銀鴎会第78回例会

8月の銀鴎会は10日(水)、内神田の日経第二別館会議室で開かれた。炎天下にもかかわらず12名の句友が参加し、「終戦日」についての認識、その表現についてのやり取りで盛り上がった。また、大澤水牛幹事長から双牛舎が発行した『芽吹き─「みんなの俳句」東日本大震災に寄せて』の紹介があり、購入者が相次いだ。

出席者は井上庄一郎、今泉恂之介、大倉悌志郎、大澤水牛、大沢反平、佐々木碩、澤井二堂、須藤光迷、高石昌魚、直井正、広上正市、山口詩朗氏の十二人。投句での参加は高瀬大虫、田中頼子、野田幸雄氏の三人。兼題は「秋の雲」「終戦日」。投句五句、選句六句。総投句数は75句。最高は4点で髙瀬大虫さんの「修験者の足の速さや秋の雲」」。3点は直井 正さんの「大漁の旗ひらめきて秋の雲」、大澤水牛さんの「歳時記の隅に埋もるる終戦日」など7句。2点は11句、1点23句。兼題別の高点句(3点以上)は次の通り。

 

「秋の雲」

修験者の足の速さや秋の雲     髙瀬 大虫

大漁の旗ひらめきて秋の雲    直井  正

 

「終戦日」

歳時記の隅に埋もるる終戦日   大澤 水牛

添書に今日も晴れです終戦日   大沢 反平

ちちははの言葉少なし終戦日   田中 頼子

 

「雑詠」

雲の峰沖行く船を呑まんとす   佐々木 碩

青竹をきしませ鉾の回りたる   田中 頼子

白粉花咲くや銭湯開く頃          山口 詩朗

(広上正市記)

 

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番町喜楽会第71回例会

番町喜楽会は「広島原爆の日」の八月六日(土)午後一時から千代田区二番町の番町ハイム会議室で第七十一回例会を開いた。六十六年前のあの日と同じような厳しい陽射しの中、出席したのは、大澤水牛、今泉而雲、井上啓一、岩澤克恵、須藤光迷、高橋楓子、玉田春陽子、堤てる夫、星川佳子、前島巌水、三好六甫の十一人。高井百子、高瀬大虫、谷川透、徳永正裕、野田冷峰、山口詩朗の六人が投句参加した。

兼題は「雲の峰」「鰻」。総投句数八十五句を十人で清記したため、八句用の清記用紙に九句書き込む作業になった。選句も九句とたっぷり。その結果、最多の七点を得たのは大虫さんの「白焼きはうなぎの浴衣姿かな」の一句。季重なりを乗り越えて、白焼を浴衣姿に見立てたユーモラスな着眼に点が集まった。

次席は五点句で、「うな重や老いて姉妹の美しく 而雲」、「雲の峰喪服の人の急ぎ足 春陽子」、「雲の峰十勝の空の熱気球 正裕」の三句。続く四点句は、「鰻待つ三島の宿の古時計 水牛」、「うなぎのう絵文字になりて風泳ぐ 春陽子」、「鰻待つ扁額の詩文誦しつつ 正裕」、「雲の峰石鎚尾根を鷲づかみ 六甫」の四句。以下三点六句、二点十句、一点二十四句という結果になった。兼題別の高点句(三点以上)は次の通り。

 

「雲の峰」

雲の峰喪服の人のいそぎ足         玉田春陽子

雲の峰十勝の空の熱気球          徳永 正裕

雲の峰石鎚尾根を鷲づかみ         三好 六甫

銀色の機体吸ひ込む雲の峰         前島 巌水

 

「鰻」

白焼きはうなぎの浴衣姿かな        高瀬 大虫

うな重や老いて姉妹の美しく        今泉 而雲

鰻待つ三島の宿の古時計          大澤 水牛

うなぎのう絵文字になりて風泳ぐ      玉田春陽子

鰻待つ扁額の詩文誦しつつ         徳永 正裕

小あがりでうなぎ喰ふ仲怪しまれ      高瀬 大虫

備長の灰も薬味と鰻焼く          谷川  透

 

「雑詠」

どこから人がビルの谷間の盆踊り      大澤 水牛

夏草や浄土庭園在りし跡          須藤 光迷

夏雲や貨車連結の大音響          山口 詩朗

(堤てる夫記)

 

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水木会第100回例会

水木会は7月20日(水)、第100回句会を内神田の日経第二別館会議室で開いた。水木会発足(平成14年3月)からまる9年を経た記念すべき集まりとあって、台風6号が首都圏に迫るという悪条件下にもかかわらず、元気な顔ぶれが勢揃いした。

記念すべき句会の兼題は「夏の山」と「素麺」。最高点の4点を取ったのは徳永正裕さんの「路地の鉢電球ほどの茄子ふたつ」、佐々木碩さんの「大らかに盛って独りの冷素麺」の2句。次いで3点は加藤明男さんの「夏山や麓の村は過疎となり」、嵐田啓明さんの「ひとくちの素麺嬉し機内食」など7句出た。2点は21句、1点は35句。参加者の力量が向上しているうえに、生活に身近な兼題だったこともあって選句結果にばらつきが目立ち、全122句の半分以上に点が入った。。兼題別の高点句(3点以上)は次の通り。

「夏の山」

夏山や麓の村は過疎となり       加藤 明男

夏の山男一礼雲めざす      佐々木 碩

吊橋を渡るそこから夏の山    広上 正市

周波数ずれしラジオや夏の山   吉野 光久

「素麺」

大らかに盛って独りの冷素麺   佐々木 碩

ひとくちの素麺嬉し機内食    嵐田 啓明

素麺にオクラの星をちりばめる  今泉恂之介

合宿の素麺冷やす大盥      大熊 万歩

「雑詠」

路地の鉢電球ほどの茄子ふたつ  徳永 正裕

〈出席者〉嵐田啓明、池村実千代、今泉恂之介、今村聖子、大熊万歩、大澤水牛、久保田操、杉山智宥、須藤光迷、高石昌魚、徳永正裕、広上正市、星川

佳子、水口弥生、山口詩朗

〈投句参加〉 植村博明、大下綾子、加藤明男、小林啓子、佐々木碩、高橋淳、堤てる夫、藤野十三妹、横井定利、吉野光久

(広上正市記)

 

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酔吟会第93回例会

酔吟会の平成23年度第3回例会(通算93回)が7月16日(土)午後1時から、内神田・日経第二別館8階会議室で開かれた。当日は雲ひとつない青空。うだるような酷暑日で高齢会員の中には出席をためらう向きもあり、出席者は十一人、投句参加が八人に上った。

今回から新たに岡田臣弘氏(日経新聞社政治部・外報部・北京特派員などを経て今春まで名古屋商科大学教授)がメンバーに加わった。例会出席者は今泉恂之介、大澤水牛、大沢反平、岡田臣弘、片野涸魚、金指正風、澤井二堂、堤てる夫、徳永正裕、藤村詠悟、山口詩朗の11名。投句参加は原文鶴、大石柏人、大平昭生、黒須烏幸、野田冷峰、藤野十三妹、星川佳子、吉野光久の各氏。

兼題は「雷」と「茄子」、投句は5句、投句参加者が多かったため選句を9句として句会を行った。その結果、最高点は4点で3句、次いで3点4句。2点24句、1点句24句と分散した。兼題別の3点以上獲得句は次の通り。

「雷」

雷鳴に驚く人も町もなく        大澤 水牛

「茄子」

宇宙より届きし色や茄子の紺      今泉恂之介

みちのくは故山に帰る茄子の馬     金指 正風

茄子の馬足が長すぎ短すぎ       山口 詩朗

寄り添ひてきゅうと鳴りたる茄子かな  大沢 反平

「雑詠」

炎天に男女集へり立ち煙草       今泉恂之介

己が手の置き所なく熱帯夜       星川 佳子

(澤井二堂記)

 

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番町喜楽会第70回例会

番町喜楽会は7月2日(土)午後1時から、第70回例会を内神田・MIFビル会議室で開いた。梅雨明け宣言前というのに30度を超す真夏日だったが17人の会員が顔を揃えて大賑わい。出席者は井上啓一、今泉而雲、岩澤克恵、大澤水牛、笹本塘外、須藤光迷、高井百子、高瀬大虫、高橋楓子、谷川透、玉田春陽子、堤てる夫、徳永正裕、野見山恵子、前島巌水、三好六甫、山口詩朗の面々。野田冷峰、星川佳子が投句参加し、投句総数95句の句会となった。

兼題は「汗(あせ)」「万緑(ばんりょく)」で、投句は雑詠含め5句、選句6句で句会を行った。最高点は6点で山口詩朗さんの「紫陽花や男の嘘の生ぬるさ」一句のみ。次席は4点で、「三つ指をついて空みる青蛙 堤てる夫」「隣り合ふ汗の親しき屋台酒 野見山恵子」「蕎麦一枚喰ふて万緑信濃かな 詩朗」の3句。以下3点10句、2点13句、1点25句。3点以上の高点句は次の通り。

「汗」

隣り合ふ汗の親しき屋台酒          野見山恵子

欠伸する河馬の背中に赤き汗         谷川  透

うすき汗うかべて女将世辞ひとつ       玉田春陽子

「万緑」

万緑の一隅にあり文学館           今泉 而雲

万緑を重しと思ふ身の弱り          大澤 水牛

万緑や抱擁とかぬ道祖神           須藤 光迷

万緑ののしかかりくる夜の駅         星川 佳子

万緑やタトゥーの蝶も迷ひ込む        三好 六甫

「雑詠」

紫陽花や男の嘘の生ぬるさ          山口 詩朗

三つ指をついて空みる青蛙          堤 てる夫

蕎麦一枚喰ふて万緑信濃かな         山口 詩朗

夏帯を一呼吸してぎゆつと締め        岩澤 克恵

節電や答案用紙の汗のあと          高井 百子

神楽坂日傘の女ボンジュール         玉田春陽子

 

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日経俳句会23年上期合同句会

日経俳句会は6月15日(水)、平成23年度上期合同句会(通算12回)を開催した。日経本社が6月から節電のサマータイムに入ったため、夜間に本社ビルの会議室が使えず、会場を内神田・鎌倉橋交差点傍の日経第二別館に移して午後6時半に開会した。ところが20人余りで一杯になる部屋に、出席者が30人という超過密。「夏の月」「紫陽花」の兼題句と雑詠一句の計三句を事前投句、広上幹事が作成した選句表をもとに事前選句して送り返しておくという、メール活用の「日経俳句会方式」なので、なんとか無事に句会ができた。

今回は投句参加10人も含め合計117句が集まった。句会は幹事による得点発表で始まったが、加藤明男さんの「逆上がりくるりと回る夏の月」が最高の7点を獲得した。次席六点も1句で金田青水さんの「縄文の翡翠の遺跡夏の月」。以下5点が8句、4点12句、3点10句、2点17句、1点20句という結果だった。兼題別高点句(四点以上)は次の通り。

 

「夏の月」

逆上がりくるりと回る夏の月      加藤 明男

縄文の翡翠の遺跡夏の月        金田 青水

むら雲を一片曳きて夏の月       今村 聖子

抜き忘る草の高さよ夏の月       大澤 水牛

海亀の来るといふ浜夏の月       高瀬 大虫

夏の月ニコライ堂の白さかな      星川 佳子

潮入りの離宮に夏の月二つ       山口 詩朗

廃坑の煙突高し夏の月         大倉悌志郎

やうやくに夜の生まれぬ夏の月     大下 綾子

さまざまな寝相みてをり夏の月     須藤 光迷

夏の月バーボンロックのはぜる音    徳永 正裕

 

「紫陽花」

天地をつなぎて雨や濃紫陽花      大下 綾子

紫陽花や畦に胡坐の小昼どき      広上 正市

絵手紙に紫陽花の藍匂ひけり      大平 昭生

紫陽花や傘を広げて写さるる      植村 博明

紫陽花や薄化粧して昼の顔       直井  正

あぢさゐや母いま在らば白寿なる    吉野 光久

 

「雑詠」

守宮ゐてそのほかもゐて古家かな    広上 正市

梅雨晴間猫が腹見せ掻けといふ     大澤 水牛

生きてゐる今万緑の底にゐて      大沢 反平

ラムネ抜く昭和の遠音響きけり     加藤 明男

土用波地球の鼓動秘むうねり      佐々木 碩

 

<出席者> 嵐田啓明、池村実千代、井上庄一郎、今泉恂之介、大熊万歩、大倉悌志郎、大澤水牛、大沢反平、大下綾子、大平睦子、大平昭生、久保田操、小林啓子、佐々木碩、澤井二堂、杉山智宥、鈴木好夫、須藤光迷、高石昌魚、高瀬大虫、田中頼子、堤てる夫、徳永正裕、直井正、野田冷峰、広上正市、藤村詠悟、星川佳子、山口詩朗、横井定利

<投句参加> 今村聖子、植村博明、大石柏人、加藤明男、金田青水、高橋淳、深田森太郎、藤野十三妹、山田明美、吉野光久 (堤てる夫記)

 

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伊賀上野・室生寺吟行

日経俳句会は3年前から「奥の細道」を大垣から始める「逆回り奥の細道吟行」を続けている。この6月は山形県の立石寺を中心に回る予定だった。しかし3・11の大震災の影響で、仙台から入る旅はあれこれ支障を来す恐れがあるかも知れない。これは秋にずらし、今回は番外編として芭蕉の生地伊賀上野を訪ね、名張へ出て赤目四十八滝を眺め、山越えで奈良県宇陀へ抜け室生寺と大野寺磨崖仏を拝観しようということになった。

堤てる夫幹事がコース設定から赤目温泉の宿の手配など万遺漏無く整えてくれ、6月5、6日の一泊二日で快適な吟行ができた。参加者は嵐田啓明、今泉恂之介、大澤水牛、大下綾子、加藤明男、澤井二堂、須藤光迷、高瀬大虫、堤てる夫、徳永正裕、野田冷峰、広上正市、星川佳子、吉野光久(以上日経俳句会)に谷川透、玉田春陽子(以上番町喜楽会)を加えた16名。

帰京後、投句・選句5句のメール句会を行った。最高は五点で、「山椒魚石の顔して石の上 啓明」と「夜話の輪の静まりて河鹿鳴く 正裕」の二句。次席四点は「磨崖仏仰げば傾ぐ日傘かな 啓明」「滝しぶき赤目の牛の黒光り 啓明」「軒低き忍者の町や夏燕 明男」の3句だった。以下3点が8句、2点9句、1点17句と続いた。3点以上の高点句は以下の通り。

山椒魚石の顔して石の上     嵐田 啓明

夜話の輪の静まりて河鹿鳴く   徳永 正裕

軒低き忍者の町や夏燕      加藤 明男

滝しぶき赤目の牛の黒光り    嵐田 啓明

磨崖仏仰げば傾ぐ日傘かな    嵐田 啓明

沢蟹を噛むや命を論じつつ    今泉恂之介

立て膝の如意輪観音涼しげに   大澤 水牛

遠ざかりまた近づきぬ滝の音   大下 綾子

万緑に朱を差す女人高野かな   須藤 光迷

土芳居て碧梧桐居て青葉闇    堤 てる夫

夏の城こども忍者徘徊す     徳永 正裕

室生寺や小鉢数へる夏料理    広上 正市

滝つぼの上にぽっかり丸い空   吉野 光久

 

 

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番町喜楽会第69回例会

番町喜楽会の第69回例会が6月4日(土)午後1時から、内神田の日経第二別館で開かれた。今年は5月27日に関東地方が早々と梅雨入り、うっとうしい季節になったが、この日は幸いの梅雨晴れ。井上啓一、今泉而雲、大澤水牛、笹本塘外、須藤光迷、高瀬大虫、高橋楓子、谷川透、玉田春陽子、堤てる夫、前島厳水、三好六甫、星川佳子、山口詩朗の十四人が出席、高井百子、徳永正裕、野見山啓子が投句参加した。

この日の兼題は「更衣」と「十薬」、雑詠含め投句は5句、選句7句とし句会を行った。最高得点は5点で「やはらかくシャツも老いたり更衣 塘外」の1句しか出なかった。その代わりというか、4点が「更衣鏡に入りて二歩三歩 春陽子」「十薬の繁れる隣家との境 佳子」「十薬や想ひ出多き脛の傷 厳水」「校庭の今朝のまぶしさ更衣 正裕」の4句、続く3点が10句もひしめいた。以下2点が9句、1点が30句もあり、投句総数85句のうち55句に点が入るという乱戦状態を呈した。3点以上の高点句は次の通り。

「更衣」

やはらかくシャツも老いたり更衣   笹本 塘外

更衣鏡に入りて二歩三歩       玉田春陽子

校庭の今朝のまぶしさ更衣      徳永 正裕

甘縒りの絹ふはふはと更衣      野見山恵子

またも手の止まる形見や更衣     須藤 光迷

捨てやうか迷ひつしまふ衣替へ    高井 百子

元町の衣更へたり女学生       三好 六甫

「十薬」

十薬の繁れる隣家との境       星川 佳子

十薬や想ひ出多き脛の傷       前島 厳水

十薬の花ざかりなり引越しす     野見山恵子

どくだみの根方に古きインク瓶    今泉 而雲

十薬の一叢咲ける婆の庭       徳永 正裕

「雑詠」

新樹光五十年振りの校歌かな     三好 六甫

羽抜鶏今朝渾身の大卵        野見山恵子

扇風機客の話を散らしけり      玉田春陽子

 

 

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酔吟会92回例会

酔吟会の平成23年度第2回例会(通算92回)が5月21日午後1時から、鎌倉橋の日経第二別館会議室で開かれた。3月の予定だった今年第2回例会が東北大震災のために中止になり、四ヶ月ぶりに開かれた例会は真夏を思わせる絶好の日和であったが、都合のつかない人も多く、出席者は11人といささか少なかった。6人が欠席投句。やはりこ日も、東日本大震災の惨禍と見通しの立たない原発事故を詠み込んだ句が少なからずあった。

出席者は今泉恂之介、大石柏人、大澤水牛、大沢反平、大平昭生、片野涸魚、金指正風、堤てる夫、星川佳子、山口詩朗、吉野光久、投句参加は澤井二堂、田村舟平、徳永正裕、野田冷峰、原文鶴、藤村詠悟の各氏。

兼題は「五月」「と「空豆」。投句5句、選句8句で句会を行なった結果、最高点は5点で「五月憂し水棺といふ語に出会ふ 恂之介」の1句。次いで4点が2句、3点が9句、2点9句、1点30句だった。兼題別の三点以上獲得句は次の通り。

「五月」

五月憂し水棺といふ語に出会ふ         今泉恂之介

気がつけば蔭を歩いている五月         大平 昭生

引き入れて水音ゆたかに五月の田        大沢 反平

クレー展出でて五月の風の色          吉野 光久

「空豆」

空豆のサヤに親指姫眠る            星川 佳子

蚕豆や四十五年の二人旅            大沢 反平

空豆を剥くうち怒り収まりぬ          大平 昭生

福相の女将茹でたるはじき豆          堤 てる夫

空豆や屋台にこぼす嘘と愚痴          野田 冷峰

「雑詠」

古きもの生かしたくなる更衣          堤 てる夫

薔薇園の四方に仲良しゐたりけり        大沢 反平

夏雲や書を頼まれて「夢」と書く        大石 柏人

(吉野光久記)

 

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水木会第99回例会

水木会は5月18日(水)、日経本社7階会議室で、平成23年度第5回例会(通算99回)を開いた。「大震災」から早や二カ月を越えたが、巨大地震・津波の災害復旧の足取りは重く、福島原発の事故収束の道のりは遠い。この日の兼題「薄暑」「柏餅」で気分を切り替えたいというのが誰しもの思いなのだろう、出席者17人に投句参加者が12人、投句総数139句と大賑わいだった。
選句7句で句会を進めた結果、最高の6点は「葉を四ツに畳みし客や柏餅 光迷」の1句。次席は4点で、「薫風を押してよたよた都電来る 正裕」「旧道の青菜売場に柏餅 正市」「半袖の細き腕なり街薄暑 弥生」の3句だった。3点句は11句。以下、2点19句、一点29句だった。兼題別の高点句(3点以上)は次の通り。

「薄暑」
半袖の細き腕なり街薄暑         水口 弥生
節電の断り書きや駅薄暑         嵐田 啓明
古着屋は若者ばかり昼薄暑        植村 博明
妻病んで暗き薄暑の台所         大澤 水牛
夕薄暑青葡萄のやうな時         佐々木 碩
菜園の支柱揃ひし薄暑かな        広上 正市
黒髪の重くなりたる薄暑かな       星川 佳子
白塗りの舞妓のうなじ夕薄暑       吉野 光久
「柏餅」
葉を四ツに畳みし客や柏餅        須藤 光迷
旧道の青菜売場に柏餅          広上 正市
子供らはみな巣立ちたり柏餅       今泉恂之介
新しき稽古着おろす柏餅         大下 綾子
柏餅ふるさと会の誘ひ状         徳永 正裕
子のをらぬ夫婦の好きな柏餅       吉野 光久
「雑詠」
薫風を押してよたよた都電来る      徳永 正裕

<出席者> 池村実千代、今泉恂之介、植村博明、大熊万歩、大澤水牛、大平睦子、加藤明男、久保田操、小林啓子、高橋淳、堤てる夫、徳永正裕、広上正市、星川佳子、水口弥生、横井定利、吉野光久
<投句参加> 嵐田啓明、今村聖子、大下綾子、金田青水、佐々木碩、杉山智宥、須藤光迷、高石昌魚、深田森太郎、藤野十三妹、山口詩朗、山田明美
(堤てる夫記)

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