番町喜楽会第77回例会

番町喜楽会は立春の日の2月4日(土)午後1時から千代田区二番町・番町ハイム会議室で平成24年度第2回例会(通算77回)を開いた。定刻に18人が勢揃いして、小さい会議室は満杯。兼題は「白魚」「二月」で、投句参加2人を含め投句総数は100句。A4サイズの選句表が3枚にわたり、これを前に6句選句の披講が進んだ。

その結果、最高の8点を集めたのは大澤水牛さんの「頼りなきひとと思へど白魚鍋」の1句。次席7点は星川佳子さんの「しらうをのうすうすと影重なれり」の1句。3席5点は2句、今泉而雲さんの「白魚や命のありて透き通る」と須藤光迷さんの「爪を切る響きも硬き二月なり」が並んだ。

続く4点は、「巨船発ちて埠頭の残る二月かな 而雲」「灯ともせば一輪咲きぬ冬の梅 笹本塘外」「冬の日の只中にあり大鳥居 塘外」「冬厳し僧のとぎれぬ長廊下 佳子」と4句。3点句は5句で、自宅療養中の山口詩朗さんが「二の替えの果てて小雨の浅草寺」と外出気分を詠み込んだ1句が入った。

兼題別の高点句(3点以上)は次の通り。

 

「白魚」

頼りなきひとと思へど白魚鍋       大澤 水牛

しらうをのうすうすと影重なれり     星川 佳子

白魚や命のありて透き通る        今泉 而雲

 

「二月」

巨船発ちて埠頭の残る二月かな      今泉 而雲

爪を切る響きも硬き二月なり       須藤 光迷

琴の音の今日は聞こえる二月かな     今泉 而雲

桑畑赤城おろしの二月かな        高井 百子

二ん月や閉店ビラの薄ぼこり       玉田春陽子

あけがたに腓の返る二月かな       三好 六甫

 

「雑詠」

灯ともせば一輪咲きぬ冬の梅       笹本 塘外

冬の日の只中にあり大鳥居        笹本 塘外

冬厳し僧のとぎれぬ長廊下        星川 佳子

二の替えの果てて小雨の浅草寺      山口 詩朗

参加者(出席)井上啓一、今泉而雲、岩沢克恵、大澤水牛、加沼鬼一、笹本塘外、須藤光迷、高井百子、高瀬大虫、高橋楓子、谷川透、玉田春陽子、堤てる夫、徳永正裕、野見山恵子、星川佳子、前島巌水、三好六甫(投句参加)野田冷峰、山口詩朗

(まとめ・堤てる夫)

 

 

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水木会第105回例会

日経俳句会水木会は1月18日(水)午後6時半、日経本社7階会議室で平成24年初句会(通算105回)を開催した。出席者は18人、投句参加者が11人で投句総数は139句と正月らしい賑わい。兼題は「初刷」「水仙」、投句5句以内、8句選で句会を進めた結果、最高の6点を得たのは山口詩朗さんの「待つことになれし病廊黄水仙」の一句。昨年来、臥せっている詩朗さんには何よりの「句会速報」になった。

次席は5点句で、嵐田啓明さんの「年寄りのがやがやと来て笑初」と、星川佳子さんの「初刷のきゅうくつさうな二つ折」の2句。次いで4点句が5句、「初刷やマウスでめくる電子版 啓明」、「断崖や水仙なりの土性骨 植村博明」、「紺碧の海へなだるる野水仙 大澤水牛」、「松とれて古き蕎麦屋に水仙花 水口弥生」、「異国語の絵馬のかずかず初社 吉野光久」と並んだ。以下3点8句、2点19句、1点46句。兼題別の高点句(3点以上)は次の通り。

 

「初刷」

初刷のきゅうくつさうな二つ折     星川 佳子

初刷やマウスでめくる電子版      嵐田 啓明

初刷りの佳き事多き重さかな      大熊 万歩

初刷の龍の目玉はやさしかり      大澤 水牛

キヨスクに立ちし柱や初新聞      徳永 正裕

 

「水仙」

断崖や水仙なりの土性骨        植村 博明

紺碧の海へなだるる野水仙       大澤 水牛

松とれて古き蕎麦屋に水仙花      水口 弥生

水仙の香り賑やか寛永寺        池村実千代

灯台へ続く轍や水仙花         今村 聖子

水仙の健気に背筋伸ばしをり      金田 青水

水仙花伊豆の干物の匂ひ連れ      杉山 智宥

回廊の曲がりを飾る野水仙       高石 昌魚

 

「雑詠」

待つことになれし病廊黄水仙      山口 詩朗

年寄りのがやがやと来て笑初      嵐田 啓明

異国語の絵馬のかずかず初社      吉野 光久

 

参加者(出席)池村実千代、今泉恂之介、大熊万歩、大澤水牛、大平睦子、植村博明、小林啓子、佐々木碩、澤井二堂、杉山智宥、須藤光迷、高石昌魚、堤てる夫、徳永正裕、廣上正市、星川佳子、横井定利、吉野光久(投句参加)嵐田啓明、今村聖子、大下綾子、金田青水、久保田操、高橋淳、直井正、藤野十三妹、水口弥生、山田明美、山口詩朗

(まとめ・堤てる夫)

 

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酔吟会第96回例会

平成24年の第1回(通算96回)句会は1月14日(土)午後1時から、鎌倉橋交差点そばの日経第二別館会議室で開かれた。首都圏は師走から雨がなく乾燥した晴天が続き、この日も晴れた。しかし日中もかなり冷え込んだせいか出席者は12人といつもより少なかった。出席者は大澤水牛、大沢反平、岡田臣弘、金指正風、片野涸魚、黒須烏幸、澤井二堂、堤てる夫、徳永正裕、藤村詠悟、星川佳子、吉野光久。投句参加は今泉恂之介、田村舟平、藤野十三妹、山口詩朗の四氏。

兼題は「初夢」「日脚伸ぶ」で5句投句。出席者による7句選句で句会を行った。その結果、最高点句は4点で「会ひたくもなき顔もゐて夢始め 光久」「吹きすさぶ空に冬芽のまぎれなく 同」「乳母車のよくうごく足日脚伸ぶ 佳子」「初夢や樹木に生れ変りをり 同」の4句、ついで3点8句、2点7句、1点30句と互選の点がいささかばらけた。兼題別の3点句以上は次の通り。

「初夢」

初夢や樹木に生まれ変りをり          星川 佳子

会ひたくもなき顔もゐて夢始          吉野 光久

初夢を何か見たよな見ぬような         澤井 二堂

初夢は妻を見染めし学食堂           岡田 臣弘

初夢の母模糊として笑ふかな          山口 詩朗

初夢やたどり着けないドアの先         星川 佳子

「日脚伸ぶ」

乳母車のよくうごく足日脚伸ぶ         星川 佳子

日脚伸ぶ語尾を引きずる娘たち         大澤 水牛

草臥れし靴を新調日脚伸ぶ           堤 てる夫

「雑詠」

吹きすさぶ空に冬芽のまぎれなく        吉野 光久

事多き年を記して日記閉ず           金指 正風

しばるるや仮設住ひの職捜し          金指 正風

(吉野光久・記)

 

 

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第76回番町喜楽会例会

番町喜楽会は1月9日(祭日)午後6時半から千代田区立九段生涯学習館の4階集会室で、平成24年度の初例会(通算76回)を開いた。出席者は久方ぶりに姿を見せた加沼鬼一はじめ16人、それに投句参加4人と賑やかに新年の幕開けをした。兼題は「去年(こぞ、去年今年も可)」と「焚火(たきび)」で、事前に雑詠を含めて5句投句。事前作成の投句一覧表をもとに選句6句の披講に入り、スピーディーに進んだ。

その結果、最高の6点を得たのは山口詩朗さんの「ガラス戸に初春の子の手形あり」と「塩辛の味整ひぬ寒の入り」の2句。年末入院という憂き目の詩朗さんにはまさに「両手に花」の結果だった。句会当日朝には幹事に選句結果を電話連絡してきたそうで、病床の熱意が句会に伝わってきた。次席は4点で「泰然と高野槇立つ去年今年 高井百子」「去年今年ざくり頭(かうべ)の手術痕 堤てる夫」「蓮根のどの穴となく去年今年 野見山恵子」の3句。以下3点句が6句続いた。

兼題別の高点句(3点以上)は次の通り。

 

「去年(こぞ、去年今年)」

泰然と高野槇立つ去年今年         高井 百子

去年今年ざくり頭(かうべ)の手術痕    堤 てる夫

蓮根のどの穴となく去年今年        野見山恵子

開運といふ酒酌みて去年今年        大澤 水牛

我が性根鏡に問ふや去年今年        玉田春陽子

 

「焚火(たきび)」

火を焚くや赤尾の豆単めくれをり      井上 啓一

大海に朝月残す磯焚火           岩沢 克恵

夜焚火や原人そばにゐるような       徳永 正裕

用なき身と思へば焚火なほ親し       野見山恵子

 

「雑詠」

ガラス戸に初春の子の手形あり       山口 詩朗

塩辛の味整ひぬ寒の入り          山口 詩朗

 

参加者(出席)井上啓一、今泉而雲、大澤水牛、加沼鬼一、笹本塘外、須藤光迷、高井百子、高瀬大虫、谷川透、玉田春陽子、堤てる夫、徳永正裕、野田冷峰、星川佳子、前島巌水(投句参加)岩沢克恵、野見山恵子、三好六甫、山口詩朗(選句参加)高橋楓子、山口詩朗

(まとめ・堤てる夫)

 

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新年二宮吾妻山・六所神社吟行

1月3日、日経俳句会と番町喜楽会有志による二宮大磯吟行を行った。二宮は平安時代に相模国の国府が置かれたところで、現在の神奈川県の横浜を除く一帯相模国の中心地だった。相模一宮の寒川神社をはじめ相模国の代表的な神社六つを束ねたのが六所神社で、ここに祀られていた祭神櫛名田姫(稲田姫)とその夫であるスサノオノミコトの神像がこの日だけご開帳になるというので、堤てる夫幹事が急遽メールで呼びかけ、初詣吟行が実現した。

さすがに三が日は動けないという人が多く、当日正午に東海道線二宮駅に参集したのは堤てる夫、夫人の高井百子、岡田臣弘、須藤光迷、廣上正市、大澤水牛、大下綾子と特別参加の綾子さんの夫君大下慶太郎の8人だった。

まず二宮駅裏手の吾妻山に登る。海抜150mほどしかないのだが海岸からいきなり立ち上がっているからかなり急な石段が300段ほど続き、さらに急坂を上って頂上に立つと、大榎が一本葉を落とした枝をすっくと青空にかざしていた。足元には早咲きの菜の花がまさに満開。右手東北方に大山、丹沢山塊、前方に富士山、その手前に箱根山、さらに左へ視線をずらすと真鶴半島とその向こうに伊豆半島、その先に大島。手前足元から相模灘が開け、左前方に三浦半島、その先に房総半島がくっきり見える。正月晴れの下の360度のパノラマは筆舌を尽くしがたい絶景だった。一同眺めを楽しみながら持ち寄った弁当を広げ、てる夫さんが背負ってきた銘酒一升をたちまち平らげた。

ゆっくりと山を下り、二宮駅前からバスで六所神社へ向かう。さすがにこの辺の代表的神社だから数百人の初詣客が長い列を作っていた。クシナダヒメとスサノオの神像は高さ7、80センチの木像で両手がもげてしまっていたが、とても威厳のあるいい作品だった。奈良から平安にかけて広まった本地垂迹説に従って日本固有の神様もこうした木像に彫られて各地の神社にかざられた。しかし明治維新の廃仏毀釈運動の際に、尊い神を仏像まがいのものにするなどもってのほかと、片端から壊され焼かれてしまった。当時のここの宮司は壊すにしのびないと倉深くに隠した。それが数年前に発見され、今回の展示になった。皆々珍しい神像を心ゆくまで鑑賞し、二宮駅まで戻り近くの居酒屋で光迷さんが神社で買って来た御神酒を酌み交わし、辰年の幸を言祝いだ。吟行句の各人代表句を掲げる。

菜の花と富士山めでつ年酒かな     大澤 水牛

初詣古拙の笑みの稲田姫

水仙や海光浴ぶる吾妻山        大下 綾子

初旅の締め括りとてお神酒酌む

初詣終へてガードをくぐりけり     大下慶太郎

菜の花に抱かれたゆたふ相模灘     岡田 臣弘

眉根寄す女神に無事を初詣

稲荷社を抜けて菜の花銀の富士     須藤 光迷

年縄や須佐之男の腕もげし儘

初詣赤きもと結ひ染め絣        高井 百子

初空にその実捧げむ大榎木

菜の花を褥まがひに高いびき      堤 てる夫

上り来て淘綾(よろぎ)の浜の浅き春

初景色富士大山に相模灘        廣上 正市

神像の篝火に立つ淑気かな

 

 

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第7回日経俳句会賞発表

12月21日に開かれた日経俳句会の年次総会・合同句会の後の忘年懇親パーティで恒例の日経俳句会賞受賞者が発表され、贈賞式が行われた。受賞作品と受賞者は以下の通り。

 

《日経俳句会英尾賞》

微動だにせぬ妻の座や鏡餅      須藤 光迷

《日経俳句会賞》

葛のつる道に這ひ出る残暑かな    片野 涸魚

新蕎麦や常の暮らしの有難く     金指 正風

冬の風吾子手を探り手を握る     池村実千代

山椒魚石の顔して石の上       嵐田 啓明

 

「講評」(今泉恂之介)

微動だにせぬ妻の座や鏡餅     須藤 光迷

一家の主婦の存在感が十分に表現されている。新年を迎え、床の間などに飾られている鏡餅を見て、わが妻のごとく微動だにしない、という夫の思いである。ご主人は、年末の奥さんの働きぶりを見て、これは大したものだ、改めて認めざるを得なかったのだろう。俳句の特徴の一つと言われる諧謔性も感じられる。

 

葛のつる道に這ひ出る残暑かな   片野 涸魚

葛(くず)という植物は実にタフで、ことに夏はぐんぐんとつるを伸ばす。それが遂に道路まで這い出てきたのである。秋の七草の一つでもある葛を、このように詠んだ句は珍しい。道路に伸びた蔓が何とも暑苦しく、いかにも残暑、という感じを与えている。

 

新蕎麦や常の暮らしの有難く    金指 正風

何でもない句のようで、なかなかこうは詠めない。合評会では「素朴な暮らしのよさが、新蕎麦という語によって浮かび上がってくる」という評があった。新蕎麦という季語の特徴をよく掴んでいる句であり、年配の蕎麦好きには共感する人が多いのではないだろうか。

 

冬の風吾子手を探り手を握る    池村実千代

北風の吹く日に母親と子供が外を歩いる。子供が母親のオーバーのポケットに手を入れ、暖かい母の手を探り当てた。母親も子供の手を握り返す……。省略の多い句だが、よく読むとこのような状況が想像されよう。女性ならではの句である。

 

山椒魚石の顔して石の上      嵐田 啓明

日経俳句会主催の旅行で赤目四十八滝(三重県)を訪れたときの作品。川沿いの水族館に大山椒魚が何匹もいて、水槽の石の上でじっとしていた。大きな扁平な頭を「石の顔」とした表現が秀逸。石という言葉を二つ重ねているのも効果的で、旅行後のメール句会で最高点を得た。

 

 

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日経俳句会第13回合同句会

日経俳句会は12月21日(水)、日経本社会議室で平成23年度の下期合同句会(通算13回)を開いた。総会、懇親会と同時開催の句会にふさわしく、水木、銀鴎、酔吟会から29人が顔をそろえ、投句総数は120句に達した。欠席投句者は11人。

兼題は「年惜しむ」と「夜着(よぎ、掻巻・褞袍・丹前も可)」。投句3句、選句5句。参加者は事前投句を元に作られた淸記用紙をメール受信、それにより前もって選句して幹事に通知、句会では幹事が選句集計結果を発表し、高得点句から順に感想を述べ合う方式で進めた。

最高点は15点で「褞袍着てマルクス読みし頃のこと 廣上正市」、次席は11点で「掻巻に日の匂ひあり夢に入る 久保田操 」、三席は「母縫ひし夜着ほころぶも捨てきれず 片野涸魚」の8点だった。以下、7点が2句、5点が4句、4点9句、3点8句、2点15句、1点37句と続いた。

<出席者>

嵐田啓明、池村実千代、井上庄一郎、今泉恂之介、大倉悌志郎、岡田臣弘、大澤水牛、大下綾子、大平睦子、片野涸魚、久保田操、小林啓子、澤井二堂、鈴木好夫、須藤光迷、高石昌魚、髙瀬大虫、高橋淳、田中頼子、徳永正裕、直井正、野田冷峰、廣上正市、藤野十三妹、藤村詠悟、星川佳子、山口詩朗、横井定利、吉野光久

<投句参加者>

今村聖子、植村博明、大熊万歩、大沢反平、金田青水、佐々木碩、杉山智宥、田村舟平、堤てる夫、深田森太郎、山田明美。

三点句以上獲得した句は以下の通り

「夜着」

褞袍着てマルクス読みし頃のこと    廣上 正市

掻巻に日の匂ひあり夢に入る       久保田 操

母縫ひし夜着ほころぶも捨てきれず   片野 涸魚

ポケットは魔法の小箱爺の夜着     吉野 光久

掻巻に猫とくるまる生家かな      今村 聖子

婿殿に丹前を貸す里帰り        大沢 反平

祭りはねどてら着こめる猿田彦     岡田 臣弘

退院す娘呉れたる小夜着背に      堤 てる夫

褞袍着て文士気取りの缶ピース     大熊 万歩

どてら着てよろしくと書く今年また   大澤 水牛

掻巻や月に地球の影を見る       田中 頼子

「年惜しむ」

猫金魚愉快な妻と年惜しむ       横井 定利

年惜しむみちのくのこと友のこと    吉野 光久

年惜しむシャンパン色の街灯り     今村 聖子

一病と組んず解れつ年惜しむ      澤井 二堂

手を引きし子に手を引かれ年惜しむ   星川 佳子

辛きことすこし吉きこと年惜しむ    嵐田 啓明

地下鉄の席に憩うて年惜しむ      小林 啓子

小さくとも佳き事ありし年惜しむ    徳永 正裕

「雑詠」

大富士へ空一枚や冬菜畑        廣上 正市

ウィンドに映りて一人イヴの街     今村 聖子

山茶花やいくども笑ふ女学生      嵐田 啓明

鬼瓦眉にとまりし雪蛍         大熊 万歩

蓮枯れて真鴨の波紋広がりぬ      澤井 二堂

病窓に母ありしころ冬銀河       田中 頼子

曹操が魏に逃れたる枯野かな      今泉恂之介

寒天に欠けゆく月の刃先見る      深田森太郎

(まとめ廣上正市)

 

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番町喜楽会第75回例会

12月3日(土)午後1時から千代田区二番町の番町ハイム会議室で平成23年締めくくりの番町喜楽会例会(通算75回)が開かれた。この日の出席者は井上啓一、今泉而雲、岩沢克恵、大澤水牛、笹本塘外、須藤光迷、高井百子、高瀬大虫、高橋楓子、谷川透、玉田春陽子、徳永正裕、星川佳子、前島厳水、三好六甫、山口詩朗の16人。脳動脈瘤手術で入院中の堤てる夫が難手術を見事乗り越え、元気に投句した上、事前選句表をもらって選句・講評も寄せる熱心さで特別参加、野田冷峰も投句参加した。

投句5句選句6句で句会を行った結果、9点という近来珍しい高点句が生まれた。徳永正裕さんの「還らざる連隊の跡冬桜」である。次席は5点で星川佳子さんの「遊郭のありし路地とや冬桜」の1句。次いで4点が「寂として参道広し冬桜 塘外」「暖冬の予報に安堵予後の妻 正裕」「葱噛んでつるりと熱くても独り 而雲」の3句。以下、3点7句、2点16句、1点23句と続いた。

句会後、場所を市ヶ谷駅そばの鮨割烹「鮨之家」に移し、忘年会を兼ねて恒例の番町連句会を開催した。発句はこの日の最高点句「還らざる連隊」。皆々アルコールの勢いも借りて超スピードで付け合い、お開きまでに30句までつなげてしまった。

第七十五回例会で三点以上獲得した句は以下の通り。

「冬温し」

暖冬の予報に安堵予後の妻      徳永 正裕

ほどほどを忘るる酔ひや冬温し    玉田春陽子

「冬桜」

還らざる連隊の跡冬桜        徳永 正裕

遊郭のありし路地とや冬桜      星川 佳子

寂として参道広し寒桜        笹本 塘外

透明な空気の泡や冬桜        高瀬 大虫

冬桜声をうしなひ談志逝く      三好 六甫

もう気張ることもあるまじ冬桜    大澤 水牛

「雑詠」

葱噛んでつるりと熱くても独り    今泉 而雲

冬茜クレーン越しなる富士の山    堤 てる夫

年の暮れ茶絶ち酒絶ち手術室     堤 てる夫

寒鰤や物産展の国訛り        高橋 楓子

 

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水木会第104回例会

日経俳句会水木会は11月16日(水)午後6時半から、東京・大手町の日経本社7階会議室で11月例会(通算104回)を開いた。「冬めく」「熱燗」の兼題句に雑詠を含め投句5句、選句7句を事前に済ませるメール句会方式で実施した。今シーズン一番の冷え込みを記録したこの日、話題となったのは「熱燗」。杉山智宥さんの「熱燗がトントンと来る二階部屋」の句が最高の7点で、下戸の作者に拍手が沸いた。また「熱燗や忘れし歌の蘇る 水口弥生」「熱燗や出奔に似し北の旅 山口詩朗」の2句もやはり下戸の作で、「やはりこういう季語は酒を飲まない人の方が冷静に見るのでいいのかも」という呑兵衛会員の嘆き節も出るなど会場は大いに沸いた。

次席句は5点で、今村聖子さんの「捨てられぬ空箱いくつ花八手」と、佐々木碩さんの「熱燗や胸につかえるもの溶かす」の2句。聖子さんの作品は「俳句らしい俳句」と賛辞盛んだった。4点句は広上正市さんの「てつぺんを鳥に残して柿もげり」の1句。3点句は6句、2点24句、1点32句と続いた。兼題別の高点句は次の通り。

「冬めく」

冬めきて電車貫く日差しあり       金田 青水

冬めいていつもの坂に富士が寄る     杉山 智宥

冬めくや寺の日暮れは一段ずつ      山口 詩朗

「熱燗」

熱燗がトントンと来る二階部屋      杉山 智宥

熱燗や胸につかえるもの溶かす      佐々木 碩

熱燗や円座二分のTPP         広上 正市

熱燗や忘れし歌の蘇る          水口 弥生

熱燗や出奔に似し北の旅         山口 詩朗

「雑詠」

捨てられぬ空箱いくつ花八手       今村 聖子

てつぺんを鳥に残して柿もげり      広上 正市

参加者(出席)嵐田啓明、池村実千代、今泉恂之介、今村聖子、植村博明、大澤水牛、小林啓子、杉山智宥、須藤光迷、高石昌魚、堤てる夫、徳永正裕、広上正市、藤野十三妹、星川佳子、横井定利、山口詩朗(投句参加)大下綾子、大熊万歩、金田青水、久保田操、佐々木碩、高橋淳、直井正、水口弥生、吉野光久  (まとめ・堤てる夫)

 

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酔吟会第95回例会

酔吟会の平成23度第5回例会(通算95回)は、11月12日(土)午後1時から、鎌倉橋交差点そばの日経第二別館8階会議室で開かれた。暖かい日であったが、折から紅葉の見頃とあってか、出席者は10人と少なく、ちょっと寂しい句会であった。

出席者は今泉恂之介、大澤水牛、大沢反平、岡田臣弘、片野涸魚、澤井二堂、堤てる夫、藤村詠悟、星川佳子、吉野光久の各氏。投句参加は金指正風、田村舟平、黒須烏幸、藤野十三妹、徳永正裕の5人。

兼題は「焼芋」と「冬浅し」、投句は5句、選句8句で句会を行った。その結果、最高点は6点で1句、次いで5点が1句。4点が3句、3点4句、2点7句、1点32句であった。今回は出席者が少なかったこともあり、高点句が少なかった。兼題別の3点以上獲得句は次の通り。(澤井二堂まとめ)

「焼芋」

焼き芋を半分妻へ和睦なる    黒須 烏幸

高速を行く屋台あり焼芋屋    徳永 正裕

屋台引く声も売りもの石焼芋   吉野 光久

「冬浅し」

まだ白きすだれ大根冬浅し    藤野十三妹

冬浅し旅の装ひ決めかねて    岡田 臣弘

冬浅し道にはみ出す古本屋    吉野 光久

おのが死を見据えし人や冬浅し  田村 舟平

「雑詠」

落葉掃く左右向かひも老夫婦   吉野 光久

奈良に来て十一月の寺広し    今泉恂之介

 

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