番町喜楽会第157回例会

 

「冬の月」と「焼芋」を詠む

木葉さん六点句で今年を締めくくる

 

番町喜楽会は平成30年掉尾を飾る12月例会(通算157回)が12月1日(土)午後6時から、九段下の九段生涯学習館で開かれた。今回の兼題は「冬の月」と「焼芋」で、投句者20名、投句数は合計99句。そのうち15名が会場に集まった。投句5句、選句6句で句会を行った結果、徳永木葉さんの「来し方の悔いは山ほど落葉掃く」が6点でトップに輝いた。次席は今泉而云さんの「老人の顔とはこれか冬帽子」と玉田春陽子さんの「寒月や海風上る信濃川」の5点句、さらに而云さんの「焼芋や女性四代団結す」の4点句が続いた。以下、3点7句、2点22句、1点24句という分散した結果になった。兼題別の高点句(3点以上)は次の通り。

「冬の月」

寒月や海風上る信濃川          玉田春陽子

塾の子の背中の丸し冬の月        嵐田 双歩

「焼芋」

焼芋や女性四代団結す                     今泉 而云

英字紙にくるむ焼芋基地の街               徳永 木葉

「当季雑詠」

来し方の悔いは山ほど落葉掃く             徳永 木葉

老人の顔とはこれか冬帽子                 今泉 而云

街中に電飾あふれ十二月                   嵐田 双歩

気短は短日のせい年のせい                 大澤 水牛

靴紐の結び目堅し今朝の冬                 塩田 命水

鰤薄く葱は乱切り一人鍋                   須藤 光迷

小春日の一塁守るポニーテール             廣田 可升

《参加者》【出席15人】今泉而云、大澤水牛、斉山満智、塩田命水、須藤光迷、高井百子、田中白山、谷川水馬、玉田春陽子、堤てる夫、徳永木葉、中村哲、

野田冷峰、廣田可升、前島幻水、【投句参加5人】嵐田双歩、池内的中、澤井二堂、星川水兎、山口斗詩子。     (報告・谷川水馬)

 

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三四郎句会第57回例会

岡本さん、深瀬さんの句、6点で並ぶ

三四郎句会の2018年11月例会(第57回)は11月22日午後1時半から東京・神田錦町の宗保第2ビル内で行われた。出席者は14人。介護のため欠席の岡本さんを除いて全員が出席した。兼題は「冬夕焼(冬茜)」と「切干(切干大根)」。選句の結果、岡本崇さんの「菊なます酒田に残る京ことば」、深瀬久敬さんの「帰らざるおもひかさねし冬茜」が6点を獲得した。宇佐美諭さんの「故郷に夢置き忘れ冬夕焼」、河村有弘さんの「切干しのくらし匂ひし過疎の村」の2句が5点、岡本崇さんの「字小字干菜吊して留守ばかり」、後藤尚宏さんの「冬夕焼林も燃える散歩道」の2句が4点で続いた。兼題別高点句(3点以上)は以下の通り。

「冬夕焼」

帰らざるおもひかさねし冬茜      深瀬 久敬

故郷に夢置き忘れ冬夕焼        宇佐美 諭

冬夕焼林も燃える散歩道        後藤 尚弘

雲雲の神々しさや冬夕焼        印南  進

山並へ向かうカラスに冬夕焼      小泉 基晴

なにげなく冬の夕日に掌を合せ     吉田 正義

「切干」

切干しのくらし匂ひし過疎の村     河村 有弘

切干や那須三山に日が沈む       印南  進

「当季雑詠」

菊なます酒田に残る京ことば      岡本  崇

字小字干菜吊して留守ばかり      岡本  崇

声明の重き読経や蔦紅葉         宇野木敦子

べったら市江戸もかくやと賑わいし   竹居 照芳

◇出席 石黒賢一 石丸雅博 今泉而云 印南進 宇佐美諭 宇野木敦子 河村有弘 小泉基靖 後藤尚弘 竹居照芳 田村豊生 深瀬久敬 吉田正義 渡邉信=14人。◇欠席投句選句 岡本崇=1人。   (報告 今泉而云)

 

 

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日経俳句会第174回例会

 

35人で「木枯」「鴨」詠む

綾子さん「イヤリング」最高9点、鷹洋・水牛・反平氏、高点句続く

 

日経俳句会は平成30年度11月例会(通算174回)を11月21日(水)に千代田区内神田の日経広告研究所会議室で開いた。兼題に合わせるように木枯が到来。風邪を引いた方もいて参加者は18人とやや少なかったが、高点の佳句が多く、合評会も多彩なやりとりが交わされた。兼題は「木枯」と「鴨」。35人から105句の投句があり、5句選の結果、大下綾子さんの「木枯やイヤリングより冷え初むる」が最高9点を獲得。8点に「木枯らしや日めくり痩せて八十路越え」(鷹洋)、7点に「何千里飛び来て鴨の吊るさるる」(水牛)、6点に「木枯らしや猫背叱られまた猫背」(反平)と高点句が続いた。5点句には「一湾の暮れてかすかに鴨の声」(昌魚)はじめ5句が入ったほか、4点7句、3点7句、2点17句、1点27句だった。兼題別の高得点句(3点以上)は以下の通り。

「木枯」

木枯やイヤリングより冷え初むる    大下 綾子

木枯らしや日めくり痩せて八十路越え  岡田 鷹洋

木枯らしや猫背叱られまた猫背     大沢 反平

木枯や路地に描かれたけんけんぱ    嵐田 双歩

木枯や部室のガラス割れたまま     今泉 而云

「鴨」

何千里飛び来て鴨の吊さるる      大澤 水牛

一湾の暮れてかすかに鴨の声      髙石 昌魚

口衝くはふるさとの歌詞鴨来る     和泉田 守

宗達の鴨飛び立つや江戸の空      岩田 三代

吊るされし鴨の細頚深き青       大熊 万歩

鴨の波磐梯山を揺らしけり       谷川 水馬

番い鴨拳ひとつの距離で浮き      中嶋 阿猿

鴨の池めぐりて言葉なき二人      大倉悌志郎

鴨の陣しづしづ過ぐる鯉の上      大下 綾子

「当季雑詠」

踏切の点滅長し冬の月         植村 博明

カーテンの襞の谷間の冬日かな     大熊 万歩

足指を手指でまわす冬の風呂      金田 青水

トンネルに葡萄酒眠る小春かな     水口 弥生

ひそやかな介護ホームに帰り花     中村  哲

木の葉髪本に落ちれば銀の色      井上庄一郎

寄鍋や卓袱台しきる父の声       髙石 昌魚

落葉かき気まぐれ風にからかはれ    堤 てる夫

咲き残り実らず散るか野のなすび    藤野十三妹

《参加者》(出席)池村実千代、今泉而云、大澤水牛、大沢反平、岡田鷹洋、澤井二堂、杉山三薬、鈴木好夫、高石昌魚、谷川水馬、堤てる夫、徳永木葉、中嶋阿猿、中村哲、野田冷峰、星川水兎、水口弥生、向井ゆり。(投句参加)嵐田双歩、井上庄一郎、和泉田守、岩田三代、植村博明、大熊万歩、大倉悌志郎、大下綾子、大平睦子、加藤明男、金田青水、久保田操、高橋ヲブラダ、流合研士郎、廣上正市、藤野十三妹、横井定利。

(報告・中村哲)

 

 

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酔吟会第137回例会報告

 

「枯野」「冬の日」で今年の酔吟会締めくくり

 

酔吟会は11月10日(土)午後1時から東京・内神田の日経広告研究所会議室(MIFビル)で、平成30年第6回例会(通算137回)を開催した。寒暖の変化著しい日和だったが、出席14人に投句参加6人が加わって一年の最終例会に相応しい賑わい。清記作業も大忙しだった。兼題は「枯野」「冬の日」で、投句総数は100句ちょうど、選句を8句にして句会を進めた。

その結果、最高は5点、玉田春陽子さんの「枯野行く風のうしろに風の音」の1句だった。次席は4点句で、大澤水牛さんの「冬の日や客一組の観覧車」「爪割るる十一月となりにけり」の2句と、工藤静舟さんの「うとうとと揺れる妻みて冬日向」「七五三頭押されて畏まる」の2句の計4句。

続く3点句は、須藤光迷さんの「恋ひとつ失くして桜落葉蹴る」「冬の日や小走りでゆくランドセル」の2句と、廣田可升さんの「ひれ酒にマッチ擦る手の容よき」「円空仏だれかに似たり暮の秋」2句に、「廃田の果てて枯野や主逝く 大沢反平」、「堅焼きの煎餅かりっと冬日和 久保田操」、「冬の日の婦警は帽を目深にし 徳永木葉」、「燃え尽きて散りし枯葉のなほ朱し 藤野十三妹」の合計8句。

3点以上の高点句に、4人が2句づつ送りこんだ。兼題別の高点句は次の通り。

「枯野」

枯野行く風のうしろに風の音     玉田春陽子

廃田の果てて枯野や主逝く      大沢 反平

「冬の日」

冬の日や客一組の観覧車       大澤 水牛

うとうとと揺れる妻見て冬日向    工藤 静舟

堅焼きの煎餅かりっと冬日和     久保田 操

冬の日や小走りでゆくランドセル   須藤 光迷

冬の日の婦警は帽を目深にし     徳永 木葉

「雑詠」

爪割るる十一月となりにけり     大澤 水牛

七五三頭押されて畏まる       工藤 静舟

恋ひとつ失くして桜落葉蹴る     須藤 光迷

ひれ酒にマッチする手の容よき    廣田 可升

円空仏だれかに似たり暮の秋     廣田 可升

燃え尽きて散りし枯葉のなほ朱し   藤野十三妹

参加者(出席)今泉而云、大澤水牛、大沢反平、大平睦子、岡田鷹洋、片野涸魚、工藤静舟、高井百子、谷川水馬、玉田春陽子、堤てる夫、野田冷峰、廣田可升(投句参加)嵐田双歩、須藤光迷、澤井二堂、徳永木葉、藤野十三妹、星川佳子

(報告 堤てる夫)

 

 

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番町喜楽会第156回例会

 

「セーター」と「枯蓮」を詠む

双歩さん「老の矜持」7点でトップ

 

番町喜楽会の平成30年11月例会(通算156回)は、5日午後6時半から「セーター」と「枯蓮」を兼題として東京・九段下の千代田区立生涯学習館で行われた。投句5句、選句6句の結果、首位は嵐田双歩さんの「枯蓮や老には老の矜持あり」で7点。次席は5点で、高井百子さんの「霧の降る里から届く走り蕎麦」、玉田春陽子さんの「婦長にも私服の日あり黒セータ」、中村哲さんの「仕事着の厚きセーター漁師町」の3句が並んだ。4点、3点が各5句で、かなり点数がばらけた。兼題別の高点句(3点以上)は次の通り。

「セーター」

婦長にも私服の日あり黒セータ     玉田春陽子

仕事着の厚きセーター漁師町      中村  哲

女子校の坂賑やかに紺セーター     廣田 可升

セーターの胸ふくらんで十三歳     徳永 木葉

「枯蓮」

枯蓮や老には老の矜持あり       嵐田 双歩

枯蓮のオブジェとなりて池暮れる    斉山 満智

老が老いたはるベンチ枯はちす     廣田 可升

弁天堂かこむ枯蓮茜雲         須藤 光迷

行く雲も風も過客よ枯蓮        玉田春陽子

枯蓮のくの字への字に乱れけり     徳永 木葉

「雑詠」

霧の降る里から届く走り蕎麦      高井 百子

足して貼る二円切手や冬隣       嵐田 双歩

陽に染まる桜紅葉や都電待つ      廣田 可升

初冬やめくる暦の頼りなき       塩田 命水

【参加者】(出席十四人)嵐田双歩、池内的中、大澤水牛、塩田命水、須藤光迷、高井百子、田中白山、谷川水馬、玉田春陽子、堤てる夫、徳永木葉、中村哲、星川水兎、前島幻水。(投句参加七人)今泉而云、大下綾子、斉山満智、澤井二堂、野田冷峰、廣田可升、山口斗詩子。     (報告・須藤光迷)

 

 

 

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日経俳句会第173回例会

 

「夜寒着て」十三妹、「妻の顔」博明両氏が6点句でトップ

ゆり氏、5点句連発で気を吐く

 

日経俳句会の平成30年度10月例会(通算173回)は10月17日(水)、千代田区内神田の日経広告研究所会議室で開かれた。投句参加者は34人、「夜寒」と「山粧ふ」の兼題に102句が集まった。列島に災害をもたらした地震や台風も小休止、心地良い秋風に誘われて20人が出席し賑やかな句会となった。

5句選の結果、最高点は藤野十三妹さんの「夜寒着て飛び込む客や縄のれん」と植村博明さんの「秋冷や斜め後ろの妻の顔」が6点を獲得、一席を分け合った。次点は向井ゆりさんの2句、「保母の膝ひとり占めして待つ夜寒」と「秋高し進路定めり十八歳」、および流合研士郎さんの「出口なき議論の果ての夜寒かな」、星川水兎さんの「山粧ふおもちゃの色の遊覧船」の4句が5点で並んだ。以下、4点6句、3点15句、2点23句、1点20句だった。兼題別の高点句(3点句以上)は以下の通り。

「夜寒」

夜寒着て飛び込む客や縄のれん     藤野十三妹

出口なき議論の果ての夜寒かな     流合研士郎

保母の膝ひとり占めして待つ夜寒    向井 ゆり

徘徊の夢に目覚めて夜寒かな      大沢 反平

爪切れば指に夜寒の忍び寄り      徳永 木葉

生てゐる夜寒の尿意たのしまむ     金田 青水

諍へば夜寒の犬のそつと寄り      谷川 水馬

病院の床てらてらと夜寒かな      中嶋 阿猿

床ひとつ夜寒の宿の長湯かな      中村  哲

極道のとなりを生きて夜寒かな     野田 冷峰

「山粧ふ」

山粧うおもちゃの色の遊覧船      星川 水兎

剥き出しの地肌そのまま山粧ふ     植村 博明

山粧ふ横一列の膝小僧         加藤 明男

塩害や山の粧ひとげとげし       大熊 万歩

山粧ふ薪たかだかと軒に積み      大倉悌志郎

塩害の山のまだらに粧へり       大澤 水牛
信州青木村・大法寺の十一面観音菩薩を初拝顔

千年の観音像や山粧ふ         堤 てる夫

山粧ふ五山流るる読経かな       野田 冷峰

「当季雑詠」

秋冷や斜め後ろの妻の顔        植村 博明

秋高し進路定めり十八歳        向井 ゆり

秋天に鴟尾耀ける興福寺        久保田 操

豊洲へとターレの車列秋深む      杉山 三薬

測量士座標定める秋野かな       大熊 万歩

鴨一陣池の広さを独り占め       澤井 二堂

末の娘の嫁ぎて二人菊の庭       中村  哲

食べ終へし姿正しき秋刀魚かな     廣上 正市

何一つ楽器が駄目でとろろ汁      横井 定利

参加者(出席)=嵐田双歩、池村実千代、井上庄一郎、今泉而云、岩田三代、大澤水牛、大沢反平、大下綾子、岡田鷹洋、澤井二堂、高石昌魚、堤てる夫、徳永木葉、中村哲、野田冷峰、流合研士郎、藤野十三妹、星川水兎、水口弥生、向井ゆり、(投句参加)植村博明、大熊万歩、大倉悌志郎、大平睦子、加藤明男、金田青水、久保田操、杉山三薬、鈴木好夫、谷川水馬、中嶋阿猿、廣上正市、深田森太郎、横井定利。  (報告 嵐田双歩)

 

 

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番町喜楽会第155回例会

参加19人で「夜長」「小鳥来る」を詠む

番町喜楽会の平成30年10月例会(通算第155回)は、6日(土)午後6時から「夜長」と「小鳥来る」を兼題として東京・九段下の千代田区立生涯学習館で行われた。投句5句、選句6句の結果、首位には玉田春陽子さんの「窓々に人それぞれの夜長かな」と中村哲さんの「過疎の村若き家族と小鳥来る」が6点で並んだ。続く5点は高井百子さんの「運のいい人生だなぁ秋の空」と哲さんの「奥社へと霧の導く杉並木」の2句。次いで4点には6句がひしめき合った反面、3点が僅か1句という珍しい結果になった。2点は18句、1点は24句だった。兼題別の高点句(3点以上)は次の通り。

「夜長」

窓々に人それぞれの夜長かな    玉田春陽子

二人ゐて一人ぼっちの夜長かな   田中 白山

一灯を夫と分け合う夜長かな    玉田春陽子

遺言書直し直して夜の長き     野田 冷峰

「小鳥来る」

過疎の村若き家族と小鳥来る    中村 哲

お土産は何の種かな小鳥来る    須藤 光迷

溜池に干潟あらわれ小鳥来る    高井 百子

植木屋はシルバー派遣小鳥来る   徳永 木葉

「雑詠」

運のいい人生だなぁ秋の空     高井 百子

奥社へと霧の導く杉並木      中村 哲

栗飯を持ち帰る娘もはや四十路   須藤 光迷

《参加者》(出席十三人)嵐田双歩、今泉而云、大澤水牛、塩田命水、須藤光迷、田中白山、玉田春陽子、堤てる夫、徳永木葉、中村哲、野田冷峰、廣田可升、前島幻水。(投句参加六人)池内的中、斉山満智、澤井二堂、高井百子、谷川水馬、星川水兎。(選句参加一人)山口斗詩子      (報告・須藤光迷)

 

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上田松茸吟行を挙行

 

13人で“信州の鎌倉”塩田平を散策、松茸と地酒を堪能

別所温泉に寿命を延ばす

日経俳句会、番町喜楽会の有志13人が、9月26,27の両日、上田市の別所温泉に一泊、“信州の鎌倉”と呼ばれる塩田平の北条氏ゆかりの古寺を経巡り、第二次大戦戦没画学生の遺作を集めた「無言館」と、その傍に出来た「檻の俳句館」と「俳句弾圧不忘の碑」を訪ねた。圧巻は地元住人の堤てる夫・百子夫妻がセットしてくれた別所温泉の料理屋「松籟亭」での松茸づくしの宴会。この料亭の持山で採れた松茸をふんだんに使ったフルコースと地酒に一同感激した。

翌27日は別所線電車に揺られ、上田市内遊覧をする人たちや、北国街道海野宿散策、さらに足を伸ばして伝説の名力士雷電の生まれ故郷を訪ねるグループ、小諸まで足を伸ばした人と三々五々、それぞれ実り豊かな秋の吟行を満喫した。後日、堤幹事が取りまとめてくれた参加者一同の作品から代表句を掲げる。

 

稲の香も乗せて発進別所線         嵐田 双歩

松茸膳据えて一夜の長者かな        大澤 水牛

茅葺の御堂の薬師秋気満つ         大下 綾子

葵の湯下駄の音聞く女郎花         岡田 鷹洋

雷電の土俵に学べ大相撲          澤井 二堂

茹で栗の振る舞いうれし独鈷山       須藤 光迷

毬栗や出口の見えぬ無言館         高井 百子

身に入むや時の止まりし無言館       玉田春陽子

海野宿信濃くるみを捥ぐ媼         堤 てる夫

宿場町むかし鍛冶屋のとろろ蕎麦      徳永 木葉

秋蝶のふわりひらりと寺めぐり       中村  哲

無言館兜太碑上る蟷螂一匹         野田 冷峰

カランより硫黄香りし秋の夜        星川 水兎

(まとめ 大澤水牛)

 

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日経俳句会第172回例会を開催

 

33人が「霧」と「赤蜻蛉」を詠む

「川蟹」水馬句が最高の9点

 

日経俳句会は平成30年度9月例会(通算172回)を9月19日(水)に千代田区内神田の日経広告研究所会議室で開いた。涼しい秋風に誘われるように18人が出席、鋭い句評や笑いに満ちた解釈があふれ、充実した句会となった。この夜の兼題は「霧」と「赤蜻蛉」。投句参加者を含め33人から99句の投句があり、5句選の結果、谷川水馬さんの「竹籠に騒ぐ川蟹霧の朝」が最高9点を獲得。次点の8点句には「おちこちに杉の尖りや霧の海」(而云)、「赤とんぼいろいろあつて独りつ子」(定利)、「頬杖の二つならびて星月夜」(水馬)の3句が並んだ。続く6点句は「秋寒し石鹸痩せて夜半の風呂」(阿猿)。さらに5点が5句あり、上位句に点が集中した印象を受けた。以下4点3句、2点13句、1点34句だった。兼題別の高得点句(3点以上)は以下の通り。

「霧」

竹籠に騒ぐ川蟹霧の朝         谷川 水馬

おちこちに杉の尖りや霧の海      今泉 而云

朝霧の盆地をうづめ湖と化す      井上庄一郎

奥日光霧の中より始発バス       中村  哲

この霧が味の秘密よ信濃蕎麦      大澤 水牛

川霧のゆるり流るる大地かな      堤 てる夫

箱根山霧の中から電車来る       澤井 二堂

五重の塔羽黒杉を霧奔る        水口 弥生

朝霧に九十九の谷均されし       向井 ゆり

「赤蜻蛉」

赤とんぼいろいろあつて独りつ子    横井 定利

原宿へ御苑生まれの赤とんぼ      大倉悌志郎

使徒の墓錆び付く格子赤蜻蛉      野田 冷峰

追いかけて追われて子らの赤とんぼ   水口 弥生

「当季雑詠」

頬杖の二つならびて星月夜       谷川 水馬

秋寒し石鹸痩せて夜半の風呂      中嶋 阿猿

人生は一世紀とか秋の蝉        徳永 木葉

洟かんで中を抜けたり秋の風      植村 博明

まだ来ない返信メール秋の風      嵐田 双歩

カザフスタン・スキタイ時代の古墳にて

秋風や黄金纏ひし男眠る        岩田 三代

雷去りて千年の杉匂ひ立つ       大倉悌志郎

泥まみれ子ら稲刈りの学習日      岡田 鷹洋

《参加者》(出席)嵐田双歩、池村実千代、今泉而云、岩田三代、大倉悌志郎、大澤水牛、岡田鷹洋、澤井二堂、杉山三薬、鈴木好夫、高石昌魚、堤てる夫、徳永木葉、中嶋阿猿、中村哲、野田冷峰、星川水兎、水口弥生。(投句参加)井上庄一郎、植村博明、大熊万歩、大沢反平、大平睦子、加藤明男、金田青水、久保田操、高橋ヲブラダ、谷川水馬、流合研士郎、廣上正市、藤野十三妹、向井ゆり、横井定利。   (報告・中村哲)

 

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酔吟会第136回例会

 

「糸瓜コロン」は季語か否か

鷹洋さん、最高6点句と4点2句

 

酔吟会は9月8日(土)午後1時、東京・内神田の日経広告研究所会議室で、今年5回目の例会(通算136回)を開いた。兼題は「糸瓜」と「秋の暮」で、投句参加の5人を含めて計19人が参加した。7句選句のこの日の句会で脚光を浴びたのは、最高点の6点句に加えて三席4点句を2句と、出句5句の6割が高点という記録を作った岡田鷹洋さん。その最高点句は「糸瓜コロン母の香りの三畳間」だった。「糸瓜コロン」は商品名で、「季語たりえない」という指摘に、「糸瓜コロン」が大流行した時代に照らし、季語の機能はあるのではとの解釈も出て、中身の濃い合評会となった。

次席は玉田春陽子さんの「闇という舞台のありて風の盆」の5点句。三席4点句は、鷹洋さんの「いたわり合い手話の夫婦や遠花火」「秋うらら縄文女子は土偶の目」の2句と、星川水兎さんの「ぼやぼやと生きて糸瓜を見上げたり」の計3句、続く3点句は8句あった。高得点13句のうち、兼題の「秋の暮」の句は、廣田可升さんの「立て看板消えてキャンパス秋の暮」の1句のみに終わった。闘病中の谷川水馬さんは「調弦の音叉に応えきりぎりす」の3点句を飛ばした。次いで2点は15句、1点句は22句だった。兼題別、3点以上(「秋の暮」は2点以上)の高点句は次の通り。

「糸瓜」

糸瓜コロン母の香りの三畳間        岡田 鷹洋

ぼやぼやと生きて糸瓜を見上げたり     星川 水兎

母の居て妹の居て糸瓜棚          嵐田 双歩

へちまへちままたびりになる徒競走     大澤 水牛

「秋の暮」

立て看板消えてキャンパス秋の暮      廣田 可升

秋の暮れけふも一日家の中         大沢 反平

昨日今日鍵穴探る秋の暮          大平 睦子

灯のともる学童保育秋の暮れ        高井 百子

空気窓錆びた七輪秋の暮          谷川 水馬

「雑詠」

闇といふ舞台のありて風の盆        玉田春陽子

いたわり合い手話の夫婦や遠花火      岡田 鷹洋

秋うらら縄文女子は土偶の目        岡田 鷹洋

凄まじき全道停電秋の夜          嵐田 双歩

雉鳩の間のびして鳴く野分けあと      高井 百子

調弦の音叉に応えきりぎりす        谷川 水馬

芋の露風に仲間を集めけり         玉田春陽子

ままごとのように暮らして萩の花      星川 水兎

参加者(出席)嵐田双歩、今泉而云、大澤水牛、大沢反平、大平睦子、岡田鷹洋、片野涸魚、高井百子、玉田春陽子、堤てる夫、徳永木葉、廣田可升、野田冷峰、星川水兎、(投句参加)工藤静舟、久保田操、澤井二堂、谷川水馬、藤野十三妹(まとめ・堤てる夫)

 

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