酔吟会第164回例会

深川芭蕉記念館で、兼題「秋の日」・席題「つまのこゑ」

光迷さん天・地・人獲得の絶好調

酔吟会は9月9日(土)、令和5年第5回例会を深川の「芭蕉記念館」で開いた。今回が席題と特選句を指定する新趣向句会の二回目。席題は金田青水さん提示の「つまのこゑ」、兼題は「秋の日」。参加者は席題句、兼題句、雑詠句合せて5句を投句。選句は、その日一番だと思う句を「特選句(3点)」として加え、計6句選とした。

前日の台風の影響か参加者が8名と少なかったが、会場の黒板に「席題『つまのこゑ』(あるいは妻、夫)」が張り出されると、配られた短冊に、即興で作った席題句、持ち寄った自句を書き込み、午後1時20分に句会開始。投句合計40句で選句を進めた結果、最高8点の「天」には、須藤光迷さんの「虫の音を全て消したる妻の声」と谷川水馬さんの「秋の日や塩飴残るガラス壜」の2句が並んだ。次点の「地」は5点句で同じく光迷さんの「海へ入る秋の日追って北陸線」、玉田春陽子さんの「妻の肩揉んで凡夫の夜長かな」、廣田可升さんの「だんじりの駈けるご城下鰯雲」の3句。「人」の4点句は、春陽子さんの「秋の日やカフェで手紙を書く女」、光迷さんの「秋麗スマホに植物図鑑入れ」で、光迷さんは、「天・地・人」をすべて獲得するだけでなく、投句すべてに得点する大漁節。以下、3点は2句、2点5句、1点9句だった。次回の「席題」選定者は、くじ引きの結果須藤光迷さんに決まり、句会は午後4時に幕。3点句以上の高得点句と作者は以下の通り。

「秋の日」

秋の日や塩飴残るガラス壜        谷川 水馬

秋の日やカフェで手紙を書く女      玉田春陽子

「つまのこゑ」(妻、夫)

虫の音を全て消したる妻の声       須藤 光迷

妻の肩揉んで凡夫の夜長かな       玉田春陽子

「当季雑詠」

海へ入る秋の日追って北陸線       須藤 光迷

だんじりの駈けるご城下鰯雲       廣田 可升

秋麗スマホに植物図鑑入れ        須藤 光迷

一山は二人に多し鰯割く         須藤 光迷

野葡萄のアールヌーボー鉄柵に      高井 百子

【出席者8名】大澤水牛、岡田鷹洋、金田青水、須藤光迷、高井百子、谷川水馬、玉田春陽子、廣田可升。 (まとめ 高井百子)

 

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番町喜楽会第209回例会

15人が「秋風」「案山子」を詠む

双歩句「虫時雨」が5点で首位

番町喜楽会は令和5年9月例会(通算209回)を4日午後6時半から東京・九段下の千代田区生涯学習館で開催した。兼題は「秋風」と「案山子」で、雑詠を含め投句5句、選句6句(欠席者は5句選)の結果、首位は嵐田双歩さんの「雨風の去ってにはかに虫時雨」で5点、次点には大澤水牛さんの「秋の蚊の待ち伏せしをる勝手口」と高井百子さんの「十勇士案山子になりて田を見張る」、谷川水馬さんの「秋の風大江戸線の深きから」の4点3句が並んだ。3点は8句だった。兼題別の高点句(3点以上)は次の通り。

「秋風」

秋の風大江戸線の深きから        谷川 水馬

秋風や弦音残して的射貫く        池内 的中

和菓子屋の無き町となり秋の風      須藤 光迷

秋風や墓碑に真白の新法名        堤 てる夫

迷いなき円空の鉈秋の風         中村 迷哲

「案山子」

十勇士案山子になりて田を見張る     高井 百子

捨案山子薬散布のドローン飛ぶ      堤 てる夫

「雑詠」

雨風の去ってにはかに虫時雨       嵐田 双歩

秋の蚊の待ち伏せしをる勝手口      大澤 水牛

最初はグー秋果を前に三姉弟       須藤 光迷

火の山を覆いて余る秋の雲        玉田春陽子

耳奥の終戦放送走馬灯          前島 幻水

《句会出席者11人》大澤水牛、金田青水、須藤光迷、高井百子、田中白山、玉田春陽子、堤てる夫、中村迷哲、廣田可升、星川水兎、前島幻水。《投句参加者4人》嵐田双歩、池内的中、谷川水馬、徳永木葉。 (報告 須藤光迷)

 

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日経俳句会第221回例会

最高9点に木葉句「百日紅」

厳しい残暑の中、「秋」と「桃の実」を詠む

日経俳句会は令和5年8月例会(通算221回)を8月16日(水)に鎌倉橋の日経広告研究所会議室で開いた。秋とはいえ「油照」のこの日、連日の暑さで体調を崩す人が続出し、出席者は11人にとどまった。

兼題は「秋」と「桃の実」で、36人から108句の投句があった。今年は異常な暑さの中、三秋の大きな季語「秋」を読むのに苦労したようだ。6句選(欠席は5句)の結果、徳永木葉さんの「地に落ちて星屑となる百日紅」が9点で一席。次いで、廣上正市さんの「三食をまかなふ日々のままに秋」が8点で二席、三席には星川水兎さんの「湯上がりの首筋の風秋ひとつ」、中野枕流さんの「籠の桃目だけで探る熟れ具合」、中村迷哲さんの「セシウムを測る山野や桃実る」が6点で並んだ。以下、5点1句、4点14句、3点8句、2点17句、1点27句で、4点句続出が今回の特徴だった。

なおこの日の句会では、日経新聞社の採用サイトに掲載するための句会風景写真を撮った。総務局では日経で働くイメージを就活生に伝えることを狙いに採用ツイッター(現在はX)を運用している。社員の交流の場としてサークルも紹介されており、日経俳句会も取り上げたいと要請があり、この日の撮影となったもの。嵐田カメラマンが和気あいあいとした句会の雰囲気を捉えた写真を撮影した。8月20日過ぎには掲載されるので、ツイッターをお使いの方はアクセスしてみて欲しい。

この日の兼題別の高点句(三点以上)は以下の通り。

「秋」

三食をまかなふ日々のままに秋            廣上 正市

湯上がりの首筋の風秋ひとつ             星川 水兎

秋なのだ秋なんだぞと云ひ聞かせ           大澤 水牛

色抜けし花あぢさゐの揺れる秋            金田 青水

夕暮れの余熱の中に秋の風              篠田  朗

こんなにも待ち遠しきは秋の風            旙山 芳之

しわしわの手にもエチュード秋の夜          池村実千代

秋立つや昨日と違ふ今日の風             加藤 明生

朝の陽の畳に届き秋に入る              高井 百子

秋の空鳶颯爽と三方五湖               谷川 水馬

伏せられて厨に秋の魔法瓶              徳永 木葉

「桃の実」

籠の桃目だけで探る熟れ具合             中野 枕流

セシウムを測る山野や桃実る             中村 迷哲

ちょこなんと祖母似の桃を仏前に           谷川 水馬

親の家売りに出す夜や桃二つ             中嶋 阿猿

桃の香を解き放ちける宅急便             斉藤 早苗

当季雑詠

地に落ちて星屑となる百日紅             徳永 木葉

原爆忌白磁茶碗に白湯満たし             嵐田 双歩

語り部のまた一人逝き原爆忌             岩田 三代

落としたる葡萄ばらばら原爆忌            大澤 水牛

盆踊り玄人はだし外科院長              岡田 鷹洋

四十度焼かれた蝉の骸かな              篠田  朗

捨てられし絵筆の先は夏の色             高井 百子

群衆のやがて静まる大文字              高橋ヲブラダ

鳴き尽くし宙向く骸夏の果              中村 迷哲

新盆や天涯孤独の身となりぬ             藤野十三妹

環七の西日の側にバスを待つ             今泉 而云

武器輸出なんかしないで敗戦日            須藤 光迷

《参加者》【出席11人】嵐田双歩、池村実千代、今泉而云、大澤水牛、金田青水、篠田朗、鈴木雀九、中沢豆乳、中村迷哲、星川水兎、向井愉里。【投句参加25人】和泉田守、岩田三代、植村方円、岡田鷹洋、加藤明生、工藤静舟、久保田操、斉藤早苗、澤井二堂、杉山三薬、須藤光迷、高井百子、高橋ヲブラダ、谷川水馬、堤てる夫、徳永木葉、中嶋阿猿、中野枕流、野田冷峰、旙山芳之、廣上正市、藤野十三妹、溝口戸無広、水口弥生、横井定利。

(報告 嵐田双歩)

 

 

 

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番町喜楽会第208回例会

Ⅰ8人参加「夏の果」「西瓜」を詠む

番町喜楽会は令和5年8月例会(通算第208回)を5日、東京・九段下の千代田区生涯学習館で開催した。18人から投句、出席は11人。兼題は「夏の果」と「西瓜」。選句6句(欠席者は5句)で句会を進めた結果、金田青水さんの「球場へ深々と礼夏の果」が5点で一席を飾った。二席には次の6句が続いた。

何とせう大玉西瓜届きけり        大澤 水牛

鈴生りの鬼灯のゆれ風の道        須藤 光迷

風呂敷の真結び固き大西瓜        谷川 水馬

夏の果蛇口の栓の故障札         玉田春陽子

夏の果家裁に入るベビーカー       玉田春陽子

夏終わる河原に子らの炊事あと      徳永 木葉

また、三席には須藤光迷さんの「原発に未練の紙面原爆忌」、高井百子さんの「炎帝や梅は種まで干されけり」、向井愉里さんの「君たちはどう生きるかと夏の果」、廣田可升さんの「下駄鳴らし毘沙門天へ初浴衣」の3点句が入った。以下、2点が16句、1点23句だった。兼題別の高点句(3点以上)は次の通り。

「夏の果」

球場へ深々と礼夏の果           金田 青水

夏の果蛇口の栓の故障札          玉田春陽子

夏の果家裁に入るベビーカー        玉田春陽子

夏終わる河原に子らの炊事あと       徳永 木葉

君たちはどう生きるかと夏の果       向井 愉里

「西瓜」

何とせう大玉西瓜届きけり         大澤 水牛

風呂敷の真結び固き大西瓜         谷川 水馬

「雑詠」

鈴生りの鬼灯のゆれ風の道         須藤 光迷

原発に未練の紙面原爆忌          須藤 光迷

炎帝や梅は種まで干されけり        高井 百子

下駄鳴らし毘沙門天へ初浴衣        廣田 可升

≪参加者≫【出席11人】大澤水牛、金田青水、須藤光迷、高井百子、田中白山、谷川水馬、玉田春陽子、堤てる夫、中村迷哲、廣田可升、向井愉里。【投句参加7人】嵐田双歩、池内的中、澤井二堂、徳永木葉、星川水兎、前島幻水、山口斗詩子。

(報告・谷川水馬)

 

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日経俳句会第220回例会

「大暑」と「月見草」を詠む

猛暑響き出席は8人どまり

日経俳句会は令和5年7月例会(通算220回)を7月19日(水)に鎌倉橋の日経広告研究所会議室で開いた。兼題は「大暑」と「月見草」で、39人から116句の投句があった。連日の猛暑とはやり病で体調を崩す人が多く、出席は8人にとどまったが、少人数だけに中身の濃い句評が展開された。欠席選句が29人と多かったため、出席者は7句選(欠席は5句)とした結果、嵐田双歩さんの「大男隣に座る大暑かな」が10点を獲得、堂々の一席となった。二席9点は中村迷哲さんの「夏雲や度胸試しの淵へ跳ぶ」と横井定利さんの「ワコールの水着をつけて八十歳」が分け合い、三席7点には中沢豆乳さんの「天神の絵馬かき鳴らす青嵐」が入った。6点句には大澤水牛さんの「これ以上ぬぐものの無き大暑かな」をはじめ5句が並んだ。以下5点3句、4点3句、3点13句、2点20句、1点30句で、兼題の「大暑」と雑詠に高点句が多かった。なお今月から日経の大阪勤務の社員岡松卓也さんが入会、投句と選句に加わっている。兼題別の高点句(3点以上)は以下の通り。

「大暑」

大男隣に座る大暑かな                嵐田 双歩

これ以上ぬぐものの無き大暑かな           大澤 水牛

老守衛袖もまくらぬ大暑かな             斉藤 早苗

交差点渡りたくない大暑かな             旙山 芳之

新宿に大暑乗っかり揺らぐビル            向井 愉里

飛行機の重たそうなる大暑の日            植村 方円

墨跳ばし大筆奮ふ女子大暑              高井 百子

一歩ずつ大暑を背負ふつづら道            溝口戸無広

大暑来る詰め放題の暑さ詰め             加藤 明生

黙々と大暑の朝の庭掃除               堤 てる夫

一木をおほひ尽せし葛大暑              廣上 正市

「月見草」

姿見の残れる宿や月見草               星川 水兎

ねえ今夜月見草見に行きませう            嵐田 双歩

月見草三線欲しき宵の口               溝口戸無広

またひとつ空き家増えたり月見草           和泉田 守

優しげな夜勤のナース月見草             中沢 豆乳

好きだった人と似ている月見草            旙山 芳之

当季雑詠

夏雲や度胸試しの淵へ跳ぶ              中村 迷哲

ワコールの水着をつけて八十歳            横井 定利

天神の絵馬かき鳴らす青嵐              中沢 豆乳

日傘持つ勇気が我に今一つ              旙山 芳之

孑孑の漢字覚えて甕覗く               今泉 而云

短夜や季題兼題夢の中                加藤 明生

夏涼し女人二人の甲州路               澤井 二堂

打ち水や直ちに乾く庭の石              篠田  朗

おずおずと茅の輪くぐるや異国びと          徳永 木葉

庭に摘む葱紫蘇茗荷冷奴               廣上 正市

よく来たな噺家も言ふ夏盛り             溝口戸無広

《参加者》【出席8人】植村方円、大澤水牛、金田青水、杉山三薬、鈴木雀九、堤てる夫、中村迷哲、向井愉里。【投句参加31人】嵐田双歩、池村実千代、和泉田守、伊藤健史、今泉而云、岩田三代、岡田鷹洋、岡松卓也、荻野雅史、加藤明生、工藤静舟、久保田操、斉藤早苗、澤井二堂、篠田朗、須藤光迷、高井百子、髙石昌魚、高橋ヲブラダ、谷川水馬、徳永木葉、中沢豆乳、中嶋阿猿、中野枕流、野田冷峰、旙山芳之、廣上正市、藤野十三妹、星川水兎、溝口戸無広、横井定利

(報告 中村迷哲)

 

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ハプニング続き、諏訪吟行

8人が参加、千人風呂と地酒を満喫

関東が猛暑にあえいでいる7月13日(木)、日経俳句会と番町喜楽会合同で長野県諏訪の片倉千人風呂を訪ねる吟行を実施した。電車が行き帰りとも事故で遅れるなどハプニングはあったが、諏訪大社に参拝し、昭和レトロの片倉館で温泉に入って連句を巻くなど充実した一日となった。

参加者は金田青水、澤井二堂、杉山三薬、高井百子、堤てる夫、中村迷哲、廣田可升、向井愉里の8人。新宿発の特急に乗った青水、二堂、迷哲、可升、愉里の5人は、沿線の倒木の影響で1時間遅れで上諏訪に到着。すぐにタクシーで諏訪大社下社へ。まず秋宮に参拝、巨大なしめ縄や社殿を守るように立つ御柱を見物した。次の春宮までは旧中山道を歩き、江戸の旅人気分を味わう。春宮の近くにある万治の大仏も参拝してから片倉館に向かった。

別ルートで諏訪入りした三薬幹事とてる夫・百子夫妻は、一足先に片倉館の座敷に落ち着く。この施設は生糸生産で財を成した片倉製糸が、諏訪の住民向けに昭和3年に竣工させた温泉保養施設。国指定重要文化財に認定されている。百人は楽に入れる大理石造りの巨大な「千人風呂」があり、大社参拝組も合流して大浴場で汗を流し、句会に臨んだ。

吟行句はメール投句にして、この日は「しりとり連句」を楽しむことになった。前の句の最後の2字(音)を句頭に織り込み、しりとり形式で詠み継いでいく簡単なルール。半数以上が初体験だったが、差し入れの地酒を片手に詠み進めると、軽妙洒脱な句が相次ぎ飛び出した。予定の2時間で半歌仙18句が巻き上がると思われたところで座敷の使用時間が超過。最後の2句は上諏訪駅に向かう道すがら詠み進め、駅の待合室で完成という劇的な幕切れ。初めと終わりは波乱の吟行となった。参加者の吟行の代表句は次の通り。

秋と春ふたつの宮や夏の旅             可 升

緑陰の中へ消え行く中山道             青 水

千人風呂玉砂利蹴って一人泳            てる夫

梅雨晴れ間テルマエロマエの湯の熱さ        三 薬

蓮池に映るレトロの片倉館             迷 哲

諏訪の湖アヒル九羽の大行進            二 堂

あずさ待ち買込むビール諏訪浪漫          愉 里

風死すや幹事はゴミを背に帰る           百 子

(報告 中村迷哲)

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酔吟会第163回例会

「席題」を出し「特選句」を選ぶ新趣向で開催。

Ⅰ6名出席、席題は「花火」

最高は可升さん11点句、次点は6点5句がひしめく

酔吟会は7月8日(土)、令和5年四回目となる句会を江東区常盤の芭蕉記念館で開いた。今回から、新趣向として句会開始15分前に会場に張り出す席題を採用。参加者は、兼題句、雑詠句の他に「席題句」一句を加えた5句投句することとした。また、選句では、その日一番だと思う句を「特選句(三点)」として加え、計六句選とした。

今回の参加者は16名。新たな試みの句会に、開始時間のかなり前から三々五々芭蕉記念館に集まった。席題を決めた可升さんから、会場の黒板に「席題・『花火・手花火』」が張り出されると、皆真剣に作句を始め、配られた短冊に自句を書き込み、午後1時30分句会開始。兼題「青田」「サングラス」に席題の「花火・手花火」を加え、投句総数80句。新趣向の3点付与される「特選句」を発表しながらの披講の結果、最高十一点は廣田可升さんの「穴場とはビルの隙間か大花火」で、「席題出題者の強みか」というやっかみ半分のひやかしの声。次点は6点で双歩さんの「もう底に何も映さぬ青田かな」、水牛さんの「青鷺の降り立つ青田来ぬ青田」、鷹洋さんの「外苑の学徒の木霊白い夏」、光迷さんの「右は佐渡左は弥彦青田道」、春陽子さんの「耳よりの話もちくるサングラス」の5句が並んだ。続く5点には而云さんの「遥かより来て遥かへと青田風」、水馬さんの「祖父に似た移民三世サングラス」の2句。4点句は道子さんの「サングラス目の日焼どめ病みて知る」、木葉さんの「昏れ残る青田に農夫草を引く」、可升さんの「ちょい悪になりそこねたるサングラス」の3句だった。以下3点が6句、2点が14句、1点が20句だった。

次回の席題出題者は、玉田春陽子さんが用意した割箸ゼイチクを参会者一同一本ずつ引いた結果、金田青水さんに決まった。新趣向の句会はいつも以上の熱気にあふれざっと3時間半かかり、午後五時前に終了した。(3点句以上の高得点者は以下の通り)。

「青田」

もう底に何もうつさぬ青田かな       嵐田 双歩

青鷺の降り立つ青田来ぬ青田        大澤 水牛

右は佐渡左は弥彦青田道          須藤 光迷

遥かより来て遥かへと青田風        今泉 而云

昏れ残る青田に農夫草を引く        徳永 木葉

青田中除草の鎌で道案内          谷川 水馬

「サングラス」

耳よりの話もちくるサングラス       玉田春陽子

祖父に似た移民三世サングラス       谷川 水馬

サングラス目の日焼どめ病みて知る     久保 道子

ちょい悪になりそこねたるサングラス    廣田 可升

サングラス真似たタフガイみな鬼籍     杉山 三薬

老い楽の恋のひとつもサングラス      谷川 水馬

サングラス少し戦闘モードにて       向井 愉里

「花火」

穴場とはビルの隙間か大花火        廣田 可升

花火師は忍者走りに右左          玉田春陽子

「当季雑詠」

外苑の学徒の木霊白い夏          岡田 鷹洋

両足にかけて打水終へにけり        玉田春陽子

(出席者16名)嵐田双歩、今泉而云、大澤水牛、岡田鷹洋、金田青水、久保道子 杉山三薬、須藤光迷、高井百子、谷川水馬、堤てる夫、玉田春陽子、徳永木葉、中村迷哲、廣田可升、向井愉里。

(まとめ 高井百子)

 

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番町喜楽会第207回例会開催

双歩と幻水の「鰻」が5点で首位

出席11人の寂しさ

番町喜楽会は令和5年7月例会(通算第207回)を3日午後6時半から東京・九段下の千代田区生涯学習館で開催した。むしむしとする梅雨湿りのせいもあってか、出席者が11人と寂しかった。兼題は「雲の峰」と「鰻」で、雑詠を含め投句5句、選句6句(欠席者は5句)の結果、首位は嵐田双歩さんの「蒲焼の匂ひくぐりて成田山」と前島幻水さんの「在宅の夫に蒲焼持ち帰る」で5点、次点は今泉而云さんの「桶に居て鰻は客に覗かるる」と中村迷哲さんの「かき氷舌を見せ合ひ色自慢」で4点だった。三点が10句にのぼった。兼題別の高点句(3点以上)は次の通り。

「雲の峰」

素手で魚捕まえる子ら雲の峰     金田 青水

峰雲や素振りつづける補欠の子    玉田春陽子

大浅間どっかと座る雲の峰      堤 てる夫

「鰻」

蒲焼の匂ひくぐりて成田山      嵐田 双歩

在宅の夫に蒲焼持ち帰る       前島 幻水

桶に居て鰻は客に覗かるる      今泉 而云

成田参り上鰻重の余慶かな      徳永 木葉

「当季雑詠」

かき氷舌を見せ合ひ色自慢      中村 迷哲

青梅を漬けて妻の座定まれり     嵐田 双歩

雌花一つ雄花幾千栗の花       高井 百子

きりもなし日傘の中の立ち話     玉田春陽子

電柱を締め上げ空へ蔦青し      徳永 木葉

海べりのキリシタン墓地土用凪    廣田 可升

きらきらと玉蜀黍の花の列      向井 愉里

【参加者】(出席11人)今泉而云、大澤水牛、金田青水、須藤光迷、高井百子、玉田春陽子、堤てる夫、中村迷哲、廣田可升、前島幻水、向井愉里、

(投句参加7人)嵐田双歩、池内的中、澤井二堂、田中白山、谷川水馬、徳永木葉、星川水兎。

(報告 須藤光迷)

 

 

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日経俳句会令和5年上期合同句会

40人から投句120句

水兎句「無人駅のかなぶん」、可升句「考える葦」が一、二席

日経俳句会は6月21日、内神田の日経広告研究所会議室で上期合同句会を開いた。この日は夏至。梅雨晴が一週間近く続き、この日も傘要らずの好天に恵まれ、出席した17人による熱い句会が繰り広げられた。

「父の日」と「黄金虫」の兼題に40人から120句が集まり、全員事前選句の結果、星川水兎さんの9点句「出迎えはかなぶんぶんの無人駅」が一席となった。次いで、廣田可升さんの「考える葦でありたし月涼し」が7点で二席、高井百子さんの「ちゃぶ台の父は動ぜず黄金虫」が6点で三席に入った。さらに大澤水牛さんの「ほっといてくれと仰向け黄金虫」や可升さんの「ぶんぶんや教師に仇名つけた頃」など5句が5点で続いた。以下、4点8句、3点18句、2点19句、1点29句と全体的にまんべんなく点が入り、兼題の「黄金虫」にユニークな句が多かった。兼題別の高点句(3点以上)は以下の通り。

「父の日」

父の日や若き遺影に一献す              和泉田 守

父の日や妻を主役に食事会              植村 方円

父の日や無口息子のメール来る            髙石 昌魚

父の日の似顔絵いまだ壁にあり            中村 迷哲

父の日か酒のチラシで気づきけり           旙山 芳之

父の日の似顔の髭の濃すぎたり            溝口戸無広

父の日も柱の角で背中掻く              嵐田 双歩

父のいぬ父の日母に電話せり             斉藤 早苗

父の日や形見の碁盤二十キロ             高井 百子

父の日の授業参観髪染めて              谷川 水馬

父の日や記憶の底にその背中             玉田春陽子

父の日の父の形に凹むソファ             廣田 可升

「黄金虫」

出迎えはかなぶんぶんの無人駅            星川 水兔

ちゃぶ台の父は動ぜず黄金虫             高井 百子

ほっといてくれと仰向け黄金虫            大澤 水牛

ぶんぶんや教師に仇名つけた頃            廣田 可升

ガラス戸を打ちて何処へ黄金虫            今泉 而云

炭坑節聞こえ来る夜の黄金虫             鈴木 雀九

黄金虫発止発止と夜の窓               玉田春陽子

黄金虫気だるき夜を掻き回り             向井 愉里

「当季雑詠」

(AIの進化に)

考える葦でありたし月涼し              廣田 可升

空よりも青きシロップかき氷             嵐田 双歩

坪庭をうずめ十薬白十字               堤 てる夫

ゆすらうめ幸運なんていつも小粒           徳永 木葉

しばし待てらっきょう漬けてまだ十日         斉藤 早苗

息災を祝し飲み干す大ジョッキ            和泉田 守

水鉄砲笑って泣いて撃ち合へる            今泉 而云

機体ごと割って進むや夏の雲             植村 方円

どくだみのかくもうるはし谷戸の道          大澤 水牛

ママ叱声パパ歎声のおむつ換え            岡田 鷹洋

万緑や休み休みの七曲り               加藤 明生

うねり来る女も担ぐ夏神輿              中沢 豆乳

梅雨入りの曇りがうれし何しよう           旙山 芳之

父の日やまだまだ現役古道具             廣上 正市

《参加者》【出席17人】嵐田双歩、池村実千代、今泉而云、岩田三代、大澤水牛、金田青水、澤井二堂、篠田朗、杉山三薬、鈴木雀九、堤てる夫、玉田春陽子、徳永木葉、中村迷哲、廣田可升、星川水兎、向井愉里。【投句参加23人】和泉田守、伊藤健史、植村方円、岡田鷹洋、荻野雅史、加藤明生、久保道子、久保田操、斉藤早苗、須藤光迷、高井百子、髙石昌魚、高橋ヲブラダ、谷川水馬、中沢豆乳、中嶋阿猿、中野枕流、旙山芳之、廣上正市、藤野十三妹、溝口戸無広、水口弥生、横井定利。

(報告 嵐田双歩)

 

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双牛舎年次総会・俳句大会を開催

コロナ開けて4年ぶり、26人集う

NPO法人双牛舎は令和5年6月10日(土)、千代田区二番町の東京グリーンパンレス・ホテルのレストラン「ジャルダン」で令和五年度年次総会を開催し、メンバーである日経俳句会、番町喜楽会、三四郎句会の会員ら二十六人が参加した。大澤水牛代表理事の挨拶に続いて、収支報告と新役員体制が発表され、拍手で承認。その後、恒例の「俳句大会」が4年ぶりに開かれ大いに盛り上がった。

俳句大会は兼題「梅雨」と雑詠の2句を事前投句、32人から64句の投句があった。会場では掲示された大型選句一覧表に「選句シール」を5句ずつ貼付する方式で選句した(欠席選句分は幹事が代行)。最高の天賞に輝いたのは、今泉而云さんの「合掌の肘に傘提げ梅雨の葬」と大澤水牛さんの「処方箋一行増えて梅雨に入る」の11点句の2句。〝双牛〟が天賞を分け合う形となり、大きな拍手が沸いた。地賞には堤てる夫さんの9点句「青梅雨や古社千年の杉木立」、人賞は植村方円さんの「遠雷や壁に向ひて一人飯」の8点句が続いた。入選は6点1句と5点3句の計4句だった。須藤光迷さんと水牛さんの陶芸作品と手造り梅酒が賞品として提供され、天・地・人賞と入選の作者に贈られた。俳句大会の入賞作品は次の通り。

《天賞》

合掌の肘に傘提げ梅雨の葬           今泉 而云

処方箋一行増えて梅雨に入る          大澤 水牛

《地賞》

青梅雨や古社千年の杉木立           堤 てる夫

《人賞》

遠雷や壁に向ひて一人飯            植村 方円

《入選》

細き道愚図る雨戸や梅雨深し          玉田春陽子

夏の浜干されてイリコの顔険し         杉山 三薬

濃紫陽花ゆらしてゆくや鼓笛隊         須藤 光迷

梅雨空にひとり聞き入るジャズ喫茶       深瀬 久敬

《参加者》【出席26人】和泉田守、今泉而云、岩田三代、植村方円、大澤水牛、岡田鷹洋、金田青水、河村有弘、久保田操、後藤尚弘、須藤光迷、高井百子、田中白山、谷川水馬、玉田春陽子、堤てる夫、徳永木葉、中村迷哲、野田冷峰、野田伸也(冷峰氏二男)、廣田可升、服山玲子(三四郎句会事務局)、星川水兎、水口弥生、向井愉里、渡邉信。【投句参加8人】嵐田双歩、池村実千代、久保道子、澤井二堂、杉山三薬、深瀬久敬、前島幻水、吉田正義。  (報告 谷川 水馬)

 

 

 

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