番町喜楽会第200回例会

 

水牛句「席譲る子」が最高6点、二席は水馬句「ママチャリ」

「十一月」と「大根」を詠む

番町喜楽会は令和4年11月の例会(通算第200回)を7日、東京・九段下の千代田区生涯学習館で開催した。18人から投句があり、11人が顔を揃えた。兼題は「十一月」と「大根」。選句6句(欠席者5句)で句会を進めた結果、大澤水牛さんの「はにかみて席譲る子や秋うらら」が6点でトップ、二席5点に谷川水馬さんの「ママチャリの前は大根子は後ろ」が入った。三席は4点で澤井二堂さんの「猫の手の温かき日や十一月」、須藤光迷さんの「月天心終着駅で待つ始発」、前島幻水さんの「子らも来て妻の傘寿の菊の宴」の3句が並んだ。3点が8句で、2点が15句、1点が24句と得点がばらけた。兼題別の高点句(3点以上)は次の通り。

「十一月」

猫の手の温かき日や十一月              澤井 二堂

十一月行きつ戻りつ冬になる             田中 白山

十一月実の落ち終えて木々眠る            田中 白山

列車待つ十一月の足湯かな              谷川 水馬

「大根」

ママチャリの前は大根子は後ろ            谷川 水馬

大根干し海の風良し日和良し             谷川 水馬

鯨肉の潮味浸みる大根煮               中村 迷哲

「当季雑詠」

はにかみて席譲る子や秋うらら            大澤 水牛

月天心終着駅で待つ始発               須藤 光迷

子らも来て妻の傘寿の菊の宴             前島 幻水

祖母が着て母着た晴れ着七五三            池内 的中

コスプレの少女の夜寒渋谷駅             徳永 木葉

(二百回例会に寄せて)

善き人の往き交う句会秋闌ける            堤 てる夫

《参加者》【出席11人】池内的中、今泉而云、大澤水牛、金田青水、須藤光迷、高井百子、田中白山、玉田春陽子、堤てる夫、廣田可升、前島幻水。【投句参加者7人】嵐田双歩、澤井二堂、谷川水馬、徳永木葉、中村迷哲、星川水兎、向井愉里。

(報告 須藤光迷)

 

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日経俳句会第213回例会

36人参加「十月」「黄落」を詠む

光迷句「家族葬」が最高12点、百子句「妻の早足」が9点で続く

日経俳句会は10月19日、令和4年10月例会(通算213回)を鎌倉橋の日経広告研究所会議室で開いた。朝晩寒くなり晩秋にふさわしい夕べ、14人が出席し賑やかな句会となった。「十月」と「黄落」の兼題に36人から108句の投句があり、6句選(欠席は5句)の結果、須藤光迷さんの「家族葬にてとの便り秋時雨」が12点で一席に輝いた。二席は高井百子さんの「秋天や妻の早足追ひつけず」で9点、三席には向井愉里さんの「十月をあれこれ詰めて二段重」が8点で続いた。そのほか、先月入会したばかりの溝口戸無広さんの「十月や空へと続く千枚田」など、3句が6点で並んだ。以下、5点3句、4点3句、3点14句、2点22句、1点24句。4点以上が12句と少なく、まんべんなく得票した。兼題別の高点句(3点以上)は以下の通り。

「十月」

十月をあれこれ詰めて二段重             向井 愉里

十月の昭和の五輪ふと浮ぶ              久保田 操

十月や空へと続く千枚田               溝口戸無広

十月やベッドの脇に予備毛布             大澤 水牛

十月や茶色の上着取り出して             植村 方円

十月の果実に我が身甘やかす             大下 明古

十月や夢百歳へ十五年                岡田 鷹洋

十月や三年ぶりの旅に出る              岩田 三代

十月の窓の明かりの暖かさ              中嶋 阿猿

十月の大気を吸ひて太極拳              中村 迷哲

「黄落」

黄落や踏んだ踏まぬの通学路             伊藤 健史

黄落にくるまれ眠る城趾かな             嵐田 双歩

夕映えの地獄の門に黄落す              須藤 光迷

黄落やゴッホの顔の無精ひげ             谷川 水馬

黄落や横浜日本大通り                廣上 正市

黄落の一葉拾いつ墓地探し              藤野十三妹

黄落の夕陽を掬ふボートかな             星川 水兔

「当季雑詠」

家族葬にてとの便り秋時雨              須藤 光迷

秋天や妻の早足追ひつけず              高井 百子

遺句集を編みて深々寒露の夜             大澤 水牛

蔦巻くや故郷の家は朽ち果てて            工藤 静舟

渡り鳥タワー見ゆると鳴き交はす           今泉 而云

幼子が母呼ぶ道に金木犀               岩田 三代

匂ひくる金木犀を探す路地              久保田 操

お互ひに立派な腹よ秋刀魚焼く            谷川 水馬

ゴム巻きの愛機を放つ天高し             中村 迷哲

《参加者》【出席14人】嵐田双歩、今泉而云、岩田三代、植村方円、大澤水牛、岡田鷹洋、金田青水、篠田朗、杉山三薬、鈴木雀九、堤てる夫、徳永木葉、中村迷哲、星川水兎。【投句参加22人】池村実千代、伊藤健史、大沢反平、大下明古、加藤明生、工藤静舟、久保田操、澤井二堂、須藤光迷、高井百子、髙石昌魚、高橋ヲブラダ、谷川水馬、中沢豆乳、中嶋阿猿、旙山芳之、廣上正市、藤野十三妹、溝口戸無広、水口弥生、向井愉里、横井定利。 (報告 嵐田双歩)

 

 

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第199回番町喜楽会

最高5点に「草相撲」迷哲句

17人参加「穭田」「鹿」を詠む

番町喜楽会は令和4年10月の例会(通算第199回)を1日、東京・九段下の千代田区生涯学習館で開催した。17人から投句があり、15人が顔を揃えた。兼題は「穭田」と「鹿」。選句は6句( 欠席者は5句) で句会を進めた結果、中村迷哲さんの「打っちゃれと客も反身の草相撲」が5点でトップとなり、二席4点には嵐田双歩さんの「姥捨の田ごとの穭うすみどり」をはじめ、須藤光迷、今泉而云、谷川水馬、玉田春陽子、廣田可升さんの6人7句がひしめき合う結果となった。以下、3点が6句、2点が10句、1点が24句であった。兼題別の高点句(3点以上)は次の通り。

「穭田」

姥捨の田ごとの穭うすみどり            嵐田 双歩

穭田や米粉のパンの試食会             須藤 光迷

陽をはじく穭田続く車窓かな            星川 水兎

「鹿」

鹿の立つ丘の稜線夕焼けて             今泉 而云

秩父路や門扉に鹿の皮を干し            玉田春陽子

赤鳥居背にして鹿の家路かな            廣田 可升

売れ筋は鹿肉カレー道の駅             須藤 光迷

「当季雑詠」

打っちゃれと客も反身の草相撲           中村 迷哲

妻と越す七十の坂温め酒              谷川 水馬

声潜め第九をさらふ夜長かな            廣田 可升

恐竜の眠りは深し芒原               須藤 光迷

続柄は「未届の妻」秋入梅             高井 百子

秋の夜妻と取り合ふ万華鏡             谷川 水馬

星月夜二人暮らしの灯の一つ            玉田春陽子

≪参加者≫【出席15人】嵐田双歩、今泉而云、大澤水牛、金田青水、須藤光迷、高井百子、田中白山、谷川水馬、玉田春陽子、堤てる夫、徳永木葉、中村迷哲、廣田可升、前島幻水、向井愉里。【投句参加2人】澤井二堂、星川水兎。

(報告 谷川水馬)

 

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日経俳句会第212回例会

35人参加、「竹の春」と「鰯」を詠む

最高8点に「鰯煮る」水兎句、二席は「京言葉」水馬句

溝口戸無広さんが入会

日経俳句会は令和4年9月例会(通算212回)を21日(水)に鎌倉橋の日経広告研究所会議室で開いた。台風一過の爽やかな秋気の中、13人が出席し、高点続出の句会を楽しんだ。兼題は「竹の春」と「鰯」。35人から105句の投句があり、6句選(欠席は5句)の結果、星川水兎さんの「梅干は三尾に一つ鰯煮る」(原句「二匹」を「三尾」に改作)が最高8点に輝いた。二席7点には谷川水馬さんの「竹の春葉音に交じる京言葉」が入った。三席6点には岩田三代さんの「人住まぬ里を覆ひて竹の春」をはじめ、久保田操さんの「路地裏に一坪ほどの竹の春」と「鰯焼く遠き昭和の夕支度」の2句、植村方円さんの「押し黙る固定電話や長き夜」、中嶋阿猿さんの「スケボーの子の股座から鰯雲」の計5句が並んだ。以下、5点3句、4点7句、3点10句、2点21句、1点23句だった。なお今月から日経大阪本社勤務の溝口知宏(俳号=戸無広)さんが入会し、投句、選句に加わった。兼題別の高点句(三点以上)は以下の通り。

「竹の春」

竹の春葉音に交じる京言葉              谷川 水馬

人住まぬ里を覆ひて竹の春              岩田 三代

路地裏に一坪ほどの竹の春              久保田 操

竹の春古都には古都の時間軸             嵐田 双歩

鋸ひけば青き粉飛ぶ竹の春              伊藤 健史

竿売りの絶えて久しき竹の春             篠田  朗

年甲斐もなきシャツの色竹の春            髙石 昌魚

「鰯」

梅干は三尾に一つ鰯煮る               星川 水兎

鰯焼く遠き昭和の夕支度               久保田 操

海の青まとふ鰯の悲しき目              岩田 三代

鰯焼く土光臨調いま一度               須藤 光迷

大鰯誉められ叩かれつみれ汁             中沢 豆乳

入れ食いの鰯今夜はつみれ鍋             今泉 而云

一山で売られ鰯の目哀しき              徳永 木葉

万を超す鰯渦巻く大水槽               中村 迷哲

「当季雑詠」

押し黙る固定電話や長き夜              植村 方円

スケボーの子の股座から鰯雲             中嶋 阿猿

芋の露かへし幼女にかへる母             大澤 水牛

孫の問ふ何であの雲いわし雲             高井 百子

雲抱きていざよふ月や終電車             徳永 木葉

国葬に国論割るる九月かな              加藤 明生

等々力の渓間に秋気つと走る             金田 青水

爽やかや久方ぶりの理髪店              髙石 昌魚

お隣の領空侵し庭木刈る               旙山 芳之

王冠を乗せし棺や秋薔薇               星川 水兎

天高し窓を磨けば心澄む               溝口戸無広

秋蝶の不意に来てまた何処へと            向井 愉里

《参加者》【出席13人】嵐田双歩、今泉而云、大澤水牛、岡田鷹洋、金田青水、澤井二堂、杉山三薬、鈴木雀九、堤てる夫、徳永木葉、中村迷哲、星川水兎、向井愉里。【投句参加22人】池村実千代、伊藤健史、岩田三代、大沢反平、植村方円、加藤明生、工藤静舟、久保田操、篠田朗、須藤光迷、高井百子、髙石昌魚、高橋ヲブラダ、谷川水馬、中沢豆乳、中嶋阿猿、野田冷峰、旙山芳之、廣上正市、藤野十三妹、溝口戸無広、横井定利。  (報告 中村迷哲)

 

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等々力溪谷・九品仏吟行を開催

9月15日(木)、杉山三薬幹事の発案のもと日経俳句会・番町喜楽会一行11人は等々力溪谷・九品仏を巡る吟行を行った。都会の中らしからぬ等々力溪谷の幽邃な「ハケ」を堪能したあと、九品仏浄真寺の仏たち・大銀杏・大澤家の墓所などをめぐった。歩いたあとは、須藤光迷さん推奨の自由ケ丘・スペインレストランで打ち上げ、秋の一日を大いに楽しんだ。吟行を終えメール句会を実施、各人3句の投句で合計33句。5句選の結果、岩田三代さんの「うそつくな閻魔の声や秋暑し」と徳永木葉さんの「酔ひもせで逆の電車に乗る秋ぞ」が6点を集め最高点に。次いで杉山三薬さんの「はけの水落ちゆくところ渓の秋」、谷川水馬さんの「秋茄子になんと蜂蜜赤ワイン」の2句が4点。3点句は5句あり、大澤水牛さんの「パエージャの鍋底掻いて夜は長し」、金田青水さんが「ハケと云ふ異世界つつむ法師蝉」「豊饒の銀杏垂るる九品佛」の二つ、須藤光迷さんの「相場師の墓広きこと天高し」、玉田春陽子さんの「水引の見て見て見と咲きにけり」が入った。さらに2点5句、1点10句と、合計55点の点数がまんべんなくばらけた。上掲句を除いた参加者の作品は以下の通り。

秋の蚊の阿弥陀如来の手にとまり      嵐田 双歩

いにしへの人眠る崖青みかん        岩田 三代

稚児大師ひっそりと在り彼岸花       大澤 水牛

秋宵の自由が丘満ち足りて         金田 靑水

等々力の沢遊歩するアメンボと       澤井 二堂

秋の季語あるかもパエリア鍋の中      杉山 三薬

溪谷を渡り崖道曼殊沙華          須藤 光迷

付きまとふ秋の蚊払ひ不動尊        谷川 水馬

賽銭に閻魔道説く寺の秋          玉田春陽子

いつどこで秋の藪蚊の刺した痕       徳永 木葉

実を踏みて空を仰げば大銀杏        向井 愉里

(まとめ 徳永木葉)

 

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酔吟会第158回例会

江東区芭蕉記念館で初開催

15人で「秋彼岸」「夜長」詠む

最高7点水牛句「やっぱり九月」、次席てる夫句「蕎麦の花」6点

酔吟会は9月10日(土)、江東区常盤の「芭蕉記念館」の会議室で9月例会を開催した。コロナ禍対応の制限で会場探しに苦労していたが、句会世話役の廣田可升さんの尽力で同館会議室借用の途が開け、この日の初使用となった。隅田川に沿って立つ記念館は、昭和56年の開館、大正、昭和にかけて衆院議員を務め、俳人としても活躍した真鍋儀十氏の資料1200点の寄贈も得た。3階建てのビルは1階の大会議室はじめ各階に展示室、資料室などを配置。和風のくぐり門を入ると、一方に小規模ながら滝を配した日本庭園もある。芭蕉記念館の一帯は、芭蕉が奥の細道に出立するまでの住居であった「採茶庵」(さいと)跡はじめ俳句愛好家には見逃せない史跡が点在する。句会の前のひと時を大小の公園の木陰で大川の風に親しんだ同人もいたようだった。前回例会以来、欠席投句をやめた結果、この日の出席者は15人、兼題は「秋彼岸」と「夜長」で投句は雑詠合わせ一人5句(投句総数75句)、選句6句で進めた結果、最高点は大澤水牛さんの7点「この風はやっぱり九月隅田川」。次席は6点で「蕎麦の花峠越えれば青木村」の堤てる夫句。三席は5点「石磨き石に磨かれ秋の水」の玉田春陽子句だった。続く4点句は金田青水(2句)、春陽子、高井百子、今泉而云の計5句。3点7句、2点7句、1点16句だった。兼題別の高点句(3点以上)は次の通り。

「秋彼岸」

秋彼岸苅田にてなす茣蓙遊山       金田 青水

秋彼岸とうとう更地母の家        高井 百子

不揃ひの餃子を包み秋彼岸        玉田春陽子

秋彼岸バイク和尚のフルフェイス     杉山 三薬

「夜長」

じっくりと煮豚づくりによき夜長     大澤 水牛

すぐ戻りますと張り紙BAR夜長     玉田春陽子

夜長し過去の若気が走馬灯        徳永 木葉

「当期雑詠」

この風はやっぱり九月隅田川       大澤 水牛

蕎麦の花峠越えれば青木村        堤 てる夫

石磨き石に磨かれ秋の水         玉田春陽子

英女王逝くや遥かな秋の虹        今泉 而云

爽やかにあとの一人を皆で待つ      金田 青水

取り壊す家やまず引く烏瓜        今泉 而云

猫じゃらし五分刈り頭陽に透けて     谷川 水馬

大木に添ふ野仏に千草添へ        向井 愉里

【参加者15人】嵐田双歩、今泉而云、大澤水牛、大沢反平、岡田鷹洋、金田青水、久保道子、杉山三薬、須藤光迷、高井百子、谷川水馬、玉田春陽子、堤てる夫、徳永木葉 向井愉里。  (まとめ 高井百子)

 

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番町喜楽会第198回例会

 

「九月」と「新蕎麦」を詠む

水兎さん「天」「地」「人」総取り

番町喜楽会は令和4年9月の例会(通算第198回)を5日、東京・九段下の千代田区生涯学習館で開催した。18人から投句があり、会場には13人が顔を揃えた。兼題は「九月」と「新蕎麦」、投句は3句以上5句以内、選句は6句(欠席者は5句)とした結果、星川水兎さんの「焼き味噌と一合で待つ走り蕎麦」が6点でトップ、次席5点に今泉而云さんの「日時計の影に気付きし九月かな」、中村迷哲さんの「父母の墓参らぬままに赤蜻蛉」、星川水兎さんの「傘で押しくぐり抜けるや萩の雨」の3句が並んだ。三席4点には中村迷哲さんの「新蕎麦を神と分け合ふ御師の宿」と廣田可升さんの「名水をたづねて久留里秋あかね」、そして星川水兎さんの「あれもせずこれもせぬまま九月来」と「木のへらで咲きし九月の菊の菓子」の4句。水兎さんは投句5句中の4句が「6点、5点、4点、4点」で、会場をどよめかせた。なお三点は5句だった。兼題別の高点句(三点以上)は次の通り。

「九月」

日時計の影に気付きし九月かな        今泉 而云

あれもせずこれもせぬまま九月来       星川 水兎

木のへらで咲きし九月の菊の菓子       星川 水兎

世の中も吾もへたりて九月入る        高井 百子

珈琲は深煎りのよき九月かな         廣田 可升

「新蕎麦」

焼き味噌と一合で待つ走り蕎麦        星川 水兎

新蕎麦を神と分け合ふ御師の宿        中村 迷哲

脱サラの亭主蘊蓄走り蕎麦          徳永 木葉

「雑詠」

父母の墓参らぬままに赤蜻蛉         中村 迷哲

傘で押しくぐり抜けるや萩の雨        星川 水兎

名水をたづねて久留里秋あかね        廣田 可升

ぐい吞みと言うより茶碗新酒酌む       玉田春陽子

衣被つるり出て来ぬ女優の名         徳永 木葉

【参加者】(出席13人)嵐田双歩、今泉而云、大澤水牛、金田青水、須藤光迷、高井百子、田中白山、玉田春陽子、堤てる夫、徳永木葉、中村迷哲、廣田可升、向井愉里。(投句参加5人)澤井二堂、谷川水馬、星川水兎、前島幻水、山口斗詩子。  (報告・須藤光迷)

 

 

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日経俳句会第211回例会

34人で「八月」「葡萄」を詠む

最高12点に「水風呂」水馬句

日経俳句会は令和4年8月例会(通算211回)を17日(水)に鎌倉橋の日経広告研究所会議室で開いた。残暑とコロナ感染の拡大で出席者は11人にとどまったが、活発なやりとりの句会となった。「八月」と「葡萄」の兼題に34人から102句の投句があり、6句選(欠席選句は5句)の結果、谷川水馬さんの「水風呂に西瓜も子らも冷やしけり」が12点と断トツの一席だった。さらに水馬さんは「葡萄棚まばらに透けて富士青し」が9点で一、二席を占め気を吐いた。同じく二席9点に中村迷哲さんの「愚かさを重ねゐる世や原爆忌」が並び、三席には高井百子さんの8点句「八月にあたしを産んだ母教師」が据わった。そのほか、伊藤健史さんの「八月や虫のむくろの澄んだ羽」など5句が6点で並んだ。以下、5点2句、3点6句、2点14句、1点28句と続き、特定の句に人気が集中した結果となった。兼題別の高点句(3点以上)は以下の通り。

「八月」

八月にあたしを産んだ母教師             高井 百子

八月や虫のむくろの澄んだ羽             伊藤 健史

八月や厨に氷ころぶ音                廣上 正市

八月は少し重たきカレンダー             横井 定利

八月やお洒落心も遠くなり              池村実千代

うとうととしつつ八月やり過ごす           植村 方円

八月や此の世を去るを思い初め            鈴木 雀九

八月の風は冥府の匂ひあり              高橋ヲブラダ

「葡萄」

葡萄棚まばらに透けて富士青し            谷川 水馬

葡萄棚肩に触れたる重き房              徳永 木葉

野趣捨てた葡萄ばかりの地下売り場          植村 方円

ちゃぶ台の葡萄かこみて父を待つ           金田 青水

鉄線と防犯カメラ葡萄園               高井 百子

ハモニカを吹くが如くにデラウエア          今泉 而云

巨峰剥くお前往時は桐の箱              杉山 三薬

「当季雑詠」

水風呂に西瓜も子らも冷やしけり           谷川 水馬

愚かさを重ねゐる世や原爆忌             中村 迷哲

スニーカー軍靴にさせじ敗戦忌            植村 方円

ポストまで手紙重たき残暑道             横井 定利

蜥蜴しばし我を見つめて動かざる           今泉 而云

円空とカミオカンデに秋の風             須藤 光迷

日盛りの今年はうすき蝉時雨             星川 水兎

ありがとう友の呟き夏越せず             岡田 鷹洋

《参加者》【出席11人】今泉而云、植村方円、大澤水牛、岡田鷹洋、篠田朗、杉山三薬、堤てる夫、徳永木葉、中村迷哲、星川水兎、向井愉里。【投句参加23人】嵐田双歩、池村実千代、和泉田守、伊藤健史、岩田三代、大沢反平、大下明古、加藤明生、金田青水、工藤静舟、久保田操、澤井二堂、鈴木雀九、須藤光迷、高井百子、髙石昌魚、高橋ヲブラダ、谷川水馬、中沢豆乳、中嶋阿猿、旙山芳之、廣上正市、横井定利。 (報告 嵐田双歩)

 

 

 

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番町喜楽会第197回例会

参加19人、「新涼」「茸」を詠む

最高7点は春陽子「毒茸」、二席に迷哲句、三席水馬句

番町喜楽会は8月6日(土)午後6時、九段下・千代田区生涯学習館で「新涼」と「茸」を兼題として令和4年8月例会(通算197回)を開催した。コロナ第七波の影響もあって出席者は10人にとどまったが、談論風発、大いに盛り上がった。投句者は19名で、投句総数95句。出席者6句、欠席者5句選で句会を進めた結果、玉田春陽子さんの「なんとまあ草間彌生や毒茸」が7点でトップに輝いた。二席は中村迷哲さんの「見も知らぬ茸の土産持て余す」が6点で続き、三席には谷川水馬さんの「実石榴の口を尖らせ風の中」の4点句が入った。以下、3点が13句、2点10句、1点が29句となった。今回の特徴は最高点が7点、二席6点、三席4点が1句ずつしか無く、3点が13句もひしめき合ったことと、谷川水馬さんが4点1句・3点4句の「5打数5安打」を記録したことであった。兼題別高点句(3点以上)は次の通り。

「新涼」

涼新た草取り終へし夕の縁            大澤 水牛

新涼の信濃は四葩秋桜              高井 百子

新涼やちろり買ひこむかっぱ橋          谷川 水馬

見ゆる風聞こゆる風や涼新た           玉田春陽子

秋涼し将門塚にヒール音             廣田 可升

「茸」

なんとまあ草間彌生や毒茸            玉田春陽子

見も知らぬ茸の土産持て余す           中村 迷哲

山の香のふはりと立つや茸便           今泉 而云

行く山は祖母しか知らぬ茸採           谷川 水馬

「雑詠」

実石榴の口を尖らせ風の中            谷川 水馬

秋立つや鉄瓶の湯に鉄の味            今泉 而云

八月はみちのく祭行脚かな            須藤 光迷

藪枯らし売地の札の迷ひ蔓            谷川 水馬

片足は雌に呉れたといぼむしり          谷川 水馬

内外の鬱を忘れる大夕焼け            堤 てる夫

晩夏光母の背中のお灸跡             星川 水兎

《参加者》【出席10人】今泉而云、大澤水牛、金田青水、須藤光迷、田中白山、谷川水馬、玉田春陽子、堤てる夫、徳永木葉、廣田可升。【投句参加9人】嵐田双歩、池内的中、澤井二堂、高井百子、中村迷哲、星川水兎、前島幻水、向井愉里、山口斗詩子。

(報告・谷川水馬、大澤水牛)

 

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日経俳句会第210回例会

「夏深し」と「滴り」を詠む

最高8点に「板の間」水兎句、二席に迷哲句と二堂句

日経俳句会は令和4年7月例会(通算210回)を20日(水)に鎌倉橋の日経広告研究所会議室で開いた。コロナ感染が急拡大していることもあり、出席者は13人とやや少なめだったが、暑さを吹き飛ばすような活発なやりとりの句会となった。兼題は「夏深し」と「滴り」。35人から105句の投句があり、6句選(欠席は5句)の結果、星川水兎さんの「板の間にぺたりと座り夏深し」が最高8点に輝いた。二席7点には中村迷哲さんの「葉を丸め受ける滴り山の味」と澤井二堂さんの「猛暑道傘で日陰を持ち歩く」が並び、三席6点には高井百子さん「夏ふかし窓辺に届く草の息」と岩田三代さん「苔つたふ滴り碧き玉となり」、中村迷哲さん「地下壕の滴り聞きし夜のあり」の3句が入った。以下、5点3句、4点6句、3点14句、2点18句、1点32句と続き、全体に点のバラける結果となった。兼題別の高点句(3点以上)は以下の通り。

「夏深し」

板の間にぺたりと座り夏深し         星川 水兎

夏ふかし窓辺に届く草の息          高井 百子

草千里地平遙かに夏深し           髙石 昌魚

ジャングルの朽ちし砲台夏深し        中村 迷哲

胡瓜蔓だらしなく延び夏深む         大澤 水牛

音大き家事を厭へり夏深し          大下 明古

夏深しマスク少女の目の力          杉山 三薬

夏深しノースリーブの薄き胸         流合 水澄

夏闌くやソーラーパネル捨畑に        廣上 正市

「滴り」

葉を丸め受ける滴り山の味          中村 迷哲

苔つたふ滴り碧き玉となり          岩田 三代

地下壕の滴り聞きし夜のあり         中村 迷哲

岩盤に嗚咽のごとく滴れり          向井 愉里

滴りに知らず呼吸を合はせをり        金田 青水

滴りにあひる玩具の浮かぶ里         鈴木 雀久

滴りや摩崖仏の眼涙ぐむ           髙石 昌魚

滴りや俺への弔辞君のはず          旙山 芳之

「当季雑詠」

猛暑道傘で日陰を持ち歩く          澤井 二堂

グローブの革の匂ひや晩夏光         大下 明古

夜濯ぎや男やもめの独り言          加藤 明生

あの人をいい人にして蝉時雨         杉山 三薬

自分らしく生きろといはれ冷奴        嵐田 双歩

水茄子を素手でつまんで相撲観る       植村 方円

浮島のやうに墓所ある青田かな        廣上 正市

駄々こねるパソコンなだめ拭う汗       須藤 光迷

降る雨のやはらかにあれ合歓の花       高井 百子

老鶯の伸び伸びとした声がする        堤 てる夫

投票所空気動かぬ暑さかな          水口 弥生

海鞘は駄目何んと云つても駄目はだめ     横井 定利

《参加者》【出席13人】嵐田双歩、今泉而云、岩田三代、植村方円、大澤水牛、大沢反平、岡田鷹洋、金田青水、篠田朗、杉山三薬、徳永木葉、中村迷哲、向井愉里。【投句参加22人】池村実千代、伊藤健史、大下明古、加藤明生、久保田操、澤井二堂、鈴木雀九、須藤光迷、高井百子、髙石昌魚、高橋ヲブラダ、谷川水馬、堤てる夫、中嶋阿猿、野田冷峰、流合水澄、旙山芳之、廣上正市、藤野十三妹、星川水兎、水口弥生、横井定利。   (報告 中村迷哲)

 

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