平成25年英尾先生墓参桜吟行

村田英尾先生の眠る都営多摩霊園に詣で、隣接の多摩森林科学園で桜狩する日経俳句会恒例行事が4月14日(日)に行われた。麗かな日和に恵まれた多摩丘陵に集ったのは、大澤水牛幹事長を筆頭に、今泉恂之介、田中頼子、高瀬大虫、野田冷峰、徳永正裕、杉山智宥、堤てる夫に、日経俳句会に入会して初参加の村田佳代の計9人。僧籍にある頼子さんに従って読経、お参りをした。

英尾先生没後3周年の平成20年4月に始まった行事で今年が6回目。見慣れた桜保存林ではあるが、毎年、花の盛りは微妙にずれ、今年は染井吉野の姿はなく、遅咲きの八重桜を楽しむだけだった。それでも新しい発見はあるもので、メール句会の作品には新発見や工夫がみられた。

3句選句で「天」5点、「地」3点、「人」2点で計算した結果、高瀬大虫さんの「花人となりて楊貴妃訪ねけり」が13点、野田冷峰さんの「愛娘桜愛でつつ墓参り」が12点、今泉恂之介さんの「花の上渡りゆくなり花吹雪」と徳永正裕さんの「そよ風の花の山行く乳母車」が10点と都合4句が二けた得点した。メール句会で好評を博した参加者各人の句は以下の通り。

 

花の上渡りゆくなり花吹雪    今泉恂之介

水路曲げ外来黄菖蒲隔離策    大澤 水牛

目の端に他人の弁当花吹雪    杉山 智宥

花人となりて楊貴妃訪ねけり   高瀬 大虫

むささびの見下ろしている桜狩  田中 頼子

駅までの街路の桜名残りかな   堤 てる夫

そよ風の花の山行く乳母車    徳永 正裕

愛娘桜愛でつつ墓参り      野田 冷峰

花見には卵焼きよと箸を割る   村田 佳代

結婚を報告墓前にすみれ咲く    同

 

 

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日経俳句会第118回例会

日経俳句会は4月16日(火)午後6時半から鎌倉橋交差点傍の日経第二別館会議室で、平成25年第4回例会(通算118回)を開いた。首都圏の桜はソメイヨシノが盛りを過ぎて八重桜の目立つ頃となった。兼題は「春惜しむ(はるおしむ)」「柳(やなぎ)」で、投句総数は180句。出席者は21人、投句参加が16人。この日、新入会員の北沢淳氏(日経産業地域研究所勤務)が初参加、早速投句、選句にデビューした。

選句7句で句会を進めた結果、最高は大倉悌志郎さんの「春惜しむ一日切符で荒川線」の8点。次席は6点で、大熊万歩さんの「花の名を一つ覚えて春惜しむ」、田中頼子さんの「糸柳やはらかく眉ひきにけり」、水口弥生さんの「オルガンの惜春の音や奏楽堂」の3句が並んだ。続く5点は、野田冷峰さんの「一行の看護日誌や春惜しむ」「その昔川なる土手の柳かな」の2句と、大下綾子さんの「カーテンを洗ひて干して春惜しむ」、吉野光久さんの「芽柳や雨のしづくのうすみどり」の計4句。次いで4点9句、3点12句で、3点以上の高点句が29句も出た。兼題別の高点句(3点以上)は次の通り。

 

「春惜しむ」

春惜しむ一日切符で荒川線    大倉悌志郎

花の名を一つ覚えて春惜しむ   大熊 万歩

オルガンの惜春の音や奏楽堂   水口 弥生

カーテンを洗ひて干して春惜しむ 大下 綾子

一行の看護日誌や春惜しむ    野田 冷峰

春惜しむわが道を行く万歩計   井上庄一郎

遺句集に栞はさみて春惜しむ   今泉恂之介

春惜しむ五人になりし同級生   大澤 水牛

齢に合ふ歩数を重ね春惜しむ   高石 昌魚

ふと妻の手に触れ春を惜しみけり 嵐田 啓明

何したと記憶も残らぬ春惜しみ  来間  紘

春惜しむ銀座にどつこい三州屋  杉山 智宥

知床に百花の春を惜しみけり   徳永 正裕

老舗消ゆ神田界隈春惜しむ    水口 弥生

 

「柳」

糸柳やはらかく眉引きにけり   田中 頼子

その昔川なる土手の柳かな    野田 冷峰

芽柳や雨のしづくのうすみどり  吉野 光久

一塁の柳に駈けしゴロ野球    今泉恂之介

閉店の知らせ小さき柳かな    横井 定利

夕ざれて屋根掃く柳蔵の町    水口 弥生

耳遠く柳に風の会話かな     大石 柏人

柳かげ掻揚げ橋善ありし処    大澤 水牛

いにしへの蘇州運河や柳絮舞ふ  岡田 臣弘

新調の眼鏡にゆらぐ青柳     久保田 操

皇宮とビル街分かつ柳かな    徳永 正裕

 

「雑詠」

春深し電車が地下に消えし街   杉山 智宥

故郷なる川をたがはず上り鮎   吉野 光久

さざ波や春過ぎてゆく池の上   今泉恂之介

初花や父退院の日の決まる    大倉悌志郎

 

参加者(出席)池村実千代、今泉恂之介、植村博明、大澤水牛、大平睦子、岡田臣弘、北沢淳、来間紘、佐々木碩、杉山智宥、高石昌魚、高橋淳、田中頼子、堤てる夫、徳永正裕、直井正、野田冷峰、廣上正市、星川佳子、山田明美、横井定利(投句参加)嵐田啓明、井上庄一郎、大石柏人、大熊万歩、大倉悌志郎、大沢反平、大下綾子、加藤明男、金田青水、久保田操、澤井二堂、須藤光迷、高瀬大虫、藤野十三妹、水口弥生、吉野光久

(まとめ・堤てる夫)

 

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第23回三四郎句会

第23回三四郎句会が4月11日、東京・神田錦町の宗保第二ビル内で行われた。会員12人中、11人が出席、1人が欠席投句だった。兼題は花(桜)と朧。「散るたびに覚悟を迫る桜かな」(篠田義彦)、「花筏流れに乗って模様替え」(渡辺信)、「薪はぜシテまかり出ておぼろ月」(河村有弘)が上位の4点で並んだ。次回は6月20日の予定。

(まとめ・今泉恂之介)

 

 

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番町喜楽会第91回例会

番町喜楽会は4月6日(土)午後1時から千代田区二番町の番町ハイム会議室で平成25年第4回例会(通算91回)を開いた。兼題は「桜餅(さくらもち)」「長閑(のどか)」で、欠席投句も含め会員19人から95句の投句があった。

春の暴れ低気圧接近で雲行きあやしい土曜日の昼下がり、会場に姿を見せたのは12人、選句6句(欠席選句は各5句)で句会を進めた結果、最高は9点で大澤水牛さんの「縁談を笑ひ飛ばして桜餅」の1句。水牛さんの句作裏話をきっかけに「最近縁談事情」で合評会が弾んだ。次席は徳永正裕さんの「桜餅たちまち妻の京言葉」の7点句、3席は星川佳子さんの「吹きあぐる風の形に桜散る」で6点句。

5点句は谷川水馬さんの「曳かれゆく浚渫船や湾のどか」、4点句が今泉而雲さんの「茶を淹れて男やもめの桜もち」と続いた。以下、3点は6句、2点13句、1点23句。兼題別の高点句(3点以上)は次の通り。

「桜餅」

縁談を笑ひ飛ばして桜餅      大澤 水牛

桜餅たちまち妻の京言葉      徳永 正裕

茶を淹れて男やもめの桜もち    今泉 而雲

桜餅おさなき恋の話など      須藤 光迷

「長閑」

曳かれゆく浚渫船や湾のどか    谷川 水馬

長閑さや鯉の昼寝に付き合ひて   高瀬 大虫

長閑なるこのひと時のカフェオ―レ 高橋 楓子

のどけしや不動の索もたゆむほど  加沼 鬼一

のどけしや足だけ見える乳母車   高井 百子

「雑詠」

吹きあぐる風の形に桜散る     星川 佳子

相続や田園調布の老桜       高瀬 大虫

 

参加者(出席)井上啓一、今泉而雲、大澤水牛、須藤光迷、高井百子、高瀬大虫、田中白山、谷川水馬、玉田春陽子、堤てる夫、徳永正裕、星川佳子(投句参加)岩沢克恵、加沼鬼一、笹本塘外、高橋楓子、野田冷峰、前島巌水、三好六甫  (まとめ・堤てる夫)

 

 

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日経俳句会第117回例会

日経俳句会は3月19日(火)午後6時半から鎌倉橋交差点傍の日経第二別館8階会議室で、平成25年第3回例会(通算117回)を開いた。兼題は「余寒(よかん)」「桃の花(もものはな)」、出席者は26人で会議室は「ほぼ満席」、投句参加10人の合計36人から170句の投句があった。

7句選句の結果、大熊万歩さんの「仁王像さらに目をむく余寒かな」が11点を集めて最高点。次席は吉野光久さんの「点滴の管のもつるる余寒かな」が9点、辛い治療にめげない頑張りが今月も続く。三席は佐々木碩さん「一湾の風に骨透く干鰈」の8点句。続く7点句は嵐田啓明さんの「石段に鳩吹き溜まる余寒かな」で、啓明さんはこのほか「大きめの産衣は木綿桃の花」で6点を獲得し、4点句、3点句もあり、投句5句中4句が高点句という快挙。

啓明さん以外の6点句は、植村博明さんの「金貸した男と出会ふ余寒かな」と、星川佳子さんの「しゅるしゅると帯結ぶ音桃の花」の計3句。5点句には佳子さんの「尼さんによく会ふ日なり春の風」と、佐々木碩さんの「湯煙りの透きとおりたる余寒かな」、須藤光迷さんの「肩車して春風の中を行く」の合計3句。以下、4点6句、3点10句、2点24句、1点12句。兼題別の高点句(3点以上)は次の通り。

「余寒」

仁王像さらに目をむく余寒かな   大熊 万歩

点滴の管のもつるる余寒かな    吉野 光久

石段に鳩吹き溜まる余寒かな    嵐田 啓明

金貸した男と出会ふ余寒かな    植村 博明

湯煙りの透きとおりたる余寒かな  佐々木 碩

丸刈りの頭を撫でる余寒かな    加藤 明男

キリン舎の余寒の空に首ばかり   徳永 正裕

梵鐘の音地に沈む余寒かな     徳永 正裕

裸馬余寒の麓に草食めり      嵐田 啓明

神殿の軋む廊下や余寒あり     加藤 明男

二羽の鳩微動だにせぬ余寒かな   久保田 操

カラ元気伝わる電話余寒かな    杉山 智宥

「桃の花」

大きめの産衣は木綿桃の花     嵐田 啓明

しゅるしゅると帯結ぶ音桃の花   星川 佳子

上履きに赤の縁取り桃の花     嵐田 啓明

桃のはな弥勒菩薩の指の先     加藤 明男

もめごとはなしにしようね桃の花  池村実千代

山裾の日に日に染まる桃の花    久保田 操

育爺と呼ばれて嬉し桃の花     須藤 光迷

里山の地蔵の笑顔桃の花      高石 昌魚

控え目に泣く子なりけり桃の花   廣上 正市

「雑詠」

一湾の風に骨透く干鰈       佐々木 碩

肩車して春風の中を行く      須藤 光迷

尼さんによく会ふ日なり春の風   星川 佳子

野焼の火長門石見の国ざかひ    大澤 水牛

月朧萬年橋に猫群れて       横井 定利

 

参加者(出席)嵐田啓明、池村実千代、井上庄一郎、今泉恂之介、植村博明、大熊万歩、大倉悌志郎、大澤水牛、大沢反平、大平睦子、岡田臣弘、来間紘、佐々木碩、杉山智宥、須藤光迷、高石昌魚、高瀬大虫、堤てる夫、徳永正裕、直井正、野田冷峰、廣上正市、藤野十三妹、星川佳子、山田明美、横井定利(投句参加)和泉田守、大石柏人、加藤明男、金田青水、久保田操、澤井二堂、高橋淳、田中頼子、村田佳代、吉野光久

(まとめ・堤てる夫)

 

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長門石見吟行

日経俳句会と番町喜楽会の合同吟行として三月十日から十二日まで二泊三日で山口、萩、津和野を回った。山口県立大学教授だった高瀬大虫さんが幹事となり、勝手知ったる山口市の湯田温泉を皮切りに、大内・毛利氏の旧跡、雪舟ゆかりの寺や庭、幕末明治維新の志士たちの旧宅、史跡などを巡遊、これが名残という玄界灘のとらふぐを賞味し、世界一の椿の原生林を巡るなど充実した吟行だった。

忙しい人たちばかりの俳句会だから「二泊」となると途端に参加者が少なくなる。それでも大虫幹事をはじめ、須藤光迷、堤てる夫、徳永正裕、高井百子、谷川水馬、玉田春陽子、大澤水牛の八名が参加した。高井、谷川、玉田三氏は番町喜楽会のメンバーで、残る五人は両方の句会を掛け持ちしている。とにかく気心の知れた仲間だけに和気藹々の俳句旅となり、絶品菜種河豚に感激して連句まで巻き上げてしまった。

帰京後に行ったメール句会には吟行に参加できなかった今泉而雲氏にも選句に加わってもらった。「三句以上いくらでも投句してよろしい」という妙な縛りを設けたところ、一人が八句と頑張ったが、七人が五句投句の常識的な範囲におさまった。七句選の結果最高は五点で、「芽柳や鯉は頬寄せ動かざる」という須藤光迷さんの津和野のメタボ鯉夫婦(?)を詠んだ句と、谷川水馬さんの「連衆の寄り目で掬ふ素魚かな」という萩シーマートでのシロウオ躍り食いに狂奔する一行を詠んだ句が選ばれた。その他人気をあつめた句は以下の通り。

《山口市にて》

菜種河豚発句品良く半歌仙    谷川 水馬

仕舞ふぐ熟女ふたりの箸使ひ   徳永 正裕

猿も訪ふ雲谷庵や紫木蓮     須藤 光迷

春北風の廃寺石垣鳴らしけり   大澤 水牛

春寒しむかし大寺の崩れ垣    徳永 正裕

《萩》

利休の忌萩の七化けてふを買ふ  谷川 水馬

槍さして若布採る人萩の海    高井 百子

扁額に溢れる明治梅の花     堤 てる夫

萩湾へなだるる椿二万本     大澤 水牛

海女の桶すこし流れぬ春の潮   高瀬 大虫

《津和野で》

注連縄を飾る駅舎や山笑ふ    玉田春陽子

 

 

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酔吟会第103回例会を開催

酔吟会の平成25年度第2回例会(通算103回)は、3月9日(土)午後1時から、鎌倉橋交差点そばの日経第二別館8階会議室で開かれた。

啓蟄の日を5日に迎え、3月も第2土曜日ともなるとだいぶ暖かい日和になる。

出席者は今泉恂之介、大澤水牛、大沢反平、岡田臣弘、片野涸魚、久保田操、澤井二堂、堤てる夫、徳永正裕、藤村詠悟、星川佳子の十一名。投句参加は吉野光久、欠席は原文鶴、大石拍人、金指正風、黒須烏幸、田村舟平、野田冷峰、藤野十三妹の7名だった。

兼題は「春愁」と「地虫穴を出づ」、投句5句、選句6句で句会を行った結果、最高点は5点で1句、次いで4点も1句、3点が6句、2点が10句、1点が16句となった。兼題別の3点以上の句は次の通り。

「春愁」

追ふ針に逃げる血管春愁ひ       吉野 光久

春愁を水に流して夕支度        久保田 操

釣り堀に春愁並ぶ背中かな       今泉恂之介

「地虫穴を出づ」

とかげ出づ人工芝にとまどひつ     大澤 水牛

「雑詠」

鳥帰るどこへも行けぬ氷川丸      吉野 光久

春昼や眠りをるかに観覧車       星川 佳子

春なれや笑ふは薬寄席ばやし      徳永 正裕

朝刊の届きし音や春の雪        片野 涸魚

(まとめ・澤井二堂)

 

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番町喜楽会第90回例会を開催

番町喜楽会は3月4日(月)午後6時半から千代田区・九段生涯学習館で、平成25年第3回例会(通算90回)を開いた。兼題は「日永(ひなが)」と「囀(さえずり)」で、投句参加6人を含めて19人から95句が寄せられた。

6句選句で句会を進めた結果、最高は田中白山さんの「囀や人は静かに恋をせり」の7点句。次席5点は3句が並び、その中に白山さんの「挨拶の一つに春の寒さかな」の句が入り、ワン・ツー・フィニッシュの「白山デー」となった。残る5点句2句は岩沢克恵さんの「雨脚の絹糸となり雛納め」と玉田春陽子さんの「永き日や目無し達磨の薄ぼこり」だった。

続く4点は徳永正裕さんの「昼席のはねて日永の上野山」の1句のみ。3点句は井上啓一さんの「永き日に卵を二つ生みにけり」、須藤光迷さんの「春光やアベノミクスという魔球」、星川佳子さんの「廃屋のやうな道具屋暮遅し」の3句。今回は3点以上の高点句が8句にとどまり、2点12句、1点32句と分散した。

参加者(出席)今泉而雲、大澤水牛、笹本塘外、須藤光迷、高井百子、高瀬大虫、田中白山、谷川水馬、堤てる夫、徳永正裕、星川佳子、前島巌水(投句参加)井上啓一、岩沢克恵、高橋楓子、野田冷峰、三好六甫、山口斗詩子      (まとめ・堤てる夫)

 

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日経俳句会月報100号記念「双牛百里の会」を開催

日経俳句会は月報100号発行を機会に長年会を引っ張って来られた大澤水牛・今泉恂之介両先生に感謝の気持ちを表そうと謝恩の会を開いた。3月1日夕刻「双牛百里の会」と銘打って、東京・大手町のアーバンネット東京會舘に句友35人が集い、両主賓を囲んで和やかなひとときを過ごした。

高橋淳会長の発案で、会の機関誌である「日経俳句会報」(平成17年6月の創刊号から24年9月の第15号まで)に載った両先生の作品から「私の好きな一句」を会員に募った。これには40人が寄稿し、この会合に花を添える冊子にまとめた。

会は高橋現会長、廣上正市前会長の司会進行で幕を開けた。廣上前会長は「故村田英尾先生が言われたように、この会は皆対等にものを言う自由な会で、それを受けお二人とも宗匠と言われるのを拒まれた。しかし今日は宗匠の気分で気持ちよくお過ごしいただきたい」と挨拶。最長老・井上庄一郎さんから「日経俳句会の活動を支えてきたのはお二人の力以外のなにものでもない。個性の違う二人のコンビを選んだ村田先生の慧眼を改めて思う。ご両人ともいつまでも頑張ってください」との乾杯の発声があり、その後、お酒と料理を楽しみながら出席者による「私の一句」の説明が次々と始まった。

「私の一句」は大勢の選句者があったにもかかわらず、最多票はそれぞれ三人が選句した「初日の出われに十七音詩あり」(水牛)、「八丈の海夕映えて飛魚の鮨」「宇宙より届きし色や茄子の紺」(恂之介)の三句だけだった。会報15冊に載ったお二人の句はそれぞれ150句で、どれを選んでもさすがに名句・秀句ぞろい、皆口々に一句を選ぶのに困ったと前置きしたのがその証と言える。「初日の出…」と「宇宙より…」の句は、書に堪能な澤井二堂さんが短冊に墨書し、記念品の電子辞書・花束とともに贈られた。

宴が進み、両先生が日経俳句会の過去と未来や心境・抱負を語った。

まず大澤水牛師が「『初日の出…』の句は新年詠だったので心が昂ぶっていたのでしょう。虚子まがいの句を詠んだのは恥ずかしいと思っていたのだけど、今こうして皆様にいろいろ言われて感慨深いものがあります。村田先生に句会やりますかと言われて始めたわけですが、やってよかった。やっていなければただの飲んだくれ老人だったなあと、しみじみ思っています。新聞社系の俳句会なのでこれからも今を詠むことをやっていきたい。今を詠むということを少し気を入れてやっていけばユニークな俳句会になる。来週出る俳句会報に『今を詠む』という文を載せましたが、これからも皆様にもまれながら若さを保ってやっていきたい」と述べた。

続いて今泉恂之介師は「私はこの会のために何もやっていません。大澤さんがやっているのを横から見ていただけです。俳句は若いころから好きだった。作ることもさりながら人の句を見ることが好きです。今も江戸時代の句から昭和の句まで読んできて佳句を書きためています。今、プロの俳人の句はレベルが落ちていると思う。アマチュアの方がずっといい。でもアマチュアの句は五十年後、百年後には全部なくなってしまう。個人的に平成のいい句をパソコンにためているので、その頃には著作権も切れるから自由に出せます。それをどなたかに渡して続けてもらいたいと思ってます。日経俳句会の中にもとても感心した句があって、後世に残すリストに既に何十句か入っている。双牛舎というNPO法人のひとつの事業であり、私の趣味でもあり、それをやっていきたい思います」

お開きを前に、幹事を代表して堤てる夫さんが、”あとがき”を述べた。「井上先輩のお話がすべてを語っており、本日の趣旨を簡にして要を得ておっしゃったと思います。これ以上言うことがありません。両先生ありがとうございました」と結んだ。(徳永正裕記)

 

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日経俳句会第116回例会開催

日経俳句会は2月19日(火)午後6時半から鎌倉橋交差点傍の日経第二別館で、平成25年第2回例会(通算116回)を開いた。「春は名のみ」と言う通り、寒風厳しい天気のせいか、出席者は21人と少な目だったが、投句参加者が16人あり、投句総数は179句と相変わらずの盛況ぶり。

兼題は「水温む(みずぬるむ)」「クロッカス」で、7句選句の句会の結果、最高は10点を集めた吉野光久さんの「鎌倉やどの径ゆくも藪椿」の一句。再び辛い治療を凌いでいる光久さん、意気軒昂。次席は7点で、大倉悌志郎さんの「捨て鉢の梅さきがけて匂ひけり」と、横井定利さんの「ピアノでも弾いてみようかクロッカス」の二句。続く6点句は定利さんの「ガンだつたんよのほほんと春ショール」と堤てる夫さんの「塩田平降りてきそうな寒の星」の二句。

以下5点句が4句、4点8句、3点9句、2点20句、1点52句。兼題別の高点句(3点以上)は次の通り。

「水温む」

おみくじはみんな中吉水温む     大熊 万歩

いく度も名を変へ大河水温む     廣上 正市

水ぬるむ昔の日記ひろい読み     池村実千代

水温む盆栽展の列につき       大下 綾子

水温む皇居めぐりて神田まで     金田 青水

水遣りの勢い増して水温む      流合研士郎

すみません降りますの声水温む    山田 明美

水温む豊後の海の兜蟹        嵐田 啓明

水温む些細なことに笑ひ声      嵐田 啓明

花屋さん赤いゴム長水温む      植村 博明

水ぬるむ庭師の謡軒端より      岡田 臣弘

雨の文字にはかに優し水温む     徳永 正裕

石仏を巡る一日や水温む       廣上 正市

「クロッカス」

ピアノでも弾いてみようかクロッカス 横井 定利

房総の春は弾けてクロッカス     大沢 反平

幾人も杖を止めたるクロッカス    須藤 光迷

クロッカスほのかに香る脇机     岡田 臣弘

クロッカス小さき芽吹き窓の鉢    来間  紘

バスに香を置いて降りゆくクロッカス 野田 冷峰

空つかむ赤ちゃんの手やクロッカス  嵐田 啓明

幼子の指さす先のクロッカス     植村 博明

「雑詠」

鎌倉やどの径ゆくも藪椿       吉野 光久

捨て鉢の梅さきがけて匂ひけり    大倉悌志郎

塩田平降りてきそうな寒の星     堤 てる夫

ガンだつたんよのほほんと春ショール 横井 定利

恋猫に米を研ぐ手を休めけり     須藤 光迷

参加者(出席)嵐田啓明、井上庄一郎、今泉恂之介、大澤水牛、岡田臣弘、来間紘、佐々木碩、澤井二堂、杉山智宥、須藤光迷、高石昌魚、高瀬大虫、高橋淳、徳永正裕、堤てる夫、流合研士郎、廣上正市、星川佳子、村田佳代、山田明美、横井定利(投句参加)池村実千代、植村博明、大石柏人、大熊万歩、大倉悌志郎、大沢反平、大下綾子、加藤明男、金田青水、久保田操、田中頼子、直井正、野田冷峰、藤野十三妹、水口弥生、吉野光久

(まとめ・堤てる夫)

 

 

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