番町喜楽会第217回例会

青水句「夏の雲」が最高5点、二席に白山句と水兎句

「夏の川」と「十薬」を詠む

番町喜楽会は令和6年6月例会(第217回)を6月1日(土)、東京・九段下の千代田区生涯学習館で開催した。18人から投句があり、9人が顔を揃えた。兼題は「夏の川」と「十薬」。選句6句(欠席者は5句)で句会を進めた結果、金田青水さんの「何しとる死ぬの待っとる夏の雲」が5点でトップ、二席には田中白山さんの「十薬や初転勤の一軒家」と星川水兎さんの「十薬や漬物石の捨て置かれ」が4点で続いた。以下、3点10句、2点17句、1点22句という結果だった。兼題別の高点句(3点以上)は次の通り。

「夏の川」

夕まずめ網うつ老父夏の川              池内 的中

夏川や女人高野へ太鼓橋               谷川 水馬

少女らの素足のびやか夏の川             山口斗詩子

「十薬」

十薬や初転勤の一軒家                田中 白山

十薬や漬物石の捨て置かれ              星川 水兎

十薬や母校はとうに廃校に              向井 愉里

当季雑詠

何しとる死ぬの待っとる夏の雲            金田 青水

ひつじぐさ咲くやシャブリのコルク抜く        大澤 水牛

明易の夫婦は寡黙散歩道               高井 百子

浜風の旨味ぞ鯵の一夜干し              玉田春陽子

カーテンの光濾過して薄暑かな            玉田春陽子

時の日や光年といふ時間軸              徳永 木葉

こだわりの固形石鹼夏衣               星川 水兎

《参加者》【出席者9人】池内的中、大澤水牛、金田青水、田中白山、谷川水馬、玉田春陽子、廣田可升、前島幻水、向井愉里。【投句参加9人】嵐田双歩、斉山満智、須藤光迷、高井百子、堤てる夫、徳永木葉、中村迷哲、星川水兎、山口斗詩子。

(報告 谷川水馬)

 

 

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日経俳句会第229回例会

百子句「衣替」最高14点、二席に卓也句、三席に光迷句

38人が「葛餅」「葉桜」詠む

日経俳句会は令和6年の5月例会(通算229回)を5月15日(水)に鎌倉橋の日経広告研究所会議室で開いた。ケガなどで欠席が相次ぎ、出席は見学者を含め12人にとどまったが、高点句が多く盛り上がった句会となった。体調を崩していた堤てる夫さんが4ヵ月ぶりに元気な姿を見せ、句座に加わった。兼題は「葛餅」と「葉桜」。38人から114句の投句があり、6句選(欠席は5句)の結果、高井百子さんの「母の手に似る手の皺や衣替」が14点と圧倒的な支持を集めた。二席9点には岡松卓也さんの「くろもじの先を葛餅逃げ回る」が続き、三席8点には須藤光迷さんの「葉桜や老には老の矜恃あり」が入った。また6点句には大澤水牛さんの「医者通ひ葉桜日々に色を増し」をはじめ4句が並び、5点5句、4点6句、3点12句と高点句が30句にのぼった。このほか2点16句、1点30句だった。この日は入会希望で日経OBの増田浩志さんが見学に訪れ、選句に加わった。兼題別の高点句(3点以上)は以下の通り。

「葛餅」

くろもじの先を葛餅逃げ回る             岡松 卓也

木漏日や吉野葛餅うすにごり             須藤 光迷

旧交を葛餅に蜜掛けながら              嵐田 双歩

酒も呑む葛餅も喰ふ師匠かな             谷川 水馬

葛餅の武骨な色も味も江戸              水口 弥生

ぷるるんと葛餅揺れて雲流る             岩田 三代

くず餅の講釈長し奈良生れ              廣上 正市

葛餅や病友やうやく快方へ              大沢 反平

葛餅の少し透かせて皿の青              谷川 水馬

蜜なめて葛餅残す孫娘                堤 てる夫

「葉桜」

葉桜や老には老の矜恃あり              須藤 光迷

医者通ひ葉桜日々に色を増し             大澤 水牛

葉桜やきらきら光る隅田川              嵐田 双歩

葉桜や上野は緑の風を呼び              澤井 二堂

葉桜や白壁揺るる武家屋敷              加藤 明生

華やぎの去って葉桜影深く              久保田 操

葉桜や洒々落々と孫連れて              谷川 水馬

葉桜もひと目千本風青し               中沢 豆乳

葉桜や足取り軽く杖の人               中嶋 阿猿

葉桜の勢い花の記憶消す               向井 愉里

葉桜や訪ふ人も無き風の音              横井 定利

当季雑詠

母の手に似る手の皺や衣替              高井 百子

ナナハンの縦一列に風薫る              植村 方円

病窓に光のはねる五月かな              横井 定利

点滴の刻む命や五月闇                岡田 鷹洋

キャンパスの杜を貫き五月来る            溝口戸無広

老木も若木もすべて柿若葉              中村 迷哲

天秤の揺れに任せて金魚売り             野田 冷峰

活鯵と出刃包丁の三十度               伊藤 健史

自販機でしばし休憩つばくらめ            旙山 芳之

《参加者》【出席12人】嵐田双歩、今泉而云、大澤水牛、金田青水、澤井二堂、篠田朗、杉山三薬、堤てる夫、中村迷哲、星川水兎、向井愉里、(見学)増田浩志。【投句参加27人】池村実千代、和泉田守、伊藤健史、岩田三代、植村方円、大沢反平、岡田鷹洋、岡松卓也、加藤明生、工藤静舟、久保道子、久保田操、須藤光迷、高井百子、高橋ヲブラダ、谷川水馬、徳永木葉、中沢豆乳、中嶋阿猿、中野枕流、野田冷峰、旙山芳之、廣上正市、藤野十三妹、溝口戸無広、水口弥生、横井定利。

(報告 中村迷哲)

 

 

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酔吟会第168回例会

兼題「夏めく」と席題「嫉妬」

「母の日」を詠んだ愉里さんが金的

5月11日(土)午後1時から深川・芭蕉記念館で第168回酔吟会例会が行われた。この日の兼題は「夏めく」で、恒例の席題は徳永木葉さん出題の「嫉妬・妬み」。出席者は9人と少なかったが、脳出血リハビリ中の岡田鷹洋さんが「脳の訓練のため特別投句参加」し、参加10人・投句総数50句の例会となった。選句6句で句会を進めた結果、向井愉里さんの雑詠句「母の日や母でも子でもあり多忙」が9点獲得で断然の天位に輝いた。二席は6点で席題句の「薫風に妬みそねみを吹き流し」(水牛)、三席は同じく席題句「嫉み合ふ式部と納言卯波立つ」(木葉)と雑詠「かたまって出番待つかに踊子草」(春陽子)が5点で並んだ。以下、4点1句、3点4句、2点6句、1点10句だった。3点以上の作品は以下の通り。

「夏めく」

すらり脚ずんぐり脚や夏めきぬ        大澤 水牛

「嫉妬・妬み」

薫風に妬みそねみを吹き流し         大澤 水牛

嫉み合ふ式部と納言卯波立つ         徳永 木葉

夜濯ぎや嫉妬軽々流したり          金田 青水

妬むほど隣の畑の整ひて           向井 愉里

「当季雑詠」

母の日や母でも子でもあり多忙        向井 愉里

かたまって出番待つかに踊子草        玉田春陽子

菜園の衛兵交替葱坊主            大澤 水牛

若葉風監視カメラの見え隠れ         玉田春陽子

《参加者》嵐田双歩、岩田三代、大澤水牛、金田青水、杉山三薬、谷川水馬、玉田春陽子、徳永木葉、向井愉里。(特別投句参加)岡田鷹洋。

(報告 大澤水牛)

 

 

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番町喜楽会第216回例会

17人参加「扇」と「初鰹」を詠む

須藤光迷さんの鯉幟句が9点でトップ

番町喜楽会は令和6年5月例会(通算第216回)を5月6日、東京・九段下の千代田区生涯学習館で開催した。17人から投句があり、8人が顔を揃えた。兼題は「扇」と「初鰹」。選句は6句(欠席者は5句)で句会を進めた結果、須藤光迷さんの「徴兵の無き国を生き鯉幟」が9点で一席を飾った。二席には中村迷哲さんの「幕あいに扇子波立つ演舞場」の6点句、三席には廣田可升さんの「長考の閉じては開く扇かな」の5点句が続いた。以下、4点句が4句、3点句が6句、2点句が10句、1点句が19句という結果であった。この日の句会には、板橋宿吟行の折りにケガをされた田中白山さんが久々にお元気な姿を見せられ、お世話になった皆さんにと、上野広小路の老舗“うさぎや”のどら焼きが参加者にふるまわれた。

「扇」

幕あいに扇子波立つ演舞場             中村 迷哲

長考の閉じては開く扇かな             廣田 可升

激論も泥酔も見た古扇               金田 青水

扇閉じ宴の余韻持ち帰る              斉山 満智

パタパタと扇子であおぐ汗と嘘           斉山 満智

香ぐはしき扇の微風隣りより            前島 幻水

「初鰹」

酌み交はす土佐の地酒や初鰹            廣田 可升

焼き藁の炎爆ぜるや初鰹              高井 百子

「雑詠」

徴兵の無き国を生き鯉幟              須藤 光迷

ただ歩く新緑の中まだ生きる            山口斗詩子

雨戸繰る音も軽やか夏来る             嵐田 双歩

見詰めあい動かぬ妻と青蛙             須藤 光迷

弁慶も幼な顔なり五月雛              玉田春陽子

≪参加者≫【出席者8人】大澤水牛、金田青水、田中白山、玉田春陽子、中村迷哲、廣田可升、前島幻水、向井愉里。【投句参加9人】嵐田双歩、斉山満智、澤井二堂、須藤光迷、高井百子、谷川水馬、堤てる夫、徳永木葉、山口斗詩子。

(報告・廣田可升)

 

 

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向島百花園で番町連句会開催

4月20日土曜日、墨田区の向島百花園で番町喜楽会の伝統行事の一つである連句会を行った。連句常連メンバーの10人が汗ばむ陽気の下、隅田川歩道橋を渡り、三囲神社はじめ向島墨堤散歩を経て、百花園内の「御成の間」で『春惜しむ』と題した歌仙36句一巻を巻き収めた。発句は捌き手の水牛が百花園に来る途中詠んだ「墨堤の句友十人春惜しむ」とし、席順に従って詠みつないで行く「膝送り」方式で歌仙三十六句一巻を巻いた。

番町連句歌仙「春惜しむ」

1. 墨堤の句友十人春惜しむ        大澤 水牛

2.  猫の子横切る三囲の庭        廣田 可升

3. 春日傘鉢の水呑む鳥のいて       金田 青水

4.   遊歩道には鈴蘭の花         向井 愉里

5.  月涼し岸辺にゆるる舫ひ舟       玉田春陽子(月)

6.    贅尽したる手造り弁当        嵐田 双歩

(ウ)

7.  七夕にインバウンドのざわめけり      須藤 光迷

8.    外人の問ふ獺祭忌とは         今泉 而云

9. いざなはれ秋七草の百花園        谷川 水馬

10.   力車の上のレンタル和服        前島 幻水

11. なけなしでおごりおごられ除夜の鐘      可升

12.   空徳利に若水を汲む            水牛

13. 佐保姫のスカイツリーにまつはれり      愉里

14.   長命寺よりあふぐ春月           青水(月)

15. 誕生は昭和十年遠蛙             双歩

16.   まだ現役よねじりはちまき         春陽子

17. 四股踏んでどすこいどすこい花の散る     而云(花)

18.   乗込鯛の鍋をはみ出す           光迷

(ナオ)
19. 隣りよりたけのこ飯のおすそ分け      幻水

20.  谷中千駄木若葉風吹く          水馬

21. 築地塀切れたる路地にあの子待つ      水牛

22.  明日またねに馬追の声          可升

23. 右ひだり桟敷のなかを阿波踊        青水

24.  母の形見の秋袷だす           愉里

25. 突出しは今日も枝豆縄のれん        春陽子

26.  やけに身に入む石橋の上         双歩

27. 湯上りの夕餉ゆったり雪の宿        光迷

28.  どてら羽織りて大鯉を見に        而云

29. 地下街に迷ひて帰宅冬の月         水馬(月の座)

30.  タワーマンション階数はさて       幻水

(ナウ)

31. 朝焼けの干潟狭しと百千鳥         可升

32.  寝坊はだめとやかましきこと       水牛

33. 黄砂降り目薬入れる旅支度         愉里

34.  流水の里クレソン茂る          青水

35. ハンバーグ花片も添へテラス席       双歩(花)

36.  競ふ大声過疎のイベント         春陽子(挙句)

 

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日経俳句会第228回例会

一席は十三妹句「痛き色」の13点

38人が「春惜しむ」「躑躅」詠む

日経俳句会は4月17日(水)、神田・鎌倉橋の日経広告研究所会議室で4月例会(通算228回)を開いた。これまでの花冷えの日々から一変、この日は、一気に夏のような気温になって、身体が反応できないほどの夕べ。熱心な句友12人が集まって、気温に負けない暑い議論が繰り広げられた。

「春惜しむ」と「躑躅」の兼題に、38人から112句の投句があり、6句選(欠席は5句)の結果、一席は13点と断トツの人気を集めた藤野十三妹さんの「病む身には痛き色なり紅つつじ」だった。二席は須藤光迷さんの「来世また連れ添いゆかん花筏」が7点で続き、三席6点句は水兎句「練切の小さき花びら春惜しむ」、三代句「絶壁を穿ちて紅き山躑躅」、方円句「満開の桜車内をどよめかす」、迷哲句「ひび割れし棚田潤す穀雨あり」の4句が並んだ。以下、5点4句、4点6句、3点7句、2点24句、1点30句だった。兼題別の高点句(3点以上)は以下の通り。

「春惜しむ」

練切の小さき花びら春惜しむ             星川 水兎

惜春や宵のカーテン閉めかねる            溝口戸無広

春惜しむ免許返納迷ふ日々              中嶋 阿猿

惜春や明治男の消えたりと              大澤 水牛

薹のたつ庭のルッコラ春惜しむ            岡松 卓也

淡き陽に淡き浮雲春惜しむ              久保田 操

向き合ひて言葉少なに春惜しむ            中野 枕流

「躑躅」

病む身には痛き色なり紅つつじ            藤野十三妹

絶壁を穿ちて紅き山躑躅               岩田 三代

植込のつつじ昭和の富士銀行             嵐田 双歩

山裾に刺繍編み込む躑躅かな             溝口戸無広

テーブルのやうに真四角花躑躅            星川 水兎

つつじ垣四角四面のきゅうきゅうと          廣上 正市

当季雑詠

来世また連れ添いゆかん花筏             須藤 光迷

満開の桜車内をどよめかす              植村 方円

ひび割れし棚田潤す穀雨あり             中村 迷哲

眠る子のズシリと腕に花疲れ             嵐田 双歩

NHK「坂本龍一ラストデーズ」観て

桜散るまさにその時指タクト             堤 てる夫

鰊来ぬ浜に名残の御殿かな              岩田 三代

様変はる街に変はらぬ桜かな             久保田 操

小座敷に残り香ゆかし桜餅              中沢 豆乳

花柄の杖の見上げる夕桜               星川 水兎

紫木蓮拳ひらくよ今日佳き日             水口 弥生

《参加者》【出席12人】嵐田双歩、今泉而云、植村方円、大澤水牛、岡田鷹洋、金田青水、澤井二堂、篠田朗、杉山三薬、中村迷哲、星川水兎、向井愉里。【投句参加26人】池村実千代、伊藤健史、岩田三代、大沢反平、岡松卓也、加藤明生、工藤静舟、久保道子、久保田操、斉藤早苗、須藤光迷、高井百子、高橋ヲブラダ、谷川水馬、堤てる夫、徳永木葉、中沢豆乳、中嶋阿猿、中野枕流、野田冷峰、旙山芳之、廣上正市、藤野十三妹、溝口戸無広、水口弥生、横井定利。

(報告 嵐田双歩)

 

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番町喜楽会第215回例会

水牛、満智、迷哲、4点句でトップを分ける

番町喜楽会は令和6年4月例会(第215回)を4月6日、東京・九段下の千代田区生涯学習館で開催した。17名の皆さんから投句があったが、句会出席者は7人と少なかった。今回の兼題は「蜃気楼」と「若鮎」。選句7句(欠席者は5句)で句会を進めた結果、最高点は4点で大澤水牛さんの「春場所を陸奥の若駒疾駆せり」、斉山満智さんの「会いたいと言うだけの人春の塵」と中村迷哲さんの「若鮎の跳ねて幾度目堰を越す」が鼎立。以下、3点句が6句、2点17句、1点30句という結果であった。兼題別の高点句(3点以上)は次の通り。

「蜃気楼」

それぞれに見る蜃気楼老い深し           斉山 満智

「若鮎」

若鮎の跳ねて幾度目堰を越す            中村 迷哲

若鮎やきらりきらりと友を追ふ           谷川 水馬

「雑詠」

春場所を陸奥の若駒疾駆せり            大澤 水牛

会いたいと言うだけの人春の塵           斉山 満智

菜の花の咲いて菜園一休み             大澤 水牛

あたたかし孫に貰いしお小遣い           須藤 光迷

ポップコーン撒いて友とす春の鳥          高井 百子

ようそろと介護の決意暮の春            高井 百子

≪参加者≫【出席7人】大澤水牛、金田青水、谷川水馬、玉田春陽子、中村迷哲、廣田可升、前島幻水。【投句参加10人】嵐田双歩、斉山満智、澤井二堂、須藤光迷、高井百子、田中白山、堤てる夫、徳永木葉、星川水兎、向井愉里。

(報告・谷川水馬)

 

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日経俳句会・番町喜楽会合同板橋宿桜吟行

14人で板橋宿・石神井川を巡る

生憎、桜は未だ2、3輪だったが佳句数多

日経俳句会と番町喜楽会は令和6年3月24日(日)、旧板橋宿の桜吟行を行った。参加者は嵐田双歩、今泉而云、岩田三代、植村方円、大澤水牛、岡田鷹洋、金田青水、澤井二堂、杉山三薬、田中白山、谷川水馬、中村迷哲、廣田可升、向井愉里の14人。午後1時に杉山吟行幹事に引率され、東武東上線中板橋駅からスタートした。まずは駅のそばを流れる石神井川に出て、川べり沿いに桜並木をてくてく。この日は曇天でいささか冷える。両岸にはよく手入れされた見事な桜の木が一キロ以上にわたって続くものの、あいにく未だ桜は開花せず。老木についた沢山のつぼみを見つめるばかりだった。それでも旧宿場をくまなく歩き、縁切榎や旧加賀藩前田家下屋敷跡、板橋駅前の新撰組組長近藤勇の墓などを巡り充実した吟行だった。吟行句会は事後にメール方式で実施、13人から38句の投句があった。5句選の結果、今泉而云さんの「開花待つ幹暖かし大桜」と植村方円さんの「息災を願ひて交す春の盃」が最高6点を獲得、二席5点には岩田三代さんと中村迷哲さんの句が並んだ。途中、負傷リタイヤの田中白山さんは、投句はなかったが選句には加わった。参加者の吟行代表句は以下の通り。

もののふの眠る駅前暮遅し         嵐田 双歩

開花待つ幹暖かし大桜           今泉 而云

春寒し縁切榎埋める絵馬          岩田 三代

春の雲加賀の屋敷といふあたり       植村 方円

花冷えと云ひて熱燗もう一本        大澤 水牛

賑わいは釣り堀だけの桜狩         岡田 鷹洋

願ひ事シールに隠す春の絵馬        金田 青水

板橋の千本櫻芽吹きだす          澤井 二堂

あと五年やるぞと卒寿花巡り        杉山 三薬

お花見や七十路八十路気を吐ける      谷川 水馬

川沿ひに花芽をたどる桜狩         中村 迷哲

コンクリートなれど板橋亀鳴けり      廣田 可升

春の陽を待ちわびぽっと咲き初めり     向井 愉里

(報告 植村方円、中村迷哲、大澤水牛)

 

 

 

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日経俳句会第227回例会

操句「ランチ会」が最高10点獲得

36人参加、「燕」「花水木」詠む

日経俳句会は令和6年3月例会(通算227回)を3月20日(水)午後に鎌倉橋の千代田区立スポーツセンター集会室で開いた。春分の日の祝日のため、時間と場所をいつもと変えて開催。春とは思えない冷え込みが続いたこともあり、出席は10人にとどまったが、高点句が相次ぎ、にぎやかな句会となった。兼題は「燕」と「花水木」。36人から108句の投句があり、6句選(欠席は5句)の結果、久保田操さんの「春うらら傘寿揃ひてランチ会」が10点を得て一席に輝いた。二席9点には谷川水馬さんの「花水木白いヴェールの修道女」、三席8点には中嶋阿猿さんの「春闘のたたかひの文字軽くなり」が続いた。さらに7点句に中沢豆乳さんの「海砂を掻いて浅蜊の夢破る」、5点句に大沢反平さんの「九十九里無限の空へ初燕」など4句が入った。以下、4点8句、3点9句、2点18句、1点31句だった。兼題別の高点句(3点以上)は以下の通り。

「燕」

九十九里無限の空へ初燕               大沢 反平

被災地は静かに飛べよつばくらめ           加藤 明生

燕来て街はちょっぴり元気づく            大澤 水牛

人老いて燕戻りし鄙の宿               中嶋 阿猿

江ノ電の鎌倉駅舎つばくらめ             廣上 正市

燕来る外国人来る古長屋               伊藤 健史

つばめ来る移住一家の古民家に            金田 青水

燕来る店仕舞いせし万屋に              須藤 光迷

大仏の肩に憩ふや夕燕                谷川 水馬

観覧車かすめて燕雲を裂く              中沢 豆乳

「花水木」

花水木白いヴェールの修道女             谷川 水馬

花水木袴キリリと講堂へ               溝口戸無広

ポトマックの桜のお返し、百十年

震災も戦災も見し花水木               須藤 光迷

分譲より四半世紀や水木咲く             廣上 正市

花水木見下ろすビルの喫茶店             星川 水兎

光降るこの道白き花水木               水口 弥生

声だしてプレート読む子花水木            向井 愉里

月明り白さ際立つ花水木               篠田  朗

当季雑詠

春うらら傘寿揃ひてランチ会             久保田 操

春闘のたたかひの文字軽くなり            中嶋 阿猿

海砂を掻いて浅蜊の夢破る              中沢 豆乳

春うらら乳母車にはペット乗り            岩田 三代

まだやるの五輪万博万愚節              須藤 光迷

半島の市民マラソン風光る              中村 迷哲

ぶらんこが待ってるからと寄り道し          向井 愉里

《参加者》【出席10人】嵐田双歩、今泉而云、岩田三代、大澤水牛、岡田鷹洋、金田青水、澤井二堂、杉山三薬、中村迷哲、向井愉里。【投句参加26人】池村実千代、伊藤健史、植村方円、大沢反平、岡松卓也、加藤明生、工藤静舟、久保道子、久保田操、篠田朗、須藤光迷、高井百子、高橋ヲブラダ、谷川水馬、堤てる夫、徳永木葉、中沢豆乳、中嶋阿猿、中野枕流、旙山芳之、廣上正市、藤野十三妹、星川水兎、溝口戸無広、水口弥生、横井定利。

(報告 中村迷哲)

 

 

 

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酔吟会第167回例会

 

13人が「ふらここ」「あかんべ」を詠む

水馬句「日本アルプス蹴っ飛ばす」8点で首位

酔吟会は令和6年の3月例会(通算第167回)を9日午後1時から江東区の芭蕉記念館で開催した。兼題は「ふらここ」、席題に大澤水牛さんが「あかんべ(あかんべー、あっかんべ)」を提示、雑詠を含め投句5句、選句6句(うち特選1句)で句会を進めた結果、谷川水馬さんの「ふらここや日本アルプス蹴っ飛ばす」が8点で首位、次点には岡田鷹洋さんの「春満ちていまはの床であかんべえ」と中村迷哲さんの「校長にあっかんべーと卒業す」が7点で入り、三席にも鷹洋さんの「木瓜の花金婚なるも未知あまた」と迷哲さんの「焼け跡をうっすら隠す春の雪」が6点で並んだ。5点、4点、3点がそれぞれ3句だった。兼題別の高点句(3点以上)は次の通り。

「ぶらんこ」

ふらここや日本アルプス蹴っ飛ばす     谷川 水馬

ぶらんこや誰が忘れし野球帽        須藤 光迷

ぶらんこや静かなゆらぎやみの中      久保 道子

鞦韆や靴先で蹴るスカイツリー       廣田 可升

席題「あかんべ」

春満ちていまはの床であかんべえ      岡田 鷹洋

校長にあっかんべーと卒業す        中村 迷哲

雛あられねだるや姉のあっかんべ      中村 迷哲

春人事別れ惜しむもあっかんべ       向井 愉里

佐保姫のあっかんベーや今日の風      嵐田 双歩

「当季雑詠」

木瓜の花金婚なるも未知あまた       岡田 鷹洋

焼け跡をうっすら隠す春の雪        中村 迷哲

転けたのは引力のせい亀の鳴く       廣田 可升

すこやかに舟漕ぐ妻や春の宵        須藤 光迷

さきたまの古墳円やか草の餅        徳永 木葉

<句会参加者13人>嵐田双歩、大澤水牛、岡田鷹洋、金田青水、久保道子、杉山三薬、須藤光迷、谷川水馬、玉田春陽子、徳永木葉、中村迷哲、廣田可升、向井愉里。

(報告 須藤光迷)

 

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