第121回日経俳句会例会

日経俳句会は8月20日(火)午後6時半、鎌倉橋交差点傍の日経第二別館会議室で、平成25年第7回例会(通算121回)を開催した。兼題は「野分(のわき)」「萩(はぎ)」で、出席21人、投句参加14人、投句総数は169句。7句選句の句会の結果、最高は佐々木碩さんの「はすかいに雀流るる野分かな」、星川佳子さんの「祖母二人ひらがな二文字はぎの花」の8点2句だった。次席は、大倉悌志郎さんの「赤富士のたちまちくづるかき氷」の7点句。次いで6点句は、大熊万歩さんの「肩先に白萩触るるベンチかな」、碩さんの「天道虫この指先がヘリポート」の2句。5点句は、悌志郎さんの「掃ききよめ会釈する子や萩の寺」、金田青水さんの「軽トラに落果あふるる野分あと」、高瀬大虫さんの「荒ぶるも色めくもあり阿波踊」の3句が並んだ。4点句は5句、3点句11句、以下2点20句、1点46句。兼題別の高点句(3点以上)は次の通り。

「野分」

はすかいに雀流るる野分かな    佐々木 碩

軽トラに落果あふるる野分あと   金田 清水

風鈴を急いで外す野分かな     井上庄一郎

窓すこし開けて野分の声を聴き   高瀬 大虫

野分過ぎ屋台組まるる村歌舞伎   田中 頼子

木杭打つ掛矢の音も野分かな    廣上 正市

野分去り星満天の奥只見      大倉悌志郎

木の枝にシャツぶら下がる野分晴  大澤 水牛

野分来て心の澱を流しけり     澤井 二堂

美容師の二の腕太し野分晴     横井 定利

「萩」

祖母二人ひらがな二文字はぎの花  星川 佳子

肩先に白萩触るるベンチかな    大熊 万歩

掃ききよめ会釈する子や萩の寺   大倉悌志郎

濡れし萩おこして参る母の墓    澤井 二堂

萩を食ふ山羊大仰に首を振り    高瀬 大虫

山の湯に萩の声聞く暗夜かな    徳永 正裕

秩父越え一揆の里に萩こぼれ    野田 冷峰

「雑詠」

赤富士のたちまちくづるかき氷   大倉悌志郎

天道虫この指先がヘリポート    佐々木 碩

荒ぶるも色めくもあり阿波踊    髙瀨 大虫

熱帯夜明けて左右の生あくび    杉山 智宥

父も子も瓜実顔や敗戦忌      大澤 水牛

パソコンのぐずり出したる残暑かな 大澤 水牛

きちきちや曲がれば出会ふ千曲川  吉野 光久

参加者(出席)嵐田啓明、今泉恂之介、大倉悌志郎、大澤水牛、岡田臣弘、澤井二堂、杉山智宥、須藤光迷、高石昌魚、高瀬大虫、高橋淳、田中頼子、堤てる夫、徳永正裕、直井正、廣上正市、藤野十三妹、星川佳子、水口弥生、村田佳代、横井定利(投句参加)池村実千代、井上庄一郎、植村博明、大石柏人、大熊万歩、大沢反平、大下綾子、加藤明男、金田青水、久保田操、佐々木碩、野田冷峰、山田明美、吉野光久         (まとめ・堤てる夫)

 

 

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第94回番町喜楽会

番町喜楽会は、7月1日(月)午後6時半から東京・九段の生涯学習会館で7月例会(通算第94回)を開催した。兼題は「土用(どよう)」「木下闇(こしたやみ)」で、投句総数は80句。6句選句で句会を進めた結果、最高は玉田春陽子さんの「糠床の天地を返し土用入り」の5点句だった。次席は4点4句で、高井百子さんの「山ガール背に力あり木下闇」と「桑の実の熟れて紬の里に降り」の2句、前島巌水さんの「にわか雨土の匂へる土用かな」と「うずもれし古戦場碑や木下闇」の2句。次いで3点句も4句で、今泉而雲さんの「麦秋やTPPを立ち話」、大澤水牛さんの「またたびの花枝猫へ土産とす」、須藤光迷さんの「僧の去りまた僧来る木下闇」、徳永正裕さんの「土用入りわが身いとへと老母より」が並んだ。

3点以上の高点句が合計9句しか出ず、以下2点16句、1点25句。これに対して得点無しが30句という結果になった。

参加者は(出席)井上啓一、今泉而雲、大澤水牛、須藤光迷、高井百子、高瀬大虫、谷川水馬、高橋楓子、玉田春陽子、堤てる夫、徳永正裕、野田冷峰、星川佳子、前島巌水(投句参加)笹本塘外

(まとめ・堤てる夫)

 

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第95回番町喜楽会

番町喜楽会は8月3日(土)午後1時から千代田区二番町の番町ハイム会議室で、平成25年第8回例会(通算95回)を開いた。兼題は「毛虫(けむし)」「夏深し(なつふかし)」で、15人の会員からの投句総数は73句だった。6句選句で進めた句会で、最高は星川佳子さんの「塀越しに毛虫のわいて貸家札」の5点句。次席は高井百子さんの「夏深し眉を濃い目に襟を抜き」の4点句。続く3点句は8句で、高点句(3点以上)は合計10句に止まった。猛暑続き、出席者も9人(投句参加6人)と少な目だった。しかし発言時間ゆったりの合評会は活発で、暑さそこのけの賑やかさだった。兼題別の高点句は次の通り。

「毛虫」

塀越しに毛虫のわいて貸家札     星川 佳子

背を伸ばし空を見てゐる毛虫かな   今泉 而雲

毛虫出で上毛三山見はるかす     谷川 水馬

南無南無と作務衣の和尚毛虫焼く   玉田春陽子

白毫寺五辯に潜む毛虫あり      野田 冷峰

「夏深し」

夏深し眉を濃い目に襟を抜き     高井 百子

梅干して胡瓜を漬けて夏深み     大澤 水牛

夏深し時候見舞ひの女文字      徳永 正裕

「雑詠」

百発の花火一挙に海に立つ      須藤 光迷

頁繰る余白にまでも晩夏かな     玉田春陽子

参加者(出席)今泉而雲、大澤水牛、須藤光迷、高井百子、高瀬大虫、田中白山、玉田春陽子、野田冷峰、星川佳子(投句参加)井上啓一、谷川水馬、堤てる夫、徳永正裕、前島巌水、山口斗詩子   (まとめ・堤てる夫)

 

 

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第8回逆回り奥の細道・那須日光

日経俳句会の通年企画「逆回り奥の細道吟行」は、いよいよ大詰めの第8回として6月23、4日、那須・黒羽、日光を回った。参加者は大澤水牛幹事長初め嵐田啓明、井上庄一郎、今泉恂之介、澤井二堂、杉山智宥、谷川水馬、玉田春陽子、徳永正裕、廣上正市、星川佳子、堤てる夫(幹事)の12人。

初日は栃木県大田原市に点在する芭蕉ゆかりの史跡などをマイクロバスで訪ねた。黒羽(くろばね)は芭蕉一行が14日間も滞在した土地で、芭蕉句碑を辿るだけでも大変。「秣おふ人を枝折の夏野かな」の句碑がある玉藻稲荷神社を皮切りに、「夏山に足駄を拝むかどでかな」の修験光明寺跡、臨済宗の名刹、東山雲巌寺で「木啄きも庵は破らず夏木立」の句碑を見る。その後、黒羽藩主大関家の菩提寺の大雄寺と、隣接の芭蕉公園、芭蕉の館へ。那珂川沿いの「観光やな」で昼食を取った後、遊行柳、殺生石を観て一路、日光の宿へ行く。

二日目のハイライトは裏見の滝。路線バスで「滝の入口」まで行き、あとは上り坂をだらだら上り、急な岩道や木道を苦闘一時間、ようやく滝壷を見下ろす観覧ポイントに到着できた。下山後は大谷(だいや)川沿いに憾満ヶ淵に向かう。「大日堂跡」の小さな芭蕉句碑は「あらたふと青葉若葉の日の光り」。那須岳から流れ出た岩石は滑らかで薄い灰色、川の水は澄み切っていた。遊歩道の崖際に大小の地蔵が百体ほど苔むして並ぶ「並び地蔵」が印象的だった。

昼食後は三々五々、日光山内に入り東照宮参拝。東照宮の修復工事が始まるとかで、間もなく陽明門も覆いが掛けられるという。特別公開していた奥宮の家康公廟所まで入れたのと相まって幸運な旅の締め括りとなった。帰京後恒例のメール句会を行った。好評を博した句は以下の通り。

健脚の翁と歩む夏木立      嵐田 啓明

青葉越え天より迫る大伽藍    井上庄一郎

木下闇小角の足駄滑りし跡    今泉恂之介

青き淵涼しく眠る百地蔵     大澤 水牛

裏見滝きりきり舞ひの夏の蝶   澤井 二堂

夏の雲校舎の壁に読む芭蕉    杉山 智宥

鬼気はらむ殺生石や沖縄忌    谷川 水馬

裏見をば風にたのみて滝見かな  玉田春陽子

ほととぎす家康公の廟所まで   堤 てる夫

雨やみて日光山内夏の朝     徳永 正裕

青田風はせをの時空駆けめぐる  廣上 正市

水無月や苔の衣の百地蔵     星川 佳子

(まとめ 堤てる夫)

 

 

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酔吟会第105回例会

酔吟会の平成25年度第4回例会(通算105回)が7月13日(土)午後1時から、鎌倉橋交差点そばの日経第二別館で開かれた。東京は6日に例年より15日も早く梅雨明けし、南からと西からの二重の高気圧の張り出しで、連日猛暑に見舞われた。13日も相変わらずの暑さで、年寄りの多い酔吟会とあって何人来られるか懸念されたが、いつもとほぼ同じ10人が参加した。

出席は今泉恂之介、大澤水牛、大沢反平、岡田臣弘、片野涸魚、金指正風、澤井二堂、堤てる夫、徳永正裕、藤村詠悟。投句参加は大石拍人、藤野十三妹氏。また、久保田、吉野両氏は大澤水牛幹事にメールで投句していたのだが、行き違いで句会に披露されず残念なことになった。

今回の兼題は「向日葵」と「夏座敷」で、投句5句、選句7句で句会を行った結果、最高点は5点で1句、次いで4点が1句、3点4句、2点12句、1点24句となった。兼題別の3点以上の句は次の通り。

「夏座敷」

独鈷山の風を一手に夏座敷    星川 佳子

佃煮の匂ひ佐原の夏座敷     今泉恂之介

夏座敷ぷんぷくりんと孫の足   大沢 反平

「向日葵」

向日葵や瓦礫の浜に逞しく    岡田 臣弘

ひまわりの丘越えゆけば地中海  金指 正風

「雑詠」

托鉢の僧回わり来る梅雨晴間   金指 正風

(まとめ 澤井二堂)

 

 

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平成25年上期合同句会を開催

日経俳句会は6月18日午後6時半、平成25年上期の合同句会を東京・神田鎌倉橋の日経第二別館会議室で開いた。投句者38人、投句総数114句。兼題を含め3句を投句し、事前選句(5句)した。句会当日は蒸し暑い梅雨の最中にもかかわらず、21人が出席し、13人が欠席選句を提出した。幹事が整理した選句集計をもとに、4点以上の作品について参加者全員がこもごも句評、活気ある句会になった。

最高点の8点は大下綾子さんの「バス停に旧き町名麦の秋」。7点は片野涸魚さんの「原節子いずくに在りや麦の秋」が選ばれた。両氏は他の句でもそれぞれ5点句に選ばれている。6点は「肩車して麦秋のど真ん中」( 横井定利)、「飛魚やしばし忘るる船の揺れ」(植村博明)、「父の日の小さくなりし背中かな」(嵐田啓明)の3句。

昨年上期の合同句会は18点句が出現するなど大荒れになったが、今回は選句が全体にばらついた感じがある。また、高点句は時候の季題である「麦の秋」に集中し、「飛魚」には少なかった。そうした中で、金田青水さんの投句した3句すべてが4点句に選ばれれたことが話題になった。兼題別の高点句は以下の通り。

 

「麦の秋」

バス停に旧き町名麦の秋      大下 綾子

原節子いずくに在りや麦の秋    片野 涸魚

肩車して麦秋のど真ん中       横井 定利

麦秋や美瑛の丘の空青し       高石 昌魚

麦の秋手織の機の軽き音      徳永 正裕

国東は鬼さへやさし麦の秋     野田 冷峰

麦秋や就活女子の黒スーツ     金田 青水

麦秋の母を離れぬ仔馬かな     嵐田 啓明

麦秋や前髪ちょきん切ってみる   池村実千代

白馬から信濃は青し麦の秋     大沢 反平

みちくさの子らの石蹴り麦の秋   吉野 光久

 

「飛魚」

飛魚やしばし忘るる船の揺れ    植村 博明

飛魚の眼(まなこ)の先の海と空      大下 綾子

飛魚とんで隠岐へのフェリー先導す 大倉悌志郎

飛魚や黒潮太く蛇行せり      金田 青水

飛魚や後に先にと島航路      大熊 万歩

 

「当季雑詠」

父の日の小さくなりし背中かな   嵐田 啓明

新樹湧くごとし前方後円墳     今泉恂之介

行きゆきて青嶺の奥の無言館    大澤 水牛

どくだみや余生の日々の長きこと  片野 涸魚

古刹から洋食匂う梅雨晴間     杉山 智宥

豆腐屋の昼は閉ぢをり柚子の花   星川 佳子

霧を出てまた霧のなか峠道     大石 柏人

新宿の路地よりぬっと夏の月    大倉悌志郎

曝書の手とめて見入るやクレヨン画 金田 青水

スカイツリー頭かくして梅雨来る  澤井 二堂

百選の町の湧水夏つばめ      廣上 正市

(まとめ 堤てる夫)

 

 

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平成25年双牛舎総会・俳句大会

俳句の普及、振興を目指すNPO法人双牛舎は4月20日午後、市ヶ谷・鮨乃家本店で第6回総会を開催した。日経俳句会、番町喜楽会に加え三四郎句会が双牛舎会員となり、昨年よりも9人多い陣容での開催。総会と同時に開いた俳句大会には44人が参加した。総会は長老、井上庄一郎さん(日経俳句会)の祝辞・乾杯に続いて、共同代表の今泉恂之介(而雲)さんがこの一年間の活動報告を行った。

総会の目玉、俳句大会は兼題の「春風(はるかぜ)」と雑詠の投句2句、選句5句で行われた。メールなどで事前に選句表を作成・発信し、出席者はそれを元に会場に掲げられた作品一覧表に選句シールを貼る方式で進めた。

入賞句の発表前に、昨年4月に行われた第5回総会での俳句大会の入賞句10句が改めて紹介され、書家赤池溪舟師揮毫の短冊が読み上げられ、受賞者に贈られた。

今回の俳句大会で最高の13点を得たのは大澤水牛共同代表の「蝶々にまとひつかれて鍬振るふ」で「天」賞となった。次席の「地」賞は番町喜楽会の田中白山さんで「一人にも二人連れにも春の風」が9点。三席「人」賞も番町喜楽会玉田春陽子さんの「春風に身をふるはせし恋の絵馬」で8点だった。以下、7点1句、6点2句、5点4句で、入選者には水牛さん、須藤光迷さんの陶芸作品が贈呈された。

昨年同様に今年の受賞作10作品は赤池先生に揮毫をお願いし、来年の総会時に贈呈される。今回俳句大会は投句総数が88句にのぼり、そのうち69句に点が入る賑やかさだった。

入賞作品は以下の通り。

「天」  13点 蝶々にまとひつかれて鍬振るふ    大澤 水牛

「地」   9点 一人にも二人連れにも春の風      田中 白山

「人」   8点 春風に身をふるはせし恋の絵馬    玉田春陽子

「入選」  7点 春の日に背より眠気がはいあがり   石黒 賢一

6点 富士見坂名のみとなりて春の風    澤井 二堂

6点 春月に濁点打つやちぎれ雲      谷川 水馬

5点 春風や老人パスを首に掛け      岡田 臣弘

5点 誰かれに声掛けたくて春の風     大澤 水牛

5点 散るものは散りたるけさのさくらかな 廣上 正市

5点 乙女らの黒髪長し春の風       深瀬 久敬

「残念賞( 3点以上句)」

4点

春風やマネキンひそと動きさう    谷川 水馬

春風や億万の恋萌え出る       片野 涸魚

春風や日本へ行くと娘より      井上庄一郎

中庭に春風のある美術展       大沢 反平

鉈彫の仏の笑みや春の風       須藤 光迷

春風やふらり小路のアジフライ    杉山 智宥

恋衣ふはりと春の風にのせ      高橋 楓子

だぶだぶの制服の列春の風      高井 百子

合ふボタン探しあぐねる春の宵    星川 佳子

3点

春風や山門越ゆる一人旅       宇佐美 諭

恐竜の化石つややか春の風      星川 佳子

吊り橋のそこは春風通り道      嵐田 啓明

初蝶の知足の寺に遊びをり      須藤 光迷

バスを待つ言問通り春の風      池村実千代

(まとめ 堤てる夫)

 

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日経俳句会第119回例会

日経俳句会は平成25年第5回例会(通算119回)を5月21日(火)午後6時半から鎌倉橋交差点傍の日経第二別館で開催した。兼題は「夏めく(なつめく)」「薔薇(ばら)」で投句総数は172句(14人が投句参加)で、選句7句で進めた結果、徳永正裕さんの「夏めくや麻の上着の背中皺」が10点を集めて最高点。次席は大熊万歩さんの「夏めくや重たくなりし付け睫毛」の8点句。三席は佐々木碩さんの「夏めくや風のことばに木のことば」と、田中頼子さんの「ふたとせも人入れぬ町花いばら」の7点2句。

次いで6点は「つる薔薇にもの言ひてより母の朝 恂之介」、「病得て薔薇一輪に励まされ 臣弘」、「夏めくや田水の音のたうたうと てる夫」、「夏めくや子等にでつかい背番号 定利」、「薔薇一輪活けて独りの昼餉かな 光久」の5句が並んだ。続く5点は「夏めきて雑巾ぬつてみたくなる 実千代」の1句。以下4点10句、3点7句、2点17句、1点11句。3点以上の高点句が27句も出て会場は大いに沸いた。兼題別の高点句(3点以上)は次の通り。

「夏めく」

夏めくや麻の上着の背中皺      徳永 正裕

夏めくや重たくなりし付け睫毛    大熊 万歩

夏めくや風のことばに木のことば   佐々木 碩

夏めくや田水の音のたうたうと    堤 てる夫

夏めくや子等にでつかい背番号    横井 定利

夏めきて雑巾ぬつてみたくなる    池村実千代

夏めいて薄暮の似合ふ銀座かな    嵐田 啓明

夏めくやアジアン雑貨の店に入る   植村 博明

夏めくやゼブラ模様のワンピース   大澤 水牛

夏めくやオープンカフェの長話    大沢 反平

夏めくや薄く去年の日焼け跡     高瀬 大虫

夏めくや新潟平野水光る       大倉悌志郎

雲浮かぶ夏めく空に句も浮かぶ    山田 明美

「薔薇」

ふたとせも人入れぬ町花いばら    田中 頼子

つる薔薇にもの言ひてより母の朝   今泉恂之介

病得て薔薇一輪に励まされ      岡田 臣弘

薔薇一輪活けて独りの昼餉かな    吉野 光久

残されて薔薇のはなやぐ空家かな   大沢 反平

青き薔薇蒼穹よりの使者ならん    徳永 正裕

カルメンの運命や赤き薔薇くずる   大倉悌志郎

恩師百われ八十二薔薇盛る      直井  正

「雑詠」

藤棚に乳母車寄せ子と眠る      大倉悌志郎

廃屋や卯の花垣はくずれずに     大倉悌志郎

皿蕎麦や塩田平の新樹光       須藤 光迷

初夏の風入れて電車は大仏へ     大澤 水牛

母の日や里の血縁絶えにけり     大沢 反平

朝顔や谷中往き交ふ介護バス     澤井 二堂

 

参加者(出席)嵐田啓明、池村実千代、今泉恂之介、大熊万歩、大倉悌志郎、大澤水牛、来間紘、佐々木碩、澤井二堂、杉山智宥、須藤光迷、高石昌魚、堤てる夫、徳永正裕、直井正、廣上正市、水口弥生、村田佳代、山田明美、横井定利(投句参加)井上庄一郎、植村博明、大石柏人、大沢反平、大下綾子、岡田臣弘、加藤明男、金田青水、久保田操、高瀬大虫、高橋淳、田中頼子、藤野十三妹、星川佳子、吉野光久  (まとめ・堤てる夫)

 

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番町喜楽会第92回例会

番町喜楽会は5月13日(月)午後6時半、九段の生涯学習会館で五月例会(通算92回)を開いた。兼題は「新緑(しんりょく)」と「蝸牛(かたつむり)」で、投句総数は90句。6句選句で句会を進めた結果、今泉而雲さんの「枝先にありて夕陽のかたつむり」と、高瀬大虫さんの「新緑や例大祭の五色幕」が5点句で最高だった。次席は4点で、大澤水牛さんの「蕎麦屋まで新緑の道四半刻」、谷川水馬さんの「棟上げや新緑の風男らに」と「夏蝶の五差路に出でて迷ひけり」の二句、高橋楓子さんの「湧水や竹の柄杓に蝸牛」と、星川佳子さんの「大ぶりの湯飲み取り出す立夏かな」の合計5句が並んだ。

3点句もやはり5句あり、須藤光迷さんの「新緑のほつほつとあり五稜郭」、水馬さんの「蟇蛙強面にして子煩悩」、楓子さんの「夕暮れて新緑の香の密になり」、玉田春陽子さんの「蝸牛昔出女関所跡」と「踏切のせわしき音や蝸牛」の2句だった。3点以上の高点句12句の内、水馬さんが3句、楓子さんと春陽子さんがそれぞれ2句入り、プロ野球式に言う「複数安打」の3人の笑顔が目立った。

参加者は(出席)井上啓一、今泉而雲、大澤水牛、須藤光迷、高井百子、高橋楓子、田中白山、谷川水馬、玉田春陽子、堤てる夫、徳永正裕、星川佳子、前島巌水、三好六甫(投句参加)岩沢克恵、加沼鬼一、笹本塘外、高瀬大虫 (まとめ・堤てる夫)

 

 

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酔吟会第104回例会

酔吟会の平成25年度第3回例会(通算104回)は、5月11日(土)午後1時から神田・鎌倉橋交差点そばの日経第二別館で開かれた。

立夏というのに東北、北海道では雪が降るという異常気象が続いているが、東京はようやく暖かい日和となった。あいにくこの日は雨だったが、12人と酔吟会としては多数参加となった。出席は今泉恂之介、大澤水牛、大沢反平、岡田臣弘、片野涸魚、金指正風、久保田操、澤井二堂、堤てる夫、徳永正裕、星川佳子、藤村詠悟。投句参加は吉野光久。

兼題は「夏の山」と「菖蒲」、投句5句、選句6句で句会を行った結果、最高点は5点で1句、次いで4点が3句、3点が7句、2点8句、1点句18句となった。兼題別の3点以上の句は次の通り。

「夏の山」

夏山の緑を縫ひて郵便車       岡田 臣弘

夏の山木漏れ日弾く早瀬かな     岡田 臣弘

足湯して湖越しの夏の山       大沢 反平

甲斐抜けて山の信濃も夏姿      徳永 正裕

「菖蒲」

菖蒲湯や見るかげもなき力瘤     片野 涸魚

ひらひらと舞ひたちさうに花菖蒲   徳永 正裕

菖蒲青し道場の床磨かれて      今泉恂之介

「雑詠」

完治告げられて飲み干すラムネ哉   吉野 光久

神田祭古き町名よみがへり      大澤 水牛

風の道高き低きをたどる蝶      星川 佳子

花蜜柑母のアルバム古りにけり    吉野 光久

(まとめ 澤井二堂)

 

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