日経俳句会、令和元年下期合同句会を開催

30人が出席、一年を締めくくる

水牛「急くほどに」、可升「一匹の逝き」最高点

日経俳句会は12月18日(水)、令和元年下期合同句会(通算29回)を千代田区内神田の日経広告研究所会議室で開いた。平年より暖かなこの日、年収めの句会とあって、30人もの会員が出席、座り切れないほどの熱気に溢れた。

兼題は「北風」の一つのみ。雑詠含め43人から129句が寄せられた。5句選で全員に事前選句をしてもらった結果、大澤水牛さんの「急くほどに事のすすまぬ師走かな」と廣田可升さんの「一匹の逝きて二人の年の暮」が最高7点で並んだ。次いで6点は「落葉掃く老女の丸き背に一葉(操)」、「煤払い積もれる嘘に頰被り(三薬)」、「小春日や紙の鼠に置く目鼻(光迷)」、「まな板の傷も古びし年の暮(水兎)」の雑詠4句だった。以下、5点6句、4点7句、3点16句、2点18句、1点35句と投句者全員が満遍なく得票した。兼題別の高点句(3点句以上)は以下の通り。

「北風」

北風や敗退告ぐる笛の音         大下 綾子

北の風干し芋寒天凍み豆腐        杉山 三薬

北風や富士夕映えの真ん中に       今泉 而云

大北風に野面あまねく平伏す       大沢 反平

北風の吹き荒れ三日島閉ざす       中村 迷哲

掛け声と共に北風斬る竹刀        政本 理恵

北風も仲間に入れて競技場        池村実千代

北風に火の番募る町会長         大澤 水牛

北風の千曲に菜つむ夫婦いて       岡田 鷹洋

北風に挑む老女の怪気炎         久保田 操

北風に身を削られて星数え        高橋ヲブラダ

ユニクロまとい北風と対峙せり      横井 定利

「当季雑詠」

急くほどに事のすすまぬ師走かな     大澤 水牛

一匹の逝きて二人の年の暮        廣田 可升

落葉掃く老女の丸き背に一葉       久保田 操

煤払い積もれる嘘に頰被り        杉山 三薬

小春日や紙の鼠に置く目鼻        須藤 光迷

まな板の傷も古びし年の暮        星川 水兎

煮え切らぬ男ぐつぐつおでん酒      嵐田 双歩

アフガンの凍てし弔鐘天を衝く      堤 てる夫

介護する部屋の真白き障子かな      廣上 正市

上野までミイラ見に行く冬日和      廣田 可升

熱燗を父の遺影にまず一献        岩田 三代

角巻や母の背に出す赤ほっぺ       工藤 静舟

終電が人で膨らむ師走かな        向井 ゆり

目のちから強く大きく冬帽子       池村実千代

夕空に眉月のある師走かな        今泉 而云

封筒に切手貼り足す冬の雲        大下 綾子

アフガンの師走に無念尊き遺志      大平 睦子

手袋の心強さよ出勤す          久保 道子

膝立てて肘も音立て畳替         谷川 水馬

核廃絶言はず動かず冬の蠅        堤 てる夫

ガスマスク自由香港冬ざるる       徳永 木葉

室咲きの姿正しく開花待つ        徳永 木葉

時雨るや特ダネ逃した帰り道       流合研士郎

《参加者》(出席)嵐田双歩、池村実千代、井上庄一郎、今泉而云、岩田三代、大澤水牛、大下綾子、岡田鷹洋、金田青水、斉藤早苗、澤井二堂、杉山三薬、鈴木雀九、須藤光迷、高井百子、高石昌魚、谷川水馬、玉田春陽子、堤てる夫、徳永木葉、中沢豆乳、中嶋阿猿、中村迷哲、野田冷峰、廣田可升、藤野十三妹、星川水兎、水口弥生、向井ゆり、横井定利。(投句参加)植村博明、大倉悌志郎、大沢反平、大平睦子、荻野雅史、片野涸魚、加藤明生、工藤静舟、久保道子、久保田操、高橋ヲブラダ、流合研士郎、廣上正市、政本理恵。 (報告 嵐田双歩)

 

 

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