番町喜楽会「年間優秀作品賞」表彰制度創設

“令和元年記念”受賞者は6人 2月例会で表彰式を開催

番町喜楽会は、初めての試みである「令和元年記念年間優秀作品賞」の受賞句を、令和2年初の例会(第169回例会)で発表・表彰式を行った。この賞は、番町喜楽会会員の年間作品の中から、特に優秀と思われる作品を顕彰しようと創設したものである。昨年は「令和元年」の記念の年でもあったことから名称を「令和元年記念」として、選者を今泉而云氏と大澤水牛氏に委嘱し、会員の2019年の全作品千数百点の中から下記の6句が選ばれた。表彰式では、受賞作の発表、賞品(図書券)が高井百子会長より手渡され、今泉、大澤両氏が作品の講評を述べた。句会後の九段下「味さと」での恒例の反省会では、受賞者が喜びの弁を語った。受賞作品は以下の通り。

令和元年記念「番町喜楽会年間優秀賞作品賞」

つないだ手誰が離した夏の果て   斉山 満智(11月4日第167回)

旅芸人しゃぼんの玉に入りけり   塩田 命水(7月1日第163回)

毬栗の青きを拾ふ無言館      高井 百子(9月2日第165回)

地の起伏あらはにみせて野火走る  玉田春陽子(2月2日第158回)

かなかなの声戻りくる雨後の宿   中村 迷哲(9月2日第165回)

AIとゲノムの未来原爆忌       前島 幻水(9月2日第165回)

(まとめ 高井百子)

 

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番町喜楽会第169回例会を開催

 

23名が参加、「風光る」と「菫」を詠む

而云さん「凧揚げ」で7点のトップ

番町喜楽会は、令和2年2月例会(通算169回)を2月1日(土)午後6時から、「風光る」と「菫」を兼題に九段下の千代田区立九段生涯学習館で開いた。投句者は23名で、投句数113句。投句5句・選句6句で句会を進めた結果、今泉而云さんの雑詠「凧揚げて少年の夢老いの夢」が7点でトップに輝いた。二席は玉田春陽子さんの「立ち飲みの肘ぶつかって二月かな」の6点句。次いで嵐田双歩さんの「風光るカヌーのくぐる聖橋」、金田青水さんの「風光る前垂替へし笠地蔵」、斉山満智さんの「風光る産着の中の小さき手」、谷川水馬さんの「風光る梨の新芽の力瘤」の5点句4句が続いた。以下、4点3句、3点6句、2点13句、1点37句となった。また、中沢豆乳さん(日経俳句会会長)が入会し今回から出席、歓迎の拍手を受けた。兼題別の高点句(3点以上)は次の通り。

「風光る」

風光るカヌーのくぐる聖橋             嵐田 双歩

風光る前垂替へし笠地蔵              金田 青水

風光る産着の中の小さき手             斉山 満智

風光る梨の新芽の力瘤               谷川 水馬

タラップを降りて離島の風光る           廣田 可升

「菫」

いにしへのいくさのにはのしろすみれ        大澤 水牛

菫咲き歩き始めた一歳児              嵐田 双歩

念願の墓仕舞終え花菫               田中 白山

かたまつてゐねばさみしき菫花              玉田春陽子

「雑詠」

凧揚げて少年の夢老いの夢             今泉 而云

立ち飲みの肘ぶつかって二月かな          玉田春陽子

鉄屑の匂ひ春めく町工場              廣田 可升

ギャー泣きの妹を背に鬼に豆            須藤 光迷

鳥雲にサーカスの子ら転校す            谷川 水馬

土手道に瀬音聞こゆる春隣             中村 迷哲

《参加者》【出席16人】嵐田双歩、池内的中、今泉而云、大澤水牛、金田青水、斉山満智、須藤光迷、高井百子、田中白山、谷川水馬、玉田春陽子、堤てる夫、徳永木葉、中沢豆乳、中村迷哲、前島幻水。【投句参加7人】大下綾子、澤井二堂、塩田命水、野田冷峰、廣田可升、星川水兎、山口斗詩子。(報告・谷川水馬)

 

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新年七福神巡り・メール句会報告

19人が旧東海道品川宿を歩く

恒例のメール句会を開催

令和二年の新春四日、初詣を兼ねる恒例の七福神吟行を催した。品川近辺の旧東海道に沿って七社寺を訪ねる「東海七福神めぐり」。日経俳句会、番町喜楽会から平均年齢七十五歳を超える十九人が参加、旧街道の歴史をたどりつつ、四・五キロを三時間かけ全員が巡り終えた。集合は京浜急行の大森海岸駅。小春日和に恵まれ、午後一時の集合時間前には十九人が勢揃いして、気合は十分。参加者は嵐田双歩、植村博明、大澤水牛、岡田鷹洋、金田青水、澤井二堂、杉山三薬、須藤光迷、塩田命水、田中白山、玉田春陽子、堤てる夫、徳永木葉、中村迷哲、野田冷峰、廣田可升、前島幻水、向井ゆり、山口斗詩子の面々。

歩きやすさを考えて、通常とは逆回りに大森海岸駅近くの磐井神社(弁財天)からスタート。第一京浜から旧東海道に入る分岐点が鈴ヶ森刑場跡。八百屋お七や天一坊、丸橋忠弥ら、芝居で知られる江戸時代の罪人が露と消えた場所。今は狭い敷地に石塔類が残るだけで、火あぶりと磔の柱を立てた礎石が昔を語っている。住宅地を二十分ほど歩き天祖・諏訪神社(福禄寿)に着く。街道沿いに立会川、鮫洲、青物横丁と商店街を一・六キロを歩きやっとの思いで品川寺(毘沙門天)にたどりつく。ここまで来れば、行程の七割をこなしたことになる。目黒川畔にある品川宿の総鎭守荏原神社(恵比寿) に参拝、疲れた足を励まし、北品川商店街を抜けて一心寺(寿老人)へ。そこから路地を五十メートル入ると養願寺(布袋尊)。行程表と時計をにらみつつ、最後の品川神社に向かう。海を望む小高い丘に鎮座する品川神社(大黒天)は、源頼朝が安房の須崎明神を勧請して創建。その後、太田道灌、徳川家康をはじめとする歴代将軍の庇護を受け、北品川の鎮守として崇敬を集めている。ずっと平坦な道を歩いてきたが、最後に五十三の石段が待ち受けていた。石段裏には勾配が緩やかな女坂があり、それぞれの疲れ具合いに応じて本殿を目指す。予定通り、午後四時には境内で集合写真に納まり、新馬場駅近くの台湾ダイニング「游羅」で盛大な打ち上げ懇親会を開催した。 (七福神吟行幹事・中村迷哲)

☆     ☆     ☆

東海七福神吟行のメール句会

例のごとく参加19人によるメール句会は投句3句・5句選句で行い、集計の結果、迷哲さんの「巡り終え酒席に揃ふ七福神」が六点で第一席。次いで「福詣一歩一歩の女坂 双歩」「賽銭を小出しに供え七福神 博明」「獅子舞に暫し華やぐ下駄屋前 春陽子」「頻尿の心せはしき福詣 木葉」が五点で並んだ。四点に「初凪や品川海が遠くなり 水牛」「引きたいが凶の予感の初御籤 光迷」「富士塚や四日の海も橋も暮れ 光迷」「富士塚の下界やかまし早四日 木葉」「獅子舞をすわ天敵と仔犬吠ゆ 可升」の五句が続いた。ほか三点三句、二点十二句、一点十三句という結果になった。

東海七福神吟行作品集

福詣一歩一歩の女坂              嵐田 双歩

疊屋の旧字古びぬ初仕事

恙なく句友こぞりて福巡り

獅子舞や品川宿の小商人            植村 博明

賽銭を小出しに供え七福神

福詣巡り終えるや怪気炎

十二度もあるぞ令和の福詣           大澤 水牛

初凪や品川海が遠くなり

丈六の地蔵微笑む四方の春

禿頭撫で湧けよ秀句よ福禄寿          岡田 鷹洋

釣ったのは空飛ぶジャンボ恵比須神

品川神富士登りたし余力なし

神楽笛きりゝ流るゝ初御空           金田 青水

図らずも獅子に喰はれて貰ひ福

品川に海苔や魚や福まゐり

鈴ヶ森落葉の陰に火焰台            澤井 二堂

品川寺小鐘をついて福願ひ

春日差す龍馬の眼差し旧海道

大森に集ふ四日の福詣り            塩田 命水

憧れし車に出会ふ福詣り

飛行反対の幟の踊る福詣り

福詣お七が袖引く鈴ヶ森            杉山 三薬

初歩き枚方までなら五十六次

金餅を色紙代わりに七福神

初春や策士龍馬の懐手             須藤 光迷

引きたいが凶の予感の初神籤

富士塚や四日の海も橋も暮れ

狛犬の子連れの阿吽冬日差           田中 白山

目黒川囃子太鼓の恵比須神

一万歩大団円の七福神

初御籤謙虚になれば幸来ると          玉田春陽子

弁天の朱肌あらはや福詣

獅子舞に暫し華やぐ下駄屋前

今むかし天下の大道福巡り           堤 てる夫

品川神社家康庇護の高みかな

正月も何も縁なし涙橋

頻尿の心せはしき福詣             徳永 木葉

富士塚の下界やかまし早四日

東海の福神たずね江戸上り

広重の街道たどる福詣             中村 迷哲

福詣坂に列なす女高生

巡り終へ酒席に揃ふ七福神

楪の仔連れ狛犬福鎮座             野田 冷峰

福巡り句友の介添えありてこそ

念入りに下駄屋の老舗福踊り

首垂れ獅子頭待つ女将かな           廣田 可升

獅子舞をすわ天敵と仔犬吠ゆ

新海苔の赤き幟や東海道

東海道の昔を偲び福詣             前島 幻水

旧海道巡るもご利益福詣

福神はインタナショナル福詣

獅子舞の囃子につられ早歩き          向井 ゆり

人のことばかり願いて福詣

江戸明治昭和を往き来四方の春

八十翁健脚競ひ初巡り             山口斗詩子

賽銭の多寡気にしつつ初詣

小吉と出でてにんまり初みくじ

(まとめ 嵐田双歩)

 

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酔吟会第144回例会を開催

長老涸魚さんの「初日」二句で目出度く幕開け

静舟さんの「気長の妻」が6点で最高

酔吟会の令和2年初句会(通算144回)は1月11日午後1時、東京・内神田の日経広告研究所8階会議室で開催された。兼題は「初日(はつひ)」「屠蘇(とそ)」で、暖冬につられてか、出席者は19人とほぼ満席となり、投句参加者2人を加えて投句総数は105句、選句6句で句会を進めた。その結果、最高点は工藤静舟さんの「ごまめ煎る気長な妻のありがたき」の6点。次席は片野涸魚さんの「汚れちまったこの星に射す初日」の5点。三席は「帰郷して綽名呼び合う新年会 今泉而云」、「枯むぐら除けるや蕗の薹二つ 大澤水牛」、「生きてをるだけがめでたき初日かな 涸魚」、「雑煮餅卒寿の父母に薄く切る 谷川水馬」、「風を呼びかぜに煽られどんと焼き 玉田春陽子」の4点5句。続く3点は5句、2点22句、1点33句。兼題別の高点句(3点以上、屠蘇の句は2点以上)は次の通り。

「初日」

汚れちまったこの星に射す初日      片野 涸魚

生きてをるだけがめでたき初日かな    片野 涸魚

仏壇の奥まで入りし初日かな       須藤 光迷

初日影松の葉先の細みまで        玉田春陽子

「屠蘇」

無骨なる父の挨拶屠蘇の朝        廣田 可升

屠蘇汲んで何かが癒えてくる心地     嵐田 双歩

老夫婦屠蘇は宅配しみじみと       岡田 鷹洋

養命酒みたいなものと屠蘇注がれ     杉山 三薬

屠蘇祝ふ母は上戸で父は下戸       谷川 水馬

なんとまあ私が喜寿屠蘇祝ふ       玉田春陽子

「雑詠」

ごまめ煎る気長な妻のありがたき     工藤 静舟

帰郷して綽名呼び合う新年会       今泉 而云

枯むぐら除けるや蕗の薹二つ       大澤 水牛

雑煮餅卒寿の父母に薄く切る       谷川 水馬

風を呼びかぜに煽られどんと焼き     玉田春陽子

初夢は背を向け合ひて同じ夢       今泉 而云

抜き文字の法被眩しき出初式       廣田 可升

参加者(出席)嵐田双歩、今泉而云、大澤水牛、大沢反平、大平睦子、岡田鷹洋、片野涸魚、金田青水、工藤静舟、久保道子、久保田操、杉山三薬、須藤光迷、高井百子、玉田春陽子、堤てる夫、徳永木葉、廣田可升、向井ゆり(投句参加)谷川水馬、藤野十三妹

(まとめ:てる夫)

 

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日経俳句会第185回例会

37人が「淑気」「冴ゆ」を詠む

博明さん「難病の友」で最高9点

日経俳句会は令和2年の1月例会(通算185回)を1月15日(水)に千代田区内神田の日経広告研究所会議室で開いた。小正月にあたるこの日は昼に雨が降ったうえ、寒さで体調を崩した人もあり、出席は15人にとどまったが、兼題句、雑詠ともに高点句が多く、正月らしい賑やかな初句会となった。兼題は「淑気」と「冴ゆ」。37人から111句の投句があり、6句選(欠席5句)の結果、植村博明さんの「冴ゆる夜や難病の友良く語り」が最高9点を獲得、大倉悌志郎さんの「踏跡のなき雪道の淑気かな」が8点で続いた。7点句には「冴ゆる夜はみしりみしりと家も泣く 双歩」と「スイーツも酒も持ち寄り女正月 木葉」が並び、6点句に「街路樹の細き枝先月冴ゆる 操」と「年ごとに家族の増えて福笑い 百子」の2句が入った。このほか5点4句、4点10句、3点10句、2点14句、1点29句で、3点以上の高点句が29句にのぼった。兼題別の高点句(3点以上)は以下の通り。

「淑気」

踏跡のなき雪道の淑気かな       大倉悌志郎

木漏れ日を映す手水の淑気かな     和泉田 守

スタートの号砲真近淑気満つ      向井 ゆり

富士塚の頂きに満つ淑気かな      嵐田 双歩

カレンダー表紙をめくる淑気かな    植村 博明

淑気満つ嶺の尖りや独鈷山       髙井 百子

新しき紙垂の浮き立つ淑気かな     髙石 昌魚

潮風の運ぶ淑気や崖の寺        中村 迷哲

スタートの襷の誇り淑気満つ      水口 弥生

「冴ゆ」

冴ゆる夜や難病の友良く語り      植村 博明

冴ゆる夜はみしりみしりと家も泣く   嵐田 双歩

街路樹の細き枝先月冴ゆる       久保田 操

ちんまりと猫も正座の淑気かな     大澤 水牛

月冴えて語り出したる影法師      中村 迷哲

冴ゆる夜や満天の星怖きほど      井上庄一郎

底石を見せて冴えざえ荒れ千曲     杉山 三薬

賽銭の十円からころ音冴ゆる      中沢 豆乳

夕映えの荒川越しに冴ゆる富士     向井 ゆり

漆黒を揺らめく神火伊勢冴ゆる     水口 弥生

『当季雑詠』

スイーツも酒も持ち寄り女正月     徳永 木葉

年ごとに家族の増えて福笑い      髙井 百子

除夜の鐘ゴーンと鳴るは逃げた後    荻野 雅史

娘らが帰ってこない晦日蕎麦      旙山 芳之

鳥来るを待つ千両のつぶらかな     水口 弥生

デパートにトイレを探す寒の入     嵐田 双歩

黄泉路へと続く大穴大根掘る      大倉悌志郎

北新地ところ狭しと松飾        髙橋ヲブラダ

掘り炬燵猫踏んじゃった初笑い     中沢 豆乳

年新た皿をはみ出す鰤のかま      廣上 正市

雪国の村ふかふかと寒満月       星川 水兎

《参加者》【出席】嵐田双歩、岩田三代、大澤水牛、大沢反平、岡田鷹洋、金田青水、澤井二堂、杉山三薬、鈴木雀九、髙石昌魚、堤てる夫、徳永木葉、中沢豆乳、中村迷哲、星川水兎。【投句参加】池村実千代、和泉田守、井上庄一郎、今泉而云、植村博明、大倉悌志郎、大下綾子、大平睦子、荻野雅史、加藤明生、久保田操、高井百子、高橋ヲブラダ、谷川水馬、中嶋阿猿、野田冷峰、旙山芳之、廣上正市、藤野十三妹、水口弥生、向井ゆり、横井定利。 (報告・中村迷哲)

 

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第15回日経俳句会賞決定

英尾賞に廣田可升氏

日経俳句会賞は中沢、鈴木、水口、嵐田の四氏

《日経俳句会賞英尾賞》

ちちははに詫びたきあまた冬銀河  廣田 可升(初受賞)

《日経俳句会賞》

菊人形大坂なおみの高島田     中沢 豆乳(初受賞)

聖樹下にギフトを置いて親となる  鈴木 好夫(二回目受賞)

ページ繰る小さき風あり夏木立   水口 弥生(二回目受賞)

一年が散らかっている十二月    嵐田 双歩(三回目受賞)

12月19日の日経俳句会年次総会、下期合同句会に続いて第15回日経俳句会賞の発表と贈賞式が行われた。英尾賞には廣田可升氏、日経俳句会賞には中沢豆乳、鈴木好夫、水口弥生、嵐田双歩の4氏が選ばれた。廣田氏と中沢氏は初受賞。鈴木、水口両氏は2回目、嵐田氏は3回目の受賞となった。

委員会方式による選考を6人が担当。幹事の中村委員が「過去3年の受賞者を除くなどのルールに沿って、152句を対象に公平、公正に選んだ」と選考経緯を説明、堤幹事長から5氏に賞状と記念品が贈られた。

引き続き大澤水牛、今泉而云両顧問が掛け合いの形で5氏の作品を講評。それぞれの句の本質をとらえた的確なコメントに、作者も出席者もうなずきながら聞き入った。

この後、年忘れ会を兼ねた祝賀パーティーに移り、受賞者を祝い、一年を振り返る談笑の輪が広がった。また受賞者がそれぞれ喜びの言葉を語ったが、初受賞の2人と、11年ぶりの受賞となった鈴木さんにひときわ大きな拍手が贈られた。

《水牛・而云両顧問のコメント》

ちちははに詫びたきあまた冬銀河   廣田 可升

水牛 自分が亡き両親の年代になってくると、つくづくこういう思いに駆られます。「孝行のしたい時分に親はなし」という有名な川柳があります。この句はその続編のような感じもしますが、諧謔味よりも、もっとずっと根源的な、親・子・孫へと連綿と伝わる肉親愛というものを感じます。最初この句を見た時、ちょっと口調が悪いな、「ちちははにあまた詫びたし冬銀河」とすべきではないのかな、などと思っていました。しかし、今こうして読み直すと、「詫びたきあまた」というちょっと舌足らずな言い方がとても良い味を出していることに気が付きました。

而云 冬銀河を見上げ、亡き父母への「詫びたきことのあまた」を思う。酔って夜中に帰途のことでしょうか。年配の男性なら、同じような思いを抱いたことがあるはずです。人間と宇宙、子供と父母はこのように繋がっているのだと思いました。

菊人形大坂なおみの高島田      中沢 豆乳

水牛 句会でこの句を見た時、ちょっとやり過ぎだなあと思って採らなかったのです。しかし、最高点を取って、合評会で皆さんの句評を聞いているうちに、私はもう少し素直にならなければいけないなと反省しました。この句は私にとって、そういう句です。作者によると、確かに「高島田は作った」のだそうですが、そういう操作は十分許されます。令和元年を記す良い句です。

而云 作者は句会で「実物の菊人形は高島田ではなかった」と告白し、笑いを誘いました。実物ではなかったのだが、高島田の大坂なおみの姿・顔立ちは、すでに私の頭にしっかりと描かれています。たぶんなおみ選手が引退する頃になっても、私は彼女の花嫁姿を思い浮かべるでしょう。

聖樹下にギフトを置いて親となる   鈴木 好夫

水牛 「聖樹下に」という堅苦しい言葉が非常な効果を発揮しています。何の事は無い、子が寝静まった夜中、クリスマスツリーの下にプレゼントを置いたという情景なんですが、「親となる」という下五で、親の自己満足から、本当に「家族だなあ」という気分になったという感じが伝わってきます。

而云 子供が一歳か二歳のころだろうと思います。ツリーの下にクリスマスプレゼント置いて、気づいた。「私は親になっていたのだ」と。初めて生まれた赤ん坊は可愛いが、自分が親であるという自覚はまだ薄い。プレゼントを置くことで、親の自覚が生れたのです。その素晴らしい瞬間を詠んでいるのだと思います。

ページ繰る小さき風あり夏木立    水口 弥生

水牛 繊細な叙景句で、私の大好きな句です。夏木立と言ってもこれは真夏の緑蔭ではなく、初夏の感じがします。芭蕉には「先づたのむ椎の木もあり夏木立」という名句があります。これは強い日射しから守ってくれる夏木立ですが、水口さんの夏木立は日差しはそれほど激烈ではなく、むしろ爽やかな風を送ってくれる木立の趣です。読んでいる私も昼寝に誘われてしまいそうです。

而云 微風で頁が繰れるのか。単行本、文庫本などを開いてみたが、そんな状況は生れそうもない。しかし私の頭の中では夏木立からの風でページがふはりと繰られていくのです。実際にはどうなのか、などを検証するのは何と愚かなことでしょう。俳句の素晴らしさは、こういう所にもあるのだと知らされました。

一年が散らかつている十二月     嵐田 双歩

水牛 これはユーモアとウイットに富んだ句で、さすがは手だれの双歩さんという感じです。作者もそうなのかも知れませんが、私なぞ年がら年中、新聞雑誌でこれは面白いというのを破り取って、積んであります。年末になるとそういうのがうずたかく積もって、雪崩を起こします。この句はそういう、目の前の乱雑さだけでなく、あれもしなきゃ、これも片付いていないという焦燥感も伺えます。

而云 昨年の合同句会で断トツの最高点句。合評会のコメントを調べたら、散らかっているのは「家の中」「私の頭の中」「社会」「政治の現況」など実にさまざまでした。今年に当てはめたら、さらに厳しい指摘にならざるを得ません。一年を経て政治・社会はさらに酷く、この句はますます輝きを増していくように思います。

《受賞者の挨拶》

廣田可升さん

ちょうど五年前の秋、谷川水馬さんから飲み会の案内状をいただき、そこに俳句が書かれていました。たしか、本のページに栞がわりに挟まれていた薄紅葉を詠んだ句だったと記憶しています。翌年には会社を退職することが予定されていて、仕事をやめた後なにか新しいことをしないと持て余すなと思っていた頃でもあり、この句を読んでなにか琴線にふれるものを感じました。飲み会で谷川さんにお会いした折に、「俳句やってみたいんやけど」ともちかけ、その年の暮から番町喜楽会に参加させていただきました。まったくの偶然から始まった瓢箪に駒みたいな話でもあり、自分の飽きっぽい性格も知っていたので、いつまで持つやらと思っていたのですが、両顧問のご指導と句会の皆さんのおかげもあり、飽きることもなく続けられました。本日、思いもかけずこんな賞をいただき、ご縁があって日経俳句会に参加させていただき本当に良かったなと感謝しております。ありがとうございました。

中沢豆乳さん

自分でも駄句だなと思っている俳句に賞をいただき、恐縮するとともに、とても嬉しいです。何ひとつ貢献していない、名前だけの日経俳句会会長です。審査した方々が、そんな会長に対して忖度してくださったのだろうと思います。会長になって良かったなあ。──面目ないことだけれど、四十年近い記者生活で表彰されたことは一度もありません。この句は福島県二本松の菊人形祭りの実景ですが、創作というか噓が含まれています。何だかガセネタで表彰されたような気分です。本当にありがとうございました。

水口弥生さん

思いがけず日経俳句会賞を賜り、有難うございました。日を重ねるにつれて、その重さを思わずにはいられません。受賞句は暑い日の公園での光景。漫画本(表紙のない)の数ページが、ぺらぺらそよいでいたのを思い出し、ちょっとおしゃれに仕上げて、そっと投句してみたものです。今年は俳句の神様に見放され、毎月の投句に四苦八苦。そんな極月に望外の神様のお恵みがあり、年を納めることが出来ました。これを励みとして、来年の楽しい句作に繋げたいと思います。

嵐田双歩さん

十人十色というように、人それぞれ考えも好みも異なるはずなのに、こんなに大勢の人から支持されるとは本当に驚きました。ちょうど一年前の合同句会で、自分で集計していて怖くなるほどでした。どうして17点も集まったのか、受賞が決まって考えてみました。この句は「なんだか部屋が散らかってるなあ、一年分だもんね」という単純な発想からできたのですが、読む人それぞれが別々の解釈をしてくれたおかげだと気づきました。散らかっているのは、物だったり事だったり気持ちだったり、読者ひとり一人が自分に引きつけて共感していただいたのだと。中には、世の中の未解決のあれこれ、政治のことや災害の復興のことまで言及し、時事句と捉えた人もいました。俳句が一人歩きをした結果、このような大量得票という雪崩現象を起こしたのでしょう。今年もいろいろと散らかったままです。ともあれ、改めて皆さまに感謝いたします。本当にありがとうございました。

鈴木好夫さん

この度、令和元年度日経俳句会賞をいただきこれにまさる喜びはありません。選考委員の方々に心から御礼申し上げます。加之、時にはげまし、時に批評くださる句作の仲間の皆様に心から御礼申し上げます。句意は五七五の字面そのもので、親となる、も親が準備し子供がそれをうれしがっている様子を親が見ているというほどのものです。私は女の子ばかり3人のしかも年子の親父で、子らが幼稚園児の頃、仕事から帰宅すると小さなクリスマスツリーが飾られ、樹下に小さなギフトが置かれていたことを思い出し句にしました。賞をいただいてみますと、そういえば案外いい句だなと思い(なんといううぬぼれ)、選考委員の方々は良い選考眼をお持ちだと思い(また悪い癖が出た)ました。これまでの日経俳句会賞贈賞式では、選ばれた素晴らしい句を賞賛しつつも、私は後ろで拍手をしていればよいと気楽でした。この度は恍惚と不安二つながら我にあり、は大げさにすぎますが、これを機会に残された人生のことも考え、私が日経俳句会にいること自体奇跡なのですから、ご迷惑をかけないよう自分なりに句作に精進したいと思います。どうぞ皆様今後ともよろしくご指導くださいますようお願いいたします。

鈴木さんが俳号「雀九」を披露

日経俳句会賞の祝賀パーティーの席上、受賞者の鈴木好夫さんから「新年から雀九(じゃっく)」を俳号としたいと、表明があった。鈴木さんによれば、「好夫」の名前は、英語でいえば「Jack」にあたる一般的な呼び名。そこで「Jack」に当てはまる漢字を考え「雀九」に行きついたという。出席者からは「鈴木さんにふさわしい、いい俳号だ」と拍手が沸いた。   (記録・報告 中村迷哲)

 

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日経俳句会、令和元年下期合同句会を開催

30人が出席、一年を締めくくる

水牛「急くほどに」、可升「一匹の逝き」最高点

日経俳句会は12月18日(水)、令和元年下期合同句会(通算29回)を千代田区内神田の日経広告研究所会議室で開いた。平年より暖かなこの日、年収めの句会とあって、30人もの会員が出席、座り切れないほどの熱気に溢れた。

兼題は「北風」の一つのみ。雑詠含め43人から129句が寄せられた。5句選で全員に事前選句をしてもらった結果、大澤水牛さんの「急くほどに事のすすまぬ師走かな」と廣田可升さんの「一匹の逝きて二人の年の暮」が最高7点で並んだ。次いで6点は「落葉掃く老女の丸き背に一葉(操)」、「煤払い積もれる嘘に頰被り(三薬)」、「小春日や紙の鼠に置く目鼻(光迷)」、「まな板の傷も古びし年の暮(水兎)」の雑詠4句だった。以下、5点6句、4点7句、3点16句、2点18句、1点35句と投句者全員が満遍なく得票した。兼題別の高点句(3点句以上)は以下の通り。

「北風」

北風や敗退告ぐる笛の音         大下 綾子

北の風干し芋寒天凍み豆腐        杉山 三薬

北風や富士夕映えの真ん中に       今泉 而云

大北風に野面あまねく平伏す       大沢 反平

北風の吹き荒れ三日島閉ざす       中村 迷哲

掛け声と共に北風斬る竹刀        政本 理恵

北風も仲間に入れて競技場        池村実千代

北風に火の番募る町会長         大澤 水牛

北風の千曲に菜つむ夫婦いて       岡田 鷹洋

北風に挑む老女の怪気炎         久保田 操

北風に身を削られて星数え        高橋ヲブラダ

ユニクロまとい北風と対峙せり      横井 定利

「当季雑詠」

急くほどに事のすすまぬ師走かな     大澤 水牛

一匹の逝きて二人の年の暮        廣田 可升

落葉掃く老女の丸き背に一葉       久保田 操

煤払い積もれる嘘に頰被り        杉山 三薬

小春日や紙の鼠に置く目鼻        須藤 光迷

まな板の傷も古びし年の暮        星川 水兎

煮え切らぬ男ぐつぐつおでん酒      嵐田 双歩

アフガンの凍てし弔鐘天を衝く      堤 てる夫

介護する部屋の真白き障子かな      廣上 正市

上野までミイラ見に行く冬日和      廣田 可升

熱燗を父の遺影にまず一献        岩田 三代

角巻や母の背に出す赤ほっぺ       工藤 静舟

終電が人で膨らむ師走かな        向井 ゆり

目のちから強く大きく冬帽子       池村実千代

夕空に眉月のある師走かな        今泉 而云

封筒に切手貼り足す冬の雲        大下 綾子

アフガンの師走に無念尊き遺志      大平 睦子

手袋の心強さよ出勤す          久保 道子

膝立てて肘も音立て畳替         谷川 水馬

核廃絶言はず動かず冬の蠅        堤 てる夫

ガスマスク自由香港冬ざるる       徳永 木葉

室咲きの姿正しく開花待つ        徳永 木葉

時雨るや特ダネ逃した帰り道       流合研士郎

《参加者》(出席)嵐田双歩、池村実千代、井上庄一郎、今泉而云、岩田三代、大澤水牛、大下綾子、岡田鷹洋、金田青水、斉藤早苗、澤井二堂、杉山三薬、鈴木雀九、須藤光迷、高井百子、高石昌魚、谷川水馬、玉田春陽子、堤てる夫、徳永木葉、中沢豆乳、中嶋阿猿、中村迷哲、野田冷峰、廣田可升、藤野十三妹、星川水兎、水口弥生、向井ゆり、横井定利。(投句参加)植村博明、大倉悌志郎、大沢反平、大平睦子、荻野雅史、片野涸魚、加藤明生、工藤静舟、久保道子、久保田操、高橋ヲブラダ、流合研士郎、廣上正市、政本理恵。 (報告 嵐田双歩)

 

 

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番町喜楽会第168回例会

「息白し」と「都鳥」を詠む

廣田可升さんが5点句でトップ

番町喜楽会は、令和元年12例会(通算168回)を12月7日(土)午後6時から、「息白し」と「都鳥」を兼題として九段下の千代田区立九段生涯学習館で開いた。投句者は22名で、投句数は104句。そのうち15名が会場に集まり句会を始めた。投句5句、選句6句の結果、廣田可升さんの「踏ん切りのつかぬ帰郷や都鳥」が5点でトップに輝いた。また、斉山満智さんの「また悔いの一つ増えたる師走かな」、塩田命水さんの「向かひ合ふ距離の近さや置炬燵」、谷川水馬さんの「冬大路信号守る親子鹿」、玉田春陽子さんの「息白く人それぞれに始発駅」、そして中村迷哲さんの「テスト日の寡黙なる列白き息」の4点句5句が続いた。以下、3点が9句、2点が16句、1点句が31句あった。兼題別の高点句(三点以上)は次の通り。

「息白し」

息白く人それぞれに始発駅             玉田春陽子

テスト日の寡黙なる列白き息            中村 迷哲

まえうしろ子を乗せママの息白し          徳永 木葉

「都鳥」

踏ん切りのつかぬ帰郷や都鳥            廣田 可升

夕映えのスカイツリーや都鳥            須藤 光迷

なれそめは鴨川の土手ゆりかもめ          谷川 水馬

「当季雑詠」

また悔いの一つ増えたる師走かな          斉山 満智

向かひ合ふ距離の近さや置炬燵           塩田 命水

冬大路信号守る親子鹿               谷川 水馬

きのふまでそこにゐたのよ日向ぼこ         大澤 水牛

教皇の被爆地に立つ時雨傘             澤井 二堂

初雪や子の恋人の来ると言ふ            田中 白山

一茶忌や大徳利で出る蕎麦湯            玉田春陽子

路地深き鍋屋横丁小夜しぐれ            玉田春陽子

行き止まるレールの錆びて山時雨          中村 迷哲

《参加者》【出席15人】嵐田双歩、今泉而云、大澤水牛、金田青水、塩田命水、高井百子、田中白山、谷川水馬、玉田春陽子、堤てる夫、徳永木葉、中村迷哲、野田冷峰、廣田可升、前島幻水。【投句参加7人】池内的中、大下綾子、斉山満智、澤井二堂、須藤光迷、星川水兎、山口斗詩子。  (報告・谷川水馬)

 

 

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日経俳句会第184回例会

 

37人参加「時雨」「木の葉髪」を詠む

反平さん「小夜時雨」で10点、豆乳さん「反骨も」9点で続く

 

日経俳句会は令和元年の11月例会(通算184回)を11月20日(水)に千代田区内神田の日経広告研究所会議室で開いた。この日は木枯らし到来の強風が吹き外出を控えた人もあって、出席は17人にとどまったが、兼題句、雑詠ともに高点句が多く、熱気あふれる句会となった。兼題は「時雨」と「木の葉髪」。37人から111句の投句があり、6句選(欠席5句)の結果、大沢反平さんの「毀れゆく母いとほしき小夜時雨」が最高10点を獲得。中沢豆乳さんの「反骨も風に吹かれて木の葉髪」が9点で続き、7点句に杉山三薬さんの「裾上げて女三代七五三」が入った。6点句には「しぐるるや淡き灯影の妻籠宿 迷哲」と「木の葉髪かなはぬことを重ね来て 悌志郎」の2句が並んだ。このほか5点3句、4点10句、3点8句、2点17句、1点38句で、3点以上の高点句が26句にのぼった。兼題別の高点句(3点以上)は以下の通り。

「時雨」

毀れゆく母いとほしき小夜時雨    大沢 反平

しぐるるや淡き灯影の妻籠宿     中村 迷哲

時雨るるや田は夕闇に溶けゆきて   岩田 三代

書に倦みてしぐるる町の音聞けり   大倉悌志郎

野良猫の塑像となりぬ路地時雨    大澤 水牛

冷えるねと時雨に物言う独り酒    中沢 豆乳

破片にも縄目の模様初しぐれ     廣上 正市

時雨れば残像未だ暴れ川       植村 博明

時雨虹幌竹たたむ人力車       谷川 水馬

煌々と通夜の灯りや時雨寒      中嶋 阿猿

しぐるるや京の娘の赤い傘      向井 ゆり

「木の葉髪」

反骨も風に吹かれて木の葉髪     中沢 豆乳

木の葉髪かなはぬことを重ね来て   大倉悌志郎

一合の米を炊く日や木の葉髪     植村 博明

再読に発見のあり木の葉髪      大下 綾子

孫と子に残すものなし木の葉髪    徳永 木葉

木の葉髪写真の母は若きまま     嵐田 双歩

スポーツ紙尻ポケットに木の葉髪   横井 定利

「当季雑詠」

裾上げて女三代七五三        杉山 三薬

新酒古酒並べて鯛の兜焼き      大倉悌志郎

白壁に揺るる影あり冬紅葉      加藤 明生

綿虫に川広々と横たはる       今泉 而云

小春日を見送る野良の正座かな    金田 青水

いつの日か人も滅ぶや冬の月     高橋ヲブラダ

冬の蠅すがりつきゐる南窓      徳永 木葉

夜通しの落葉のダンス風の曲     中村 迷哲

《参加者》(出席)嵐田双歩、井上庄一郎、岩田三代、大澤水牛、大沢反平、岡田鷹洋、金田青水、澤井二堂、杉山三薬、鈴木好夫、谷川水馬、堤てる夫、中沢豆乳、中嶋阿猿、中村迷哲、星川水兎、向井ゆり。(投句参加)池村実千代、今泉而云、植村博明、大倉悌志郎、大下綾子、大平睦子、荻野雅史、加藤明生、久保田操、斉藤早苗、高井百子、髙石昌魚、高橋ヲブラダ、徳永木葉、野田冷峰、旙山芳之、廣上正市、藤野十三妹、水口弥生、横井定利

(報告・中村迷哲)

 

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秋の合同吟行会は房総横断

16人でチバニアン・養老温泉・大多喜を巡る

11月16,17日一泊二日の旅程で日経俳句会と番町喜楽会合同の房総半島の〝秘境〟養老渓谷と大多喜町を訪ねる吟行を催した。地磁気逆転で有名になったチバニアンの見学と、紅葉と温泉、翌日は城下町・大多喜散策が目玉の旅。

11月16日昼過ぎ、内房線五井駅・小湊鉄道ホームに集合、古びた二両連結のディーゼル車に乗り込む。この秋相次いだ台風で大きな被害を受けた小湊鉄道は土砂崩れや倒木で不通区間が残っており、途中の上総牛久から代行バス利用となる。出発から一時間で月崎駅着。ここから約2.5キロ歩いて、養老渓谷のチバニアンに行く。チバニアンとは77万年前に地球の北極南極(N極S極)が逆転し、その後また元に戻ったことを証拠立てる地層がくっきりと目視できる世界でも稀な場所で、間もなく国際地質学会とかで正式に認められることになっており、そうなると有象無象の観光客の押し寄せる名所になるのは必定。我々は一歩先んじて見学に出かけたわけだ。

宿泊はチバニアンから養老渓谷をさらに遡った粟又の滝を見下ろす「秘湯の宿 滝見苑」。地下四百メートルから湧き出る温泉大浴場や露天風呂で強行軍の疲れを癒した。夕食宴会では岩魚の塩焼や牛鍋、釜飯など地元の食材を生かした料理を肴に、地酒「大多喜城」や「豊乃鶴」を味わい、歓談した。宴会後の二次会では連句を始め、一時間半ほどで半歌仙(十八句)を巻き上げた。

翌17日も快晴。10時発の旅館のバスで上総中野駅に出て、いすみ鉄道の電車で大多喜へ向かった。大多喜は徳川四天王の一人、本多忠勝が拓いた城下町。城跡には何も残っていなかったのだが、昭和50年に天守閣が再建された。城下には江戸や明治時代の商家や造り酒屋など古い建物が残り、往時の雰囲気を伝えている。地元観光協会のボランティアガイドの懇切丁寧な案内で、城を仰ぎながら城下町の由緒ある旧家や神社をゆっくり見て回った。幹事から「吟行の句を三句、21日締切で投句して下さい」と念を押されて現地解散した。そのメール句会の結果は後日詳報。(報告・中村迷哲)

 

 

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