ハプニング続き、諏訪吟行

8人が参加、千人風呂と地酒を満喫

関東が猛暑にあえいでいる7月13日(木)、日経俳句会と番町喜楽会合同で長野県諏訪の片倉千人風呂を訪ねる吟行を実施した。電車が行き帰りとも事故で遅れるなどハプニングはあったが、諏訪大社に参拝し、昭和レトロの片倉館で温泉に入って連句を巻くなど充実した一日となった。

参加者は金田青水、澤井二堂、杉山三薬、高井百子、堤てる夫、中村迷哲、廣田可升、向井愉里の8人。新宿発の特急に乗った青水、二堂、迷哲、可升、愉里の5人は、沿線の倒木の影響で1時間遅れで上諏訪に到着。すぐにタクシーで諏訪大社下社へ。まず秋宮に参拝、巨大なしめ縄や社殿を守るように立つ御柱を見物した。次の春宮までは旧中山道を歩き、江戸の旅人気分を味わう。春宮の近くにある万治の大仏も参拝してから片倉館に向かった。

別ルートで諏訪入りした三薬幹事とてる夫・百子夫妻は、一足先に片倉館の座敷に落ち着く。この施設は生糸生産で財を成した片倉製糸が、諏訪の住民向けに昭和3年に竣工させた温泉保養施設。国指定重要文化財に認定されている。百人は楽に入れる大理石造りの巨大な「千人風呂」があり、大社参拝組も合流して大浴場で汗を流し、句会に臨んだ。

吟行句はメール投句にして、この日は「しりとり連句」を楽しむことになった。前の句の最後の2字(音)を句頭に織り込み、しりとり形式で詠み継いでいく簡単なルール。半数以上が初体験だったが、差し入れの地酒を片手に詠み進めると、軽妙洒脱な句が相次ぎ飛び出した。予定の2時間で半歌仙18句が巻き上がると思われたところで座敷の使用時間が超過。最後の2句は上諏訪駅に向かう道すがら詠み進め、駅の待合室で完成という劇的な幕切れ。初めと終わりは波乱の吟行となった。参加者の吟行の代表句は次の通り。

秋と春ふたつの宮や夏の旅             可 升

緑陰の中へ消え行く中山道             青 水

千人風呂玉砂利蹴って一人泳            てる夫

梅雨晴れ間テルマエロマエの湯の熱さ        三 薬

蓮池に映るレトロの片倉館             迷 哲

諏訪の湖アヒル九羽の大行進            二 堂

あずさ待ち買込むビール諏訪浪漫          愉 里

風死すや幹事はゴミを背に帰る           百 子

(報告 中村迷哲)

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酔吟会第163回例会

「席題」を出し「特選句」を選ぶ新趣向で開催。

Ⅰ6名出席、席題は「花火」

最高は可升さん11点句、次点は6点5句がひしめく

酔吟会は7月8日(土)、令和5年四回目となる句会を江東区常盤の芭蕉記念館で開いた。今回から、新趣向として句会開始15分前に会場に張り出す席題を採用。参加者は、兼題句、雑詠句の他に「席題句」一句を加えた5句投句することとした。また、選句では、その日一番だと思う句を「特選句(三点)」として加え、計六句選とした。

今回の参加者は16名。新たな試みの句会に、開始時間のかなり前から三々五々芭蕉記念館に集まった。席題を決めた可升さんから、会場の黒板に「席題・『花火・手花火』」が張り出されると、皆真剣に作句を始め、配られた短冊に自句を書き込み、午後1時30分句会開始。兼題「青田」「サングラス」に席題の「花火・手花火」を加え、投句総数80句。新趣向の3点付与される「特選句」を発表しながらの披講の結果、最高十一点は廣田可升さんの「穴場とはビルの隙間か大花火」で、「席題出題者の強みか」というやっかみ半分のひやかしの声。次点は6点で双歩さんの「もう底に何も映さぬ青田かな」、水牛さんの「青鷺の降り立つ青田来ぬ青田」、鷹洋さんの「外苑の学徒の木霊白い夏」、光迷さんの「右は佐渡左は弥彦青田道」、春陽子さんの「耳よりの話もちくるサングラス」の5句が並んだ。続く5点には而云さんの「遥かより来て遥かへと青田風」、水馬さんの「祖父に似た移民三世サングラス」の2句。4点句は道子さんの「サングラス目の日焼どめ病みて知る」、木葉さんの「昏れ残る青田に農夫草を引く」、可升さんの「ちょい悪になりそこねたるサングラス」の3句だった。以下3点が6句、2点が14句、1点が20句だった。

次回の席題出題者は、玉田春陽子さんが用意した割箸ゼイチクを参会者一同一本ずつ引いた結果、金田青水さんに決まった。新趣向の句会はいつも以上の熱気にあふれざっと3時間半かかり、午後五時前に終了した。(3点句以上の高得点者は以下の通り)。

「青田」

もう底に何もうつさぬ青田かな       嵐田 双歩

青鷺の降り立つ青田来ぬ青田        大澤 水牛

右は佐渡左は弥彦青田道          須藤 光迷

遥かより来て遥かへと青田風        今泉 而云

昏れ残る青田に農夫草を引く        徳永 木葉

青田中除草の鎌で道案内          谷川 水馬

「サングラス」

耳よりの話もちくるサングラス       玉田春陽子

祖父に似た移民三世サングラス       谷川 水馬

サングラス目の日焼どめ病みて知る     久保 道子

ちょい悪になりそこねたるサングラス    廣田 可升

サングラス真似たタフガイみな鬼籍     杉山 三薬

老い楽の恋のひとつもサングラス      谷川 水馬

サングラス少し戦闘モードにて       向井 愉里

「花火」

穴場とはビルの隙間か大花火        廣田 可升

花火師は忍者走りに右左          玉田春陽子

「当季雑詠」

外苑の学徒の木霊白い夏          岡田 鷹洋

両足にかけて打水終へにけり        玉田春陽子

(出席者16名)嵐田双歩、今泉而云、大澤水牛、岡田鷹洋、金田青水、久保道子 杉山三薬、須藤光迷、高井百子、谷川水馬、堤てる夫、玉田春陽子、徳永木葉、中村迷哲、廣田可升、向井愉里。

(まとめ 高井百子)

 

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番町喜楽会第207回例会開催

双歩と幻水の「鰻」が5点で首位

出席11人の寂しさ

番町喜楽会は令和5年7月例会(通算第207回)を3日午後6時半から東京・九段下の千代田区生涯学習館で開催した。むしむしとする梅雨湿りのせいもあってか、出席者が11人と寂しかった。兼題は「雲の峰」と「鰻」で、雑詠を含め投句5句、選句6句(欠席者は5句)の結果、首位は嵐田双歩さんの「蒲焼の匂ひくぐりて成田山」と前島幻水さんの「在宅の夫に蒲焼持ち帰る」で5点、次点は今泉而云さんの「桶に居て鰻は客に覗かるる」と中村迷哲さんの「かき氷舌を見せ合ひ色自慢」で4点だった。三点が10句にのぼった。兼題別の高点句(3点以上)は次の通り。

「雲の峰」

素手で魚捕まえる子ら雲の峰     金田 青水

峰雲や素振りつづける補欠の子    玉田春陽子

大浅間どっかと座る雲の峰      堤 てる夫

「鰻」

蒲焼の匂ひくぐりて成田山      嵐田 双歩

在宅の夫に蒲焼持ち帰る       前島 幻水

桶に居て鰻は客に覗かるる      今泉 而云

成田参り上鰻重の余慶かな      徳永 木葉

「当季雑詠」

かき氷舌を見せ合ひ色自慢      中村 迷哲

青梅を漬けて妻の座定まれり     嵐田 双歩

雌花一つ雄花幾千栗の花       高井 百子

きりもなし日傘の中の立ち話     玉田春陽子

電柱を締め上げ空へ蔦青し      徳永 木葉

海べりのキリシタン墓地土用凪    廣田 可升

きらきらと玉蜀黍の花の列      向井 愉里

【参加者】(出席11人)今泉而云、大澤水牛、金田青水、須藤光迷、高井百子、玉田春陽子、堤てる夫、中村迷哲、廣田可升、前島幻水、向井愉里、

(投句参加7人)嵐田双歩、池内的中、澤井二堂、田中白山、谷川水馬、徳永木葉、星川水兎。

(報告 須藤光迷)

 

 

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日経俳句会令和5年上期合同句会

40人から投句120句

水兎句「無人駅のかなぶん」、可升句「考える葦」が一、二席

日経俳句会は6月21日、内神田の日経広告研究所会議室で上期合同句会を開いた。この日は夏至。梅雨晴が一週間近く続き、この日も傘要らずの好天に恵まれ、出席した17人による熱い句会が繰り広げられた。

「父の日」と「黄金虫」の兼題に40人から120句が集まり、全員事前選句の結果、星川水兎さんの9点句「出迎えはかなぶんぶんの無人駅」が一席となった。次いで、廣田可升さんの「考える葦でありたし月涼し」が7点で二席、高井百子さんの「ちゃぶ台の父は動ぜず黄金虫」が6点で三席に入った。さらに大澤水牛さんの「ほっといてくれと仰向け黄金虫」や可升さんの「ぶんぶんや教師に仇名つけた頃」など5句が5点で続いた。以下、4点8句、3点18句、2点19句、1点29句と全体的にまんべんなく点が入り、兼題の「黄金虫」にユニークな句が多かった。兼題別の高点句(3点以上)は以下の通り。

「父の日」

父の日や若き遺影に一献す              和泉田 守

父の日や妻を主役に食事会              植村 方円

父の日や無口息子のメール来る            髙石 昌魚

父の日の似顔絵いまだ壁にあり            中村 迷哲

父の日か酒のチラシで気づきけり           旙山 芳之

父の日の似顔の髭の濃すぎたり            溝口戸無広

父の日も柱の角で背中掻く              嵐田 双歩

父のいぬ父の日母に電話せり             斉藤 早苗

父の日や形見の碁盤二十キロ             高井 百子

父の日の授業参観髪染めて              谷川 水馬

父の日や記憶の底にその背中             玉田春陽子

父の日の父の形に凹むソファ             廣田 可升

「黄金虫」

出迎えはかなぶんぶんの無人駅            星川 水兔

ちゃぶ台の父は動ぜず黄金虫             高井 百子

ほっといてくれと仰向け黄金虫            大澤 水牛

ぶんぶんや教師に仇名つけた頃            廣田 可升

ガラス戸を打ちて何処へ黄金虫            今泉 而云

炭坑節聞こえ来る夜の黄金虫             鈴木 雀九

黄金虫発止発止と夜の窓               玉田春陽子

黄金虫気だるき夜を掻き回り             向井 愉里

「当季雑詠」

(AIの進化に)

考える葦でありたし月涼し              廣田 可升

空よりも青きシロップかき氷             嵐田 双歩

坪庭をうずめ十薬白十字               堤 てる夫

ゆすらうめ幸運なんていつも小粒           徳永 木葉

しばし待てらっきょう漬けてまだ十日         斉藤 早苗

息災を祝し飲み干す大ジョッキ            和泉田 守

水鉄砲笑って泣いて撃ち合へる            今泉 而云

機体ごと割って進むや夏の雲             植村 方円

どくだみのかくもうるはし谷戸の道          大澤 水牛

ママ叱声パパ歎声のおむつ換え            岡田 鷹洋

万緑や休み休みの七曲り               加藤 明生

うねり来る女も担ぐ夏神輿              中沢 豆乳

梅雨入りの曇りがうれし何しよう           旙山 芳之

父の日やまだまだ現役古道具             廣上 正市

《参加者》【出席17人】嵐田双歩、池村実千代、今泉而云、岩田三代、大澤水牛、金田青水、澤井二堂、篠田朗、杉山三薬、鈴木雀九、堤てる夫、玉田春陽子、徳永木葉、中村迷哲、廣田可升、星川水兎、向井愉里。【投句参加23人】和泉田守、伊藤健史、植村方円、岡田鷹洋、荻野雅史、加藤明生、久保道子、久保田操、斉藤早苗、須藤光迷、高井百子、髙石昌魚、高橋ヲブラダ、谷川水馬、中沢豆乳、中嶋阿猿、中野枕流、旙山芳之、廣上正市、藤野十三妹、溝口戸無広、水口弥生、横井定利。

(報告 嵐田双歩)

 

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双牛舎年次総会・俳句大会を開催

コロナ開けて4年ぶり、26人集う

NPO法人双牛舎は令和5年6月10日(土)、千代田区二番町の東京グリーンパンレス・ホテルのレストラン「ジャルダン」で令和五年度年次総会を開催し、メンバーである日経俳句会、番町喜楽会、三四郎句会の会員ら二十六人が参加した。大澤水牛代表理事の挨拶に続いて、収支報告と新役員体制が発表され、拍手で承認。その後、恒例の「俳句大会」が4年ぶりに開かれ大いに盛り上がった。

俳句大会は兼題「梅雨」と雑詠の2句を事前投句、32人から64句の投句があった。会場では掲示された大型選句一覧表に「選句シール」を5句ずつ貼付する方式で選句した(欠席選句分は幹事が代行)。最高の天賞に輝いたのは、今泉而云さんの「合掌の肘に傘提げ梅雨の葬」と大澤水牛さんの「処方箋一行増えて梅雨に入る」の11点句の2句。〝双牛〟が天賞を分け合う形となり、大きな拍手が沸いた。地賞には堤てる夫さんの9点句「青梅雨や古社千年の杉木立」、人賞は植村方円さんの「遠雷や壁に向ひて一人飯」の8点句が続いた。入選は6点1句と5点3句の計4句だった。須藤光迷さんと水牛さんの陶芸作品と手造り梅酒が賞品として提供され、天・地・人賞と入選の作者に贈られた。俳句大会の入賞作品は次の通り。

《天賞》

合掌の肘に傘提げ梅雨の葬           今泉 而云

処方箋一行増えて梅雨に入る          大澤 水牛

《地賞》

青梅雨や古社千年の杉木立           堤 てる夫

《人賞》

遠雷や壁に向ひて一人飯            植村 方円

《入選》

細き道愚図る雨戸や梅雨深し          玉田春陽子

夏の浜干されてイリコの顔険し         杉山 三薬

濃紫陽花ゆらしてゆくや鼓笛隊         須藤 光迷

梅雨空にひとり聞き入るジャズ喫茶       深瀬 久敬

《参加者》【出席26人】和泉田守、今泉而云、岩田三代、植村方円、大澤水牛、岡田鷹洋、金田青水、河村有弘、久保田操、後藤尚弘、須藤光迷、高井百子、田中白山、谷川水馬、玉田春陽子、堤てる夫、徳永木葉、中村迷哲、野田冷峰、野田伸也(冷峰氏二男)、廣田可升、服山玲子(三四郎句会事務局)、星川水兎、水口弥生、向井愉里、渡邉信。【投句参加8人】嵐田双歩、池村実千代、久保道子、澤井二堂、杉山三薬、深瀬久敬、前島幻水、吉田正義。  (報告 谷川 水馬)

 

 

 

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番町喜楽会第206回例会

19人で「梅雨晴」「蛍」詠む

最高7点に水兎句「蛍の夜」

番町喜楽会は令和5年6月例会(通算206回)を6月3日、東京・九段下の千代田区生涯学習館で開催した。19人から投句があり、句会には13人が顔を揃えた。兼題は「梅雨晴」と「蛍」。選句6句(欠席者は5句)で句会を進めた結果、星川水兎さんの「あの人もあの人もいた蛍の夜」が7点で一席を飾った。二席には今泉而云さんの「マドンナの老いて目深な夏帽子」の6点句。三席には廣田可升さんの「天に星地には蛍の信濃かな」と「シャボンの香残す少女や夕蛍」の5点句が入った。以下、4点が4句、3点6句、2点15句、1点21句と続いた。兼題別の高点句(3点以上)は次の通り。

「梅雨晴」

梅雨晴の遠出や都電一日券              廣田 可升

梅雨晴間猫に小さき出入口              星川 水兎

梅雨晴や庭に陣取る畳職               徳永 木葉

梅雨晴や妻には妻のスケジュール           廣田 可升

「蛍」

あの人もあの人もいた蛍の夜             星川 水兎

天に星地には蛍の信濃かな              廣田 可升

シャボンの香残す少女や夕蛍             廣田 可升

とりあへず両手でつくる蛍籠             嵐田 双歩

蛍の夜踏み外したる道の事              須藤 光迷

蛍やわが胸にきて遊び去る              高井 百子

当季雑詠

マドンナの老いて目深な夏帽子            今泉 而云

土作り半ばのお八つ水羊羹              須藤 光迷

祭衆どつと乗り込む銀座線              玉田春陽子

富士見える駅のホームの夏燕             徳永 木葉

《参加者》【出席13人】今泉而云、大澤水牛、金田青水、須藤光迷、高井百子、田中白山、谷川水馬、玉田春陽子、堤てる夫、中村迷哲、廣田可升、前島幻水、向井愉里。【投句参加5人】嵐田双歩、池内的中、澤井二堂、徳永木葉、星川水兎、山口斗詩子。

(報告・谷川水馬)

 

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日経俳句会第219回例会

最高11点に迷哲句、二席9点は双歩句

40人参加、最多120句の投句

日経俳句会は令和5年の5月例会(通算219回)を5月17日(水)に鎌倉橋の日経広告研究所会議室で開いた。兼題は「夏の月」と「新樹」。40人から120句の投句があり、新入会員の増加を映し、3句投句となってから最多の投句数となった。季節の変わり目で体調を崩す人もいて、句会出席は13人と少なめだったが、真夏日となった陽気に負けず、熱のこもったやりとりが展開された。選句6句(欠席は5句)の結果、中村迷哲さんの「気に染まぬ見合い蹴とばし夏に入る」が11点を獲得し一席を占めた。二席には嵐田双歩さんの「もらい湯は五右衛門風呂や月涼し」が9点で続き、三席8点は向井愉里さんの「手術日の決まり新樹を見上げをり」と中沢豆乳さんの「父に似た羅漢探せば青もみじ」が並んだ。そのほか7点1句、6点1句、5点6句、4点3句、3点11句と高点句が多かった。2点は22句、1点30句だった。兼題別の高点句(3点以上)は以下の通り。

「夏の月」

もらい湯は五右衛門風呂や月涼し           嵐田 双歩

呼び合うやスカイツリーと夏の月           須藤 光迷

谷埋めるテントの影や夏の月             中村 迷哲

夏の月目の高さにて坂の道              鈴木 雀久

縁側にごろり仰向け月涼し              岩田 三代

夏の月毎度の嘘はお見通し              杉山 三薬

同窓会話は尽きず夏の月               高井 百子

潮騒と島の灯りと夏の月               星川 水兎

「新樹」

手術日の決まり新樹を見上げをり           向井 愉里

新樹光窓辺に苺ジャムの瓶              嵐田 双歩

新樹晴十勝連峰まだ白き               廣上 正市

流鏑馬や新樹の杜に響きあり             溝口戸無広

抱きつきぬ新樹欅の太っ腹              大澤 水牛

それぞれの新樹それぞれ色香あり           金田 青水

口開けて高枝鋏新樹光                谷川 水馬

行く人の深く息する新樹かな             向井 愉里

当季雑詠

気に染まぬ見合い蹴とばし夏に入る          中村 迷哲

父に似た羅漢探せば青もみじ             中沢 豆乳

友達が出来たと吾子の五月かな            嵐田 双歩

睡蓮をがばと掻き分け主の鯉             大澤 水牛

大ぶりも小ぶりも細し薔薇の首            中嶋 阿猿

母の日に娘三人集まれり               旙山 芳之

夏雲の湧いて頼もし大銀杏              今泉 而云

何処よりみずすましきて池の澄む           野田 冷峰

山巓へ続く寺領や竹の秋               廣上 正市

水鏡代田に浮かぶ駅一つ               溝口戸無広

《参加者》【出席13人】嵐田双歩、今泉而云、岩田三代、植村方円、大澤水牛、金田青水、篠田朗、杉山三薬、鈴木雀九、中沢豆乳、中村迷哲、星川水兎、向井愉里。【投句参加27人】池村実千代、伊藤健史、大沢反平、岡田鷹洋、荻野雅史、加藤明生、工藤静舟、久保田操、斉藤早苗、澤井二堂、須藤光迷、高井百子、髙石昌魚、高橋ヲブラダ、谷川水馬、堤てる夫、徳永木葉、中嶋阿猿、中野枕流、野田冷峰、流合水澄、旙山芳之、廣上正市、藤野十三妹、溝口戸無広、水口弥生、横井定利。

(報告 中村迷哲)

 

 

 

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吟行報告 府中くらやみ祭見物と「しりとり連句」

日経俳句会と番町喜楽会合同の5月吟行は「こどもの日」の5月5日、府中に古くから伝わる祭祀、大國魂神社例祭「くらやみ祭」を見物がてら、昼間は「府中の森博物館」を散策、明治天皇府中行幸行在所となった蔵屋敷で「しりとり連句」という珍しい催しに興じた。開催日が連休中ということもあって、旅行に出掛けたり孫のお相手をしたりで「残念ながら」という人が多かったのだが、それでも9人が参加、武蔵野の新緑の森に遊び、夜はテラス席に陣取って勇壮な夜祭を見物しながらワインを楽しんだ。正式な吟行句会は席題「子供の日あるいは子供」と「くらやみ祭」と「当季雑詠」の投句3句・選句5句のメール句会とした。その結果、吟行幹事杉山三薬さんの「連句詠む座敷に青い梅の風」が5点を得て一席となった。二席4点には田中白山さんの「はらわたに響く太鼓や神輿渡御」と中村迷哲さんの「半裸の子池にあふれる子供の日」が入った。参加者の代表作品は以下の通り。

提灯と人の触れ合ふ闇祭          今泉 而云

いなせやな祭太鼓に立つ男         岩田 三代

夜太鼓にスマホひしめく祭りかな      植村 方円

にぎやかに武蔵野黄菅こどもの日      大澤 水牛

豪農の土間にひんやり新樹光        金田 靑水

連句詠む座敷に青い梅の風         杉山 三薬

はらわたに響く太鼓や神輿渡御       田中 白山

連句巻く府中の森やこどもの日       谷川 水馬

半裸の子池にあふれる子供の日       中村 迷哲

(まとめ 大澤水牛・中村迷哲)

 

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酔吟会第162回例会

森下文化センターで13人が「蟇」「新茶」を詠み合う

双歩、可升さんの五点がトップ並立

酔吟会は5月13日(土)、令和5年3回目となる句会を江東区森下の「森下文化センター」で開いた。この日の出席は13人。時々雨がぱらつく日の午後、会場に迷った杉山三薬さんの到着を待って、持ち寄った作品を短冊に書くことから和気あいあいと始まった。例会の兼題は「蟇」と「新茶」、雑詠を含め1人5句、投句総数65句。選句6句で句会を進めた結果、最高は5点で、嵐田双歩さんの「戦争はテレビの中や新茶飲む」と廣田可升さんの「子も孫も去って新茶の夜静か」だった。続く4点句は可升さんの「蟇の鳴く村にコンビニ一号店」と杉山三薬さんの「夏半纏神田淺草隅田川」の2句が入った。3点句は、今泉而云さん、大澤水牛さん、須藤光迷さん、高井百子さん、玉田春陽子さん、それに高得点を制した可升さん、三薬さんの計7句だった。可升さんは投句した5句が「5点、4点、3点、2点、1点」というサイクルヒットを達成した。

会終了後には、午後2時から開店しているという森下交叉点近くの大衆居酒屋「きんちゃん屋森下店」に9名が集結し、今後の酔吟会の在り方、新企画などの俳句談義が楽しく繰り広げられ、午後6時すぎまで大いに盛り上がった。

兼題別の高得点句(3点以上)は以下の通り
「蟇」

蟇の鳴く村にコンビニ一号店        廣田 可升

蟇蛙真夜の環七渡り行く           今泉 而云

大海の海鼠を知るや蝦蟇           杉山 三薬

蟇出でて文句あるかの面構         玉田春陽子

「新茶」

戦争はテレビの中や新茶飲む       嵐田 双歩

子も孫も去って新茶の夜静か       廣田 可升

走り茶としわくちゃばばに差し出さる   大澤 水牛

粉を吹きし羊羹切って新茶かな        須藤 光迷

赤タスキの勧め上手や新茶買ふ        高井  百子

「当期雑詠」

夏半纏神田淺草隅田川             杉山 三薬

浜離宮池に海月の遊ぶ午後          廣田 可升

《出席者13名》嵐田双歩、今泉而云、大澤水牛、金田青水、杉山三薬、須藤光迷、高井百子、谷川水馬、玉田春陽子、徳永木葉、中村迷哲、廣田可升、向井愉里。

(まとめ 高井百子)

 

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番町喜楽会第205回例会

「冷奴」と「若葉」を17人で詠む

首位は水馬さん「つるりと冷奴」

番町喜楽会は令和5年5月例会(通算第205回)を8日に東京・九段下の千代田区生涯学習館で開催した。兼題は「冷奴」と「若葉」で、雑詠を含め投句5句、選句6句(欠席者は5句)で句会を進めた結果、首位は谷川水馬さんの「癌とりし喉につるりと冷奴」で6点、次点は玉田春陽子さんの「蔵一つ残す旧家や柿若葉」で5点、三席には大澤水牛さんの「蹴つまづく我を笑ふか踊子草」、徳永木葉さんの「難病の癒ゆる日ありや薄暑光」、廣田可升さんの「水打てば遠く豆腐の喇叭かな」、前島幻水さんの「若葉風スケートボードで塾通ひ」の4句が4点で並んだ。3点は8句にのぼった。兼題別の高点句(3点以上)は次の通り。

「冷奴」

癌とりし喉につるりと冷奴      谷川 水馬

冷奴女将に小さき依怙贔屓      玉田春陽子

懐も手間も端折って冷奴       山口斗詩子

「若葉」

蔵一つ残す旧家や柿若葉       玉田春陽子

若葉風スケートボードで塾通ひ    前島 幻水

日々に増え日々に濃くなる若葉かな  金田 青水

聖橋上に下にと若葉風        玉田春陽子

「当季雑詠」

蹴つまづく我を笑ふか踊子草     大澤 水牛

難病の癒ゆる日ありや薄暑光     徳永 木葉

水打てば遠く豆腐の喇叭かな     廣田 可升

風薫るマチスのダンス回り出す    須藤 光迷

山ひだの影移り行く春夕焼け     高井 百子

いいちこの瓶で生き過ぐ葱坊主    堤 てる夫

鯉幟あにおとうとの半世紀      堤 てる夫

<句会出席者13人>嵐田双歩、今泉而云、大澤水牛、金田青水、須藤光迷、高井百子、田中白山、谷川水馬、玉田春陽子、堤てる夫、中村迷哲、廣田可升、前島幻水。<投句参加者4人>澤井二堂、徳永木葉、向井愉里、山口斗詩子。 (報告 須藤光迷)

 

 

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