番町喜楽会第211回例会

17人参加「そぞろ寒」と「鴨」を詠む

番町喜楽会は令和5年11月例会(通算第211回)を6日午後6時半から東京・九段下の千代田区生涯学習館で開催した。兼題は「そぞろ寒」と「鴨」、雑詠を含め投句5句、選句6句(欠席者は5句)で句会を進めた結果、玉田春陽子さんの「今朝の冬顔を小さく洗いけり」が7点で首位を独走、6点と5点はなく、次点に中村迷哲さんの4点句「落日の一湾埋める浮寝鴨」が入り、三席に3点の9句が並ぶという、すさまじく票が分かれた結果となった。実力伯仲というべきか、団栗の背比べというべきか。兼題別の高点句(3点以上)は次の通り。

「そぞろ寒」

寝過ごして知らない駅やそぞろ寒   嵐田 双歩

そぞろ寒診察待ちの顔と顔      大澤 水牛

モニターに映る頚椎そぞろ寒     廣田 可升

「鴨」

落日の一湾埋める浮寝鴨       中村 迷哲

徐ろに鴨寄って来て引き返す     嵐田 双歩

鴨一家かかあ天下であるらしき    須藤 光迷

「当季雑詠」

今朝の冬顔を小さく洗いけり     玉田春陽子

秋袷鏡の中に九十九髪        高井 百子

処理水の騒ぎは知らぬ海鼠かな    徳永 木葉

雑踏に在りてアジアの秋思かな    廣田 可升

連山のくっきり見えて栗御飯     星川 水兎

【参加者】(出席13人)池内的中、大澤水牛、金田青水、須藤光迷、高井百子、田中白山、玉田春陽子、堤てる夫、中村迷哲、廣田可升、星川水兎、前島幻水、向井愉里、(投句参加4人)嵐田双歩、澤井二堂、谷川水馬、徳永木葉。

(報告 須藤光迷)

 

 

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多治見・馬籠・妻籠宿吟行を催行

 

日経俳句会、番町喜楽会合同の一泊吟行を、10月29、30の両日、陶器の町多治見と、中山道の妻籠、馬籠宿で行った。参加者は大澤水牛、堤てる夫、高井百子、金田青水、須藤光迷、嵐田双歩、植村方円、向井愉里、杉山三薬(幹事)の9人。

初日29日土曜日は、織部や志野の名で知られる陶器の里、岐阜県多治見市を訪問。午後1時、中央線線多治見駅に集合。駅から「本町オリベストリート」を目指して歩き始める。そこは、明治から昭和にかけて、美濃焼の卸問屋が軒を並べて栄えた多治見本町の中心部。その景観を残しつつ、新しい施設を整備して、同市が観光の目玉とした場所。快晴、爽やかな風の中、のんびり気分のメンバーは、それぞれ見繕って陶器店に入り、土産になる器などを選んだ。陶器店の他目立つのは、陶器成金とおぼしき豪邸やお洒落な建物。表札には加藤、古田の文字が目立つ。陶祖加藤景光に始まり、古田織部、そして現代の加藤唐九郎と素人でも知っている美濃焼、織部焼にかかわる著名人を偲ばせる。なんと交番も壁面格子の、レストラン風構え(格子は刑務所だろうに)。メイン通りから少しはずれた所には、明治大正とおぼしき建物が随所に見られる。今も営業している料亭の豪壮な造りは、美濃豪商の栄華を物語る。

しかし、パンフレットの謳い文句ほどには、見ものの種類は多くない。3時過ぎ、スマホ地図を駆使する愉里さんに率いられた6人が「陶祖景光の碑と陶器商人の元締め加藤助三郎顕彰碑」の探索に向かう。ちょっと高台、街並みを一望できる場所にそれはあった。町中を離れたせいか、水牛さんも「これで吟行気分が高まった」。一同、足元に草むらの種、ヒッツキ虫(草虱)を纏わらせて戻る。これが、また取るのに一苦労の難物。いい暇つぶしになったかも。町の中央に戻ると、てる夫さん百子さんが並んで、円形ベンチで待っていた。この風景どこかで見たことがある。そーだ。小津安二郎の「東京物語」笠智衆と東山千栄子の荒川堤の場面だ。いい味出してましたよ、ご両人。

それぞれの時間を過ごして午後5時。地元評判の蕎麦屋「井ざわ」で夕食。料理が織部と見られる器で出て来るのは、成程の演出だ。8時少し前に町外れにあるホテルに入る。風呂の後、まだ意気盛んな水牛さんの部屋に双歩、愉里、三薬が参内。10時ごろまで尻取り連句に興じた。かくして初日終了。

二日目。今日もいい天気。朝9時にタクシーでホテル出発、多治見駅から中央線特急で中津川に行き、地元の南木曽観光の貸切りバスに乗り、まず妻籠宿の最寄り駐車場に到着、一同9人、坂を登り旧中山道妻籠宿に足を踏み入れ、まず鯉岩という大きな石を見る。中山道三名石の一つとかでとにかくデカい。明治24年の濃尾大地震で形が変わってしまったなどの、解説が掲示されている。そこから南へ馬籠方向へブラリ歩き。月曜日とあって人通りも予想したほどではない。ただ、外人さんが多い。道の両側に建ち並ぶ旅籠屋は、旅行パンフレットなどでお馴染みのレトロ。てる夫さん「泊まってみたいなぁ」とポツリ。(実際泊まったら、反省するだろうな)。道がほぼ直角に曲がる、街道特有の桝形という空間などを訪ねて、来た道を引き返す。途中、蕎麦屋で全員昼食。バスに戻ってそこから馬籠宿へ飛ばしてもらう。林道をくねくね、紅葉はそう派手ではないが「木曽路は山の中」藤村の一文がよく分かる。

馬籠見晴らし台近くでバスを降り、馬籠道を藤村記念館方面へ歩く。こちらは、妻籠よりはるかに急な坂。観光客もずっと多い。しかも水牛さん言うところの、紅毛碧眼のなんと多いことよ。大型キャリーケース二個を押して急坂を登るタフガイには、だから大戦で負けた、と思わざるを得ない。地酒を売る店、せんべいやお焼きの店で足を休めつつ、ヤマト老人部隊は歩を進める。馬籠宿本陣の藤村記念館は、藤村幼少期の建物がそのまま残されている。明治日本の典型的エリートの出自を感じさせる。そこからさらに急坂を下り、バス通りへ。そこで我らの歩きは終了。一同、中津川に戻り解散、吟行句会は数日後、高井百子さんが取りまとめ役となり、選句選評をメールでやり取りする方式で行った。参加者の吟行代表句を吟行順序に従って並べよう。

美濃焼の集散の地や秋の風      須藤 光迷

東濃は歯医者も加藤冬近し      金田 靑水

秋うらら陶祖の碑からひっつき虫   向井 愉里

銀杏を踏みつつ探す陶祖の碑     嵐田 双歩

揺れ酷し美濃の特急秋吟行      高井 百子

天高し木曽路はすべて坂と石     杉山 三薬

秋深み妻籠の宿のすんき蕎麦     大澤 水牛

秋晴れや文豪生家の一本松      堤 てる夫

木守柿皆で見上げて木曽の中     植村 方円

(まとめ 杉山三薬・大澤水牛 23.11.12.記)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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日経俳句会第223回例会

36人が「蟋蟀」と「菊」を詠む

一席7点に「混浴」双歩句、二席は4句並ぶ

日経俳句会は10月18日(水)、内神田の日経広告研究所会議室で10月例会を開いた。少し前までの暑さが嘘のように急に秋らしい気配となったこの日、13人が出席、和やかな句会となった。兼題は「蟋蟀」と「菊」。36人から合計108句の投句があり、6句選(欠席5句)の結果、嵐田双歩さんの「混浴に先客一人ちちろ鳴く」が7点で一席、二席6点には溝口戸無広さんの「ちちろ虫瞬く星と呼び交はす」、高井百子さんの「庭の菊野菜と並ぶ直売所」、横井定利さんの「十月や布巾だけでも新しく」、双歩さんの「木犀の金銀の香を拾ひけり」の四句が並んだ。三席5点句は中野枕流さんの「闘蟋のどこか悲しき勝ち名乗り」など8句、4点が7句、3点13句、2点14句、1点27句だった。兼題別の高点句(3点以上)は以下の通り。

「蟋蟀」

混浴に先客一人ちちろ鳴く              嵐田 双歩

ちちろ虫瞬く星と呼び交はす             溝口戸無広

ひととせの束の間なるやちちろ鳴く          和泉田 守

ちちろ鳴くアニメ聖地の古社             徳永 木葉

闘蟋(とうしつ)のどこか悲しき勝ち名乗り      中野 枕流

こほろぎのぢぢいぢぢいと呼ぶ夜半          大澤 水牛

こほろぎの二尺跳んだり父の畑            伊藤 健史

ゴッホ展閉館告ぐるちちろかな            加藤 明生

ちちろ鳴く納屋の片隅隠れんぼ            中村 迷哲

縁側に大の字の父ちちろ鳴く             横井 定利

「菊」

庭の菊野菜と並ぶ直売所               高井 百子

とりどりの菊纏ひをり白虎隊             岩田 三代

酢の利いた黄とむらさきの菊膾            金田 青水

よしよしと猛暑越えたる菊手入れ           大澤 水牛

お別れの温顔に置く菊一輪              岡田 鷹洋

菊日和馬券舞ひ散る競馬場              加藤 明生

白菊の一輪ごとの別れかな              中沢 豆乳

白菊や母校の歴史刻みをり              池村実千代

菊一輪我も手向けん無縁仏              和泉田 守

引いてとく飴のつつみや菊日和            星川 水兎

当季雑詠

木犀の金銀の香を拾ひけり              嵐田 双歩

十月や布巾だけでも新しく              横井 定利

捨てられし田の畔染める曼珠沙華           岩田 三代

天高し少年少女鼓笛隊                加藤 明生

大根引く十坪だけの借り畑              徳永 木葉

跳ね回れやんちゃうれしや障子貼り          工藤 静舟

酒瓶に芒無造作縄のれん               中沢 豆乳

唐突に秋冷来たる三崎港               大沢 反平

コスモスや青空向いて大合唱             澤井 二堂

六畳間ドローンを飛ばす夜寒かな           鈴木 雀九

思い出す生きる喜び金木犀              旙山 芳之

金木犀やさしき心呼び覚ます             中嶋 阿猿

分きざみ夫婦生まれる秋うらら            中村 迷哲

《参加者》【出席13人】嵐田双歩、池村実千代、今泉而云、植村方円、大澤水牛、金田青水、篠田朗、杉山三薬、鈴木雀九、堤てる夫、中村迷哲、星川水兎、向井愉里。【投句参加23人】和泉田守、伊藤健史、岩田三代、大沢反平、岡田鷹洋、岡松卓也、加藤明生、工藤静舟、久保田操、澤井二堂、須藤光迷、高井百子、高橋ヲブラダ、谷川水馬、徳永木葉、中沢豆乳、中嶋阿猿、中野枕流、旙山芳之、廣上正市、藤野十三妹、溝口戸無広、横井定利。

(報告 嵐田双歩)

 

 

 

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番町喜楽会第210回例会

双歩句「洗濯機の団栗」がトップ10点

番町喜楽会は令和5年10月例会(通算210回)を10月7日、東京・九段下の千代田区生涯学習館で開催した。投句者17人、句会出席は10人。兼題は「天高し」と「団栗」。選句6句(欠席者は5句)で句会を進めた結果、嵐田双歩さんの「団栗も一緒に回る洗濯機」が10点で一席を飾った。二席には谷川水馬さんの7点句「秋夕焼畳むタオルの陽の匂ひ」。三席には谷川さんの「握りしめ温きどんぐり子の土産」と中村迷哲さんの「野仏を飾るかんざし赤蜻蛉」の5点句が入った。以下、4点が4句、3点6句、2点9句、1点16句という結果であった。兼題別の高点句(3点以上)は次の通り。

「天高し」

さきたまに群なす古墳天高し            廣田 可升

天高し身を反らし見る摩崖仏            星川 水兎

乳牛のモンローウォーク天高し           玉田春陽子

天高し龍勢の火矢峰を越え             徳永 木葉

天高しドロップゴール成功す            前島 幻水

「団栗」

団栗も一緒に回る洗濯機              嵐田 双歩

握りしめ温きどんぐり子の土産           谷川 水馬

どんぐりの転がる帰路のリアシート         廣田 可升

団栗や園児のポッケ膨らみて            向井 愉里

「雑詠」

秋夕焼畳むタオルの陽の匂ひ            谷川 水馬

野仏を飾るかんざし赤蜻蛉             中村 迷哲

名月の町を眼下に最終便              須藤 光迷

両手添え受ける新米一膳目             玉田春陽子

十八年ぶりの号外星月夜              廣田 可升

≪参加者≫【出席10人】大澤水牛、金田青水、須藤光迷、高井百子、田中白山、谷川水馬、玉田春陽子、堤てる夫、中村迷哲、廣田可升。【投句参加7人】嵐田双歩、池内的中、澤井二堂、徳永木葉、星川水兎、前島幻水、向井愉里。

(報告・谷川水馬)

 

 

 

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日経俳句会第222回例会

最高8点に双歩句「虫時雨」

36人が「露」「蜩」を詠む

日経俳句会は令和5年9月例会(通算222回)を9月20日(水)に鎌倉橋の日経広告研究所会議室で開いた。兼題は「露」と「蜩」で、36人から117句の投句があった。ゲリラ豪雨が首都圏を通り抜け、残暑が一服したこの日は12人が顔をそろえ、秋の句を縦横に論じた。選句6句(欠席は5句)で句会を進めた結果、嵐田双歩さんの「なんやかやいふてるらしき虫時雨」が8点を獲得、一席となった。二席は堤てる夫さんの「露しとど重たきラフの二打三打」と            須藤光迷さんの「蜩の絶えて瀬音のよみがえり」が7点で並び、三席6点には中村迷哲さんの「かなかなの勤行に和す山の寺」が入った。5点は4句、4点8句、3点6句、2点25句、1点29句だった。兼題別の高点句(3点以上)は以下の通り。

「露」

露しとど重たきラフの二打三打            堤 てる夫

木道に貂の足あと露葎                星川 水兎

朝露や光と陰の石畳                 加藤 明生

朝消える露に万華の光あり              野田 冷峰

木々の露降らせるリスの鬼ごっこ           中沢 豆乳

露けしや木道の先山けぶる              中嶋 阿猿

「蜩」

蜩の絶えて瀬音のよみがえり             須藤 光迷

かなかなの勤行に和す山の寺             中村 迷哲

カナカナのカで尻切れとなりにけり          今泉 而云

蜩を逆さから聞く股覗き               岡松 卓也

蜩や石抱き眠る味噌の樽               徳永 木葉

雨やみて蜩の声米を研ぐ               中野 枕流

蜩や瞼に遠く祖母の家                溝口戸無広

蜩に打たれる丘や無言館               堤 てる夫

「当季雑詠」

なんやかやいふてるらしき虫時雨           嵐田 双歩

硝子戸に老け顔映る夜長かな             中野 枕流

秋刀魚くう妻子に腸(わた)を貰いうけ         須藤 光迷

銀河濃し万年前の光降る               旙山 芳之

天北へ道はまつすぐ蕎麦の花             廣上 正市

夜食粥病の兄の残る日々               岡田 鷹洋

沖を見る沖より秋が来るやうな            金田 青水

栗の実の屋根打つ朝やずる休み            高井 百子

《参加者》【出席12人】池村実千代、今泉而云、大澤水牛、岡田鷹洋、金田青水、篠田朗、杉山三薬、鈴木雀九、堤てる夫、中野枕流、中村迷哲、星川水兎。【投句参加24人】嵐田双歩、和泉田守、伊藤健史、岩田三代、植村方円、大沢反平、岡松卓也、加藤明生、工藤静舟、久保田操、澤井二堂、須藤光迷、高井百子、高橋ヲブラダ、谷川水馬、徳永木葉、中沢豆乳、中嶋阿猿、野田冷峰、旙山芳之、廣上正市、溝口戸無広、向井愉里、横井定利。 (報告 中村迷哲)

 

 

 

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酔吟会第164回例会

深川芭蕉記念館で、兼題「秋の日」・席題「つまのこゑ」

光迷さん天・地・人獲得の絶好調

酔吟会は9月9日(土)、令和5年第5回例会を深川の「芭蕉記念館」で開いた。今回が席題と特選句を指定する新趣向句会の二回目。席題は金田青水さん提示の「つまのこゑ」、兼題は「秋の日」。参加者は席題句、兼題句、雑詠句合せて5句を投句。選句は、その日一番だと思う句を「特選句(3点)」として加え、計6句選とした。

前日の台風の影響か参加者が8名と少なかったが、会場の黒板に「席題『つまのこゑ』(あるいは妻、夫)」が張り出されると、配られた短冊に、即興で作った席題句、持ち寄った自句を書き込み、午後1時20分に句会開始。投句合計40句で選句を進めた結果、最高8点の「天」には、須藤光迷さんの「虫の音を全て消したる妻の声」と谷川水馬さんの「秋の日や塩飴残るガラス壜」の2句が並んだ。次点の「地」は5点句で同じく光迷さんの「海へ入る秋の日追って北陸線」、玉田春陽子さんの「妻の肩揉んで凡夫の夜長かな」、廣田可升さんの「だんじりの駈けるご城下鰯雲」の3句。「人」の4点句は、春陽子さんの「秋の日やカフェで手紙を書く女」、光迷さんの「秋麗スマホに植物図鑑入れ」で、光迷さんは、「天・地・人」をすべて獲得するだけでなく、投句すべてに得点する大漁節。以下、3点は2句、2点5句、1点9句だった。次回の「席題」選定者は、くじ引きの結果須藤光迷さんに決まり、句会は午後4時に幕。3点句以上の高得点句と作者は以下の通り。

「秋の日」

秋の日や塩飴残るガラス壜        谷川 水馬

秋の日やカフェで手紙を書く女      玉田春陽子

「つまのこゑ」(妻、夫)

虫の音を全て消したる妻の声       須藤 光迷

妻の肩揉んで凡夫の夜長かな       玉田春陽子

「当季雑詠」

海へ入る秋の日追って北陸線       須藤 光迷

だんじりの駈けるご城下鰯雲       廣田 可升

秋麗スマホに植物図鑑入れ        須藤 光迷

一山は二人に多し鰯割く         須藤 光迷

野葡萄のアールヌーボー鉄柵に      高井 百子

【出席者8名】大澤水牛、岡田鷹洋、金田青水、須藤光迷、高井百子、谷川水馬、玉田春陽子、廣田可升。 (まとめ 高井百子)

 

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番町喜楽会第209回例会

15人が「秋風」「案山子」を詠む

双歩句「虫時雨」が5点で首位

番町喜楽会は令和5年9月例会(通算209回)を4日午後6時半から東京・九段下の千代田区生涯学習館で開催した。兼題は「秋風」と「案山子」で、雑詠を含め投句5句、選句6句(欠席者は5句選)の結果、首位は嵐田双歩さんの「雨風の去ってにはかに虫時雨」で5点、次点には大澤水牛さんの「秋の蚊の待ち伏せしをる勝手口」と高井百子さんの「十勇士案山子になりて田を見張る」、谷川水馬さんの「秋の風大江戸線の深きから」の4点3句が並んだ。3点は8句だった。兼題別の高点句(3点以上)は次の通り。

「秋風」

秋の風大江戸線の深きから        谷川 水馬

秋風や弦音残して的射貫く        池内 的中

和菓子屋の無き町となり秋の風      須藤 光迷

秋風や墓碑に真白の新法名        堤 てる夫

迷いなき円空の鉈秋の風         中村 迷哲

「案山子」

十勇士案山子になりて田を見張る     高井 百子

捨案山子薬散布のドローン飛ぶ      堤 てる夫

「雑詠」

雨風の去ってにはかに虫時雨       嵐田 双歩

秋の蚊の待ち伏せしをる勝手口      大澤 水牛

最初はグー秋果を前に三姉弟       須藤 光迷

火の山を覆いて余る秋の雲        玉田春陽子

耳奥の終戦放送走馬灯          前島 幻水

《句会出席者11人》大澤水牛、金田青水、須藤光迷、高井百子、田中白山、玉田春陽子、堤てる夫、中村迷哲、廣田可升、星川水兎、前島幻水。《投句参加者4人》嵐田双歩、池内的中、谷川水馬、徳永木葉。 (報告 須藤光迷)

 

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日経俳句会第221回例会

最高9点に木葉句「百日紅」

厳しい残暑の中、「秋」と「桃の実」を詠む

日経俳句会は令和5年8月例会(通算221回)を8月16日(水)に鎌倉橋の日経広告研究所会議室で開いた。秋とはいえ「油照」のこの日、連日の暑さで体調を崩す人が続出し、出席者は11人にとどまった。

兼題は「秋」と「桃の実」で、36人から108句の投句があった。今年は異常な暑さの中、三秋の大きな季語「秋」を読むのに苦労したようだ。6句選(欠席は5句)の結果、徳永木葉さんの「地に落ちて星屑となる百日紅」が9点で一席。次いで、廣上正市さんの「三食をまかなふ日々のままに秋」が8点で二席、三席には星川水兎さんの「湯上がりの首筋の風秋ひとつ」、中野枕流さんの「籠の桃目だけで探る熟れ具合」、中村迷哲さんの「セシウムを測る山野や桃実る」が6点で並んだ。以下、5点1句、4点14句、3点8句、2点17句、1点27句で、4点句続出が今回の特徴だった。

なおこの日の句会では、日経新聞社の採用サイトに掲載するための句会風景写真を撮った。総務局では日経で働くイメージを就活生に伝えることを狙いに採用ツイッター(現在はX)を運用している。社員の交流の場としてサークルも紹介されており、日経俳句会も取り上げたいと要請があり、この日の撮影となったもの。嵐田カメラマンが和気あいあいとした句会の雰囲気を捉えた写真を撮影した。8月20日過ぎには掲載されるので、ツイッターをお使いの方はアクセスしてみて欲しい。

この日の兼題別の高点句(三点以上)は以下の通り。

「秋」

三食をまかなふ日々のままに秋            廣上 正市

湯上がりの首筋の風秋ひとつ             星川 水兎

秋なのだ秋なんだぞと云ひ聞かせ           大澤 水牛

色抜けし花あぢさゐの揺れる秋            金田 青水

夕暮れの余熱の中に秋の風              篠田  朗

こんなにも待ち遠しきは秋の風            旙山 芳之

しわしわの手にもエチュード秋の夜          池村実千代

秋立つや昨日と違ふ今日の風             加藤 明生

朝の陽の畳に届き秋に入る              高井 百子

秋の空鳶颯爽と三方五湖               谷川 水馬

伏せられて厨に秋の魔法瓶              徳永 木葉

「桃の実」

籠の桃目だけで探る熟れ具合             中野 枕流

セシウムを測る山野や桃実る             中村 迷哲

ちょこなんと祖母似の桃を仏前に           谷川 水馬

親の家売りに出す夜や桃二つ             中嶋 阿猿

桃の香を解き放ちける宅急便             斉藤 早苗

当季雑詠

地に落ちて星屑となる百日紅             徳永 木葉

原爆忌白磁茶碗に白湯満たし             嵐田 双歩

語り部のまた一人逝き原爆忌             岩田 三代

落としたる葡萄ばらばら原爆忌            大澤 水牛

盆踊り玄人はだし外科院長              岡田 鷹洋

四十度焼かれた蝉の骸かな              篠田  朗

捨てられし絵筆の先は夏の色             高井 百子

群衆のやがて静まる大文字              高橋ヲブラダ

鳴き尽くし宙向く骸夏の果              中村 迷哲

新盆や天涯孤独の身となりぬ             藤野十三妹

環七の西日の側にバスを待つ             今泉 而云

武器輸出なんかしないで敗戦日            須藤 光迷

《参加者》【出席11人】嵐田双歩、池村実千代、今泉而云、大澤水牛、金田青水、篠田朗、鈴木雀九、中沢豆乳、中村迷哲、星川水兎、向井愉里。【投句参加25人】和泉田守、岩田三代、植村方円、岡田鷹洋、加藤明生、工藤静舟、久保田操、斉藤早苗、澤井二堂、杉山三薬、須藤光迷、高井百子、高橋ヲブラダ、谷川水馬、堤てる夫、徳永木葉、中嶋阿猿、中野枕流、野田冷峰、旙山芳之、廣上正市、藤野十三妹、溝口戸無広、水口弥生、横井定利。

(報告 嵐田双歩)

 

 

 

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番町喜楽会第208回例会

Ⅰ8人参加「夏の果」「西瓜」を詠む

番町喜楽会は令和5年8月例会(通算第208回)を5日、東京・九段下の千代田区生涯学習館で開催した。18人から投句、出席は11人。兼題は「夏の果」と「西瓜」。選句6句(欠席者は5句)で句会を進めた結果、金田青水さんの「球場へ深々と礼夏の果」が5点で一席を飾った。二席には次の6句が続いた。

何とせう大玉西瓜届きけり        大澤 水牛

鈴生りの鬼灯のゆれ風の道        須藤 光迷

風呂敷の真結び固き大西瓜        谷川 水馬

夏の果蛇口の栓の故障札         玉田春陽子

夏の果家裁に入るベビーカー       玉田春陽子

夏終わる河原に子らの炊事あと      徳永 木葉

また、三席には須藤光迷さんの「原発に未練の紙面原爆忌」、高井百子さんの「炎帝や梅は種まで干されけり」、向井愉里さんの「君たちはどう生きるかと夏の果」、廣田可升さんの「下駄鳴らし毘沙門天へ初浴衣」の3点句が入った。以下、2点が16句、1点23句だった。兼題別の高点句(3点以上)は次の通り。

「夏の果」

球場へ深々と礼夏の果           金田 青水

夏の果蛇口の栓の故障札          玉田春陽子

夏の果家裁に入るベビーカー        玉田春陽子

夏終わる河原に子らの炊事あと       徳永 木葉

君たちはどう生きるかと夏の果       向井 愉里

「西瓜」

何とせう大玉西瓜届きけり         大澤 水牛

風呂敷の真結び固き大西瓜         谷川 水馬

「雑詠」

鈴生りの鬼灯のゆれ風の道         須藤 光迷

原発に未練の紙面原爆忌          須藤 光迷

炎帝や梅は種まで干されけり        高井 百子

下駄鳴らし毘沙門天へ初浴衣        廣田 可升

≪参加者≫【出席11人】大澤水牛、金田青水、須藤光迷、高井百子、田中白山、谷川水馬、玉田春陽子、堤てる夫、中村迷哲、廣田可升、向井愉里。【投句参加7人】嵐田双歩、池内的中、澤井二堂、徳永木葉、星川水兎、前島幻水、山口斗詩子。

(報告・谷川水馬)

 

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日経俳句会第220回例会

「大暑」と「月見草」を詠む

猛暑響き出席は8人どまり

日経俳句会は令和5年7月例会(通算220回)を7月19日(水)に鎌倉橋の日経広告研究所会議室で開いた。兼題は「大暑」と「月見草」で、39人から116句の投句があった。連日の猛暑とはやり病で体調を崩す人が多く、出席は8人にとどまったが、少人数だけに中身の濃い句評が展開された。欠席選句が29人と多かったため、出席者は7句選(欠席は5句)とした結果、嵐田双歩さんの「大男隣に座る大暑かな」が10点を獲得、堂々の一席となった。二席9点は中村迷哲さんの「夏雲や度胸試しの淵へ跳ぶ」と横井定利さんの「ワコールの水着をつけて八十歳」が分け合い、三席7点には中沢豆乳さんの「天神の絵馬かき鳴らす青嵐」が入った。6点句には大澤水牛さんの「これ以上ぬぐものの無き大暑かな」をはじめ5句が並んだ。以下5点3句、4点3句、3点13句、2点20句、1点30句で、兼題の「大暑」と雑詠に高点句が多かった。なお今月から日経の大阪勤務の社員岡松卓也さんが入会、投句と選句に加わっている。兼題別の高点句(3点以上)は以下の通り。

「大暑」

大男隣に座る大暑かな                嵐田 双歩

これ以上ぬぐものの無き大暑かな           大澤 水牛

老守衛袖もまくらぬ大暑かな             斉藤 早苗

交差点渡りたくない大暑かな             旙山 芳之

新宿に大暑乗っかり揺らぐビル            向井 愉里

飛行機の重たそうなる大暑の日            植村 方円

墨跳ばし大筆奮ふ女子大暑              高井 百子

一歩ずつ大暑を背負ふつづら道            溝口戸無広

大暑来る詰め放題の暑さ詰め             加藤 明生

黙々と大暑の朝の庭掃除               堤 てる夫

一木をおほひ尽せし葛大暑              廣上 正市

「月見草」

姿見の残れる宿や月見草               星川 水兎

ねえ今夜月見草見に行きませう            嵐田 双歩

月見草三線欲しき宵の口               溝口戸無広

またひとつ空き家増えたり月見草           和泉田 守

優しげな夜勤のナース月見草             中沢 豆乳

好きだった人と似ている月見草            旙山 芳之

当季雑詠

夏雲や度胸試しの淵へ跳ぶ              中村 迷哲

ワコールの水着をつけて八十歳            横井 定利

天神の絵馬かき鳴らす青嵐              中沢 豆乳

日傘持つ勇気が我に今一つ              旙山 芳之

孑孑の漢字覚えて甕覗く               今泉 而云

短夜や季題兼題夢の中                加藤 明生

夏涼し女人二人の甲州路               澤井 二堂

打ち水や直ちに乾く庭の石              篠田  朗

おずおずと茅の輪くぐるや異国びと          徳永 木葉

庭に摘む葱紫蘇茗荷冷奴               廣上 正市

よく来たな噺家も言ふ夏盛り             溝口戸無広

《参加者》【出席8人】植村方円、大澤水牛、金田青水、杉山三薬、鈴木雀九、堤てる夫、中村迷哲、向井愉里。【投句参加31人】嵐田双歩、池村実千代、和泉田守、伊藤健史、今泉而云、岩田三代、岡田鷹洋、岡松卓也、荻野雅史、加藤明生、工藤静舟、久保田操、斉藤早苗、澤井二堂、篠田朗、須藤光迷、高井百子、髙石昌魚、高橋ヲブラダ、谷川水馬、徳永木葉、中沢豆乳、中嶋阿猿、中野枕流、野田冷峰、旙山芳之、廣上正市、藤野十三妹、星川水兎、溝口戸無広、横井定利

(報告 中村迷哲)

 

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