13人が集い、熱気の初句会
一席に「豆腐屋」迷哲句、二席に木葉句と弥生句が並ぶ
日経俳句会は新年の初句会となる令和4年1月例会(通算205回)を、19日(水)に千代田区九段の生涯学習館で開いた。オミクロン感染の急拡大で日経の会議室が使えず、急きょ会場を変更した。出席者は13人といつもより少なかったが、寒さを吹き飛ばす熱気あふれる句会となった。兼題は「初夢」と「寒の水」、欠席投句者含め39人から117句の投句があり、6句選の結果、中村迷哲さんの「豆腐屋の槽(ふね)満々と寒の水」が最高12点を得て一席となった。二席8点句には徳永木葉さんの「松飾納めて寂し釘の穴」と、水口弥生さんの「動くもの雪のほかなく暮れ落ちる」が並び、三席7点句に篠田朗さんの「お浄めも指先ばかり寒の水」が入った。6点句には「寒の水たっぷりくれて刃物研ぐ 双歩」と「何事もなきめでたさや松納 昌魚」が並んだ。以下、5点2句、4点10句、3点10句、2点20句、1点26句と続き、3点以上の高点句が28句を数えた。なお今月から日経社員の伊藤健史さんが新会員となり、投句・選句に加わった。また向井ゆりさんが俳号を愉里(ゆり)と定め、心新たに句作に取り組むことになった。兼題別の高点句(3点以上)は以下の通り。
「初夢」
初夢に若々しき妻あらはるる 大沢 反平
初夢のデートに妻と鉢合せ 澤井 二堂
初夢はマスク外して大笑ひ 岩田 三代
深酒の過ぎて初夢見損なふ 堤 てる夫
初夢を覚えてないとべそかく子 中村 迷哲
獏の絵をふとんに敷いて父と寝る 野田 冷峰
「寒の水」
豆腐屋の槽(ふね)満々と寒の水 中村 迷哲
お浄めも指先ばかり寒の水 篠田 朗
寒の水たっぷりくれて刃物研ぐ 嵐田 双歩
寒の水桶の半月杓で汲み 岡田 鷹洋
ウイスキー追って胃の腑へ寒の水 徳永 木葉
寒の水手に手に白きポリタンク 金田 青水
寒の水足せば目高はもぞ動く 鈴木 雀久
寒の水沁むや切り傷あるごとく 水口 弥生
胃の腑より今朝も目覚めり寒の水 和泉田 守
「当季雑詠」
松飾納めて寂し釘の穴 徳永 木葉
動くもの雪のほかなく暮れ落ちる 水口 弥生
何事もなきめでたさや松納 髙石 昌魚
越前は月も凍るや野水仙 篠田 朗
交番の褪せた手配書冬深し 中村 迷哲
元日や空はどこまで宇都宮 伊藤 健史
予報士のペンギン歩き凍る道 大平 睦子
天平の礎石に沿うて冬菫 星川 水兎
雪だるま作ってぢぢは若返る 大澤 水牛
塩昆布を一箸加え薺粥 須藤 光迷
七つの子巣立って老いた寒鴉 中沢 豆乳
今回で終わりにすると年賀状 旙山 芳之
潮の目の舟一艘の淑気かな 廣上 正市
《参加者》【出席13人】嵐田双歩、今泉而云、植村方円、大澤水牛、岡田鷹洋、金田青水、篠田朗、杉山三薬、堤てる夫、徳永木葉、中村迷哲、星川水兎、向井愉里。【投句参加26人】池村実千代、和泉田守、伊藤健史、岩田三代、大沢反平、大平睦子、荻野雅史、加藤明生、工藤静舟、久保田操、澤井二堂、鈴木雀九、須藤光迷、高井百子、髙石昌魚、高橋ヲブラダ、谷川水馬、中沢豆乳、中島阿猿、野田冷峰、流合研士郎、旙山芳之、廣上正市、藤野十三妹、水口弥生、横井定利。
(報告 中村迷哲)