番町喜楽会第191回

「春の雪」と「草の芽」が兼題

迷哲さんの「滝凍る」が最高の9点獲得

番町喜楽会は2月5日(土)に「春の雪」と「草の芽」を兼題として令和4年2月例会(通算191回)を開催した。投句者は21名で、投句総数はちょうど100句であった。出席者は選句6句、欠席者は事前選句5句で句会を進めた結果、中村迷哲さんの「全山の音とじ込めて滝凍る」が9点で最高点。次席は大澤水牛さんの「鳥たちと冬菜分け合ふ日和かな」と谷川水馬さんの「草の芽やちび怪獣に歯が生えた」の6点句が続いた。三席は廣田可升さんの5点句「看板なき岩波ホール凍返る」であった。以下、4点が2句、3点9句、2点11句、1点29句という結果であった。兼題別の高点句(3点以上)は次の通り。

「春の雪」

はしゃぐ子の声は天まで春の雪           須藤 光迷

灯のともる砂町銀座春の雪             廣田 可升

試験終えコートの襟に春の雪            池内 的中

薄墨の写経さはさは春の雪             金田 青水

湾内に響く吹鳴春の雪               谷川 水馬

淡雪の一夜化粧や北新地              中村 迷哲

「草の芽」

草の芽やちび怪獣に歯が生えた           谷川 水馬

円墳の形のままに草芽ぶく             中村 迷哲

「雑詠」

全山の音とじ込めて滝凍る             中村 迷哲

鳥たちと冬菜分け合ふ日和かな           大澤 水牛

看板なき岩波ホール凍返る             廣田 可升

後足で顎掻く犬や日脚伸ぶ             須藤 光迷

寒晴やホットレモンの香の尖り           高井 百子

しつけ解く祖母の笑顔や針供養           向井 愉里

梅の香をマスクずらしてそっと嗅ぐ         山口斗詩子

【参加者】(出席12名)今泉而云、大澤水牛、金田青水、澤井二堂、須藤光迷、田中白山、谷川水馬、玉田春陽子、徳永木葉、中村迷哲、廣田可升、向井愉里.(欠席投句9名)嵐田双歩、池内的中、斉山満智、高井百子、堤てる夫、野田冷峰、星川水兎、前島幻水、山口斗詩子。 (報告・谷川水馬)

 

 

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日経俳句会第205回例会

13人が集い、熱気の初句会

一席に「豆腐屋」迷哲句、二席に木葉句と弥生句が並ぶ

日経俳句会は新年の初句会となる令和4年1月例会(通算205回)を、19日(水)に千代田区九段の生涯学習館で開いた。オミクロン感染の急拡大で日経の会議室が使えず、急きょ会場を変更した。出席者は13人といつもより少なかったが、寒さを吹き飛ばす熱気あふれる句会となった。兼題は「初夢」と「寒の水」、欠席投句者含め39人から117句の投句があり、6句選の結果、中村迷哲さんの「豆腐屋の槽(ふね)満々と寒の水」が最高12点を得て一席となった。二席8点句には徳永木葉さんの「松飾納めて寂し釘の穴」と、水口弥生さんの「動くもの雪のほかなく暮れ落ちる」が並び、三席7点句に篠田朗さんの「お浄めも指先ばかり寒の水」が入った。6点句には「寒の水たっぷりくれて刃物研ぐ 双歩」と「何事もなきめでたさや松納 昌魚」が並んだ。以下、5点2句、4点10句、3点10句、2点20句、1点26句と続き、3点以上の高点句が28句を数えた。なお今月から日経社員の伊藤健史さんが新会員となり、投句・選句に加わった。また向井ゆりさんが俳号を愉里(ゆり)と定め、心新たに句作に取り組むことになった。兼題別の高点句(3点以上)は以下の通り。

「初夢」

初夢に若々しき妻あらはるる             大沢 反平

初夢のデートに妻と鉢合せ              澤井 二堂

初夢はマスク外して大笑ひ              岩田 三代

深酒の過ぎて初夢見損なふ              堤 てる夫

初夢を覚えてないとべそかく子            中村 迷哲

獏の絵をふとんに敷いて父と寝る           野田 冷峰

「寒の水」

豆腐屋の槽(ふね)満々と寒の水           中村 迷哲

お浄めも指先ばかり寒の水              篠田  朗

寒の水たっぷりくれて刃物研ぐ            嵐田 双歩

寒の水桶の半月杓で汲み               岡田 鷹洋

ウイスキー追って胃の腑へ寒の水           徳永 木葉

寒の水手に手に白きポリタンク            金田 青水

寒の水足せば目高はもぞ動く             鈴木 雀久

寒の水沁むや切り傷あるごとく            水口 弥生

胃の腑より今朝も目覚めり寒の水           和泉田 守

「当季雑詠」

松飾納めて寂し釘の穴                徳永 木葉

動くもの雪のほかなく暮れ落ちる           水口 弥生

何事もなきめでたさや松納              髙石 昌魚

越前は月も凍るや野水仙               篠田  朗

交番の褪せた手配書冬深し              中村 迷哲

元日や空はどこまで宇都宮              伊藤 健史

予報士のペンギン歩き凍る道             大平 睦子

天平の礎石に沿うて冬菫               星川 水兎

雪だるま作ってぢぢは若返る             大澤 水牛

塩昆布を一箸加え薺粥                須藤 光迷

七つの子巣立って老いた寒鴉             中沢 豆乳

今回で終わりにすると年賀状             旙山 芳之

潮の目の舟一艘の淑気かな              廣上 正市

《参加者》【出席13人】嵐田双歩、今泉而云、植村方円、大澤水牛、岡田鷹洋、金田青水、篠田朗、杉山三薬、堤てる夫、徳永木葉、中村迷哲、星川水兎、向井愉里。【投句参加26人】池村実千代、和泉田守、伊藤健史、岩田三代、大沢反平、大平睦子、荻野雅史、加藤明生、工藤静舟、久保田操、澤井二堂、鈴木雀九、須藤光迷、高井百子、髙石昌魚、高橋ヲブラダ、谷川水馬、中沢豆乳、中島阿猿、野田冷峰、流合研士郎、旙山芳之、廣上正市、藤野十三妹、水口弥生、横井定利。

(報告 中村迷哲)

 

 

 

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新春恒例七福神吟行を開催

オミクロン跋扈の中、21人が参加

1月8日、深川を巡り、名物酒場で打ち上げ

一月八日の土曜日、日経俳句会、番町喜楽会合同で恒例の七福神吟行を行った。昨年末の感染者数減少で、今年は大丈夫と思って計画したが、あに図らんや、年明けからのオミクロン株流行で、沖縄・広島・山口に「まん延防止等重点措置」の適用が報じられる中での吟行となった。また、吟行の前々日、東京都心部に十センチ以上の積雪があり、ところどころに雪が残る足元の悪い中での開催となった。

今回は深川七福神巡り。午後一時に地下鉄森下駅に総勢二十一名が集合し、深川神明宮(寿老神)→深川稲荷神社(布袋尊)→龍光院(毘沙門天)→円珠院(大黒天)→心行寺(福禄寿)→冬木弁天堂(弁財天)→富岡八幡宮(恵比寿神)と巡回する予定だったが、事前の下見で時間に余裕があったことから、芭蕉稲荷や臨川寺など芭蕉ゆかりの場所に立ち寄ろう、せっかくだから清澄庭園で休憩も取ろうとなった。ところがいざ始まると、まるで時間が足りず、やむなく大黒天と福禄寿をスキップする五福神になってしまった。

直会は、門前仲町では誰もが知る魚三酒場。事前に予約していたので、入店待ちの行列の横を抜けて三階へ。刺身、蟹、海老フライ、巻物などを肴に、ビール・熱燗・焼酎のオンパレード。オミクロン株などどこ吹く風の宴会となった。

吟行を終えて、句会メンバー二十人によるメール句会を開催。投句三句、選句四句の結果、最高点は七点句の「忠敬も林蔵も居て初歩き 三薬」、次席は五点句の「芭蕉にも会ふて深川福まゐり 青水」となった。

《参加者21人》 嵐田双歩,池内的中、今泉而云、岩田三代、植村方円、大澤水牛、岡田鷹洋、金田青水、工藤静舟ご夫妻、杉山三薬、須藤光迷、田中白山、谷川水馬、玉田春陽子、徳永木葉、中村迷哲、旙山芳之、廣田可升、前島幻水、向井愉里

(幹事 廣田可升)

 

 

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日経俳句会令和3年度下期合同句会

22人出席し賑やかに年納め

一席10点は「息災」迷哲句、「検査」正市句が二席9点

日経俳句会は12月15日(水)、令和3年度下期合同句会を内神田の日経広告研究所会議室で開催した。別の会場を使った昨年の合同句会当日の全国感染者数は2431人。一方、この日は175人という激減ぶり。オミクロン株の広がりは気になるものの、22人が出席し賑やかな納めの句会となった。兼題は「冬の日」。40人から118句の投句があり、5句選の事前選句の結果、中村迷哲さんの「息災の二文字の重さ年暮るる」が10点獲得で第一席。二席は廣上正市さんの「番号で呼ばるる検査冬の雨」が9点で続き、三席は玉田春陽子さんの「冬の日のぬくみを膝に靴磨き」と嵐田双歩さんの「日記買ふ良い事ばかり書きたくて」が8点で並んだ。以下、6点2句、5点3句、4点6句、3点14句、2点12句、1点38句だった。兼題別の高点句(3点以上)は以下の通り。

「冬の日」

冬の日のぬくみを膝に靴磨き          玉田春陽子

冬の日の動物園は尻ばかり           廣田 可升

冬の日の縁側祖父と七並べ           中村 迷哲

冬の日や眠り続ける猫八歳           高井 百子

公園は雀ばかりの冬日向            今泉 而云

冬の日の輪郭線の濃き並木           大下 明古

冬の日や山並み越しの富士白し         篠田  朗

冬の日や虎の鼻梁を描きあぐね         須藤 光迷

冬の日を向かふのビルが捉ふ刻         髙橋ヲブラダ

冬の日や賽の河原の石の音           谷川 水馬

当季雑詠

息災の二文字の重さ年暮るる          中村 迷哲

番号で呼ばるる検査冬の雨           廣上 正市

日記買ふ良い事ばかり書きたくて        嵐田 双歩

何センチ髪を切ろうか冬日和          大平 睦子

不意をつく何も語らぬ喪の葉書         植村 方円

先生の卒寿の冬や我ら喜寿           澤井 二堂

気嵐や立山遠く朝焼ける            岩田 三代

教室にストーブ弁当匂ひ出す          金田 青水

暗闇にマスクが並ぶロードショー        深田森太郎

冬山河パールハーバー八十年          堤 てる夫

焼芋や女系家族のケセラセラ          向井 ゆり

太ももの静脈青き柚子湯かな          嵐田 双歩

枯れ蓮は幾何学模様夕日さす          岩田 三代

もの枯れの中にかがやく鷹の爪         大澤 水牛

寛解の兄と海老重年流る            岡田 鷹洋

かたづかぬままの人生煤払           玉田春陽子

吊革に無賃乗車や冬の蠅            玉田春陽子

暖色の白もあるのだ蕪煮る           中嶋 阿猿

十二月パンタグラフの火花散る         星川 水兎

《参加者》【出席22人】嵐田双歩、池村実千代、今泉而云、岩田三代、植村方円、大澤水牛、岡田鷹洋、荻野雅史、金田青水、澤井二堂、杉山三薬、鈴木雀九、高井百子、堤てる夫、徳永木葉、中村迷哲、野田冷峰、旙山芳之、廣上正市、廣田可升、星川水兎、向井ゆり。【投句参加18人】和泉田守、大沢反平、大下明古、大平睦子、加藤明生、工藤静舟、久保道子、久保田操、篠田朗、須藤光迷、高石昌魚、高橋ヲブラダ、谷川水馬、玉田春陽子、中沢豆乳、中嶋阿猿、深田森太郎、藤野十三妹。

(報告 嵐田双歩)

 

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番町喜楽会第190回例会

兼題は「年惜しむ」と「熱燗」

命水さんの「年惜しむ」句がぶっちぎりの10点トップ

番町喜楽会は、12月4日(土)に「年惜しむ」と「熱燗」を兼題として令和3年12月例会(通算190回)を開催した。投句者は19名で、投句総数は95句であった。選句は出席者6句、欠席者の事前選句を5句として句会を進めた結果、塩田命水さんの「手に馴染み太りし手帳年惜しむ」が10点でトップに輝いた。次席は中村迷哲さんの6点句「肉厚の屋台のコップ燗熱し」で、三席は玉田春陽子さんの5点句「石ひとつ祀る祠や石蕗の花」と中村迷哲さんの「熱燗をヤカンで回す漁師町」であった。以下、4点句が3句、3点句が5句、2点句が14句、1点句が24句という結果であった。兼題別の高点句(3点以上)は次の通り。

「年惜しむ」

手に馴染み太りし手帳年惜しむ         塩田 命水

帰らざる人あり日あり年惜しむ         斉山 満智

慣れた事変わりゆく事年惜しむ         星川 水兎

「熱燗」

肉厚の屋台のコップ燗熱し           中村 迷哲

熱燗をヤカンで回す漁師町           中村 迷哲

熱燗にやがて飛び交ふ国訛り          谷川 水馬

熱燗や昭和を生きた顔三つ           玉田春陽子

「雑詠」

石ひとつ祀る祠や石蕗の花           玉田春陽子

三越の獅子の冷たき師走かな          嵐田 双歩

上役は平成生まれ葱鮪鍋            谷川 水馬

木枯らしが振付師なり銀杏舞う         須藤 光迷

あと何冊読める本棚煤ごもり          廣田 可升

【出席者15人】嵐田双歩、今泉而云、大澤水牛、金田青水、塩田命水、須藤光迷、高井百子、田中白山、谷川水馬、玉田春陽子、堤てる夫、徳永木葉、中村迷哲、廣田可升、前島幻水【欠席投句4名】池内的中、斉山満智、野田冷峰、星川水兎。(報告・谷川水馬)

 

 

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日経俳句会第204回例会

今年最高の114句が集まる

一席8点「浜ことば」迷哲句、二席7点「糊づくり」青水句

日経俳句会の令和3年11月例会(通算204回)は、コロナ感染が下火となり17日に前月に続き対面で開催した。兼題は「目貼」と「牡蠣」。38人から114句と今年最高の投句があり、日常が戻るにつれ句作の意欲も高まっているようだ。句会の出席は12人とやや少なかったが、出席者に高点句が多く合評会は盛り上がった。6句選の結果、中村迷哲さんの「牡蠣打ちの陽気な婆の浜ことば」が最高8点を獲得。二席7点には金田青水さんの「飯粒で兄と目貼の糊づくり」が入り、三席6点には「飼馴れし猫に死なるる夜寒かな(水牛)」と「仁丹が香る亡父の冬背広(豆乳)」、「朝の汁青菜ざくざく冬に入る(正市)」の3句が並んだ。このほか5点6句、4点6句、3点8句と3点以上の高点句が25句にのぼった。以下2点20句、1点29句だった。兼題別の高点句(3点以上)は以下の通り。

「目貼」

飯粒で兄と目貼の糊づくり              金田 青水

目貼して秘密基地めく四畳半             嵐田 双歩

目貼して世にかた時の安堵来る            向井 ゆり

熊眠るルシャの番屋の板目貼             中沢 豆乳

目貼して劇団員の猛稽古               植村 方円

目貼して風の音聞く安下宿              篠田 朗

目貼せし窓より連山雲の帯              中嶋 阿猿

「牡蠣」

牡蠣打ちの陽気な婆の浜ことば            中村 迷哲

帰京する朝に立ち寄り牡蠣打ち場           向井 ゆり

生牡蠣やシャンゼリーゼの風の中           大沢 反平

エッフェル塔眺めつ牡蠣の三種盛           須藤 光迷

牡蠣の身のなまめく光すすりけり           流合研士郎

生の牡蠣食へぬ男と食ふ女              横井 定利

お隣も眼鏡外すや牡蠣雑炊              植村 方円

煎牡蠣やことばのいらぬ老二人            大澤 水牛

牡蠣啜る舌に滑らか潮香る              久保田 操

宇宙屑海に落ちしは牡蠣の殻             中嶋 阿猿

「当季雑詠」

飼馴れし猫に死なるる夜寒かな            大澤 水牛

仁丹が香る亡父の冬背広               中沢 豆乳

朝の汁青菜ざくざく冬に入る             廣上 正市

冬桜わが身もか細くなりにけり            大沢 反平

短日や交通巡査尖る笛                岡田 鷹洋

夕時雨裏路地駆けるランドセル            中村 迷哲

冬うらら忘れたきこと忘れたり            嵐田 双歩

孫忘れし玩具ぽつんと冬に入る            徳永 木葉

《参加者》【出席12人】嵐田双歩、今泉而云、大澤水牛、岡田鷹洋、金田青水、杉山三薬、鈴木雀九、堤てる夫、徳永木葉、中沢豆乳、中村迷哲、向井ゆり.【投句参加26人】池村実千代、和泉田守、岩田三代、植村方円、大沢反平、大下明古、大平睦子、荻野雅史、加藤明生、工藤静舟、久保田操、澤井二堂、篠田朗、須藤光迷、高井百子、髙石昌魚、高橋ヲブラダ、谷川水馬、中島阿猿、野田冷峰、流合研士郎、旙山芳之、廣上正市、藤野十三妹、星川水兎、横井定利.  (報告 中村迷哲)

 

 

 

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酔吟会第154回例会

コロナ禍下火で今年初の対面句会

14人出席、投句参加7人で「虎落笛」「冬の蝶」を詠む

新型コロナ感染が下火になって酔吟会は11月13日(土)、今年初の対面句会に漕ぎ着けた。11月例会(通算154回)に出席したのは、大澤水牛、今泉而云両顧問以下14人、歩行困難の野田冷峰さんが自走式歩行車を操って姿を現した。投句参加は7人。兼題は「虎落笛」「冬の蝶」で、投句総数は103句。手分けして短冊を作成、これを計14枚の清記用紙にしてコピーする方式で、各自が作品集を筆写する手間を省いた。8句選句の結果、最高は谷川水馬さんの「冬蝶と日に三本のバスを待つ」の6点句。次席は堤てる夫さんの「急峻の真田本城虎落笛」と、徳永木葉さんの「籠り明け手締め高々一の酉」の5点2句。続く4点句は、水牛さんの「パラダイスと言ひし町あり虎落笛」、水馬さんの「傾ぎたる藁塚一つ虎落笛」、木葉さんの「冬蝶のたどり着きたる換気窓」の3句が並んだ。以下、3点が8句、2点が14句、1点30句。兼題別の高点句(3点以上)は次の通り。

「虎落笛」

急峻の真田本城虎落笛                 堤 てる夫

パラダイスと言ひし町あり虎落笛      大澤 水牛

傾ぎたる藁塚一つ虎落笛            谷川 水馬

番小屋の梁の煤けや虎落笛         須藤 光迷

「冬の蝶」

冬蝶と日に三本のバスを待つ        谷川 水馬

冬蝶のたどり着きたる換気窓        徳永 木葉

蝶決心して冬至の青空へ          金田 青水

さびしさのかぎりを飛んで冬の蝶      玉田春陽子

「当季雑詠」

籠り明け手締め高々一の酉         徳永 木葉

このところ言訳ばかり烏瓜         大澤 水牛
吟行を終へて煮凝り茶碗酒         大澤 水牛

帰りたい病床十日冬に入る         大平 睦子

木枯しに遊ばれ朝のゴミ拾い        大平 睦子

再会のマスターの笑み冬ぬくし       廣田 可升

【参加者】(出席)嵐田双歩、大澤水牛、今泉而云、岡田鷹洋、金田青水、杉山三薬、須藤光迷、高井百子、玉田春陽子、堤てる夫、徳永木葉、野田冷峰、廣田可升、向井ゆり。(投句参加)大沢反平、大平睦子、工藤静舟、久保田操、久保道子、谷川水馬、藤野十三妹。    (まとめ 高井百子 廣田可升)

 

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番町喜楽会189回例会

「芭蕉忌」と「河豚」を詠む

満智さんが「暮れの秋」7点でトップ

春陽子さん「妻の独り言」が次席6点

番町喜楽会は令和3年11月の例会(通算第189回)を1日、東京・九段下の千代田区生涯学習館で開催した。20人から投句があり、コロナウイルスの緊急事態宣言が解除されたことなどから、15人が顔を揃えた。兼題は「芭蕉忌」と「河豚」、投句は3句以上5句以内、選句は6句(欠席者は5句)とした結果、斉山満智さんの「病むこともまた生きること暮れの秋」が7点でトップ、次席6点に玉田春陽子さんの「秋寒や妻にふえたる独り言」が入った。三席は5点で塩田命水さんの「手術後の妻の手温し秋日和」、徳永木葉さんの「河豚のひれ青き炎の酒の中」、前島幻水さんの「大川の流れも過客芭蕉の忌」の3句が並んだ。4点が2句、3点も2句だった。兼題別の高点句(3点以上)は次の通り。

「芭蕉忌」

大川の流れも過客芭蕉の忌         前島 幻水

吟行の軽きシューズや翁の忌        今泉 而云

時雨忌や籠り居に増す旅ごころ       前島 幻水

「河豚」

河豚のひれ青き炎の酒の中         徳永 木葉

客寄せに吊るされ河豚の膨れ面       中村 迷哲

「雑詠」

病むこともまた生きること暮れの秋     斉山 満智

秋寒や妻にふえたる独り言         玉田春陽子

手術後の妻の手温し秋日和         塩田 命水

霜降と聞いて一枚羽織る夜         大澤 水牛

【出席者】(15人)嵐田双歩、池内的中、今泉而云、大澤水牛、金田青水、塩田命水、須藤光迷、高井百子、玉田春陽子、堤てる夫、徳永木葉、中村迷哲、廣田可升、星川水兎、前島幻水。【投句参加者】(5人)斉山満智、田中白山、谷川水馬、野田冷峰、山口斗詩子。  (報告・須藤光迷)

 

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日経俳句会第203回例会

今年初めての対面句会で「冬隣」と「鮭」を詠む

36人参加、投句108句

日経俳句会の令和3年10月例会(通算203回)は、緊急事態宣言の解除に伴い、内神田の日経広告研究所会議室で今年初の対面句会が実現した。新型コロナの一日当たり新規感染者数は、第五波のピーク時2万6千人近くから3、4百人と二桁近く激減した。この調子で対面句会が続けられればいいのだが。ともあれ、晩秋らしい北風が落ち葉を散らす中、いつもの鎌倉橋の会場に15人が出席、久々に旧交を温めた。兼題は「冬隣」と「鮭」。参加36人から計108句の投句があり、6句選(欠席者5句)の結果、岡田鷹洋さんの「売りに出す終の住処や冬隣」が9点で一席、二席には中村迷哲さんの「仕込み桶洗ふ蔵びと冬隣」が8点。三席も迷哲さんの「十年(ととせ)経てひと還れぬ地鮭帰る」が7点と高点句を連発した。今回は「冬隣」が投句数も多く、高点句も多かった。このほか6点3句、5点1句、4点11句、3点7句、2点22句、1点24句だった。兼題別の高点句(3点以上)は以下の通り。

「冬隣」

売りに出す終の住処や冬隣             岡田 鷹洋

仕込み桶洗ふ蔵びと冬隣              中村 迷哲

人と灯の戻りたる街冬隣              杉山 三薬

半眼の蝦蟇に出くわす冬隣             谷川 水馬

寝間の戸を叩く老猫冬隣              大澤 水牛

餌あさる雀忙しき冬隣               大澤 水牛

そここゝに老人と鳩冬隣              金田 青水

牧草ロールごろんごろんと冬隣           廣上 正市

恋の句を詠むことも無く冬隣            藤野十三妹

浴室に手摺しつらえ冬隣              髙石 昌魚

「鮭」

十年(ととせ)経てひと還れぬ地鮭帰る       中村 迷哲

吊るされて土間睨みをる鮭の群           岩田 三代

 鮭来たる今日は半どん村役場            谷川 水馬
 出刃にぎる鮭の頭を梨割に             須藤 光迷

母の川懐かしむごと鮭跳ねる            徳永 木葉

一途てふ美しき言の葉鮭上る            廣上 正市

当季雑詠

湿原の夕日重たし鳥渡る              加藤 明生

秋晴れでどら焼き二つ買いました          大平 睦子

隣室の光まだあり長き夜              植村 方円

蕎麦刈や地平に雲とコンバイン           谷川 水馬

木犀の香りのつなぐ記憶かな            流合研士郎

住み古りて茸はえたる庭の隅            星川 水兔

秋の蚊にげんまんの指刺されたる          今泉 而云

廃業の貼り紙あせて秋の風             須藤 光迷

萩かざし万葉美人めける妻             中村 迷哲

《参加者》【出席15人】嵐田双歩、今泉而云、植村方円、大澤水牛、岡田鷹洋、金田青水、澤井二堂、杉山三薬、鈴木雀九、高井百子、堤てる夫、徳永木葉、中村迷哲、星川水兎、向井ゆり。【投句参加21人】池村実千代、岩田三代、大沢反平、大平睦子、荻野雅史、加藤明生、工藤静舟、久保田操、篠田朗、須藤光迷、髙石昌魚、高橋ヲブラダ、谷川水馬、中島阿猿、野田冷峰、流合研士郎、旙山芳之、廣上正市、藤野十三妹、水口弥生、横井定利。

(報告・嵐田双歩)

 

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番町喜楽会2年ぶりの本格吟行句会

14人参加深川で芭蕉の足跡たどる

番町喜楽会は10月16日の土曜日、下町・深川に芭蕉の足跡をたどる吟行を催行した。総勢14人が深川に散在する芭蕉の旧跡を巡り、江東区芭蕉記念館に席を借りて句会を行った。コロナ禍で月例句会もメール開催が続き、本格的な吟行は千葉・養老渓谷以来2年ぶり。午前十一時に地下鉄清澄白河駅に顔を揃えたのは、嵐田双歩、今泉而云、大澤水牛、金田青水、澤井二堂、須藤光迷、田中白山、谷川水馬、玉田春陽子、徳永木葉、中村迷哲、廣田可升、前島幻水の番喜会メンバーに、日経俳句会から紅一点、向井ゆりさんが加わった。

最初に訪ねたのは、駅から50メートルほどの臨川寺。芭蕉が「蕉風開眼」を果たすきっかけとなった重要な史跡。日本橋から深川芭蕉庵に移り住んだ芭蕉は、ここの仏頂和尚の元に通い詰め、禅を修行し、莊子を始めとした漢籍を学んだという。庭には「墨直しの碑」など芭蕉ゆかりの石碑が並び、その脇に植えられた檀(まゆみ)の赤い実が爆ぜて、秋の終りを告げていた。

これ時雨かな吟行に行く朝       而云

まゆみの実芭蕉の句碑にはね返る    水牛

臨川寺を出て小名木川にかかる萬年橋に向かう。途中、相撲部屋をいくつか見かける。寺尾が開いた錣山部屋、琴風の尾車部屋、安芸乃島の高田川部屋など二所ノ関一門の部屋が多い。昼近い刻限のせいか、どこも入り口やシャッターを閉じ、人影はない。

相撲部屋シャッター降りて冬隣    ゆり

10分ほどで萬年橋に着く。橋の下を流れる小名木川は江戸時代に、房総の塩や野菜、米を運び込むために作られた運河。萬年橋は河口近くに架けられた橋で、船の通行を妨げないよう橋脚の高い太鼓橋だった。北斎の浮世絵にその優美な姿が描かれ、広く知られている。仏頂和尚の元に参禅に通う芭蕉も何度も渡ったに違いない。現在は鉄骨のアーチ橋に架け替えられている。たもとには巨大な「新小名木川水門」が設置され、船舶の往来を制御している。

深川は芭蕉と水門同居して       二堂

行く秋の小名木水門元番所       白山

萬年橋の脇の階段を降りると、墨田川との合流点に出る。川岸に遊歩道(テラス)が作られ、墨田川や対岸の景色、往来する船を眺めながら散策ができる。「芭蕉野分して盥に雨を聞夜哉」など、芭蕉庵で詠まれた句をステンレス製の板に刻んだ句碑が点々と置かれている。

秋惜しむステンレス製芭蕉句碑     春陽子

潮の香のただよふ街の秋気かな     青水

遊歩道から「芭蕉庵史跡展望庭園」に登る。庭園への階段は山寺をイメージし、小さな池は蛙が飛び込んだ古池を模したという。池には赤い萩の花が散りかかり風情がある。一角に墨田川に向けて芭蕉の座像が設置されている。

赤萩の散り込む池や芭蕉像       光迷

深川の川霧かかる芭蕉像        幻水

庭園から下って、すぐの芭蕉稲荷神社に向かう。芭蕉庵があったとされる場所に造られた芭蕉稲荷は、大正6年の大洪水の後に、芭蕉が愛好したといわれる石造の蛙が発見されたことから、創建されたもの。小さな社殿の脇に「史跡芭蕉庵跡」の石碑があり、境内のあちこちに石造りの蛙が置かれ、空をにらんでいる。洪水の時に発見された〝本物の〟石蛙は芭蕉記念館に展示されている。

秋更くる石の蛙に水場なく       木葉

跳べぬ身の冬空睨む石蛙        迷哲

芭蕉稲荷で参拝を終えて芭蕉記念館に着く。記念館は芭蕉の業績を顕彰するため江東区が1981年に開設したもの。地元に住んでいた文人政治家・真鍋儀十が寄贈した芭蕉や俳諧の資料1200点がベースになっている。玄関脇には大きな芭蕉が植えられ葉を茂らせている。三階建ての建物を取り囲むように池を配した日本庭園が設けられ、落ち着いた佇まい。芭蕉の句に詠まれた草木が植えられ、四季折々の変化を愛でることができる。築山の上には芭蕉堂が築かれ、「古池や~」をはじめ三つの句碑が置かれている。

深川は坂のない町破芭蕉        水馬

行く秋を句友と歩む芭蕉径       双歩

記念館では番喜会会長廣田可升さんの知り合いの記念館次長野呂達矢さんに館内を案内してもらう。ちょうど旧暦十月十二日の芭蕉忌に合わせた「時雨忌 全国俳句大会」の企画展示が行われており、「初しぐれ猿も小蓑をほしげ也」の句を収めた「猿蓑」をはじめとする俳諧集や俳画、肖像画など充実した内容だ。さらに常設展示では、石の蛙に対面。芭蕉と深川の関わり、芭蕉庵での暮らしぶりなど、丁寧に解説して頂いた。

午後2時からいよいよ句会開始。大広間の大きく開けた窓からは、眼下に墨田川が広がる。芭蕉ゆかりの地での吟行に佳句が続出、和気あいあいの句座が4時半まで続いた。

秋の句座障子あければ隅田川      可升

(報告 中村迷哲)

 

 

 

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