第68回番町喜楽会

 5月7日(土)午後1時から東京・内神田の日経第二別館会議室で第68回番町喜楽会が行われた。合併や会員増で陣容を拡げてから二度目の例会は大盛況。出席者は今泉而雲、岩沢克恵、井上啓一、大澤水牛、笹本塘外、須藤光迷、高井百子、高瀬大虫、谷川透、玉田春陽子、堤てる夫、徳永正裕、野見山恵子、前島巌水、三好六甫、星川佳子、山口詩朗の17人。2か月余りの入院生活から復帰した詩朗さんが元気な姿を見せて挨拶、盛んな拍手を浴びた。野田冷峰が投句参加、投句総数は89句に上った。
 この日の兼題は「初夏」と「蛇」で、投句5句、選句6句で句会を進めた結果、最高は5点で「焙じ茶のとまどふ熱さ夏初め 正裕」の1句。次席4点は「点滴のなき初夏の日を横たはり 詩朗」で、挨拶の時を上回る拍手で沸いた。以下、3点8句、2点19句、1点31句。3点以上獲得句は次の通り。(堤てる夫記)

「初夏」
  焙じ茶のとまどふ熱さ夏初め        徳永 正裕
  点滴のなき初夏の日を横たはり       山口 詩朗
  散髪しもう一巡り初夏の町         笹本 塘外
  初夏や的射る少女白襷           玉田春陽子
  初夏やボクシングジム開け放つ       野見山恵子
「蛇」
  ばさと落ちしばしのの字の烏蛇       谷川  透
  考へるロダンの像や蛇の首         野田 冷峰
  朽ち枝と見ればくちなは動きけり      前島 巌水
「雑詠」
  ジャンパーの天皇おはす五月かな      今泉 而雲
  去りてすぐ戻るや仔馬朝の牧        井上 啓一

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英尾先生墓参・桜吟行

 村田英尾先生の墓参を兼ねて多摩森林科学園で桜狩する日経俳句会恒例の吟行が4月16日(土)に行われた。参加したのは大澤水牛幹事長、嵐田啓明、今泉恂之介、大下綾子、杉山智宥、鈴木好夫、須藤光迷、堤てる夫、徳永正裕、星川佳子に特別参加の鈴木夫人玲子さんの11人。雨天かもという前日までの予報が良い方に外れ、午前十時集合のJR中央線高尾駅北口は、中高年のハイカー達で大賑わい。英尾先生の眠る都立八王子霊園へは駅前からバスで数分の距離である。
 英尾先生が亡くなったのは平成17年3月2日で、今年が七回忌。ひと月余り遅れての墓参だったが、大澤さん、嵐田さんの先導で般若心経を全員で唱和しご冥福を祈った。昨年までは僧籍を持つ田中頼子さんが無量誦経を読むのが恒例。しかし今年は田中さんが仙台方面へ被災地救援のボランティア活動に参加したため、俄か導師の登場となった。
 多摩森林科学園の桜は一重桜が満開、八重桜も盛りを迎える絶好のタイミング。多くの花見客が詰めかけ、上りの急な「夫婦坂」では数珠つなぎになって渋滞するほどだった。汗ばむ陽気の中、谷間の桜を見下ろす高台のベンチでお昼の弁当。おかずや飲み物を分け合ったりのひと時、時間がゆっくり流れる。
 吟行を締めくくる句会は今回もメール句会として高尾駅前で解散、三々五々帰途についたが、半数ほどが駅前蕎麦屋に立ち寄った。二軒あって片方は満員、もう一軒の店構えはずっと立派だががらがらの方に入る。ちょっと悪い予感がしたが、案の定、めぼしい肴は何もない。その上、この暑さなのに冷たい蕎麦が無くて「全部温かいつゆ蕎麦」というまことに奇妙な蕎麦屋であった。
 メール句会には、別の日に桜保存林に行った澤井二堂さんが加わり、11人から合計35句が寄せられた。5句選句の結果、啓明さんの「花筵男も似合ふ横座り」が6点を集め最高。次いで5点は3句あり、水牛さんの「飴玉といふ名の桜見つけたり」と、正裕さんの「春風に供花のかたち定まらず」「花一片受けんとかざす酒杯かな」。4点は「桜満つ読経こころを一つにし てる夫」、3点「花びらをのせて静まる墓石かな 佳子」と続いた。(堤てる夫記)

 英尾先生墓参・桜吟行参加者の人気作品
  花筵男も似合ふ横座り      嵐田 啓明
  鶯に不意を衝かれし山路かな   今泉恂之介
  飴玉といふ名の桜見つけたり   大澤 水牛
  すいてをるそば屋に入る春の昼  大下 綾子
  同じ花今年見る人異なりて    澤井 二堂
  真似て読む般若心経花墓参    杉山 智宥
  先生はここにおはすか花のもと  鈴木 好夫
  東屋でひとり花見る男かな    須藤 光迷
  桜満つ読経こころを一つにし   堤 てる夫
  花一片受けんとかざす酒杯かな  徳永 正裕
  花びらをのせて静まる墓石かな  星川 佳子

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水木会第98回例会

 4月20日(水)午後6時半から日経本社七階会議室で、平成23年度第4回例会(通算98回)が開かれた。三月例会が「大震災」の影響でメール句会に切り替えられたため、会員にとっては二カ月ぶりの顔合わせ。死者一万四千人余、行方不明一万三千三百人余を数え、東電福島原発の損壊対応なお定まらずとあって、何か気持ちの弾まない気分の中での句会であった。出席者は15人、投句参加は11人、投句総数は122句だった。
 兼題は「春眠」「竹の秋」で、8句選句で句会を進めた結果、最高は4点で1句のみ、次いで3点が11句。以下2点19句、1点41句とかなりばらけた。最高の4点句「たんぽぽや転校すると告げられし」は星川佳子さんの作。星川さん、3点句にも「パンダ舎に歓声戻り竹の秋」「チョコレートとろとろ春の眠りかな」の2句が入ってまさに星川デー。嵐田啓明さんも「竹の秋街道筋は土煙」「北向いて北向いて咲く辛夷かな」の2句で3点を集めた。
 兼題別の高点句(3点以上)は次の通り。

「春眠」
  春眠や町内会長卒業す             大澤 水牛
  春眠や夢を重ねて枕皺             広上 正市
  チョコレートとろとろ春の眠りかな       星川 佳子
  不惑なるむすめ生家に春眠す          吉野 光久

「竹の秋」
  竹の秋街道筋は土煙              嵐田 啓明
  わが祖国問われし未来竹の秋          池村実千代
  パンダ舎に歓声戻り竹の秋           星川 佳子
  立ち寄りし書店の暗さ竹の秋          横井 定利

「雑詠」
  たんぽぽや転校すると告げられし        星川 佳子
  北向いて北向いて咲く辛夷かな         嵐田 啓明
  春のなゐ湯船にすがりやり過ごす        金田 青水
  鎮まるを花に祈りし余震かな          久保田 操

<出席者> 嵐田啓明、池村実千代、今泉恂之介、今村聖子、植村博明、大熊万歩、大澤水牛、大平睦子、小林啓子、杉山智宥、田中明美、堤てる夫、徳永正裕、広上正市、星川佳子
<投句参加> 大下綾子、加藤明男、金田青水、久保田操、佐々木碩、高石昌魚、高橋淳、藤野十三妹、水口弥生、横井定利、吉野光久
                            (堤てる夫記)

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銀鴎会第77回例会

4月13日(水)午後六時半から東京・大手町の日経ビルで第77回銀鴎会例会が開かれた。東日本大震災から既に一ヶ月以上経過したが、被災地の瓦礫の片付けは進まず、まだ1万5千人以上の行方不明者が残されている。東電福島原子力発電所の事故処理は一向に進展せず不安を掻き立てている。震度6、5といった余震が相次ぎ、東京でもかなりの揺れを感じて電車が一時停止するなど、大震災の余波は治まらない。

そうした中での句会だったが、井上庄一郎、今泉恂之介、大倉悌志郎、大澤水牛、大沢反平、佐々木碩、澤井二堂、鈴木好夫、須藤光迷、高瀬大虫、直井正、広上正市の十三名が出席、金田青水、田中頼子、藤野十三妹、吉野光久の四名が投句参加した。

この日の兼題は「朧」と「木の芽和」。投句五句、選句七句で句会を行った結果、最高点は六点で「修羅の春岬に立てば海まろし 光久」の一句。五点句がなく、四点が「消えし街静かに照らす朧月 庄一郎」「ありのまま生きて夕餉の木の芽和 十三妹」「まず含む辛口の酒木の芽和 碩」「思ひがけぬ人の便りやなゐの春 光久」の四句出た。次いで三点が八句、二点十句、一点二十二句と続いた。兼題別の三点以上獲得句は以下の通り。

 

「朧」

消えし街静かに照らす朧月     井上庄一郎

朧夜や廃墟の街を隠すごと     井上庄一郎

 

「木の芽和」

木の芽和遠嶺は白き能登の町    大倉悌志郎

ありのまま生きて夕餉の木の芽和  藤野十三妹

まず含む辛口の酒木の芽和     佐々木 碩

幼名で呼び合ふ友の木の芽和    吉野 光久

木の芽あへ眼耳鼻舌の和音かな   澤井 二堂

八戸の烏賊ありがたく木の芽和   金田 青水

熱燗に木の芽田楽峠茶屋      井上庄一郎

 

「雑詠」

修羅の春岬に立てば海まろし    吉野 光久

思ひがけぬ人の便りやなゐの春   吉野 光久

啓蟄や扉全開理髪店        佐々木 碩

津波あと小学校の桜かな      田中 頼子

 

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番町喜楽会第67回例会

4月2日(土)午後1時から東京・内神田の日経第二別館会議室で第67回番町喜楽会が行われた。番町句会と喜楽会が合併して最初の句会だった。3月に実施した松山吟行に日経俳句会から参加した堤てる夫、徳永正裕、野田冷峰、星川佳子の4氏が入会し、番町喜楽会は総勢21名の陣容になった。

例会出席者は今泉而雲、大澤水牛、笹本塘外、須藤光迷、高井百子、高橋楓子、谷川透、玉田春陽子、堤てる夫、徳永正裕、野見山恵子、前島厳水、三好六甫、星川佳子の14人。投句参加が井上啓一、岩沢克恵、加沼鬼一、野田冷峰の4人。高瀬大虫も実際は事前投句していたのだが、幹事の不手際で句会にかけることができなかった。

3月11日の東日本大震災によって破壊された東電福島原子力発電所の事故処理はなかなか進まず、相変わらず高濃度の放射線が洩れ出して、人々に不安を抱かせている。東京近辺も計画停電、電車の運転本数削減、食品類などの品数不足といった大震災の影響が色濃く残っている。当初は今回の例会開催を危ぶむ声もあったが、いつまで閉じ籠もっていてもかえってくさくさするばかりだと、思い切って開催した。その結果は「吹っ切れて元気が出て来た。やはり開いて良かった」という声が圧倒的で、震災にまつわる句を含め佳句が続出した。

この日の兼題は「踏青」と「鳥帰る」。投句5句、選句7句で句会を行った結果、最高は5点で「あの山はふるさとに似て青き踏む 楓子」と「伊予の春猫鯛を抱くのれんかな 透」の2句。続く4点は「春休み何年生でもない時間 佳子」「初蝶や料理教室ガラス張り 春陽子」「買ひだめの一人となりて春寒し 而雲」の3句だった。以下、3点が8句、二点9句、一点が34句も現れた。3点以上獲得句は次の通り。

 

「踏青」(青き踏む)

あの山はふるさとに似て青き踏む    高橋 楓子

気がつけば人の庭先青き踏む      星川 佳子

踏青や空の匂ひをかぎに行く      三好 六甫

青き踏むなり山の辺の平和かな     岩沢 克恵

父祖の地に似たる川辺や青き踏む    今泉 而雲

「鳥帰る」

野馬追の原も埋もれて鳥帰る      大澤 水牛

「雑詠」

伊予の春猫鯛を抱くのれんかな     谷川  透

春休み何年生でもない時間       星川 佳子

初蝶や料理教室ガラス張り       玉田春陽子

買ひだめの一人となりて春寒し     今泉 而雲

あたたかやどこまで伸びる亀の首    堤 てる夫

伊予や春手を上げて呼ぶ渡し舟     須藤 光迷

攫はれし六角堂や春の海        徳永 正裕

 

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第97回水木会例会(メール句会)

 3月の水木会例会(通算97回)は初のメール方式句会となった。当初は16日に開催を予定していたが、3・11の東日本大震災による混乱を回避するため、大澤幹事長からメール句会への変更提案が出された。これに応じた26人から127句の投句があり、5句の選句とコメント(選評)の返信をお願いしたが、きわめて順調に進んだ。
 兼題は「若鮎」と「春の日」。最高点は5点で「八方へ散る若鮎の速さかな 碩」と「春の日の鍬にリズムのありにけり 正市」の2句。以下4点が7句、3点6句と続いた。2点は15句、1点は34句だった。兼題別の高点句(三点以上)は次の通り。(広上正市記)

「若鮎」
  八方へ散る若鮎の速さかな     佐々木 碩
  若鮎の上るややがて下る瀬を    今泉恂之介
  若鮎の素焼きの串のほろ苦き    徳永 正裕
「春の日」
  春の日の鍬にリズムのありにけり  広上 正市
  ままごとに申し分なき春日向    今村 聖子
  春の日や大きく見える女子社員   植村 博明
  春の日や靴紐ほどけまた結ぶ    加藤 明男
  春の日や改札を抜け友がいて    佐々木 碩
  春の日や敬老パスの通知あり    堤 てる夫
  春の日やしゃべり続けるガイドさん 植村 博明
  健康の戻りて春日を浴びて立つ   高橋  淳
「雑詠」
  菜の花やマラソン途切れまた来る  今泉恂之介
  春やねと大阪顔の女言ふ      高橋  淳
  胴長の犬丸く駆け土手の春     小林 啓子
  桟橋のヨットのきしみ春の午後   星川 佳子

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番町喜楽会松山吟行

番町句会は姉妹句会の喜楽会と合併し「番町喜楽会」になったのを記念して、3月11日から13日に「俳都松山吟行大会」を開催した。日経俳句会有志にも声を掛け、総勢16人の和気藹々たる吟行団が出来上がった。
3月11日朝、羽田空港を出発、松山東急インに二泊し、松山城をはじめ市内の子規ゆかりの場所を巡り、道後温泉周辺から石手寺、子規の俳句の先達大原其戎の三津浜、種田山頭火終焉の一草庵などを勢力的に回り、密度の濃い三日間を過ごした。到着日の午後、松山城を見物していたところに東北関東大地震・大津波の知らせが飛び込んで来た。一同暗澹たる思いにとらわれたが、ここでじたばたしてもどうにもならないと心を決めて、計画通り実行した。

参加者は、井上啓一、井上登代子(井上夫人)、今泉而雲、大澤水牛、高井百子、高瀬大虫、高橋楓子、前島厳水、三好六甫(以上番町句会)、須藤光迷、谷川透、玉田春陽子(以上喜楽会)、堤てる夫、徳永正裕、野田冷峰、星川佳子(以上日経俳句会)の16名。

12日夜に松山東急インで句会開催。投句は3句以上5句、選句は5句とした。その結果、最高点は5点で『春風を足でつまんでリフト乗る 佳子』、続く4点は『句碑の文字春ゆらゆらと碧梧桐 百子』と『ぞなもしの婆の親切春うらら 大虫』の2句だった。以下3点9句、2点9句、1点22句ということになった。

吟行句らしく松山の風景、食べ物、人情などを詠んだ佳句が数多く生まれた。また大震災のショックは大きく、それにまつわる句がかなりの数に上った。好評を得た句は以下の通り。

うららけし坊っちゃん電車で温泉に   井上 啓一
春愁や城山できくなゐの報        同
芽柳や空に二の丸天守閣        今泉 而雲
妻も子も地震も津波も霞かな       同
刀匠の家ひっそりと花豌豆       大澤 水牛
地震情報うららの城を揺るがせり     同
春宵や坊っちゃんの湯はやはらかき   須藤 光迷
山頭火逝きし庵の紙雛          同
句碑の文字春ゆらゆらと碧梧桐     高井 百子
春のなゐメール飛び交ふ天守閣      同
ぞなもしの婆の親切春うらら      高瀬 大虫
天守閣霞の先に伊予の富士        同
花便り薄墨色の地酒かな        高橋 楓子
走り根に遊ぶ子供や水温む        同
赤シャツで鯛めし喰らふ春の昼     谷川  透
刻太鼓聞きて神の湯春夕べ        同
佐保姫ののりすてし雲城の上      玉田春陽子
読めぬ字を頷き飛ばす城の春       同
春の宵道後の湯銭四百円        堤 てる夫
聖人に出会ふ僥倖伊予の春        同
伊予や好し春の館で子規に会ふ     徳永 正裕
大地震や留守宅案じ春宴         同
春ふわり往くも還るも句碑巡り     野田 冷峰
朽ちるまま歩き遍路に朝の露       同
春風を足でつまんでリフト乗る     星川 佳子
あたたかや一遍上人誕生日        同
地震津波国襲ひしも伊予は春      前島 厳水
石手寺に香煙けぶる竹の秋        同
春の雲わがとほつおや石鎚山      三好 六甫
ひざ笑ひ山に笑はれ下りけり       同

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《ちょこっと吟行》金沢文庫・称名寺

2月19日(土)、日経俳句会有志による「近隣ちょこっと吟行金沢文庫・称名寺めぐり」が行われた。神奈川県立金沢文庫で開催中の設立80周年特別展「運慶―中世密教と鎌倉幕府」を鑑賞、隣接の称名寺を散策した。参加者は大澤水牛幹事長を筆頭に藤村詠悟、黒須烏幸、高瀬大虫、吉野光久、須藤光迷、徳永正裕、星川佳子、堤てる夫(幹事)の9名。
称名寺光明院所蔵の大威徳明王像(重文)が運慶作と判明(平成19年)したのをきっかけに企画された特別展には、奈良・円成寺所蔵の国宝大日如来坐像をはじめ、帝釈天、不動明王などの運慶像が一堂に集められ、その迫力に圧倒された。
展覧会見学のあと称名寺の浄土庭園の苑池、金堂、仁王門などを見て、裏山の実時の墓所や、西国、東国、秩父の観音霊場の観音様を刻んだ石塔が合わせて百体並ぶ「百観音」などを巡った。ここは江戸時代には大山詣でと並んで人気のある行楽地であり、明治から昭和初期までは別荘地帯や避寒避暑地として賑わった場所だが、今日では忘れられたように静かだ。東京からこんな近いところに自然を残した絶好の吟行地が残されているのが嬉しい。
句会はメールで投句・選句する恒例方式で行った。投句3句・選句5句に「天」「地」「人」「入選」を付し、天5点、地3点、人2点、入選1点を配分した結果、吉野光久さんの「あたたかし御顔の剝げた如来さま」が17点を得てトップ、須藤光迷さんの「春昼や踊り出しそな帝釈天」が15点で続いた。好評の作品は次の通り。(堤てる夫記)

あへぎつつ登れば広し春の海        大澤 水牛
ふみくらにみ仏拝み春浅し         黒須 烏幸
春昼や踊り出しそな帝釈天         須藤 光迷
梅の香に運慶仏の集ひけり         高瀬 大虫
乱れ立つ百観音や寒の明け         堤 てる夫
運慶の仏に酔ひて春動く          徳永 正裕
美術館仏も驚く人いきれ          藤村 詠悟
浦沿いに蜜柑金柑風ぬくし         星川 佳子
あたたかし御顔の剝げた如来さま      吉野 光久

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第4回NPO法人双牛舎総会・俳句大会

2月18日(水)午後6時半、内幸町・日本記者クラブでNPO法人双牛舎の第4回総会が開かれ、日経俳句会、番町喜楽会のメンバーからなる双牛舎会員38人が出席した。

高橋楓子さん(番町喜楽会)の総合司会で、まず双牛舎代表理事大澤水牛が、「双牛舎が正式にNPO法人になってから丸三年たったが、日経俳句会、番町喜楽会の句会運営協力、会報発行、勉強会、双牛舎俳句大会の開催、ブログによる会員諸氏の作品発信、句集や随筆集などの書籍出版を通じて、主な事業目的として掲げた俳句振興の仕事はまずまず順調に行うことができた。4年目に入った今年も引き続き各種事業を行う計画なので、会員諸氏のお力添えをお願い申し上げる」と挨拶。

井上庄一郎さん(日経俳句会銀鴎会)の音頭で乾杯、パーティに移り、恒例行事「双牛舎俳句大会」が行われた。句会はあらかじめ会員に兼題「沈丁花」と雑詠を1句ずつ投句してもらったものを、大きな選句表に書き出し場内に掲示、出席者が自分の選んだ7句に赤いシールを貼り付けて行く「公開選句」方式で進めた。

今回の選句対象作品は出席者と投句参加者を加えた45名からの90句。投句参加者の選句シールも幹事が貼り付け、選句を終了、シールを数えた結果、「天賞」は11点、続く「地賞」は10点、「人賞」が8点と7点。「天」「地」「人」各3句、合計9句の作者には須藤光迷、大澤水牛の陶芸作品が賞品として贈られた。

この俳句大会の入賞句は書家赤池溪舟さんが揮毫、短冊に仕立てたものがそれぞれの作者に贈られることになっている。句会に先立ち今泉恂之介代表理事が昨年の入賞者10人の句を改めて読み上げ短冊を贈呈した。今年の第3回双牛舎俳句大会入賞句の短冊は来年の大会で贈られる。

今回の入賞句9句は以下の通り。

「天」賞

春立つや為すべきことの指を折り   堤 てる夫(水木会・酔吟会)

沈丁をほのかに聞きて靴磨く     須藤 光迷(銀鴎会・喜楽会)

木瓜活くる妻正眼の構へかな     谷川  透(喜楽会)

 

「地」賞

席つめて会釈かはすや春の風     植村 博明(水木会・銀鴎会)

諍ひの果ての沈黙沈丁花       嵐田 啓明(水木会)

鉄棒の高さ追ひこし卒園す      池村実千代(水木会)

 

「人」賞

見えさうな沈丁の香を吸ひにけり   佐々木 碩(銀鴎会)

老妻は二つ買ひけり桜餅       大石 柏人(酔吟会)

宵闇のどこかにいつも沈丁花     吉野 光久(水木会・酔吟会)

 

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第96回水木会例会

水木会の平成23年度第2回例会(通算96回)が2月16日(水)午後6時半、日経本社7階会議室で開かれた。ちょっと寒気が緩んだこの日の兼題は「暖か」と「蜆(しじみ)」で、18人が出席、投句参加5人を加えて投句総数は114句。いつもより出席も投句もやや少な目めだった。その分、合評会には十分時間を取ることが出来て、賑やかに句会が進んだ。
選句7句で句会を行った結果、最高は5点で、横井定利さんの「春めくや靴を磨きに上野まで」と吉野光久さんの「一椀に六腑さだまる蜆汁」の2句が並んだ。続く4点は6句で、以下3点5句、2点20句、1点38句と続いた。兼題別の高点句(3点以上)は次の通り。

「暖か」
暖かやお堀端ゆく無蓋バス            嵐田 啓明
訛りある女の不満あたたかし           植村 博明
暖かや高層ビルから乳母車            広上 正市
暖かや何か始める時が来た            山田 明美
あたたかき母の手首の輪ゴムかな         吉野 光久
あたたかや路地の先にも道のあり         大下 綾子

「蜆」
一椀に六腑さだまる蜆汁             吉野 光久
ひとコマづつ昨夜の記憶しじみ汁         星川 佳子
後悔のひとつひとつを蜆汁            嵐田 啓明
酔ひ痴れて箸にかからぬ蜆かな          堤 てる夫

「雑詠」
春めくや靴を磨きに上野まで           横井 定利
春節がどどどと来たり浅草寺           杉山 智宥
瘤の数支え木の数臥龍梅             広上 正市

<出席者> 嵐田啓明、池村実千代、今泉恂之介、植村博明、大熊万歩、大澤水牛、大下綾子、加藤明男、久保田操、小林啓子、堤てる夫、徳永正裕、広上正市、星川佳子、水口弥生、山田明美、横井定利、吉野光久
<投句参加> 金田青水、杉山智宥、高石昌魚、平山一雄、藤野十三妹
(報告者堤てる夫)

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