新年恒例七福神吟行

日経俳句会・番町喜楽会19人千住宿を元気に歩き通す

令和6年1月7日(日)、番町喜楽会と日経俳句会のメンバー19人が恒例の七福神詣を北千住で開催した。この日は朝から晴、気温11度の寒中にしては穏やかな吟行日和。三薬幹事の先導で旧日光街道に踏み出した。

七福をもらいに朝の千代田線       二堂

仲間先しんがり嬉し初詣         雀九

福詣矢立のはじめ千住宿         水馬

芭蕉翁旅立ち偲び福詣          幻水

北千住には2006年の東京藝術大学の千住キャンパス開校を皮切りに、07年には東京未来大学、10年には帝京科学大学、12年には東京電機大学と、大学キャンパスが次々とできて、元々あった放送大学の東京足立学習センターを加えて合計五つの大学が誕生した。昔の少々いかがわしい宿場町の雰囲気はガラリ一変、明るく活発な雰囲気の街になっている。

若者の街をシニアの福詣         三代

ちょい飲み屋かき分けて行く福詣     方円

今回巡った七福神詣は①千住本氷川神社(大黒天)、②五丁目大川町氷川神社(布袋尊)、③元宿神社(寿老神)、④氷川神社(弁財天)、⑤稲荷神社(福禄寿)、⑥八幡神社(毘沙門天)、⑦千住神社(恵比寿天)であった。千住の七福神巡りは、もともと千住の町を活性化する目的で始まったようだが、北千住駅西口周辺の神社七箇所を旧千住宿の雰囲気を味わいながら歩くことができる。また、すべてが神社で、その内の三ケ所が氷川神社(千住神社も祭神が須佐之男命なのでこれも氷川神社であり、計4ヶ所となる)というのもユニークなところ。

街道に千の寿ぎ初吟行          愉里

七福神千寿と千住語呂合せ        白山

骨接ぎの名倉家ここに初詣        而云

冬温し骨接ぎ医院二百年         木葉

蒼穹の荒川土手や初吟行         青水

いかのぼり下町の空独り占め       双歩

軒先の福神拝む初湯かな         迷哲

寿老神接待の茶の呆け予防        鷹洋

まず三ヶ所の神社巡りを終えて、一旦バスで北千住駅に戻り三々五々昼食タイム。その後、駅西側の氷川神社(弁財天)、稲荷神社(福禄寿)、八幡神社(毘沙門天)、千住神社(恵比寿天)の四社を回って大願成就。

人日の陽を満身に福禄寿         水牛

溶岩の聳ゆ富士塚寒桜          可升

恵比寿像三遍まわし掛けし願       光迷

これで総距離約五キロの七福神巡りを無事終了。

満を持しての打ち上げ懇親会の会場は北千住駅東口の「牡蠣と燻屋かつを」という妙な名前の飲み屋。吟行衆19人のうち15人参加の大懇親会となった。四つのテーブルに分かれた連衆は、それぞれ日本酒やワインを楽しみながら歓談。ラストメニューの〈台湾まぜそば〉まで数々の料理を堪能、今年一年の健康と名句量産を祈った。

寒鰹足よこの日もありがとう       三薬

(報告 谷川水馬・廣田可升)

 

 

 

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日経俳句会令和5年度下期合同句会

日経俳句会令和5年度下期合同句会

一席は水兎句「冬すみれ」、二席春陽子句「空っ風」

17人出席し、納めの会

日経俳句会は12月20日(水)、内神田の日経広告研究所会議室で下期合同句会を開いた。季節外れの陽気は何処へやら、急に寒くなり師走らしい気候となったこの日、17人が出席し今年最後の熱い句会となった。「年の暮」の兼題に、当季雑詠含め39人から117句の投句があり事前選句の結果、星川水兎句「冬すみれ城の名残の野面積」が10点を獲得し一席に輝いた。次いで二席には玉田春陽子句「全集に朱文字の値札空つ風」が9点で続き、三席にはこの日、日経俳句会賞英尾賞を受賞した徳永木葉さんの「この年の傷を浸して柚子湯かな」(7点)が入った。6点句には澤井二堂句「何もかも妻の仕切りや年の暮」、溝口戸無広句「理髪師の刻むリズムや年の暮」、廣田可升句「伴侶といふ不思議の縁冬の旅」、水口弥生句「年の暮三倍速のひと日ずつ」の4句が並んだ。以下、5点4句、4点5句、3点14句、2点19句、1点25句だった。兼題別の高点句(3点以上)は以下の通り。

「年の暮」

何もかも妻の仕切りや年の暮             澤井 二堂

理髪師の刻むリズムや年の暮             溝口戸無広

年の暮三倍速のひと日ずつ              水口 弥生

一年の一日のごとく年暮るる             嵐田 双歩

今年こそマニキュア塗って年の暮           池村実千代

年の暮我慢できずに犬を買う             鈴木 雀九

一年の禍福煮こごる年の暮              中沢 豆乳

喜寿こえてヨットレースや年の暮           池村実千代

いくつかの不義理ともども年の暮           和泉田 守

拍子木の一夜一夜に年果つる             今泉 而云

この星もヒトも狂ひて年の果             岩田 三代

夫婦して初期認知症年暮るる             大澤 水牛

年の暮流るる雲の迅さかな              加藤 明生

酒干て生きて迎えし年の果              久保 道子

鼻歌を歌へば破調年の暮れ              髙橋ヲブラダ

腹立ちも右へ左へ年の暮               向井 愉里

当季雑詠

冬すみれ城の名残の野面積              星川 水兎

全集に朱文字の値札空つ風              玉田春陽子

この年の傷を浸して柚子湯かな            徳永 木葉

伴侶といふ不思議の縁(えにし)冬の旅         廣田 可升

凪ぐ海に星瞬くや十二月               加藤 明生

ペンギンの一列縦隊冬うらら             谷川 水馬

雑踏を歩くも楽し手帳買う              和泉田 守

川音の轟渡る冬露天                 植村 方円

もみ殻の林檎を掘りし幼き日             中村 迷哲

オラショ聴く祈りの島に冬の月            岩田 三代

孫と子と婿と師走の水天宮              金田 青水

狂い咲きもう振り向かぬ自然界            工藤 静舟

新海苔の香の束の封を切る              玉田春陽子

片っぽの靴下みっつ冬座敷              中沢 豆乳

《参加者》【出席17人】嵐田双歩、池村実千代、今泉而云、大澤水牛、岡田鷹洋、金田青水、澤井二堂、篠田朗、杉山三薬、鈴木雀九、須藤光迷、堤てる夫、徳永木葉、中村迷哲、廣田可升、星川水兎、向井愉里。【投句参加22人】和泉田守、伊藤健史、岩田三代、植村方円、大沢反平、岡松卓也、加藤明生、工藤静舟、久保道子、久保田操、高井百子、高橋ヲブラダ、谷川水馬、玉田春陽子、中沢豆乳、中嶋阿猿、中野枕流、旙山芳之、藤野十三妹、溝口戸無広、水口弥生、横井定利。  (報告 嵐田双歩)

 

 

 

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第19回日経俳句会賞決定

英尾賞に徳永氏「ゆすらうめ」

篠田・嵐田・須藤・中嶋氏に俳句会賞

今泉・大澤両氏の健吟に特別賞を贈る

《日経俳句会賞英尾賞》

ゆすらうめ幸運なんていつも小粒   徳永 木葉(三回目、英尾賞は初受賞)

《日経俳句会賞》

囀や窓を五センチ開けた朝       篠田  朗(初受賞)

戦争はテレビの中や新茶汲む      嵐田 双歩(四回目受賞)

虫の音を全て消したる妻の声      須藤 光迷(三回目受賞)

大ぶりも小ぶりも細し薔薇の首     中嶋 阿猿(二回目受賞)

《次点》

介護の夜妻に添い寝の余寒かな                 大沢 反平

空の青大地に散らし犬ふぐり     岩田 三代

青梅雨や古社千年の杉木立      堤 てる夫

《特別賞》

合掌の肘に傘提げ梅雨の葬      今泉 而云

処方箋一行増えて梅雨に入る     大澤 水牛

第19回(令和5年度)の『日経俳句会賞』の授賞式が12月20日の下期合同句会後に行われた。英尾賞は徳永木葉氏の「ゆすらうめ幸運なんていつも小粒」が受賞。俳句会賞には篠田朗「囀や窓を五センチ開けた朝」をはじめ嵐田双歩「戦争はテレビの中や新茶汲む」、須藤光迷「虫の音を全て消したる妻の声」、中島阿猿「大ぶりも小ぶりも細し薔薇の首」の四作品が選ばれた。徳永氏は3回目だが英尾賞は初の受賞。嵐田氏は4回目、須藤氏は3回目、中嶋氏は2回目、篠田氏は初受賞となった。次点には大沢反平、岩田三代、堤てる夫3氏の句が入った。また4年ぶりに開かれた双牛舎俳句大会(6月)で天賞を分け合い、双牛健在ぶりを印象付けた今泉而云、大澤水牛両氏に特別賞が贈られた。来年米寿を迎える両氏の衰えぬ創作意欲に敬意を表す意味もある。

選考委員の中村迷哲幹事長から選考経過の説明があり、受賞者に賞状と副賞が手渡された。この後、大澤水牛、今泉而云両顧問が掛け合いの形で温かみあふれる句評を披露した。

授賞式に引き続いて年末懇親会を開催。コロナ五類移行により制限がなくなり、以前のように立食形式で歓談した。テーブルには持ち寄りも含め、いろんな飲み物とつまみが並び、グラスを手に句友との会話が弾んだ。特別賞を含め、受賞の7人(中嶋氏は代読)がそれぞれ喜びを語ると大きな拍手が沸いた。

 

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番町喜楽会第212回例会

最高6点に水馬句と幻水句

16人が「北風」「薬喰」詠む

番町喜楽会は令和5年12月例会(通算第212回)を12月2日(土)、東京・九段下の千代田区生涯学習館で開催した。16人から投句があり、12人が顔を揃えた。兼題は「北風」と「薬喰」。選句は6句(欠席者5句)で句会を進めた結果、谷川水馬さんの「北風をゆつくり押して太極拳」と前島幻水さんの「菜食の妻には告げぬ薬喰」が6点で一席を飾った。二席には谷川水馬さんの「見はるかす六国峠石蕗の花」と徳永木葉さんの「伊那谷や豆腐すだれに北の風」の5点句が続いた。三席には大澤水牛さんの「北風の膝もと抜ける屋台かな」、金田青水さんの「寛解や姪のおごりの薬喰」と田中白山さんの「只今の声より先に北の風」の4点3句が入った。以下、3点7句、2点11句、1点10句という結果だった。兼題別の高点句(3点以上)は次の通り。

「北風」

北風をゆつくり押して太極拳             谷川 水馬

伊那谷や豆腐すだれに北の風             徳永 木葉

北風の膝もと抜ける屋台かな             大澤 水牛

只今の声より先に北の風               田中 白山

北風に向かひ塾行く六年生              徳永 木葉

「薬喰」

菜食の妻には告げぬ薬喰               前島 幻水

寛解や姪のおごりの薬喰               金田 青水

富士すでに影絵となりぬ薬喰             須藤 光迷

薬喰ちらとかすめる診断日              向井 愉里

当季雑詠

見はるかす六国峠石蕗の花              谷川 水馬

口も手も休み知らずの牡蠣割女            須藤 光迷

柿落葉はさみ歳時記とじにけり            須藤 光迷

保父のひく荷車の子ら冬日和             高井 百子

たはむれにフラフープして十二月           玉田春陽子

《参加者》【出席12人】嵐田双歩、大澤水牛、金田青水、須藤光迷、高井百子、田中白山、谷川水馬、玉田春陽子、堤てる夫、中村迷哲、廣田可升、前島幻水。【投句参加4人】澤井二堂、徳永木葉、向井愉里、山口斗詩子。   (報告 谷川水馬)

 

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日経俳句会第224回例会

参加40人で「立冬」と「おでん」を詠む

日経俳句会は令和5年11月例会(通算224回)を11月15日(水)に鎌倉橋の日経広告研究所会議室で開いた。兼題は「立冬」と「おでん」で、40人から118句の投句があった。前日に木枯し一号が吹き、冬の気配が濃くなったこの日は13人が出席、寒さを感じさせない熱いやり取りの句会となった。出席者6句(欠席は5句)で選句を進めた結果、廣上正市さんの「しくじりし日々の記憶やおでん喰ふ」が最高10点を獲得した。二席9点には中沢豆乳さんの「冬の陽で電車の床に指影絵」が入り、三席8点には中村迷哲さんの「最終版降ろし屋台のおでん酒」と岩田三代さんの「ガラス戸の中で爪切る小春かな」が並んだ。このほか7点1句、6点3句、5点1句、4点8句、3点9句と高点句が17句を数え、2点21句、1点42句を加えると、全投句の75%に点が入った。全体にまんべんなく点が入ったことにより、無得点の人がいないという嬉しい結果になった。兼題別の高点句(3点以上)は以下の通り。

「立冬」

立冬や靴箱にまだ父の靴               星川 水兎

加湿器と痒み軟膏冬来る               工藤 静舟

冬来たる古傷疼くバイクのり             久保 道子

立冬や常と変わらぬジャム三種            須藤 光迷

沢庵の歯ごたへ確か今朝の冬             徳永 木葉

立冬やまた重くなる菜漬け石             中沢 豆乳

富士箱根丹沢碧き今朝の冬              廣上 正市

のら猫の塀に陽射しや今朝の冬            今泉 而云

鳥の声高く響きて冬に入る              岩田 三代

乾きたる魚板の音やけさの冬             谷川 水馬

竹輪麩のありなしを問うおでん酒           中野 枕流

「おでん」

しくじりし日々の記憶やおでん喰ふ          廣上 正市

最終版降ろし屋台のおでん酒             中村 迷哲

叡山を下りて俗世のおでん酒             溝口戸無広

作り置くおでんの増える妻の留守           高井 百子

相席を乞ふ客と酌むおでん酒             金田 青水

おでん屋の暖簾に三角丸四角             横井 定利

当季雑詠

冬の陽で電車の床に指影絵              中沢 豆乳

ガラス戸の中で爪切る小春かな            岩田 三代

湯豆腐や相棒おらず湯気ばかり            藤野十三妹

浮島に甲羅干す亀小六月               嵐田 双歩

白菜は四等分で店に出る               工藤 静舟

下仁田の甘きみのりの根深汁             徳永 木葉

落葉吊る蜘蛛の古糸二三本              伊藤 健史

フルートの日に日にうまし窓の秋           高井 百子

草履の子ペタペタ歩く七五三             中野 枕流

《参加者》【出席13人】嵐田双歩、池村実千代、今泉而云、大澤水牛、岡田鷹洋、金田青水、篠田朗、杉山三薬、鈴木雀九、堤てる夫、中村迷哲、星川水兎、向井愉里。【投句参加27人】和泉田守、伊藤健史、岩田三代、植村方円、大沢反平、岡松卓也、加藤明生、工藤静舟、久保道子、久保田操、斉藤早苗、澤井二堂、須藤光迷、高井百子、高橋ヲブラダ、谷川水馬、徳永木葉、中沢豆乳、中嶋阿猿、中野枕流、野田冷峰、旙山芳之、廣上正市、藤野十三妹、溝口戸無広、水口弥生、横井定利。 (報告 中村迷哲)

 

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酔吟会第165回例会

13人が深川・芭蕉記念館で「芭蕉忌」と席題「銭」詠む

酔吟会は11月11日(土)、令和5年6回目となる句会(通算165回)を江東区・深川の芭蕉記念館で開いた。席題は須藤光迷さんから提示された「銭」。兼題は、芭蕉記念館で行う句会にふさわしいと、大澤水牛さんからあらかじめ提示された「芭蕉忌」だった。参加者は、席題、兼題、雑詠合せて5句を投句。選句は、その日一番と思う句を特選句(3点)として加え、計6句選とした。この日の参加者は13名。このところ続いた異常気象の夏日とは打って変わって北風が吹く寒い日となったが、黒板に席題「銭」が張り出されると、参加者は即座に作句に入り、午後1時半句会開始となった。投句合計64句で進めた結果、玉田春陽子さんの「行く雲も風も過客よ翁の忌」が最高8点を獲得、2票の特選が付いた。二席6点は廣田可升さんの「時雨忌や橋のたもとの由緒書」で、これにも2票の特選付き。続く三席は特選各1票の計5点が2句で、春陽子さん「神の旅成層圏はいつも晴」と須藤光迷さん「小春日や戦火の絶えぬ星なれど」が並んだ。合評会は4点5句、3点8句を含めて行い、午後四時三十分に散会となった。次回の「席題」選定者は、くじ引きの結果高井百子さん。兼題・席題別の高点句(3点以上)は以下の通り。

「芭蕉忌」

行く雲も風も過客よ翁の忌             玉田春陽子

時雨忌や橋のたもとの由緒書            廣田 可升

まづたのむ熱燗二本翁の忌             嵐田 双歩

芭蕉忌や佐渡には多き能舞台            須藤 光迷

芭蕉忌やその道行くもやぶのなか          久保 道子

芭蕉忌を芭蕉庵で詠むてれもせず          杉山 三薬

大川は風の通ひ路翁の忌              谷川 水馬

「銭」

小銭交換五十枚迄冬ざるる             大澤 水牛

甦る銭形平次夜鷹蕎麦               金田 青水

銭湯を出て振り仰ぐ冬の虹             金田 青水

銭函という駅過ぎぬ夕時雨             須藤 光迷

銭惜しみ熊手は小振り酉の市            廣田 可升

「当季雑詠」

小春日や戦火の絶えぬ星なれど           須藤 光迷

神の旅成層圏はいつも晴              玉田春陽子

酉の市はぐれて熊手道しるべ            岡田 鷹洋

竹の花消えて朽ち行く暮の秋            高井 百子

冬あさし片足立ちを二十秒             玉田春陽子

【参加者13人】嵐田双歩、今泉而云、大澤水牛、岡田鷹洋、金田靑水、久保道子、杉山三薬、須藤光迷、高井百子、谷川水馬、玉田春陽子、廣田可升、向井愉里。 (報告 高井百子)

 

 

 

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番町喜楽会第211回例会

17人参加「そぞろ寒」と「鴨」を詠む

番町喜楽会は令和5年11月例会(通算第211回)を6日午後6時半から東京・九段下の千代田区生涯学習館で開催した。兼題は「そぞろ寒」と「鴨」、雑詠を含め投句5句、選句6句(欠席者は5句)で句会を進めた結果、玉田春陽子さんの「今朝の冬顔を小さく洗いけり」が7点で首位を独走、6点と5点はなく、次点に中村迷哲さんの4点句「落日の一湾埋める浮寝鴨」が入り、三席に3点の9句が並ぶという、すさまじく票が分かれた結果となった。実力伯仲というべきか、団栗の背比べというべきか。兼題別の高点句(3点以上)は次の通り。

「そぞろ寒」

寝過ごして知らない駅やそぞろ寒   嵐田 双歩

そぞろ寒診察待ちの顔と顔      大澤 水牛

モニターに映る頚椎そぞろ寒     廣田 可升

「鴨」

落日の一湾埋める浮寝鴨       中村 迷哲

徐ろに鴨寄って来て引き返す     嵐田 双歩

鴨一家かかあ天下であるらしき    須藤 光迷

「当季雑詠」

今朝の冬顔を小さく洗いけり     玉田春陽子

秋袷鏡の中に九十九髪        高井 百子

処理水の騒ぎは知らぬ海鼠かな    徳永 木葉

雑踏に在りてアジアの秋思かな    廣田 可升

連山のくっきり見えて栗御飯     星川 水兎

【参加者】(出席13人)池内的中、大澤水牛、金田青水、須藤光迷、高井百子、田中白山、玉田春陽子、堤てる夫、中村迷哲、廣田可升、星川水兎、前島幻水、向井愉里、(投句参加4人)嵐田双歩、澤井二堂、谷川水馬、徳永木葉。

(報告 須藤光迷)

 

 

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多治見・馬籠・妻籠宿吟行を催行

 

日経俳句会、番町喜楽会合同の一泊吟行を、10月29、30の両日、陶器の町多治見と、中山道の妻籠、馬籠宿で行った。参加者は大澤水牛、堤てる夫、高井百子、金田青水、須藤光迷、嵐田双歩、植村方円、向井愉里、杉山三薬(幹事)の9人。

初日29日土曜日は、織部や志野の名で知られる陶器の里、岐阜県多治見市を訪問。午後1時、中央線線多治見駅に集合。駅から「本町オリベストリート」を目指して歩き始める。そこは、明治から昭和にかけて、美濃焼の卸問屋が軒を並べて栄えた多治見本町の中心部。その景観を残しつつ、新しい施設を整備して、同市が観光の目玉とした場所。快晴、爽やかな風の中、のんびり気分のメンバーは、それぞれ見繕って陶器店に入り、土産になる器などを選んだ。陶器店の他目立つのは、陶器成金とおぼしき豪邸やお洒落な建物。表札には加藤、古田の文字が目立つ。陶祖加藤景光に始まり、古田織部、そして現代の加藤唐九郎と素人でも知っている美濃焼、織部焼にかかわる著名人を偲ばせる。なんと交番も壁面格子の、レストラン風構え(格子は刑務所だろうに)。メイン通りから少しはずれた所には、明治大正とおぼしき建物が随所に見られる。今も営業している料亭の豪壮な造りは、美濃豪商の栄華を物語る。

しかし、パンフレットの謳い文句ほどには、見ものの種類は多くない。3時過ぎ、スマホ地図を駆使する愉里さんに率いられた6人が「陶祖景光の碑と陶器商人の元締め加藤助三郎顕彰碑」の探索に向かう。ちょっと高台、街並みを一望できる場所にそれはあった。町中を離れたせいか、水牛さんも「これで吟行気分が高まった」。一同、足元に草むらの種、ヒッツキ虫(草虱)を纏わらせて戻る。これが、また取るのに一苦労の難物。いい暇つぶしになったかも。町の中央に戻ると、てる夫さん百子さんが並んで、円形ベンチで待っていた。この風景どこかで見たことがある。そーだ。小津安二郎の「東京物語」笠智衆と東山千栄子の荒川堤の場面だ。いい味出してましたよ、ご両人。

それぞれの時間を過ごして午後5時。地元評判の蕎麦屋「井ざわ」で夕食。料理が織部と見られる器で出て来るのは、成程の演出だ。8時少し前に町外れにあるホテルに入る。風呂の後、まだ意気盛んな水牛さんの部屋に双歩、愉里、三薬が参内。10時ごろまで尻取り連句に興じた。かくして初日終了。

二日目。今日もいい天気。朝9時にタクシーでホテル出発、多治見駅から中央線特急で中津川に行き、地元の南木曽観光の貸切りバスに乗り、まず妻籠宿の最寄り駐車場に到着、一同9人、坂を登り旧中山道妻籠宿に足を踏み入れ、まず鯉岩という大きな石を見る。中山道三名石の一つとかでとにかくデカい。明治24年の濃尾大地震で形が変わってしまったなどの、解説が掲示されている。そこから南へ馬籠方向へブラリ歩き。月曜日とあって人通りも予想したほどではない。ただ、外人さんが多い。道の両側に建ち並ぶ旅籠屋は、旅行パンフレットなどでお馴染みのレトロ。てる夫さん「泊まってみたいなぁ」とポツリ。(実際泊まったら、反省するだろうな)。道がほぼ直角に曲がる、街道特有の桝形という空間などを訪ねて、来た道を引き返す。途中、蕎麦屋で全員昼食。バスに戻ってそこから馬籠宿へ飛ばしてもらう。林道をくねくね、紅葉はそう派手ではないが「木曽路は山の中」藤村の一文がよく分かる。

馬籠見晴らし台近くでバスを降り、馬籠道を藤村記念館方面へ歩く。こちらは、妻籠よりはるかに急な坂。観光客もずっと多い。しかも水牛さん言うところの、紅毛碧眼のなんと多いことよ。大型キャリーケース二個を押して急坂を登るタフガイには、だから大戦で負けた、と思わざるを得ない。地酒を売る店、せんべいやお焼きの店で足を休めつつ、ヤマト老人部隊は歩を進める。馬籠宿本陣の藤村記念館は、藤村幼少期の建物がそのまま残されている。明治日本の典型的エリートの出自を感じさせる。そこからさらに急坂を下り、バス通りへ。そこで我らの歩きは終了。一同、中津川に戻り解散、吟行句会は数日後、高井百子さんが取りまとめ役となり、選句選評をメールでやり取りする方式で行った。参加者の吟行代表句を吟行順序に従って並べよう。

美濃焼の集散の地や秋の風      須藤 光迷

東濃は歯医者も加藤冬近し      金田 靑水

秋うらら陶祖の碑からひっつき虫   向井 愉里

銀杏を踏みつつ探す陶祖の碑     嵐田 双歩

揺れ酷し美濃の特急秋吟行      高井 百子

天高し木曽路はすべて坂と石     杉山 三薬

秋深み妻籠の宿のすんき蕎麦     大澤 水牛

秋晴れや文豪生家の一本松      堤 てる夫

木守柿皆で見上げて木曽の中     植村 方円

(まとめ 杉山三薬・大澤水牛 23.11.12.記)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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日経俳句会第223回例会

36人が「蟋蟀」と「菊」を詠む

一席7点に「混浴」双歩句、二席は4句並ぶ

日経俳句会は10月18日(水)、内神田の日経広告研究所会議室で10月例会を開いた。少し前までの暑さが嘘のように急に秋らしい気配となったこの日、13人が出席、和やかな句会となった。兼題は「蟋蟀」と「菊」。36人から合計108句の投句があり、6句選(欠席5句)の結果、嵐田双歩さんの「混浴に先客一人ちちろ鳴く」が7点で一席、二席6点には溝口戸無広さんの「ちちろ虫瞬く星と呼び交はす」、高井百子さんの「庭の菊野菜と並ぶ直売所」、横井定利さんの「十月や布巾だけでも新しく」、双歩さんの「木犀の金銀の香を拾ひけり」の四句が並んだ。三席5点句は中野枕流さんの「闘蟋のどこか悲しき勝ち名乗り」など8句、4点が7句、3点13句、2点14句、1点27句だった。兼題別の高点句(3点以上)は以下の通り。

「蟋蟀」

混浴に先客一人ちちろ鳴く              嵐田 双歩

ちちろ虫瞬く星と呼び交はす             溝口戸無広

ひととせの束の間なるやちちろ鳴く          和泉田 守

ちちろ鳴くアニメ聖地の古社             徳永 木葉

闘蟋(とうしつ)のどこか悲しき勝ち名乗り      中野 枕流

こほろぎのぢぢいぢぢいと呼ぶ夜半          大澤 水牛

こほろぎの二尺跳んだり父の畑            伊藤 健史

ゴッホ展閉館告ぐるちちろかな            加藤 明生

ちちろ鳴く納屋の片隅隠れんぼ            中村 迷哲

縁側に大の字の父ちちろ鳴く             横井 定利

「菊」

庭の菊野菜と並ぶ直売所               高井 百子

とりどりの菊纏ひをり白虎隊             岩田 三代

酢の利いた黄とむらさきの菊膾            金田 青水

よしよしと猛暑越えたる菊手入れ           大澤 水牛

お別れの温顔に置く菊一輪              岡田 鷹洋

菊日和馬券舞ひ散る競馬場              加藤 明生

白菊の一輪ごとの別れかな              中沢 豆乳

白菊や母校の歴史刻みをり              池村実千代

菊一輪我も手向けん無縁仏              和泉田 守

引いてとく飴のつつみや菊日和            星川 水兎

当季雑詠

木犀の金銀の香を拾ひけり              嵐田 双歩

十月や布巾だけでも新しく              横井 定利

捨てられし田の畔染める曼珠沙華           岩田 三代

天高し少年少女鼓笛隊                加藤 明生

大根引く十坪だけの借り畑              徳永 木葉

跳ね回れやんちゃうれしや障子貼り          工藤 静舟

酒瓶に芒無造作縄のれん               中沢 豆乳

唐突に秋冷来たる三崎港               大沢 反平

コスモスや青空向いて大合唱             澤井 二堂

六畳間ドローンを飛ばす夜寒かな           鈴木 雀九

思い出す生きる喜び金木犀              旙山 芳之

金木犀やさしき心呼び覚ます             中嶋 阿猿

分きざみ夫婦生まれる秋うらら            中村 迷哲

《参加者》【出席13人】嵐田双歩、池村実千代、今泉而云、植村方円、大澤水牛、金田青水、篠田朗、杉山三薬、鈴木雀九、堤てる夫、中村迷哲、星川水兎、向井愉里。【投句参加23人】和泉田守、伊藤健史、岩田三代、大沢反平、岡田鷹洋、岡松卓也、加藤明生、工藤静舟、久保田操、澤井二堂、須藤光迷、高井百子、高橋ヲブラダ、谷川水馬、徳永木葉、中沢豆乳、中嶋阿猿、中野枕流、旙山芳之、廣上正市、藤野十三妹、溝口戸無広、横井定利。

(報告 嵐田双歩)

 

 

 

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番町喜楽会第210回例会

双歩句「洗濯機の団栗」がトップ10点

番町喜楽会は令和5年10月例会(通算210回)を10月7日、東京・九段下の千代田区生涯学習館で開催した。投句者17人、句会出席は10人。兼題は「天高し」と「団栗」。選句6句(欠席者は5句)で句会を進めた結果、嵐田双歩さんの「団栗も一緒に回る洗濯機」が10点で一席を飾った。二席には谷川水馬さんの7点句「秋夕焼畳むタオルの陽の匂ひ」。三席には谷川さんの「握りしめ温きどんぐり子の土産」と中村迷哲さんの「野仏を飾るかんざし赤蜻蛉」の5点句が入った。以下、4点が4句、3点6句、2点9句、1点16句という結果であった。兼題別の高点句(3点以上)は次の通り。

「天高し」

さきたまに群なす古墳天高し            廣田 可升

天高し身を反らし見る摩崖仏            星川 水兎

乳牛のモンローウォーク天高し           玉田春陽子

天高し龍勢の火矢峰を越え             徳永 木葉

天高しドロップゴール成功す            前島 幻水

「団栗」

団栗も一緒に回る洗濯機              嵐田 双歩

握りしめ温きどんぐり子の土産           谷川 水馬

どんぐりの転がる帰路のリアシート         廣田 可升

団栗や園児のポッケ膨らみて            向井 愉里

「雑詠」

秋夕焼畳むタオルの陽の匂ひ            谷川 水馬

野仏を飾るかんざし赤蜻蛉             中村 迷哲

名月の町を眼下に最終便              須藤 光迷

両手添え受ける新米一膳目             玉田春陽子

十八年ぶりの号外星月夜              廣田 可升

≪参加者≫【出席10人】大澤水牛、金田青水、須藤光迷、高井百子、田中白山、谷川水馬、玉田春陽子、堤てる夫、中村迷哲、廣田可升。【投句参加7人】嵐田双歩、池内的中、澤井二堂、徳永木葉、星川水兎、前島幻水、向井愉里。

(報告・谷川水馬)

 

 

 

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