日経俳句会第223回例会

36人が「蟋蟀」と「菊」を詠む

一席7点に「混浴」双歩句、二席は4句並ぶ

日経俳句会は10月18日(水)、内神田の日経広告研究所会議室で10月例会を開いた。少し前までの暑さが嘘のように急に秋らしい気配となったこの日、13人が出席、和やかな句会となった。兼題は「蟋蟀」と「菊」。36人から合計108句の投句があり、6句選(欠席5句)の結果、嵐田双歩さんの「混浴に先客一人ちちろ鳴く」が7点で一席、二席6点には溝口戸無広さんの「ちちろ虫瞬く星と呼び交はす」、高井百子さんの「庭の菊野菜と並ぶ直売所」、横井定利さんの「十月や布巾だけでも新しく」、双歩さんの「木犀の金銀の香を拾ひけり」の四句が並んだ。三席5点句は中野枕流さんの「闘蟋のどこか悲しき勝ち名乗り」など8句、4点が7句、3点13句、2点14句、1点27句だった。兼題別の高点句(3点以上)は以下の通り。

「蟋蟀」

混浴に先客一人ちちろ鳴く              嵐田 双歩

ちちろ虫瞬く星と呼び交はす             溝口戸無広

ひととせの束の間なるやちちろ鳴く          和泉田 守

ちちろ鳴くアニメ聖地の古社             徳永 木葉

闘蟋(とうしつ)のどこか悲しき勝ち名乗り      中野 枕流

こほろぎのぢぢいぢぢいと呼ぶ夜半          大澤 水牛

こほろぎの二尺跳んだり父の畑            伊藤 健史

ゴッホ展閉館告ぐるちちろかな            加藤 明生

ちちろ鳴く納屋の片隅隠れんぼ            中村 迷哲

縁側に大の字の父ちちろ鳴く             横井 定利

「菊」

庭の菊野菜と並ぶ直売所               高井 百子

とりどりの菊纏ひをり白虎隊             岩田 三代

酢の利いた黄とむらさきの菊膾            金田 青水

よしよしと猛暑越えたる菊手入れ           大澤 水牛

お別れの温顔に置く菊一輪              岡田 鷹洋

菊日和馬券舞ひ散る競馬場              加藤 明生

白菊の一輪ごとの別れかな              中沢 豆乳

白菊や母校の歴史刻みをり              池村実千代

菊一輪我も手向けん無縁仏              和泉田 守

引いてとく飴のつつみや菊日和            星川 水兎

当季雑詠

木犀の金銀の香を拾ひけり              嵐田 双歩

十月や布巾だけでも新しく              横井 定利

捨てられし田の畔染める曼珠沙華           岩田 三代

天高し少年少女鼓笛隊                加藤 明生

大根引く十坪だけの借り畑              徳永 木葉

跳ね回れやんちゃうれしや障子貼り          工藤 静舟

酒瓶に芒無造作縄のれん               中沢 豆乳

唐突に秋冷来たる三崎港               大沢 反平

コスモスや青空向いて大合唱             澤井 二堂

六畳間ドローンを飛ばす夜寒かな           鈴木 雀九

思い出す生きる喜び金木犀              旙山 芳之

金木犀やさしき心呼び覚ます             中嶋 阿猿

分きざみ夫婦生まれる秋うらら            中村 迷哲

《参加者》【出席13人】嵐田双歩、池村実千代、今泉而云、植村方円、大澤水牛、金田青水、篠田朗、杉山三薬、鈴木雀九、堤てる夫、中村迷哲、星川水兎、向井愉里。【投句参加23人】和泉田守、伊藤健史、岩田三代、大沢反平、岡田鷹洋、岡松卓也、加藤明生、工藤静舟、久保田操、澤井二堂、須藤光迷、高井百子、高橋ヲブラダ、谷川水馬、徳永木葉、中沢豆乳、中嶋阿猿、中野枕流、旙山芳之、廣上正市、藤野十三妹、溝口戸無広、横井定利。

(報告 嵐田双歩)

 

 

 

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