第7回逆回り奥の細道・福島編

日経俳句会の恒例行事「逆回り奥の細道」も回を重ねて第7回。今回は11月4,5日の一泊二日で、福島県の飯坂温泉周辺をスタートに白河の関まで、福島県の中通りをマイクロバスで縦断した。

参加者は井上庄一郎、高石昌魚(日帰り)、大澤水牛、今泉恂之介、高瀬大虫、岡田臣弘、堤てる夫(幹事)、徳永正裕、杉山智宥、須藤光迷、玉田春陽子、田中頼子、星川佳子の13人だった。

初日の11月4日(日)は快晴、東北新幹線「やまびこ53号」(東京発8:40)で福島駅に行き、迎えのマイクロバスで北上、桑折町の法圓寺へ行き「奥の細道絵巻」を見る。その後、信夫山羽黒神社、文知摺観音堂、医王寺、大鳥城址などを経由し、飯坂温泉の「なかむらや」旅館へ。200年前からあるという海鼠塀の土蔵造りの由緒ある建物で、明治時代に建てられた「新館」とつなげても全11室というこぢんまりした湯宿だが、女将さんも若女将も客あしらいが上手で、温泉も良く料理も美味く、一同大満足でくつろいだ。

翌5日(月)も上々の天気で、二本松城の菊人形展を見物してから須賀川へ。芭蕉と曾良が訪ねた相楽等窮宅跡、軒の栗庭園、可伸庵跡などを見学しながら市内散策。またバスに乗って、一路、白河へ。名物の蕎麦屋に入り、昼食。午後は三重櫓の聳える白河城(小峰城)公園へ行ったが、昨年三月の東日本大震災で石垣が大きく崩れて修理中のため閉鎖されていた。そこで白河の関へ向かい、途中、田畑、山林の中の硯石磨崖三十三観音に立ち寄り、紅葉が見事な白河の関で旅の締めくくりとした。

帰京後、いつものようにメール句会を行った。今回は福島原発の地を経巡る旅ということもあり、「放射線・放射能」に関係ある言葉を詠み込んだ一句を含め五句を投句、参加者各人の互選で「天」「地」「人」「入選」を選ぶ方式を取った。選句の結果、最高は「天」三つと「人」二つ、「撰」一つの計20点を獲得した玉田春陽子の「城跡や色なき風に放射能」。次いで17点が大澤水牛の「磨崖仏尋ねたづねて刈田道」、三席が13点で徳永正裕「江戸明治貫く宿の冬廊下」だった。参加各人の代表句は次の通り。

訪ね来し白河の関照紅葉      井上庄一郎

阿武隈の流れすすきと光り合ふ   今泉恂之介

にこやかに初冠雪の吾妻山     大澤 水牛

寒空に師弟同舟湯のけむり     岡田 臣弘

菊花展ひつそり戊辰の母の像    杉山 智宥

草紅葉かき分け拝む磨崖仏     須藤 光迷

多宝塔照紅葉背に鎮座せり     高石 昌魚

落葉積む古代の恋の歌枕      高瀬 大虫

カラコロと秋の湯に行く宿の下駄  田中 頼子

大わらぢ仰ぎて秋の信夫山     玉田春陽子

暮早し天守に代はる線量計     堤 てる夫

清盛の幾人もゐて菊花展      徳永 正裕

新豆腐温みほんのりなかむらや   星川 佳子

 

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番町喜楽会第86回例会

番町喜楽会は11月7日(火)午後6時半から千代田区二番町の番町ハイム会議室で、第86回例会を開いた。兼題は「冬浅し(ふゆあさし)」と「葱(ねぎ)」で投句総数は95句。

選句は6句とし進めた結果、この日新規会員として初参加した田中白山(はくさん、本名博)さんの「玄関の主なき杖や秋の風」が6点で「初打席初本塁打」の趣き。次席は5点、今泉而雲さんの「秋燕の溶け込んでゆく空の青」、岩沢克恵さんの「新海苔に息災のふみ添へられて」、前島巌水さんの「茜雲浅間の嶺へ葱の列」の3句が並んだ。

続く4点句も3句で、井上啓一さんの「人肌の湯に葱洗ふ湯澤かな」、三好六甫さんの「葱一本孤独に添えて帰りけり」、山口斗詩子さんの「薄暮にも球追ふ子らよ冬浅し」。以下3点6句、2点17句、1点30句。

新入会の白山さんは上智大学で水牛さんや六甫さんと机を並べていた。同窓会の席で俳句が話題となって互いに「同好の士」と分かり、一気に入会の約束まで進んだ。

兼題別の高点句(3点以上)は次の通り。

「冬浅し」

薄暮にも球追ふ子らよ冬浅し     山口斗詩子

冬浅し三坪耕し肩で息        大澤 水牛

冬浅し豌豆の芽の一列に       大澤 水牛

冬浅し黄昏色のドッグラン      高橋 楓子

また一つ年寄る心地浅き冬      徳永 正裕

「葱」

茜雲浅間の嶺へ葱の列        前島 巌水

人肌の湯に葱洗ふ湯沢かな      井上 啓一

葱一本孤独に添へて帰りけり     三好 六甫

焼きねぎはしおだタレだと酒二合   谷川 水馬

ひと椀の温みの中に葱香る      山口斗詩子

「雑詠」

玄関の主なき杖や秋の風       田中 白山

秋燕の溶け込んでゆく空の青     今泉 而雲

新海苔に息災のふみ添へられて    岩沢 克恵

 

参加者(出席)井上啓一、今泉而雲、大澤水牛、須藤光迷、高井百子、高瀬大虫、高橋楓子、田中白山、谷川水馬、玉田春陽子、堤てる夫、徳永正裕、野田冷峰、星川佳子、前島巌水、三好六甫(投句参加)岩沢克恵、加沼鬼一、山口斗詩子(選句参加)笹本塘外

(まとめ・堤てる夫)

 

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日経俳句会第113回例会

日経俳句会は10月17日(水)午後6時30分から内神田・鎌倉橋交差点傍の日経第二別館(MIFビル)8階会議室で、平成24年度第9回例会(通算113回)を開いた。兼題は「夜なべ(よなべ)」「花野(はなの)」で35会員から171句の投句があった。7句選句で句会を進めた結果、佐々木碩さんの「雲の行くその影も行く大花野」が最高の14点を得た。銀鴎・水木会合同後の最高点記録。徳永正裕さんの「ただいまの声木犀の香を運び」が9点で次席。三席は植村博明さんの「車椅子そつと追い越す花野道」の7点句。続く5点句は、大倉悌志郎さんの「縄電車気ままに停まる花野かな」、大沢反平さんの「牛追ひの峠越えれば大花野」、正裕さんの「はやぶさのネジ生む夜なべ町工場」、吉野光久さんの「その先は花野につづく線路跡」の4句が並んだ。4点句は11句、3点句9句。

日経俳句会の創設者である故村田英尾先生の息女の村田佳代さんが入会され、この日は手始めに選句に加わった。

兼題別の高点句(3点以上)は次の通り。

 

「夜なべ」

はやぶさのネジ生む夜なべ町工場      徳永 正裕

溜息や夜なべして書く顛末書        嵐田 啓明

糸通し頼みし祖母の夜なべかな       井上庄一郎

夜なべの灯ビルに積み上げ副都心      佐々木 碩

夜なべ終へ坦々麺の心地かな        澤井 二堂

宿題や夜なべの母のそばにゐて       高石 昌魚

度の合はぬ眼鏡外して夜なべかな      高瀬 大虫

縄を綯ふ夜なべの昔資料館         徳永 正裕

夜なべして機織る影の鶴に似て       大倉悌志郎

刺し子縫ふひと針ずつの夜なべかな     田中 頼子

母夜なべまるく七人家族かな        堤 てる夫

夜なべする母の面影昭和の日        直井  正

コンビニのプリン夜なべの小休止      星川 佳子

 

「花野」

雲の行くその影も行く大花野        佐々木 碩

車椅子そつと追ひ越す花野道        植村 博明

縄電車気ままに停まる花野かな       大倉悌志郎

牛追ひの峠越えれば大花野         大沢 反平

その先は花野につづく線路跡        吉野 光久

難聴の友の福耳花野風           嵐田 啓明

一坪に七種植えてわが花野         大澤 水牛

村あげて花野の中の草競馬         大熊 万歩

花野さきバスの小さく通りけり       井上庄一郎

当てどなくさ迷ふがよし大花野       大倉悌志郎

花野往く芭蕉と曾良の古りし杖       藤野十三妹

 

「雑詠」

ただいまの声木犀の香を運び        徳永 正裕

ドーナツを片目でのぞき秋高し       星川 佳子

蟷螂の鎌をもたげて轢かれけり       嵐田 啓明

 

参加者(出席)嵐田啓明、池村実千代、井上庄一郎、今泉恂之介、大倉悌志郎、大澤水牛、岡田臣弘、高橋淳、来間紘、佐々木碩、澤井二堂、杉山智宥、鈴木好夫、高石昌魚、高瀬大虫、田中頼子、堤てる夫、徳永正裕、直井正、流合研士郎、廣上正市、星川佳子、横井定利(選句のみ参加)村田佳代(投句参加)植村博明、大石柏人、大熊万歩、大沢反平、大下綾子、大平睦子、金田青水、久保田操、野田冷峰、藤野十三妹、山田明美、吉野光久

(まとめ・堤てる夫)

 

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第85回番町喜楽会例会

番町喜楽会は10月6日(土)午後1時から千代田区二番町の番町ハイム会議室で第85回例会を開催した。兼題は「霧(きり)」と「蟋蟀(こおろぎ)」で、雑詠を含む投句総数は100句ちょうど、20人のメンバーから投句があった。7句選句の句会の結果、今泉而雲さんの「牛の背のひしめき行くや霧の中」が9点という記録的な得点でトップ。次席は5点で、高井百子さんの「名月に駆け足で去る嵐かな」「秋灯り母に戻りて帰路急ぐ」の2句に、玉田春陽子さんの「本棚の不揃ひの闇ちちろ鳴く」の計3句。

次いで4点句が5句。山口斗詩子さんの「尾灯追ふ霧の箱根路九十九折り」「朋友の焼きたる皿に初秋刀魚」の2句と、大澤水牛さんの「天高し焼味噌で食ふ伊那の蕎麦」、須藤光迷さんの「就活に案山子も村を出るといふ」、春陽子さんの「朝霧や用なき下駄の横並び」が並んだ。以下、3点7句、2点17句、1点22句。兼題別の高点句(3点以上)は次の通り。

「霧」

牛の背のひしめき行くや霧の中   今泉 而雲

朝霧や用なき下駄の横並び     玉田春陽子

尾灯追ふ霧の箱根路九十九折り   山口斗詩子

濃淡の霧薄墨の絵となりぬ     野田 冷峰

上る霧留まる霧あり霧の中     野見山恵子

病院の結果待つ間や霧深し     三好 六甫

「蟋蟀」

本棚の不揃ひの闇ちちろ鳴く    玉田春陽子

認知力壊れゆく友ちちろ鳴く    井上 啓一

酔ひざめの水の旨さやちちろ鳴く  玉田春陽子

廃船の主を気取りてちちろ鳴く   三好 六甫

「雑詠」

名月に駆け足で去る嵐かな     高井 百子

秋灯り母に戻りて帰路急ぐ     高井 百子

天高し焼味噌で食ふ伊那の蕎麦   大澤 水牛

就活に案山子も村を出るといふ   須藤 光迷

朋友の焼きたる皿に初秋刀魚    山口斗詩子

曼珠沙華十日遅れて庭の隅     大澤 水牛

参加者(出席)大澤水牛、加沼鬼一、笹本塘外、須藤光迷、高井百子、高瀬大虫、高橋楓子、玉田春陽子、堤てる夫、徳永正裕、野見山恵子、星川佳子、前島巌水、三好六甫(投句参加)井上啓一、今泉而雲、岩沢克恵、谷川水馬、野田冷峰、山口斗詩子

(まとめ・堤てる夫)

 

 

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日経俳句会第112回例会

日経俳句会は9月19日(水)午後6時半から、鎌倉橋交差点傍の日経第2別館8階会議室で第112回例会を開いた。兼題は「居待月(いまちづき)」「新米(しんまい)」で参加者は36人(うち投句参加13人)、投句総数は168句に上った。7句選句で進めた結果、最高は、横井定利さんの「居待月去年と同じ飲み薬」の7点だった。次席は5点で、「子の便りくりかへし読む居待月 池村実千代」、「悠然と勝碁確かめ居待月 高石昌魚」、「居待月竹の葉ずれを聴いてをり 星川佳子」、「つつがなき予後疑はず居待月 吉野光久」、「神仏に深く一礼今年米 嵐田啓明」、「荒れ果てし棚田にすくと鶏頭花 田中頼子」と6句。次いで4点が10句、3点11句。兼題別の高点句(3点以上)は次の通り。

「居待月」

居待月去年と同じ飲み薬     横井 定利

子の便りくりかへし読む居待月  池村実千代

悠然と勝碁確かめ居待月     高石 昌魚

居待月竹の葉ずれを聴いてをり  星川 佳子

つつがなき予後疑はず居待月   吉野 光久

居待月伊那のおやきを温めて   今泉恂之介

移りゆく時を眺める居待月    藤野十三妹

母と子の二人綾取り居待月    今泉恂之介

居待月夫の靴音猫の声      大下 綾子

遠ざかる猫の鈴の音居待月    田中 頼子

来ぬ人やミッドタウンの居待月  流合研士郎

人恋しより痩せ始め居待月    星川 佳子

「新米」

神仏に深く一礼今年米      嵐田 啓明

新米を掬ひて厚きたなごころ   今泉恂之介

新米や夫婦の重い口を開け    植村 博明

越後よりどすんと届く今年米   佐々木 碩

絹のごと新米掌よりこぼれけり  大倉悌志郎

幸せやたくあんで食ふ今年米   大倉悌志郎

四つ這ひで草取りたりと今年米  大澤 水牛

新米の文字に赤丸弁当屋     杉山 智宥

くぼませて卵をのせて今年米   星川 佳子

新米を勇んで炊くやひとり膳   水口 弥生

「雑詠」

荒れ果てし棚田にすくと鶏頭花  田中 頼子

度忘れの名前増えたり衣被    大熊 万歩

鰡飛んで尺余の宙に水光る    大沢 反平

谷あひの所を得たり蕎麦の花   堤 てる夫

往還を真一文字に鬼やんま    吉野 光久

伊那谷は大きく晴れて蕎麦の花  吉野 光久

 

参加者(出席)井上庄一郎、今泉恂之介、植村博明、大倉悌志郎、大澤水牛、大沢反平、大平睦子、来間紘、佐々木碩、澤井二堂、杉山智宥、鈴木好夫、須藤光迷、高石昌魚、高瀬大虫、高橋淳、堤てる夫、徳永正裕、直井正、流合研士郎、廣上正市、星川佳子、横井定利(投句参加)嵐田啓明、池村実千代、大熊万歩、大下綾子、加藤明男、金田青水、久保田操、田中頼子、野田冷峰、藤野十三妹、水口弥生、山田明美、吉野光久

(まとめ・堤てる夫)

 

 

 

 

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酔吟会第100回例会を開催

酔吟会の平成24年度第5回例会が9月8日(土)午後1時から鎌倉橋交差点そばの日経第二別館で開かれた。平成8年(1996年)5月18日に第1回句会を開いて、この日が記念すべき100回目の句会となった。日経社会部OBの句会として原文鶴主催、大留黃鶴幹事長以下12名で発足、国内各地に吟行、中国へも二回出かけるなど活発な活動を繰り広げた。その後、日経俳句会の傘下に入り門戸を広げ、会員が20数名に増加したが、その間、広田耕書(耕司)、立川芳石(芳峯)、大平昭生(昭)、山口詩朗(志朗)の4氏が亡くなるという不幸があった。現在は会員20名(自由会員2名、名誉会員1名含む)を擁している。

9月になったとはいえ東京はまだ残暑の続く蒸し暑い日の句会であった。しかし出席者は11人と、最近ではかなり多い人数となった。この数日前有志で出かけた伊那吟行で星川さんが買い求めた地酒「仙醸」をお土産に持ち込んで下さったのをこれ幸いと、皆で見事100回に到達した酔吟会の今後と一同の健康を祈願して乾杯した。

出席者は今泉恂之介、大澤水牛、大沢反平、岡田臣弘、片野涸魚、金指正風、澤井二堂、堤てる夫、徳永正裕、星川佳子、藤村詠悟の11氏。投句参加は大石拍人、吉野光久の2氏。

兼題は「秋刀魚」と「爽やか」、投句5句、選句6句で句会を行った結果、最高点は4点句で4句、3点が3句、2点12句、1点14句となった。3点以上獲得した句は次の通り。

「秋刀魚」

さんま食ふ器用無器用おのずから    金指 正風

さんま焼き尾頭に分け夫婦たり     今泉恂之介

「爽やか」

爽やかや伊那谷へ落つ風の道      大澤 水牛

爽やかに風の青さや千曲川       大沢 反平

爽やかや牛と目の合ふ牧の朝      吉野 光久

「雑詠」

朴の葉の日影は広しバスを待つ     澤井 二堂

思うことぱちんと閉じて秋扇      今泉恂之介

(澤井二堂記録)

 

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番町喜楽会第84回例会

番町喜楽会は9月3日(月)午後6時半から千代田区九段生涯学習館で第84回例会を開催した。兼題は「野分(のわき)」と「蜩(ひぐらし)」で、雑詠を含めて投句総数は95句、6句選句の句会の結果、最高は須藤光迷さんの7点句「一病を得て蜩の声ふかし」。次席は高瀬大虫さんの「蜩の尾瀬を渡りて風となり」の5点句。三席は4点句で、今泉而雲さんの「こんな日にと言はれて出でし野分中」と、谷川水馬さんの「尻高く伸びする犬や野分晴れ」の2句。以下、3点句は9句、2点14句、1点26句。兼題別の高点句(3点以上)は次の通り。

「野分」

こんな日にと言はれて出でし野分中   今泉 而雲

尻高く伸びする犬や野分晴れ      谷川 水馬

また一人居間に集まる野分かな     笹本 塘外

野分晴ひたと墨打つ宮大工       玉田春陽子

野分過ぐ気うつ薄紙はぐやうに     山口斗詩子

「蜩」

一病をえて蜩の声ふかし        須藤 光迷

蜩の尾瀬を渡りて風となり       高瀬 大虫

蜩や遊び疲れし子等に鳴き       笹本 塘外

蜩や合わせ鏡のなかの顔        高橋 楓子

蜩に後期高齢共振す          前島 巌水

「雑詠」

世の役に立たぬ男と糸瓜かな      今泉 而雲

手旗もて道示さるる残暑かな      今泉 而雲

今朝の秋窓に綿雲ひとつ来て      笹本 塘外

 

参加者(出席)井上啓一、今泉而雲、大澤水牛、笹本塘外、須藤光迷、高瀬大虫、高橋楓子、谷川水馬、玉田春陽子、堤てる夫、徳永正裕、星川佳子、前島巌水、三好六甫(投句参加)岩沢克恵、加沼鬼一、高井百子、野田冷峰、山口斗詩子(まとめ・堤てる夫)

 

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伊那高遠吟行─井月を訊ねて

明治初期伊那谷の村々を漂泊した謎の俳人井上井月が最近にわかにブームになっている。双牛舎代表今泉恂之介さんも「子規は何を葬ったのか─空白の俳句史百年」(新潮選書)の中で井月を取り上げ、ブームの一翼を担った。

九月一日、長野県伊那市高遠で地元教育委員会や井月顕彰会などの主催により今泉さんの講演会「子規は井月を葬ったのか」が行われた。これの傍聴を兼ねて、日経俳句会、番町喜楽会の有志が一泊二日で伊那市の井月終焉の地などを訪れた。井月の墓や句碑、井月・山頭火交流のモニュメントなどを巡り、地元の井月研究家の方々と話し合い、さらに高遠城址や江戸時代大奥の老女で当地に流された絵島の所縁の場所などを散策、分杭峠のゼロ磁場体験など句材盛りだくさんの吟行となった。

帰京後いつものようにメール句会を挙行した。五句選句で天五点、地三点、人二点、入選一点で計算した結果、最高点は杉山智宥さんの「秋に来て語る高遠桜かな」が十四点だった。次席は徳永正裕さんの「ほかいびと秋蝶となる手向け酒」の十点。三席は八点、大澤水牛さんの「伊那谷の稲穂分けゆく消防車」「をみなえし揺れて絵島の墓詣」の二句となった。

吟行参加者十二人の人気を呼んだ句は以下の通り。

 

秋風の除幕式なり橋の上      今泉恂之介

御老女の囲屋敷や秋の風      大澤 水牛

井月が人と秋をよぶ師の語り    大平 睦子

三峰川を守る堤の秋茜       澤井 二堂

秋に来て語る高遠桜かな      杉山 智宥

蓮華寺へ急ぐ絵島に秋の風     須藤 光迷

猪弁を喰へば井月甦り       高瀬 大虫

句碑を説く翁がうへに赤とんぼ   谷川 水馬

伊那の秋呉服屋二の日二割引    玉田春陽子

伊那人の井月フィーバー秋あつし  堤 てる夫

ほかいびと秋蝶となる手向け酒   徳永 正裕

ゼロ磁場の神妙な顔秋の風     星川 佳子

(まとめ 堤てる夫)

 

 

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日経俳句会第111回例会

日経俳句会の銀鴎会・水木会が大合同して2度目の例会(通算111回)が8月15日(水)午後6時半から鎌倉橋交差点傍の日経第2別館会議室で開かれた。終戦記念日に暑熱を衝いて参集したのは22人、欠席投句11人と合わせ合計33会員から159句の投句があった。

兼題は「盆(ぼん)」「朝顔(あさがお)」で7句選句の句会の結果、最高の11点を集めたのは池村実千代さんの「髪束ね盆のあひだは嫁となる」の句。大型例会にして弾けた大型得点だった。次席も10点で嵐田啓明さんの「燐寸擦るわが手の老いや盆用意」、三席9点の佐々木碩さんの「朝顔のまだ見ぬ色に水をやる」。次いで廣上正市さんの6点句「表札は昔のままに魂迎」、岡田臣弘さんの「空襲の修羅よぎりけり川花火」が5点句と続いた。以下、4点5句、3点10句、2点22句、1点46句。

兼題別の高点句(3点以上)は次の通り。

「盆」

髪束ね盆のあひだは嫁となる    池村実千代

燐寸擦るわが手の老いや盆用意   嵐田 啓明

表札は昔のままに魂迎       廣上 正市

十九で散つた兵士の帰る盆     植村 博明

都心にも鳥がさえずる盆休み    流合研士郎

伊江島は空母のかたち魂祭り    高瀬 大虫

木村家のあんぱんとお茶盆用意   横井 定利

皮切りはエレキサウンド盆櫓    吉野 光久

「朝顔」

朝顔のまだ見ぬ色に水をやる    佐々木 碩

朝顔を数へて今日も始まりぬ    佐々木 碩

朝顔や早起き苦もなし得もなし   杉山 智宥

朝顔や今日はきのふの繰り返し   大澤 水牛

朝顔の蔓の我がまま許しけり    澤井 二堂

朝顔の蔓をたどれば空高し     高橋  淳

朝顔や母の色なる濃紫       廣上 正市

「雑詠」

空襲の修羅よぎりけり川花火    岡田 臣弘

凉新た五輪敗者の笑顔かな     徳永 正裕

渓音の間に間に遠き秋の蝉     大沢 反平

抜け殻も声を合はすか蝉時雨    澤井 二堂

七夕や絶えて久しき願ひごと    吉野 光久

 

参加者(出席)嵐田啓明、井上庄一郎、今泉恂之介、植村博明、岡田臣弘、大澤水牛、大沢反平、来間紘、澤井二堂、杉山智宥、鈴木好夫、須藤光迷、高石昌魚、高瀬大虫、高橋淳、堤てる夫、徳永正裕、直井正、流合研士郎、廣上正市、星川佳子、横井定利(投句参加)池村実千代、大熊万歩、大平睦子、加藤明男、金田青水、久保田操、佐々木碩、田中頼子、水口弥生、山田明美、吉野光久             (まとめ・堤てる夫)

 

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番町喜楽会第83回例会

番町喜楽会は8月4日(土)午後1時から千代田区二番町の番町ハイム会議室で第83回例会を開いた。兼題は「夏の果(なつのはて)」と「滝(たき)」で、出席13人、投句参加7人から5句づつ投句、計100句について7句選句で句会を進めた。その結果、最高は5点で4句、次席4点6句、三席3点が10句。以下、2点10句、1点28句。

5点句は「滝行や茶髪の背中に喝の文字 谷川水馬」「ある筈の始めと終り蟻の列 野見山恵子」「絵巻物ひもとくやうに赤目滝 星川佳子」「盆の月貝殻といふ死のかたち 三好六甫」の4句。

4点句は「行く夏や鉄路はるかな赤手旗 今泉而雲」「止めどなき告白に似て滝落ちる 徳永正裕」「変えられぬ己笑ひて夏の果 星川佳子」の3句に、笹本塘外作の「半纏の並び干されて夏の果」「水打てば土黒々と息つけり」「鉾追うて四条は長く八坂まで」の3句が入った。この例会に故山口詩朗氏夫人の斗詩子さんがメールで投句・選句参加した。

兼題別の高点句(3点以上)は次の通り。

「夏の果」

行く夏や鉄路はるかな赤手旗      今泉 而雲

半纏の並び干されて夏の果       笹本 塘外

変えられぬ己笑ひて夏の果       星川 佳子

図書館の慣れたる道や夏終る      岩沢 克恵

果つるともみえぬ照りやう夏の果    大澤 水牛

鬼子母神駄菓子屋の婆夏の果      高井 百子

だんまりの八百屋のおやじ夏の果    高橋 楓子

ゆく夏やつるりと擦るえびす腹     谷川 水馬

吾子の眼の大人びにけり夏終る     徳永 正裕

「滝」

滝行や茶髪の背中に喝の文字      谷川 水馬

絵巻物ひもとくやうに赤目滝      星川 佳子

止めどなき告白に似て滝落ちる     徳永 正裕

尾根道を過ぎて飛瀑の道に入る     加沼 鬼一

滝音を入れて二人のカプチーノ     玉田春陽子

 

「雑詠」

ある筈の始めと終り蟻の列       野見山恵子

盆の月貝殻といふ死のかたち      三好 六甫

水打てば土黒々と息つけり       笹本 塘外

鉾追ひて四条は長く八坂まで      笹本 塘外

上階の送り火の鈴闇の中        岩沢 克恵

土用丑茄子の蒲焼ございます      堤 てる夫

 

参加者(出席)今泉而雲、大澤水牛、笹本塘外 高井百子、高瀬大虫、高橋楓子、谷川水馬、玉田春陽子、堤てる夫、野田冷峰、野見山恵子、前島巌水、三好六甫(投句参加)井上啓一、岩沢克恵、加沼鬼一、須藤光迷、徳永正裕、星川佳子、山口斗詩子

(まとめ 堤てる夫)

 

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