日経俳句会第128回例会

日経俳句会は4月16日(水)午後6時半から鎌倉橋交差点傍の日経広告研究所会議室で、平成26年第4回例会(通算128回)を開いた。

兼題は「鳥帰る(とりかえる)」「紫雲英(げんげ)」で、投句総数は153句。7句選句の結果、最高は9点で、大熊万歩さんの「跳ね橋の高く開きて鳥帰る」と大澤水牛さんの「げんげ田は疎開の村の涙道」の2句。次席8点は嵐田啓明さんの「紫雲英田の土手の向うに秘密基地」の1句。三席も嵐田さんで「鳥帰る甲斐は西から雨模様」の6点句。続く5点は、植村博明さんの「鳥帰る学校の上雲の下」と星川佳子さんの「牛乳の表面張力四月かな」の2句。以下、4点が9句、3点20句、2点17句、1点27句と続いた。

この例会から毎月第3水曜日開催へ変更になり、火曜日開催には出席出来なかった鈴木好夫さんが久方ぶりに姿を見せ、4点句の「快打」を飛ばした。

兼題別の高点句(3点以上)は次の通り。

「鳥帰る」

跳ね橋の高く開きて鳥帰る      大熊 万歩

鳥帰る甲斐は西から雨模様      嵐田 啓明

鳥帰る学校の上雲の下        植村 博明

湯の宿の古き手すりや鳥帰る     今泉恂之介

鳥帰る大王イカは不意の客      杉山 智宥

鳥帰りスワンボートの滑る池     高石 昌魚

その先に吾が故郷在り鳥帰る     高瀬 大虫

鳥帰る遠き日のことみな許せ     野田 冷峰

鳥帰る船団戻りし三崎港       吉野 光久

くだ巻くや鳥はあらかた帰りしに   大澤 水牛

鳥帰る二、三羽残る湖静か      加藤 明男

山好きの友の旅立ち鳥帰る      高石 昌魚

隊列の幾何学模様鳥帰る       高石 昌魚

鳥帰るあけぼの惜しむ上野駅     徳永 正裕

鳥帰る空に墨絵を描きつつ      藤野十三妹

「紫雲英」

げんげ田は疎開の村の涙道      大澤 水牛

紫雲英田の土手の向うに秘密基地   嵐田 啓明

限界村まぼろしのごと紫雲英咲く   鈴木 好夫

幼くも好きな人いて紫雲英摘む    高瀬 大虫

れんげ草棚田一枚隠しけり      徳永 正裕

げんげんの草汁まみれ膝小僧     嵐田 啓明

げんげ畑目標にして熱気球      大熊 万歩

げんげ田に蜂の羽音と眠りけり    大倉悌志郎

げんげ野を入鹿の首が飛んでゆく   大澤 水牛

ふりかぶる鍬の光や紫雲英さく    須藤 光迷

紫雲英田を揺らし過ぎゆく湖西線   須藤 光迷

紫雲英田の遠きとこほど濃く見えり  星川 佳子

げんげ田の跡形もなくレストラン   山田 明美

げんげんや娘三人嫁がせし      横井 定利

げんげ摘む後ろの正面だ~あれ    吉野 光久

「雑詠」

牛乳の表面張力四月かな       星川 佳子

花篝果てたる後の深き闇       大熊 万歩

花を愛で松に見惚れる皇居かな    徳永 正裕

天平の毛彫りの仏春の雨       田中 頼子

走り根に躓けば散るさくらかな    廣上 正市

参加者(出席)嵐田啓明、井上庄一郎、今泉恂之介、植村博明、大倉悌志郎、大澤水牛、大沢反平、岡田臣弘、澤井二堂、杉山智宥、鈴木好夫、須藤光迷、高石昌魚、高瀬大虫、高橋ヲブラダ、田中頼子、堤てる夫、徳永正裕、野田冷峰、廣上正市、藤野十三妹、星川佳子、横井定利(選句参加)大平睦子(投句参加)池村実千代、大熊万歩、加藤明男、金田青水、久保田操、直井正、山田明美、吉野光久    (まとめ・堤てる夫)

 

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英尾先生墓参・桜吟行

日経俳句会の春の恒例行事、村田英尾先生のお墓に詣で、隣接の多摩森林科学園の桜保存林へ行く桜吟行は今年で7回目。4月12日(土)、大澤水牛幹事長はじめ13人が参加した。絶好の花見日和に誘われて繰り出した人々で、集合場所のJR高尾駅北口は大混雑。駅から近いハイキングコースに向かうグループが列を成す中、霊園方面へのバスに乗り込む。車内もかなりの混みよう。バスを降りて春の日差しを全身に浴びる。霊園内の桜が眩しい。

英尾先生の墓に花を供え、線香をくゆらせ、田中頼子さんの読経に一同唱和した。今回は日経俳句会賞英尾賞(平成24年度)に輝いた藤村詠悟さんが初参加した。

墓参の後は桜狩、徒歩15分ばかりの多摩森林科学園へ。染井吉野が終わりかけ、八重や枝垂れが「主役」の園内はかなりの人出。真っ直ぐいつもの昼食ベンチに向かうが、空席少なく、あぶれた人達は奥まった東屋傍の広場にシートを広げて場所つくりをした。

遊歩道のさまざまな案内板がさらに整備された感じ。紅枝垂れの美しい木が衰え、一方、保存林で作出された八重咲きのサトザクラがNHK大河ドラマ「八重の桜」主演の綾瀬はるか命名で「はるか」と名付けられ、デビユ―するなど、桜保存林も少しずつ変化している。

解散後のメール句会は、投句3乃至5句、選句5句で実施。投句総数62句、最高点は4点で、田中頼子さんの「まみどりの風の生まるる新芽かな」の一句のみ。次いで3点句が10句並んだ。

参加者の人気作品は次の通り。

坂登ることの幸せ花の山       今泉恂之介

これはこれは花の貼りつく握飯    大澤 水牛

南斜面すみれの群れの駆け下りる   大下 綾子

具合どう英墓にこやか桜降る     岡田 臣弘

山のぼり谷くだりても花の中     澤井 二堂

たらの芽がうずうずしてる陽の斜面  杉山 智宥

まみどりの風の生まるる新芽かな   田中 頼子

観る人も観られる花も歳とれり    堤 てる夫

花守の奥へ奥へと誘へり       徳永 正裕

墓守のごときタンポポ陽に映えて   野田 冷峰

晩年の足音聞こゆるさくらかな    廣上 正市

高尾駅老いも若きも花目指す     藤村 詠悟

さまざまの家紋見比べ桜墓地     星川 佳子

(記録 堤てる夫)

 

 

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番町喜楽会第103回例会

番町喜楽会は、関東一円花盛りの4月5日(土)午後1時から千代田区二番町の番町ハイム会議室で、第103回例会を開いた。麗らかな花見日和も手伝って句会出席者が17人と狭い会議室がぎゅう詰めとなる盛況。この日の兼題は「黄砂(こうさ)」(「霾=つちふる」も可)と「猫の子(ねこのこ)」(「仔猫(こねこ)」も可)で、投句総数は85句。6句選句で句会を進めた結果、最高は谷川水馬さんの「猫の子や指全開の初湯浴」で9点を獲得した。次席は5点句で、水馬さんの「霾天の軍艦島や夢の跡」と、高井百子さんの「土筆伸ぶ塩田平は粉糠雨」の計2句。三席は4点で6句、続く3点も6句が並んだ。以下、2点12句、1点26句だった。句会の後、お花見の人の流れにのって東郷元帥記念公園など近隣の花見スポットを散策した。兼題別の高点句(3点以上)は次の通り。

「黄砂」

霾天の軍艦島や夢の跡        谷川 水馬

黄砂降る隣りの国の近さかな     井上 啓一

霾や三横綱のそろひ踏み       今泉恂之介

つちふるや駱駝色なる城下町     三好 六甫

楼蘭の美女の塚より黄砂かな     高瀬 大虫

国あまた天空ひとつ霾の降る     田中 白山

 

「猫の子」

猫の子や指全開の初湯浴       谷川 水馬

猫の子やかぼそき声も芸のうち    大澤 水牛

貰はれて籠に巴の子猫かな      高瀬 大虫

ミヤンマーや痩せた仔猫の摺り寄りぬ 井上 啓一

見るたびに無事をかぞえる子猫かな  玉田春陽子

 

「雑詠」

土筆伸ぶ塩田平は粉糠雨       高井 百子

春宵のどこかでジャズが響いてる   大下 綾子

黄水仙みな横向きの二千本      田中 白山

囀りや合格の子の声明し       前島 巌水

 

参加者(出席)井上啓一、今泉恂之介、大澤水牛、大下綾子、須藤光迷、高井百子、高瀬大虫、田中白山、谷川水馬、玉田春陽子、堤てる夫、徳永正裕、野田冷峰、星川佳子、前島巌水、三好六甫(投句参加)岩沢克恵(選句参加)高橋楓子、山口斗詩子。  (まとめ・堤てる夫)

 

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日経俳句会第127回例会

日経俳句会は3月18日(火)午後6時半、鎌倉橋交差点傍の日経広告研究所(MIFビル)の会議室で、平成26年第3回例会(通算127回)を開いた。兼題は「若草(わかくさ)」「蜃気楼(しんきろう)」で、出席20人、投句参加11人、投句総数は149句。7句選句の結果、最高は田中頼子さんの「立山の崩れてゆけり蜃気楼」の7点句。次席は今泉恂之介さんの「夕べの灯揺るる運河や残り鴨」の6点句。三席5点句は、高瀬大虫さんの「どれも皆食べられさうで若草野」、藤野十三妹さんの「蜃気楼白衣のロレンス疾駆する」の計2句、続く4点句は11句が並んだ。3点句も11句で以下、2点25句、1点34句だった。兼題別の高点句(3点以上)は次の通り。

「若草」

どれも皆食べられさうで若草野     高瀬 大虫

若草や三角ベース転(まろ)びし日   岡田 臣弘

若草の覆ひ尽くせり津波跡       直井  正

若草の顔出す土手を万歩計       井上庄一郎

若草に染まる爪先スニーカー      大熊 万歩

若草よすくすく伸びよ被災の地     久保田 操

「蜃気楼」

立山の崩れてゆけり蜃気楼       田中 頼子

蜃気楼白衣のロレンス疾駆する     藤野十三妹

戦艦の二隻三隻蜃気楼         今泉恂之介

海底に大樹林あり蜃気楼        今泉恂之介

蜃気楼消えて浜辺の人帰る       植村 博明

戦なき地球の夢や蜃気楼        高石 昌魚

「雑詠」

夕べの灯揺るる運河や残り鴨      今泉恂之介

みちのくやいつもの色の春の海     嵐田 啓明

木の芽どき音なく動く雑木山      大倉悌志郎

寺町のどこかで梅が咲いている     大沢 反平

ゆるゆると勝鬨越ゆる春の雲      大沢 反平

想ふ人あるだけで良し老いの春     高瀬 大虫

花すみれ残して墓の草を引く      田中 頼子

ふらここの横漕ぎを知る拗ねはじめ   廣上 正市

料峭や二円切手のシート買ふ      吉野 光久

ほたほたと吃水なぶる春の潮      吉野 光久

あつたかいねえ犬と会話の春野かな   大沢 反平

産直の菜にまじりをる春の草      金田 青水

身も竿もよくしならせて遅日かな    廣上 正市

年下の亭主の噂春の月         星川 佳子

参加者(出席)嵐田啓明、井上庄一郎、今泉恂之介、大倉悌志郎、大澤水牛、岡田臣弘、澤井二堂、杉山智宥、須藤光迷、高石昌魚、高瀬大虫、高橋ヲブラダ、堤てる夫、徳永正裕、直井正、野田冷峰、廣上正市、星川佳子、村田佳代、横井定利(投句参加)池村実千代、植村博明、大熊万歩、大沢反平、大下綾子、金田青水、久保田操、田中頼子、藤野十三妹、山田明美、吉野光久                (まとめ・堤てる夫)

 

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酔吟会第109回例会開催

酔吟会は3月8日(土)午後1時から鎌倉橋交差点そばの日経第二別館会議室で平成26年度第2回例会(通算109回)を開いた。風はまだ冷たいがよく晴れた春の一日、久しぶりに14人が顔を揃えて大賑わい。何と言っても闘病中の吉野光久さんが元気な姿を見せてくれたことと、前回、体調を崩して途中退場した金指正風さんが気力体力回復して参加したことで、例会は大いに盛り上がった。

兼題は「目刺」「と「菜の花」。投句5句、選句6句で句会を行った結果、最高点は颯爽カムバックの吉野さんの「病躯ゆるされて春野に歩き出す」の5点句だった。次いで4点は「目刺焼く遠き昭和の夕支度 操」「菜の花を茹でたる水の青さかな 佳子」「多喜二忌や図書破らるる春の昼 光久」の3句だった。以下3点が2句、2点17句、1点が25句に上った。今回は票が分散し、2点句、1点句が非常に多いのが特徴だった。兼題別の3点以上獲得句は次の通り。

「目刺」

目刺焼く遠き昭和の夕支度     久保田 操

「菜の花」

菜の花を茹でたる水の青さかな   星川 佳子

菜の花の尽きて夕陽の駿河湾    大澤 水牛

「雑詠」

病躯ゆるされて春野に歩きだす   吉野 光久

多喜二忌や図書破らるる春の昼   吉野 光久

雛納め今年も残り三百日      大澤 水牛

【参加者】(出席)今泉恂之介、大澤水牛、大沢反平、岡田臣弘、片野涸魚、金指正風、久保田操、澤井二堂、堤てる夫、徳永正裕、野田冷峰、藤村詠悟、星川佳子、吉野光久、(投句参加)大石柏人、藤野十三妹。

(まとめ 大澤水牛)

 

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第102回番町喜楽会例会

番町喜楽会は桃の節句の3月3日(月)午後6時半、千代田区九段下の生涯学習館四階集会室で平成26年第3回例会(通算102回)を開催した。兼題は「春眠(しゅんみん)」「雛祭(ひなまつり)」で、出席12人、投句参加4人。投句総数は80句。6句選句で進めた結果、最高は5点で大澤水牛さんの「春眠やろくろの芯も狂ひがち」、谷川水馬さんの「女房の買物待つや春眠し」、山口斗詩子さんの「夫の忌の近づきを知る春時雨」の3句が並んだ。

次席4点は、高井百子さんの「便り来ぬ娘想ふや雛あられ」、玉田春陽子さんの「人生の放課後にゐて日向ぼこ」、前島巌水さんの「春眠の覚むれば消ゆる秀句かな」の3句。続く3点は6句、2点11句、1点23句。兼題別の高点句(3点以上)は次の通り。

「春眠」

春眠やろくろの芯も狂ひがち    大澤 水牛

女房の買物待つや春眠し      谷川 水馬

春眠の覚むれば消ゆる秀句かな   前島 巌水

春眠や木造二階建医院       星川 佳子

春眠や頸動脈にをんなの手     三好 六甫

「雛祭」

便り来ぬ娘想ふや雛あられ     高井 百子

雛みなこちら見てをり闇の中    今泉 而雲

三姉妹道それぞれに雛祭      徳永 正裕

年ひとつ連れて戻りぬ古雛     三好 六甫

母と娘(こ)の会話が飾るひな祭り 山口斗詩子

「雑詠」

夫の忌の近づきを知る春時雨    山口斗詩子

人生の放課後にゐて日向ぼこ    玉田春陽子

参加者(出席)今泉而雲、大澤水牛、須藤光迷、高瀬大虫、田中白山、谷川水馬、玉田春陽子、堤てる夫、徳永正裕、野田冷峰、星川佳子、前島巌水(投句参加)井上啓一、高井百子、三好六甫、山口斗詩子

(まとめ・堤てる夫)

 

 

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日経俳句会第126回例会

日経俳句会の平成26年第2回例会(通算126回)は2月18日(火)午後6時半、鎌倉橋交差点傍の日経広告研究所(MIFビル)会議室で開かれた。出席17人、大雪で体調を崩した欠席者もいて会場に空席ができた。逆に投句参加が増えて16人、投句総数は161句と賑わいは変わらず。

兼題は「風光る(かぜひかる)」「耕(たがやし)」。選句7句で進めた結果、最高は7点で須藤光迷さんの「次々と柵越す馬や風光る」と、徳永正裕さんの「なに蒔くと決めず耕す畝三筋」の2句。次席6点は、今泉恂之介さんの「水きりの石追ひかけて風光る」と、大澤水牛さんの「菜を蒔くぞ芋も植えるぞ畑打つ」の2句で「双牛競演」。続く5点句は5句、4点句も5句、3点4句。以下2点22句、1点50句。兼題別の高点句(3点以上)は次の通り。

「風光る」

次々と柵越す馬や風光る       須藤 光迷

水切りの石追ひかけて風光る     今泉恂之介

うたた寝と見紛ふ寝釈迦風光る    大下 綾子

風光る祖母の賜割烹着        嵐田 啓明

風光る蒼き魔鏡の古代かな      田中 頼子

風光る円空仏の彫り深く       野田 冷峰

「耕」

なに蒔くと決めず耕す畝三筋     徳永 正裕

耕して花壇一坪生まれけり      直井  正

のけ反りて首回しまた耕せり     高瀬 大虫

耕して土と阿吽の呼吸かな      水口 弥生

耕すや石一つなき父祖の畑      今泉恂之介

耕運機跡継ぎのゐる軽やかさ     大沢 反平

耕せば地中の虫の慌てぶり      杉山 智宥

耕せば陽と混じり合ふ土温し     直井  正

「雑詠」

菜を蒔くぞ芋を植えるぞ畑打つ    大澤 水牛

雪掻きに出て隣人と初対面      杉山 智宥

厨窓つねより明し春の雪       徳永 正裕

十本の笙を温める炭火かな      田中 頼子

参加者(出席)井上庄一郎、今泉恂之介、植村博明、大澤水牛、岡田臣弘、澤井二堂、杉山智宥、須藤光迷、高石昌魚、高瀬大虫、高橋淳ヲブラダ、田中頼子、堤てる夫、直井正、野田冷峰、廣上正市、横井定利(投句参加)嵐田啓明、池村実千代、大倉悌志郎、大熊万歩、大沢反平、大下綾子、加藤明男、金田青水、久保田操、徳永正裕、藤野十三妹、星川佳子、水口弥生、村田佳代、山田明美、吉野光久       (まとめ・堤てる夫)

 

 

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第101回番町喜楽会・三四郎句会合同句会

番町喜楽会は2月15日(土)正午、千代田区一番町の料理店「天重」で第101回例会を三四郎句会との合同句会として開催した。あいにく前日から首都圏は記録的な大雪に見舞われ、東京都心でも三〇センチ近い積雪。このためJR中央線快速、南武線、横浜線、高崎線、川越線、東急東横線、東武東上線がストップしたのをはじめ、首都圏の電車はほとんど全てが運休や大幅遅延となった。

一時は句会中止を決断せざるを得ないかと思われたが、14日午後、谷川水馬幹事が会員に諮ったところ、「やりましょう、出席します」という人が続々。それでは「決行」と決めたはいいが、当日果たして何人集まれるのだろうかと気を揉む幹事団の目の前に、11時過ぎからメンバーが次々に元気な顔を見せ、番町喜楽会10人、三四郎句会5人、合わせて15人が勢揃い、賑やかな合同句会を行うことができた。

合同句会の兼題は「冴返る」と「猫の恋」。合同句会では慣例としている「事前投句・選句方式」によって、句会会場では幹事が集計した選句結果を発表し、最高点句から順々に感想を述べ合って行く合評会を行った。

投句五句、選句六句で行った結果、投句総数145句中の最高点は7点で、井上啓一さん(番町喜楽会)の「冴返る月夜に眠る過疎の村」と「わだかまり溶けゆく春の散歩かな」の2句と、高瀬大虫さん(番町喜楽会)の「奔放に生きしことあり猫の恋」の3句が並んだ。次点の6点句は1句でやはり井上さんの「恋猫の屋根から塀へ神楽坂」と、井上さんが上位4句中3句を占めるという破天荒な結果となった。ご本人は「それでこんな天気になったんでしょう」としきりに照れていた。

続く三席5点句は堤てる夫さん(番町喜楽会)の「冴え返る鳥も止まらぬ石灯籠」、玉田春陽子さん(同)の「足場解く声上下に冴返る」、今泉恂之介さん(番町喜楽会・三四郎句会)の「恋冷めし猫と一人の女かな」の3句だった。以下4点句6句、3点11句、2点20句、1点35句という結果になった。3点句以上の兼題別高得点句は以下の通り。

「冴返る」

冴返る月夜に眠る過疎の村     井上 啓一(番)

冴え返る鳥も止まらぬ石灯籠    堤 てる夫(番)

足場解く声上下に冴返る      玉田春陽子(番)

冴え返る月しらじらと諏訪の湖   河村 有弘(三)

警策の音冴え返る座禅坊      宇佐見 論(三)

冴え返る朝の声明山が哭く     河村 有弘(三)

冴返る村のあらかた山の影     田中 白山(番)

ハンマーの音冴返り石切場     田中 白山(番)

黒板に私語禁ずの字冴返る     玉田春陽子(番)

脳みその輪切写真や冴返る     大澤 水牛(番)

 

「猫の恋」

奔放に生きしことあり猫の恋    高瀬 大虫(番)

恋猫の屋根から塀へ神楽坂     井上 啓一(番)

恋冷めし猫と一人の女かな     今泉恂之介(番・三)

石松もカルメンも居り春の猫    大澤 水牛(番)

鰹節も目刺もいらぬ猫の恋     大澤 水牛(番)

山門の仁王震はす猫の恋      宇佐見 論(三)

猫の恋父子鑑定なき世界      徳永 正裕(番)

老いらくの恋もあらむか猫の恋   山口斗詩子(番)

部屋猫の恋は切なし人に啼く    高瀬 大虫(番)

 

「雑詠」

わだかまり溶けゆく春の散歩かな  井上 啓一(番)

雲水の湯気立ち上がる寒の入り   後藤 尚弘(三)

朱を入れるこけしの口や深雪晴   岡本  崇(三)

春立つや山も田圃も膨らんで    堤 てる夫(番)

寒戻る鉢占領の居間となり     岩沢 克恵(番)

 

「番町喜楽会三四郎句会合同句会参加者」井上啓一、大澤水牛、大下綾子、須藤光迷、高瀬大虫、田中白山、谷川水馬、玉田春陽子、徳永正裕、前島厳水(以上番町喜楽会)、石黒賢一、今泉恂之介、竹居照芳、深瀬久敬、渡辺信(以上三四郎句会)

(まとめ 大澤水牛)

 

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逆回り奥の細道吟行が完結

日経俳句会の通年企画「奥の細道逆回り吟行」は1月25日、草加松原、千住、深川を歩き、芭蕉が六百里の長旅に出で立った採荼庵に辿り着き大団円となった。清澄庭園を散策し、旅の余韻を噛みしめた後、ほど近い料理屋「深はま」で23人が集まる打ち上げ大懇親会を開催した。

平成21年4月、「奥の細道」終着点の大垣市を出発点とし、俳聖の眠る義仲寺から洛西に足を伸ばしたのが第1回。以来、一泊二日の旅を重ねること計9回、生地・伊賀上野などを巡った「番外編」も含め、5年がかりのビッグプロジェクトだった。参加者は延べ168人。

最終回の逆回り吟行に参加したのは、大澤水牛幹事長以下、井上庄一郎、高石昌魚、今泉恂之介、嵐田啓明、大平睦子、岡田臣弘、久保田操、杉山智宥、澤井二堂、高瀬大虫、田中頼子、谷川水馬、玉田春陽子、徳永正裕、野田冷峰、廣上正市、星川佳子、村田佳代、山口斗詩子、堤てる夫(幹事)の21人。

東武伊勢崎線松原団地駅に集合、昨年末に「おくのほそ道の風景地」として名勝とするよう文化審議会答申があったばかりの綾瀬川沿いの松並木遊歩道を散策した。芭蕉文学碑のある北の端から南の札場河岸(ふだばかし)公園まで1㌔半、手入れの行きとどいた松並木と、石畳の通路を挟むように掃き清められた土の路が続く。一般交通路を跨ぐ太鼓橋が二つ、「百代橋」(工事中だった)に「矢立橋」と奥の細道にちなんだ銘版。綾瀬川改修記念の札場河岸公園では、名残を惜しむかのように江戸方向を振り返る「見返りの芭蕉像」が印象的だ。

明治27年、正岡子規と高浜虚子が観梅に草加を訪れたそうで、二基の句碑。子規の句碑には咲き始めの紅梅が枝を伸ばしていた。

梅を見て野を見て行きぬ草加まで  子規

巡礼や草加あたりを帰る雁     虚子

草加駅から北千住へ行き、東武電車浅草行きに乗り換え牛田でさらに京成電車に乗り換え千住大橋駅で下車。日光街道傍に足立市場へ。その一角、二十人も入れば満席という小食堂に十五人、隣り合った蕎麦屋に数人が別れて入る。とても大きな牡蠣フライ、ぶつ切り風の鮪刺し、葱鮪蕎麦など、思い思いにボリュウムたっぷりの昼食にありついた。

芭蕉が知人、門人らに別れを告げた千住大橋の周辺には、「矢立初め」の碑や石柱など奥の細道スポットが幾つかあるが、大型車の往来激しい街道に面した狭いスペース、風情に乏しい。時間をかけて観たのは素盞雄神社。千住宿の文人達が文政三年(一八二〇年)に建てた芭蕉の句碑には、矢立初めの「行春や鳥啼魚の目に泪」の句と、谷文晃の弟子が描いたという線描の芭蕉像。

千住大橋駅から電車を乗り継いで東西線門前仲町駅へ。芭蕉旅立ち時の仮住まい、杉風の別荘だったという採荼庵跡で嵐田名カメラマンによる記念撮影の後、清澄庭園に。園内南の自由広場に「古池やかはづ飛びこむ水の音 はせを」の大きな句碑。庭園の中心にある「大泉水」ではキンクロハジロ、オナガガモなどが鯉の餌に群がり、ぼんやり眺めて日暮れ前のひと時を過ごした。

逆回り大団円宴会場「深はま」には日中の吟行には来られなかった鈴木好夫先生が令夫人と参加され、総勢二十三人というビッグイベントのフィナーレにふさわしい賑やかな席となった。

吟行句会は慣例通りメール句会とし、幹事が取りまとめた選句表で選句し句評を送信する方式で行った。投句3句・選句4句で行った結果、票が拡散し最高点は5点で「逆回り翁振り向く寒の松 睦子」「寒吟行群れを率ゐる赤リュック 昌魚」「望楼の先はみちのく冬日和 正裕」の3句だった。以下4点が2句、3点8句と続いた。

逆回り翁振り向く寒の松      大平 睦子

寒吟行群れを率ゐる赤リュック   髙石 昌魚

望楼の先はみちのく冬日和     徳永 正裕

ふぐ刺にとどむ五年の大吟行    大澤 水牛

たどり来し古池の句碑梅ふふむ   廣上 正市

五年の大団円や春まぢか      廣上 正市

冬温し生年同じ橋渡る       井上庄一郎

鯉の餌掠める鴨のやんちゃ振り   久保田 操

旅終えてまた旅の計寒椿      杉山 智宥

灸もせで歩数伸びたり冬うらら   高瀬 大虫

冬ざれや街を二つに綾瀬川     玉田春陽子

振り返る終りははじめ冬の空    星川 佳子

深川や八寸に春呼び込みて     星川 佳子

(堤てる夫記)

 

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日経俳句会第125回例会

日経俳句会は1月21日(火)午後6時半から鎌倉橋交差点そばの日経第二別館(MIFビル)会議室で、平成26年の初例会(通算125回)を開催した。兼題は「冬の蠅」「福寿草」で投句総数は144句とやや少なめ。年末から年始にかけてのイベント疲れで出席が減ったのか。出席が14人に対して投句参加15人と、投句参加者が上回った。

しかし句会は活発で、選句7句で行った結果、初句会最高点は徳永正裕さんの「用なくて生きるも天寿冬の蠅」でダントツの9点。次席は6点で、大熊万歩さんの「陽気なる一膳飯屋福寿草」と、久保田操さんの「潮風に七千本の懸け大根」の2句。3席は須藤光迷さんの「冬の蠅アベノミクスの記事の上」の5点1句だった。

続く4点句は嵐田啓明さんの「失せ物の手袋いつも右ばかり」、星川佳子さんの「羽に陽をためて飛び立つ冬の蠅」、山田明美さんの「久しぶりいとこにはとこ福寿草」、吉野光久さんの「寄り添ひて妻同い年福寿草」の4句が並んだ。

3点は13句に上り、2点14句、1点33句と続いた。兼題別の3点以上の高点句は次の通り。

「冬の蠅」

用なくて生きるも天寿冬の蠅      徳永 正裕

冬の蠅アベノミクスの記事の上     須藤 光迷

羽に陽をためて飛び立つ冬の蠅     星川 佳子

冬蝿や柱時計のねじの穴        嵐田 啓明

冬蝿も目をつむりたき日和かな     今泉恂之介

窓猫の視線の先の冬の蠅        大澤 水牛

白障子影の動かぬ冬の蠅        高瀬 大虫

冬の蠅終の棲み家と決めしここ     直井  正

まだいたかまだいたのねと冬の蠅    山田 明美

「福寿草」

陽気なる一膳飯屋福寿草        大熊 万歩

久しぶりいとこにはとこ福寿草     山田 明美

寄り添ひて妻同い年福寿草       吉野 光久

福寿草ほつぺのまるい女の子      嵐田 啓明

孤独死の更地なりけり福寿草      大沢 反平

婚を待つ君がうなじや福寿草      澤井 二堂

亡妻の庭福寿草より花ごよみ      野田 冷峰

日曜日玉子サンドと福寿草       星川 佳子

「雑詠」

潮風に七千本の懸け大根        久保田 操

失せ物の手袋いつも右ばかり      嵐田 啓明

鈍色の空へ尖るや葱畑         廣上 正市

福笑ひおバカとなりて癌封じ      吉野 光久

参加者(出席)嵐田啓明、今泉恂之介、大熊万歩、大澤水牛、岡田臣弘、澤井二堂、須藤光迷、高瀬大虫、堤てる夫、徳永正裕、直井正、廣上正市、星川佳子、横井定利。(投句参加)池村実千代、井上庄一郎、植村博明、大倉悌志郎、大沢反平、加藤明男、金田青水、久保田操、杉山智宥、高石昌魚、高橋ヲブラダ、野田冷峰、藤野十三妹、山田明美、吉野光久。

(まとめ・堤てる夫)

 

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