日経俳句会第171回例会

 

「得難き古書」而云句が断トツ12点

「新涼」と「秋刀魚」を36人が詠む

 

日経俳句会の平成30年度8月例会(通算171回)が8月15日(水)、千代田区内神田の日経広告研究所会議室で開かれた。酷暑が続く中、投句参加者は36人といつもより多く、「新涼」と「秋刀魚」の兼題に108句が集まった。この日は平成最後の終戦の日。15日に例会が開催されることは年に何回かあるものの、「八月十五日」の句会は珍しい。お盆休み中でもあり電車も街もやや閑散とする中、19人が出席した。句会に先立ち、「わたしの俳句館」のホームページの完成版がシステム構築に当たった月世界書房大澤大さんによって披露された。

句会は6句選(欠席者選句は5句)で行った結果、最高点は而云さんの「新涼の街や得難き古書を得て」が12点を獲得した。次点は水兎さんの「石垣のほどよき隙間ほたる草」(7点)。三席には「居酒屋の黄ばむ品書焼秋刀魚」(森太郎)、「山深き古道の茶屋に秋刀魚寿司」(哲)、「一匹を二人で分けて初秋刀魚」(双歩)の秋刀魚句が6点で並んだ。以下、5点3句、4点10句、3点9句、2点17句、1点36句だった。兼題別の高点句(3点以上)は以下の通り。

「新涼」

新涼の街や得難き古書を得て    今泉 而云

新涼やバス定刻にやってくる    大熊 万歩

新涼の四肢伸びやかに目覚めをり  嵐田 双歩

新涼や父母なき家に風通る     岩田 三代

涼新た年初の日記読み返し     和泉田 守

新涼や両手重ねて臍の上      植村 博明

新涼や掌にあふれたる山清水    大倉悌志郎

受付に植木鉢増え涼新た      大下 綾子

新涼や背中の芝生空の青      野田 冷峰

「秋刀魚」

一匹を二人で分けて初秋刀魚    嵐田 双歩

山深き古道の茶屋に秋刀魚寿司   中村  哲

居酒屋の黄ばむ品書焼秋刀魚    深田森太郎

クレーンに吊るされ秋刀魚海を見る 岩田 三代

若き日の苦き思ひ出秋刀魚焼く   加藤 明男

初競りの秋刀魚三万三千円     谷川 水馬

説教を秋刀魚のわたの苦味ほど   徳永 木葉

威勢よき経木の文字や秋刀魚の値  大熊 万歩

当季雑詠

石垣のほどよき隙間ほたる草    星川 水兎

星流る億光年の旅終へて      岩田 三代

空蝉の虚空見据える大目玉     大熊 万歩

汗のシャツ脱皮のごとく脱ぎにけり 大倉悌志郎

カンバスに色無き風を描きけり   加藤 明男

初盆の相次ぐ郷の空遠し      流合研士郎

前後ろ上下左右(うえしたひだりみぎ)酷暑 横井 定利

大雨の去って蝉鳴く盆支度     久保田 操

藤袴がらっぱちもいる京女     鈴木 好夫

身の丈に合ひし我が家や遠花火   谷川 水馬

《参加者》(出席)嵐田双歩、井上庄一郎、今泉而云、岩田三代、大澤水牛、大沢反平、大下綾子、岡田鷹洋、澤井二堂、杉山三薬、鈴木好夫、高石昌魚、堤てる夫、徳永木葉、中村哲、野田冷峰、流合研士郎、星川水兎、向井ゆり。(投句参加)池村実千代、和泉田守、植村博明、大熊万歩、大倉悌志郎、大平睦子、加藤明男、金田青水、久保田操、高橋ヲブラダ、谷川水馬、中嶋阿猿、廣上正市、深田森太郎、藤野十三妹、水口弥生、横井定利。

(報告 嵐田双歩)

 

This entry was posted in 句会報告. Bookmark the permalink.

コメントをどうぞ

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

*

次のHTML タグと属性が使えます: <a href="" title=""> <abbr title=""> <acronym title=""> <b> <blockquote cite=""> <cite> <code> <del datetime=""> <em> <i> <q cite=""> <strike> <strong>