日経俳句会第211回例会

34人で「八月」「葡萄」を詠む

最高12点に「水風呂」水馬句

日経俳句会は令和4年8月例会(通算211回)を17日(水)に鎌倉橋の日経広告研究所会議室で開いた。残暑とコロナ感染の拡大で出席者は11人にとどまったが、活発なやりとりの句会となった。「八月」と「葡萄」の兼題に34人から102句の投句があり、6句選(欠席選句は5句)の結果、谷川水馬さんの「水風呂に西瓜も子らも冷やしけり」が12点と断トツの一席だった。さらに水馬さんは「葡萄棚まばらに透けて富士青し」が9点で一、二席を占め気を吐いた。同じく二席9点に中村迷哲さんの「愚かさを重ねゐる世や原爆忌」が並び、三席には高井百子さんの8点句「八月にあたしを産んだ母教師」が据わった。そのほか、伊藤健史さんの「八月や虫のむくろの澄んだ羽」など5句が6点で並んだ。以下、5点2句、3点6句、2点14句、1点28句と続き、特定の句に人気が集中した結果となった。兼題別の高点句(3点以上)は以下の通り。

「八月」

八月にあたしを産んだ母教師             高井 百子

八月や虫のむくろの澄んだ羽             伊藤 健史

八月や厨に氷ころぶ音                廣上 正市

八月は少し重たきカレンダー             横井 定利

八月やお洒落心も遠くなり              池村実千代

うとうととしつつ八月やり過ごす           植村 方円

八月や此の世を去るを思い初め            鈴木 雀九

八月の風は冥府の匂ひあり              高橋ヲブラダ

「葡萄」

葡萄棚まばらに透けて富士青し            谷川 水馬

葡萄棚肩に触れたる重き房              徳永 木葉

野趣捨てた葡萄ばかりの地下売り場          植村 方円

ちゃぶ台の葡萄かこみて父を待つ           金田 青水

鉄線と防犯カメラ葡萄園               高井 百子

ハモニカを吹くが如くにデラウエア          今泉 而云

巨峰剥くお前往時は桐の箱              杉山 三薬

「当季雑詠」

水風呂に西瓜も子らも冷やしけり           谷川 水馬

愚かさを重ねゐる世や原爆忌             中村 迷哲

スニーカー軍靴にさせじ敗戦忌            植村 方円

ポストまで手紙重たき残暑道             横井 定利

蜥蜴しばし我を見つめて動かざる           今泉 而云

円空とカミオカンデに秋の風             須藤 光迷

日盛りの今年はうすき蝉時雨             星川 水兎

ありがとう友の呟き夏越せず             岡田 鷹洋

《参加者》【出席11人】今泉而云、植村方円、大澤水牛、岡田鷹洋、篠田朗、杉山三薬、堤てる夫、徳永木葉、中村迷哲、星川水兎、向井愉里。【投句参加23人】嵐田双歩、池村実千代、和泉田守、伊藤健史、岩田三代、大沢反平、大下明古、加藤明生、金田青水、工藤静舟、久保田操、澤井二堂、鈴木雀九、須藤光迷、高井百子、髙石昌魚、高橋ヲブラダ、谷川水馬、中沢豆乳、中嶋阿猿、旙山芳之、廣上正市、横井定利。 (報告 嵐田双歩)

 

 

 

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