番町喜楽会第141回例会

 

21人で「夏」と「朝顔市」を詠む

 

番町喜楽会の平成29年7月例会(通算第141回)は、3日午後6時半から東京・九段下の千代田区生涯学習館で行った。九州に台風3号が接近していたものの、東京は日中の気温が32.5度に上り、兼題の「夏」そのもの。そのせいか「夏」の句は44句を数えた。もうひとつの兼題は「朝顔市」で、こちらは秋の季語の「朝顔」を詠んだものを含めて31句。当季雑詠が29句だった。

句会は、投句5句、選句6句で行った。最高は徳永正裕さんの「ひげ生えて少年の夏始まりぬ」で6点。次席の5点には田中白山さんの「二人にはほど良き傾斜夏の土手」、廣田可升さんの「さいたまの子から朝顔買ふ入谷」と、堤てる夫さんの「炎帝の畑にひとつ丸き背」の3句が並んだ。4点は中村哲さんの「亡き母と同じ仕草や梅仕事」など6句、3点は池内健治さんの「母の夢夏の租界の人力車」など5句だった。

兼題別の高点句(3点以上)は次の通り。

「夏」

ひげ生えて少年の夏始まりぬ      徳永 正裕

二人にはほど良き傾斜夏の土手     田中 白山

炎帝の畑にひとつ丸き背        堤 てる夫

向こうから同じユニクロ夏真昼     廣田 可升

母の夢夏の租界の人力車        池内 健治

白熊の大飛び込みや夏真昼       星川 佳子

「朝顔市」

さいたまの子から朝顔買ふ入谷     廣田 可升

朝顔の鉢抱いて来る下校の子      池内 健治

浴衣着て朝顔市の客となる       中村  哲

「雑詠」

お囃子の町家に籠る半夏雨       徳永 正裕

亡き母と同じ仕草や梅仕事       中村  哲

今年また青梅火酒に酔わせけり     山口斗詩子

ぬけぬけと李下に冠正したる      今泉 而云

手を合すわらべ地蔵や苔の花      谷川 水馬

さりげなく道ゆづりあひ白日傘     玉田春陽子

《参加者》(出席17人)嵐田双歩、池内健治、井上啓一、今泉而云、大澤水牛、須藤光迷、高井百子、高瀬大虫、田中白山、谷川水馬、谷口命水、玉田春陽子、堤てる夫、徳永正裕、中村哲、廣田可升、山口斗詩子。(投句参加4人)齊山満智、野田冷峰、星川佳子、前島幻水。              (報告・須藤光迷)

 

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双牛舎、「俳句の殿堂」構想を発表

6月21日「俳句の殿堂」旗揚げ式に38人

八十歳以上の長寿会員を祝う

NPO法人・双牛舎の新事業である「俳句の殿堂」の旗揚げ式が、6月21日に千代田区大手町の日経ビル内で開催され、参加者の総意でプロジェクト推進が決まった。来年1月の殿堂発足を目標に運営選考委員会を立ち上げ、実行計画づくりを急ぐことになった。

旗揚げ式には双牛舎に加わっている三つの句会(日経俳句会、番町喜楽会、三四郎句会)の会員38人が雨をついて出席。日経俳句会の中沢義則会長が開会の辞を述べた後、双牛舎の大澤水牛代表が殿堂について「数年前から温めていた構想で、双牛舎のホームページに専用ページを設け、70歳以上の会員の代表作を集めて、誰でもいつでも閲覧できるようにする」と概要を説明した。さらに今泉而雲代表が、放浪俳人・井上井月の弟子の句を引きながら、「名もなき市民、アマチュアの佳句を電脳空間上に永遠に残す」のが構想の核心と語った。

このあと質疑に入り、日経俳句会の高石昌魚氏が「殿堂入りを励みに90歳を超えても句作を続けたい」と積極的な支持を表明。番町喜楽会の前島幻水氏は「本棚の隅で忘れられる俳句集よりもネット上の作品集が時代に合っている」と意義を語った。さらに今年90歳で最長老の井上庄一郎氏が登壇し、「わが意を得た構想だ。実現を切望している」と熱い思いを語り、出席者全員が大きな拍手で殿堂構想を承認した。続いて片野涸魚氏の発声で乾杯、歓談に移った。日ごろ顔を合わせない他の句会の会員との貴重な交流の場となった。

この日は殿堂旗揚げと連動する形で、三句会の長寿会員をお祝いするイベントも開催した。日経俳句会の堤てる夫幹事長が「今年80歳を迎える方が8人おられ、既に80歳を超えた方も8人いらっしゃる。これはお祝いしなければという話になった」と趣旨を説明。出席した長寿会員15人が紹介されて前方に並ぶと、女性会員からお祝いの赤いバラが各人に贈られ、大きな拍手が沸いた。

各句会から武居照芳氏、杉山智宥氏、中島阿猿さんらがお祝いの言葉を述べたのに対し、長寿会員は「バラの花を贈ったことはあったが貰ったのは初めて」(田中白山氏)、「嬉しくて飲めないお酒を飲み足元がふらつく」(宇野木敦子さん)、「若いと見られていたのに歳がばれた」(高瀬大虫氏)と、ユーモアを交え喜びを語った。

締め括りとして番町喜楽会の高井百子会長が「殿堂構想実現を通じて三つの句会の相互交流を深め、さらに殿堂を足場に外に開かれた句会に成長したい」と閉会の辞を述べ、最後に日経俳句会・野田冷峯さんの音頭による関東一本締めが会場に響き渡った。(報告・中村哲)

 

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日経俳句会平成29年度上期合同句会

 

事前選句、司会者が選評代読で、句会進行迅速に

「六月」と「蟇」を兼題に

 

日経俳句会の平成29年度上期合同句会(通算24回)は、6月21日(水)、大手町の日経本社ビルのセミナールーム開かれた。夏至のこの日、梅雨入り後初の強い雨が降りしきる中、合同句会に相応しく30人が出席した。今回は句会後に「俳句の殿堂」旗揚げ式を控え、会場もいつもと異なるため、事前にメールで選句と短評を募り、当日は披講、選評ともに司会者が代読することでスピードアップをはかった。

兼題は「六月」と「蟇」。5句選の結果、最高点は玉田春陽子さんの「便箋の白さ眩しき夏に入る」が断トツの11点を獲得。これに水口弥生さんの「ひきがえる半眼で見る憂き世かな」が9点で続いた。三席は6点句で澤井二堂さんの「六月や休耕田のまた一つ」など5句。以下、5点5句、4点9句、4点6句、2点25句、1点26句と満遍なく投句者全員に点が入った。兼題別の高点句(3点句以上)は以下の通り。

「六月」

六月や休耕田のまた一つ        澤井 二堂

六月や押せば門扉の鈍き音       水口 弥生

何の木の香ぞ六月の闇の道       今泉 而云

六月や万物包む雨やさし        岩田 三代

六月の湖を鏡に山の色         大沢 反平

六月や葉擦れの音も堰音も       廣上 正市

母となり六月の空やはらかく      向井 ゆり

六月の白杖の立つ日陰かな       鈴木 好夫

六月や湯煙淡き独鈷の湯        玉田春陽子

六月の窓に広がる無力感        深田森太郎

「蟇」

ひきがえる半眼で見る憂き世かな    水口 弥生

わが道は闇の先にと蟇歩く       大倉悌志郎

だつて今動いたじゃない蟇       嵐田 双歩

蟇蛙微動だにせず人の恋        今泉 而云

思ふこと腹にいっぱい蟇        大澤 水牛

それぞれに孤独かかへて蟇蛙      片野 涸魚

ひきがえる親の代から顔見知り     大下 綾子

酔客が二度見都会の蟾蜍        中嶋 阿猿

「当季雑詠」

便箋の白さ眩しき夏に入る       玉田春陽子

来し方の紆余曲折や蛞蝓(なめくじり)        嵐田 双歩

人影のまだあり夜の茅の輪かな     星川 佳子

ぼうふらに運動不足なかりけり     橫井 定利

故郷に祖母も梅酒も恙なく       今泉 而云

初生りの胡瓜の棘や柔らかし      大熊 万歩

老若の尻一列に田植ゑかな       谷川 水馬

父と見し群舞遠き日蛍橋        中村  哲

雨上がり四葩の藍の定まりぬ      廣上 正市

 

参加者(出席)=嵐田双歩、池村実千代、和泉田守、井上庄一郎、今泉而云、大倉悌志郎、大澤水牛、大沢反平、岡田臣弘、片野涸魚、澤井二堂、杉山智宥、鈴木好夫、高井百子、高石昌魚、髙瀨大虫、谷川水馬、玉田春陽子、堤てる夫、徳永正裕、直井正、中嶋阿猿、中村哲、野田冷峰、流合研士郎、藤野十三妹、星川佳子、水口弥生、向井ゆり、横井定利。(投句参加)岩田三代、植村博明、大熊万歩、大下綾子、大平睦子、金田青水、久保田操、須藤光迷、高橋ヲブラダ、廣上正市、深田森太郎。

(まとめ・嵐田双歩)

 

 

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番町喜楽会第140回例会

参加20名で「青田」と「短夜」を詠む

番町喜楽会の平成29年6月例会(通算140回)は、6月3日(土)午後6時から、「青田」と「短夜」を兼題として九段下の割烹「味さと」で開いた。投句者は20名、97句で、そのうち15名が会場に集まり句会を始めた。投句5句、選句6句の結果、玉田春陽子さんの「短夜の覚めて余生をもてあます」が8点でトップに輝いた。また、谷川水馬さんの「若竹や十四歳の攻めの棋譜」と徳永正裕さんの「青田風帰農の友は村長に」の5点句が続いた。以下、4点句が2句、3点句が11句、2点句が18句、1点句が25句という結果だった。兼題別の高点句(3点以上)は次の通り。

「青田」

青田風帰農の友は村長に        徳永 正裕

一陣の風や青田に龍描き        谷川 水馬

軽トラのゆるゆる進む青田道      嵐田 双歩

若人の育む青田古代米         谷川 水馬

隠し田のごとくに青田奥会津      玉田春陽子

「短夜」

短夜の覚めて余生をもてあます     玉田春陽子

短夜や肺病む妻の呼吸音        嵐田 双歩

酔ひざめの厠の小窓明け早し      大澤 水牛

明け易や京に一人の片泊        玉田春陽子

「雑詠」

若竹や十四歳の攻めの棋譜       谷川 水馬

無口な子たまに頷きビール干す     嵐田 双歩

梅雨晴れ間施設の母に友の来て     齊山 満智

幾つまで生きればいいの衣更      須藤 光迷

花独活の踊る川辺や風の道       谷川 水馬

忖度といふ奇語ありて五月闇      徳永 正裕

麦秋の平野を分かち大河ゆく      中村 哲

《参加者》【出席15人】嵐田双歩、今泉而云、大澤水牛、須藤光迷、高井百子、高瀬大虫、田中白山、谷川水馬、谷口命水、玉田春陽子、堤てる夫、徳永正裕、野田冷峰、星川佳子、前島幻水。【投句参加5人】齊山満智、澤井二堂、中村哲、廣田可升、山口斗詩子。(選句のみ参加)池内健治。

(報告・谷川水馬)

 

 

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三四郎句会第48回例会

14人参加で「初夏」「柏餅」を詠む

5点が3句、4点8句の賑やかさ

三四郎句会の2017年5月例会(通算48回)は18日、開始時間を通常より1時間繰り下げ、午後2時半から東京・神田錦町の宗保第二ビル内で行われた。出席者は10人と少なめだったが、岡本崇さんら4人が欠席投句・選句を行った。また石丸さんご紹介の和田真理子さん、山田千春さんが見学し、選句にも参加した。兼題は「初夏(夏初め)」と「柏餅」。選句の結果、「ペダルこぐアオザイ透きて初夏の風」(河村有弘)、「舞い踊る洗濯物や初夏の風」(竹居照芳)、「林道の一瞬の香や朴の花」(宇野木敦子)の3句が最高点の5点で並んだ。また「サイダーの泡のはじけて初夏の風」(石黒賢一)、「初夏の孵化が始まる少女かな」(渡邉信)など4点句が8句も続くという賑やかな結果になった。兼題別の3点以上獲得句は以下の通り。

「初夏」

ペダル漕ぐアオザイ透きて初夏の風     河村 有弘

舞い踊る洗濯物や初夏の風         竹居 照芳

初夏の孵化が始まる少女かな        渡邊  信

サイダーの泡のはじけて初夏の風      石黒 賢一

夏初め母亡き庭の草むしり         石丸 雅博

木洩れ日の千鳥ヶ淵の夏初め        今泉 而云

訪れし初夏の気配に旅衣          宇佐美 諭

忖度のなき日差しうけ夏立てり       宇佐美 諭

夏きざす裏山肥り野鳥(とり)燥ぐ     印南  進

蓼科の草原下る初夏の風          後藤 尚弘

闊歩する女まぶしき夏始          竹居 照芳

初夏の海見えつ隠れつ船二つ        石黒 賢一

「柏餅」

柏餅ふたつ残りて老いの卓         河村 有弘

柏餅ほをばるほほに笑みこぼれ       渡邊  信

柏餅包むおふくろ太き指          石黒 賢一

思い出はみな母のこと柏餅         今泉 而云

「雑詠」

林道の一瞬の香や朴の花          宇野木敦子

阿寒湖の底なきブルー薄暑光        宇野木敦子

鎌倉は晴れて葉桜初鰹           今泉 而云

街路樹は都会の化粧緑濃し         竹居 照芳

 

◇出席者 石黒賢一 石丸雅博 今泉而云 宇佐美論  宇野木敦子 河村有弘  竹居照芳  深瀬久敬 吉田正義 渡邉信=10人

◇欠席投句選句者 印南進 岡本崇 田村豊生 後藤尚弘=4人

(報告 今泉而云)

 

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日経俳句会第159回例会

投句を3句に絞り、句会運営がスムーズに

35人が「薄暑」と「牡丹」で競う

日経俳句会の平成29年度5月例会(通算159回)は5月17日(水)に千代田区内神田の日経広告研究所会議室で22人が出席して開かれた。今回から投句数を3句に減らし、35人から絞りぬいた105句が寄せられ、充実した句会となった。

兼題は「薄暑」と「牡丹」。5句選(欠席選句も5句)の結果、大澤水牛さんの「オリーブの銀の葉裏の薄暑かな」と嵐田双歩さんの「大牡丹風に遅れて揺れにけり」がともに最高の7点を得た。二席は星川佳子さんの「灯台の白さましたる夕薄暑」と今泉而云さんの「母の日の残業終へて母走る」、岩田三代さんの「柿若葉まぶしきほどの生命かな」の3句が6点で並んだ。三席は水牛さんの「散りぎはも王者の気品白牡丹」が5点。以下、4点7句、3点15句、2点16句、1点33句となった。

句会では投句・選句数を減らしたことに対し、「ゆとりを持って句作・選句ができた」と好意的な感想が多く、各句への目配りがきき、合評会も盛り上がった。兼題別の高得点句(3点以上)は以下の通り。

「薄暑」

オリーブの銀の葉裏の薄暑かな      大澤 水牛

灯台の白さましたる夕薄暑        星川 佳子

徒歩なれば色や音ある夕薄暑       金田 青水

大太鼓欅振るわす夕薄暑         杉山 智宥

夕薄暑音立ててゆく耕耘機        堤 てる夫

しじら織帽子の軽き薄暑かな       澤井 二堂

最後尾札持つ人の薄暑かな        鈴木 好夫

蝶の影小路に躍る薄暑かな        谷川 水馬

すれ違ふ着物の異人京薄暑        徳永 正裕

御柱訪ねて仰ぐ空薄暑          水口 弥生

「牡丹」

大牡丹風に遅れて揺れにけり       嵐田 双歩

散りぎはも王者の気品白牡丹       大澤 水牛

夕闇を払いのけるや白牡丹        岩田 三代

せせらぎを挟み月夜の白牡丹       金田 青水

大広間がらんとしてて白牡丹       植村 博明

大輪の細き項や白牡丹          大熊 万歩

やはらかく人遠ざくる牡丹かな      大下 綾子

散る牡丹栄華は他人に語らせよ      岡田 臣弘

白牡丹神話の里の薄明り         谷川 水馬

観音に微笑み返す夕牡丹         流合研士郎

ビロードの光たたへし黒牡丹       星川 佳子

「当季雑詠」

母の日の残業終へて母走る        今泉 而云

柿若葉まぶしきほどの生命かな      岩田 三代

母の日や母になる日を母に告げ      嵐田 双歩

ほの暗き森の奥へと水芭蕉        中村  哲

遠浅の首夏の冷たき干潟かな       金田 青水

畦塗りの老夫一日の賃仕事        堤 てる夫

風知るや蜜柑の花の咲き初めし      廣上 正市

《参加者》(出席)池村実千代、井上庄一郎、今泉而雲、岩田三代、大倉悌志郎、大澤水牛、大沢反平、岡田臣弘、澤井二堂、杉山智宥、鈴木好夫、高石昌魚、高瀬大虫、谷川水馬、堤てる夫、徳永正裕、直井正、中村哲、藤野十三妹、星川佳子、水口弥生、横井定利。(投句参加)嵐田双歩、植村博明、大熊万歩、大下綾子、大平睦子、金田清水、久保田操、高橋ヲブラダ、中嶋阿猿、流合研士郎、廣上正一、向井ゆり。

(まとめ・中村哲)

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酔吟会第128回例会

参加16名で「初鰹」「葉桜」を詠む

酔吟会は、5月13日(土)午後1時、東京・千代田区内神田の日経広告研究所会議室で、平成29年度第3回例会(通算128回)を開催した。兼題は「初鰹」「葉桜」で、出席者12名、投句参加は4名、投句総数は80句だった。

投句5句、選句7句で句会を進めた結果、最高点は5点で星川佳子さんの兼題句「葉桜や牛乳受けの残る家」、所用で欠席した谷川水馬さんの雑詠句「日の入りを惜しみて飛ぶや初燕」の2句であった。続く4点句は雑詠句の大澤水牛さんの「窓開けて夕餉支度の五月来ぬ」、高井百子さんの「溜池や水整ひて五月かな」の2句。3点句は玉田春陽子さんの「家出猫探す貼紙花は葉に」と澤井二堂さんの「葉桜に上野は元の上野のかな」の2句。もうひとつの兼題「初鰹」は、この日好調の星川佳子さんの「初鰹海なき県の居酒屋に」と玉田春陽子さんの「初鰹黄綬褒章祝う会」、さらに今泉而云さんの「水撒けば紺冴ゆるなり初鰹」がそれぞれ3点を獲得した。三点句はこれらを含めて計5句。以下、2点句が10句、1点が31句であった。兼題別三点句以上の高点句は次の通り。

「葉桜」

葉桜や牛乳受けの残る家       星川 佳子

家出猫探す貼紙花は葉に       玉田春陽子

「初鰹」

水撒けば紺冴ゆるなり初鰹      今泉 而云

初鰹黄綬褒章祝う会         玉田春陽子

初鰹海なき県の居酒屋に       星川 佳子

「雑詠」

日の入りを惜しみて飛ぶや初燕    谷川 水馬

窓開けて夕餉支度の五月来ぬ     大澤 水牛

溜池の水整ひて五月かな       高井 百子

葉桜に上野は元の上野かな      澤井 二堂

《参加者》(出席)今泉而云,大澤水牛、大沢反平、大平睦子、久保田操、岡田臣弘、片野涸魚、高井百子、玉田春陽子、堤てる夫、徳永正裕、星川佳子。(投句参加)澤井二堂、谷川水馬、野田冷峰、藤野十三妹。 (報告 高井百子)

 

 

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番町喜楽会第139回例会

 

GW明けの真夏日、「五月」と「柏餅」を詠む

 

番町喜楽会の平成29年5月例会(通算第139回)は、ゴールデンウィーク明けの8日午後6時半から東京・九段下の千代田区立生涯学習館で行われた。兼題のひとつは「五月」で、当日は日中の気温が28℃近くになり、汗ばむような感じもあったものの、風は爽やか。もうひとつの兼題は「柏餅」で、新聞紙で作った兜とか缶蹴りとか、昔を懐かしむような句が多く見られた。五月や柏餅からの連想によるものか、雑詠には鯉幟の句が五つ並んだ。

句会は、投句5句、選句6句で行った。最高は5点で、高瀬大虫さんの「新聞の兜の武将柏餅」と、田中白山さんの「足首を洗ふ五月の渚かな」が両雄。4点は嵐田双歩さんの「つい買ひし新刊本と柏餅」、今泉而云さんの「キャディふと呟けりアラほととぎす」、大澤水牛さんの「茄子胡瓜植えて連休過ぎにけり」と谷川水馬さんの「マネキンの臍のぞかせる五月かな」の4句が並び、3点は齊山満智さんの「目が合えば照れる赤ちゃん初節句」など10句にのぼった。兼題別の高点句(3点以上)は次の通り。

「五月」

足首を洗ふ五月の渚かな       田中 白山

マネキンの臍のぞかせる五月かな   谷川 水馬

海水を撒く塩田や能登五月      須藤 光迷

線香の風は五月の雑司ヶ谷      高井 百子

里山を浅黄に染めて五月来ぬ     谷川 水馬

百済野の風さへ青き五月かな     廣田 可升

くつきりと眉引く朝や五月来ぬ    廣田 可升

「柏餅」

新聞の兜の武将柏餅         高瀬 大虫

つい買ひし新刊本と柏餅       嵐田 双歩

いぢめつ子いぢめられつ子柏餅    大澤 水牛

限界の村に初孫柏餅         谷川 水馬

手入れ良き根来の盆や柏餅      玉田春陽子

缶蹴りの缶の行方や柏餅       廣田 可升

「雑詠」

キャディふと呟けりアラほととぎす  今泉 而云

茄子胡瓜植えて連休過ぎにけり    大澤 水牛

目が合えば照れる赤ちゃん初節句   齊山 満智

 

《参加者》(出席十七人)井上啓一、今泉而云、大澤水牛、齊山満智、須藤光迷、高井百子、高瀬大虫、田中白山、谷川水馬、玉田春陽子、堤てる夫、徳永正裕、野田冷峰、廣田可升、星川佳子、前島幻水、山口斗詩子。(投句参加三人)嵐田双歩、池内健治、澤井二堂。  (報告・須藤光迷)

 

 

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日経俳句会第158回例会

参加34名で「春深し」「山吹」を詠む

 

日経俳句会の平成29年度4月例会(通算158回)は、4月19日(水)、千代田区内神田の日経広告研究所会議室で19人が出席して開かれた。春先は何かと気ぜわしいのか欠席者が15人とやや多かったものの、投句数は34人から167句が揃い、賑やかな句会となった。また、中村哲さんの紹介で向井ゆりさんが初参加。この日は見学だけだったが、次回から例会に加わる。

兼題は「春深し」と「山吹」。7句選(欠席選句5句)の結果、星川佳子さんの「オルガンのはじめは空気春の昼」が最高の8点を獲得。二席は今泉而云さんの「頬に指当てて菩薩の春深し」と大熊万歩さんの「遅れたる時計そのまま春深し」が7点で並んだ。三席は、岩田三代さんの「春更けて庭打つ雨のやはらかき」と大沢反平さんの「山吹や昔富農の門朽ちて」が5点。以下、4点7句、3点12句、2点22句、1点39句だった。

次回からの投句数について会員の意向を確認したところ、満場一致で3句投句が決まった。5月例会からは、投句数を兼題句各1句と雑詠1句の計3句とする。

兼題別の高点句(3点句以上)は以下の通り。

「春深し」

頬に指当てて菩薩の春深し     今泉 而云

遅れたる時計そのまま春深し    大熊 万歩

春更けて庭打つ雨のやはらかき   岩田 三代

首タオル外す掃除夫春深し     植村 博明

花々のむくろ掃き寄せ春更ける   德永 正裕

春深し役者めざしし友いずこ    藤野十三妹

春深し蘇州河畔にニ胡わたる    岡田 臣弘

春深し退職の身の居場所なく    中村  哲

夕されば門灯とろり春深し     水口 弥生

春深し西郷どんの疲れ顔      橫井 定利

春深しゴールデン街夫婦猫     橫井 定利

「山吹」

山吹や昔富農の門朽ちて      大沢 反平

山峡に十軒の屋根濃山吹      廣上 正市

すり抜ける犬の背をうつ濃山吹   星川 佳子

山吹の一枝部屋を照らしをり    岩田 三代

山吹をかざしに雨の野の仏     大倉悌志郎

濃山吹谷戸に小判を撒きにけり   高瀬 大虫

江ノ電の山吹揺らし過ぎにけり   高瀬 大虫

「当季雑詠」

オルガンのはじめは空気春の昼   星川 佳子

春の川アルプス溶かし白濁す    岩田 三代

菜を洗ふ水の軽さよ風光る     岡田 臣弘

野や山の春の苦味をピザにのせ   德永 正裕

花吹雪乗客となる無人駅      中村  哲

花冷や四谷の濠の水明り      水口 弥生

参加者(出席)=嵐田双歩、井上庄一郎、今泉而云、岩田三代、大倉悌志郎、大澤水牛、大沢反平、岡田臣弘、澤井二堂、杉山智宥、鈴木好夫、高石昌魚、髙瀨大虫、谷川水馬、堤てる夫、徳永正裕、中嶋阿猿、中村哲、星川佳子、向井ゆり(見学)

(投句参加)池村実千代、植村博明、大熊万歩、大平睦子、加藤明男、金田青水、久保田操、高橋ヲブラダ、直井正、野田冷峰、藤野十三妹、廣上正市、水口弥生、村田佳代、横井定利

(まとめ・嵐田双歩)

 

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NPO双牛舎第10回総会を開催

双牛舎俳句大会に38名から76句

俳句の普及振興を事業目的とするNPO法人双牛舎は4月15日、東京・二番町の東京グリーンパンレスのレストラン「ジャルダン」で第10回年次総会を開催し、メンバーである日経俳句会、番町喜楽会、三四郎句会の会員27名が出席した。一年を総括する今泉而雲云代表幹事の挨拶などに続いて、恒例の「俳句大会」が開催され総会は大いに盛り上がった。まずは昨年度俳句大会の上位入賞者に赤池渓舟先生揮毫の短冊が贈呈された後、今年度の上位入賞句決定、選句者による句評などが行われた。

俳句大会は第2回総会から実施され、9回目の今回は、「春眠」の兼題句と雑詠句の計2句を事前に投句、会場に掲示された大型選句一覧表に「選句シール」を貼付する方式で各人5句ずつ選句した。投句総数は38人76句。

最高の「天」賞に輝いたのは、徳永正裕さんの「春耕の一鍬ごとに土生まる」で12点。「地」賞は11点で嵐田双歩さんの「散り散りにやがて一つに花筏」。「人」賞は玉田春陽子さんの「そつと息確かめらるる朝寝かな」が9点で続いた。「入選」は7点句が2句、6点句が3句だった。

陶芸にいそしんでいる大澤代表理事と須藤理事からの陶芸作品や大澤代表の手造り梅酒、梅干が賞品として提供され、「天」「地」「人」「入選」の作者のみならず、出席者全員に贈られた。

また今回の入賞作は書家の赤池溪舟さん揮毫の短冊に作られ、来年の俳句大会の席でそれぞれの作者に贈られる予定。

第9回俳句大会入賞作品は次の通り。

「天」春耕の一鍬ごとに土生まる       徳永 正裕

「地」散り散りにやがて一つに花筏      嵐田 双歩

「人」そつと息確かめらるる朝寝かな     玉田春陽子

「入選」

春眠の目覚めやいのち恙なし        河村 有弘

花冷えや云はざる事の二つ三つ       廣田 可升

かいな寄せぬくもり抱き春眠す       久保田 操

春眠の妻起きたるを遠く聞き        深瀬 久敬

春眠や猫来て確かむ吾が寝息        前島 幻水

春眠の読経の中に忍び入る         宇佐美 諭

相席の人妻会釈桜もち           田中 白山

どの空も花花花の上野かな        澤井 二堂

(まとめ・谷川 水馬)

 

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