日経俳句会平成24年上期合同句会

日経俳句会の銀鴎、水木、酔吟3句会は6月20日(水)午後6時半、東京・神田鎌倉橋の日経第2別館会議室で、平成24年上期合同句会(通算14回)を開いた。日経本社のサマータイム体制入りで本社会議室の夜間利用が制限されたため、昨年に続いて第2別館での開催となった。前夜来の台風4号の影響もあり、合同句会としては21人と少なめの出席者だったのが幸いし、狭い会議室でも落ち着いた雰囲気で中身の濃い句会となった。

兼題は「若葉」と「短夜」で「当季雑詠」を含め投句3句、事前の選句は5句ということで、開会前には廣上幹事の手元に得点一覧資料が用意されていた。句会の皮切りは選句表番号順の得点発表で、20番目の句に最高の18点が記録されてどよめいた。投句参加の18人と合わせ、39人合計117句の得点内訳は、「天」の18点に次いで「地」が9点、「人」が7点、いずれも1句ずつ。以下6点2句、5点2句、4点8句、3点11句、2点39句、1点11句。

最高の18点を獲得した句は「短夜やナースしづかに来ては去り」で、現在自宅療養を余儀なくされている吉野光久さんの作。18点というのは合同句会を半年に一度定期的に開催するようになって以来7年間での最多得点記録である。第二位9点句の「桐咲くやもののふ駈けし切通」も吉野作と判明して会場は沸きに沸いた。

第三位7点句の「若葉雨チェロ抱き走る芸大生」は澤井二堂さんの作。6点句は「辞書引けば匂ひ微かに走り梅雨 今泉恂之介」と「病む母の寝息うかがふ明易し 田中頼子」の2句。5点句は「若葉風追ふ子逃げる子眺める子 高石昌魚」と「そり返る体操の空青若葉 大石柏人」の2句。兼題別の高点句(3点以上)は次の通り。

 

「若葉」

若葉雨チェロ抱き走る芸大生         澤井 二堂

若葉風追ふ子逃げる子眺める子        高石 昌魚

山の湯の若葉若葉に浸りけり         大沢 反平

篆刻の目を休めをり若葉風          大下 綾子

奥入瀬の若葉遊ばす岩しぶき         岡田 臣弘

笑み給ふ白鳳仏や若葉風           大倉悌志郎

木漏れ日の影やはらかき若葉かな       久保田 操

ゴーヤ伸ぶ若葉の家の息遣ひ         徳永 正裕

 

「短夜」

短夜やナースしづかに来ては去り       吉野 光久

病む母の寝息うかがふ明易し         田中 頼子

短夜や散歩夫婦のこゑ過ぎる         金田 青水

短夜や鳥の昂ぶる森の朝           佐々木 碩

短夜を百足の夫婦忍び足           杉山 智宥

短夜や山小屋すぐに寝静まる         井上庄一郎

ひとり寝や短夜さへも持て余し        高瀬 大虫

短夜やジャズの音止まず六本木        流合研士郎

石窯のパン焼くにほひ明易し         廣上 正市

 

「雑詠」

桐咲くやもののふ駈けし切通         吉野 光久

辞書引けば匂ひ微かに走り梅雨        今泉恂之介

そり返る体操の空青若葉           大石 柏人

断捨離はむづかしきもの衣更         大倉悌志郎

生り年の力まざまざ柿若葉          藤村 詠悟

はつなつや朝餉の前の野良仕事        今村 聖子

万緑や草まみれなる牛の鼻          佐々木 碩

金星のさても小さき豆御飯          星川 佳子

妻の留守大ごきぶりと相対す         横井 定利

 

参加者(出席)井上庄一郎、今泉恂之介、大澤水牛、大倉悌志郎、大熊万歩、大下綾子、大平睦子、岡田臣弘、澤井二堂、杉山智宥、須藤光迷、鈴木好夫、高石昌魚、高瀬大虫、堤てる夫、徳永正裕、野田冷峰、直井正、廣上正市、星川佳子、横井定利(投句参加)嵐田啓明、池村実千代、今村聖子、植村博明、大石柏人、大沢反平、金田青水、久保田操、佐々木碩、高橋淳、田中頼子、流合研士郎、深田森太郎、藤野十三妹、藤村詠悟、水口弥生,山田明美、吉野光久

(まとめ・堤てる夫)

 

 

 

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第81回番町喜楽会例会

番町喜楽会は6月2日(土)午後1時から千代田区二番町の番町ハイム会議室で第81回例会を開いた。兼題は「麦秋(ばくしゅう、むぎあき、むぎのあき)」と「鮎(あゆ)」で、投句総数は90句。選句6句の句会の結果、最高は4点で6句、次席3点が6句と、なんとも「波静か」な結果となった。もっとも高点句作者の顔ぶれをみると、4点句には今泉而雲さんの「鮎宿の明日解禁の瀬音かな」と「鮎の骨抜いて仲居の愛想かな」の2句が、谷川水馬さんの「麦秋や幌ふかぶかと乳母車」と「風呂桶に解禁を待つ囮鮎」の2句が入った。さらに水馬さんは「二の腕に日向の匂ひ麦の秋」の句が次席の3点という「豊作」とあって「スイマセン」と言いながらニコニコ顔。このほか2点15句、1点24句。

兼題別の高点句(3点以上)は次の通り。

「麦秋」

麦の秋浅間一望千曲川          井上 啓一

麦秋の風にひと駅歩きけり        大澤 水牛

麦秋や幌ふかぶかと乳母車        谷川 水馬

二の腕に日向の匂ひ麦の秋        谷川 水馬

碁会所に少年多し麦の秋         野田 冷峰

麦秋や修道院は丘の上          前島 巌水

「鮎」

鮎宿の明日解禁の瀬音かな        今泉 而雲

鮎の骨抜いて仲居の愛想かな       今泉 而雲

風呂桶に解禁を待つ囮鮎         谷川 水馬

鮎むしる今日より後期高齢者       大澤 水牛

斎宮の手を清めをり鮎の川        星川 佳子

「雑詠」

夏めくや白き広場に鳩歩む        笹本 塘外

参加者(出席)井上啓一、今泉而雲、岩沢克恵、大澤水牛、笹本塘外、須藤光迷、高井百子、高瀬大虫、高橋楓子、谷川水馬、玉田春陽子、堤てる夫、徳永正裕、星川佳子、前島巌水、三好六甫(投句参加)加沼鬼一、野田冷峰  (まとめ・堤てる夫)

 

 

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水木会第109回例会

日経俳句会水木会は5月16日(水)午後6時半から東京・大手町の日経本社7階会議室で平成24年度第5回例会(通算109回)を開いた。兼題は「初夏(しょか)」と「初鰹(はつがつお)」で、投句総数は111句といつもに比べ少な目だった。参加者は出席者が10人に対して欠席投句者が13人と「逆転」現象。そのため出席者による選句数をいつもより多い7句としたせいか、選句がばらけて最高が5点でわずか1句、次席4点が5句、続く3点が12句に上るという、珍しい結果になった。

5点句は「初鰹今朝の今朝まで太平洋」で植村博明さんの作。4点句は大下綾子さんの「屋外に椅子を持ち出す夏はじめ」、久保田操さんの「夕立ちや広重描く人となり」、徳永正裕さんの「目覚めては布団の重さ夏初め」、廣上正市さんの「箸の順譲り合ひたり初鰹」、横井定利さんの「大川の風懐に初鰹」の5句。以下3点12句、2点15句、1点26句と続いた。兼題別の高点句(3点以上)は次の通り。

 

「初鰹」

初鰹今朝の今朝まで太平洋          植村 博明

箸の順譲り合ひたり初鰹           廣上 正市

大川の風懐に初鰹              横井 定利

黒潮の縞くつきりと初鰹           佐々木 碩

てきぱきと島の女の初鰹           星川 佳子

戸障子を開けつ放しに初鰹          横井 定利

癒えし夜のなにはともあれ初鰹        吉野 光久

 

「初夏」

屋外に椅子を持ち出す夏はじめ        大下 綾子

目覚めては布団の重さ夏はじめ        徳永 正裕

初夏の宵若き指揮者のデビューかな      大熊 万歩

初夏や葉ずれの音のどこまでも        大下 綾子

パン生地の育つがごとし初夏の山       高橋  淳

山地図に赤き線引く夏初め          廣上 正市

初夏や少女の挑む逆上がり          吉野 光久

 

「雑詠」

夕立ちや広重描く人となり          久保田 操

雨粒のぐんと大粒五月来る          大澤 水牛

ふらここの空を知りたる二歳かな       廣上 正市

老鶯のすぐ傍にゐて鍬振るふ         廣上 正市

参加者(出席)嵐田啓明、池村実千代、今泉恂之介、大澤水牛、佐々木碩、杉山智宥、堤てる夫、廣上正市、星川佳子、横井定利(投句参加)植村博明、大熊万歩、大下綾子、金田青水、久保田操、澤井二堂、高石昌魚、高橋淳、徳永正裕、直井正、藤野十三妹、山田明美、吉野光久                    (まとめ・堤てる夫)

 

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酔吟会第98回例会を開催

酔吟会の平成24年度第3回例会(通算98回)が5月12日(土)午後1時から、鎌倉橋交差点そばの日経第二別館8階会議室で開かれた。

ゴールデンウィーク明けの疲れが残っていたせいか、出席者は8人と酔吟会始まって以来最低の人数であった。これに対して投句参加が7人になり、出席者による淸記作業が大忙し。

出席者は今泉恂之介、大澤水牛、大沢反平、片野涸魚、金指正風、澤井二堂、堤てる夫、藤村詠悟の8人。投句参加は大石拍人、岡田臣弘、徳永正裕、野田冷峰、藤野十三妹、星川佳子、吉野光久の7人。

兼題は「風薫る・薫風」と「卯の花」、投句は5句、選句8句で句会を行った。その結果、最高点は3点句で7句、2点が9句、1点が23句となった。選句する出席者が僅か8人と少なかっただけに最高点が3点に留まるのもやむを得なかった。兼題別の3点獲得句は次の通り。

 

「風薫る・薫風」

薫風や市民マラソン途切れなく    徳永 正裕

薫風や鯉垂直に跳ね上がる      星川 佳子

風薫るつつがなくあれトキの雛    片野 涸魚

 

「卯の花」

卯の花やせんなき事は考えず     星川 佳子

卯の花や根岸の里の今むかし     金指 正風

卯の花や見知らぬ人と花談義     大沢 反平

 

「雑詠」

九十九里風車悠々春動く       大石 拍人

 

(まとめ・澤井二堂)

 

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番町喜楽会第80回例会を開催

番町喜楽会は5月7日(月)午後6時半から東京・九段下の九段生涯学習館4階集会室で平成24年度第5回例会(通算80回)を開いた。兼題は「金魚(きんぎょ)」と「夏木立(なつこだち)」で、出席12人、投句参加6人の計18人から5句投句、投句総数90句。選句6句で句会を進めた結果、笹本塘外さんの「白玉や浅草の雨降り止まず」が6点を得て最高。次席は4点で、井上啓一さんの「金魚にも拗ね者ありていつも底」、谷川水馬さんの「万緑や折り目正しき野点傘」、星川佳子さんの「金魚鉢コツコツお前も独り者」、三好六甫さんの「よみがへる六角堂や夏木立」の4句が並んだ。以下、3点4句、2点12句、1点24句。兼題別の高点句(3点以上)は次の通り。

 

「金魚」

金魚にも拗ね者ありていつも底     井上 啓一

金魚鉢コツコツお前も独り者      星川 佳子

口開けて金魚見る子や通学路      星川 佳子

 

「夏木立」

よみがへる六角堂や夏木立       三好 六甫

山門の太き閂夏木立          玉田春陽子

 

「雑詠」

白玉や浅草の雨降り止まず       笹本 塘外

万緑や折り目正しき野点傘       谷川 水馬

紫木蓮咲くやバナナを剥くやうに    今泉 而雲

雑貨屋の束子山盛り夏来る       玉田春陽子

 

参加者(出席)井上啓一、今泉而雲、大澤水牛、笹本塘外、須藤光迷、玉田春陽子、高井百子、堤てる夫、徳永正裕、野田冷峰、星川佳子、前島巌水(投句参加)岩沢克恵、加沼鬼一、高瀬大虫、高橋楓子、谷川水馬、三好六甫

(まとめ・堤てる夫)

 

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NPO法人双牛舎第5回総会を開催

俳句の普及振興を事業目的とするNPO法人双牛舎は4月21日、東京・市ヶ谷の寿司店「鮨乃家」で第5回年次総会を開催した。傘下の日経俳句会、番町喜楽会の会員に加え、昨年発足したばかりの三四郎句会の有志も飛び入り参加し約40人が出席、大いに盛り上がった。大澤水牛代表による1年を総括する挨拶があり、この総会を前に急逝した故山口詩朗(志郎)理事の後任として須藤光迷(公明)氏を新理事に選任したほか、事務局体制を強化するため新たに幹事長に堤てる夫(煇夫)氏、事務局長に谷川水馬(透)氏を選任したことが報告された。

総会の呼び物「双牛舎俳句大会」は第2回総会から実施したもので、今回が4度目。「花」の兼題句と雑詠句の計2句を事前に投句、会場に掲示された投句一覧表に「選句シール」を貼りつける方式で5句を選句した。投句総数は80句。

最高の「天」賞に輝いたのは、玉田春陽子さんの「ひさびさの賽銭の音山桜」で9点。「地」賞は8点で澤井二堂さんの「妻の手の荒れたるに触れ夕桜」。続く「人」賞は7点で3句あり、井上庄一郎さんの「目覚めれば病室の外花明り」、大石柏人さんの「花びらが撫でてゆきけり禿頭」、杉山智宥さんの「天井の低き地下道出れば花」が並んだ。「入選」は6点2句、5点4句。

これらの入賞者には大澤代表と須藤新理事の陶芸作品が賞品として贈られた。また入賞作品は書家赤池溪舟師揮毫の短冊に仕立てられ、来年の総会会場で披露の上贈呈される。今回の俳句大会に先立って昨年の受賞者には短冊が贈られた。

今年の第4回俳句大会の「天」「地」「人」「入選」の作品は次の通り。

「天」

ひさびさの賽銭の音山桜      玉田春陽子(番町喜楽会)

「地」

妻の手の荒れたるに触れ夕桜    澤井 二堂(酔吟会)

「人」

目覚めれば病室の外花明り     井上庄一郎(銀鴎会)

花びらが撫でてゆきけり禿頭    大石 柏人(酔吟会)

天井の低き地下道出れば花     杉山 智宥(水木会)

「入選」

どこからか花びら肩に二の腕に   大澤 水牛(代表)

一片のまた加はりし花筏      佐々木 碩(銀鴎会)

終着の無人の駅に花の雨      大熊 万歩(水木会)

復興の楽土へ続け花の道      大沢 反平(酔吟会)

たんぽぽの絮一呼吸しては発つ   佐々木 碩(銀鴎会)

五十鈴川燕返しに箸とめて     竹居 照芳(三四郎句会)

(まとめ・堤てる夫)

 

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英尾先生墓参桜吟行

日経俳句会は4月15日(日)、村田英尾先生の墓参と多摩森林科学園の桜保存林吟行を開催した。徳永正裕さんが幹事役を引き受け、嵐田啓明、今泉恂之介、大澤水牛、岡田臣弘、澤井二堂、鈴木好夫、高瀬大虫、田中頼子、廣上正市の計10人の顔ぶれとなった。

平成17年3月2日に英尾先生が亡くなってからもう満7年が過ぎた。先生が基礎を固めて下さった日経俳句会は順調に発展し続けている。毎年、有志が申し合わせて高尾の都立八王子霊園にある村田家の墓にお参りし、俳句会のことを報告しているのだが、これも今やすっかり年中行事の一つとして定着した。

この日は前日の嵐のような吹き降りが嘘のように晴れ上がり、絶好の墓参吟行日和となった。桜吹雪の下、田中頼子(蓮誓)さんの読経に一同唱和、お祈りを捧げた。

この後、歩いて多摩森林科学園へ。上天気の日曜とあって、例年に無い混雑で桜保存林の山道は人が切れ目無く続く。今年は冬が寒く、春になっても寒い日が続いたため、桜の開花がすっかり遅れ、この山の春も昨年に比べると約二週間ずれているようだ。去年は今年とほぼ同じ4月16日に来たのだが、その時は既にすっかり葉桜になっていたソメイヨシノが、今年はちょうど満開だった。その換わり、去年は賑やかに咲いていた普賢象、御車返しなどの八重桜がまだ蕾のまま。もちろん鬱金や御衣黄といった遅咲きの黄花、緑花の蕾は固い。

桜山のてっぺん近くに自然木のベンチを半円形に並べた昼食場所があるが、今年はここも満員。一同、空いているところに潜り込み、弁当を広げた。

句会はこれまた恒例のメールでのやり取り。徳永幹事のもとに各自3句送信、それがまとめられた選句表が幹事から配信されると、天地人と入選の計4句を選びコメントをつけて幹事に送り返す方式。その結果、最高点は今泉恂之介さんの「歓声のまた来ては去る花吹雪」の14点、次席は嵐田啓明さんの「懐かしき人の笑顔や春キャベツ」の12点、廣上正市さんの「振り返る染井吉野でありしかな」の10点だった。参加者の代表句は以下の通り。

懐かしき人の笑顔や春キャベツ   嵐田 啓明

歓声のまた来ては去る花吹雪    今泉恂之介

猪のはしゃぎし跡も花の下     大澤 水牛

さんざめく山路に床し豆桜     岡田 臣弘

暖かきさくら日和や師の心     澤井 二堂

十念を唱え戻るや花馬酔木     鈴木 好夫

いずれはと眺む墓石に花の散る   高瀬 大虫

谷越えてなほも飛びゆく落花かな  田中 頼子

酒なくば花の雅名にて酔はん    徳永 正裕

振り返る染井吉野でありしかな   廣上 正市

 

 

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水木会第108回例会

水木会は4月18日(水)午後6時30分から東京・大手町の日経本社7階会議室で、平成24年度第4回例会(通算108回)を開いた。「朧(おぼろ)」「花疲れ」が兼題のこの日、出席者は13人といつになく小人数だったのは、春たけなわの陽気のせいだったか。欠席投句者が12人居たため、投句総数は123句となり、いつもと変わらぬレベルだった。

出席者が少ないために7句選句とし、メール選句(6句選)を加えた結果、最高得票は7点で、星川佳子さんの「花疲れ唄のやうなる欠伸かな」の1句。前週の番町喜楽会で7点句、6点句と高点句を連発した佳子さん、週をまたいで話題を作った。次席は金田青水さんの「老木のそつと息する朧かな」の6点句。三席は5点句で「朧夜の汽笛こぼるる鉄路かな 嵐田啓明」「それではと別れてひとり花疲れ 植村博明」「仏壇に香り放つや春苺 久保田操」の3句が並んだ。続いて4点4句、3点11句と高点句が多め、2点16句、1点29句。兼題別の高点句(3点以上)は次の通り。

「朧(おぼろ)」

老木のそつと息する朧かな         金田 青水

朧夜の汽笛こぼるる鉄路かな        嵐田 啓明

ぽつぽつと語ることあり朧月        高橋  淳

ゆくりなく向き合ふ告知朧にて       吉野 光久

花街のことに小路の朧かな         今泉恂之介

草朧信濃に多き道祖神           大澤 水牛

ママチャリがタマネギ落とす朧かな     杉山 智宥

亡き人と行き逢ひさうな朧の夜       徳永 正裕

大川もスカイツリーも朧にて        直井  正

見えぬ手に誘はれ歩く朧かな        山田 明美

「花疲れ」

花疲れ唄のやうなる欠伸かな        星川 佳子

それではと別れてひとり花疲れ       植村 博明

副菜で足るる夕餉や花疲れ         大下 綾子

花疲れ駅まで長き商店街          杉山 智宥

花疲れ連れの手探るバスの席        水口 弥生

花疲れなじみの宿に帯を解く        水口 弥生

「雑詠」

仏壇に香り放つや春苺           久保田 操

花の名を言ひつつひと山巡りけり      廣上 正市

堀の水二色にわけて花筏          星川 佳子

らんまんの春をへだてる窓一枚       吉野 光久

参加(出席)嵐田啓明、池村実千代、今泉恂之介、植村博明、大澤水牛、佐々木碩、澤井二堂、高石昌魚、堤てる夫、徳永正裕、廣上正市、星川佳子、水口弥生(投句参加)大熊万歩、大下綾子、大平睦子、金田青水、久保田操、杉山智宥、高橋淳、直井正、藤野十三妹、山田明美、横井定利、吉野光久

(まとめ・堤てる夫)

 

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第79回番町喜楽会例会

番町喜楽会は4月14日(土)午後1時から千代田区五番町の「鮨之家」で、第79回例会を開いた。定例会場としている「九段生涯学習館」の手当てが付かなかったため、句会後の懇親会場に使うことが多い寿司屋での例会となった。春驟雨をついての出席者は17人で、大広間を細長く仕切った一角、掘り炬燵式のテーブルをぐるりと囲んで一杯いっぱい。職務繁多で1年ほどご無沙汰だった和田沙羅さんがこの輪に加わった。

兼題は「木の芽和(きのめあえ)」と「鰆(さわら)」で、事前投句方式で用意された選句表に登載されたのは90句。6句選句の結果、最高は「襟足にほくろ見つける花衣」の7点句。「いやですね、男のひとは」など声高な講評が飛び交ったが、作者は星川佳子さん。その星川さんが「上へ上へ桜散るなりビル谷間」の句で次席6点、すっかり賑やかな席となった。3席は5点で笹本塘外さんの「箸先になほ春の香や木の芽和」と、玉田春陽子さんの「壁際に手酌の男木の芽和」の2句。

続く4点は5句、3点5句で次の通り。

「4点句」

客途切れ陶芸展の日永かな      大澤 水牛

刀紋の凄み背負ひし鰆かな      谷川 水馬

歳月を語らふ夫婦木の芽和      徳永 正裕

木の芽和え船宿に雨あがりたる    野見山恵子

水打つて斑の際立てり銀鰆      野見山恵子

「3点句」

初蝶や聖アンデレのミサの鐘     大澤 水牛

定食屋鰆味噌漬け酒一合       高橋 楓子

品書きのいの一番の鰆かな      玉田春陽子

魚久の鰆到来酒支度         徳永 正裕

鰆焼く隣の猫と眼が合ひぬ      星川 佳子

 

参加者(出席)井上啓一、今泉而雲、岩沢克恵、大澤水牛、笹本塘外、須藤光迷、高井百子、高瀬大虫、谷川水馬、玉田春陽子、堤てる夫、徳永正裕、野田冷峰、野見山恵子、星川佳子、前島巌水(投句参加)加沼鬼一、高橋楓子(選句のみ参加)和田沙羅

(まとめ・堤てる夫)

 

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銀鴎会第81回例会

4月11日(水)午後6時半から東京・大手町の日経ビル会議室で第81回銀鴎会例会が開かれた。出席者は井上庄一郎、今泉恂之介、大倉悌志郎、大澤水牛、久保田操、佐々木碩、澤井二堂、高石昌魚、田中頼子、直井正、野田冷峰、廣上正市の12名。大沢反平、金田青水、須藤光迷、高瀬大虫、藤野十三妹の5名が投句参加した。

この日の兼題は「麗らか」と「木ノ芽和」。投句5句、選句7句で句会を行った結果、最高点は5点で、「うららかや河馬の歯みがく動物園 悌志郎」「ガン告知されて見上げる夕桜 光迷」の二句だった。次いで4点が4句、3点4句、2点17句、1点27句と続いた。兼題別に3点以上獲得句を掲載する。

「麗らか」

うららかや河馬の歯みがく動物園   大倉悌志郎

身を引くと決めて麗らか古希の朝   野田 冷峰

うららかや新書片手にまどろめり   須藤 光迷

うららかや網干す浜にトンビ鳴く   久保田 操

「躑躅」

共にゐて向きそれぞれの躑躅かな   野田 冷峰

丘ひとつ埋め尽くしけり大躑躅    井上庄一郎

揺るぎなきものに従ひ躑躅咲く    野田 冷峰

けもの道抜けて絶壁岩つつじ     廣上 正市

「雑詠」

ガン告知されて見上げる夕桜     須藤 光迷

春耕の一人となりて風掴む      廣上 正市

 

 

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