日経俳句会令和4年上期合同句会

39人で「虹」「黴」を詠む

最高点は迷哲さんの「黒靴」、定利さんが二、三席

日経俳句会は6月15日、内神田の日経広告研究所会議室で上期合同句会(通算34回)を開いた。コロナの影響でしばらく使えなかった会議室だが、半年ぶりで古巣に戻った。兼題は、「虹」と「黴」。39人から116句が集まったこの日は、梅雨らしい小雨混じりのやや寒い夕べだったが15人が出席。合同句会なので全員事前選句の結果、特定の句に票が集まり、中村迷哲さんの「黒靴を履かぬ月日や白き黴」が12点を得て一席。続いて横井定利さんの「虹見つつ後ろ歩きに帰りけり」が10点、「自撮りする傘寿の夫婦雲の峰」が9点と二、三席を独占、気を吐いた。次いで、徳永木葉さんの「黴生えたグローブ残し子は巣立ち」が8点、中沢豆乳さんの「千年のカビが隠した飛鳥美女」と廣田可升さんの「夏来るジブリ映画の雲連れて」が7点で並び、以下6点3句、5点4句、4点6句、3点7句、2点13句、1点33句だった。なお、今後吟行が増えることを見越して、新たに杉山三薬さんを吟行担当の幹事に任命、出席者の了承を得た。兼題別の高点句(3点以上)は以下の通り。

「虹」

虹見つつ後ろ歩きに帰りけり             横井 定利

巨大虹雨後の埠頭を驚かす              廣田 可升

虹の脚わが町選りて立ちにけり            向井 愉里

虹出せと子等に散水迫られり             須藤 光迷

虹淡く早く早くと妻を呼ぶ              旙山 芳之

母見舞ふ特養ホーム二重虹                    大澤 水牛

虹が出た肉屋のコロッケ歩き食い           杉山 三薬

虹が立ち如雨露の園児大はしゃぎ           中沢 豆乳

スコールの過ぎし島へと虹の橋            中村 迷哲

「黴」

黒靴を履かぬ月日や白き黴              中村 迷哲

黴生えたグローブ残し子は巣立ち           徳永 木葉

千年のカビが隠した飛鳥美女             中沢 豆乳

黴臭き古書店にいる本の虫              植村 方円

黴にほふ雑誌に付録ソノシート            谷川 水馬

黴払い十年ぶりのモーニング             深田森太郎

長き留守病夫の靴の黴みがく             藤野十三妹

靴箱は黴の臭ひと父母の靴              今泉 而云

 

味噌蔵に時代は眠る樽の黴              篠田  朗

使はねば直ぐにカビそう黴の文字           玉田春陽子

「当季雑詠」

自撮りする傘寿の夫婦雲の峰             横井 定利

夏来るジブリ映画の雲連れて             廣田 可升

鰹節削る楽しさ冷奴                 徳永 木葉

やはらかき語りをちこち螢狩             廣上 正市

拭き掃除何だか嬉し梅雨晴間             池村実千代

連れ合いて粋な浴衣にスニーカー           植村 方円

十薬を軒に干したる祖母の腕             星川 水兔

《参加者》【出席15人】嵐田双歩、今泉而云、植村方円、大澤水牛、大沢反平、金田青水、篠田朗、杉山三薬、鈴木雀九、堤てる夫、徳永木葉、中村迷哲、廣田可升、星川水兎、向井愉里。【投句参加24人】池村実千代、和泉田守、伊藤健史、岩田三代、岡田鷹洋、加藤明生、工藤静舟、久保道子、久保田操、須藤光迷、高井百子、髙石昌魚、高橋ヲブラダ、谷川水馬、玉田春陽子、中沢豆乳、中嶋阿猿、野田冷峰、流合水澄、旙山芳之、廣上正市、深田森太郎、藤野十三妹、横井定利。   (報告 嵐田双歩)

 

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