第76回銀鴎会例会

2月9日、日経本社ビル会議室で銀鴎会の第76回例会が開かれた。銀鴎会は隔月開催であり、12月は合同句会開催月のため、昨年10月以来久々の開催となった。

出席者は井上庄一郎、今泉恂之介、大倉悌志郎、大澤水牛、大沢反平、佐々木碩、澤井二堂、鈴木好夫、須藤光迷、高石昌魚、高瀬大虫、直井正、広上正市、藤野十三妹の14人。投句参加は金田青水、田中頼子、野田冷嶺、吉野光久の4人。投句5句、選句6句で句会を行った。

兼題は「春風」と「鶯」。最も人気を集めたのは「誰にでも笑ふ赤子に春の風 碩」で7点を獲得、次いで「春風がモネにパラソル描かせてる 好夫」の5点。4点は「野生馬のたてがみなぶる春の風 頼子」と「家も木も人も光らせ春の風 光迷」の2句で、3点は「春風や浅草駆ける人力車 正」など6句が並んだ。以下2点が5句、1点が34句だった。「雑詠」の高点句が1句も出ないというめずらしい結果になった。3点以上獲得句は以下の通り。

 

「春風」

誰にでも笑ふ赤子に春の風       佐々木 碩

春風がモネにパラソル描かせてる    鈴木 好夫

野生馬のたてがみなぶる春の風     田中 頼子

家も木も人も光らせ春の風       須藤 光迷

春風や浅草駆ける人力車         直井  正

春風や旅のカタログどさと来る     大澤 水牛

港出るヨット部の子ら春の風      金田 青水

 

「鶯」

鶯のお国訛りで話しをり        佐々木 碩

鶯や足湯は少しぬるめなり       須藤 光迷

仇討の史跡の寺の初音かな       広上 正市

 

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番町喜楽合同句会

二月六日(日)午後一時から第六十六回番町句会と第十九回喜楽会の合同句会が千代田区一番町の「いきいきプラザ一番町」会議室で開かれた。番町句会と喜楽会はどちらも双牛舎事務所で句会を開催、合同句会を重ねてお互いにおなじみになったことから、今句会で合併が提案され、異議無く承認された。これにより四月から新生「番町喜楽会」として新たなスタートを切ることになった。また、これまで四十九号まで発行してきた会報は、両会合併を機に第五十号から「番町喜楽会報」と改題することも決めた。

二月合同句会の出席者は井上啓一、今泉而雲、岩沢克恵、大澤水牛、笹本塘外、高橋楓子、谷川透、玉田春陽子、野見山恵子、前島厳水、三好六甫の十一人。投句参加が須藤光迷、高井百子、高瀬大虫、山口詩朗の四人。

この日の兼題は「日脚伸ぶ」と「木瓜の花」の二題。投句五句、選句七句で句会を開催した。最高点は四点で「木瓜活けて自画像暗きより浮かぶ 塘外」「斑鳩の崩れ土塀や木瓜の花 水牛」「探梅や向ひの山に銃の音 而雲」「日脚伸ぶ男もすなる立ち話 光迷」「久々に隣りの気配木瓜の花 楓子」の五句が並ぶという珍しい結果になった。次いで三点が三句、二点十一句、一点が二十六句出た。兼題別高点句は次の通り。

 

「日脚伸ぶ」

日脚伸ぶ男もすなる立ち話     須藤 光迷

日脚伸ぶ港の丘の人去らず     岩沢 克恵

 

「木瓜の花」

木瓜活けて自画像暗きより浮かぶ  笹本 塘外

斑鳩の崩れ土塀や木瓜の花     大澤 水牛

久々に隣りの気配木瓜の花     高橋 楓子

江戸小紋染めて六代木瓜の花    今泉 而雲

 

「雑詠」

探梅や向ひの山に銃の音      今泉 而雲

人も竿も糸も動かぬ寒の釣     笹本 塘外

 

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酔吟会第91回例会

 酔吟会の平成23年度幕開け句会(通算91回)は1月22日(土)午後1時から神田鎌倉橋交差点そばの日経第二別館会議室で開かれ、12人が出席、7人が投句参加した。
 出席者は今泉恂之介、大澤水牛、大沢反平、大平昭生、片野涸魚、金指正風、黒須烏幸、澤井二堂、田村舟平、徳永正裕、星川佳子、山口詩朗。投句参加は原文鶴、大石柏人、堤てる夫、野田冷峰、藤野十三妹、藤村詠悟、吉野光久。
 兼題は「寒」と「白菜」、投句5句。欠席投句が非常に多かったため選句は8句とした。選句披講の結果、この日の最高点は5点で「ラグビーのやうに白菜投げ渡す 涸魚」と「金閣で雪に会ひしと旅便り 正風」の二句、次いで4点が「掛け干しの沢庵の名は寒太郎 柏人」の一句だった。以下3点が8句、2点10句、1点38句と続いた。兼題別の3点以上獲得句は次の通り。

「寒」
下駄の緒のきつく緊りて寒の入り    星川 佳子
大寒や真牡蠣のごとく神輿蔵      山口 詩朗
野良猫に説諭する妻寒の庭       大澤 水牛

「白菜」
ラグビーのやうに白菜投げ渡す     片野 涸魚
白菜の輝いてゐる道の駅        大平 昭生

「雑詠」
金閣で雪に会ひしと旅便り       金指 正風
掛け干しの沢庵の名は寒太郎      大石 柏人
持ち寄りて本の嵩増す炬燵かな     山口 詩朗
初雪や一段高き妻の声         大沢 反平
一線にサーファー乗せて冬の波     吉野 光久
一湾を大網にして鰤を追ふ       徳永 正裕

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水木会第95回例会

 水木会の平成23年度第1回例会(通算95回)は1月19日午後6時半から日経ビル7階会議室で行われ、22人が出席、5人が投句参加、投句総数134句という盛況だった。
 兼題は「日脚伸ぶ」と「鰤(ぶり)」。6句選句で句会を行った結果、投句全体の6割強に当たる83句に点が入るという、いかにも幕開け句会らしい賑やかさを見せた。最高点は6点で「酒蔵の高窓一つ日脚伸ぶ 詩朗」「微動だにせぬ妻の座や鏡餅 光迷」の2句。5点句が無く、4点が「大仏の一重まぶたや日脚伸ぶ 聖子」「日脚伸ぶ新幹線は北へ延ぶ 明男」「日に一句日に一句づつ日脚伸ぶ 恂之介」「鰤割って男の顔になりにけり 啓子」の4句、3点17句、2点16句、1点44句だった。兼題別の3点以上獲得句は次の通り。

「日脚伸ぶ」
酒蔵の高窓一つ日脚伸ぶ      山口 詩朗
大仏の一重まぶたや日脚伸ぶ    今村 聖子
日脚伸ぶ新幹線は北へ延ぶ     加藤 明男
日に一句日に一句づつ日脚伸ぶ   今泉恂之介
こやし振る一掴みづつ日脚伸ぶ   広上 正市
日脚伸ぶマネキン両手伸ばしをり  星川 佳子
新しき企画決定日脚伸ぶ      高石 昌魚
皇居一周二周三周日脚伸ぶ     橫井 定利
傾げたる笑ひ仏や日脚伸ぶ     大澤 水牛
日脚伸ぶ海辺の砂を深く踏む    佐々木 碩
窓際のぬるき珈琲日脚伸ぶ     嵐田 啓明

「鰤(ぶり)」
鰤割って男の顔になりにけり    小林 啓子
寒鰤の小さき眼は海の色      加藤 明男
腕組みて仁王立ちして鰤の潮    今泉恂之介
寒鰤や鍛え抜きたる糶の声     大熊 万歩
鰤起し出でゆく舟のもう見えず   山口 詩朗
ぶりかぶら加賀に嫁ぎし姉のあり  堤 てる夫
荒縄を呑み込んでいる吊し鰤    佐々木 碩
鰤ながめ鱈を求めて帰りけり    金田 青水

「雑詠」
微動だにせぬ妻の座や鏡餅     須藤 光迷
正月の顔して来たる孫二人     吉野 光久
寝坊して駅伝すでに権太坂     大澤 水牛
駅伝を見ると決めたる炬燵かな   今泉恂之介

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番町句会第65回例会

番町句会の平成23年第1回例会(通算65回)が1月15日(土)午後1時、麹町・番町ハイム会議室で開かれた。
今回の兼題は「風邪」と「福寿草」。参加者は井上啓一、今泉而雲、大澤水牛、高井百子、高瀬大虫、高橋楓子、野見山恵子、前島厳水、三好六甫の常連に喜楽会の笹本塘外、玉田春陽子を加えた11人。山口詩朗が投句参加した。
投句5句、選句6句で句会を行う。最高点は6点で喜楽会の玉田春陽子が「手枕の退屈の先福寿草」で卯年最初の栄冠を勝ち得た。続く5点は「あれこれと思ひつくらし風邪の妻 水牛」の一句。4点は投句参加山口詩朗の「人誹る風邪で荒れたる舌をもて」「寒三日老犬いまだ月に吼ゆ」2句と「風邪病みて治りて老いてゆくらしき 而雲」の合わせて3句だった。それに続く3点句がひとつもなく、2点が15句もひしめき合い、1点13句という珍しい結果になった。兼題別の話題句は以下の通り。
「風邪」
あれこれと思ひつくらし風邪の妻     大澤 水牛
人誹る風邪で荒れたる舌をもて      山口 詩朗
風邪病みて治りて老いてゆくらしき    今泉 而雲
いも粥の炊く匂ひして風邪の床      高橋 楓子
風邪引きや薬師如来のやうな女      高橋 楓子
風邪の子や目だけになりて公園に     井上 啓一
風邪の熱下がりし朝の新しき       高瀬 大虫
風邪声にやさしさもどり妻の声      前島 厳水
風邪直りシャンソンなどを口ずさみ    三好 六甫
「福寿草」
手枕の退屈の先福寿草          玉田春陽子
懐妊の眉うすうすと福寿草        山口 詩朗
福寿草三つ四つ咲きて心足る       山口 詩朗
少年のシュート外れて福寿草       前島 厳水
戸の隙間はしる日差しや福寿草      玉田春陽子
誰が愛でし小柄にひとつ福寿草      井上 啓一
「雑詠」
寒三日老犬いまだ月に吼ゆ        山口 詩朗
犬に似し兎の賀状孫より来        山口 詩朗
蝋梅や境内に買ふ薄荷糖         今泉 而雲
年男高足蟹の大胡座           高井 百子
七福を三福巡りてガード下        笹本 塘外

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第6回日経俳句会賞贈賞式

12月15日の年次総会、合同句会に続いて行われた忘年懇親会で、平成22年度日経俳句会賞の受賞作品発表と贈賞式が行われた。受賞作は昨年11月から今年11月までの例会に投句された全会員の作品から優秀作品を選び出し、幹事会が決定した。本年度の受賞作品と作者は以下の通りで、高橋淳会長から賞状と賞品が贈呈された。

「日経俳句会英尾賞」
歌舞伎座の跡形もなく後の月      橫井 定利
(10月・第93回水木会)

「日経俳句会賞」
透き通る兎の耳の小六月        大平 昭生
(21年11月・第84回酔吟会)

ひと電車待つ間のつるべ落としかな   山口 詩朗
(10月・第93回水木会)

コオロギや地デジ地デジと言うなかれ  杉山 智宥
(10月・第93回水木会)

かなかなのふつと止みたる虚空かな   澤井 二堂
(8月・第74回銀鴎会)

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日経俳句会忘年合同句会

 12月15日午後6時半から、年次総会に引き続き「日経俳句会忘年合同句会」が開かれた。兼題は「北風」と「餅」。雑詠1句を含め投句は3句。句会欠席で投句参加者も加えて42名から合計126句が寄せられた。幹事がそれらを選句表に整え、参加者にメールやファックスで送信し、選句5句を送ってもらい、句会では幹事がその結果を発表、高点句から順に感想を述べ合う合評会を行った。
 選句集計の結果は最高点が12点で高石昌魚氏の「一目みて分かる母の字餅届く」。次席が11点で深田森太郎氏の「北風や湖面の皺の伸び縮み」。三席が9点で廣上正市氏の「すっぱりと切られてをりし餅の豆」だった。5点以上獲得の句は以下の通り。
「北風」
 北風や湖面の皺の伸び縮み       深田森太郎
 北風や指さき出して籤を売る      山口 詩朗
 北風や北前船の波止の跡        徳永 正裕

「餅」
 一目みて分かる母の字餅届く      高石 昌魚
 すっぱりと切られてをりし餅の豆    廣上 正市
 故郷の便り絶えけり餅を焼く      大沢 反平
 無造作に餅搗く力士尻に汗       澤井 二堂
 餅食ひて満更の運思ひけり       鈴木 好夫

「雑詠」
 冬帽子鏡の中に父の顔         高石 昌魚
 職辞してふだん着ぬくし十二月     山口 詩朗
 冬晴れや八十過ぎてハンチング     大石 柏人

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平成22年度日経俳句会年次総会

 12月15日午後6時、大手町・日経ビルで日経俳句会の平成22年度年次総会が開かれた。会員36人が出席、(1)22年度の活動報告、(2)23年度活動方針、(3)会計報告、(4)23年度役員選出が報告され、いずれも幹事会提案通り承認された。
 22年度は銀鴎会、水木会、酔吟会合わせて20回の例会・句会、合同句会2回を行った。また、「逆回り奥の細道吟行大会」を4月に新潟県・市振、出雲崎、弥彦などをめぐる「越後路の巻」、10月には秋田県象潟、山形県酒田、鶴岡、羽黒山を回る「出羽路の巻」を実行した。さらに小吟行として「日本橋七福神巡り」(1月)、「横浜三渓園と中華街」(2月)、「目黒庭園美術館と自然教育園」(3月)、「英尾先生墓参と多摩森林科学園の桜」(4月)、「水元公園花菖蒲とスカイツリー、浅草散歩」(6月)、「東京国立博物館庭園茶会と則天武后の書鑑賞」(11月)、「武蔵野・平林寺紅葉狩り」(11月)を実施した。このように22年度は多彩な行事を繰り広げたが、23年度も同様に活動して行く方針が打ち出され、全員の賛同を得た。
 日経俳句会の会計報告では、会費収入、会報売り上げなども順調で、財政状況は好転して黒字基調になり、安定基盤を築ける見通しが立ったことが報告された。
 新年度の役員選出では立候補者が出ず、今年度と同じ顔ぶれで幹事会を構成することが決まった。ただし、京都在住の平山一雄幹事から「なかなか東京に来られない状況なので退任させていただきたい」との強い希望が寄せられたため、同氏の退任を了承した。平山氏は日経俳句会創設時に力を尽くされ、同会の基礎固めと発展に多大な貢献をされたことに対して会員一同から感謝の念を表した。
 23年度の幹事会メンバーは高橋淳(会長)、大澤水牛(幹事長)、今泉恂之介、和泉田守(事務局長)、大平睦子(会計担当)、田中頼子、堤てる夫、徳永正裕、廣上正市、吉野光久の10名。

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時代小説「追憶の旅」を発刊

「追憶の旅」表紙

「追憶の旅」表紙

双牛舎はこのほど竹村陽子著「追憶の旅─公達浪人事柄控」というユニークな時代小説本を発刊しました。著者は脳性マヒという重い障害を持ちながら独学で勉強され、素晴らしい短歌を続々発表、今回長年温めて来られた小説を上梓なさいました。これには銀鴎会・酔吟会会員の山口詩朗さんと同夫人の献身的ご努力があります。病状が進行しキーボードが打てなくなった作者に代わり、山口俊子さんが打ち込んでついに仕上げ、双牛舎代表理事今泉恂之介が校訂作業を引き受け、12月はじめについに立派な本が誕生しました。
5代将軍綱吉の時代の江戸を舞台に、京都で生まれ育った主人公の公達剣士が、公家の姫との悲恋をくぐり抜け、大活躍する物語です。外出もままならず、学校に通うこともできなかった人が、父親の蔵書を読破し、空想をめぐらせ、壮大なロマンを紡ぎ出しました。驚嘆と言うよりほかにない快挙であり、同じような境遇にある人たちには勇気を与え、健常者には頂門の一針となるに違いありません。
ご興味をお持ちの方はぜひご購読下さるよう申し添えます。頒価1500円。双牛舎代表の今泉あるいは大澤にお声をお掛け下さい。

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番町・喜楽会忘年合同句会

第64回番町句会と第18回喜楽会の合同句会が12月4日(土)午後1時から鎌倉橋の日経第二別館会議室で開かれた。前日は風速20数メートルの強風に豪雨が重なる冬の嵐が荒れ狂ったが、この日は朝から雲一つ無い上々の天気。気温も20度近くになる小春日和となった。

番町句会から井上啓一、高井百子、高瀬大虫、高橋楓子、前島厳水、三好六甫、山口詩朗、喜楽会から笹本塘外、須藤光迷、谷川透、玉田春陽子、それに幹事の今泉而雲、大澤水牛の合計13名が参加、今や東京近辺では見ることも稀になった「霜」と、「風呂吹」の兼題句を中心に談論風発の句会を繰り広げた。

投句5句、選句6句で行った句会の結果は最高点が5点で「藍色の夜明けに霜の声を聞く 楓子」「霜の朝湯気立て走る女かな 厳水」「腐葉土に湯気もうもうと霜の朝 水牛」「高望みせず風呂吹に酒二合 啓一」の4句が並び、次いで4点が「作務終えてふろふき拝む朝餉かな 透」の1句だった。さらに3点が5句、2点9句、1点21句と続いた。兼題別に3点以上獲得句を掲げる。

「霜」

藍色の夜明けに霜の声を聞く     高橋 楓子

霜の朝湯気立て走る女かな      前島 厳水

腐葉土に湯気もうもうと霜の朝    大澤 水牛

寝そびれて霜降る夜の山頭火     高橋 楓子

霜晴れや漁師も旗も煌ける      須藤 光迷

霜の朝靴跡はみな駅を向く      今泉 而雲

「風呂吹」

高望みせず風呂吹に酒二合      井上 啓一

作務終えてふろふき拝む朝餉かな   谷川  透

風呂吹の冷めて無言や通夜の客    高瀬 大虫

「雑詠」

黒猫の坂駆けあがる寒さかな     笹本 塘外

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