番町喜楽会第126回例会

 

「春深し」と「燕」を詠む

星川さん、番喜会史上初の天地人独占

 

番町喜楽会の平成28年4月例会(通算126回)は、4月2日(土)午後6時から九段下の割烹「味さと」で、「春深し」と「燕」を兼題として行われた。

曇天で少し肌寒い一日ではあったが、昼間は千鳥ヶ淵などでお花見を楽しんだ人たちもいて、定刻には出席予定者13名が集まった。今回は欠席投句が多く井上、斉山、堤、星川、前島の五氏にのぼった。また斉山弥生さんが俳号を満智と定めての初投句となった。

投句5句、選句6句で句会を進めた結果、星川佳子さんの「春深しひっそり閑と父母の家」が六点を獲得して首位(天)。同じく星川さんの「燕ゆく卯建並びし宿場町」が5点で次席(地)を占め、さらに「頬杖で何やら言うて春深し」が4点の三席(人)となり、番町喜楽会句会史上初の天地人独占のグランドスラムを達成した。

また、三席4点句には徳永正裕さんの「石橋の反りやはらかに竹の秋」が入った。以下、3点句が7句、2点句が20句、1点句が24句という結果になった。

欠席投句を含め投句合計は90句だった。

兼題別の高点句(3点以上)は次の通り。

「春深し」

春深しひっそり閑と父母の家          星川 佳子

頬杖で何やら言うて春深し           星川 佳子

休耕田見守る羅漢春深し            谷川 水馬

春深し子らかしましき貸農園          谷川 水馬

春深し不意に鳴り出すオルゴール        嵐田 双歩

アオザイの裾風に揺れ春深し          野田 冷峰

「燕」

燕ゆく卯建並びし宿場町            星川 佳子

落ちるなよ命満杯つばめの巣          斉山 満智

「雑詠」

石橋の反りやはらかに竹の秋          徳永 正裕

鯛焼を供え彼岸を終えにけり          須藤 光迷

芽柳の水面華やぐ薄緑             山口斗詩子

 

〈参加者〉(出席十三名)嵐田双歩、今泉而雲、大澤水牛、須藤光迷、高井百子、高瀬大虫、田中白山、谷川水馬、玉田春陽子、徳永正裕、野田冷峰、廣田可升、山口斗詩子(投句参加五名)井上啓一、斉山満智、堤てる夫、星川佳子、前島厳水

(報告 谷川水馬)

 

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第41回三四郎句会

 

参加13人で「水温む」「雛祭」を詠む

 

三四郎句会の平成28年3月例会が17日午後1時半から東京・神田錦町の宗保第二ビル内で行われた。この日は急用、旅行などによる欠席者が増え、出席者は7人にとどまったが、6人から投句・選句があり、投句・選句参加者は13人となった。兼題は「水温む」と「雛祭」。

選句の結果、河村有弘さんの「うつろひを見た面差しや古ひいな」「嫁ぐ子へアルバム添えて納め雛」、岡本崇さんの「揚げ舟に木槌の音や水温む」の3句が最高点の4点に並んだ。続く3点には「退院の和らぐ海や水温む」(印南進)「息子泣く雛の祭のバースデー」(渡邉信)などの5句が続いた。

 

3点以上獲得した高点句は次の通り。

うつろひを見た面差しや古ひいな       河村 有弘

嫁ぐ子へアルバム添えて納め雛        河村 有弘

揚げ舟に木槌の音や水温む          岡本 崇

息子泣く雛の祭のバースデー         渡邉 信

退院の和らぐ海や水温む           印南 進

奥座敷ガラス戸越しの雛飾り         深瀬 久敬

池の鴨シンクロナイズド水温む        竹居 照芳

灯を消してのち秘めやかな雛の声       今泉 而云

(報告 今泉而云)

 

 

 

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六義園吟行を開催

 

名園の大辛夷、枝垂れ桜に酔う

 

日経俳句会・番町喜楽会は3月23日(水)の昼下がり、文京区本駒込の特別名勝「六義園」で、花見吟行を催した。参加者は大澤水牛、今泉而云両氏のほか嵐田双歩、大下綾子、岡田臣弘、久保田操、杉山智宥、須藤光迷、高井百子、谷川水馬、玉田春陽子、徳永正裕各氏に堤てる夫(吟行幹事)の13人。花曇りながら日差しにも恵まれる中、三分咲きの枝垂れ桜、満開の大辛夷を観賞、老中柳沢吉保が築造した約二万六千坪、回遊式築山泉水庭園を夕暮れ近くまで巡った。

夕食を兼ねた懇親会は徒歩圏にあるイタリア料理店。呑み放題のビール、ワインで喉を潤して2時間、冷たい夜風に酔いを醒ましながらそれぞれに帰途についた。六義園はこの日から夜間照明を点灯、夜桜を観に戻った熱心な人も数人いた。

吟行句会はメールで投句3〜5句、選句5句で行い「天=5点」「地=3点」「人=2点」「入選1点」で採点した。その結果、最高点は「天」を三つ集めた水牛さんの「百千の胡蝶吐き出す大辛夷」の18点。次席は智宥さんの「染井から一歩今年の花巡り」が16点。三席は而云さんの「曇りのち晴れて万余の花辛夷」が13点だった。吟行参加者の人気を集めた作品は以下の通り。

 

夜は夜の顔持つ枝垂れ桜かな     嵐田 双歩

いくたびの春ぞ躑躅の茶屋柱     今泉 而云

三分咲き糸桜良し燗の良し      大澤 水牛

没日中峠より見ゆ大辛夷       大下 綾子

夕桜百四の母へみせたやな      岡田 臣弘

行く鴨の名残を惜しむ水辺かな    久保田 操

名園の枝垂れ桜よ頭が高い      杉山 智宥

糸桜横目に酒徒と甘党と       須藤 光迷

三分咲き枝垂れ桜は絹の色      高井 百子

うらなりの辛夷一隅照らしをり    谷川 水馬

残りたる齢に沁みる花見かな     玉田春陽子

六義園茶室の縁に桜びと       堤 てる夫

ゲートルの女庭師や松の花      徳永 正裕

 

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日経俳句会第147回例会

 

「龍天に登る」と「田楽」を兼題に35人から171句

 

日経俳句会は3月16日(水)、千代田区内神田の日経広告研究所(MIFビル)会議室で三月例会(通算147回)を開いた。「龍天に登る」「田楽」という手の込んだ兼題にもかかわらず、35人の会員から171句の投句があり、活気溢れる会になった。当日の出席者は23人。

いつものように投句5句、選句7句(欠席者選句5句)で進め、最高点の7点は杉山宥智さんの「龍天に武州上州土埃」が選ばれた。続く6点句は加藤明男さんの「龍天に登るロックのコンサート」、金田青水さんの「登り来る龍に出遭ふや宇宙船」、星川佳子さんの「田楽やとぼけ上手になりし父」の3句。5点句も3句で、「重力波なるものの音龍天に」(中嶋阿猿さん)、「田楽の串振りかざす議論好き」(植村博明さん)、「やはらかな一雨去つて初桜」(嵐田双歩さん)。

4点句は9句あり、3点は15句 、2点は17句、1点は43句。兼題別3点句以上の高点句は以下の通り。

「龍天に登る」

龍天に武州上州土埃         杉山 宥智

龍天に登るロックのコンサート    加藤 明男

登り来る龍に出遭ふや宇宙船     金田 青水

重力波なるものの音龍天に      中嶋 阿猿

龍天に眠るゴジラは海の底      嵐田 双歩

龍天に逢瀬は虹の消ゆるまで     大倉悌志郎

竜天に背伸び競ふやチューリップ   澤井 二堂

雷神にやあと手を挙げ龍天へ     須藤 光迷

龍天に沖に揺れをる摩天楼      流合研士郎

龍天に水使う手の緩みけり      流合研士郎

法堂に鳴き声残し龍天に       大熊 万歩

龍天に昇る心地の退院日       髙石 昌魚

振り仰ぐなんじゃもんじゃや龍天に  徳永 正裕

龍天に土蔵にのこる火事のあと    星川 佳子

「田楽」

田楽やとぼけ上手になりし父     星川 佳子

田楽の串振りかざす議論好き     植村 博明

田楽や織部の皿にかしこまる     植村 博明

さ緑の木の芽でんがく新所帯     徳永 正裕

田楽で幾何学語る一人酒       中嶋 阿猿

田楽や秩父はいつも山の影      嵐田 双歩

田楽や酔ひて爺さまの鷺の舞ひ    今泉 而云

田楽や学会抜けて南禅寺       鈴木 好夫

田楽や古りに古りたる塗りの盆    須藤 光迷

生湯葉に生麩田楽先斗町       谷川 水馬

「雑詠」

やはらかな一雨去つて初桜      嵐田 双歩

配膳に紙の雛の置かれをり      廣上 正市

閻魔様に追返されて七日粥      大倉悌志郎

お下がりの着物ほどきて吊るし雛   谷川 水馬

宿坊や五人がかりの松手入      谷川 水馬

日脚伸ぶ坂の途中の長き椅子     廣上 正市

初蝶や下校の子等は冒険家      星川 佳子

 

参加者(出席)嵐田双歩、和泉田守、井上庄一郎、今泉而云、大澤水牛、大沢反平、岡田臣弘、沢井二堂、杉山宥智、鈴木好夫、高石昌魚、高瀬大虫、谷川水馬、堤てる夫、徳永正裕、直井正、中嶋阿猿、流合研士郎、廣上正市、藤野十三妹、星川佳子、水口弥生、横井定利(投句参加)池村実千代、植村博昭、大熊万歩、大下綾子、加藤明男、金田青水、久保田操、須藤光迷

(まとめ・廣上正市)

 

 

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第121回酔吟会例会を開催

 

出席15人で「彼岸」「レタス」を詠む

 

第121回酔吟会は平成28年3月12日午後1時から内神田・鎌倉橋交差点そばのMIFビル8階、日経広告研究所会議室で開かれた。この日の兼題は「彼岸」「レタス」で、投句5句、選句7句で句会を行った。

三月とはいえ真冬のような寒さの中、俳句愛好者は熱心で15人が出席した。投句参加は大石拍人、藤野十三妹、野田冷峰の3氏だった。

選句・披講の結果は最高点が5点で2句、次いで4点が1句と高得点句が少なかったが、3点句になると13句と増え、2点句が15句、1点句が22句と多かった。投句総数が90句で、点の入った句が合計53句と過半数を超える接戦となった。3点以上の高得点句は以下の通り。

「彼岸」

ふんわりと山彦帰る彼岸かな       谷川 水馬

老いること知らぬ鳥たち入り彼岸     今泉 而雲

どこからか母の声する彼岸かな      片野 涸魚

兵馬俑彼岸を此岸に作り置き       澤井 二堂

入り潮の運河の匂い彼岸かな       徳永 正裕

大叔母のぼたもちありし入彼岸      星川 佳子

入彼岸仏前隅に宝くじ          玉田春陽子

「レタス」

無造作にレタスちぎりて名無し鍋     大澤 水牛

萵苣の株喰らふマナティーガラス越し   谷川 水馬

萵苣巻いてソウルの夜はふけにけり    星川 佳子

「雑詠」

啓蟄や妻いっぱしの政治論        大沢 反平

朝歩きレタスサンドの喫茶店       徳永 正裕

やり直しきかぬ人生春一番        片野 涸魚

かなしみの記念日多き弥生かな      片野 涸魚

リベンジを誓ひし絵馬へ春きたらむ    岡田 臣弘

(報告 澤井二堂)

 

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第125回番町喜楽会例会を開催

 

「春雨」と「蝶」を詠む

齊山弥生さん加入、出席18人の大盛況

 

番町喜楽会の平成28年3月例会(通算百125回)は、3月7日(月)午後6時半から、「春雨」と「蝶」を兼題として九段下の千代田区立生涯学習館で開催された。朝方から降っていた雨が、夕方にはやみ風も温かくなって、春を感じさせる陽気となった。高井百子会長の友人、齊山弥生さんが初参加、出席者は18人と会場となった会議室はギシギシの状態。

投句5句、選句6句の結果、野田冷峰さんの「石仏もくちびるゆるむ春の雨」が8点を獲得して首位に。玉田春陽子さんの「採れたての春を並べて朝の市」が7点で次席、谷川水馬さんの「春雨や小三治聴きて肘枕」と広田可升さんの「蝶ひらりあの日の嘘ももう時効」の2句が5点で三席に並んだ。以下、4点が5句、3点が6句と高点句が15句の大賑わい、2点は11句、1点は33句だった。兼題別の高点句(3点以上)は次の通り。

『春雨』

石仏もくちびるゆるむ春の雨    野田 冷峰

春雨や小三治聴きて肘枕      谷川 水馬

春の雨干されしままのレオタード  徳永 正裕

春雨にゆるりほころぶ紫木蓮    大澤 水牛

ジーンズの藍よみがへる春の雨   大下 綾子

春雨や千年楠を傘として      徳永 正裕

春雨のまあるく服にとまりけり   星川 佳子

『蝶』

蝶ひらりあの日の嘘ももう時効   広田 可升

蝶来たる今日は何着て行こうかな  今泉 而雲

向き合ふて道を譲らぬ小蝶かな   谷川 水馬

初蝶やナプキン立ててテラス席   玉田春陽子

初蝶の空の青さに溶けにけり    前島 厳水

『雑詠』

採れたての春を並べて朝の市    玉田春陽子

たらの芽の苦みたしかに朝の粥   山口斗詩子

笹やぶに節の決まらぬ初音かな   谷川 水馬

 

<参加者>(出席)嵐田双歩、今泉而雲、大澤水牛、大下綾子、齊山弥生、須藤光迷、高井百子、高瀬大虫、田中白山、谷川水馬、玉田春陽子、堤てる夫、徳永正裕、野田冷峰、広田可升、星川佳子、前島厳水、横山恭子(投句参加)井上啓一、山口斗詩子

(まとめ 須藤光迷)

 

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日経俳句会第146例会

 

寒戻る夜、参加32人で「二月」「しゃぼん玉」を詠む

星川さんが最高の8点句

 

日経俳句会は2月17日(水)午後6時半、千代田区内神田の日経広告研究所会議室で、二月例会(通算146回)を開いた。暖冬から急転、寒の戻りに見舞われたこの日の兼題は「二月」「しゃぼん玉」で、投句参加12人を加え総勢32人から156句が寄せられた。投句5句、7句選句の結果、最高は星川佳子さんの「庭先に色戻りたる二月かな」の8点句。次席は大澤水牛さんの「野菜種子蒔く指硬き二月かな」と、杉山智宥さんの「しゃぼん玉七人兄妹みな長寿」の6点2句。横井定利さんの「梅二月母の頬紅買ひに出る」の5点句が三席に入った。

続く4点句は、嵐田双歩さんの「手土産は空也最中と春の風」、高石昌魚さんの「しゃぼん玉吹く子壊す子後追ふ子」、徳永正裕さんの「朝刊のページの痩せも二月かな」、中嶋阿猿さんの「稲荷旗白抜き映えて梅二月」の4句が並んだ。以下3点11句、2点29句、1点53句。兼題別3点以上の高点句は次の通り。

「二月」

庭先に色戻りたる二月かな      星川 佳子

野菜種子蒔く指硬き二月かな     大澤 水牛

梅二月母の頬紅買ひに出る      横井 定利

朝刊のページの痩せも二月かな    徳永 正裕

稲荷旗白抜き映えて梅二月      中嶋 阿猿

フラミンゴみな片足の二月かな    今泉 而云

早春賦流れ二月の旅心        杉山 智宥

空欄の目立つ二月や日記帳      直井  正

「しゃぼん玉」

しゃぼん玉七人兄妹みな長寿     杉山 智宥

しゃぼん玉吹く子壊す子後追ふ子   高石 昌魚

声荒げ怒る男にしゃぼん玉      植村 博明

飛び立つをためらふもをりしゃぼん玉 大下 綾子

しゃぼん玉ぴくりと動く猫のひげ   加藤 明男

シャボン玉追ふ手追ふ足宇宙泳    堤 てる夫

父吹けば子の壊し行くしゃぼん玉   横井 定利

「雑詠」

手土産は空也最中と春の風      嵐田 双歩

春茜流るるままに余生なほ      高石 昌魚

雪解けて隙間のがさず福寿草     堤 てる夫

膝掛けに珈琲のしみ春浅し      徳永 正裕

 

参加者(出席)嵐田双歩、池村実千代、井上庄一郎、今泉而云、大沢反平、大澤水牛、岡田臣弘、澤井二堂、杉山智宥、鈴木好夫、須藤光迷、高瀬大虫、堤てる夫、徳永正裕、中嶋阿猿、野田冷峰、流合研士郎、藤村詠悟、星川佳子、横井定利(投句参加)植村博明、大熊万歩、大下綾子、加藤明男、金田青水、久保田操、高石昌魚、高橋ヲブラダ、谷川水馬、直井正、廣上正市、藤野十三妹

(まとめ・堤てる夫)

 

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番町喜楽会第124回例会

 

九段下「味さと」で月遅れの初句会

参加十九人で「春」「辛夷」を詠む

横山恭子さんが正式参加

 

番町喜楽会の平成28年初句会(通算124回)が2月6日(土)午後6時過ぎから、九段下の割烹「味さと」で開かれた。一月は日経俳句会と合同の新春恒例七福神吟行を行ったため、例会はこれが今年初めて。立春後三日目だが日中の最高気温9℃と、まだまだ春は名のみの寒さ。それでも16人が元気に勢揃い、所用で欠席投句の3人を加えて、参加19人で「春」と「辛夷」を詠み合った。この日から横山恭子さんが正式参加された。

投句5句、選句6句で句会を進めた結果、最高点は7点で、玉田春陽子さんの「魚河岸の春は西から東から」が選ばれ、参加者一同から盛大な拍手を浴びた。次席は5点で徳永正裕さんの「春の日の折鶴ふはと飛びにけり」、三席4点は「花辛夷画家にならむと東京へ 綾子」と「花辛夷山懐の養魚池 春陽子」の2句だった。以下、3点7句、2点17句、1点24句と続いた。兼題別の高点句(3点以上獲得)は次の通り。

『春』

魚河岸の春は西から東から       玉田春陽子

エレベーター隅田の春を硝子越し    今泉 而云

浅草にふたたびの春人力車       星川 佳子

高みより春の前方後円墳        星川 佳子

『辛夷』

花辛夷画家にならむと東京へ      大下 綾子

花辛夷山懐の養魚池          玉田春陽子

『雑詠』

春の日の折鶴ふはと飛びにけり     徳永 正裕

手を出せばそつと手が添ひ春うらら   廣田 可升

春風をつかむ諸手や乳母車       須藤 光迷

目刺焼く故郷の海は寂れけり      須藤 光迷

身の内の鬼払ふごと豆打てり      徳永 正裕

寒夕焼ひととき富士を立たせけり    大下 綾子

 

《参加者》(出席)嵐田双歩、今泉而云、大澤水牛、大下綾子、須藤光迷、高井百子、高瀬大虫、田中白山、谷川水馬、玉田春陽子、徳永正裕、野田冷峰、廣田可升、星川佳子、前島厳水、横山恭子。(投句参加)井上啓一、堤てる夫、山口斗詩子。

(報告 大澤水牛)

 

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日経俳句会第145回例会

 

初句会は「初詣」と「蜜柑」

中嶋阿猿さんが初参加

日経俳句会の平成28年度第1回例会(通算145回)が1月20日(水)午後6時半から千代田区内神田の日経広告研究所会議室で開かれた。出席者は17人、投句参加者は15人。投句総数は159句だった。久しぶりの女性入会者、中嶋阿猿(本名愛)さんが初めて参加した。兼題は初句会にふさわしく「初詣」と「蜜柑」。7句選句の結果、大澤水牛さんの「海賊の島より届く大蜜柑」が断トツ9点を得た。続く6点が「連れ合いの願い洩れ聞く初詣 光迷」「読みさしの本に置かるる蜜柑かな 博明」の2句。5点が「願ふこと少なくなりし初詣 博明」と「深川は髷もちらほら初詣 佳子」。4点句は加藤明男さんの「蜜柑剥く喧嘩のあとの兄妹」をはじめ、「蜜柑」の兼題を中心に6句も出た。このほか、3点6句、2点21句、1点48句だった。兼題別の高点句(3点以上)は以下の通り。

「初詣」

連れ合いの願い洩れ聞く初詣       須藤 光迷

願ふこと少なくなりし初詣        植村 博明

深川は髷もちらほら初詣         星川 佳子

汗ばみて幣振る禰宜や初社        大澤 水牛

急かされてエプロンはずし初詣       池村実千代

三つ子用バギー現る初詣         今泉 而云

役者絵が招く成田や初詣         徳永 正裕

柏手が開く闇夜や初詣          流合研士郎

青竹の香のある神酒や初詣        廣上 正市

「蜜柑」

海賊の島より届く大蜜柑         大澤 水牛

読みさしの本に置かるる蜜柑かな     植村 博明

蜜柑剥く喧嘩のあとの兄妹        加藤 明男

もう半分まだ半分の蜜柑箱        須藤 光迷

生きるとは何ぞやなどと蜜柑むく     髙瀨 大虫

丁重に蜜柑の筋をとりし祖母       星川 佳子

傘寿には少し間のあり蜜柑剥く      横井 定利

蜜柑むくこともお互い自分流       今泉 而云

出勤の夫にみかんを持たせけり      大下 綾子

何もなきこと寿ぎて蜜柑喰う       中嶋 阿猿

「雑詠」

金糸張る雲の稜線初明かり        大沢 反平

釣舟の旗翩翻と二日かな         廣上 正市

買初が納豆豆腐といふ日常        金田 青水

冬の旅ボウイは星に還り行く       高橋ヲブラダ

個性とは歪みのことなり枯木立      中嶋 阿猿

(まとめ 廣上正市)

 

 

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第120回酔吟会例会

 

酔吟会は満20歳

酔吟会の平成28年幕開け句会は1月16日(土)午後1時から内神田・鎌倉橋交差点そばの日経広告研究所会議室で開かれた。平成8年(1996年)春に日経社会部OB12名で発足した酔吟会は、2ヵ月に1回の例会を重ね、今回が通算120回で、誕生満20歳ということになった。原文鶴主宰(元社会部長)、大留黃鶴幹事長はじめ発足時会員の5名が亡くなるなど、顔ぶれは大きく変わったが、現在は22名の陣容で旧に倍する活発な句会を行っている。

この日の兼題は「寒」と「熱燗」で、投句5句、選句7句で句会を行った。日経俳句会や番町喜楽会などの姉妹句会が、参加人数の多さから事前投句・事前選句方式を採用しているのに対し、酔吟会だけは、句会当日に出席者が自作5句を短冊に記入投句(欠席投句は幹事が代行)する方式。集められた投句短冊を均等に出席者に配り、それを淸記用紙に清書し、順繰りに回して選句、一人ずつ自分の選んだ句を発表(披講)、合評会に移るという伝統的な方式を守っている。比較的時間に余裕のある土曜日午後なので、こういう昔ながらの句会が行えるわけで、忙しい世の中に珍しい句会が続いている。

選句・披講の結果は最高点が4点で5句並び、次席3点がなんと13句、2点句が三席ということになり8句出た。1点も20句あり、点の入った句が合計46句と、全投数80句の半数以上に及ぶ大混戦となった。

この中で、玉田春陽子さんが4点1句、3点3句、2点1句という「5打数5安打」の快挙、澤井二堂さんが4点2句と2点1句と気を吐き、片野涸魚さんと大沢反平さんが5句全てに得点という目出度い記録。

合評会も談論風発、水馬さんが「初句会ですから」と持ち込んだ静岡掛川の銘酒「開運」を屠蘇代わりに、新年らしい賑やかな句会となった。この日の句会で3点以上獲得した句を季語別に列挙すると以下の通り。

『寒』

寒の入り日だまり猫町たまり場所    澤井 二堂

寒ゆるく干柿不出来と便りくる     澤井 二堂

寒の雨東尋坊に突き刺さり       岡田 臣弘

六義園枝の先から寒に入る       大沢 反平

巻き癖の解けぬ暦や寒の入り      玉田春陽子

明日着る喪服吊すや寒の入り      玉田春陽子

手描き絵の寒中伺いまた嬉し      大平 睦子

申年や靴下紅く寒の内         谷川 水馬

寒の池米粒ほどの稚魚の口       星川 佳子

『熱燗』

熱燗と若狭へしこの付き具合      大澤 水牛

熱燗や昭和の顔の四人席        玉田春陽子

熱燗や夢のかけらを胸の底       玉田春陽子

老い上手さらりと生きて燗の酒     野田 冷峰

熱燗にざる一枚の旨さかな       久保田 操

『雑詠』

婆二人差しつ差されつ冬列車      堤 てる夫

燃やしたきもの多々ありきどんど焼き  片野 涸魚

冬椿慰霊に徹す天皇家         片野 涸魚

身のほどや小吉と出し初みくじ     大澤 水牛

(記録報告 大澤水牛)

 

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