コロナ鎮まり吟行再開

4月は塩山・桃源郷、5月は都電薔薇吟行

コロナウイルスの蔓延で二年間、新年の七福神巡りを別として、日経俳句会と番町喜楽会合同の本格的な吟行をやらずに過ごしてきた。しかし、令和4年に入ると、猖獗を極めたウイルスもようやくおとなしくなってきて、新規感染者が減少傾向を見せはじめた。諸外国政府は防除体制解除を次々に打ち出し、慎重な日本政府も「人通りの少ない所ではマスクを外してもよい」などと言い出すようになった。

「待ってました」と日俳・番喜両句会の元気老人たちは「吟行再開」を唱え始めた。都内はもちろん関東近県の吟行好適地を即座に十指に足の指まで加えるほど挙げることの出来る杉山三薬さんが「幹事」になって、四月から「毎月やりましょう。都合のつく人が自由に参加できる形で」開催することにした。

最初はコロナ騒ぎでまる二年お預けになっていた「甲州塩山桃源郷」吟行を4月9日(土)に催行した。JR塩山駅に午前10時に集合し、まさに満開の桃畑をチャーターしたマイクロバスに揺られながら眺め、花の寺慈雲寺へ。次に武田信玄の菩提寺恵林寺に行き、まずは門前の茶屋で名物信玄弁当の昼食を取る。大休止後、恵林寺をゆっくり見学、老舗の酒蔵がワイン醸造に進路変更した「甲斐ワイナリー」を訪問した。まだ50にはなっていないのではないかと思しきワイナリー三代目の若主人が熱心にワインの話をしてくれて、自慢のワインを試飲しながら美味しいパスタやチーズ、地元野菜のサラダを味わって参加12人大満足だった。

ジパングの出番久々桃見行       廣田 可升

三方に望む白嶺桃花摘む        杉山 三薬

山峡を抜ければ異郷桃の花       中村 迷哲

トンネルを出て陽光の大桜       今泉 而云

にごりなき一葉ざくら白きまま     嵐田 双歩

信玄の眠る里なり桃の花        須藤 光迷

恵林寺の大屋根曲線かぎろひぬ     大澤 水牛

うららかや庫裡の扁額なぞの文字    徳永 木葉

桃の下摘花作業の夫婦かな       田中 白山

草餅も裂き烏賊も売る桃源郷      金田 青水

たんぽぽの花にもあるや過疎過密    玉田春陽子

春風を土蔵に入れてワイン会      植村 方円

☆     ☆     ☆

次いで5月5日の子供の日は立夏。三薬幹事が「5月は薔薇の月。唯一残っている都電の荒川線沿線は薔薇の名所。ここへご案内」というわけで、早稲田から三ノ輪橋まで12キロをがたごと揺られながら、途中、巣鴨の名刹を巡るなどして、打ち上げは町屋にある知る人ぞ知る名物蕎麦屋という、とてもユニークな吟行が実現した。

午後1時に都電荒川線早稲田停留所に集合、すぐ近くの神田川沿いにある関口芭蕉庵を皮切りに五月吟行がスタートした。参加者は前月より一人多い13名。しかも前回は男ばかりでむさ苦しい感じだったが、今回は妙齢美女3名が加わってまことに賑やかな吟行になった。

関口芭蕉庵を見学した後、早稲田停留所からチンチン電車に乗り込み、庚申塚で途中下車、旧中山道の猿田彦神社で庚申塚を眺め、巣鴨の住宅街を歩いて「明暦大火」の火元とされる本妙寺、四谷怪談のお岩さんの墓がある妙行寺を巡り、西ヶ原四丁目停留所からまた電車に乗って終点の三ノ輪橋へ。ここのバラ園というか、薔薇の植え込みをじっくり眺める。その後、5分ほどのところにある「浄閑寺」を参拝する。ここは別名「投げ込み寺」と言われ、吉原の遊女2万7千人が眠っているという寺だ。

これで五月吟行は終了。一行はまた都電に乗って5つ逆戻りして町屋へ。この駅前にも薔薇の花壇がある。すぐそばの「如月徳」(きさらぎとく)という、50になったかどうかの夫婦が切り盛りしている小体な蕎麦屋に行き、素敵な打ち上げ懇親会を開いた。

川底の澄みて立夏の神田川       向井 愉里

岩棚に亀の昼寝や神田川        岩田 三代

荒れ庭に俳聖しのぶ青芭蕉       中村 迷哲

薔薇咲かせどっこい元気な荒川線    今泉 而云

そよ風と薔薇の香ながる早稲田車庫   金田 青水

チンチンと鳴るや都電は薔薇の中    嵐田 双歩

人気なきお岩通りや夏浅し       和泉田 守

次々に上着脱ぎだす立夏かな      星川 水兎

角の家初夏は黄薔薇の館なり      澤井 二堂

ピースといふ薔薇のつぼみは固きまま  大澤 水牛

言葉出ぬままにつつじの浄閑寺     植村 方円

バラ吟行〆の蕎麦屋でハイ拍手     杉山 三薬

 

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