第107回酔吟会例会

酔吟会の平成25年度第6回例会(通算107回)が11月9日(土)午後1時から、鎌倉橋交差点そばの日経第二別館8階会議室で開かれた。

今年は秋がほんとに短く、それも雨がちで、天高くの感じを十分味わえないうちに立冬(7日)を迎え、この日も曇りで日中18℃、夕方になると肌寒いくらいになった。

この日の出席者は今泉恂之介、大澤水牛、岡田臣弘、片野涸魚、久保田操、澤井二堂、藤村詠悟、星川佳子の8氏。投句参加は大沢反平、金指正風、徳永正裕、野田冷峰、藤野十三妹氏の5氏。

兼題は「短日」と「焼芋」、投句5句、選句8句で句会を行った。その結果、最高点は5点で1句、次いで4点が1句、3点4句、2点9句、1点24句となった。句会出席者が少なく、しかも選句の票が割れたため、3点句以上がわずか6句だった。そこで今回は2点9句も合評会の対象とした。兼題別の2点以上の句は次の通り。

「短日」

短日の妻正座して針に糸         今泉恂之介

短日やこれはどうやら古墳あと      星川 佳子

短日の夕照雲にそそり立つ        大沢 反平

短日や日ごとに伸びる影法師       金指 正風

 

「焼芋」

焼芋をくるむ夕刊拾ひ読み        岡田 臣弘

夕暮の藁火あかあか藷焼ける       大澤 水牛

生きてゐる限りは戦後芋を焼く      今泉恂之介

焼芋や少年の日の赤バット        金指 正風

焼芋の差し入れ匂ふ夕稽古        徳永 正裕

焼芋を風ふく路地で割る二人       澤井 二堂

和菓子屋の横に屋台の焼芋屋       星川 佳子

 

「雑詠」

やはらかに日の動きをり敷松葉      星川 佳子

秋の蚊に刺されてかゆし薬指       今泉恂之介

穏やかな日差しあつめて秋の薔薇     金指 正風

熟柿(うれがき)の艶めく朱や剥き惜しみ 藤野十三妹

(まとめ 大澤水牛)

 

 

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第123回日経俳句会例会

日経俳句会は平成25年第9回例会(通算123回)を10月15日(火)午後6時半から鎌倉橋交差点傍の日経第二別館会議室で開いた。この日は十年に一度という大型の台風26号が関東地方に上陸する恐れありという予報で、朝から雲行き怪しく、幹事宛に「句会やるのですか」の問い合わせしきり。「欠席します」との連絡も続々届いた。正午過ぎ幹事団協議の結果、(1)今から中止の連絡をしても既に外出してしまっている人もいるだろうから連絡が徹底できない(2)暴風雨が来るとしても今夜半、句会の時間はまだ大丈夫─という判断で予定通り決行することにした。これはまさに正解で、句会を早目に切り上げた8時少し前は多少雨が強まってきたかなという程度で、参会者一同無事に帰れた。

“台風句会”の出席者は16名、欠席投句が17名、投句総数163句ということになった。この日の兼題は「秋(秋一般)」「蚯蚓鳴く(みみずなく)」で、6句選句で句会を進めた。最高点は6点で高瀬大虫さんの「空(うろ)の眼の秋を吸込む埴輪かな」と嵐田啓明さんの「曲がるたび路面電車の秋軋む」の2句。次席5点は「朱といふを終の色とし烏瓜 吉野光久」「肋骨のひびの疼きや蚯蚓鳴く 大澤水牛」の2句。

次いで4点が8句、3点12句、2点21句、1点が39句だった。兼題別の高点句(3点以上)は次の通り。

「秋一般」

空の眼の秋を吸込む埴輪かな      高瀬 大虫

曲がるたび路面電車の秋軋む      嵐田 啓明

うがひして空向く口の中も秋      今泉恂之介

山の影恐竜に似て秋夕焼        今泉恂之介

交差点他人の空似秋の空        大熊 万歩

振返り振返り行く秋の犬        金田 靑水

どうですか満腹ですと返す秋      山田 明美

秋ぬって貨物列車の長い列       植村 博明

秋深き終のすみかを定めかね      大倉悌志郎

秋晴の空へうがひの音高し       金田 靑水

秋遍路後ろ姿に入り日さす       岡田 臣弘

秋風や翼を持たぬ風見鶏        佐々木 碩

 

「蚯蚓鳴く」

肋骨のひびの疼きや蚯蚓鳴く      大澤 水牛

こんな日は蚯蚓鳴くらし月まつ赤    嵐田 啓明

終バスを待てど来ぬ闇みみず鳴く    澤井 二堂

蚯蚓鳴く声も届かぬ歳となり      井上庄一郎

病室にゐるはずのなき蚯蚓鳴く     吉野 光久

落武者の鎧脱ぐ夜や蚯蚓鳴く      今泉恂之介

富士見えぬ富士見坂なり蚯蚓鳴く    星川 佳子

「雑詠」

朱といふを終の色とし烏瓜       吉野 光久

芭蕉忌や四年がかりの旅終へむ     堤 てる夫

風が来て陽が来て丘の秋桜       大沢 反平

いつも行くいつもの道の赤まんま    金田 靑水

取つときの石鹸下ろす雨月かな     横井 定利

 

参加者(出席16名)嵐田啓明、今泉恂之介、大熊万歩、大倉悌志郎、大澤水牛、大沢反平、佐々木碩、澤井二堂、杉山智宥、高石昌魚、高瀬大虫、高橋ヲブラダ、徳永正裕、直井正、野田冷峰、星川佳子(投句参加17名)池村実千代、井上庄一郎、植村博明、大下綾子、岡田臣弘、加藤明男、金田青水、久保田操、須藤光迷、田中頼子、堤てる夫、流合研士郎、廣上正市、藤野十三妹、山田明美、横井定利、吉野光久

(まとめ・大澤水牛)

 

 

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第97回番町喜楽会例会

番町喜楽会は10月5日(土)午後1時から千代田区二番町の番町ハイム会議室で第97回例会を開いた。この日は朝から時折秋雨がさーっと通り過ぎる天気。忙しい面々ばかりの句会だけに、この日も出席10人に対して欠席投句が7人という形になった。そんな中で、今年春以来顔を見せなかった三好六甫さんが颯爽登場、お得意のワルシャワ詠と化粧直し工事中の自宅マンションから眺めた名月の句で高点を獲得した。また投句参加の山口斗詩子さんが亡き夫詩朗さんに供えた「栗御飯」の句でこの日の最高点を射止めたのをはじめ投句5句全てに点が入る快挙を記録した。

今回の兼題は「黃落」と「夜食」で、投句5句、選句6句で句会を進めた結果、最高点は5点で「栗ごはん栗ひとつ足し仏前へ 斗詩子」の1句。次席4点も1句で「黃落や覗いて過ぎる御所の門 而雲」。以下3点が9句、2点14句、1点17句と続いた。兼題別の高点句(3点以上)は次の通り。

「黃落」

黃落や覗いて過ぎる御所の門      今泉 而雲

黃落の道にピンクのシューズ跳ね    山口斗詩子

足萎えて黃落の中に佇めり       山口斗詩子

黃落や木道一本燧岳          野田 冷峰

「夜食」

夜食してワルシャワあての私信かく   三好 六甫

パソコンに倦みて夜食の玉子粥     大澤 水牛

「雑詠」

栗ごはん栗ひとつ足し仏前へ      山口斗詩子

秋うらら酒屋のくれし小手拭ひ     大澤 水牛

名月は足場のなかを上りけり      三好 六甫

十六夜に誘はれて入るファドの店    前島 厳水

牡蠣すするあと七年を生きる気に    須藤 光迷

(第97回例会参加者)【出席】今泉而雲、大澤水牛、須藤光迷、高瀬大虫、田中白山、谷川水馬、玉田春陽子、星川佳子、前島厳水、三好六甫【投句参加】井上啓一、岩沢克恵、高井百子、堤てる夫、徳永正裕、野田冷峰、山口斗詩子

(記録 大澤水牛)

 

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酔吟会第106回例会

酔吟会の平成25年度第5回例会(通算106回)が9月28日(土)午後1時から、鎌倉橋交差点そばの日経第二別館8階会議室で開かれた。

台風18号が9月16日に日本列島を縦断、各地に水害をもたらしたが、台風一過、秋の気配が深まり28日も朝から涼しい秋日和となった。開催日が第2土曜日から第4土曜日に変更になったせいか、出席は9人に止まった。

出席者は今泉恂之介、大澤水牛、大沢反平、岡田臣弘、片野涸魚、久保田操、澤井二堂、堤てる夫、星川佳子の9氏。投句参加は大石拍人、金指正風、徳永正裕、野田冷峰、藤野十三妹氏の5氏。

この日の兼題は「秋風」と「枝豆」、投句5句、選句8句で句会を行った。その結果、最高点は5点で1句、次いで4点が1句、3点5句、2点18句、1点13句となった。兼題別の3点句以上の句は次の通り。

「秋風」

秋風や果樹に残りし空袋     堤 てる夫

瘦猫の泣く声痛し秋の風     藤野十三妹

母の空へ父よろしくと秋の風   澤井 二堂

「枝豆」

枝豆やつくづく丸し父の背    星川 佳子

「雑詠」

秋闌けて狂言鼓の高調子     大沢 反平

稲架けや日の暮れてなほ老夫婦  堤 てる夫

捨て猫に夜寒を告ぐる風の音   藤野十三妹

(まとめ 澤井二堂)

 

 

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日経俳句会第122回例会

日経俳句会は平成25年第8回例会(通算122回)を9月17日(火)午後6時半から鎌倉橋交差点傍の日経第二別館会議室で開いた。兼題は「鰯雲(いわしぐも)」「狗尾草(えのころぐさ、ねこじゃらし)」で、出席22人、投句参加13人からの168句を対象に7句選句で句会を進めた。その結果、最高は星川佳子さんの「醤油屋の屋根ながながと鰯雲」の7点句。次席は植村博明さんの「鉄棒のつかみ直して鰯雲」の6点句。続く5点句は、嵐田啓明さんの「なきながら壁にぶつかる秋の蝉」、大下綾子さんの「いわし雲磨き込まれし聖火台」、横井定利さんの「仕舞風呂秋の七草暗誦す」の3句。

次いで4点が10句、3点15句、2点23句、1点が41句だった。兼題別の高点句(3点以上)は次の通り。

「鰯雲」

醤油屋の屋根ながながと鰯雲      星川 佳子

鉄棒のつかみ直して鰯雲        植村 博明

いわし雲磨き込まれし聖火台      大下 綾子

鰯雲豆粒ほどの人の陰         植村 博明

投網うつ夜明けの海や鰯雲       金田 青水

庭下駄のひんやりとして鰯雲      星川 佳子

いわし雲母となった日想ひだす     池村実千代

体操の反りかえる空鰯雲        大石 柏人

鰯雲の中へボート漕ぎ出す       大熊 万歩

鰯雲石巻にも大漁旗          岡田 臣弘

包丁を研ぐ水にあり鰯雲        須藤 光迷

鰯雲昔海軍兵学校           田中 頼子

稜線の長き浅間や鰯雲         堤 てる夫

少年の大志やいずこ鰯雲        徳永 正裕

鰯雲あれこれ問わずルージュ引く    野田 冷峰

「狗尾草」

足元に谷中の風や猫じゃらし      澤井 二堂

名ばかりの農地となりてねこじゃらし  杉山 智宥

指切りや狗尾草の風の道        野田 冷峰

口下手な男と女ねこじゃらし      横井 定利

猫じゃらし鉄条網を撫でにけり     大熊 万歩

「予定地」の看板古びねこじゃらし   大下 綾子

もののふの夢の城址ねこじゃらし    流合研士郎

「雑詠」

なきながら壁にぶつかる秋の蝉     嵐田 啓明

仕舞風呂秋の七草暗誦す        横井 定利

露の夜に歌つてをりぬ藤圭子      今泉恂之介

新涼や家出の猫に言い寄られ      大沢 反平

新涼や身離れのよき魚の骨       佐々木 碩

姉の手の母の手に似し良夜かな     金田 青水

とりあへず意地を呑みこみ敬老日    吉野 光久

 

参加者(出席)嵐田啓明、井上庄一郎、今泉恂之介、植村博明、大熊万歩、大澤水牛、岡田臣弘、佐々木碩、澤井二堂、杉山智宥、須藤光迷、高石昌魚、高瀬大虫、田中頼子、堤てる夫、徳永正裕、野田冷峰、流合研士郎、廣上正市、藤野十三妹、星川佳子、水口弥生、横井定利(投句参加)池村実千代、大石柏人、大沢反平、大下綾子、加藤明男、金田青水、久保田操、須藤光迷、高橋ヲブラダ、直井正、村田佳代、山田明美、吉野光久

(まとめ・堤てる夫)

 

 

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第96回番町喜楽会例会

番町喜楽会は9月2日(月)午後6時半から千代田区九段下の生涯学習館4階会議室で、平成25年第9回例会(通算96回)を開いた。

兼題は「秋の雲(あきのくも)」「桔梗(ききょう)」で、出席14人、投句参加1人、投句総数は75句。6句選句で句会を進めた結果、最高は谷川水馬さんの「終の地と定めし庭の桔梗かな」と、星川佳子さんの「白桔梗祖母の指輪は母の手に」の6点句2句。次席は堤てる夫さんの「秋の雲一茶井月山頭火」の5点句。

続く4点句は、井上啓一さんの「子等はみな異国にありて秋の雲」、大澤水牛さんの「もつ焼きを喰はむ残暑の川向う」と「席詰めぬ頑な女秋暑し」の2句に、須藤光迷さんの「妻呼ばな赤く染まれる秋の雲」、玉田春陽子さんの「桔梗や方丈庭の箒跡」の計5句。以下3点5句、2点9句、1点19句だった。兼題別の高点句(3点以上)は次の通り。

「秋の雲」

秋の雲一茶井月山頭火        堤 てる夫

子等はみな異国にありて秋の雲    井上 啓一

妻呼ばな赤く染まれる秋の雲     須藤 光迷

大筆でさつとひと刷き秋の雲     星川 佳子

「桔梗」

終の地と定めし庭の桔梗かな     谷川 水馬

白桔梗祖母の指輪は母の手に     星川 佳子

桔梗や方丈庭の箒跡         玉田春陽子

角館桔梗咲きたる武家屋敷      井上 啓一

父母に一枝づつの桔梗かな      堤 てる夫

「雑詠」

もつ焼きを喰はむ残暑の川向う    大澤 水牛

席詰めぬ頑な女秋暑し        大澤 水牛

新涼や壁の海図はオホーツク     今泉 而雲

あらはれてまた陰に入る盆踊     徳永 正裕

参加者(出席)井上啓一、今泉而雲、大澤水牛、須藤光迷、高井百子、高瀬大虫、田中白山、谷川水馬、玉田春陽子、堤てる夫、徳永正裕、野田冷峰、星川佳子、前島巌水(投句参加)岩沢克恵   (まとめ・堤てる夫)

 

 

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第121回日経俳句会例会

日経俳句会は8月20日(火)午後6時半、鎌倉橋交差点傍の日経第二別館会議室で、平成25年第7回例会(通算121回)を開催した。兼題は「野分(のわき)」「萩(はぎ)」で、出席21人、投句参加14人、投句総数は169句。7句選句の句会の結果、最高は佐々木碩さんの「はすかいに雀流るる野分かな」、星川佳子さんの「祖母二人ひらがな二文字はぎの花」の8点2句だった。次席は、大倉悌志郎さんの「赤富士のたちまちくづるかき氷」の7点句。次いで6点句は、大熊万歩さんの「肩先に白萩触るるベンチかな」、碩さんの「天道虫この指先がヘリポート」の2句。5点句は、悌志郎さんの「掃ききよめ会釈する子や萩の寺」、金田青水さんの「軽トラに落果あふるる野分あと」、高瀬大虫さんの「荒ぶるも色めくもあり阿波踊」の3句が並んだ。4点句は5句、3点句11句、以下2点20句、1点46句。兼題別の高点句(3点以上)は次の通り。

「野分」

はすかいに雀流るる野分かな    佐々木 碩

軽トラに落果あふるる野分あと   金田 清水

風鈴を急いで外す野分かな     井上庄一郎

窓すこし開けて野分の声を聴き   高瀬 大虫

野分過ぎ屋台組まるる村歌舞伎   田中 頼子

木杭打つ掛矢の音も野分かな    廣上 正市

野分去り星満天の奥只見      大倉悌志郎

木の枝にシャツぶら下がる野分晴  大澤 水牛

野分来て心の澱を流しけり     澤井 二堂

美容師の二の腕太し野分晴     横井 定利

「萩」

祖母二人ひらがな二文字はぎの花  星川 佳子

肩先に白萩触るるベンチかな    大熊 万歩

掃ききよめ会釈する子や萩の寺   大倉悌志郎

濡れし萩おこして参る母の墓    澤井 二堂

萩を食ふ山羊大仰に首を振り    高瀬 大虫

山の湯に萩の声聞く暗夜かな    徳永 正裕

秩父越え一揆の里に萩こぼれ    野田 冷峰

「雑詠」

赤富士のたちまちくづるかき氷   大倉悌志郎

天道虫この指先がヘリポート    佐々木 碩

荒ぶるも色めくもあり阿波踊    髙瀨 大虫

熱帯夜明けて左右の生あくび    杉山 智宥

父も子も瓜実顔や敗戦忌      大澤 水牛

パソコンのぐずり出したる残暑かな 大澤 水牛

きちきちや曲がれば出会ふ千曲川  吉野 光久

参加者(出席)嵐田啓明、今泉恂之介、大倉悌志郎、大澤水牛、岡田臣弘、澤井二堂、杉山智宥、須藤光迷、高石昌魚、高瀬大虫、高橋淳、田中頼子、堤てる夫、徳永正裕、直井正、廣上正市、藤野十三妹、星川佳子、水口弥生、村田佳代、横井定利(投句参加)池村実千代、井上庄一郎、植村博明、大石柏人、大熊万歩、大沢反平、大下綾子、加藤明男、金田青水、久保田操、佐々木碩、野田冷峰、山田明美、吉野光久         (まとめ・堤てる夫)

 

 

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第94回番町喜楽会

番町喜楽会は、7月1日(月)午後6時半から東京・九段の生涯学習会館で7月例会(通算第94回)を開催した。兼題は「土用(どよう)」「木下闇(こしたやみ)」で、投句総数は80句。6句選句で句会を進めた結果、最高は玉田春陽子さんの「糠床の天地を返し土用入り」の5点句だった。次席は4点4句で、高井百子さんの「山ガール背に力あり木下闇」と「桑の実の熟れて紬の里に降り」の2句、前島巌水さんの「にわか雨土の匂へる土用かな」と「うずもれし古戦場碑や木下闇」の2句。次いで3点句も4句で、今泉而雲さんの「麦秋やTPPを立ち話」、大澤水牛さんの「またたびの花枝猫へ土産とす」、須藤光迷さんの「僧の去りまた僧来る木下闇」、徳永正裕さんの「土用入りわが身いとへと老母より」が並んだ。

3点以上の高点句が合計9句しか出ず、以下2点16句、1点25句。これに対して得点無しが30句という結果になった。

参加者は(出席)井上啓一、今泉而雲、大澤水牛、須藤光迷、高井百子、高瀬大虫、谷川水馬、高橋楓子、玉田春陽子、堤てる夫、徳永正裕、野田冷峰、星川佳子、前島巌水(投句参加)笹本塘外

(まとめ・堤てる夫)

 

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第95回番町喜楽会

番町喜楽会は8月3日(土)午後1時から千代田区二番町の番町ハイム会議室で、平成25年第8回例会(通算95回)を開いた。兼題は「毛虫(けむし)」「夏深し(なつふかし)」で、15人の会員からの投句総数は73句だった。6句選句で進めた句会で、最高は星川佳子さんの「塀越しに毛虫のわいて貸家札」の5点句。次席は高井百子さんの「夏深し眉を濃い目に襟を抜き」の4点句。続く3点句は8句で、高点句(3点以上)は合計10句に止まった。猛暑続き、出席者も9人(投句参加6人)と少な目だった。しかし発言時間ゆったりの合評会は活発で、暑さそこのけの賑やかさだった。兼題別の高点句は次の通り。

「毛虫」

塀越しに毛虫のわいて貸家札     星川 佳子

背を伸ばし空を見てゐる毛虫かな   今泉 而雲

毛虫出で上毛三山見はるかす     谷川 水馬

南無南無と作務衣の和尚毛虫焼く   玉田春陽子

白毫寺五辯に潜む毛虫あり      野田 冷峰

「夏深し」

夏深し眉を濃い目に襟を抜き     高井 百子

梅干して胡瓜を漬けて夏深み     大澤 水牛

夏深し時候見舞ひの女文字      徳永 正裕

「雑詠」

百発の花火一挙に海に立つ      須藤 光迷

頁繰る余白にまでも晩夏かな     玉田春陽子

参加者(出席)今泉而雲、大澤水牛、須藤光迷、高井百子、高瀬大虫、田中白山、玉田春陽子、野田冷峰、星川佳子(投句参加)井上啓一、谷川水馬、堤てる夫、徳永正裕、前島巌水、山口斗詩子   (まとめ・堤てる夫)

 

 

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第8回逆回り奥の細道・那須日光

日経俳句会の通年企画「逆回り奥の細道吟行」は、いよいよ大詰めの第8回として6月23、4日、那須・黒羽、日光を回った。参加者は大澤水牛幹事長初め嵐田啓明、井上庄一郎、今泉恂之介、澤井二堂、杉山智宥、谷川水馬、玉田春陽子、徳永正裕、廣上正市、星川佳子、堤てる夫(幹事)の12人。

初日は栃木県大田原市に点在する芭蕉ゆかりの史跡などをマイクロバスで訪ねた。黒羽(くろばね)は芭蕉一行が14日間も滞在した土地で、芭蕉句碑を辿るだけでも大変。「秣おふ人を枝折の夏野かな」の句碑がある玉藻稲荷神社を皮切りに、「夏山に足駄を拝むかどでかな」の修験光明寺跡、臨済宗の名刹、東山雲巌寺で「木啄きも庵は破らず夏木立」の句碑を見る。その後、黒羽藩主大関家の菩提寺の大雄寺と、隣接の芭蕉公園、芭蕉の館へ。那珂川沿いの「観光やな」で昼食を取った後、遊行柳、殺生石を観て一路、日光の宿へ行く。

二日目のハイライトは裏見の滝。路線バスで「滝の入口」まで行き、あとは上り坂をだらだら上り、急な岩道や木道を苦闘一時間、ようやく滝壷を見下ろす観覧ポイントに到着できた。下山後は大谷(だいや)川沿いに憾満ヶ淵に向かう。「大日堂跡」の小さな芭蕉句碑は「あらたふと青葉若葉の日の光り」。那須岳から流れ出た岩石は滑らかで薄い灰色、川の水は澄み切っていた。遊歩道の崖際に大小の地蔵が百体ほど苔むして並ぶ「並び地蔵」が印象的だった。

昼食後は三々五々、日光山内に入り東照宮参拝。東照宮の修復工事が始まるとかで、間もなく陽明門も覆いが掛けられるという。特別公開していた奥宮の家康公廟所まで入れたのと相まって幸運な旅の締め括りとなった。帰京後恒例のメール句会を行った。好評を博した句は以下の通り。

健脚の翁と歩む夏木立      嵐田 啓明

青葉越え天より迫る大伽藍    井上庄一郎

木下闇小角の足駄滑りし跡    今泉恂之介

青き淵涼しく眠る百地蔵     大澤 水牛

裏見滝きりきり舞ひの夏の蝶   澤井 二堂

夏の雲校舎の壁に読む芭蕉    杉山 智宥

鬼気はらむ殺生石や沖縄忌    谷川 水馬

裏見をば風にたのみて滝見かな  玉田春陽子

ほととぎす家康公の廟所まで   堤 てる夫

雨やみて日光山内夏の朝     徳永 正裕

青田風はせをの時空駆けめぐる  廣上 正市

水無月や苔の衣の百地蔵     星川 佳子

(まとめ 堤てる夫)

 

 

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