日経俳句会令和4年上期合同句会

39人で「虹」「黴」を詠む

最高点は迷哲さんの「黒靴」、定利さんが二、三席

日経俳句会は6月15日、内神田の日経広告研究所会議室で上期合同句会(通算34回)を開いた。コロナの影響でしばらく使えなかった会議室だが、半年ぶりで古巣に戻った。兼題は、「虹」と「黴」。39人から116句が集まったこの日は、梅雨らしい小雨混じりのやや寒い夕べだったが15人が出席。合同句会なので全員事前選句の結果、特定の句に票が集まり、中村迷哲さんの「黒靴を履かぬ月日や白き黴」が12点を得て一席。続いて横井定利さんの「虹見つつ後ろ歩きに帰りけり」が10点、「自撮りする傘寿の夫婦雲の峰」が9点と二、三席を独占、気を吐いた。次いで、徳永木葉さんの「黴生えたグローブ残し子は巣立ち」が8点、中沢豆乳さんの「千年のカビが隠した飛鳥美女」と廣田可升さんの「夏来るジブリ映画の雲連れて」が7点で並び、以下6点3句、5点4句、4点6句、3点7句、2点13句、1点33句だった。なお、今後吟行が増えることを見越して、新たに杉山三薬さんを吟行担当の幹事に任命、出席者の了承を得た。兼題別の高点句(3点以上)は以下の通り。

「虹」

虹見つつ後ろ歩きに帰りけり             横井 定利

巨大虹雨後の埠頭を驚かす              廣田 可升

虹の脚わが町選りて立ちにけり            向井 愉里

虹出せと子等に散水迫られり             須藤 光迷

虹淡く早く早くと妻を呼ぶ              旙山 芳之

母見舞ふ特養ホーム二重虹                    大澤 水牛

虹が出た肉屋のコロッケ歩き食い           杉山 三薬

虹が立ち如雨露の園児大はしゃぎ           中沢 豆乳

スコールの過ぎし島へと虹の橋            中村 迷哲

「黴」

黒靴を履かぬ月日や白き黴              中村 迷哲

黴生えたグローブ残し子は巣立ち           徳永 木葉

千年のカビが隠した飛鳥美女             中沢 豆乳

黴臭き古書店にいる本の虫              植村 方円

黴にほふ雑誌に付録ソノシート            谷川 水馬

黴払い十年ぶりのモーニング             深田森太郎

長き留守病夫の靴の黴みがく             藤野十三妹

靴箱は黴の臭ひと父母の靴              今泉 而云

 

味噌蔵に時代は眠る樽の黴              篠田  朗

使はねば直ぐにカビそう黴の文字           玉田春陽子

「当季雑詠」

自撮りする傘寿の夫婦雲の峰             横井 定利

夏来るジブリ映画の雲連れて             廣田 可升

鰹節削る楽しさ冷奴                 徳永 木葉

やはらかき語りをちこち螢狩             廣上 正市

拭き掃除何だか嬉し梅雨晴間             池村実千代

連れ合いて粋な浴衣にスニーカー           植村 方円

十薬を軒に干したる祖母の腕             星川 水兔

《参加者》【出席15人】嵐田双歩、今泉而云、植村方円、大澤水牛、大沢反平、金田青水、篠田朗、杉山三薬、鈴木雀九、堤てる夫、徳永木葉、中村迷哲、廣田可升、星川水兎、向井愉里。【投句参加24人】池村実千代、和泉田守、伊藤健史、岩田三代、岡田鷹洋、加藤明生、工藤静舟、久保道子、久保田操、須藤光迷、高井百子、髙石昌魚、高橋ヲブラダ、谷川水馬、玉田春陽子、中沢豆乳、中嶋阿猿、野田冷峰、流合水澄、旙山芳之、廣上正市、深田森太郎、藤野十三妹、横井定利。   (報告 嵐田双歩)

 

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番町喜楽会第195回例会

20人で「芒種」と「時鳥」詠む

最高7点に光迷句と百子句

番町喜楽会は6月4日(土)に九段下の千代田区生涯学習館で、「芒種」と「時鳥」を兼題として令和4年6月例会(通算195回)を開催した。投句者は20人で、投句総数98句。出席者は6句、欠席者5句選句の結果、須藤光迷さんの「老鶯や讃岐は円き山ばかり」と高井百子さんの「田水入る一番乗りはあめんぼう」の2句が7点でトップの座に並んだ。二席には廣田可升さんの「父の日のZIPPOいまだ捨てがたし」の6点句が、三席には嵐田双歩さんの「時鳥札所巡りの前後ろ」と金田青水さんの「この辺の子つばめ皆んな駅育ち」の5点句が続いた。以下、4点6句、3点2句、2点12句、1点25句という結果であった。高点句(3点以上)は次の通り。

「芒種」

苗放る老母の面影芒種かな            池内 的中

膏薬を貼りて菜園芒種なり            大澤 水牛

留守番の芒種の犬は縁の下            谷川 水馬

田の面に揺るる空ある芒種かな          廣田 可升

沖縄戦語る古老や芒種の夜            廣田 可升

「時鳥」

時鳥札所巡りの前後ろ              嵐田 双歩

鬼怒川のつぶれ旅館やほととぎす         大澤 水牛

水面には空の青ありほととぎす          澤井 二堂

「当季雑詠」

老鶯や讃岐は円き山ばかり            須藤 光迷

田水入る一番乗りはあめんぼう          高井 百子

父の日のZIPPOいまだ捨てがたし       廣田 可升

この辺の子つばめ皆んな駅育ち          金田 青水

茹であげし蔓菜まことに初夏の色         大澤 水牛

《参加者》【出席14人】嵐田双歩、今泉而云、大澤水牛、金田青水、須藤光迷、高井百子、田中白山、谷川水馬、玉田春陽子、堤てる夫、徳永木葉、中村迷哲、廣田可升、向井愉里。【投句参加6人】池内的中、斉山満智、澤井二堂、星川水兎、前島幻水、山口斗詩子。  (報告 谷川水馬)

 

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日経俳句会第209回例会

38人参加、「夏の山」と「飛魚」を詠む

最高8点に双歩句と水兎句

日経俳句会は令和4年5月例会(通算209回)を5月18日(水)に鎌倉橋の千代田区立スポーツセンター集会室で開いた。コロナ感染が落ち着いたこともあり、出席者は17人に増え、初夏の風を会場に入れてにぎやかな句会となった。兼題は「夏の山」と「飛魚」。38人から114句の投句があり、6句選(欠席は5句)の結果、最高8点は嵐田双歩さんの「ビニール傘べりべり開く走り梅雨」と星川水兎さんの「飛魚さばく小さき出刃や島の店」が分け合った。二席6点には谷川水馬さんの「にこにことしんがり務め夏の山」と植村方円さんの「初夏や半年ぶりの膝小僧」が並び、三席5点には和泉田守さんの「夏の山逆さに青し田の水面」をはじめ5句が入った。以下、4点10句、3点14句、2点17句、1点28句と続き、3点以上の高点句が33句にのぼる充実ぶりだった。 兼題別の高点句(3点以上)は以下の通り。

「夏の山」

にこにことしんがり務め夏の山         谷川 水馬

夏の山逆さに青し田の水面           和泉田 守

帽子取り全身に風夏の山            岩田 三代

雲上に神の座のあり夏の山           中村 迷哲

夏山の海よりぬっと神津島           大澤 水牛

魔女たちの健脚自慢夏の山           中嶋 阿猿

夏の山遠く近くに鳶の声            伊藤 健史

車窓から眺むる影絵夏の山           加藤 明生

麦の秋つぎのバスまで三時間          加藤 明生

だしぬけの雨夏山を洗ひをり          髙石 昌魚

風抜ける寺の茶会や夏の山           星川 水兎

「飛魚」

飛魚さばく小さき出刃や島の店         星川 水兎

青き身を一閃宙へつばめ魚           岩田 三代

飛魚の跳ねて航路に幸あれと          嵐田 双歩

紺青の海の千切れてあごの群          中村 迷哲

朝市の飛魚の目のまん丸き           向井 愉里

飛魚や流人の島々後にして           大沢 反平

飛魚(あご)跳ねて玄界灘に夏が来た      篠田  朗

あご飛ぶや知覧の丘は遥かなり         高井 百子

飛び魚のくさや絶品島酒場           中沢 豆乳

飛魚の飛んで初島定期便            廣上 正市

「当季雑詠」

ビニール傘べりべり開く走り梅雨        嵐田 双歩

初夏や半年ぶりの膝小僧            植村 方円

新しきブラウスの白風薫る           髙石 昌魚

お隣りの庭の紫蘇の葉二枚借り         横井 定利

大牡丹崩れ行く間の二三日           今泉 而云

五年越しやっと昇段初夏の空          荻野 雅史

田を植ゑて米一粒の重さ知る          工藤 静舟

土色の蛙飛び出す草いじり           高井 百子

赤牛も黒牛もいて夏野かな           岩田 三代

草笛に令和の子の目輝きぬ           徳永 木葉

カタツムリ老舗旅館の代替わり         中嶋 阿猿

まず振りて土鈴求めし夏初め          星川 水兎

《参加者》【出席17人】嵐田双歩、今泉而云、岩田三代、植村方円、大澤水牛、岡田鷹洋、金田青水、澤井二堂、鈴木雀九、篠田朗、杉山三薬、堤てる夫、徳永木葉、中沢豆乳、中村迷哲、星川水兎、向井愉里。【投句参加21人】池村実千代、和泉田守、伊藤健史、大沢反平、大下明古、荻野雅史、加藤明生、工藤静舟、久保田操、須藤光迷、高井百子、髙石昌魚、高橋ヲブラダ、谷川水馬、中嶋阿猿、野田冷峰、流合水澄、旙山芳之、廣上正市、藤野十三妹、横井定利。

(報告 中村迷哲)

 

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酔吟会第156回例会

「のらくろの街」森下で開催

「風薫る」「薔薇」を詠む

酔吟会は5月14日、千代田区立スポーツセンターの土曜日午後の予約が難しくなったため、江東区森下文化センターに場所を移して開催した。兼題は「風薫る」「薔薇」。欠席投句無し、参加者は5句を持ち寄り会場で短冊に記入して投句する伝統形式の句会はこれが二回目、15人が参加し出句総数は75句であった。漫画家田川水泡を記念した「のらくろ館」を併設する近代的な文化センターの会議室で、初夏の午後、和気あいあいと句会が進められた。

選句6句の結果、最高7点は玉田春陽子さんの「ストローをのぼる空色夏来る」が獲得、二席5点も春陽子さんの「薔薇垣に子らの長靴逆さ干し」が占めた。三席4点には春陽子さんの「薫風や女庭師の猿袴」と廣田可升さんの「薫風や戒名要らぬといふ女房」が入り、春陽子さんが高点句を独占する形となった。3点句には嵐田双歩さんの「薔薇一輪活けてたちまちレストラン」をはじめ8句が入り、以下2点11句、1点24句だった。兼題別の高点句(3点以上)は以下の通り。

「風薫る」

薫風や女庭師の猿袴                 玉田春陽子

薫風や戒名要らぬといふ女房             廣田 可升

薫風を大きく入れて阿弥陀堂             須藤 光迷

風薫る禅寺の窓まるく開き              徳永 木葉

「薔薇」

薔薇垣に子らの長靴逆さ干し             玉田春陽子

薔薇一輪活けてたちまちレストラン          嵐田 双歩

洋館の黒々翳り夜の薔薇               徳永 木葉

雑司ヶ谷夢二の墓の赤き薔薇             堤 てる夫

薔薇植うる暮らし間近に荒川線            中村 迷哲

「当季雑詠」

ストローをのぼる空色夏来る             玉田春陽子

朝摘みの茨の花や牛乳瓶               金田 青水

牡丹散るきのふにけふの重なりぬ           玉田春陽子

《参加者15人》嵐田双歩、今泉而云、大澤水牛、岡田鷹洋、金田青水、杉山三薬、須藤光迷、高井百子、谷川水馬、玉田春陽子、堤てる夫、徳永木葉、中村迷哲、廣田可升、向井愉里。  (報告 高井百子)

 

 

 

 

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コロナ鎮まり吟行再開

4月は塩山・桃源郷、5月は都電薔薇吟行

コロナウイルスの蔓延で二年間、新年の七福神巡りを別として、日経俳句会と番町喜楽会合同の本格的な吟行をやらずに過ごしてきた。しかし、令和4年に入ると、猖獗を極めたウイルスもようやくおとなしくなってきて、新規感染者が減少傾向を見せはじめた。諸外国政府は防除体制解除を次々に打ち出し、慎重な日本政府も「人通りの少ない所ではマスクを外してもよい」などと言い出すようになった。

「待ってました」と日俳・番喜両句会の元気老人たちは「吟行再開」を唱え始めた。都内はもちろん関東近県の吟行好適地を即座に十指に足の指まで加えるほど挙げることの出来る杉山三薬さんが「幹事」になって、四月から「毎月やりましょう。都合のつく人が自由に参加できる形で」開催することにした。

最初はコロナ騒ぎでまる二年お預けになっていた「甲州塩山桃源郷」吟行を4月9日(土)に催行した。JR塩山駅に午前10時に集合し、まさに満開の桃畑をチャーターしたマイクロバスに揺られながら眺め、花の寺慈雲寺へ。次に武田信玄の菩提寺恵林寺に行き、まずは門前の茶屋で名物信玄弁当の昼食を取る。大休止後、恵林寺をゆっくり見学、老舗の酒蔵がワイン醸造に進路変更した「甲斐ワイナリー」を訪問した。まだ50にはなっていないのではないかと思しきワイナリー三代目の若主人が熱心にワインの話をしてくれて、自慢のワインを試飲しながら美味しいパスタやチーズ、地元野菜のサラダを味わって参加12人大満足だった。

ジパングの出番久々桃見行       廣田 可升

三方に望む白嶺桃花摘む        杉山 三薬

山峡を抜ければ異郷桃の花       中村 迷哲

トンネルを出て陽光の大桜       今泉 而云

にごりなき一葉ざくら白きまま     嵐田 双歩

信玄の眠る里なり桃の花        須藤 光迷

恵林寺の大屋根曲線かぎろひぬ     大澤 水牛

うららかや庫裡の扁額なぞの文字    徳永 木葉

桃の下摘花作業の夫婦かな       田中 白山

草餅も裂き烏賊も売る桃源郷      金田 青水

たんぽぽの花にもあるや過疎過密    玉田春陽子

春風を土蔵に入れてワイン会      植村 方円

☆     ☆     ☆

次いで5月5日の子供の日は立夏。三薬幹事が「5月は薔薇の月。唯一残っている都電の荒川線沿線は薔薇の名所。ここへご案内」というわけで、早稲田から三ノ輪橋まで12キロをがたごと揺られながら、途中、巣鴨の名刹を巡るなどして、打ち上げは町屋にある知る人ぞ知る名物蕎麦屋という、とてもユニークな吟行が実現した。

午後1時に都電荒川線早稲田停留所に集合、すぐ近くの神田川沿いにある関口芭蕉庵を皮切りに五月吟行がスタートした。参加者は前月より一人多い13名。しかも前回は男ばかりでむさ苦しい感じだったが、今回は妙齢美女3名が加わってまことに賑やかな吟行になった。

関口芭蕉庵を見学した後、早稲田停留所からチンチン電車に乗り込み、庚申塚で途中下車、旧中山道の猿田彦神社で庚申塚を眺め、巣鴨の住宅街を歩いて「明暦大火」の火元とされる本妙寺、四谷怪談のお岩さんの墓がある妙行寺を巡り、西ヶ原四丁目停留所からまた電車に乗って終点の三ノ輪橋へ。ここのバラ園というか、薔薇の植え込みをじっくり眺める。その後、5分ほどのところにある「浄閑寺」を参拝する。ここは別名「投げ込み寺」と言われ、吉原の遊女2万7千人が眠っているという寺だ。

これで五月吟行は終了。一行はまた都電に乗って5つ逆戻りして町屋へ。この駅前にも薔薇の花壇がある。すぐそばの「如月徳」(きさらぎとく)という、50になったかどうかの夫婦が切り盛りしている小体な蕎麦屋に行き、素敵な打ち上げ懇親会を開いた。

川底の澄みて立夏の神田川       向井 愉里

岩棚に亀の昼寝や神田川        岩田 三代

荒れ庭に俳聖しのぶ青芭蕉       中村 迷哲

薔薇咲かせどっこい元気な荒川線    今泉 而云

そよ風と薔薇の香ながる早稲田車庫   金田 青水

チンチンと鳴るや都電は薔薇の中    嵐田 双歩

人気なきお岩通りや夏浅し       和泉田 守

次々に上着脱ぎだす立夏かな      星川 水兎

角の家初夏は黄薔薇の館なり      澤井 二堂

ピースといふ薔薇のつぼみは固きまま  大澤 水牛

言葉出ぬままにつつじの浄閑寺     植村 方円

バラ吟行〆の蕎麦屋でハイ拍手     杉山 三薬

 

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番町喜楽会第194回例会報告

参加21人、「母の日」と「新緑」を詠む

水兎さんの「母をまるまる」がトップ

てる夫さんの「初鰹」が次席に

番町喜楽会は令和4年5月例会(通算194回)を9日夜、東京・九段下の千代田区生涯学習館で開催した。21人から投句があり、うち16人が顔を揃えた。兼題は「母の日」と「新緑」、投句は3句以上5句以内、選句は6句(欠席者は5句)とした結果、星川水兎さんの「母の日にまるまる母を洗ひたり」が8点でトップ、次席7点に堤てる夫さんの「初鰹塩田平の藁で焼く」が入った。三席は6点で須藤光迷さんの「一斉に富士に尾を振る鯉幟」と、廣田可升さんの「笹舟の疏水に早し夏来たる」が並んだ。5点はなく、4点が2句、3点は10句にのぼった。兼題別の高点句(3点以上)は次の通り。

「母の日」

母の日にまるまる母を洗ひたり     星川 水兎

母の日の祝ひ競ふや嫁三人       高井 百子

母の日の夕べも母は台所        須藤 光迷

母の日を知らざる母の位牌拭く     玉田春陽子

母の日のかたたたきけん息子の字    中村 迷哲

母の日や独り暮らしの電話鳴る     中村 迷哲

「新緑」

新緑を競ふ野の草山の木々       田中 白山

新緑や弓引き絞り気を静む       池内 的中

新緑の庭に花嫁登場す         今泉 而云

新緑や電車に乗って蕎麦食ひに     金田 青水

「雑詠」

初鰹塩田平の藁で焼く         堤 てる夫

一斉に富士に尾を振る鯉幟       須藤 光迷

笹舟の疏水に早し夏来たる       廣田 可升

陶の亀も歌ひ出すかや若葉雨      大澤 水牛

葉桜や縁切寺の黒き門         玉田春陽子

初蝶のジャングルジムを抜けゆけり   玉田春陽子

【参加者】(出席16人)池内的中、今泉而云、大澤水牛、金田青水、塩田命水、須藤光迷、高井百子、田中白山、玉田春陽子、堤てる夫、徳永木葉、中村迷哲、廣田可升、星川水兎、前島幻水、向井愉里。(投句参加5人) 嵐田双歩、斉山満智、澤井二堂、谷川水馬、山口斗詩子。   (報告・須藤光迷)

 

 

 

 

 

 

 

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日経俳句会第208回例会開催

豆乳、迷哲、守、水兎の四氏が9点で並立

トップが4句ひしめくは空前にして多分絶後

日経俳句会は4月20日(水)、令和4年度4月例会(通算208回)を、内神田の千代田区立スポーツセンターの第二集会室で開いた。この日は、春にしてはやや肌寒い曇天ではあったが、15人が出席、和やかな句会となった。兼題は「行く春」と「菜の花」。欠席者を含め36人から108句が集まった。6句選(欠席5句)の結果、中沢豆乳さんの「路地遊びチヨコレイトで春はゆく」、中村迷哲さんの「百船の行き交ふ瀬戸や花菜風」、和泉田守さんの「戦争を知らぬ雑踏春渋谷」、星川水兔さんの「花冷えのホットミルクのうすき膜」の4句が9点で並ぶという珍しい結果となった。次いで、今泉而云さんの「春逝くやこれで終りのクラス会」と中村迷哲さんの「駄菓子屋に迷ふ子のゐる遅日かな」が7点で並んだ。以下、6点3句、5点3句、4点6句、3点7句、2点12句、1点33句だった。兼題別の高点句(3点以上)は以下の通り。

「行く春」

路地遊びチヨコレイトで春はゆく    中沢 豆乳

春逝くやこれで終わりのクラス会    今泉 而云

余命一つ減らして春は逝きにけり    大沢 反平

行く春や階段整列谷中猫        岡田 鷹洋

切花の捨てどき迷う春の果       星川 水兔

行く春や弓手にワイン右手にピザ    大澤 水牛

行く春や老いの小足の追ひつけず    高井 百子

行く春を車窓に惜しむ湖西線      中村 迷哲

「菜の花」

百船の行き交ふ瀬戸や花菜風      中村 迷哲

菜の花を裾野に抱え薩摩富士      流合 水澄

菜の花や日に数回の列車あり      向井 愉里

菜の花や昭和の味の五目寿司      池村実千代

菜の花を見納めにして特攻機      今泉 而云

菜の花をかきわけ列車入線す      徳永 木葉

菜の花や房総の道ペダル踏む      篠田  朗

人住まぬ妻の故郷花菜雨        横井 定利

「当季雑詠」

戦争を知らぬ雑踏春渋谷        和泉田 守

花冷えのホットミルクのうすき膜    星川 水兔

駄菓子屋に迷ふ子のゐる遅日かな    中村 迷哲

パソコンにスリープ機能目借時     嵐田 双歩

重さ無く昇り行くなり春の月      髙橋ヲブラダ

生きてるぞこの満開の花の下      大沢 反平

富士蒼し浜一面の桜蝦         須藤 光迷

寝たままの友の微笑みフリージア    髙石 昌魚

なにごともささらほうさら花は散る   藤野十三妹

《参加者》【出席15人】嵐田双歩、今泉而云、岩田三代、植村方円、大澤水牛、岡田鷹洋、金田青水、澤井二堂、篠田朗、杉山三薬、堤てる夫、徳永木葉、中村迷哲、星川水兎、向井愉里。【投句参加21人】池村実千代、和泉田守、伊藤健史、大沢反平、加藤明生、工藤静舟、久保田操、鈴木雀九、須藤光迷、高井百子、高石昌魚、高橋ヲブラダ、谷川水馬、中沢豆乳、中嶋阿猿、野田冷峰、流合水澄、旙山芳之、廣上正市、藤野十三妹、横井定利。  (報告 嵐田双歩)

 

 

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番町喜楽会第193回例会

トップ6点に3人が並ぶ

参加21人「四月」と「霞」詠む

番町喜楽会は令和4年4月例会(通算193回)を、4月2日(土)に九段下の九段生涯学習館で「四月」と「霞」を兼題として開催した。投句者は21人で投句総数は100句。出席者6句、欠席者5句の選句の結果、金田青水さんの「隠居には隠居の日課四月来る」と玉田春陽子さん「電気工一人花見の灯を点す」、徳永木葉さん「四月来る名刺を持たぬ身の軽さ」の3句が6点でトップの座を分けた。二席には谷川水馬さんの「春眠やラッコのやうに腹に本」の5点句が入り、三席4点には斉山満智さんの「職退きて優しき顔の四月かな」、高井百子さんの「人の背に見えたりもして墓霞む」と「ごめんねと除草剤撒く春の墓」、さらに玉田春陽子さんの「春耕や鍬のゆるみを水で締め」と星川水兎さんの「動かせば青畳ある四月かな」の計5句が並んだ。以下、3点5句、2点12句、1点35句だった。兼題別の高点句(3点以上)は次の通り。

「四月」

隠居には隠居の日課四月来る             金田 青水

四月来る名刺を持たぬ身の軽さ            徳永 木葉

職退きて優しき顔の四月かな             斉山 満智

動かせば青畳ある四月かな              星川 水兎

列をなす小さき黄帽子四月かな            池内 的中

片隅に不安を乗せて四月のバス            中村 迷哲

「霞」

人の背に見えたりもして墓霞む            高井 百子

顔(かんばせ)を残して霞む摩崖仏          廣田 可升

「当季雑詠」

電気工一人花見の灯を点す              玉田春陽子

春眠やラッコのやうに腹に本             谷川 水馬

ごめんねと除草剤撒く春の墓             高井 百子

春耕や鍬のゆるみを水で締め             玉田春陽子

春風に洗濯物の抗はず                嵐田 双歩

春の宵背伸びして飲むストレート           中村 迷哲

《参加者》【出席12人】嵐田双歩、今泉而云、大澤水牛、金田青水、須藤光迷、高井百子、田中白山、谷川水馬、玉田春陽子、徳永木葉、堤てる夫、廣田可升。

【欠席投句9人】池内的中、斉山満智、澤井二堂、塩田命水、中村迷哲、野田冷峰、星川水兎、前島幻水、向井愉里。  (報告・谷川水馬)

 

 

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日経俳句会第207回例会

会場を千代田区立スポーツセンターに変更

12人が出席、「三月」と「猫の子」を詠む

鷹洋、芳之両氏がトップ分け合う

日経俳句会は令和4年3月例会(通算207回)を16日(水)夜、鎌倉橋の千代田区立スポーツセンター集会室で開いた。オミクロン感染は減り始めたが日経の会議室が使えず、会場をすぐ近くに変更した。出席者は12人といつもより少なかったが、温暖な春の陽気そのままに談論風発の句会となった。兼題は「三月」と「猫の子」。36人から107句の投句があり、6句選(欠席は5句)の結果、最高9点は岡田鷹洋さんの「春の宵ひとり錠剤選り分けて」と旙山芳之さんの「雛祭次女が彼氏を連れて来た」が分け合った。二席7点には横井定利さん「三月やインクの色を替へてみる」と旙山芳之さん「猫の子のビデオ会議にしっぽ出す」が並び、旙山さんは一席、二席を占める好調ぶり。以下、6点3句、5点2句、4点6句、3点14句、2点17句、1点27句と続き、3点以上の高点句が29句にのぼった。兼題別の高点句(三点以上)は以下の通り。

「三月」

三月やインクの色を替へてみる        横井 定利

ただ一度父と買い物あの三月         岩田 三代

三月や人去りし部屋広き部屋         伊藤 健史

三月やどんどん埋まる予定表         高井 百子

三月や転勤辞令リモートぞ          岡田 鷹洋

三月や空の青さと海の碧           加藤 明生

一茶庵三月なれど雪五尺           篠田  朗

三月の風の日毎に違う色           高橋ヲブラダ

早や弥生病夫見つめる日の名残り       藤野十三妹

三月や緊張しつつ書く住所          向井 愉里

「猫の子」

猫の子のビデオ会議にしっぽ出す       旙山 芳之

金の眼が素敵と子猫貰はるる         今泉 而云

双眸に瑠璃を湛へし仔猫かな         中嶋 阿猿

はらからにもたれて寝入る子猫かな      大下 明古

温む川鷺はそろりと細き足          高井 百子

手の中に命の震え仔猫寝る          高橋ヲブラダ

その声や命の重み捨て子猫          植村 方円

猫の子の啼いてお開きWEB会議       谷川 水馬

ジーンズを這い登りきて子猫啼く       向井 愉里

「当季雑詠」

春の宵ひとり錠剤選り分けて         岡田 鷹洋

雛祭次女が彼氏を連れて来た         旙山 芳之

春光や青を豊かに江戸切子          嵐田 双歩

太葱のつるりむけたるひかりかな       廣上 正市

卒業の投げたる帽子風に乗る         水口 弥生

朧月シャガールの夢解き放つ         岩田 三代

峰々の頬も緩むや雪解川           篠田  朗

春泥を蹴散らす戦車うつつなり        杉山 三薬

キャタピラに踏まれし国土青き麦       中村 迷哲

春風に鳩居堂まで歩をのばし         横井 定利

《参加者》【出席12人】嵐田双歩、今泉而云、植村方円、大澤水牛、岡田鷹洋、金田青水、篠田朗、杉山三薬、徳永木葉、中村迷哲、星川水兎、向井愉里。【投句参加24人】池村実千代、和泉田守、伊藤健史、岩田三代、大沢反平、大下明古、荻野雅史、加藤明生、久保田操、澤井二堂、鈴木雀九、須藤光迷、高井百子、髙石昌魚、高橋ヲブラダ、谷川水馬、堤てる夫、中沢豆乳、中嶋阿猿、旙山芳之、廣上正市、藤野十三妹、水口弥生、横井定利。  (報告 中村迷哲)

 

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第百五十五回酔吟会を開催

新会場、千代田区立スポーツセンターに16人集う

中村迷哲さんが初参加

「鳥雲に」「地虫穴を出づ」に佳句続々

酔吟会は今年初めての例会を3月12日午後、千代田区立スポーツセンターで開いた。これはこれまで使っていた日経広告研究所会議室の土曜開催が難しくなったため、今回から会場を変更し、交差点に向かって斜め向かいの千代田区立施設を借用することにしたもの。またこれと同時に今回から、「欠席投句無し、参加者は兼題を含む五句を持ち寄り短冊に記入、それを清記用紙に転記してから選句を始める」という伝統的な句会の方式で行うことにした。

新型コロナ蔓延が引き続いている中で、果たして何人が集まるかと危惧したが、新規加入の中村迷哲さんを始め16人が参加した。兼題は「鳥帰る」と「地虫穴を出づ」で投句は5句、出句総数は80句。広々とした部屋で和気あいあいと句会が進められた。

選句6句の結果、最高は5点で谷川水馬さんの「不知火の海で風待ち鶴帰る」、廣田可升さんの「信貴生駒越せば斑鳩鳥雲に」、向井愉里さんの「地虫出づまだ半分の畝起こし」の3句が肩を並べた。次席4点には大澤水牛さんの「地虫出づ椋鳥に逢ふ運不運」、金田青水さん「週一の軽トラ演歌地虫出ず」、玉田春陽子さん「地虫出づ踏む人のなき百度石」、中村迷哲さんの「蟇出でて地域デビューのゴミ当番」、向井愉里さんの「雛納め今日の新聞敷き込みて」の5句が並んだ。以下3点6句、2点13句、1点18句であった。(3点句以上の兼題句別高得点句は以下の通り)

「鳥帰る」

不知火の海で風待ち鶴帰る      谷川 水馬

信貴生駒越せば斑鳩鳥雲に      廣田 可升

鳥帰る国境のなき大空へ       嵐田 双歩

空の色湖に残して鳥帰る       玉田春陽子

「地虫出穴を出づ」

地虫出づまだ半分の畝起こし     向井 愉里

地虫出づ椋鳥に逢ふ運不運      大澤 水牛

週一の軽トラ演歌地虫出ず      金田 青水

地虫出づ踏む人のなき百度石     玉田春陽子

蟇出でて地域デビューのゴミ当番   中村 迷哲

地虫出づ屑菜捨てんとせしところ   須藤 光迷

父の背を息子の超す日地虫出づ    中村 迷哲

「当季雑詠」

雛納め今日の新聞敷き込みて     向井 愉里

火の鳥ぞ羽ばたくように山焼くや   久保 道子

春昼や池にぽっかり鯉の口      徳永 木葉
【参加者】嵐田双歩、今泉而云、大澤水牛、岡田鷹洋、金田青水、久保道子、杉山三薬、須藤光迷、高井百子、谷川水馬、玉田春陽子、堤てる夫、徳永木葉、中村迷哲、廣田可升、向井愉里    (報告:高井百子)

 

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