日経俳句会第129回例会

日経俳句会は5月21日午後6時半から鎌倉橋交差点そばの日経広告研究所会議室で、平成26年度第5回例会(通算129回)を開いた。出席者17人、投句参加者14人の計31人から148句の投句があった。

この日の兼題は「夏めく」と「茄子」で、選句7句で行った結果、最高点は8点で今泉而雲さんの「意地といふものかも知れず茄子の棘」だった。続く7点も而雲さんの「鋸を挽けば木の香や夏めける」の一句。次いで三席6点は「素足にて土踏んでみる喜寿の朝 大澤水牛」と「「雑巾で磨きし廊下夏めきぬ 横井定利」の二句だった。以下5点が3句、4点9句、3点9句、2点11句、1点40句と続いた。相変わらずの激戦だが、今回は特に4点、3点が目立った。3点以上獲得した句を季語別に掲げる。

「夏めく」

鋸を挽けば木の香や夏めける     今泉恂之介

雑巾で磨きし廊下夏めきぬ      横井 定利

腐葉土の芳しき香の夏めきて     金田 青水

夏めいて陽気な雨となりにけり    嵐田 啓明

夏めきて床屋のはさみ動き出す    植村 博明

夏めくや塩気のつよき握り飯     大下 綾子

夏めくや背になじみきしランドセル  須藤 光迷

夏めくや夜風を入れるレストラン   堤 てる夫

製糸場百年煉瓦に夏兆す       杉山 智宥

夏めくや棚田に映る風の影      髙石 昌魚

夏めきて水重くなる神田川      高橋ヲブラダ

夏めくや被災の海の息遣ひ      水口 弥生

「茄子」

意地といふものかも知れず茄子の棘  今泉恂之介

焼き茄子や宇宙飛行士帰還せり    嵐田 啓明

茄子紺や宇宙に果てはありますか   大沢 反平

煮て焼いて炒めて漬けて茄子の膳   直井  正

弁当の中に程よき小茄子かな     大熊 万歩

賀茂茄子の特等席の八百屋かな    大熊 万歩

茄子苗の早も小さな花ひとつ     大澤 水牛

焼茄子を剥けば可憐なうすみどり   髙瀨 大虫

「当季雑詠」

素足にて土踏んでみる喜寿の朝    大澤 水牛

腹の傷ゆつくりさすり衣がへ     金田 青水

あめんぼの足の先より二つの輪    星川 佳子

職に在りしごと大股に夏日影     横井 定利

ポリープを取られ戻れば大夕焼    須藤 光迷

閑かなる山寺を這ふ若葉風      水口 弥生

《参加者》(出席)嵐田啓明、井上庄一郎、今泉恂之介、大倉悌志郎、大澤水牛、大沢反平、澤井二堂、杉山智宥、鈴木好夫、髙石昌魚、高瀬大虫、高橋ヲブラダ、堤てる夫、徳永正裕、直井正、廣上正市、水口弥生。(投句参加)池村実千代、植村博明、大熊万歩、大下綾子、岡田臣弘、金田靑水、久保田操、須藤光迷、田中頼子、野田冷峰、藤野十三妹、星川佳子、村田佳代、横井定利。

☆     ☆     ☆

なお、句会前日の5月20日夕刻、日経俳句会の幹事だった吉野光久氏が亡くなった。2年半前に悪性リンパ腫が発見され、検査・治療に何回か入院、今年に入って大いに元気を回復し、3月の酔吟会例会に颯爽登場、「病躯ゆるされて春野に歩き出す」という素晴らしい句で最高点を獲得、出席者一同から拍手喝采を浴びた。「しばらくは夜間の外出は控えねばならないが、昼間なら大丈夫なので、これからは酔吟会例会に出席します」と宣言された記憶が新しいだけに、この訃報には会員一同言葉を失った。

吉野邸に詰めかけていた同期生の堤てる夫さんが遅れて句会会場に現れ、故人のことをしみじみ語り、一同深く冥福を祈った。

(報告 大澤水牛)

 

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