第123回日経俳句会例会

日経俳句会は平成25年第9回例会(通算123回)を10月15日(火)午後6時半から鎌倉橋交差点傍の日経第二別館会議室で開いた。この日は十年に一度という大型の台風26号が関東地方に上陸する恐れありという予報で、朝から雲行き怪しく、幹事宛に「句会やるのですか」の問い合わせしきり。「欠席します」との連絡も続々届いた。正午過ぎ幹事団協議の結果、(1)今から中止の連絡をしても既に外出してしまっている人もいるだろうから連絡が徹底できない(2)暴風雨が来るとしても今夜半、句会の時間はまだ大丈夫─という判断で予定通り決行することにした。これはまさに正解で、句会を早目に切り上げた8時少し前は多少雨が強まってきたかなという程度で、参会者一同無事に帰れた。

“台風句会”の出席者は16名、欠席投句が17名、投句総数163句ということになった。この日の兼題は「秋(秋一般)」「蚯蚓鳴く(みみずなく)」で、6句選句で句会を進めた。最高点は6点で高瀬大虫さんの「空(うろ)の眼の秋を吸込む埴輪かな」と嵐田啓明さんの「曲がるたび路面電車の秋軋む」の2句。次席5点は「朱といふを終の色とし烏瓜 吉野光久」「肋骨のひびの疼きや蚯蚓鳴く 大澤水牛」の2句。

次いで4点が8句、3点12句、2点21句、1点が39句だった。兼題別の高点句(3点以上)は次の通り。

「秋一般」

空の眼の秋を吸込む埴輪かな      高瀬 大虫

曲がるたび路面電車の秋軋む      嵐田 啓明

うがひして空向く口の中も秋      今泉恂之介

山の影恐竜に似て秋夕焼        今泉恂之介

交差点他人の空似秋の空        大熊 万歩

振返り振返り行く秋の犬        金田 靑水

どうですか満腹ですと返す秋      山田 明美

秋ぬって貨物列車の長い列       植村 博明

秋深き終のすみかを定めかね      大倉悌志郎

秋晴の空へうがひの音高し       金田 靑水

秋遍路後ろ姿に入り日さす       岡田 臣弘

秋風や翼を持たぬ風見鶏        佐々木 碩

 

「蚯蚓鳴く」

肋骨のひびの疼きや蚯蚓鳴く      大澤 水牛

こんな日は蚯蚓鳴くらし月まつ赤    嵐田 啓明

終バスを待てど来ぬ闇みみず鳴く    澤井 二堂

蚯蚓鳴く声も届かぬ歳となり      井上庄一郎

病室にゐるはずのなき蚯蚓鳴く     吉野 光久

落武者の鎧脱ぐ夜や蚯蚓鳴く      今泉恂之介

富士見えぬ富士見坂なり蚯蚓鳴く    星川 佳子

「雑詠」

朱といふを終の色とし烏瓜       吉野 光久

芭蕉忌や四年がかりの旅終へむ     堤 てる夫

風が来て陽が来て丘の秋桜       大沢 反平

いつも行くいつもの道の赤まんま    金田 靑水

取つときの石鹸下ろす雨月かな     横井 定利

 

参加者(出席16名)嵐田啓明、今泉恂之介、大熊万歩、大倉悌志郎、大澤水牛、大沢反平、佐々木碩、澤井二堂、杉山智宥、高石昌魚、高瀬大虫、高橋ヲブラダ、徳永正裕、直井正、野田冷峰、星川佳子(投句参加17名)池村実千代、井上庄一郎、植村博明、大下綾子、岡田臣弘、加藤明男、金田青水、久保田操、須藤光迷、田中頼子、堤てる夫、流合研士郎、廣上正市、藤野十三妹、山田明美、横井定利、吉野光久

(まとめ・大澤水牛)

 

 

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