多治見・馬籠・妻籠宿吟行を催行

 

日経俳句会、番町喜楽会合同の一泊吟行を、10月29、30の両日、陶器の町多治見と、中山道の妻籠、馬籠宿で行った。参加者は大澤水牛、堤てる夫、高井百子、金田青水、須藤光迷、嵐田双歩、植村方円、向井愉里、杉山三薬(幹事)の9人。

初日29日土曜日は、織部や志野の名で知られる陶器の里、岐阜県多治見市を訪問。午後1時、中央線線多治見駅に集合。駅から「本町オリベストリート」を目指して歩き始める。そこは、明治から昭和にかけて、美濃焼の卸問屋が軒を並べて栄えた多治見本町の中心部。その景観を残しつつ、新しい施設を整備して、同市が観光の目玉とした場所。快晴、爽やかな風の中、のんびり気分のメンバーは、それぞれ見繕って陶器店に入り、土産になる器などを選んだ。陶器店の他目立つのは、陶器成金とおぼしき豪邸やお洒落な建物。表札には加藤、古田の文字が目立つ。陶祖加藤景光に始まり、古田織部、そして現代の加藤唐九郎と素人でも知っている美濃焼、織部焼にかかわる著名人を偲ばせる。なんと交番も壁面格子の、レストラン風構え(格子は刑務所だろうに)。メイン通りから少しはずれた所には、明治大正とおぼしき建物が随所に見られる。今も営業している料亭の豪壮な造りは、美濃豪商の栄華を物語る。

しかし、パンフレットの謳い文句ほどには、見ものの種類は多くない。3時過ぎ、スマホ地図を駆使する愉里さんに率いられた6人が「陶祖景光の碑と陶器商人の元締め加藤助三郎顕彰碑」の探索に向かう。ちょっと高台、街並みを一望できる場所にそれはあった。町中を離れたせいか、水牛さんも「これで吟行気分が高まった」。一同、足元に草むらの種、ヒッツキ虫(草虱)を纏わらせて戻る。これが、また取るのに一苦労の難物。いい暇つぶしになったかも。町の中央に戻ると、てる夫さん百子さんが並んで、円形ベンチで待っていた。この風景どこかで見たことがある。そーだ。小津安二郎の「東京物語」笠智衆と東山千栄子の荒川堤の場面だ。いい味出してましたよ、ご両人。

それぞれの時間を過ごして午後5時。地元評判の蕎麦屋「井ざわ」で夕食。料理が織部と見られる器で出て来るのは、成程の演出だ。8時少し前に町外れにあるホテルに入る。風呂の後、まだ意気盛んな水牛さんの部屋に双歩、愉里、三薬が参内。10時ごろまで尻取り連句に興じた。かくして初日終了。

二日目。今日もいい天気。朝9時にタクシーでホテル出発、多治見駅から中央線特急で中津川に行き、地元の南木曽観光の貸切りバスに乗り、まず妻籠宿の最寄り駐車場に到着、一同9人、坂を登り旧中山道妻籠宿に足を踏み入れ、まず鯉岩という大きな石を見る。中山道三名石の一つとかでとにかくデカい。明治24年の濃尾大地震で形が変わってしまったなどの、解説が掲示されている。そこから南へ馬籠方向へブラリ歩き。月曜日とあって人通りも予想したほどではない。ただ、外人さんが多い。道の両側に建ち並ぶ旅籠屋は、旅行パンフレットなどでお馴染みのレトロ。てる夫さん「泊まってみたいなぁ」とポツリ。(実際泊まったら、反省するだろうな)。道がほぼ直角に曲がる、街道特有の桝形という空間などを訪ねて、来た道を引き返す。途中、蕎麦屋で全員昼食。バスに戻ってそこから馬籠宿へ飛ばしてもらう。林道をくねくね、紅葉はそう派手ではないが「木曽路は山の中」藤村の一文がよく分かる。

馬籠見晴らし台近くでバスを降り、馬籠道を藤村記念館方面へ歩く。こちらは、妻籠よりはるかに急な坂。観光客もずっと多い。しかも水牛さん言うところの、紅毛碧眼のなんと多いことよ。大型キャリーケース二個を押して急坂を登るタフガイには、だから大戦で負けた、と思わざるを得ない。地酒を売る店、せんべいやお焼きの店で足を休めつつ、ヤマト老人部隊は歩を進める。馬籠宿本陣の藤村記念館は、藤村幼少期の建物がそのまま残されている。明治日本の典型的エリートの出自を感じさせる。そこからさらに急坂を下り、バス通りへ。そこで我らの歩きは終了。一同、中津川に戻り解散、吟行句会は数日後、高井百子さんが取りまとめ役となり、選句選評をメールでやり取りする方式で行った。参加者の吟行代表句を吟行順序に従って並べよう。

美濃焼の集散の地や秋の風      須藤 光迷

東濃は歯医者も加藤冬近し      金田 靑水

秋うらら陶祖の碑からひっつき虫   向井 愉里

銀杏を踏みつつ探す陶祖の碑     嵐田 双歩

揺れ酷し美濃の特急秋吟行      高井 百子

天高し木曽路はすべて坂と石     杉山 三薬

秋深み妻籠の宿のすんき蕎麦     大澤 水牛

秋晴れや文豪生家の一本松      堤 てる夫

木守柿皆で見上げて木曽の中     植村 方円

(まとめ 杉山三薬・大澤水牛 23.11.12.記)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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