第101回番町喜楽会・三四郎句会合同句会

番町喜楽会は2月15日(土)正午、千代田区一番町の料理店「天重」で第101回例会を三四郎句会との合同句会として開催した。あいにく前日から首都圏は記録的な大雪に見舞われ、東京都心でも三〇センチ近い積雪。このためJR中央線快速、南武線、横浜線、高崎線、川越線、東急東横線、東武東上線がストップしたのをはじめ、首都圏の電車はほとんど全てが運休や大幅遅延となった。

一時は句会中止を決断せざるを得ないかと思われたが、14日午後、谷川水馬幹事が会員に諮ったところ、「やりましょう、出席します」という人が続々。それでは「決行」と決めたはいいが、当日果たして何人集まれるのだろうかと気を揉む幹事団の目の前に、11時過ぎからメンバーが次々に元気な顔を見せ、番町喜楽会10人、三四郎句会5人、合わせて15人が勢揃い、賑やかな合同句会を行うことができた。

合同句会の兼題は「冴返る」と「猫の恋」。合同句会では慣例としている「事前投句・選句方式」によって、句会会場では幹事が集計した選句結果を発表し、最高点句から順々に感想を述べ合って行く合評会を行った。

投句五句、選句六句で行った結果、投句総数145句中の最高点は7点で、井上啓一さん(番町喜楽会)の「冴返る月夜に眠る過疎の村」と「わだかまり溶けゆく春の散歩かな」の2句と、高瀬大虫さん(番町喜楽会)の「奔放に生きしことあり猫の恋」の3句が並んだ。次点の6点句は1句でやはり井上さんの「恋猫の屋根から塀へ神楽坂」と、井上さんが上位4句中3句を占めるという破天荒な結果となった。ご本人は「それでこんな天気になったんでしょう」としきりに照れていた。

続く三席5点句は堤てる夫さん(番町喜楽会)の「冴え返る鳥も止まらぬ石灯籠」、玉田春陽子さん(同)の「足場解く声上下に冴返る」、今泉恂之介さん(番町喜楽会・三四郎句会)の「恋冷めし猫と一人の女かな」の3句だった。以下4点句6句、3点11句、2点20句、1点35句という結果になった。3点句以上の兼題別高得点句は以下の通り。

「冴返る」

冴返る月夜に眠る過疎の村     井上 啓一(番)

冴え返る鳥も止まらぬ石灯籠    堤 てる夫(番)

足場解く声上下に冴返る      玉田春陽子(番)

冴え返る月しらじらと諏訪の湖   河村 有弘(三)

警策の音冴え返る座禅坊      宇佐見 論(三)

冴え返る朝の声明山が哭く     河村 有弘(三)

冴返る村のあらかた山の影     田中 白山(番)

ハンマーの音冴返り石切場     田中 白山(番)

黒板に私語禁ずの字冴返る     玉田春陽子(番)

脳みその輪切写真や冴返る     大澤 水牛(番)

 

「猫の恋」

奔放に生きしことあり猫の恋    高瀬 大虫(番)

恋猫の屋根から塀へ神楽坂     井上 啓一(番)

恋冷めし猫と一人の女かな     今泉恂之介(番・三)

石松もカルメンも居り春の猫    大澤 水牛(番)

鰹節も目刺もいらぬ猫の恋     大澤 水牛(番)

山門の仁王震はす猫の恋      宇佐見 論(三)

猫の恋父子鑑定なき世界      徳永 正裕(番)

老いらくの恋もあらむか猫の恋   山口斗詩子(番)

部屋猫の恋は切なし人に啼く    高瀬 大虫(番)

 

「雑詠」

わだかまり溶けゆく春の散歩かな  井上 啓一(番)

雲水の湯気立ち上がる寒の入り   後藤 尚弘(三)

朱を入れるこけしの口や深雪晴   岡本  崇(三)

春立つや山も田圃も膨らんで    堤 てる夫(番)

寒戻る鉢占領の居間となり     岩沢 克恵(番)

 

「番町喜楽会三四郎句会合同句会参加者」井上啓一、大澤水牛、大下綾子、須藤光迷、高瀬大虫、田中白山、谷川水馬、玉田春陽子、徳永正裕、前島厳水(以上番町喜楽会)、石黒賢一、今泉恂之介、竹居照芳、深瀬久敬、渡辺信(以上三四郎句会)

(まとめ 大澤水牛)

 

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