酔吟会第126回例会

「新年」と「炬燵」で幕開け

中沢義則、岡田陽々さんが初参加

 

酔吟会は1月14日午後1時、千代田区内神田の日経広告研究所会議室において、平成29年度初例会(通算126回)を開催した。兼題は「新年一般」と「炬燵」。出席者14名、投句参加5名。今回から日経文化部編集委員の中沢義則氏が参加、また双牛舎のホームページ見て句会見学を申し出ていた秋田県湯沢市観光協会(東京事務所)の岡田陽々さんが見学参加した。

投句5句、選句7句で句会を進めた結果、最高点は五点で岡田臣弘さんの「うたた寝の炬燵の母の小さきこと」の1句。臣弘さんは「雌鶏の小言で新年迎えをり」も次点の4点を獲得した。4点句は他に高井百子さんの「末っ子の位置は角っこ掘炬燵」、野田冷峰さんの「初富士や東久留米の駅舎から」「御代の春濠の漣退位論」の2句。初参加の岡田陽々さんの「書初の子の字の「走」走り出す」、堤てる夫さんの「家中がものぐさになる炬燵かな」、片野涸魚さんの「地吹雪に鍛え磨かれ津軽弁」の計7句と多く、逆に3点句は3句と少なかった。兼題別3点句以上は以下の通り。

「新年一般」

雌鶏の小言で新年迎えをり      岡田 臣弘

初富士や東久留米の駅舎から     野田 冷峰

書初め子の字の「走はしる」走り出す  岡田 陽々

初詣大股でゆく晴れ着かな      野田 冷峰

腹八分老いて六分や七草粥      玉田春陽子

「炬燵」

うたた寝の炬燵の母の小さきこと   岡田 臣弘

末っ子の位置は角っこ掘炬燵     高井 百子

家中がものぐさになる炬燵かな    堤 てる夫

小料理屋湯たんぽを置く炬燵かな   高井 百子

「雑詠」

地吹雪に鍛え磨かれ津軽弁      片野 涸魚

御代の春濠の漣退位論        野田 冷峰

参加者(出席)今泉而云,大澤水牛、大沢反平、大平睦子、岡田陽々、片野涸魚、久保田操、高井百子、谷川水馬、玉田春陽子、堤てる夫、徳永正裕、中沢義則、野田冷峰、(投句参加)大石柏人、岡田臣弘、澤井二堂、藤野十三妹、星川佳子

(記録高井百子)

 

Posted in 句会報告 | Leave a comment

番町喜楽会第135回例会

 

「冬の日」と「雪女」を詠む

 

番町喜楽会の平成29年幕開け句会(通算第135回例会)は、成人の日の1月9日午後1時半から東京・九段下の「千代田区生涯学習館」で開かれた。祝日のうえ、通常は夜に行っていたものを昼に移したことや風邪の流行もあり、欠席投句参加が6人に上った。兼題は「冬の日」と「雪女」。「雪女」は投句33句のうち17句が得点なしという、難題ぶりを物語る結果になった。

句会は、投句5句、選句6句で行った。最高は玉田春陽子さんの「冬の日の空降りてくる硝子拭」と徳永正裕さんの「老桜の余さず浴びる冬日かな」でともに6点。5点は廣田可升さんの「淋しけりや一杯やらんか雪女郎」と田中白山さんの「煤払床(ゆか)に娘のピアノ跡」、山口斗詩子さんの「餅も菜も小さく刻み雑煮膳」が並び、4点は大下綾子さんの「いっせいにビル輝ける初日の出」と「身の上は知らぬいつもの雪女 可升」「冬の日や一坪ほどの白洲跡 春陽子」の3句。3点も5句と少な目。その一方、2点が16句、1点が三十句にも上った。兼題別の高点句(3点以上)は次の通り。

「冬の日」

冬の日の空降りてくる硝子拭        玉田春陽子

老桜の余さず浴びる冬日かな        徳永 正裕

冬の日や一坪ほどの白洲跡         玉田春陽子

冬の日の一句ベンチに置き忘れ        今泉 而云

「雪女」

淋しけりや一杯やらんか雪女郎       廣田 可升

身の上は知らぬいつもの雪女        廣田 可升

雪女郎監視カメラに影のこし        玉田春陽子

「雑詠」

煤払床(ゆか)に娘のピアノ跡       田中 白山

餅も菜も小さく刻み雑煮膳         山口斗詩子

いっせいにビル輝ける初日の出       大下 綾子

補助輪の外れ晴れやか春近し        須藤 光迷

風抜けて塩田平に凧揚がる         高井 百子

初参り産土神へ一里半           堤 てる夫

《参加者》

(出席十五人)嵐田双歩、井上啓一、今泉而云、大澤水牛、齊山満智、須藤光迷、高井百子、高瀬大虫、田中白山、谷川水馬、玉田春陽子、堤てる夫、徳永正裕、廣田可升、前島厳水。(投句参加六人)池内健治、大下綾子、澤井二堂、野田冷峰、星川佳子、山口斗詩子。(報告・須藤光迷)

 

Posted in 句会報告 | Leave a comment

新春恒例行事・浅草名所七福神吟行

 

25人で快晴の浅草を闊歩

 

日経俳句会と番町喜楽会合同の新春七福神巡りは1月7日(土)午前9時、浅草雷門・浅草寺を起点に、ゴールは大根祭で賑わう待乳山聖天まで合計9寺社を訪れるコースで行われた。参加者は25人、高齢者の「らくらくコース」組と健脚向けの「フルコース」組に分かれたのが奏功して、全員が午後1時、打ち上げ懇親会場の言問橋西詰の老舗天麩羅屋「金泉」に到着した。

浅草七福神巡りは日経の旧酔吟会が平成19年1月に挙行、季節外れの豪雨に見舞われ「途中断念」という苦い体験をした。びしょ濡れで「金泉」に掛け込んだ十年前と違って、今回は冬晴れの穏やか日和に恵まれ「完歩」の宿願を果たした。

福詣句会は恒例により、メール句会方式で投句選句とも5句で実施した。作品には天・地・人に入選の格付けをした。その結果、今泉而云さんの「福詣昔紅蓮の空の下」に天賞が四つ、同じく「平和とは斯くなるものか福詣」にも天賞三つが付いた。また廣田可升さんの「道具屋の鍋に陽のさす御慶かな」にも天賞三つ、可升さんには「風呂吹きの湯気そつと吹く唇の紅」(天5、地3、人2、選+選=12点)もある。参加25人の代表句は下記の通り。

【参加者】「フルコース」(浅草寺、浅草神社、矢先神社、鷲神社、吉原神社、石浜神社、橋場不動尊、今戸神社、待乳山聖天)には、リーダー大澤水牛、嵐田双歩、池内健治、池村実千代、今泉而云、岡田臣弘、大下綾子、杉山智宥(自転車利用)、田中白山、谷川水馬、徳永正裕、廣田可升、中村哲=13人。「らくらくコース」(浅草寺、浅草神社、鷲神社、吉原神社、今戸神社、待乳山聖天)にはリーダー澤井二堂、井上啓一、大平睦子、片野涸魚、須藤光迷、高井百子、高瀬大虫、堤てる夫、野田冷峰、藤野十三妹、前島幻水、水口弥生=12人。

《七福神参加者代表句》

ふろふきや神も仏も相和して    嵐田 双歩(待乳山聖天の大根祭)

初夢を客に托した演芸場      池内 健治(浅草奥山風景)

七福神ついでに鍋を見る私     池村実千代(合羽橋道具街)

猫二匹縁をとりもち冬ぬくし    井上 啓一(今戸神社の招き猫)

福詣昔紅蓮の空の下        今泉 而云(吉原弁天界隈)

楽コースといふのもありて福詣   大澤 水牛(健脚組とらくらく組)

颯爽と自転車とばす年男      大下 綾子(レンタサイクルだとか)

寒の空下町の神上機嫌       大平 睦子(浅草は九福神で賑やか)

弓初め矢先はぴたり福禄寿     岡田 臣弘(矢先稲荷は弓と馬の神)

いつの世も祈りは絶えず寒椿    片野 涸魚(浅草寺境内に)

猪牙仕立て吉原遊びの夢詣     澤井 二堂(こういう夢見るのも浅草)

福禄寿ここにもちゃっかり招き猫  杉山 智宥(今戸神社は福禄寿)

福詣雷門を振り出しに       須藤 光迷(朝9時出発)

風呂吹きの長蛇の列やスカイツリー 高井 百子(聖天さんから向島を眺む)

仲見世の開く音くぐり福詣     高瀬 大虫(ようやく店が開き始めた)

冬晴や影向堂の金の鴟尾      田中 白山(浅草寺の大黒天が鎮座)

オクトパスボールの屋台福詣    谷川 水馬(なるほどタコヤキですか)

山谷堀むかし知らぬ子日向ぼこ   堤 てる夫(今は埋め立てられ公園に)

冬うらら今戸の絵馬の円き山    徳永 正裕(縁結びの絵馬はまん丸)

巡り終え年の酒汲むえびす顔    中村  哲(打上げは老舗天麩羅屋)

七福神苦界の池の錦鯉       野田 冷峰(吉原弁天には優美な鯉)

風呂吹きの湯気そつと吹く唇の紅  廣田 可升(確かに若い美人がいた)

福大根抱きし句友の顔眩し     藤野十三妹(お下がり大根にニコニコ)

浅草の元気をもらふ福詣      前島 幻水(浅草は活気づいている)

福禄寿あまたの願ひ長頭に     水口 弥生(皆の願いが詰まって・・)

(まとめ・報告 堤てる夫)

 

Posted in 句会報告 | Leave a comment

 日経俳句会平成28年度下期合同句会(通算23回)

「雪」と「河豚」を詠む

日経俳句会は12月21日の年次総会の後、下期合同句会(通算23回)を開催した。兼題は「雪」と「河豚」で雑詠句を合わせて3句投句、4句選句で、事前に選句までメールで済ませる日経俳句会方式を採用した。参加者は出席24人、投句参加13人の合計37人。投句総数は110句。

その結果、最高は今泉而云さんの「ふぐ刺の透けて浮かびし海の青」の9点句。次席は植村博明さんの「降る雪やビニール傘の小宇宙」の8点句。三席は6点句で、澤井二堂さんの「宅急便街の寒さも届きけり」、玉田春陽子さんの「ふぐ刺や皿一面に青海波」、徳永正裕さんの「世の音を吸込み雪の降りしきる」、中嶋阿猿さんの「悪口も愚痴も尽きたり河豚雑炊」の4句が並んだ。5点句は1句、4点5句、3点句8句と続いた。兼題別の高点句(3点以上)は次の通り。

「雪」

降る雪やビニール傘の小宇宙        植村 博明

世の音を吸込み雪の降りしきる       徳永 正裕

お父さんやっぱり雪と妻の声        今泉 而云

雪原に満天の星こぼれ落つ         久保田 操

外は雪胸に冷たき聴診器          澤井 二堂

傘に聞く雪から雨にかはる音        玉田春陽子

俎板の音軽やかに雪の朝          須藤 光迷

雪睨む伍長の像や八甲田          谷川 水馬

越後路や瞽女の声聞く雪の中        野田 冷峰

「河豚」

ふぐ刺の透けて浮かびし海の青       今泉 而云

ふぐ刺や皿一面に青海波          玉田春陽子

悪口も愚痴も尽きたり河豚雑炊       中嶋 阿猿

ひと箸で河豚刺しさらふ野郎かな      廣上 正市

河豚鍋や運否天賦の八十年         大澤 水牛

河豚鍋やたのしき仲間と悪口と       大沢 反平

「雑詠」

宅急便街の寒さも届きけり         澤井 二堂

はじまりは冬満月の拾い物         横井 定利

小春日や昼席で聞く艶話          大倉悌志郎

年の市老舗で求む夫婦箸          岡田 臣弘

数へ日の喪中葉書を繰る夜かな       徳永 正裕

《参加者》(出席二十四人)池村実千代、井上庄一郎、今泉而云、大石柏人、大澤水牛、大下綾子、岡田臣弘、澤井二堂、杉山智宥、高井百子、高石昌魚、高瀬大虫、谷川水馬、玉田春陽子、堤てる夫、徳永正裕、直井正、中嶋阿猿、中村哲、野田冷峰、廣上正市、藤野十三妹、星川佳子、横井定利、(投句参加十三人)嵐田双歩、植村博明、大熊万歩、大倉悌志郎、大沢反平、大平睦子、片野涸魚、金田青水、久保田操、須藤光迷、高橋ヲブラダ、流合研士郎、水口弥生

(報告・堤てる夫)

 

Posted in 句会報告 | Leave a comment

番町喜楽会第134回例会

賑やかに忘年句会

「鮟鱇」と「小春」で冷峰、幻水トップ分け合う

番町喜楽会の平成28年12月の例会(通算134回)は、12月3日(土)午後6時から、「鮟鱇」と「小春」を兼題に、九段下の割烹「味さと」で開かれた。投句者20名(投句総数98句)のうち19名が出席するという賑やかな忘年句会となった。6句選句で句会を進めた結果、野田冷峰さんの「鮟鱇の身に覚えなき吊るし切り」と前島幻水さん(厳水を改名)の「小春日や子犬の待てぬ長話」が5点でトップに輝いた。以下、4点が4句、3点12句、2点11句、1点が36句と続いた。兼題別の高点句(3点以上)は次の通り。

「鮟鱇」

鮟鱇の身に覚えなき吊るし切り     野田 冷峰

鮟鱇や風評といふ向う傷        徳永 正裕

鮟鱇鍋妻と迎える定年日        池内 健治

鮟鱇をぶらさげてゆく渚かな      井上 啓一

鮟鱇鍋百年超えし下足札        今泉 而云

快癒あり入籍のあり鮟鱇鍋       大下 綾子

鮟鱇鍋煮立ちて噂ばなし止む      廣田 可升

「小春」

小春日や子犬の待てぬ長話       前島 幻水

テラスより埋まる小春のカフェーかな  嵐田 双歩

水牛に休養日あり島小春        今泉 而云

瀬戸内の小島大島小春凪        嵐田 双歩

Sの字に孫駆け回る小春かな       高瀬 大虫

小春日や空席待ちのテラス席      玉田春陽子

「雑詠」

涙目で挨拶さるる焚火かな       嵐田 双歩

鴨泳ぐずっと前から居る顔で      大澤 水牛

たぷたぷと君に注ぎましょ今年酒    齊山 満智

職を引き何もせぬまま菊盛ん      高井 百子

日にかかげ風にかざすや干し大根    玉田春陽子

〈参加者〉

【出席19名】嵐田双歩、井上啓一、今泉而云、大下綾子、大澤水牛、齊山満智、須藤光迷、高井百子、高瀬大虫、田中白山、谷川水馬、玉田春陽子、堤てる夫、徳永正裕、野田冷峰、廣田可升、前島幻水、星川佳子、横山恭子(選句参加)

【投句参加2名】池内健治、山口斗詩子

(報告・谷川水馬)

 

 

Posted in 句会報告 | Leave a comment

三四郎句会第45回例会

 

石丸雅博さん「深谷葱」の句が最高点6点

 

三四郎句会の11月例会(第45回)は17日午後1時半から東京・神田錦町の宗保第二ビル内で行われた。出席者は10人。欠席投句、選句を加えて参加者は14人となった。選句の結果、「深谷葱箱ごと背負う老婆かな」(石丸雅博)が最高点の6点を獲得。続いて「枯葉踏み又踏み幼児したり顔」(竹居照芳)と「秋の陽と雲切り取りし水たまり」(深瀬久敬)の2句が5点で続いた。

◇出席者 石丸雅博、今泉而云、宇佐美諭、宇野木敦子、河村有弘、後藤尚弘、竹居照芳、深瀬久敬、吉田正義、渡邉信。◇欠席投句者 印南進、岡本崇、田村豊生、石黒賢一。

第45回例会での兼題別高点句(3点以上)は以下の通り。

「十一月」

陽を映す十一月の障子かな         宇佐美 諭

十一月色うつろひの盛りかな        石丸 雅博

「葱」

深谷葱箱ごと背負う老婆かな        石丸 雅博

葱だけが背のびをしたりレジ袋       石黒 健一

マイガーデン泥ねぎ寄せて鍬仕舞う     印南  進

地酒酌む下仁田葱の焼き加減        岡本  崇

「当季雑詠」

枯葉踏み又踏み幼児したり顔        竹居 照芳

秋の陽と雲切り取りし水たまり       深瀬 久敬

冬うらら稲村ケ崎トビの舞う        印南  進

胡弓哭く月の影踏み風の盆         河村 有弘

鶏頭や子規が見つめし生命立つ       河村 有弘

(報告 今泉而云)

 

Posted in 句会報告 | Leave a comment

日経俳句会第154回例会

 

岡田さん、断トツの十一点句

弥生さんも「冬浅し」の佳句連発

日経俳句会は11月16日(水)、千代田区内神田の日経広告研究所会議室で11月例会(通算154回)を開いた。「冬浅し」「納豆」の兼題に34人が166句出句した。急に寒さが増したせいか、体調を崩された方が多く、欠席選句が13人にも達した。

最高点は岡田臣弘さんの「酉の市巫女の英語の達者なる」が11人もの支持を得た。これが際立っており、次席は7点の3句。「お日様の香りを添へて藁納豆」(嵐田双歩)、「自慢げに歯抜けの跡を七五三」(今泉而云)、街路樹の日毎に痩せて冬めけり」(流合研士郎)が選ばれた。6点句も「立て衿のか細き首や冬浅し」(水口弥生)、「納豆に朝日の入る山の宿」(植村博昭)の2句にとどまった。5点句は「山なみを紫紺に沈め冬浅し 弥生」、「冬薔薇座る人なきテラス席 阿猿」、「水鳥の足裏黄色き小春かな 正市」の3句。4点、3点が目立って多く、それぞれ6句、11句あった。2点は24句、1点は35句だった。兼題別の高点句(三点句以上)は以下の通り。

「冬浅し」

立て衿のか細き首や冬浅し       水口 弥生

山なみを紫紺に沈め冬浅し      水口 弥生

冬浅し膝関節のきしきしと          横井 定利

途切れつつとんかちの音冬浅し    大下 綾子

冬浅し長袖半袖七分袖        金田 青水

衿元に衣(きぬ)の膨らみ冬浅し       高石 昌魚

もり蕎麦に七味一振り冬浅し      徳永 正裕

「納豆」

お日様の香りを添へて藁納豆     嵐田 双歩

納豆に朝日の入る山の宿       植村 博昭

納豆や幼馴染は子沢山        今泉 而云

納豆に砂糖入れるも吾が故郷      徳永 正裕

ままならぬ憂き世に納豆かき回し   岡田 臣弘

納豆や卓袱台囲む日のありき     高石 昌魚

納豆をあてに晩酌妻の留守      堤 てる夫

山谷をともに越え来て納豆汁     中村  哲

「当季雑詠」

酉の市巫女の英語の達者なる      岡田 臣弘

自慢げに歯抜けの跡を七五三      今泉 而云

街路樹の日毎に痩せて冬めけり     流合研士郎

冬薔薇座る人なきテラス席       中嶋 阿猿

水鳥の足裏黄色き小春かな       廣上 正市

大根干す櫓の先に薩摩富士       須藤 光迷

群れなして冬野に降りる鴉かな     堤 てる夫

水底に雑魚の影なす冬日差       廣上 正市

柿すだれ慣れぬ手つきのそのまんま   堤 てる夫

相席の客も鍋焼き湯気二つ        徳永 正裕

木枯の行って帰らぬ浪江沖       中村  哲

《参加者》(出席)嵐田双歩、池村実千代、今泉而云、大倉悌志郎、大澤水牛、大沢反平、岡田臣弘、澤井二堂、杉山智宥、高石昌魚、髙瀨大虫、谷川水馬、堤てる夫、徳永正裕、直井正、中嶋阿猿、中村哲、廣上正市、星川佳子(投句参加)井上庄一郎、植村博明、大熊万歩、大下綾子、大平睦子、金田青水、久保田操、須藤光迷、高橋ヲブラダ、野田冷峰、流合研士郎、深田森太郎、藤野十三妹、水口弥生、横井定利

(報告・廣上正市)

 

 

Posted in 句会報告 | Leave a comment

酔吟会第125回例会

「不機嫌がゐる」反平句八点と「冬の蠅連れて」水馬句七点が競り合う

酔吟会は11月12日(土)午後1時、東京・千代田区内神田の日経広告研究所会議室で平成28年納めの例会(第125回)を開催した。出席者13人、投句参加4人。兼題は「時雨(しぐれ)」と「鰤(ぶり)」で、投句5句、総計85句について7句選で句会を進めた。最高は大沢反平さんの「しぐるるや不機嫌がゐる台所」の8点句。次席は谷川水馬さんの「冬の蠅車窓に連れて五能線」の7点句だった。反平さん、水馬さんの作品に点が吸い取られたわけでもないだろうが、6、5、4点句が零で、三席は一気に3点句に跳び、計8句がずらりという珍しい結果になった。以下2点が9句、1点34句。3点以上の高点句のうち、兼題句は「鰤」3句、「時雨」3句の計6句。兼題別3点以上の高点句は次の通り。

「時雨」

しぐるるや不機嫌がゐる台所        大沢 反平

初時雨濃い目の紅とすれ違ふ        今泉 而云

山ノ芋もう掘りごろと時雨来る       大澤 水牛

「鰤」

鰤の網干してどこまで佐渡の浜       今泉 而云

鰤おこし立山連峰胴震ひ          岡田 臣弘

鰤の口真一文字の覚悟かな         久保田 操

「雑詠」

冬の蠅車窓に連れて五能線         谷川 水馬

虫食ひの穴ばかりなりわが冬菜       大澤 水牛

凩や今も銀座に活版屋           玉田春陽子

菊人形根が背の中にある秘密        片野 涸魚

参加者(出席)今泉而云、大澤水牛、大沢反平、大平睦子、谷川水馬、玉田春陽子、堤てる夫、徳永正裕、岡田臣弘、片野涸魚、久保田操、高井百子、星川佳子(投句参加)大石柏人、澤井二堂、野田冷峰、藤野十三妹

(報告・堤てる夫)

 

 

Posted in 句会報告 | Leave a comment

番町喜楽会第133回例会

 

「冬めく」と「熊」を詠む

 

番町喜楽会の平成28年11月例会(通算第133回)は、7日午後6時半から東京・九段下の割烹「味さと」で開かれた。通常、奇数月の会場は「生涯学習館」なのだが、千代田区のイベントのため利用できず、会場変更となったもの。兼題のひとつは「冬めく」で、ちょうど7日が立冬、東京の最高気温は15度に達しなかった。もうひとつの兼題は「熊」で、各地で出没、人に危害を加えて厄介者扱いされている(棲息地を人が荒らしたことなど棚に上げて)可哀相な存在。

句会は、投句5句、選句6句で行った。最高は玉田春陽子さんの「冬めくや駅に手作り小座布団」で8点、小道具遣いの名手ぶりがいかんなく発揮された。次席は田中白山さんの「午後からは時の駆け出す暮の秋」で7点、釣瓶落としの季節感を鋭敏にとらえて好評。三席は高井百子さんの「妻が先吾は後ろや熊の道」で6点、男と女の世界の戯画化ぶりが笑いを誘った。続く5点句は二つ、4点句は一つ、3点句は五つと、少な目。その一方、2点句が15、1点句が36と末広がりの様相だった。

兼題別の高点句(3点以上)は次の通り。

「冬めく」

冬めくや駅に手作り小座布団          玉田春陽子

冬めくやポトフことこと昼下がり        谷川 水馬

禿頭の冬めく風に触れにけり          田中 白山

日没を前にともる灯冬めきぬ          徳永 正裕

冬めくや老猿岩に座すばかり          星川 佳子

「熊」

妻が先吾は後ろや熊の道            高井 百子

大山の御師の館の熊談義            大澤 水牛

番小屋の裏を子連れの熊のゆく         須藤 光迷

「雑詠」

午後からは時の駆け出す暮の秋         田中 白山

頼りなき日差し求めて布団干す         山口斗詩子

赤き実をあさる鵯腹太し            高井 百子

《参加者》

【出席16人】嵐田双歩、井上啓一、池内健治、今泉而云、大澤水牛、須藤光迷、高井百子、田中白山、谷川水馬、玉田春陽子、堤てる夫、徳永正裕、野田冷峰、廣田可升、星川佳子、前島厳水、【投句参加4人】齊山満智、澤井二堂、高瀬大虫、山口斗詩子

(報告・須藤光迷)

 

 

Posted in 句会報告 | Leave a comment

日経俳句会第153回例会

 

星川さんのシャンプー句が7点でトップ

二堂さん、友のノーベル賞大隅さんを詠む

 

日経俳句会は10月19日(水)、千代田区内神田の日経広告研究所会議室で十月例会(通算153回)を開いた。兼題の「秋の日」に相応しい好日とあって、出席は23人(投句参加者9人)と賑やかな句会となった。席上、澤井二堂さんの句「基礎科学楽しむ友にノーベル賞」で、今年のノーベル賞を受賞した大隅良典さんが二堂さんの学友だと判明。この句で、日経俳句会はノーベル賞を秋の季語とみなすことになった。

7句選(欠席選句5句)の結果、最高点は7点で星川佳子さんの「龍勢吟行」での嘱目「みな同じシャンプーの香や秋の宿」が選ばれ、次席の6点は岡田臣弘さんの「浜風をたてがみで聴く秋の馬」と須藤光迷さんの「綾取りの老と幼の十三夜」の2句。続く5点は大倉悌志郎さんの「われは喜寿傘寿の君に今年酒」が選ばれた。4点は「巫女舞ひて鈴音わたる秋日かな」研士郎、「新酒汲む裏目にでたる日も暮れむ」佳子、「工場の狭間といへど稲の秋」綾子、「藁塚に日暮れを知らぬ隠れ鬼」水馬、「日銀の屋根蒼蒼と十三夜」定利の5句。

4点以上の句が少なかった反面、3点がなんと20句もあり、2点32句、1点38句と続き、実力伯仲で高得点が出にくい傾向が顕著だった。 高点句(3点句以上)は以下の通り。

「秋の日」

巫女舞ひて鈴音わたる秋日かな   流合研士郎

秋の日の靴の色数保育園      今泉 而云

窓広き個展会場秋日和       大熊 万歩

秋入日毛虫も急ぐ遊歩道      杉山 智宥

秋の日の軽ろき手桶や女坂     谷川 水馬

能登の海秋の日まさに溺れゆく   直井  正

秋の日や肺呼吸する幸せよ     中嶋 阿猿

秋の日やバスの座席の温かさ    中嶋 阿猿

組体操影も胸張る秋日かな     中村  哲

足音の絶えて秋日の百貨店    流合研士郎

古本の背を滑り落つ秋日かな    流合研士郎

「新酒」

われは喜寿傘寿の君に今年酒    大倉悌志郎

新酒汲む裏目にでたる日も暮れむ  星川 佳子

困民のはかなき夢や古酒新酒    嵐田 双歩

ともかくも傘寿を迎へ今年酒    大倉悌志郎

喜寿一つ越えて一献新走り     大沢 反平

星の色宿す瓶より新走り      大下 綾子

新酒です注がれて下戸と言い出せず 杉山 智宥

片小鼻かすかにひくと新走り    金田 青水

「当季雑詠」

みな同じシャンプーの香や秋の宿  星川 佳子

浜風をたてがみで聴く秋の馬    岡田 臣弘

綾取りの老と幼の十三夜      須藤 光迷

工場の狭間といへど稲の秋     大下 綾子

藁塚に日暮れを知らぬ隠れ鬼    谷川 水馬

日銀の屋根蒼蒼と十三夜      橫井 定利

花街の紅さす地蔵秋ざくら     大倉悌志郎

もう二度と駆けぬデゴイチ赤とんぼ 大下 綾子

萩こぼる咳(しわぶき)ひとつ座禅堂      須藤 光迷

秋霖に千古を想う高麗の郷     中村  哲

 

参加者(出席)=嵐田双歩、池村実千代、井上庄一郎、今泉而云、大倉悌志郎、大澤水牛、大沢反平、大下綾子、岡田臣弘、澤井二堂、杉山智宥、須藤光迷、高石昌魚、髙瀨大虫、谷川水馬、堤てる夫、徳永正裕、直井正、中村哲、野田冷峰、藤野十三妹、星川佳子、水口弥生

(投句参加)植村博明、大熊万歩、大平睦子、金田青水、久保田操、高橋ヲブラダ、中嶋阿猿、流合研士郎、廣上正市、横井定利

(まとめ・嵐田双歩)

 

Posted in 句会報告 | Leave a comment