番町喜楽会第129回例会

 

「七月」は大下氏、「花火」は前島氏─6点句で首位を分け合う

 

番町喜楽会の平成28年7月例会(通算129回)は、4日午後6時半から東京・九段下の千代田区立生涯学習館で開催された。兼題は「七月」と「花火」で、投句5句、選句6句で行った。日中は最高気温が34℃と平年を6℃以上も上回る猛暑。夕方には局地的な雷雨があり、その影響で遅れる人が出たものの、山口斗詩子さんが久し振りに顔を出されるなど、出席者19人の大盛況だった。

最高は6点で、大下綾子さんの「七月の空へ空へと山育つ」と、前島厳水さんの「湖染めて山を揺さぶる花火かな」が肩を並べた。次席の5点は谷川水馬さんの「算盤の玉の軽さや梅雨明けぬ」、三席4点は玉田春陽子さんの「追伸にその壱その弐夏見舞」。3点は高井百子さんが「誰れ彼れにあげたし杏ジャムを練る」はじめ3句を連発するなど、全部で14句もあった。2点は16句、1点句は23句と、相変わらずかなり票が割れた。兼題別の高点句(3点以上)は次の通り。

「七月」

七月の空へ空へと山育つ        大下 綾子

七月だ長い休みが始まるぞ       池内 健治

七月の雨芋の葉を連打せり       大澤 水牛

新じゃがの冷製スープ七月来      高瀬 大虫

七月の雨の精気よ森太る        高瀬 大虫

七月やひねもす水車麦を挽き      谷川 水馬

「花火」

湖染めて山を揺さぶる花火かな     前島 厳水

いつになく素直な母や遠花火      嵐田 双歩

大輪に大輪重ね揚花火         大下 綾子

遠花火家族居ぬ間の一人酒       谷川 水馬

一瞬の四尺玉に佐渡浮かぶ       野田 冷峰

「雑詠」

算盤の玉の軽さや梅雨明けぬ      谷川 水馬

追伸にその壱その弐夏見舞       玉田春陽子

あした着る喪服吊るして梅雨深し    今泉 而云

修羅道に迷う母置き施設出る      齋山 満智

誰れ彼れにあげたし杏ジャムを練る   高井 百子

蛍袋雨の雫を吊るしをり        高井 百子

尻尾つけまだ水の中雨蛙        高井 百子

《参加者》(出席19人)嵐田双歩、池内健治、今泉而云、大澤水牛、大下綾子、齋山満智、須藤光迷、高井百子、高瀬大虫、田中白山、谷川水馬、玉田春陽子、堤てる夫、徳永正裕、野田冷峰、廣田可升、星川佳子、前島厳水、山口斗詩子(投句参加1人)澤井二堂   (まとめ 須藤光迷)

 

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日経俳句会平成28年度上期合同句会

 

「夏至」と「萍」を兼題に37人から111句

 

日経俳句会は6月15日(水)、千代田区内神田の日経広告研究所会議室で平成28年度上期合同句会を開いた。合同句会のため「夏至(げし)」「萍(うきくさ)」と雑詠の3句投句、事前選句5句という方式のもと、37人から111句の投句があった。この日は舛添東京都知事の辞職の報も相まって鬱陶しい梅雨空の中、出席者は18人。欠席者は19人と空席が目についた。

事前選句の結果、最高点は7点で谷川水馬さんの「萍やダムに沈みし村の上」と久保田操さんの「萍や日ねもす雲の行くへ追ふ」の二作品が並んだ。次席の5点は「夏至の日やハシビロじっと立ち尽くす 涸魚」「夏至の夜やことばを交はす牛と馬 綾子」「萍や子ら散り散りに外つ国へ 青水」「六月の闇六月の白き花 而云」「朝餉には皆出払って鮎の宿 博明」の5句。4点句は「リビングに日の色残す夏至の夜 操」「根無草内緒ですけど多産系 智宥」「鮎の香の指に残れり解禁日 悌志郎」「三叉路に陽石ごろり麦の秋 水牛」の4句だった。

今回の投句は粒揃いで投句者全員に点が入り、3点17句、2点17句、1点30句と万遍なく得票した。実力伯仲、レベルの高い選句となった中、萍の下にダム湖を想い、上に行雲を浮かべた両句が最高点を獲得したのが印象的だった。

兼題別高点句(3点句以上)は以下の通り。

「夏至」

夏至の日やハシビロじっと立ち尽くす  片野 涸魚

夏至の夜やことばを交はす牛と馬    大下 綾子

リビングに日の色残す夏至の夜     久保田 操

点滴の清き光や夏至の夜        大熊 万歩

ベか船の気だるく舫ふ夏至の昼     岡田 臣弘

夏至の日やアブサン燃ゆる喉心地    谷川 水馬

日めくりの夏至は一日遅れけり     玉田春陽子

夏至の空埋め尽くすほど衣干す     中村  哲

夏至の空突き破らんかスカイツリー   流合研士郎

天地の熱とどまれり夏至の夜      水口 弥生

まだまだと遊びつづけし夏至日暮れ   星川 佳子

「萍」

萍や日ねもす雲の行くへ追ふ    久保田 操

萍やダムに沈みし村の上      谷川 水馬

萍や子ら散り散りに外つ国へ    金田 青水

根無草内緒ですけど多産系     杉山 智宥

萍の徐々に彼岸に流れ寄る     高瀬 大虫

萍に休める蠅の至福かな      水口 弥生

「当季雑詠」

六月の闇六月の白き花       今泉 而云

朝餉には皆出払って鮎の宿     植村 博明

鮎の香の指に残れり解禁日     大倉悌志郎

三叉路に陽石ごろり麦の秋     大澤 水牛

愛用の父の写真機黴びてをり    嵐田 双歩

犬吠ゆといふ名の岬夏の雲     大石 柏人

万緑に生命の証駒ヶ岳       大沢 反平

梅熟す採る人も無く遊歩道     杉山 智宥

亡き人の墓打つ雨や七変化     髙石 昌魚

桑いちご車道染めたる和紙の里   中嶋 阿猿

路地裏の紫陽花ひとり薄化粧    中村  哲

参加者(出席)=嵐田双歩、池村実千代、井上庄一郎、今泉而云、大倉悌志郎、大澤水牛、澤井二堂、杉山智宥、髙瀨大虫、谷川水馬、玉田春陽子、堤てる夫、徳永正裕 、中嶋阿猿、中村哲、野田冷峰、星川佳子、横井定利

(投句参加)植村博明、大石柏人、大熊万歩、大沢反平、大下綾子、岡田臣弘、片野涸魚、金田青水、久保田操、須藤光迷、高石昌魚、高橋ヲブラダ、直井正、流合研士郎、廣上正市、深田森太郎、藤野十三妹、水口弥生、

(まとめ・嵐田双歩)

 

 

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独鈷山スケッチと田沢温泉蛍狩り吟行

麦秋の独鈷山と秘境の湯の蛍に感激

冷や汁ランチョンパーティで景気づけ

番町喜楽会と日経俳句会は「絵手紙実習と蛍狩り」吟行を6月11、12日、長野県上田市、小県郡青木村田沢温泉で実施した。参加者は日帰り参加1人を含め17名。今回吟行の目的の第一は、上田市塩田平にそびえる日本百名低山の一つ「独鈷山」を水彩画で、というもの。俳画の一歩を踏み出すきっかけにしようという試みである。双牛舎出版物のデザインを一手に引き受ける武蔵野美術大学出身のグラフィックデザイナー玉田春陽子氏を先生に、参加者の多くが小学校以来という絵筆を手にした。これに山里の蛍を鑑賞しようとの企画が加わり、宿泊を青木村田沢温泉に設定、蛍の乱舞を堪能した。

11日の集合場所は、吟行幹事の堤てる夫・百子宅。NHK大河ドラマ「真田丸」一色に染まった上田電鉄別所線の八木沢駅から徒歩2分のところにある。その道すがら、数日前から蛍が飛び始めた小流れがあり、道端には一本の大きな桑の木に色づいた実が生っている。庭には蛍袋が咲き始め、すぐそばを別所線が走る。その向こうには、東西6キロにわたって主尾根を伸ばす、スケッチの大目玉「独鈷山」が鎮座している。

まずは昼食。助っ人幹事の水牛氏が前日から泊まり込んで、味噌を練り、ゴマを磨り潰し、出汁を取り、紫蘇の葉、茗荷、小葱を刻んで特製「冷や汁」をこしらえた。それに加え、百子特製のおにぎりや燻製各種、別所温泉「松籟亭」から取り寄せた山芋の糠漬け、玉子焼き、さらには杉山智宥氏差し入れの手作り「新ラッキョウ漬け」や「くさや」も加わり、イナゴの佃煮、古漬けなど、夏の田舎料理がテーブル一杯並んだ。思い思いの場所で独鈷山を眺めながら冷や汁ランチを堪能したあとは、いよいよ「水彩画実習」。

幹事宅の庭から裏木戸を出て別所線の線路を渡り、濃く色づいた麦畑の一本道を独鈷山に向かって歩くこと約20分。塩田平の観光資料も展示されている「とっこ館」に着く。ここの研修室を拠点に、目の前に聳える独鈷山や夫神岳、塩田平名物の溜池「舌喰池」、「旧西塩田小学校」の古い木造校舎等々、思い思いに散らばってスケッチ。ざっと二時間半、悪戦苦闘の末、力作が次々に仕上がった。春陽子先生の評はたった一言。「みんな色が濃すぎる」。

今夜の宿泊先田沢温泉「富士屋ホテル」からのお迎えバスが独鈷館に到着する頃には、カラッとした涼しい風が吹き始めていた。塩田平は四方山に囲まれた盆地である。気温の差が激しい。参加者には長袖のシャツ持参を幹事から呼びかけてある。さぁ出発。バスはひと山越えて青木村に入った。青木村十観山のふところにある田沢温泉の露天風呂はまだ夕日の映える色濃き山々の中にあった。

夕食は田舎料理ながらも丹精込めたもので、一同和気あいあいで楽しんだ。可升さんが特注の地酒「佐久の花」の一升瓶を持って注いで回る。青木村特産・蕎麦焼酎「たち茜」の売れ行きも良い。途中からカラオケが始まり、冷峰さん、正裕さん、二堂さんらが熱唱した。トリは水馬さん。プロ顔負けの歌声で「北の蛍」。これを以て宴会はお開き、いよいよ本物の蛍鑑賞である。

今年は、田沢温泉でも例年より一週間ほど早く蛍が飛び始めたとか。宿から出ると早くも一匹二匹と飛んでいる。期待を膨らませつつ宿の脇の渓流に沿って数分下り、見どころスポットに着くと、何百匹もの蛍が舞っていた。手で蛍を掬おうとする人、カメラに写そうとする人、蛍が肩に止まって動かず嬉しいが困惑の表情の人。皆が童心に帰って蛍を追いかけた数十分であった。

二日目は雨という予報もあったが、快晴。三つのコースに分かれ観光に出向いた。ジャンボタクシー組8名は主に真田郷巡り。専用タクシー組4名は塩田平のお寺や無言館巡り。早めの帰京を望む2人は幹事の車で急ぎ足観光(別所温泉安楽寺の国宝三重塔他)をした。

吟行句会はいつも通り帰ってから幹事にメール投句し、参加者がメール選句する方式で行った。その結果、最高点は「客人の去りて再び梅雨寒し 百子」が26点というダントツの成績を収めて天賞。次いで「蛍火の行き交ふ彼の世この世かな 而云」が11点、「てのひらの螢少女にかへる君 可升」が10点で続いた。参加者の代表句は次の通り。

 

蛍火の行き交ふ彼の世この世かな     今泉 而云

滴れる独鈷山なり写生会         大澤 水牛

汗ぬぐひ絵筆を放り里めぐり       大平 睦子

螢飛ぶ闇おちこちの声やさし       片野 涸魚

夫神岳雨乞叶ひ田の光る         澤井 二堂

六文銭また六文銭夏木立         杉山 智宥

馬の背の真田本城青田風         須藤 光迷

客人の去りて再び梅雨寒し        高井 百子

渓流の闇に無言の螢舞ふ         田中 白山

冷や汁や薬味の茗荷ちょと多め      谷川 水馬

深き闇螢の恋の百二百          玉田春陽子

我が胸に息つく沢の螢かな        高瀬 大虫

冷汁のランチで始む写生会        堤 てる夫

ため池に哀しき民話みずすまし      徳永 正裕

あな嬉し胸に螢の金メダル        野田 冷峰

てのひらの螢少女にかへる君       廣田 可升

ブローチのかわりに付けし恋螢      星川 佳子

 

参加者は今泉而云、大澤水牛、大平睦子、片野涸魚、澤井二堂、杉山智宥、須藤光迷、高井百子、田中白山、谷川水馬、玉田春陽子、高瀬大虫、堤てる夫、徳永正裕、野田冷峰、廣田可升、星川佳子の各氏。

(まとめ 高井百子)

 

 

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番町喜楽会第128回例会

 

「夏の月」と「鮓」を詠む

澤井二堂さんが初参加

 

番町喜楽会の平成28年6月例会(通算128回)は、6月4日(土)午後6時から九段下の割烹「味さと」で、「夏の月」と「鮓」を兼題に開催された。風が強かったが空気の乾いた気持ちの良い日で、夕刻には総勢17名の参加者が集結した。今回は澤井二堂さんが自由会員として入会、初投句した。

投句5句、選句6句で句会を進めた結果、大澤水牛さんの「涼しさを封じ込めたり鮎の鮨」と欠席投句だった齊山満智さんの「鯖鮨を食べて確かな帰郷かな」が5点の最高点を獲得した。以下、4点句が5句、3点句が9句、2点句が17句、また1点句が26句という結果で、欠席投句を含め投句合計は94句だった。

兼題別の高点句(3点以上)は次の通り。

「夏の月」

鬢付けの去りゆく路地や夏の月 玉田春陽子

聖岳天に座りて夏の月     野田 冷峰

大杉に陽の残りをり夏の月   今泉 而云

送られて別れ難しや夏の月   高井 百子

月涼し水を張りたる田んぼかな 前島 厳水

「鮓」

涼しさを封じ込めたり鮎の鮨  大澤 水牛

鯖鮨を食べて確かな帰郷かな  齊山 満智

大桶の松山鮓や瀬戸の贅    谷川 水馬

夕方の風を入れたりちらし寿司 星川 佳子

朝帰り皿にラップのちらし寿司 今泉 而云

青豆を散らすや母のちらし鮓  田中 白山

鮒の鮓近江に辛き酒を汲む   徳永 正裕

「雑詠」

馬鈴薯の花の畑中通学す    徳永 正裕

六月の冷えや屋久杉大座卓   今泉 而雲

茅葺の駅舎現役桐の花     玉田春陽子

麦秋や穂波まにまにローカル線 堤 てる夫

 

《参加者》

〈出席17名〉嵐田双歩、池内健治、井上啓一、今泉而云、大澤水牛、須藤光迷、高井百子、高瀬大虫、田中白山、谷川水馬、玉田春陽子、堤てる夫、徳永正裕、野田冷峰、廣田可升、星川佳子、前島巌水〈投句参加3名〉大下綾子、齊山満智、澤井二堂

(まとめ 谷川水馬)

 

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日経俳句会第149回例会

 

反平氏、最高点の八点句

選句のばらつき、一段と

 

日経俳句会は5月18日(水)、千代田区内神田の日経広告研究所会議室で5月例会(通算第149回)を開いた。風薫る季節感通りの夕刻、「夕立」「新茶」の兼題に33人から164句の投句があった。当日の出席者は25人に達し、俳句の言葉使い、ルビの振り方などを巡り、活発なやり取りが繰り広げられた。

当日の最高点は8点で大沢反平さんの「終活の一つを済ませ新茶買ふ」。次席6点は植村博明さんの「新茶より嬉しきものは添へ手紙」と、杉山智宥さんの「三人乗りママの脚力夕立雲」の2句。5点句は「貫乳を静かに愛でつ新茶汲む」と「夕立の誰もが無口軒の下」ともに嵐田双歩さんの作品が選ばれた。

続く四点には7句が並び、3点も12句あった。さらに2点33句、1点が46句に達するなど選句にばらつきが目立った。会員各位の作句力の向上とともに、選句ポイントの多様化を反映していると思われる。

三点句以上獲得の高点句は以下の通り。

「新茶」

終活の一つを済ませ新茶買ふ    大沢 反平

新茶より嬉しきものは添へ手紙   植村 博明

貫乳を静かに愛でつ新茶汲む    嵐田 双歩

新茶淹れ夫の知らぬこともある   今泉 而云

新茶汲みはらからの忌を修しけり  大澤 水牛

祖父の手の緑に染まる新茶摘み   流合研士郎

語り合う夫婦のむかし古茶新茶   徳永 正裕

茶巾ずし一つを二人新茶吞む    野田 冷峰

母といて勝手気ままや新茶汲む   星川 佳子

「夕立」

三人乗りママの脚力夕立雲     杉山 智宥

夕立の誰もが無口軒の下      嵐田 双歩

夕立や軒先借りる猫二匹      久保田 操

白雨(ゆうだち)を黒線で描く江戸の絵師    髙瀨 大虫

石蹴りの石の残りて夕立あと    谷川 水馬

海賊を気どりてラム酒大夕立    谷川 水馬

夕立に思わず笑う見ず知らず    鈴木 好夫

一人居の迷子のここち大夕立    星川 佳子

熊本城崩れんばかり驟雨打つ    水口 弥生

「当季雑詠」

吊革の腕(かひな)あらわに夏来る      高石 昌魚

雑巾になることもなし衣更     高橋ヲブラダ

後ずさり出来ぬこの夏カンガルー  谷川 水馬

星涼し生きよ卒寿の五輪まで    直井  正

大楠や三千年の若葉風       中村  哲

無残やな熊本城に夏の月      横井 定利

 

参加者(出席)嵐田双歩、井上庄一郎、今泉而云、大倉悌志郎、大澤水牛、大沢反平、大下綾子、岡田臣弘、澤井二堂、杉山智宥、鈴木好夫、須藤光迷、高石昌魚、髙瀨大虫、谷川水馬、堤てる夫、徳永正裕 、直井正、中嶋阿猿、中村哲、野田冷峰、廣上正市、星川佳子、水口弥生、横井定利

(投句参加)池村実千代、植村博明、大熊万歩、久保田操、金田青水、高橋ヲブラダ、流合研士郎、藤野十三妹

(まとめ・廣上正市)

 

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酔吟会第122回例会

 

「母の日」「柿若葉」 而云、反平、百子三氏が五点

水牛氏、酔吟会を初めて欠席

 

第122回酔吟会は5月14日(土) 午後1時から内神田・鎌倉橋交差点そばのMIFビル8階、日経広告研究所会議室で開かれた。毎回、司会者を務めている大澤水牛さんはこの日、兄上の法事のため、酔吟会史上初めての欠席。代わりの司会者として星川佳子さんが指名されていたが、「断固拒否」の意向により、今泉而云がやむなく引き受け、全句筆記などに汗をかきながら、どうやら無事に句会を終えることが出来た。

出席者は14人で、欠席投句は大澤水牛、久保田操、藤野十三妹の3氏。兼題は「母の日」と「柿若葉」。投句は全82句。各人7句選で行った結果、「迷彩服まとふや五月独鈷山」(高井百子)、「尾根白き白馬の裾の鯉のぼり」(大沢反平)、「母の日やアイロン錆びて棚の奥」(今泉而云)の3句が最高の5点句で並んだ。続いて4点句に「毛越寺浄土の風に柿若葉」(澤井二堂)などの4句が続いた。

兼題別高点句(3点以上)は次の通り。

「母の日」

母の日やアイロン錆びて棚の奥         今泉 而云

母の通夜九十四本のカーネーション       高井 百子

母の日や父の位牌を少し下げ          玉田春陽子

母の日や手を握りつつくだり坂         星川 佳子

母の日や不戦を誓ふ日となさん         片野 涸魚

「柿若葉」

他人(ひと)の住む我が家懐かし柿若葉     岡田 臣弘

毛越寺浄土の風に柿若葉            澤井 二堂

鈴の鳴る安産祈願柿若葉            岡田 臣弘

「雑詠」

屋根白き白馬の裾の鯉のぼり          大沢 反平

迷彩服まとふや五月独鈷山           高井 百子

蛙なく休耕田の水溜まり            堤 てる夫

 

参加者(出席)今泉而云、大沢反平、岡田臣弘、大平睦子、片野涸魚、澤井二堂、高井百子、堤てる夫、徳永正裕、谷川水馬、玉田春陽子、野田冷峰、藤村詠悟、星川佳子 (欠席投句)大澤水牛、久保田操、藤野十三妹

(まとめ・今泉而云)

 

 

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三四郎句会第42回例会

 

参加14人で「薄暑」「郭公」を詠む

石丸雅博さんが入会

 

三四郎句会の平成28年5月例会(通算42回)は12日午後1時半から東京・神田錦町の宗保第二ビル内で行われた。篠田義彦氏は長期の休会、岡本崇、田村豊生、印南進の三氏は病後リハビリ中などで今回も欠席投句、欠席選句を行った。今回から入会の石丸雅博氏が加わり、出席者は11人。欠席投句、選句を加えると句会参加は14人となった。兼題は「薄暑」「郭公」。

選句の結果、最高点の5点は「江戸川の空を裁つごと夏燕」(岡本崇)の一句。「雪抱く山を遠くに桃の花」(宇野木敦子)、「病窓に強き光や薄暑知る」(田村豊生)の2句が4点で並んだ。「濃淡の木々に薄暑や立石寺」(吉田正義)など7句が3点を獲得した。兼題別3点以上の句は以下の通り。

「薄暑」

病窓に強き光や薄暑知る      田村 豊生

山寺に薄暑招くや芭蕉の碑     吉田 正義

濃淡の木々に薄暑や立石寺     吉田 正義

乗り換へを違へて戻る駅薄暑    今泉 而云

座布団の少し膨れる薄暑かな    宇佐美 諭

心音の聞こえるほどの薄暑かな   宇佐美 諭

城登る雲を眼下に薄暑かな     宇野木敦子

「郭公」

郭公の声に腰上ぐ老農夫      田村 豊生

「雑詠」

江戸川の空を裁つごと夏燕     岡本  崇

雪抱く山を遠くに桃の花      宇野木敦子

 

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番町喜楽会第127回例会

 

大型連休の谷間、参加19人で「立夏」「祭」

池内健治さんが入会

 

番町喜楽会の平成28年5月の例会(通算第127回)は、2日(月)午後6時半から九段下の千代田区立生涯学習館で開催された。日中の気温は21℃を超え、兼題の「立夏」まで三日を残して早くも初夏の陽気。もうひとつの兼題は「祭」で、こちらは三社祭まであと10日というところ。大型連休の谷間という日程もなんのその、16人が出席、3人が投句参加した。また、高井百子会長のかつての職場、産能大学の同僚教授池内健治さんが入会した。

句会は投句5句、選句6句で行った。最高は8点で、廣田可升さんの色気があり元気いっぱいの句「負けん気の後ろ姿や祭髪」、次席は6点で田中白山さんの健康への祈りの籠った句「退院のあとの外来更衣」、三席は5点で高瀬大虫さんの爽快な夏の到来を告げる「薄掛けの目覚め心地や今朝の夏」だった。以下、4点が「頼もしや親父こえたる祭足袋 春陽子」など3句、3点が「朝バスの窓より入れる立夏風 正裕」など7句。2点11句、1点が33句だった。兼題別の高点句(3点以上)は次の通り。

「立夏」

薄掛けの目覚め心地や今朝の夏      高瀬 大虫

樹海から立夏の空の見え隠れ          嵐田 双歩

夏立つや小便小僧反り返る        谷川 水馬

夏来る噴煙への字浅間山                     玉田春陽子

朝バスの窓より入れる立夏風          徳永 正裕

赤ワイン少し冷やして夏来る          徳永 正裕

「祭」

負けん気の後ろ姿や祭髪             廣田 可升

頼もしや親父こえたる祭足袋                   玉田春陽子

婦人部のありて祭のつつがなし        星川 佳子

祭り後恋の後にも似たりけり               斉山 満智

「雑詠」

退院のあとの外来更衣                        田中 白山

卯の花や旧家の蔵に喫茶店                     玉田春陽子

湯の町の川を跨げり鯉幟         須藤 光迷

 

参加者

(出席)嵐田双歩、井上啓一、池内健治、今泉而云、大澤水牛、須藤光迷、高井百子、高瀬大虫、田中白山、玉田春陽子、堤てる夫、徳永正裕、野田冷峰、廣田可升、星川佳子、前島厳水 (投句参加)斉山満智、谷川水馬、山口斗詩子

(選句参加)大下綾子

(報告 須藤光迷)

 

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日経俳句会第148回例会

 

中村哲さんが入会

 

日経俳句会は4月20日(水)、千代田区内神田の日経広告研究所会議室で4月例会(通算148回)を開いた。句会の数日前、熊本地震が発生、大きな余震も心配される中、「霞」「菜飯」の兼題に、35人の会員から166句の投句があった。当日の出席者は20人、投句参加者は16人だった。この日は、新入会の中村哲さんが出席し、選句に参加した。

7句選の結果、最高の7点に池村実千代さんの「フランスの塩をひとふり菜飯かな」、植村博明さんの「霞より現れ出たる陸上部」、髙石昌魚さんの「諍ひも失せて菜飯の箸二膳」、廣上正市さんの「指揮棒のぴたりと止まり卒業す」の4句が並ぶ珍しい結果となった。次席の6点は「タンカーの重き汽笛や春霞 水馬」が入り三席の5点句は「鉄塔の手に手を取って花霞 博明」、「仏前に微かに湯気の菜飯かな 操」「俎板の音の残れる菜飯かな 正市」、「山霞風力発電機にて混ぜる 佳子」の4句が並んだ。高得点句が多かったためか、4点句が5句といつもに比べて少なく、3点8句、2点28句、1点44句という結果になった。兼題別3点以上の高点句は以下の通り。

「霞」

霞より現れ出たる陸上部             植村 博明

タンカーの重き汽笛や春霞            谷川 水馬

山霞風力発電機にて混ぜる            星川 佳子

父と娘のこゑやはらかに夕霞           金田 青水

弧舟あり西湖をまたぐ春霞            大沢 反平

春霞行先表示長きバス              大下 綾子

「菜飯」

フランスの塩をひとふり菜飯かな         池村実千代

諍ひも失せて菜飯の箸二膳            髙石 昌魚

仏前に微かに湯気の菜飯かな           久保田 操

俎板の音の残れる菜飯かな            廣上 正市

海風や菜めしに混じる黄の蕾           高瀬 大虫

坊っちゃんの菜飯ぞなもし温泉街         高橋ヲブラダ

青くさき正論やよし菜飯食ふ           德永 正裕

ルッコラの菜飯に舅苦笑い            中嶋 阿猿

菜飯食ふさびしいときは笑いけり         野田 冷峰

「雑詠」

指揮棒のぴたりと止まり卒業す          廣上 正市

鉄塔の手に手を取って花霞            植村 博明

花の塵舗道に描く青海波             大熊 万歩

桜蘂降る下町の空広し              大下 綾子

春雨や広重の雨モネの雨             谷川 水馬

花恋し万朶の道の果ててなほ           德永 正裕

戦はぬことへの決意春の夜            中嶋 阿猿

 

参加者(出席)嵐田双歩、今泉而云、大倉悌志郎、大澤水牛、岡田臣弘、澤井二堂、杉山宥智、鈴木好夫、須藤光迷、高石昌魚、高瀬大虫、谷川水馬、堤てる夫、徳永正裕、直井正、中嶋阿猿、中村哲、野田冷峰、星川佳子、水口弥生。(投句参加)池村実千代、和泉田守、井上庄一郎、植村博昭、大熊万歩、大沢反平、大下綾子、加藤明男、金田青水、久保田操、高橋ヲブラダ、中沢義則、流合研士郎、廣上正市、藤野十三妹、横井定利

(まとめ・嵐田双歩)

 

 

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英尾先生墓参・滝山城址吟行を開催

 

桜五千本の花吹雪に酔う

 

4月9日(土)、日経俳句会は恒例の村田英尾先生の墓参・桜吟行を実施した。花曇りの中、時折陽射しに恵まれる絶好の吟行日和、集合場所のJR高尾駅北口に集まったのは、大澤水牛幹事長、岡田臣弘、澤井二堂、杉山智宥、徳永正裕、星川佳子、野田冷峰に番町喜楽会の田中白山と幹事堤てる夫の9人。

まずは路線バスで都立八王子霊園へ向かい、日経俳句会創設者英尾先生のお墓参り。先生没後3年を経た平成20年4月、霊園と近くの「多摩森林科学園」を訪れたのが第1回で、それから既に8年、先生が亡くなられて11年になる。初回以来、墓参後は森林科学園の「桜保存林」へ行くのが慣例になっていたが、今回は趣向を変えて、北条氏照の居城だった「滝山城址公園」に足を伸ばした。霊園からタクシーに分乗して30分ほど、滝山街道沿いの登山口から標高160㍍ほどの三の丸、二の丸、中の丸を目指す。

この滝山城址公園は5千本の桜の名所だけに花見客、ハイカーが目立つ。千畳敷址で昼食。保存林と違って「飲酒可」なのが嬉しい。風が出て桜吹雪は「舞う」より「飛ぶ」感じ。山城北側にある多摩川を見下ろす眺望を中の丸から楽しむ。鶯が飛び鳴くという、おまけ付きの展望だった。帰途は麓の滝山街道「純心学園」前から京王バスで八王子駅北口に戻った。仕上げの懇親会は北口周辺の花街黒塀横丁などをさらっと見て、へぎそばの「笹禅」でテーブルを囲んだ。

吟行句会は慣例の「メール句会」、5句投句、5句選句で「天地人」「入選」を選ぶ方式を踏襲。選句には吟行には参加しなかった今泉而云さんが飛び入りで加わった。

その結果は、最高点が徳永正裕さんの「谷に落ち谷より上がる花吹雪」でダントツの18点だった。次席は堤てる夫さんの「古戦場遥か眼下に春の川」の10点、三席がやはり徳永さんの「酔いほのか昼寝に誘う花筵」の9点、次いで本日の副幹事として地元案内を買って出てくれた杉山智宥さんが「多摩川の春きらめいて中の丸」の句で8点獲得し面目を保った。その他、句会で人気を集めた参加者の代表作は次の通り。

鶯の稽古積んだる谷渡り        大澤 水牛

茣蓙のべて浅き夢路へ山笑ふ      岡田 臣弘

桜散る花びら添へてむすび喰ふ     澤井 二堂

花吹雪千畳敷に昼の酒         杉山 智宥

芽柳の花街の路地狭かりき       田中 白山

英尾忌の十一年目の桜かな       堤 てる夫

精気満つ九本桜の異形かな       徳永 正裕

一叢の関東破れ傘一家         星川 佳子

山桜背伸びしてをり五千本       野田 冷峰

(報告者 堤てる夫・大澤水牛)

 

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