔を揃えた。兼題は「十一月」と「大根」。選句6句(欠席者5句)で句会を進めた結果、大澤水牛さんの「はにかみて席譲る子や秋うらら」が6点でトップ、二席5点に谷川水馬さんの「ママチャリの前は大根子は後ろ」が入った。三席は4点で澤井二堂さんの「猫の手の温かき日や十一月」、須藤光迷さんの「月天心終着駅で待つ始発」、前島幻水さんの「子らも来て妻の傘寿の菊の宴」の3句が並んだ。3点が8句で、2点が15句、1点が24句と得点がばらけた。兼題別の高点句(3点以上)は次の通り。

「十一月」

猫の手の温かき日や十一月              澤井 二堂

十一月行きつ戻りつ冬になる             田中 白山

十一月実の落ち終えて木々眠る            田中 白山

列車待つ十一月の足湯かな              谷川 水馬

「大根」

ママチャリの前は大根子は後ろ            谷川 水馬

大根干し海の風良し日和良し             谷川 水馬

鯨肉の潮味浸みる大根煮               中村 迷哲

「当季雑詠」

はにかみて席譲る子や秋うらら            大澤 水牛

月天心終着駅で待つ始発               須藤 光迷

子らも来て妻の傘寿の菊の宴             前島 幻水

祖母が着て母着た晴れ着七五三            池内 的中

コスプレの少女の夜寒渋谷駅             徳永 木葉

(二百回例会に寄せて)

善き人の往き交う句会秋闌ける            堤 てる夫

《参加者》【出席11人】池内的中、今泉而云、大澤水牛、金田青水、須藤光迷、高井百子、田中白山、玉田春陽子、堤てる夫、廣田可升、前島幻水。【投句参加者7人】嵐田双歩、澤井二堂、谷川水馬、徳永木葉、中村迷哲、星川水兎、向井愉里。

(報告 須藤光迷)

 

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日経俳句会第213回例会

36人参加「十月」「黄落」を詠む

光迷句「家族葬」が最高12点、百子句「妻の早足」が9点で続く

日経俳句会は10月19日、令和4年10月例会(通算213回)を鎌倉橋の日経広告研究所会議室で開いた。朝晩寒くなり晩秋にふさわしい夕べ、14人が出席し賑やかな句会となった。「十月」と「黄落」の兼題に36人から108句の投句があり、6句選(欠席は5句)の結果、須藤光迷さんの「家族葬にてとの便り秋時雨」が12点で一席に輝いた。二席は高井百子さんの「秋天や妻の早足追ひつけず」で9点、三席には向井愉里さんの「十月をあれこれ詰めて二段重」が8点で続いた。そのほか、先月入会したばかりの溝口戸無広さんの「十月や空へと続く千枚田」など、3句が6点で並んだ。以下、5点3句、4点3句、3点14句、2点22句、1点24句。4点以上が12句と少なく、まんべんなく得票した。兼題別の高点句(3点以上)は以下の通り。

「十月」

十月をあれこれ詰めて二段重             向井 愉里

十月の昭和の五輪ふと浮ぶ              久保田 操

十月や空へと続く千枚田               溝口戸無広

十月やベッドの脇に予備毛布             大澤 水牛

十月や茶色の上着取り出して             植村 方円

十月の果実に我が身甘やかす             大下 明古

十月や夢百歳へ十五年                岡田 鷹洋

十月や三年ぶりの旅に出る              岩田 三代

十月の窓の明かりの暖かさ              中嶋 阿猿

十月の大気を吸ひて太極拳              中村 迷哲

「黄落」

黄落や踏んだ踏まぬの通学路             伊藤 健史

黄落にくるまれ眠る城趾かな             嵐田 双歩

夕映えの地獄の門に黄落す              須藤 光迷

黄落やゴッホの顔の無精ひげ             谷川 水馬

黄落や横浜日本大通り                廣上 正市

黄落の一葉拾いつ墓地探し              藤野十三妹

黄落の夕陽を掬ふボートかな             星川 水兔

「当季雑詠」

家族葬にてとの便り秋時雨              須藤 光迷

秋天や妻の早足追ひつけず              高井 百子

遺句集を編みて深々寒露の夜             大澤 水牛

蔦巻くや故郷の家は朽ち果てて            工藤 静舟

渡り鳥タワー見ゆると鳴き交はす           今泉 而云

幼子が母呼ぶ道に金木犀               岩田 三代

匂ひくる金木犀を探す路地              久保田 操

お互ひに立派な腹よ秋刀魚焼く            谷川 水馬

ゴム巻きの愛機を放つ天高し             中村 迷哲

《参加者》【出席14人】嵐田双歩、今泉而云、岩田三代、植村方円、大澤水牛、岡田鷹洋、金田青水、篠田朗、杉山三薬、鈴木雀九、堤てる夫、徳永木葉、中村迷哲、星川水兎。【投句参加22人】池村実千代、伊藤健史、大沢反平、大下明古、加藤明生、工藤静舟、久保田操、澤井二堂、須藤光迷、高井百子、髙石昌魚、高橋ヲブラダ、谷川水馬、中沢豆乳、中嶋阿猿、旙山芳之、廣上正市、藤野十三妹、溝口戸無広、水口弥生、向井愉里、横井定利。 (報告 嵐田双歩)

 

 

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第199回番町喜楽会

最高5点に「草相撲」迷哲句

17人参加「穭田」「鹿」を詠む

番町喜楽会は令和4年10月の例会(通算第199回)を1日、東京・九段下の千代田区生涯学習館で開催した。17人から投句があり、15人が顔を揃えた。兼題は「穭田」と「鹿」。選句は6句( 欠席者は5句) で句会を進めた結果、中村迷哲さんの「打っちゃれと客も反身の草相撲」が5点でトップとなり、二席4点には嵐田双歩さんの「姥捨の田ごとの穭うすみどり」をはじめ、須藤光迷、今泉而云、谷川水馬、玉田春陽子、廣田可升さんの6人7句がひしめき合う結果となった。以下、3点が6句、2点が10句、1点が24句であった。兼題別の高点句(3点以上)は次の通り。

「穭田」

姥捨の田ごとの穭うすみどり            嵐田 双歩

穭田や米粉のパンの試食会             須藤 光迷

陽をはじく穭田続く車窓かな            星川 水兎

「鹿」

鹿の立つ丘の稜線夕焼けて             今泉 而云

秩父路や門扉に鹿の皮を干し            玉田春陽子

赤鳥居背にして鹿の家路かな            廣田 可升

売れ筋は鹿肉カレー道の駅             須藤 光迷

「当季雑詠」

打っちゃれと客も反身の草相撲           中村 迷哲

妻と越す七十の坂温め酒              谷川 水馬

声潜め第九をさらふ夜長かな            廣田 可升

恐竜の眠りは深し芒原               須藤 光迷

続柄は「未届の妻」秋入梅             高井 百子

秋の夜妻と取り合ふ万華鏡             谷川 水馬

星月夜二人暮らしの灯の一つ            玉田春陽子

≪参加者≫【出席15人】嵐田双歩、今泉而云、大澤水牛、金田青水、須藤光迷、高井百子、田中白山、谷川水馬、玉田春陽子、堤てる夫、徳永木葉、中村迷哲、廣田可升、前島幻水、向井愉里。【投句参加2人】澤井二堂、星川水兎。

(報告 谷川水馬)

 

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