酔吟会第124回例会

 

兼題句に高点無しの珍現象

 

酔吟会の平成28年9月例会(通算124回)は9月10日午後1時から内神田・日経広告研究所会議室で開催された。常連が不参加だったことから出席11人(大澤水牛、大沢反平、岡田臣弘、片野涸魚、久保田操、澤井二堂、高井百子、玉田春陽子、堤てる夫、徳永正裕、野田冷峰)の小ぶり句会になった。投句参加は4人(今泉而云、大平睦子、谷川水馬、藤野十三妹)。

兼題は「九月」「鶺鴒」で投句5句、選句7句で句会進行。結果は、最高点が5点で2句、次席4点4句、三席3点3句だった。出席者が少なかったため、高点句が少なかった。その中で5点、4点を獲得するのは大したものだと、高点句は大いに称揚された。

またこの日の句会では「鶺鴒」に高点句が無かった。兼題句に高点が出なかったのは初めてのことである。兼題別高点句(3点以上、「鶺鴒」は2点句)は以下の通り。

「九月」

締め忘る窓に九月の唐突に      大沢 反平

廃校に保育所きたる九月かな     岡田 臣弘

九月には九月の風の色のあり     片野 涸魚

長袖の裾のほつれや九月来る     谷川 水馬

糠床のひと息つくや九月来      玉田春陽子

「鶺鴒」

よちよちと鶺鴒を追ふ幼児かな    片野 涸魚

鶺鴒も来るコンクリの都市河川    今泉 而云

蹲に鶺鴒うたふ茶会席        岡田 臣弘

鶺鴒に尻たたかれて庭掃除      高井 百子

「雑詠」

除染土の袋の山やななかまど     谷川 水馬

一夜にて虫鳴く道に道に変りけり   片野 涸魚

風の盆枕に沁みる胡弓かな      岡田 臣弘

今もって本家分家や蕎麦の花     今泉 而云

(報告 高井百子)

 

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番町喜楽会第131回例会

 

「花野」と「鯊」を詠む

 

番町喜楽会の平成28年9月例会(通算131回)は、5日午後6時半から東京・九段下の千代田区立生涯学習館で開催した。兼題は「花野」と「鯊」で、投句5句、選句6句で行った。立秋から一カ月近くも経ったのに、最高気温33度という相変わらずの猛暑ぶり。遅れ馳せの夏休みか二人が海外、一人が国内を旅行中。その一方、仕事が詰まっており止むなく欠席という人もいて、出席は15人だった。

最高は5点で、須藤光迷さんの「鰯雲明日はできそう逆上がり」。次席の4点には谷川水馬さんの「行く雲も色を添えたる花野かな」、光迷さんの「山の端に星の生まれし花野かな」、高井百子さんの「父も子も男やもめや鯊を釣る」、玉田春陽子さんの「掌に命ひんやり今年鯊」の4句が並んだ。3点は高瀬大虫さんの「日の落ちて狐嫁入る花野かな」をはじめ13句に上り、実力伯仲(?)による乱戦模様。2点16句、一点は23句だった。兼題別の高点句(3点以上)は次の通り。

「花野」

山の端に星の生まれし花野かな    須藤 光迷

行く雲も色を添えたる花野かな    谷川 水馬

日の落ちて狐嫁入る花野かな     高瀬 大虫

一歩ずつ花野行く母夢枕       高井 百子

ほんのりと足袋しめりゆく花野径   星川 佳子

「鯊」

父も子も男やもめや鯊を釣る     高井 百子

掌に命ひんやり今年鯊        玉田春陽子

フリットでイタリアンです今日の鯊  齊山 満智

鯊釣りの船続々と橋くぐる      須藤 光迷

竿伝ふ恥づかしげなる沙魚の引き   高瀬 大虫

柔らかき水の匂ひや鯊を釣る     谷川 水馬

鯊の目の入日に映えて運河暮る    廣田 可升

「雑詠」

鰯雲明日はできそう逆上がり     須藤 光迷

剥落の紅殻格子晩夏光        玉田春陽子

黄金色稲田に鷺の舞ひ下りて     堤 てる夫

蜻蛉のためらひがちなホバリング   堤 てる夫

盆帰り敷居跨げば大阪弁       廣田 可升

胡弓の音おわら祭の夜が白む     前島 厳水

 

〈参加者〉【出席15人】嵐田双歩、池内健治、今泉而云、大澤水牛、齊山満智、須藤光迷、高井百子、高瀬大虫、田中白山、玉田春陽子、徳永正裕、廣田可升、星川佳子、前島厳水、山口斗詩子【投句参加5人】大下綾子、澤井二堂、谷川水馬、堤てる夫、野田冷峰   (報告・須藤光迷)

 

 

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日経俳句会第151回例会

 

リオ五輪TV観戦で寝不足顔も

「秋の声」で水馬氏堂々7点獲得

 

日経俳句会は8月17日(水)、千代田区内神田の日経広告研究所会議室で8月例会(通算151回)を開いた。残暑の中、「秋の声」「芒」の兼題に34人から165句の投句があった。関東を掠めた台風の影響で蒸し暑い夕刻、オリンピック観戦で眠い目をこすりながら19人が出席、14人が投句参加した。

7句選(欠席選句は5句)の結果、最高点は7点で谷川水馬さんの「頬杖の妻の背中や秋の声」が選ばれ、次席6点に植村博明さんの「芒原揺れて見送る貨車の列」と須藤光迷さんの「子とはぐれ妻ともはぐれ芒原」の2句が並んだ。つづく5点は「廃線の鉄路を隠す芒かな」(深田森太郎)、「八月や昭和史探る書肆の奥」(廣上正市)、「亡き人も一つ輪のなか盆踊」(星川佳子)の3句で、4点は「トーストを焦し目に焼く秋の声」(中嶋阿猿)、「山昏れて尾根に残照花すすき」(大倉悌志郎)、「秋立ちて退位ご決意淡淡と」(堤てる夫)など8句。3点も8句で、2点28句、1点52句と多くの句が得票した。高点句(3点句以上)は以下の通り。

「秋の声」

頬杖の妻の背中や秋の声        谷川 水馬

トーストを焦し目に焼く秋の声     中嶋 阿猿

江ノ電の空席ぽつり秋の声       流合研士郎

灯明の百の揺らぎや秋の声       星川 佳子

井戸のみの残る城跡秋の声       嵐田 双歩

芋の葉にころり水玉秋の声       大澤 水牛

朝まだき鉄路の響き秋の声       大沢 反平

隅つこにブリキの如雨露秋の声     横井 定利

「芒」

芒原揺れて見送る貨車の列       植村 博明

子とはぐれ妻ともはぐれ芒原      須藤 光迷

廃線の鉄路を隠す芒かな        深田森太郎

山昏れて尾根に残照花すすき      大倉悌志郎

おじぎして風やりすごす芒かな     中村  哲

花すすきバンダナにさす山男      星川 佳子

分け入って持ち歌ひとつ芒原      植村 博明

青芒親父は元気今日も留守       杉山 智宥

「当季雑詠」

八月や昭和史探る書肆の奥       廣上 正市

亡き人も一つ輪のなか盆踊       星川 佳子

秋立ちて退位ご決意淡淡と       堤 てる夫

鎌を研ぐ汗にも草の匂ひかな      廣上 正市

ハンモックの尻まん丸や涼新た     大澤 水牛

浚渫船どかりと居座る残暑かな     大沢 反平

 

参加者(出席)=嵐田双歩、和泉田守、井上庄一郎、今泉而云、大倉悌志郎、大澤水牛、大沢反平、澤井二堂、杉山智宥、高石昌魚、髙瀨大虫、谷川水馬、堤てる夫、徳永正裕、直井正、中嶋阿猿、中村哲、野田冷峰、星川佳子、

(投句参加)植村博明、大熊万歩、大下綾子、大平睦子、岡田臣弘、加藤明男、金田青水、久保田操、須藤光迷、高橋ヲブラダ、流合研士郎、廣上正市、深田森太郎、水口弥生、横井定利

(まとめ・嵐田双歩)

 

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番町喜楽会第130回例会

 

「灼く」と「天の川」に力作続々

 

番町喜楽会の平成28年8月の例会(通算130回)は、8月6日(土)午後6時から九段下の割烹「味さと」で開かれた。夏休みに入った事もあり、いつもよりやや少なめの総勢13名の参加者が九段下の会場に定刻に集結した。この日の兼題は「灼く」と「天の川」。投句5句、選句7句で行った結果、廣田可升さんの「なまこ塀灼けて潮の香匂ふ町」と徳永正裕さんの「かき氷煉瓦の駅の喫茶室」が7点の最高点を獲得した。以下、6点句が1句、5点句が2句、3点句が9句、2点句が15句、1点句が29句だった。欠席投句を含め投句合計は93句だった。3点以上得た兼題別高点句は次の通り。

「灼く」

なまこ塀灼けて潮の香匂ふ町      廣田 可升

警備員灼くる持ち場を動けずに     大下 綾子

灼くる日の真田隠し湯鉄の色      高井 百子

砂灼けて裸足汀へ一目散        高瀬 大虫

ゆらゆらり灼くる地歩む老女われ    山口斗詩子

「天の川」

駱駝みな瞑りてをり天の川       今泉 而云

伊那谷は底より仰ぐ銀河かな      玉田春陽子

美濃焼の窯鎮まれば天の川       須藤 光迷

波照間の水平線に銀河澄む       野田 冷峰

連山を蓋ひ果てなし天の川       前島 巌水

「雑詠」

かき氷煉瓦の駅の喫茶室        徳永 正裕

素麺の縋るものなき桶の中       玉田春陽子

人消ゑし町の垣根や沙羅の花      谷川 水馬

隅田へと浴衣華やぐ電車かな      前島 巌水

〈参加者〉(出席十三名)嵐田双歩、今泉而云、大澤水牛、須藤光迷、高井百子、高瀬大虫、谷川水馬、玉田春陽子、堤てる夫、徳永正裕、廣田可升、星川佳子、前島巌水(投句参加名)池内健治、大下綾子、齊山満智、田中白山、野田冷峰、山口斗詩子

(報告 谷川水馬)

 

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日経俳句会第150回例会

 

節目の句会、「土用」「ビール」に166句の盛況

 

日経俳句会は7月20日(水)、千代田区内神田の日経広告研究所会議室で七月例会を開いた。今回は発足以来例会150回目の節目に当たり、大澤水牛幹事長から「格別意識しないまままる15年。前身の銀鴎会時代を含めるとほぼ20年になる。これからも二百回、三百回を目指して句づくりに励みたい」との挨拶があった。今泉而云さんからも「九十歳までやる会を立ち上げようと思っている」と元気な発言があった。

記念すべき例会の出席者は23人。兼題の「土用」と「ビール」には、欠席者を含め34人から166句の投句があった。欠席した10人からも選句が寄せられ、3点以上の点を集めた作品が30句に達するなど盛況裡に行われた。

最高点の7点には大熊万歩さんの「電線の影黒く落つ土用かな」、水口弥生さんの「来客は蜘蛛の一匹土用の日」、大倉悌志郎さんの「小さき胸大きな西瓜かかへくる」の3句が並んだ。次席の5点も3句あり、「友逝きて独りのビール常の席」(大倉悌志郎)、「悪党に大小のありサングラス」(嵐田双歩)、「藍染の浴衣に違ふ妻を見る」(中村哲)。4点句は「深煎りの珈琲の香や土用東風」(和泉田守)、「ゴキブリが挨拶に来る土用かな」(金田青水)、「動くのは木々の影のみ昼ビール」(流合研士郎)など7句出た。このうち和泉田、金田、中村三氏がそれぞれ2句ずつを占めるなど健闘が目立った。以下3点が14句、2点24句、1点37句だった。兼題別の高点句(3点句以上)は以下の通り。

「土用」

電線の影黒く落つ土用かな    大熊 万歩

来客は蜘蛛の一匹土用の日    水口 弥生

深煎りの珈琲の香や土用東風   和泉田 守

ゴキブリが挨拶に来る土用かな  金田 青水

樹臭濃き土用の照葉樹林かな   金田 青水

ひと気なき浜に崩るる土用波   中村  哲

大楠の威風堂々土用風      今泉 而云

父と子の並んで見てる土用波   植村 博明

デパートのソフアに熟睡(うまい)土用入  大澤 水牛

家中を全開にして土用干し    杉山 智宥

歳時記の表紙の手あか土用干し  徳永 正裕

見栄を切る女代議士土用照    中嶋 阿猿

土用波いちまい長くのびてきし  星川 佳子

「ビール」

友逝きて独りのビール常の席   大倉悌志郎

父と子の黙して交はすビールかな 和泉田 守

動くのは木々の影のみ昼ビール  流合研士郎

缶ビールぷしゅと泡散る新幹線  嵐田 双歩

昼間とは別の顔して生ビール   植村 博明

地ビールと手製燻製友来る    大熊 万歩

大ジョッキドイツ娘の腕太し   大澤 水牛

泡溢れ快気祝の生ビール     髙石 昌魚

天井の高きも銀座ビヤホール   徳永 正裕

地曳網引きし円座の麦酒かな   廣上 正市

「雑詠」

小さき胸大きな西瓜かかへくる  大倉悌志郎

悪党に大小のありサングラス   嵐田 双歩

藍染の浴衣に違ふ妻を見る    中村  哲

憂きことも楽しきことも遠花火  和泉田 守

母見舞ふ道くろぐろと梅雨に入る 中村  哲

見上げたる永六輔の星涼し    大下 綾子

夕顔や垣のほつれに顔を出し   水口 弥生

参加者(出席)嵐田双歩、池村実千代、今泉而云、大倉悌志郎、大澤水牛、大沢反平、岡田臣弘、澤井二堂、杉山智宥、高石昌魚、髙瀨大虫、谷川水馬、堤てる夫、徳永正裕、直井正、中沢義則、中村哲、廣上正市、藤野十三妹、水口弥生、横井定利。(投句参加)和泉田守、井上庄一郎、植村博昭、大熊万歩、大下綾子、大平睦子、金田青水、久保田操、須藤光迷、高橋ヲブラダ、中嶋阿猿、野田冷峰、流合研士郎、星川佳子。 (まとめ・廣上正市)

 

 

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酔吟会123回例会

 

春陽子のウイット溢れるヨット句に感嘆

 

酔吟会第123回が7月9日(土) 午後1時から内神田・鎌倉橋交差点そばのMIFビル8階、日経広告研究所会議室で開かれた。しょぼしょぼと雨が降り続き、句会の始まる頃には止み、またしばらくしてぽつぽつという典型的な梅雨最中。それでもいつもと変わらぬ14人が出席、3名が投句参加という酔吟会としてはフルメンバーが揃った。

この日の兼題は「半夏生」と「ヨット」。投句は全83句。各人7句選で句会を行った結果、最高点は6点で玉田春陽子さんの「相模湾沖にヨットの帆々々々々」というユニークな句が選ばれた。次席の5点は「軽々とヨット空母の裾を行く」(大沢反平)、三席4点句は「点滴といふ名の鎖夏の月」(大石柏人)と「憚らず鳩の接吻半夏生」(大沢反平)の2句が並んだ。続く3点は7句、2点が17句、1点も17句あった。

兼題別高点句(3点以上)は次の通り。

「半夏生」

憚らず鳩の接吻半夏生           大沢 反平(四点)

半夏生蛸喰ふ習ひ今もなほ         堤 てる夫(三点)

半夏生素足の裏の畳の目          大沢 反平(三点)

満席の終活講座半夏雨           玉田春陽子(三点)

命終のあじさい叩く半夏雨         大澤 水牛(三点)

阿蘇五岳地震を孕みて半夏生        野田 冷峰(三点)

「ヨット」

相模湾沖にヨットの帆々々々々       玉田春陽子(六点)

軽々とヨット空母の裾を行く        大沢 反平(五点)

スケッチやヨットの白帆塗り残し      谷川 水馬(三点)

「雑詠」

点滴といふ名の鎖夏の月          大石 柏人(四点)

青春の悔今もあり夏椿           片野 涸魚(三点)

 

参加者(出席)今泉而云、大澤水牛、大沢反平、大平睦子、岡田臣弘、片野涸魚、澤井二堂、高井百子、谷川水馬、玉田春陽子、堤てる夫、徳永正裕、野田冷峰、星川佳子 (欠席投句)大石柏人、久保田操、藤野十三妹

(まとめ・大澤水牛)

 

 

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番町喜楽会第129回例会

 

「七月」は大下氏、「花火」は前島氏─6点句で首位を分け合う

 

番町喜楽会の平成28年7月例会(通算129回)は、4日午後6時半から東京・九段下の千代田区立生涯学習館で開催された。兼題は「七月」と「花火」で、投句5句、選句6句で行った。日中は最高気温が34℃と平年を6℃以上も上回る猛暑。夕方には局地的な雷雨があり、その影響で遅れる人が出たものの、山口斗詩子さんが久し振りに顔を出されるなど、出席者19人の大盛況だった。

最高は6点で、大下綾子さんの「七月の空へ空へと山育つ」と、前島厳水さんの「湖染めて山を揺さぶる花火かな」が肩を並べた。次席の5点は谷川水馬さんの「算盤の玉の軽さや梅雨明けぬ」、三席4点は玉田春陽子さんの「追伸にその壱その弐夏見舞」。3点は高井百子さんが「誰れ彼れにあげたし杏ジャムを練る」はじめ3句を連発するなど、全部で14句もあった。2点は16句、1点句は23句と、相変わらずかなり票が割れた。兼題別の高点句(3点以上)は次の通り。

「七月」

七月の空へ空へと山育つ        大下 綾子

七月だ長い休みが始まるぞ       池内 健治

七月の雨芋の葉を連打せり       大澤 水牛

新じゃがの冷製スープ七月来      高瀬 大虫

七月の雨の精気よ森太る        高瀬 大虫

七月やひねもす水車麦を挽き      谷川 水馬

「花火」

湖染めて山を揺さぶる花火かな     前島 厳水

いつになく素直な母や遠花火      嵐田 双歩

大輪に大輪重ね揚花火         大下 綾子

遠花火家族居ぬ間の一人酒       谷川 水馬

一瞬の四尺玉に佐渡浮かぶ       野田 冷峰

「雑詠」

算盤の玉の軽さや梅雨明けぬ      谷川 水馬

追伸にその壱その弐夏見舞       玉田春陽子

あした着る喪服吊るして梅雨深し    今泉 而云

修羅道に迷う母置き施設出る      齋山 満智

誰れ彼れにあげたし杏ジャムを練る   高井 百子

蛍袋雨の雫を吊るしをり        高井 百子

尻尾つけまだ水の中雨蛙        高井 百子

《参加者》(出席19人)嵐田双歩、池内健治、今泉而云、大澤水牛、大下綾子、齋山満智、須藤光迷、高井百子、高瀬大虫、田中白山、谷川水馬、玉田春陽子、堤てる夫、徳永正裕、野田冷峰、廣田可升、星川佳子、前島厳水、山口斗詩子(投句参加1人)澤井二堂   (まとめ 須藤光迷)

 

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日経俳句会平成28年度上期合同句会

 

「夏至」と「萍」を兼題に37人から111句

 

日経俳句会は6月15日(水)、千代田区内神田の日経広告研究所会議室で平成28年度上期合同句会を開いた。合同句会のため「夏至(げし)」「萍(うきくさ)」と雑詠の3句投句、事前選句5句という方式のもと、37人から111句の投句があった。この日は舛添東京都知事の辞職の報も相まって鬱陶しい梅雨空の中、出席者は18人。欠席者は19人と空席が目についた。

事前選句の結果、最高点は7点で谷川水馬さんの「萍やダムに沈みし村の上」と久保田操さんの「萍や日ねもす雲の行くへ追ふ」の二作品が並んだ。次席の5点は「夏至の日やハシビロじっと立ち尽くす 涸魚」「夏至の夜やことばを交はす牛と馬 綾子」「萍や子ら散り散りに外つ国へ 青水」「六月の闇六月の白き花 而云」「朝餉には皆出払って鮎の宿 博明」の5句。4点句は「リビングに日の色残す夏至の夜 操」「根無草内緒ですけど多産系 智宥」「鮎の香の指に残れり解禁日 悌志郎」「三叉路に陽石ごろり麦の秋 水牛」の4句だった。

今回の投句は粒揃いで投句者全員に点が入り、3点17句、2点17句、1点30句と万遍なく得票した。実力伯仲、レベルの高い選句となった中、萍の下にダム湖を想い、上に行雲を浮かべた両句が最高点を獲得したのが印象的だった。

兼題別高点句(3点句以上)は以下の通り。

「夏至」

夏至の日やハシビロじっと立ち尽くす  片野 涸魚

夏至の夜やことばを交はす牛と馬    大下 綾子

リビングに日の色残す夏至の夜     久保田 操

点滴の清き光や夏至の夜        大熊 万歩

ベか船の気だるく舫ふ夏至の昼     岡田 臣弘

夏至の日やアブサン燃ゆる喉心地    谷川 水馬

日めくりの夏至は一日遅れけり     玉田春陽子

夏至の空埋め尽くすほど衣干す     中村  哲

夏至の空突き破らんかスカイツリー   流合研士郎

天地の熱とどまれり夏至の夜      水口 弥生

まだまだと遊びつづけし夏至日暮れ   星川 佳子

「萍」

萍や日ねもす雲の行くへ追ふ    久保田 操

萍やダムに沈みし村の上      谷川 水馬

萍や子ら散り散りに外つ国へ    金田 青水

根無草内緒ですけど多産系     杉山 智宥

萍の徐々に彼岸に流れ寄る     高瀬 大虫

萍に休める蠅の至福かな      水口 弥生

「当季雑詠」

六月の闇六月の白き花       今泉 而云

朝餉には皆出払って鮎の宿     植村 博明

鮎の香の指に残れり解禁日     大倉悌志郎

三叉路に陽石ごろり麦の秋     大澤 水牛

愛用の父の写真機黴びてをり    嵐田 双歩

犬吠ゆといふ名の岬夏の雲     大石 柏人

万緑に生命の証駒ヶ岳       大沢 反平

梅熟す採る人も無く遊歩道     杉山 智宥

亡き人の墓打つ雨や七変化     髙石 昌魚

桑いちご車道染めたる和紙の里   中嶋 阿猿

路地裏の紫陽花ひとり薄化粧    中村  哲

参加者(出席)=嵐田双歩、池村実千代、井上庄一郎、今泉而云、大倉悌志郎、大澤水牛、澤井二堂、杉山智宥、髙瀨大虫、谷川水馬、玉田春陽子、堤てる夫、徳永正裕 、中嶋阿猿、中村哲、野田冷峰、星川佳子、横井定利

(投句参加)植村博明、大石柏人、大熊万歩、大沢反平、大下綾子、岡田臣弘、片野涸魚、金田青水、久保田操、須藤光迷、高石昌魚、高橋ヲブラダ、直井正、流合研士郎、廣上正市、深田森太郎、藤野十三妹、水口弥生、

(まとめ・嵐田双歩)

 

 

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独鈷山スケッチと田沢温泉蛍狩り吟行

麦秋の独鈷山と秘境の湯の蛍に感激

冷や汁ランチョンパーティで景気づけ

番町喜楽会と日経俳句会は「絵手紙実習と蛍狩り」吟行を6月11、12日、長野県上田市、小県郡青木村田沢温泉で実施した。参加者は日帰り参加1人を含め17名。今回吟行の目的の第一は、上田市塩田平にそびえる日本百名低山の一つ「独鈷山」を水彩画で、というもの。俳画の一歩を踏み出すきっかけにしようという試みである。双牛舎出版物のデザインを一手に引き受ける武蔵野美術大学出身のグラフィックデザイナー玉田春陽子氏を先生に、参加者の多くが小学校以来という絵筆を手にした。これに山里の蛍を鑑賞しようとの企画が加わり、宿泊を青木村田沢温泉に設定、蛍の乱舞を堪能した。

11日の集合場所は、吟行幹事の堤てる夫・百子宅。NHK大河ドラマ「真田丸」一色に染まった上田電鉄別所線の八木沢駅から徒歩2分のところにある。その道すがら、数日前から蛍が飛び始めた小流れがあり、道端には一本の大きな桑の木に色づいた実が生っている。庭には蛍袋が咲き始め、すぐそばを別所線が走る。その向こうには、東西6キロにわたって主尾根を伸ばす、スケッチの大目玉「独鈷山」が鎮座している。

まずは昼食。助っ人幹事の水牛氏が前日から泊まり込んで、味噌を練り、ゴマを磨り潰し、出汁を取り、紫蘇の葉、茗荷、小葱を刻んで特製「冷や汁」をこしらえた。それに加え、百子特製のおにぎりや燻製各種、別所温泉「松籟亭」から取り寄せた山芋の糠漬け、玉子焼き、さらには杉山智宥氏差し入れの手作り「新ラッキョウ漬け」や「くさや」も加わり、イナゴの佃煮、古漬けなど、夏の田舎料理がテーブル一杯並んだ。思い思いの場所で独鈷山を眺めながら冷や汁ランチを堪能したあとは、いよいよ「水彩画実習」。

幹事宅の庭から裏木戸を出て別所線の線路を渡り、濃く色づいた麦畑の一本道を独鈷山に向かって歩くこと約20分。塩田平の観光資料も展示されている「とっこ館」に着く。ここの研修室を拠点に、目の前に聳える独鈷山や夫神岳、塩田平名物の溜池「舌喰池」、「旧西塩田小学校」の古い木造校舎等々、思い思いに散らばってスケッチ。ざっと二時間半、悪戦苦闘の末、力作が次々に仕上がった。春陽子先生の評はたった一言。「みんな色が濃すぎる」。

今夜の宿泊先田沢温泉「富士屋ホテル」からのお迎えバスが独鈷館に到着する頃には、カラッとした涼しい風が吹き始めていた。塩田平は四方山に囲まれた盆地である。気温の差が激しい。参加者には長袖のシャツ持参を幹事から呼びかけてある。さぁ出発。バスはひと山越えて青木村に入った。青木村十観山のふところにある田沢温泉の露天風呂はまだ夕日の映える色濃き山々の中にあった。

夕食は田舎料理ながらも丹精込めたもので、一同和気あいあいで楽しんだ。可升さんが特注の地酒「佐久の花」の一升瓶を持って注いで回る。青木村特産・蕎麦焼酎「たち茜」の売れ行きも良い。途中からカラオケが始まり、冷峰さん、正裕さん、二堂さんらが熱唱した。トリは水馬さん。プロ顔負けの歌声で「北の蛍」。これを以て宴会はお開き、いよいよ本物の蛍鑑賞である。

今年は、田沢温泉でも例年より一週間ほど早く蛍が飛び始めたとか。宿から出ると早くも一匹二匹と飛んでいる。期待を膨らませつつ宿の脇の渓流に沿って数分下り、見どころスポットに着くと、何百匹もの蛍が舞っていた。手で蛍を掬おうとする人、カメラに写そうとする人、蛍が肩に止まって動かず嬉しいが困惑の表情の人。皆が童心に帰って蛍を追いかけた数十分であった。

二日目は雨という予報もあったが、快晴。三つのコースに分かれ観光に出向いた。ジャンボタクシー組8名は主に真田郷巡り。専用タクシー組4名は塩田平のお寺や無言館巡り。早めの帰京を望む2人は幹事の車で急ぎ足観光(別所温泉安楽寺の国宝三重塔他)をした。

吟行句会はいつも通り帰ってから幹事にメール投句し、参加者がメール選句する方式で行った。その結果、最高点は「客人の去りて再び梅雨寒し 百子」が26点というダントツの成績を収めて天賞。次いで「蛍火の行き交ふ彼の世この世かな 而云」が11点、「てのひらの螢少女にかへる君 可升」が10点で続いた。参加者の代表句は次の通り。

 

蛍火の行き交ふ彼の世この世かな     今泉 而云

滴れる独鈷山なり写生会         大澤 水牛

汗ぬぐひ絵筆を放り里めぐり       大平 睦子

螢飛ぶ闇おちこちの声やさし       片野 涸魚

夫神岳雨乞叶ひ田の光る         澤井 二堂

六文銭また六文銭夏木立         杉山 智宥

馬の背の真田本城青田風         須藤 光迷

客人の去りて再び梅雨寒し        高井 百子

渓流の闇に無言の螢舞ふ         田中 白山

冷や汁や薬味の茗荷ちょと多め      谷川 水馬

深き闇螢の恋の百二百          玉田春陽子

我が胸に息つく沢の螢かな        高瀬 大虫

冷汁のランチで始む写生会        堤 てる夫

ため池に哀しき民話みずすまし      徳永 正裕

あな嬉し胸に螢の金メダル        野田 冷峰

てのひらの螢少女にかへる君       廣田 可升

ブローチのかわりに付けし恋螢      星川 佳子

 

参加者は今泉而云、大澤水牛、大平睦子、片野涸魚、澤井二堂、杉山智宥、須藤光迷、高井百子、田中白山、谷川水馬、玉田春陽子、高瀬大虫、堤てる夫、徳永正裕、野田冷峰、廣田可升、星川佳子の各氏。

(まとめ 高井百子)

 

 

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番町喜楽会第128回例会

 

「夏の月」と「鮓」を詠む

澤井二堂さんが初参加

 

番町喜楽会の平成28年6月例会(通算128回)は、6月4日(土)午後6時から九段下の割烹「味さと」で、「夏の月」と「鮓」を兼題に開催された。風が強かったが空気の乾いた気持ちの良い日で、夕刻には総勢17名の参加者が集結した。今回は澤井二堂さんが自由会員として入会、初投句した。

投句5句、選句6句で句会を進めた結果、大澤水牛さんの「涼しさを封じ込めたり鮎の鮨」と欠席投句だった齊山満智さんの「鯖鮨を食べて確かな帰郷かな」が5点の最高点を獲得した。以下、4点句が5句、3点句が9句、2点句が17句、また1点句が26句という結果で、欠席投句を含め投句合計は94句だった。

兼題別の高点句(3点以上)は次の通り。

「夏の月」

鬢付けの去りゆく路地や夏の月 玉田春陽子

聖岳天に座りて夏の月     野田 冷峰

大杉に陽の残りをり夏の月   今泉 而云

送られて別れ難しや夏の月   高井 百子

月涼し水を張りたる田んぼかな 前島 厳水

「鮓」

涼しさを封じ込めたり鮎の鮨  大澤 水牛

鯖鮨を食べて確かな帰郷かな  齊山 満智

大桶の松山鮓や瀬戸の贅    谷川 水馬

夕方の風を入れたりちらし寿司 星川 佳子

朝帰り皿にラップのちらし寿司 今泉 而云

青豆を散らすや母のちらし鮓  田中 白山

鮒の鮓近江に辛き酒を汲む   徳永 正裕

「雑詠」

馬鈴薯の花の畑中通学す    徳永 正裕

六月の冷えや屋久杉大座卓   今泉 而雲

茅葺の駅舎現役桐の花     玉田春陽子

麦秋や穂波まにまにローカル線 堤 てる夫

 

《参加者》

〈出席17名〉嵐田双歩、池内健治、井上啓一、今泉而云、大澤水牛、須藤光迷、高井百子、高瀬大虫、田中白山、谷川水馬、玉田春陽子、堤てる夫、徳永正裕、野田冷峰、廣田可升、星川佳子、前島巌水〈投句参加3名〉大下綾子、齊山満智、澤井二堂

(まとめ 谷川水馬)

 

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