番町喜楽会第70回例会

番町喜楽会は7月2日(土)午後1時から、第70回例会を内神田・MIFビル会議室で開いた。梅雨明け宣言前というのに30度を超す真夏日だったが17人の会員が顔を揃えて大賑わい。出席者は井上啓一、今泉而雲、岩澤克恵、大澤水牛、笹本塘外、須藤光迷、高井百子、高瀬大虫、高橋楓子、谷川透、玉田春陽子、堤てる夫、徳永正裕、野見山恵子、前島巌水、三好六甫、山口詩朗の面々。野田冷峰、星川佳子が投句参加し、投句総数95句の句会となった。

兼題は「汗(あせ)」「万緑(ばんりょく)」で、投句は雑詠含め5句、選句6句で句会を行った。最高点は6点で山口詩朗さんの「紫陽花や男の嘘の生ぬるさ」一句のみ。次席は4点で、「三つ指をついて空みる青蛙 堤てる夫」「隣り合ふ汗の親しき屋台酒 野見山恵子」「蕎麦一枚喰ふて万緑信濃かな 詩朗」の3句。以下3点10句、2点13句、1点25句。3点以上の高点句は次の通り。

「汗」

隣り合ふ汗の親しき屋台酒          野見山恵子

欠伸する河馬の背中に赤き汗         谷川  透

うすき汗うかべて女将世辞ひとつ       玉田春陽子

「万緑」

万緑の一隅にあり文学館           今泉 而雲

万緑を重しと思ふ身の弱り          大澤 水牛

万緑や抱擁とかぬ道祖神           須藤 光迷

万緑ののしかかりくる夜の駅         星川 佳子

万緑やタトゥーの蝶も迷ひ込む        三好 六甫

「雑詠」

紫陽花や男の嘘の生ぬるさ          山口 詩朗

三つ指をついて空みる青蛙          堤 てる夫

蕎麦一枚喰ふて万緑信濃かな         山口 詩朗

夏帯を一呼吸してぎゆつと締め        岩澤 克恵

節電や答案用紙の汗のあと          高井 百子

神楽坂日傘の女ボンジュール         玉田春陽子

 

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日経俳句会23年上期合同句会

日経俳句会は6月15日(水)、平成23年度上期合同句会(通算12回)を開催した。日経本社が6月から節電のサマータイムに入ったため、夜間に本社ビルの会議室が使えず、会場を内神田・鎌倉橋交差点傍の日経第二別館に移して午後6時半に開会した。ところが20人余りで一杯になる部屋に、出席者が30人という超過密。「夏の月」「紫陽花」の兼題句と雑詠一句の計三句を事前投句、広上幹事が作成した選句表をもとに事前選句して送り返しておくという、メール活用の「日経俳句会方式」なので、なんとか無事に句会ができた。

今回は投句参加10人も含め合計117句が集まった。句会は幹事による得点発表で始まったが、加藤明男さんの「逆上がりくるりと回る夏の月」が最高の7点を獲得した。次席六点も1句で金田青水さんの「縄文の翡翠の遺跡夏の月」。以下5点が8句、4点12句、3点10句、2点17句、1点20句という結果だった。兼題別高点句(四点以上)は次の通り。

 

「夏の月」

逆上がりくるりと回る夏の月      加藤 明男

縄文の翡翠の遺跡夏の月        金田 青水

むら雲を一片曳きて夏の月       今村 聖子

抜き忘る草の高さよ夏の月       大澤 水牛

海亀の来るといふ浜夏の月       高瀬 大虫

夏の月ニコライ堂の白さかな      星川 佳子

潮入りの離宮に夏の月二つ       山口 詩朗

廃坑の煙突高し夏の月         大倉悌志郎

やうやくに夜の生まれぬ夏の月     大下 綾子

さまざまな寝相みてをり夏の月     須藤 光迷

夏の月バーボンロックのはぜる音    徳永 正裕

 

「紫陽花」

天地をつなぎて雨や濃紫陽花      大下 綾子

紫陽花や畦に胡坐の小昼どき      広上 正市

絵手紙に紫陽花の藍匂ひけり      大平 昭生

紫陽花や傘を広げて写さるる      植村 博明

紫陽花や薄化粧して昼の顔       直井  正

あぢさゐや母いま在らば白寿なる    吉野 光久

 

「雑詠」

守宮ゐてそのほかもゐて古家かな    広上 正市

梅雨晴間猫が腹見せ掻けといふ     大澤 水牛

生きてゐる今万緑の底にゐて      大沢 反平

ラムネ抜く昭和の遠音響きけり     加藤 明男

土用波地球の鼓動秘むうねり      佐々木 碩

 

<出席者> 嵐田啓明、池村実千代、井上庄一郎、今泉恂之介、大熊万歩、大倉悌志郎、大澤水牛、大沢反平、大下綾子、大平睦子、大平昭生、久保田操、小林啓子、佐々木碩、澤井二堂、杉山智宥、鈴木好夫、須藤光迷、高石昌魚、高瀬大虫、田中頼子、堤てる夫、徳永正裕、直井正、野田冷峰、広上正市、藤村詠悟、星川佳子、山口詩朗、横井定利

<投句参加> 今村聖子、植村博明、大石柏人、加藤明男、金田青水、高橋淳、深田森太郎、藤野十三妹、山田明美、吉野光久 (堤てる夫記)

 

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伊賀上野・室生寺吟行

日経俳句会は3年前から「奥の細道」を大垣から始める「逆回り奥の細道吟行」を続けている。この6月は山形県の立石寺を中心に回る予定だった。しかし3・11の大震災の影響で、仙台から入る旅はあれこれ支障を来す恐れがあるかも知れない。これは秋にずらし、今回は番外編として芭蕉の生地伊賀上野を訪ね、名張へ出て赤目四十八滝を眺め、山越えで奈良県宇陀へ抜け室生寺と大野寺磨崖仏を拝観しようということになった。

堤てる夫幹事がコース設定から赤目温泉の宿の手配など万遺漏無く整えてくれ、6月5、6日の一泊二日で快適な吟行ができた。参加者は嵐田啓明、今泉恂之介、大澤水牛、大下綾子、加藤明男、澤井二堂、須藤光迷、高瀬大虫、堤てる夫、徳永正裕、野田冷峰、広上正市、星川佳子、吉野光久(以上日経俳句会)に谷川透、玉田春陽子(以上番町喜楽会)を加えた16名。

帰京後、投句・選句5句のメール句会を行った。最高は五点で、「山椒魚石の顔して石の上 啓明」と「夜話の輪の静まりて河鹿鳴く 正裕」の二句。次席四点は「磨崖仏仰げば傾ぐ日傘かな 啓明」「滝しぶき赤目の牛の黒光り 啓明」「軒低き忍者の町や夏燕 明男」の3句だった。以下3点が8句、2点9句、1点17句と続いた。3点以上の高点句は以下の通り。

山椒魚石の顔して石の上     嵐田 啓明

夜話の輪の静まりて河鹿鳴く   徳永 正裕

軒低き忍者の町や夏燕      加藤 明男

滝しぶき赤目の牛の黒光り    嵐田 啓明

磨崖仏仰げば傾ぐ日傘かな    嵐田 啓明

沢蟹を噛むや命を論じつつ    今泉恂之介

立て膝の如意輪観音涼しげに   大澤 水牛

遠ざかりまた近づきぬ滝の音   大下 綾子

万緑に朱を差す女人高野かな   須藤 光迷

土芳居て碧梧桐居て青葉闇    堤 てる夫

夏の城こども忍者徘徊す     徳永 正裕

室生寺や小鉢数へる夏料理    広上 正市

滝つぼの上にぽっかり丸い空   吉野 光久

 

 

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番町喜楽会第69回例会

番町喜楽会の第69回例会が6月4日(土)午後1時から、内神田の日経第二別館で開かれた。今年は5月27日に関東地方が早々と梅雨入り、うっとうしい季節になったが、この日は幸いの梅雨晴れ。井上啓一、今泉而雲、大澤水牛、笹本塘外、須藤光迷、高瀬大虫、高橋楓子、谷川透、玉田春陽子、堤てる夫、前島厳水、三好六甫、星川佳子、山口詩朗の十四人が出席、高井百子、徳永正裕、野見山啓子が投句参加した。

この日の兼題は「更衣」と「十薬」、雑詠含め投句は5句、選句7句とし句会を行った。最高得点は5点で「やはらかくシャツも老いたり更衣 塘外」の1句しか出なかった。その代わりというか、4点が「更衣鏡に入りて二歩三歩 春陽子」「十薬の繁れる隣家との境 佳子」「十薬や想ひ出多き脛の傷 厳水」「校庭の今朝のまぶしさ更衣 正裕」の4句、続く3点が10句もひしめいた。以下2点が9句、1点が30句もあり、投句総数85句のうち55句に点が入るという乱戦状態を呈した。3点以上の高点句は次の通り。

「更衣」

やはらかくシャツも老いたり更衣   笹本 塘外

更衣鏡に入りて二歩三歩       玉田春陽子

校庭の今朝のまぶしさ更衣      徳永 正裕

甘縒りの絹ふはふはと更衣      野見山恵子

またも手の止まる形見や更衣     須藤 光迷

捨てやうか迷ひつしまふ衣替へ    高井 百子

元町の衣更へたり女学生       三好 六甫

「十薬」

十薬の繁れる隣家との境       星川 佳子

十薬や想ひ出多き脛の傷       前島 厳水

十薬の花ざかりなり引越しす     野見山恵子

どくだみの根方に古きインク瓶    今泉 而雲

十薬の一叢咲ける婆の庭       徳永 正裕

「雑詠」

新樹光五十年振りの校歌かな     三好 六甫

羽抜鶏今朝渾身の大卵        野見山恵子

扇風機客の話を散らしけり      玉田春陽子

 

 

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酔吟会92回例会

酔吟会の平成23年度第2回例会(通算92回)が5月21日午後1時から、鎌倉橋の日経第二別館会議室で開かれた。3月の予定だった今年第2回例会が東北大震災のために中止になり、四ヶ月ぶりに開かれた例会は真夏を思わせる絶好の日和であったが、都合のつかない人も多く、出席者は11人といささか少なかった。6人が欠席投句。やはりこ日も、東日本大震災の惨禍と見通しの立たない原発事故を詠み込んだ句が少なからずあった。

出席者は今泉恂之介、大石柏人、大澤水牛、大沢反平、大平昭生、片野涸魚、金指正風、堤てる夫、星川佳子、山口詩朗、吉野光久、投句参加は澤井二堂、田村舟平、徳永正裕、野田冷峰、原文鶴、藤村詠悟の各氏。

兼題は「五月」「と「空豆」。投句5句、選句8句で句会を行なった結果、最高点は5点で「五月憂し水棺といふ語に出会ふ 恂之介」の1句。次いで4点が2句、3点が9句、2点9句、1点30句だった。兼題別の三点以上獲得句は次の通り。

「五月」

五月憂し水棺といふ語に出会ふ         今泉恂之介

気がつけば蔭を歩いている五月         大平 昭生

引き入れて水音ゆたかに五月の田        大沢 反平

クレー展出でて五月の風の色          吉野 光久

「空豆」

空豆のサヤに親指姫眠る            星川 佳子

蚕豆や四十五年の二人旅            大沢 反平

空豆を剥くうち怒り収まりぬ          大平 昭生

福相の女将茹でたるはじき豆          堤 てる夫

空豆や屋台にこぼす嘘と愚痴          野田 冷峰

「雑詠」

古きもの生かしたくなる更衣          堤 てる夫

薔薇園の四方に仲良しゐたりけり        大沢 反平

夏雲や書を頼まれて「夢」と書く        大石 柏人

(吉野光久記)

 

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水木会第99回例会

水木会は5月18日(水)、日経本社7階会議室で、平成23年度第5回例会(通算99回)を開いた。「大震災」から早や二カ月を越えたが、巨大地震・津波の災害復旧の足取りは重く、福島原発の事故収束の道のりは遠い。この日の兼題「薄暑」「柏餅」で気分を切り替えたいというのが誰しもの思いなのだろう、出席者17人に投句参加者が12人、投句総数139句と大賑わいだった。
選句7句で句会を進めた結果、最高の6点は「葉を四ツに畳みし客や柏餅 光迷」の1句。次席は4点で、「薫風を押してよたよた都電来る 正裕」「旧道の青菜売場に柏餅 正市」「半袖の細き腕なり街薄暑 弥生」の3句だった。3点句は11句。以下、2点19句、一点29句だった。兼題別の高点句(3点以上)は次の通り。

「薄暑」
半袖の細き腕なり街薄暑         水口 弥生
節電の断り書きや駅薄暑         嵐田 啓明
古着屋は若者ばかり昼薄暑        植村 博明
妻病んで暗き薄暑の台所         大澤 水牛
夕薄暑青葡萄のやうな時         佐々木 碩
菜園の支柱揃ひし薄暑かな        広上 正市
黒髪の重くなりたる薄暑かな       星川 佳子
白塗りの舞妓のうなじ夕薄暑       吉野 光久
「柏餅」
葉を四ツに畳みし客や柏餅        須藤 光迷
旧道の青菜売場に柏餅          広上 正市
子供らはみな巣立ちたり柏餅       今泉恂之介
新しき稽古着おろす柏餅         大下 綾子
柏餅ふるさと会の誘ひ状         徳永 正裕
子のをらぬ夫婦の好きな柏餅       吉野 光久
「雑詠」
薫風を押してよたよた都電来る      徳永 正裕

<出席者> 池村実千代、今泉恂之介、植村博明、大熊万歩、大澤水牛、大平睦子、加藤明男、久保田操、小林啓子、高橋淳、堤てる夫、徳永正裕、広上正市、星川佳子、水口弥生、横井定利、吉野光久
<投句参加> 嵐田啓明、今村聖子、大下綾子、金田青水、佐々木碩、杉山智宥、須藤光迷、高石昌魚、深田森太郎、藤野十三妹、山口詩朗、山田明美
(堤てる夫記)

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第68回番町喜楽会

 5月7日(土)午後1時から東京・内神田の日経第二別館会議室で第68回番町喜楽会が行われた。合併や会員増で陣容を拡げてから二度目の例会は大盛況。出席者は今泉而雲、岩沢克恵、井上啓一、大澤水牛、笹本塘外、須藤光迷、高井百子、高瀬大虫、谷川透、玉田春陽子、堤てる夫、徳永正裕、野見山恵子、前島巌水、三好六甫、星川佳子、山口詩朗の17人。2か月余りの入院生活から復帰した詩朗さんが元気な姿を見せて挨拶、盛んな拍手を浴びた。野田冷峰が投句参加、投句総数は89句に上った。
 この日の兼題は「初夏」と「蛇」で、投句5句、選句6句で句会を進めた結果、最高は5点で「焙じ茶のとまどふ熱さ夏初め 正裕」の1句。次席4点は「点滴のなき初夏の日を横たはり 詩朗」で、挨拶の時を上回る拍手で沸いた。以下、3点8句、2点19句、1点31句。3点以上獲得句は次の通り。(堤てる夫記)

「初夏」
  焙じ茶のとまどふ熱さ夏初め        徳永 正裕
  点滴のなき初夏の日を横たはり       山口 詩朗
  散髪しもう一巡り初夏の町         笹本 塘外
  初夏や的射る少女白襷           玉田春陽子
  初夏やボクシングジム開け放つ       野見山恵子
「蛇」
  ばさと落ちしばしのの字の烏蛇       谷川  透
  考へるロダンの像や蛇の首         野田 冷峰
  朽ち枝と見ればくちなは動きけり      前島 巌水
「雑詠」
  ジャンパーの天皇おはす五月かな      今泉 而雲
  去りてすぐ戻るや仔馬朝の牧        井上 啓一

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英尾先生墓参・桜吟行

 村田英尾先生の墓参を兼ねて多摩森林科学園で桜狩する日経俳句会恒例の吟行が4月16日(土)に行われた。参加したのは大澤水牛幹事長、嵐田啓明、今泉恂之介、大下綾子、杉山智宥、鈴木好夫、須藤光迷、堤てる夫、徳永正裕、星川佳子に特別参加の鈴木夫人玲子さんの11人。雨天かもという前日までの予報が良い方に外れ、午前十時集合のJR中央線高尾駅北口は、中高年のハイカー達で大賑わい。英尾先生の眠る都立八王子霊園へは駅前からバスで数分の距離である。
 英尾先生が亡くなったのは平成17年3月2日で、今年が七回忌。ひと月余り遅れての墓参だったが、大澤さん、嵐田さんの先導で般若心経を全員で唱和しご冥福を祈った。昨年までは僧籍を持つ田中頼子さんが無量誦経を読むのが恒例。しかし今年は田中さんが仙台方面へ被災地救援のボランティア活動に参加したため、俄か導師の登場となった。
 多摩森林科学園の桜は一重桜が満開、八重桜も盛りを迎える絶好のタイミング。多くの花見客が詰めかけ、上りの急な「夫婦坂」では数珠つなぎになって渋滞するほどだった。汗ばむ陽気の中、谷間の桜を見下ろす高台のベンチでお昼の弁当。おかずや飲み物を分け合ったりのひと時、時間がゆっくり流れる。
 吟行を締めくくる句会は今回もメール句会として高尾駅前で解散、三々五々帰途についたが、半数ほどが駅前蕎麦屋に立ち寄った。二軒あって片方は満員、もう一軒の店構えはずっと立派だががらがらの方に入る。ちょっと悪い予感がしたが、案の定、めぼしい肴は何もない。その上、この暑さなのに冷たい蕎麦が無くて「全部温かいつゆ蕎麦」というまことに奇妙な蕎麦屋であった。
 メール句会には、別の日に桜保存林に行った澤井二堂さんが加わり、11人から合計35句が寄せられた。5句選句の結果、啓明さんの「花筵男も似合ふ横座り」が6点を集め最高。次いで5点は3句あり、水牛さんの「飴玉といふ名の桜見つけたり」と、正裕さんの「春風に供花のかたち定まらず」「花一片受けんとかざす酒杯かな」。4点は「桜満つ読経こころを一つにし てる夫」、3点「花びらをのせて静まる墓石かな 佳子」と続いた。(堤てる夫記)

 英尾先生墓参・桜吟行参加者の人気作品
  花筵男も似合ふ横座り      嵐田 啓明
  鶯に不意を衝かれし山路かな   今泉恂之介
  飴玉といふ名の桜見つけたり   大澤 水牛
  すいてをるそば屋に入る春の昼  大下 綾子
  同じ花今年見る人異なりて    澤井 二堂
  真似て読む般若心経花墓参    杉山 智宥
  先生はここにおはすか花のもと  鈴木 好夫
  東屋でひとり花見る男かな    須藤 光迷
  桜満つ読経こころを一つにし   堤 てる夫
  花一片受けんとかざす酒杯かな  徳永 正裕
  花びらをのせて静まる墓石かな  星川 佳子

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水木会第98回例会

 4月20日(水)午後6時半から日経本社七階会議室で、平成23年度第4回例会(通算98回)が開かれた。三月例会が「大震災」の影響でメール句会に切り替えられたため、会員にとっては二カ月ぶりの顔合わせ。死者一万四千人余、行方不明一万三千三百人余を数え、東電福島原発の損壊対応なお定まらずとあって、何か気持ちの弾まない気分の中での句会であった。出席者は15人、投句参加は11人、投句総数は122句だった。
 兼題は「春眠」「竹の秋」で、8句選句で句会を進めた結果、最高は4点で1句のみ、次いで3点が11句。以下2点19句、1点41句とかなりばらけた。最高の4点句「たんぽぽや転校すると告げられし」は星川佳子さんの作。星川さん、3点句にも「パンダ舎に歓声戻り竹の秋」「チョコレートとろとろ春の眠りかな」の2句が入ってまさに星川デー。嵐田啓明さんも「竹の秋街道筋は土煙」「北向いて北向いて咲く辛夷かな」の2句で3点を集めた。
 兼題別の高点句(3点以上)は次の通り。

「春眠」
  春眠や町内会長卒業す             大澤 水牛
  春眠や夢を重ねて枕皺             広上 正市
  チョコレートとろとろ春の眠りかな       星川 佳子
  不惑なるむすめ生家に春眠す          吉野 光久

「竹の秋」
  竹の秋街道筋は土煙              嵐田 啓明
  わが祖国問われし未来竹の秋          池村実千代
  パンダ舎に歓声戻り竹の秋           星川 佳子
  立ち寄りし書店の暗さ竹の秋          横井 定利

「雑詠」
  たんぽぽや転校すると告げられし        星川 佳子
  北向いて北向いて咲く辛夷かな         嵐田 啓明
  春のなゐ湯船にすがりやり過ごす        金田 青水
  鎮まるを花に祈りし余震かな          久保田 操

<出席者> 嵐田啓明、池村実千代、今泉恂之介、今村聖子、植村博明、大熊万歩、大澤水牛、大平睦子、小林啓子、杉山智宥、田中明美、堤てる夫、徳永正裕、広上正市、星川佳子
<投句参加> 大下綾子、加藤明男、金田青水、久保田操、佐々木碩、高石昌魚、高橋淳、藤野十三妹、水口弥生、横井定利、吉野光久
                            (堤てる夫記)

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銀鴎会第77回例会

4月13日(水)午後六時半から東京・大手町の日経ビルで第77回銀鴎会例会が開かれた。東日本大震災から既に一ヶ月以上経過したが、被災地の瓦礫の片付けは進まず、まだ1万5千人以上の行方不明者が残されている。東電福島原子力発電所の事故処理は一向に進展せず不安を掻き立てている。震度6、5といった余震が相次ぎ、東京でもかなりの揺れを感じて電車が一時停止するなど、大震災の余波は治まらない。

そうした中での句会だったが、井上庄一郎、今泉恂之介、大倉悌志郎、大澤水牛、大沢反平、佐々木碩、澤井二堂、鈴木好夫、須藤光迷、高瀬大虫、直井正、広上正市の十三名が出席、金田青水、田中頼子、藤野十三妹、吉野光久の四名が投句参加した。

この日の兼題は「朧」と「木の芽和」。投句五句、選句七句で句会を行った結果、最高点は六点で「修羅の春岬に立てば海まろし 光久」の一句。五点句がなく、四点が「消えし街静かに照らす朧月 庄一郎」「ありのまま生きて夕餉の木の芽和 十三妹」「まず含む辛口の酒木の芽和 碩」「思ひがけぬ人の便りやなゐの春 光久」の四句出た。次いで三点が八句、二点十句、一点二十二句と続いた。兼題別の三点以上獲得句は以下の通り。

 

「朧」

消えし街静かに照らす朧月     井上庄一郎

朧夜や廃墟の街を隠すごと     井上庄一郎

 

「木の芽和」

木の芽和遠嶺は白き能登の町    大倉悌志郎

ありのまま生きて夕餉の木の芽和  藤野十三妹

まず含む辛口の酒木の芽和     佐々木 碩

幼名で呼び合ふ友の木の芽和    吉野 光久

木の芽あへ眼耳鼻舌の和音かな   澤井 二堂

八戸の烏賊ありがたく木の芽和   金田 青水

熱燗に木の芽田楽峠茶屋      井上庄一郎

 

「雑詠」

修羅の春岬に立てば海まろし    吉野 光久

思ひがけぬ人の便りやなゐの春   吉野 光久

啓蟄や扉全開理髪店        佐々木 碩

津波あと小学校の桜かな      田中 頼子

 

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