番町喜楽会第190回例会

兼題は「年惜しむ」と「熱燗」

命水さんの「年惜しむ」句がぶっちぎりの10点トップ

番町喜楽会は、12月4日(土)に「年惜しむ」と「熱燗」を兼題として令和3年12月例会(通算190回)を開催した。投句者は19名で、投句総数は95句であった。選句は出席者6句、欠席者の事前選句を5句として句会を進めた結果、塩田命水さんの「手に馴染み太りし手帳年惜しむ」が10点でトップに輝いた。次席は中村迷哲さんの6点句「肉厚の屋台のコップ燗熱し」で、三席は玉田春陽子さんの5点句「石ひとつ祀る祠や石蕗の花」と中村迷哲さんの「熱燗をヤカンで回す漁師町」であった。以下、4点句が3句、3点句が5句、2点句が14句、1点句が24句という結果であった。兼題別の高点句(3点以上)は次の通り。

「年惜しむ」

手に馴染み太りし手帳年惜しむ         塩田 命水

帰らざる人あり日あり年惜しむ         斉山 満智

慣れた事変わりゆく事年惜しむ         星川 水兎

「熱燗」

肉厚の屋台のコップ燗熱し           中村 迷哲

熱燗をヤカンで回す漁師町           中村 迷哲

熱燗にやがて飛び交ふ国訛り          谷川 水馬

熱燗や昭和を生きた顔三つ           玉田春陽子

「雑詠」

石ひとつ祀る祠や石蕗の花           玉田春陽子

三越の獅子の冷たき師走かな          嵐田 双歩

上役は平成生まれ葱鮪鍋            谷川 水馬

木枯らしが振付師なり銀杏舞う         須藤 光迷

あと何冊読める本棚煤ごもり          廣田 可升

【出席者15人】嵐田双歩、今泉而云、大澤水牛、金田青水、塩田命水、須藤光迷、高井百子、田中白山、谷川水馬、玉田春陽子、堤てる夫、徳永木葉、中村迷哲、廣田可升、前島幻水【欠席投句4名】池内的中、斉山満智、野田冷峰、星川水兎。(報告・谷川水馬)

 

 

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日経俳句会第204回例会

今年最高の114句が集まる

一席8点「浜ことば」迷哲句、二席7点「糊づくり」青水句

日経俳句会の令和3年11月例会(通算204回)は、コロナ感染が下火となり17日に前月に続き対面で開催した。兼題は「目貼」と「牡蠣」。38人から114句と今年最高の投句があり、日常が戻るにつれ句作の意欲も高まっているようだ。句会の出席は12人とやや少なかったが、出席者に高点句が多く合評会は盛り上がった。6句選の結果、中村迷哲さんの「牡蠣打ちの陽気な婆の浜ことば」が最高8点を獲得。二席7点には金田青水さんの「飯粒で兄と目貼の糊づくり」が入り、三席6点には「飼馴れし猫に死なるる夜寒かな(水牛)」と「仁丹が香る亡父の冬背広(豆乳)」、「朝の汁青菜ざくざく冬に入る(正市)」の3句が並んだ。このほか5点6句、4点6句、3点8句と3点以上の高点句が25句にのぼった。以下2点20句、1点29句だった。兼題別の高点句(3点以上)は以下の通り。

「目貼」

飯粒で兄と目貼の糊づくり              金田 青水

目貼して秘密基地めく四畳半             嵐田 双歩

目貼して世にかた時の安堵来る            向井 ゆり

熊眠るルシャの番屋の板目貼             中沢 豆乳

目貼して劇団員の猛稽古               植村 方円

目貼して風の音聞く安下宿              篠田 朗

目貼せし窓より連山雲の帯              中嶋 阿猿

「牡蠣」

牡蠣打ちの陽気な婆の浜ことば            中村 迷哲

帰京する朝に立ち寄り牡蠣打ち場           向井 ゆり

生牡蠣やシャンゼリーゼの風の中           大沢 反平

エッフェル塔眺めつ牡蠣の三種盛           須藤 光迷

牡蠣の身のなまめく光すすりけり           流合研士郎

生の牡蠣食へぬ男と食ふ女              横井 定利

お隣も眼鏡外すや牡蠣雑炊              植村 方円

煎牡蠣やことばのいらぬ老二人            大澤 水牛

牡蠣啜る舌に滑らか潮香る              久保田 操

宇宙屑海に落ちしは牡蠣の殻             中嶋 阿猿

「当季雑詠」

飼馴れし猫に死なるる夜寒かな            大澤 水牛

仁丹が香る亡父の冬背広               中沢 豆乳

朝の汁青菜ざくざく冬に入る             廣上 正市

冬桜わが身もか細くなりにけり            大沢 反平

短日や交通巡査尖る笛                岡田 鷹洋

夕時雨裏路地駆けるランドセル            中村 迷哲

冬うらら忘れたきこと忘れたり            嵐田 双歩

孫忘れし玩具ぽつんと冬に入る            徳永 木葉

《参加者》【出席12人】嵐田双歩、今泉而云、大澤水牛、岡田鷹洋、金田青水、杉山三薬、鈴木雀九、堤てる夫、徳永木葉、中沢豆乳、中村迷哲、向井ゆり.【投句参加26人】池村実千代、和泉田守、岩田三代、植村方円、大沢反平、大下明古、大平睦子、荻野雅史、加藤明生、工藤静舟、久保田操、澤井二堂、篠田朗、須藤光迷、高井百子、髙石昌魚、高橋ヲブラダ、谷川水馬、中島阿猿、野田冷峰、流合研士郎、旙山芳之、廣上正市、藤野十三妹、星川水兎、横井定利.  (報告 中村迷哲)

 

 

 

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酔吟会第154回例会

コロナ禍下火で今年初の対面句会

14人出席、投句参加7人で「虎落笛」「冬の蝶」を詠む

新型コロナ感染が下火になって酔吟会は11月13日(土)、今年初の対面句会に漕ぎ着けた。11月例会(通算154回)に出席したのは、大澤水牛、今泉而云両顧問以下14人、歩行困難の野田冷峰さんが自走式歩行車を操って姿を現した。投句参加は7人。兼題は「虎落笛」「冬の蝶」で、投句総数は103句。手分けして短冊を作成、これを計14枚の清記用紙にしてコピーする方式で、各自が作品集を筆写する手間を省いた。8句選句の結果、最高は谷川水馬さんの「冬蝶と日に三本のバスを待つ」の6点句。次席は堤てる夫さんの「急峻の真田本城虎落笛」と、徳永木葉さんの「籠り明け手締め高々一の酉」の5点2句。続く4点句は、水牛さんの「パラダイスと言ひし町あり虎落笛」、水馬さんの「傾ぎたる藁塚一つ虎落笛」、木葉さんの「冬蝶のたどり着きたる換気窓」の3句が並んだ。以下、3点が8句、2点が14句、1点30句。兼題別の高点句(3点以上)は次の通り。

「虎落笛」

急峻の真田本城虎落笛                 堤 てる夫

パラダイスと言ひし町あり虎落笛      大澤 水牛

傾ぎたる藁塚一つ虎落笛            谷川 水馬

番小屋の梁の煤けや虎落笛         須藤 光迷

「冬の蝶」

冬蝶と日に三本のバスを待つ        谷川 水馬

冬蝶のたどり着きたる換気窓        徳永 木葉

蝶決心して冬至の青空へ          金田 青水

さびしさのかぎりを飛んで冬の蝶      玉田春陽子

「当季雑詠」

籠り明け手締め高々一の酉         徳永 木葉

このところ言訳ばかり烏瓜         大澤 水牛
吟行を終へて煮凝り茶碗酒         大澤 水牛

帰りたい病床十日冬に入る         大平 睦子

木枯しに遊ばれ朝のゴミ拾い        大平 睦子

再会のマスターの笑み冬ぬくし       廣田 可升

【参加者】(出席)嵐田双歩、大澤水牛、今泉而云、岡田鷹洋、金田青水、杉山三薬、須藤光迷、高井百子、玉田春陽子、堤てる夫、徳永木葉、野田冷峰、廣田可升、向井ゆり。(投句参加)大沢反平、大平睦子、工藤静舟、久保田操、久保道子、谷川水馬、藤野十三妹。    (まとめ 高井百子 廣田可升)

 

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番町喜楽会189回例会

「芭蕉忌」と「河豚」を詠む

満智さんが「暮れの秋」7点でトップ

春陽子さん「妻の独り言」が次席6点

番町喜楽会は令和3年11月の例会(通算第189回)を1日、東京・九段下の千代田区生涯学習館で開催した。20人から投句があり、コロナウイルスの緊急事態宣言が解除されたことなどから、15人が顔を揃えた。兼題は「芭蕉忌」と「河豚」、投句は3句以上5句以内、選句は6句(欠席者は5句)とした結果、斉山満智さんの「病むこともまた生きること暮れの秋」が7点でトップ、次席6点に玉田春陽子さんの「秋寒や妻にふえたる独り言」が入った。三席は5点で塩田命水さんの「手術後の妻の手温し秋日和」、徳永木葉さんの「河豚のひれ青き炎の酒の中」、前島幻水さんの「大川の流れも過客芭蕉の忌」の3句が並んだ。4点が2句、3点も2句だった。兼題別の高点句(3点以上)は次の通り。

「芭蕉忌」

大川の流れも過客芭蕉の忌         前島 幻水

吟行の軽きシューズや翁の忌        今泉 而云

時雨忌や籠り居に増す旅ごころ       前島 幻水

「河豚」

河豚のひれ青き炎の酒の中         徳永 木葉

客寄せに吊るされ河豚の膨れ面       中村 迷哲

「雑詠」

病むこともまた生きること暮れの秋     斉山 満智

秋寒や妻にふえたる独り言         玉田春陽子

手術後の妻の手温し秋日和         塩田 命水

霜降と聞いて一枚羽織る夜         大澤 水牛

【出席者】(15人)嵐田双歩、池内的中、今泉而云、大澤水牛、金田青水、塩田命水、須藤光迷、高井百子、玉田春陽子、堤てる夫、徳永木葉、中村迷哲、廣田可升、星川水兎、前島幻水。【投句参加者】(5人)斉山満智、田中白山、谷川水馬、野田冷峰、山口斗詩子。  (報告・須藤光迷)

 

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日経俳句会第203回例会

今年初めての対面句会で「冬隣」と「鮭」を詠む

36人参加、投句108句

日経俳句会の令和3年10月例会(通算203回)は、緊急事態宣言の解除に伴い、内神田の日経広告研究所会議室で今年初の対面句会が実現した。新型コロナの一日当たり新規感染者数は、第五波のピーク時2万6千人近くから3、4百人と二桁近く激減した。この調子で対面句会が続けられればいいのだが。ともあれ、晩秋らしい北風が落ち葉を散らす中、いつもの鎌倉橋の会場に15人が出席、久々に旧交を温めた。兼題は「冬隣」と「鮭」。参加36人から計108句の投句があり、6句選(欠席者5句)の結果、岡田鷹洋さんの「売りに出す終の住処や冬隣」が9点で一席、二席には中村迷哲さんの「仕込み桶洗ふ蔵びと冬隣」が8点。三席も迷哲さんの「十年(ととせ)経てひと還れぬ地鮭帰る」が7点と高点句を連発した。今回は「冬隣」が投句数も多く、高点句も多かった。このほか6点3句、5点1句、4点11句、3点7句、2点22句、1点24句だった。兼題別の高点句(3点以上)は以下の通り。

「冬隣」

売りに出す終の住処や冬隣             岡田 鷹洋

仕込み桶洗ふ蔵びと冬隣              中村 迷哲

人と灯の戻りたる街冬隣              杉山 三薬

半眼の蝦蟇に出くわす冬隣             谷川 水馬

寝間の戸を叩く老猫冬隣              大澤 水牛

餌あさる雀忙しき冬隣               大澤 水牛

そここゝに老人と鳩冬隣              金田 青水

牧草ロールごろんごろんと冬隣           廣上 正市

恋の句を詠むことも無く冬隣            藤野十三妹

浴室に手摺しつらえ冬隣              髙石 昌魚

「鮭」

十年(ととせ)経てひと還れぬ地鮭帰る       中村 迷哲

吊るされて土間睨みをる鮭の群           岩田 三代

 鮭来たる今日は半どん村役場            谷川 水馬
 出刃にぎる鮭の頭を梨割に             須藤 光迷

母の川懐かしむごと鮭跳ねる            徳永 木葉

一途てふ美しき言の葉鮭上る            廣上 正市

当季雑詠

湿原の夕日重たし鳥渡る              加藤 明生

秋晴れでどら焼き二つ買いました          大平 睦子

隣室の光まだあり長き夜              植村 方円

蕎麦刈や地平に雲とコンバイン           谷川 水馬

木犀の香りのつなぐ記憶かな            流合研士郎

住み古りて茸はえたる庭の隅            星川 水兔

秋の蚊にげんまんの指刺されたる          今泉 而云

廃業の貼り紙あせて秋の風             須藤 光迷

萩かざし万葉美人めける妻             中村 迷哲

《参加者》【出席15人】嵐田双歩、今泉而云、植村方円、大澤水牛、岡田鷹洋、金田青水、澤井二堂、杉山三薬、鈴木雀九、高井百子、堤てる夫、徳永木葉、中村迷哲、星川水兎、向井ゆり。【投句参加21人】池村実千代、岩田三代、大沢反平、大平睦子、荻野雅史、加藤明生、工藤静舟、久保田操、篠田朗、須藤光迷、髙石昌魚、高橋ヲブラダ、谷川水馬、中島阿猿、野田冷峰、流合研士郎、旙山芳之、廣上正市、藤野十三妹、水口弥生、横井定利。

(報告・嵐田双歩)

 

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番町喜楽会2年ぶりの本格吟行句会

14人参加深川で芭蕉の足跡たどる

番町喜楽会は10月16日の土曜日、下町・深川に芭蕉の足跡をたどる吟行を催行した。総勢14人が深川に散在する芭蕉の旧跡を巡り、江東区芭蕉記念館に席を借りて句会を行った。コロナ禍で月例句会もメール開催が続き、本格的な吟行は千葉・養老渓谷以来2年ぶり。午前十一時に地下鉄清澄白河駅に顔を揃えたのは、嵐田双歩、今泉而云、大澤水牛、金田青水、澤井二堂、須藤光迷、田中白山、谷川水馬、玉田春陽子、徳永木葉、中村迷哲、廣田可升、前島幻水の番喜会メンバーに、日経俳句会から紅一点、向井ゆりさんが加わった。

最初に訪ねたのは、駅から50メートルほどの臨川寺。芭蕉が「蕉風開眼」を果たすきっかけとなった重要な史跡。日本橋から深川芭蕉庵に移り住んだ芭蕉は、ここの仏頂和尚の元に通い詰め、禅を修行し、莊子を始めとした漢籍を学んだという。庭には「墨直しの碑」など芭蕉ゆかりの石碑が並び、その脇に植えられた檀(まゆみ)の赤い実が爆ぜて、秋の終りを告げていた。

これ時雨かな吟行に行く朝       而云

まゆみの実芭蕉の句碑にはね返る    水牛

臨川寺を出て小名木川にかかる萬年橋に向かう。途中、相撲部屋をいくつか見かける。寺尾が開いた錣山部屋、琴風の尾車部屋、安芸乃島の高田川部屋など二所ノ関一門の部屋が多い。昼近い刻限のせいか、どこも入り口やシャッターを閉じ、人影はない。

相撲部屋シャッター降りて冬隣    ゆり

10分ほどで萬年橋に着く。橋の下を流れる小名木川は江戸時代に、房総の塩や野菜、米を運び込むために作られた運河。萬年橋は河口近くに架けられた橋で、船の通行を妨げないよう橋脚の高い太鼓橋だった。北斎の浮世絵にその優美な姿が描かれ、広く知られている。仏頂和尚の元に参禅に通う芭蕉も何度も渡ったに違いない。現在は鉄骨のアーチ橋に架け替えられている。たもとには巨大な「新小名木川水門」が設置され、船舶の往来を制御している。

深川は芭蕉と水門同居して       二堂

行く秋の小名木水門元番所       白山

萬年橋の脇の階段を降りると、墨田川との合流点に出る。川岸に遊歩道(テラス)が作られ、墨田川や対岸の景色、往来する船を眺めながら散策ができる。「芭蕉野分して盥に雨を聞夜哉」など、芭蕉庵で詠まれた句をステンレス製の板に刻んだ句碑が点々と置かれている。

秋惜しむステンレス製芭蕉句碑     春陽子

潮の香のただよふ街の秋気かな     青水

遊歩道から「芭蕉庵史跡展望庭園」に登る。庭園への階段は山寺をイメージし、小さな池は蛙が飛び込んだ古池を模したという。池には赤い萩の花が散りかかり風情がある。一角に墨田川に向けて芭蕉の座像が設置されている。

赤萩の散り込む池や芭蕉像       光迷

深川の川霧かかる芭蕉像        幻水

庭園から下って、すぐの芭蕉稲荷神社に向かう。芭蕉庵があったとされる場所に造られた芭蕉稲荷は、大正6年の大洪水の後に、芭蕉が愛好したといわれる石造の蛙が発見されたことから、創建されたもの。小さな社殿の脇に「史跡芭蕉庵跡」の石碑があり、境内のあちこちに石造りの蛙が置かれ、空をにらんでいる。洪水の時に発見された〝本物の〟石蛙は芭蕉記念館に展示されている。

秋更くる石の蛙に水場なく       木葉

跳べぬ身の冬空睨む石蛙        迷哲

芭蕉稲荷で参拝を終えて芭蕉記念館に着く。記念館は芭蕉の業績を顕彰するため江東区が1981年に開設したもの。地元に住んでいた文人政治家・真鍋儀十が寄贈した芭蕉や俳諧の資料1200点がベースになっている。玄関脇には大きな芭蕉が植えられ葉を茂らせている。三階建ての建物を取り囲むように池を配した日本庭園が設けられ、落ち着いた佇まい。芭蕉の句に詠まれた草木が植えられ、四季折々の変化を愛でることができる。築山の上には芭蕉堂が築かれ、「古池や~」をはじめ三つの句碑が置かれている。

深川は坂のない町破芭蕉        水馬

行く秋を句友と歩む芭蕉径       双歩

記念館では番喜会会長廣田可升さんの知り合いの記念館次長野呂達矢さんに館内を案内してもらう。ちょうど旧暦十月十二日の芭蕉忌に合わせた「時雨忌 全国俳句大会」の企画展示が行われており、「初しぐれ猿も小蓑をほしげ也」の句を収めた「猿蓑」をはじめとする俳諧集や俳画、肖像画など充実した内容だ。さらに常設展示では、石の蛙に対面。芭蕉と深川の関わり、芭蕉庵での暮らしぶりなど、丁寧に解説して頂いた。

午後2時からいよいよ句会開始。大広間の大きく開けた窓からは、眼下に墨田川が広がる。芭蕉ゆかりの地での吟行に佳句が続出、和気あいあいの句座が4時半まで続いた。

秋の句座障子あければ隅田川      可升

(報告 中村迷哲)

 

 

 

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番町喜楽会第188回

 

兼題「秋の水」「紅葉」に20名が投句

玉田春陽子さん7点でトップ

番町喜楽会は、令和3年10月例会(通算188回)を10月2日(土)に「秋の水」と「紅葉」を兼題に開催した。投句者20名で、投句総数は100句であった。選句6句で句会を進めた結果、玉田春陽子さんの「秋の水荒縄まるめ鍬洗ふ」が7点でトップに輝いた。次席は嵐田双歩さんの5点句「懇ろに艇庫閉めをり水の秋」と谷川水馬さんの「藍染の色を深めて秋の水」、三席は中村迷哲さんの4点句「城仰ぐ町縦横に秋の水」であった。以下、3点句が5句、2点句が19句、1点句が33句と、選句が大いに割れた句会となった。兼題別の高点句(3点以上)は次の通り。

「立秋」

秋の水荒縄まるめ鍬洗ふ           玉田春陽子

懇ろに艇庫閉めをり水の秋          嵐田 双歩

藍染の色を深めて秋の水           谷川 水馬

城仰ぐ町縦横に秋の水            中村 迷哲

手水舎の龍の口吐く秋の水          徳永 木葉

「紅葉」

手術終へ妻と眺むる紅葉かな         塩田 命水

紅葉映ゆ琵琶湖疎水の煉瓦橋         徳永 木葉

「雑詠」

自販機の釣銭こぼす星月夜          玉田春陽子

枝豆や愚痴に疲れし男たち          廣田 可升

【参加者】(出席12人)嵐田双歩、池内的中、今泉而云、大澤水牛、塩田命水、須藤光迷、高井百子、田中白山、玉田春陽子、堤てる夫、徳永木葉、廣田可升。(欠席投句8人)金田青水、澤井二堂、谷川水馬、中村迷哲、野田冷峰、星川水兎、前島幻水、山口斗詩子。   (報告・谷川水馬)

 

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酔吟会第153回例会

緊急事態下メール句会が続く

「爽やか」「花野」に115句

最高6点に青水句と春陽子句

コロナ緊急事態宣言の中、酔吟会の9月例会(通算153回)は11日に今年4回目のメール句会を開催した。これ即ち今年に入ってから対面での句会が一回も行われていない寂しさ。しかし会員の作句意欲は旺盛で、兼題の「爽やか」「花野」に23会員から115句の投句。6句選の結果、最高は6点句で、金田青水さんの「爽やかに医師寛解と告げにけり」と、玉田春陽子さんの「風神も寝返りを打つ花野かな」の2句。次席は5点句で、嵐田双歩句の「知っている花の名少し大花野」、今泉而云句の「爽やかに手を振り合へる別れかな」、堤てる夫句の「別所線に案山子百体新風景」、徳永木葉句の「林檎むく正座の母のなつかしき」と4句並んだ。続く4点句は3句、3点句11句、2点15句、1点31句。兼題別の高点句(3点以上)は次の通り。

「爽やか」

爽やかに医師寛解と告げにけり         金田 青水

爽やかに手を振り合へる別れかな        今泉 而云

角乗りの声爽やかに木場の朝          廣田 可升

徒長枝を切って爽やかレモンの樹        大澤 水牛

爽やかや赤子に笑みをくれる人         廣田 可升

「花野」

風神も寝返りを打つ花野かな          玉田春陽子

知っている花の名少し大花野          嵐田 双歩

花野かな量子になると逝きし人         高井 百子

大花野ゆび指す先にオホーツク         徳永 木葉

それも良し花野に宿る山頭火          藤野十三妹

「雑詠」

別所線に案山子百体新風景           堤 てる夫

林檎むく正座の母のなつかしき         徳永 木葉

妻も子もほっこりにっこり栗ご飯        須藤 光迷

秋の暮駆け戻りたきふるさとへ         向井 ゆり

アフガンの流るる星に井戸の夢         工藤 静舟

鶏鳴のわたる校庭秋桜             須藤 光迷

木槿咲くアパートの名は寿荘          久保田 操

石飛んで川渡りけり秋日傘           玉田春陽子

水澄むや一の鳥居を湖に据え          玉田春陽子

秋雨や袋小路の老いの先            藤野十三妹

≪参加者23人≫ 嵐田双歩、今泉而云、大澤水牛、大沢反平、大平睦子、岡田鷹洋

金田青水、工藤静舟、久保田操、久保道子、澤井二堂、杉山三薬、須藤光迷、高井百子

谷川水馬、玉田春陽子、堤てる夫、徳永木葉、野田冷峰、廣田可升、藤野十三妹、星川水兎、向井ゆり。  (報告 高井百子)

 

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日経俳句会第202回例会

9ヵ月連続のメール句会に

35人で「野分」「相撲」を詠む

一席8点に而云・阿猿・鷹洋句など高点続々

日経俳句会の令和3年9月例会(通算202回)は、緊急事態宣言の延長に伴い9カ月連続のメール句会となった。兼題は「野分」と「相撲」。35人から105句の投句があり、15日締め切りで5句選の結果、一席8点には今泉而云さんの「ガラス戸に木の葉一枚野分去る」と中嶋阿猿さん「野分あと海岸の石みな光る」、岡田鷹洋さん「敬老日おしゃべりロボと夜は更けて」の3句が並んだ。二席7点は堤てる夫さんの「秋黴雨水木楊氏の著作読む」が獲得、三席6点には嵐田双歩さんの「燐寸擦る硫黄のにほひ秋彼岸」が入った。このほか5点4句、4点5句、3点11句と3点以上の高点句が25句にのぼった。以下2点12句、1点31句だった。兼題別の高点句(3点以上)は以下の通り。

「野分」

ガラス戸に木の葉一枚野分去る         今泉 而云

野分あと海岸の石みな光る           中嶋 阿猿

隣家よりソプラノ練習野分晴          大下 明古

野仏の影くつきりと野分あと          加藤 明生

野分晴海の上ゆくモノレール          星川 水兎

憂きことも野分も過ぎて朝来たる        向井 ゆり

空き家には殊更強く野分吹く          植村 方円

野分後満艦飾となる団地            須藤 光迷

「相撲」

物陰で褌(へこ)直す子や草相撲        嵐田 双歩

相撲取消えゆく四股名海と山          加藤 明生

砂かぶり和装のママは桔梗柄          杉山 三薬

宮相撲都会から来た子の本気          中嶋 阿猿

幼子の白き腕や草相撲             和泉田 守

はじめから足取るつもり子ども相撲       大下 明古

米一俵担いで帰る村相撲            中村 迷哲

「当季雑詠」

敬老日おしゃべりロボと夜は更けて       岡田 鷹洋

秋黴雨水木楊氏の著作読む           堤 てる夫

燐寸擦る硫黄のにほひ秋彼岸          嵐田 双歩

静かなり白磁の皿の黒葡萄           藤野十三妹

秋めくや享年見やる訃報欄           和泉田 守

畑に立つ父の背小さく秋夕焼け         岩田 三代

焼き菓子の即売ありて栗林           植村 方円

三省堂ビルも仕舞うか秋ともし         杉山 三薬

芋の露まろびまろびて転び落つ         高井 百子

角刈りで風切る庭師秋手入れ          谷川 水馬

《参加者三十五人》嵐田双歩、池村実千代、和泉田守、今泉而云、岩田三代、植村方円、大澤水牛、大沢反平、大下明古、大平睦子、岡田鷹洋、荻野雅史、加藤明生、金田青水、久保田操、澤井二堂、篠田朗、杉山三薬、鈴木雀九、須藤光迷、高井百子、髙石昌魚、高橋ヲブラダ、谷川水馬、堤てる夫、徳永木葉、中島阿猿、中村迷哲、野田冷峰、旙山芳之、廣上正市、藤野十三妹、星川水兎、向井ゆり、横井定利。  (報告 中村迷哲)

 

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番町喜楽会187回

「釣瓶落し」と「松茸」を詠む

水牛さんが「瓜棚」8点でトップ

迷哲さん「海の果て」で次席6点に

番町喜楽会の令和3年9月の例会(通算第187回)は6日、東京・九段下の千代田区生涯学習館で対面で開催した。21人から投句があったものの、コロナウイルスの緊急事態宣言が発令されていることもあり、欠席者が12人に上った。兼題は「釣瓶落し」と「松茸」、投句は3句以上5句以内、選句は6句(欠席者は5句)とした結果、大澤水牛さんの「瓜棚のすがれて釣瓶落しかな」が8点でトップ、次席6点に中村迷哲さんの「故郷は釣瓶落しの海の果て」が入り、三席は4点で今泉而云さんの「薄紅を武骨に齧る新生姜」、谷川水馬さんの「鞍はずす駱駝に釣瓶落しかな」、中村迷哲さんの「信濃では焼松茸に赤ワイン」、廣田可升さんの「ため息で閉じる短編衣被」、前島幻水さんの「晩酌の父の笑顔や土瓶蒸し」の5句が並んだ。3点は6句だった。兼題別の高点句(3点以上)は次の通り。

「釣瓶落し」

瓜棚のすがれて釣瓶落しかな       大澤 水牛

故郷は釣瓶落しの海の果て        中村 迷哲

鞍はずす駱駝に釣瓶落しかな       谷川 水馬

一乗谷そめあげ釣瓶落としかな      須藤 光迷

「松茸」

信濃では焼松茸に赤ワイン        中村 迷哲

晩酌の父の笑顔や土瓶蒸し        前島 幻水

腰に縄松茸山の急斜面          嵐田 双歩

松茸膳樹脂板越しの笑顔かな       大澤 水牛

松茸の時価の二文字濃く太く       玉田春陽子

「雑詠」

薄紅を武骨に齧る新生姜         今泉 而云

ため息で閉じる短編衣被         廣田 可升

両の手を広げて測る秋の雲        塩田 命水

町を裂く稲妻見たり羽田便        須藤 光迷

【出席者】(9人)今泉而云、大澤水牛、須藤光迷、高井百子、田中白山、玉田春陽子、堤てる夫、中村迷哲、廣田可升。【投句参加者】(12人) 嵐田双歩、池内的中、金田青水、斉山満智、澤井二堂、塩田命水、谷川水馬、徳永木葉、野田冷峰、星川水兎、前島幻水、山口斗詩子。  (報告・須藤光迷)

 

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