日経俳句会第165回例会

 

参加36名で「冬の月」と「水洟」を詠む

 

日経俳句会は平成30年度の初句会一月例会(通算165回)を1月17日(水)に千代田区内神田の日経広告研究所会議室で開いた。風邪で体調を崩す人が多いうえに雨も重なり、出席者は19人とやや少なかったが、寒さを吹っ飛ばす熱気のこもった句会となった。兼題は「冬の月」と「水洟」。投句参加者を含め36人から108句の投句があり、5句選の結果、今泉而云さんの「水洟を抑へてうなじ美しき」と谷川水馬さんの「陽だまりのオランウータン水っ洟」がともに最高6点を獲得した。5点句には大沢反平さんの「神鈴の鳴り止まぬ杜冬麗」など6句、4点句に廣上正市さんの「冬の月一本道を靴の音」など6句が入った。このほか3点に8句、2点に47句が並び、全体に点がバラついた。兼題別の高得点句(3点以上)は以下の通り。

「冬の月」

一村の田に煌々と冬の月        今泉 而云

満天の星を纏ひて冬の月        嵐田 双歩

ヒマラヤの峰鋭角に冬の月       中村  哲

冷凍庫から出したのよ冬の月      徳永 木葉

冬の月一本道を靴の音         廣上 正市

茹でたまごつるりとむけば冬の月    藤野十三妹

ご飯だとメールで呼ばれ冬の月     植村 博明

冬満月婚約せりと四十歳        堤 てる夫

亡き友と居場所探すや冬の月      流合研士郎

「水洟」

水洟を抑へてうなじ美しき       今泉 而云

陽だまりのオランウータン水っ洟    谷川 水馬

水洟をかみマドンナの顔となり     横井 定利

音高く洟水かむや通夜の席       植村 博明

「当季雑詠」

神鈴の鳴り止まぬ杜冬麗        大沢 反平

この時を選ぶ不思議や寒桜       星川 水兎

初日の出なに変わるでもないけれど   和泉田 守

西に向ひ歩くのが好き冬夕焼      大倉悌志郎

田は元の荒地に戻り冬雀        岩田 三代

月冴える昔高女の門構え        杉山 三薬

風流と貧乏の味薺(なずな)粥      高瀬 大虫

冴ゆる夜のスマホ突然光りけり     徳永 木葉

「酌みたし」のひと言のある賀状かな  廣上 正市

《参加者》(出席)嵐田双歩、今泉而云、岩田三代、大澤水牛、大沢反平、岡田臣弘、澤井二堂、杉山智宥、鈴木好夫、高石昌魚、高瀬大虫、谷川水馬、堤てる夫、徳永正裕、中嶋阿猿、中村哲、野田冷峰、星川水兎、向井ゆり。(投句参加)池村実千代、和泉田守、井上庄一郎、植村博明、大熊万歩、大倉悌志郎、大下綾子、大平睦子、加藤明男、金田青水、久保田操、高橋ヲブラダ、流合研士郎、廣上正市、藤野十三妹、水口弥生、横井定利。

(報告・中村哲)

 

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酔吟会第132回例会

15人集まり初句会

嵐田双歩、工藤静舟両氏が新加入

 

平成30年の酔吟会は1月13日(土)の昼下がり、東京内神田・鎌倉橋交差点傍の日経広告研究所会議室で、本年初句会(通算第132回例会)を開催した。兼題は「雪(ゆき)」「海鼠(なまこ)」で5句投句。出席15人、投句参加3人、投句総数89句と大賑わい。5句選句の結果、玉田春陽子さんの「雪の原墨一条の信濃川」が6点で最高だった。次席は今泉而云さんの「地吹雪や息絶え絶えにバス来る」と、谷川水馬さんの「おほらかな妻の七草六日粥」の5点2句。三席は嵐田双歩さんの「一里一尺雪深めゆく北信濃」の4点句。新年を機に新規参加の双歩さんは4点句で悠々のデビュー。日経の相撲記者で活躍した工藤静舟(本名憲雄、元論説・編集委員)さんも3点句で手慣れたところを見せた。

以下3点は7句、2点11句、1点は26句。兼題別の高点句(三点以上)は次の通り。

「雪」

雪の原墨一条の信濃川       玉田春陽子

地吹雪や息絶え絶えにバス来る   今泉 而云

おほらかな妻の七草六日粥     谷川 水馬

一里一尺雪深めゆく北信濃     嵐田 双歩

吹雪く日は小豆ことこと塩を振る  工藤 静舟

雪起こし屋号の並ぶ漁師町     徳永 木葉

「海鼠」

引潮の浜にごろ寝の海鼠哉     久保田 操

ふるさとの海鼠欲しさに納税す   谷川 水馬

「雑詠」

くえ鍋や妻に勧める眼の周り    谷川 水馬

地に伏して月に打たるる寒鴉    藤野十三妹

成人式さはさりながら振袖禍    藤野十三妹

参加者(出席)今泉而云、大澤水牛、大沢反平、大平睦子、岡田臣弘、片野涸魚、工藤静舟、久保田操、須藤光迷、高井百子、谷川水馬、玉田春陽子、堤てる夫、徳永木葉、野田冷峰(投句参加)嵐田双歩、藤野十三妹、星川水兎。

(まとめ:堤てる夫)

 

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新春恒例七福神吟行報告

 

平成30年は「山手七福神」

日経俳句会・番町喜楽会合同で23人が参加

 

新春恒例の七福神巡り吟行。平成30年は、江戸で最初に始まったとされる「山手七福神」を選び、目黒・白金六ケ寺を歩いた。1月6日(土)の昼下がり、地下鉄南北線・三田線「白金高輪駅」に日経俳句会、番町喜楽会の23人が勢揃い。寒の候とは思えない穏やかな冬日を浴びて高層マンション、オフィスビルに圧されるように点在する古刹、名刹に詣でた。

吟行を締めくくる句会は、いつものようにメール句会とし、投句は3句、選句は5句で実施した。秀句、佳句続出の中、廣田可升さんの「好日や手に万両の実のぬくみ」が10点という飛び抜けた点数で最高点。次席は5点句で、大下綾子さんの「おみくじを見せ合ひながら日向ぼこ」と、谷川水馬さんの「双六のやうに一駅戻り酒」の2句。三席は4点で、岡田臣弘さんの「初春や犬が先ゆく太鼓橋」、須藤光迷さんの「お神籤を腹に七福神だるま」、高井百子さんの「初詣御籤は凶ぞ大黒天」、星川水兎さんの「降りきって行人坂の遅紅葉」の4句が並んだ。以下、3点が9句、2点15句、1点13句。なお今回から徳永正裕さんは俳号「木葉(もくよう)」を名乗ることになった。参加者の代表句は下記の通り。

寒晴を映して青き目黒川          嵐田 双歩

青空を受けて西日に梅一輪         池内 的中

七福や母も詣りし百度石          池村実千代

弁天を拝む晴着の尻丸し          大澤 水牛

七福神余生を互ひに占いつ         大沢 反平

おみくじを見せ合ひながら日向ぼこ     大下 綾子

七福神巡り納めて墓参り          大平 睦子

初春や犬が先ゆく太鼓橋          岡田 臣弘

やせ迦葉ふとっちょ布袋に福詣       澤井 二堂

福詣日中印の神に会ひ           塩田 命水

目鼻消え白粉地蔵日向ぼっこ        杉山 三薬

お神籤を腹に七福神だるま         須藤 光迷

大吉の出るまで引くや福詣         高井 百子

福詣羅漢の顔も見て回り          高瀬 大虫

冬晴の高層ビルの底の寺          田中 白山

双六のやうに一駅戻り酒          谷川 水馬

福詣願ひあれこれ一万歩          玉田春陽子

冬の日の五百羅漢や嘆き侘ぶ        堤 てる夫

冬木の芽満を持したる鴟尾の空       徳永 木葉

寒の水一身に浴び不動立つ         中村  哲

晴れ着の娘インスタ映えする布袋様     野田 冷峰

好日や手に万両の実のぬくみ        廣田 可升

賽銭のはじけ飛んだり初笑ひ        星川 水兎

参加者=嵐田双歩、池内的中、池村実千代、大澤水牛、大沢反平、大下綾子、大平睦子、岡田臣弘、澤井二堂、塩田命水、杉山三薬、須藤光迷、高井百子、高瀬大虫、田中白山、谷川水馬、玉田春陽子、堤てる夫、徳永木葉、中村哲、野田冷峰、廣田可升、星川水兎。     (まとめと報告 堤てる夫)

 

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日経俳句会2017下期合同句会

春陽子さん「電車区」の句が10点、「太陽系」の双歩句が9点

12月20日(水)、日経俳句会の平成29年度下期合同句会(通算25回)が、千代田区内神田の日経広告研究所会議室で、日経俳句会総会に続いて開かれた。兼題は「蒲団」と「帰り花」で38人から114句の投句があった。冒頭、事前選句(五句選)の結果が発表され、1位は10点の春陽子さんの「駅端の電車区詰所蒲団干す」。次点は9点の「蒲団干す太陽系の片隅に」(双歩)と蒲団の句が上位を占めた。以下、8点「鮟鱇の不屈の上目遣ひかな」(而云)、7点「眠る子がふいに笑へり冬銀河」(ゆり)、6点「雪吊りのハープ弾いてよ雪女」(悌志郎)と「住所録ひとりまた消す年の果」(てる夫)など高点句が続いた。以下5点は5句、4点は7句、3点9句、2点24句、1点16句だった。兼題別の高点句(3点句以上)は以下の通り。

なお、杉山智宥さんはこの日から俳号を「三薬」と名乗ることになった。

「蒲団」

駅端の電車区詰所蒲団干す     玉田春陽子

蒲団干す太陽系の片隅に      嵐田 双歩

二次会の二つに折りし宿布団    星川 水兎

夫逝きてダブル蒲団に抱き枕    野田 冷峰

脱け殻の蒲団そのまま朝支度    深田森太郎

冬蒲団重きがよしと祖父の弁    今泉 而云
子ら眠る蒲団平和にふくらみて   岩田 三代

夜勤明けせんべい布団抱きしころ  岡田 臣弘

雪の通夜重き蒲団に泊まりけり   高瀬 大虫

「帰り花」

たらればの恋を語れば忘れ花    向井 ゆり

誘はれて谷中寺町帰り花      久保田  操

よぎりたる遠き日のこと帰り花   廣上 正市

帰り花色なき巷(ちまた)灯しけり      嵐田 双歩

わが身にも狂ひて咲けよ帰り花   高瀬 大虫

城跡の登りくだりや帰り花     星川 水兎

「当季雑詠」

鮟鱇の不屈の上目遣ひかな     今泉 而云

眠る子がふいに笑へり冬銀河    向井 ゆり

雪吊りのハープ弾いてよ雪女    大倉悌志郎

住所録ひとりまた消す年の果    堤 てる夫

おでん種即答の人迷う人      大熊 万歩

年の瀬やシルバーシートに細く座す 玉田春陽子

卓上に冷めた鯛焼き置手紙     中嶋 阿猿

ダイソンの掃除機届く年の暮れ   高井 百子

連山を刹那に浮かべ冬の雷     中村  哲

大腸を廻(めぐ)るカメラも十二月     橫井 定利

おでん酒辛子のせいと涙拭き    嵐田 双歩

後ずさりして見るビルの大聖樹   星川 水兎

参加者(出席)=嵐田双歩、池村実千代、井上庄一郎、今泉而云、大澤水牛、大沢反平、大下綾子、岡田臣弘、片野涸魚、澤井二堂、鈴木好夫、高井百子、高石昌魚、谷川水馬、玉田春陽子、堤てる夫、徳永正裕、中嶋阿猿、中村哲、野田冷峰、廣上正市、星川水兎、向井ゆり、横井定利。(投句参加)岩田三代、植村博明、大熊万歩、大倉悌志郎、大平睦子、金田青水、久保田操、杉山三薬、須藤光迷、高瀬大虫、高橋ヲブラダ、深田森太郎、藤野十三妹、水口弥生。   (まとめ・嵐田双歩)

 

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金沢吟行句会の結果発表

金沢吟行句会報告

最高点は水牛さん8点句、次席二堂、白山、徳永三氏

11月26,27両日挙行した逆回り奥の細道吟行金沢編は恒例のメール句会で仕上げとなった。吟行に参加した19人全員が帰京後メールで3句投句、5句選句し幹事が集計した。その結果、大澤水牛さんの「一笑の墓にごろりと花梨の実」が8点を得て最高点に輝いた。次席は5点で、澤井二堂さんの「木虫籠(きむすこ)にもれる茶屋の灯冬構え」、田中白山さんの「犀川のしぶきに朝の冬日差し」、徳永正裕さんの「冬雲のこらえきれずに加賀の雨」の3句が並んだ。続く4点句には「もてなしは加賀の冬の日まいどさん」(嵐田双歩)、「一人去り一人来たれり冬ぬくし」(大下綾子)、「寺町を迷ふ楽しみ冬構」(白山)、「へしこ買ひおみちょ市場で燗の酒」(谷川水馬)、「共に喰ふ治部煮の鉢のぬくみかな」(廣田可升)、「読みさしの北国新聞冬の旅」(可升)の6句。3点句は「どの路地も落葉踏む径加賀の道」(双歩)、「のどぐろや濁音やさし加賀言葉」(水牛)、「冬の旅丈六釈迦の笑みに逢ふ」(岡田臣弘)、「雪吊の今は休めの姿勢かな」(玉田春陽子)、「寺町の瓦くろぐろ加賀時雨」(中村哲)の5句だった。参加者の作品集は以下の通り。

☆       ☆       ☆

どの路地も落葉踏む径加賀の道       嵐田 双歩

もてなしは加賀の冬の日まいどさん

バス待てどみんなづぶ濡れ加賀時雨

無住寺無住の家や帰り花           今泉 而云

丈六に金箔残る冬微光

屋根屋根の遥かや冬の日本海

のどぐろや濁音やさし加賀言葉       大澤 水牛

丈六の御胸のあたり冬日射し

一笑の墓にごろりと花梨の実

冬の町どこ歩きても水の音         大下 綾子

一人去り一人来たれり冬ぬくし

冬うらら声よく通るまいどさん

寒さ来る荒廃寺社も古木延ぶ         大平 睦子

時雨後つや出た瓦石垣美

初冬の思ひは静か犀の川

冬の旅丈六釈迦の笑みに逢ふ        岡田 臣弘

赤門寺わらじ痛かろ冬の旅

W坂人生模様冬吟行

丈六の木肌のぬくもり加賀の冬        澤井 二堂

木虫籠(きむすこ)にもれる茶屋の灯冬構え

雪吊の綱あたらしや兼六園

鳶を追ふ鴉の母や冬座敷          塩田 命水

主なき寺に日差しや冬紅葉

育つ子へわらじの恵み山眠る

まいどさん成すすべもなし加賀時雨     高井 百子

冬吟行宿のもてなし「瓜なすび」

古池や黄葉舞ひ落つ蓮の上

犀川はセーヌに似たり黄の落葉       高瀬 大虫

つまされる北枝の話し雪催

あぶらのる加賀の喉黒これ絶品

城下町あちらこちらに実南天        田中 白山

寺町を迷ふ楽しみ冬構

犀川のしぶきに朝の冬日差

冬の雨リュックの酒も濡れにけり      谷川 水馬

へしこ買ひおみちょ市場で燗の酒

絡みつく枯蔓踏み宝泉寺

犀川や瀬音にまぎれ時雨をり        玉田春陽子

雪吊の今は休めの姿勢かな

貸衣裳色をともすや加賀の冬

丈六の釈迦如来像障子背に         堤 てる夫

雪吊の縄目匂へり加賀の朝

枯葉踏む北枝の墓所に詣けり

金沢に寺町三つ小春かな          徳永 正裕

黄落や丈六仏は金の顔

冬雲のこらえきれずに加賀の雨

寺町の瓦くろぐろ加賀時雨         中村  哲

文字消えし句碑を隠すや散紅葉

手取川戦国遠し冬夕焼

落鱸相聞知りて句碑巡り          野田 冷峰

寺町の上り下りて冬ぬくし

深々と雪降る予感加賀時雨

共に食ふ治部煮の鉢のぬくみかな      廣田 可升

読みさしの北國新聞冬の旅

しとど打つ加賀の甍や冬の雨

冬紅葉心の道のうねうねと         星川 水兎

どの家にも雪吊すみし城下町

冬の雨に軒先借るも能登の旅

(吟行句会取りまとめと報告;堤てる夫)

 

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日経俳句会・番町喜楽会合同「金沢吟行」

 

総勢19人で金沢中心に芭蕉の足跡を訪ねる

ビッグイベント「逆回り奥の細道」がようやく完結

 

日経俳句会と番町喜楽会は11月26、27両日、北陸の加賀路のスポット、金沢を中心に芭蕉の足跡を辿った。「逆回り奥の細道」吟行は平成26年1月、足掛け6年かけて終着の深川・採茶庵跡に着いて一応締め括った。ただ毎回一泊二日の旅を9回重ねるうちに金沢の地をスキップしていたのが心残り。「補習編」として今回の金沢吟行挙行となった。

参加者は大澤水牛、今泉而云両氏はじめ総勢19人。初日の夕刻、激しい時雨に遭遇したほかは晩秋の行楽日和。芭蕉金沢入りを記念する「巡錫地」碑の小坂神社を皮切りに、金沢城北側の卯辰山山麓寺院群を訪ねた。蕉門十哲のひとり立花北枝の墓がある心蓮社、金沢三大仏「丈六の釈迦如来立像」がある蓮昌寺、浅野川越しに金沢市街の景観をうかがう宝泉寺などを巡って、「ひがし茶屋街」をぶらぶら歩き。浅野川大橋傍の「禁煙室」という名の珈琲館(実は灰皿完備)で、大休止した。お昼に北陸新幹線金沢駅に集合し、バスを乗り継いだ他は歩きづめ。コーヒー一杯でつい長居している内に本降りの雨となった。

夕刻の時雨とあって道路は渋滞、バスもタクシーもままならない。バス停で小半時も立ちつくす中、なんとかタクシーを捕まえ宿の「由屋るる犀々」に。犀川大橋の上手、川沿いの道路に面した六階建ての宿は、団体客よりは家族旅行に向いた作り。しかし大広間は至極広い空間が用意されていた。

加賀料理の極め付きはのどぞぐろの姿焼き。一同しばらく声も立てずに箸を動かした。のどぐろを「季語」にと衆議一決、吟行句会には「のどぐろ」の句とやはり晩餐に出された治部煮の句が目立った。呑み放題の「手取川」を詠んだ句もあった。

二日目の金沢は朝9時出発。初日に引き続き金沢観光協会のボランティア・ガイド「まいどさん」の穴田克美さん、福岡澄子さんのお二人が迎えに来て下さった。前日来、馴染みとなった黄色いジャンパーが頼もしい。早朝の小雨がすっかり上がって、宿から犀川沿いの道をくだり、桜橋傍の左手「W坂」を上る。斜行を繰り返して急斜面を上がって行く階段は、下から見上げるとWの字に見える。ハイカラな名付けは金沢文人か。

坂を登った寺町の寺院群には、長久寺の「秋涼し手毎にむけや瓜茄子」、成学寺の「あかあかと日はつれなくも秋の風」など芭蕉の句碑がある。願念寺は小杉一笑の菩提寺。芭蕉の来訪を心待ちにしながら逢えぬまま亡くなった一笑に、芭蕉は「塚も動けわが泣く声は秋の風」の句を手向けた。

犀川大橋に戻って金沢きっての繁華街、香林坊方面に向かう。その手前、片町の大通りに、今はゲームセンターなどが入る巨大なアミューズメント・ビルが建っている。「ここが芭蕉が金沢滞在の10日間のほとんどを過ごした宿屋の跡です」と「まいどさん」が説明して下さる。説明されなければ到底分からない、町の変貌ぶりである。ここで穴田さん、福岡さんのお二人と別れの挨拶を交わした。金沢吟行団もここで解散、三々五々昼食兼ねての自由行動に。市内の金沢城址公園や兼六園見学に回った人たち、小松市で芭蕉碑巡りを続けた人、逆方向の高岡市に向かった人たち、様々な展開をみせた。

金沢で「逆回り奥の細道」吟行の幕引きをした一行の顔ぶれは、大澤水牛、今泉而云両氏のほか、嵐田双歩、大下綾子、大平睦子、岡田臣弘、澤井二堂、塩田命水、高瀬大虫、高井百子、田中白山、谷川水馬、玉田春陽子、徳永正裕、中村哲、野田冷峰、廣田可升、星川水兎各氏と、幹事の堤てる夫。(吟行報告者;堤てる夫)

 

 

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番町喜楽会第146回例会

「狐火」と「湯豆腐」を詠む

水馬さん、8点句でトップ飾る

番町喜楽会は平成29年12月例会(通算146回)を12月2日(土)午後6時から九段下の割烹「味さと」で、「狐火」と「湯豆腐」を兼題に開催した。投句者は22名、投句総数105句。そのうちの18名が会場に集まり、いつものように食べかつ飲みながらの賑やかな句会を始めた。投句5句、選句6句で行った結果、谷川水馬さんの「相棒は子と同い年おでん酒」が8点でトップに輝いた。これに玉田春陽子さんの「湯豆腐や夢は大方夢のまま」、星川佳子さんの「玄関をポインセチアであたためり」の6点句が続いた。以下、5点が2句、4点2句、3点10句、2点18句、1点24句と続いた。兼題別の高点句(3点以上)は次の通り。

「狐火」

狐火に寄り添うほどの孤独かな     齊山 満智

狐火や北國街道山に入る        高井 百子

狐火のふらとあらはる登り窯      廣田 可升

狐火や母の記憶の手の温み       前島 幻水

「湯豆腐」

湯豆腐や夢は大方夢のまま       玉田春陽子

湯豆腐や葱は嫌ひと言ふ男       須藤 光迷

好物は湯豆腐ですと婿候補       齊山 満智

湯豆腐やかつて諍ひありし仲      廣田 可升

来ぬ人や湯豆腐つひに暴れだす     大澤 水牛

湯豆腐や密談めきし隅の客       玉田春陽子

湯豆腐の踊れば止まる愚痴話      徳永 正裕

「雑詠」

相棒は子と同い年おでん酒       谷川 水馬

玄関をポインセチアであたためり    星川 水兎

牡蠣打ちの女の尻の並びをり      田中 白山

ぼやき節ご破算にして日記買ふ     谷川 水馬

ジーパンの二本干されて冬の空     中村 哲

瘡蓋のごと年重ね暮れてゆく      廣田 可升

《参加者》【出席18人】嵐田双歩、今泉而云、大澤水牛、齊山満智、塩田命水、須藤光迷、高井百子、高瀬大虫、田中白山、谷川水馬、玉田春陽子、堤てる夫、徳永正裕、中村哲、野田冷峰、廣田可升、星川水兎、前島幻水。【投句参加4人】池内的中、大下綾子、澤井二堂、山口斗詩子。 (報告・谷川水馬)

 

 

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日経俳句会第164回例会

 

参加35名で「小春」と「障子」を詠む

日経俳句会の平成29年度11月例会(通算164回)は11月15日(水)に千代田区内神田の日経広告研究所会議室で行われた。本格的な冬の訪れを前に小春日が続く中、20人が顔を揃え、和やかな雰囲気の句会となった。

兼題は「小春」と「障子」。投句参加を加え35人から105句の投句があり、5句選句の結果、今泉而云さんの「更地また更地みちのく夕時雨」が最高の9点を集めた。次いで杉山智宥さんの「百歳がお店に出てる小六月」が8点を獲得、6点句には杉山さんの「口実を使い尽くして障子貼り」と横井定利さんの「立冬や平たき顔のお豆腐屋」が入った。このほか5点に3句、4点に4句と続き、3点に17句が並ぶなど点がバラつく形となった。兼題別の高得点句(3点以上)は以下の通り。

「小春」

百歳がお店に出てる小六月       杉山 智宥

小春日や懐紙に包む金平糖       大下 綾子

小春日や山歩きせし日々のこと     井上庄一郎

唐突に窓を拭くなり小春空       植村 博明

物干しにあれもこれもと小春の日     植村 博明

昼コーヒー持って歩けば小春かな    鈴木 好夫

小春日の岬に立てば鳶の笛       谷川 水馬

小春日の読経のびやかのびやかに    徳永 正裕

洗い場のおしゃべり果てぬ小春かな   中村  哲

小春日や街路に鳩のふくみ声      野田 冷峰

師の手紙読み返したる小春かな      流合研士郎

小春日に臥し居る心ただ痛き       藤野十三妹

「障子」

口実を使い尽くして障子貼り      杉山 智宥

母眠り障子の桟の薄埃          今泉 而云

破れ障子おまけのシール貼ってある   大下 綾子

病癒ゆ朝日に障子開け放つ       大倉悌志郎

手を合はす障子明かりの菩薩像     徳永 正裕

父母の声まだ残る障子の間       横井 定利

その奥に秘密あるらし障子穴      植村 博明

今朝の日を諸手で開く白障子       廣上 正市

「当季雑詠」

更地また更地みちのく夕時雨       今泉 而云

立冬や平たき顔のお豆腐屋       横井 定利

捨ぶねの藻のあをあをと冬ざるる    金田 青水

枯芒日は陸奥湾に落ちんとす      岩田 三代

冬めくや眼厳しき修復師        大沢 反平

鳥渡る約束の地のあるごとく      大下 綾子

白雲を拭ひ続ける枯れ薄        高瀬 大虫

山茶花のあるかなきかの風に散る     星川 水兎

《参加者》(出席)嵐田双歩、池村実千代、今泉而云、岩田三代、大倉悌志郎、大澤水牛、岡田臣弘、澤井二堂、杉山智宥、鈴木好夫、高石昌魚、高瀬大虫、谷川水馬、堤てる夫、徳永正裕、中村哲、野田冷峰、藤野十三妹、星川水兎、水口弥生。(投句参加)井上庄一郎、植村博明、大熊万歩、大沢反平、大下綾子、大平睦子、金田青水、久保田操、高橋ヲブラダ、直井正、中嶋阿猿、流合研士郎、廣上正市、向井ゆり、横井定利。(報告・中村哲)

 

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酔吟会第131回例会

「冬めく」は冷峰さん、春陽子さん、「落葉」は水兎さん

酔吟会は11月11日(土)午後1時、東京・千代田区内神田の日経広告研究所(MIFビル)会議室で、平成29年度第6回例会(通算131回)を開催した。兼題は「冬めく」「落葉」で、出席者12名、投句参加4名、投句総数は80句だった。

兼題「冬めく」の最高点は野田冷峰さんの「冬めくや鬼も濃い目のルージュ引く」、玉田春陽子さんの「冬めくや巫女の速足鳩散らす」の4点句。次席3点は谷川水馬さんの「冬めくや烏の滑るすべり台」だった。「落葉」句は星川水兎さんが「落葉はく谷中の老いの多きこと」の4点でトップ、3点は冷峰さんの「日の名残り落葉彩るロンドン塔」、春陽子さんの「異人墓地石の聖書に落葉舞ふ」、高井百子さんの「落葉掃き名残り蛙の動かざる」が続いた。この他の3点は雑詠で3句あった。続く2点は7句、1点が33句だった。3点句以上は以下の通り。

「冬めく」

冬めくや巫女の早足鳩散らす        玉田春陽子

冬めくや鬼も濃い目のルージュ引く     野田 冷峰

冬めくや鴉の滑るすべり台         谷川 水馬

「落葉」

落葉はく谷中の老の多きこと        星川 水兎

落葉掃き名残り蛙は動かざる        高井 百子

異人墓地石の聖書に落葉舞ふ        玉田春陽子

日の名残り落葉彩るロンドン塔       野田 冷峰

「雑詠」

老友を囲む老友冬ぬくし          大澤 水牛

ひつじ田や輪廻転生だんご虫        高井 百子

小春日や今日のキャラメル一個舐め     谷川 水馬

【参加者】(出席)今泉而云、大澤水牛、大沢反平、大平睦子、岡田臣弘、片野涸魚、須藤光迷、高井百子、谷川水馬、堤てる夫、徳永正裕、星川佳子。(投句参加)久保田操、玉田春陽子、野田冷峰、藤野十三妹。(まとめ 高井百子)

 

 

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番町喜楽会第145回例会

 

「渡り鳥」と「冬隣」を詠む

谷川水馬さん7点句でトップ

 

番町喜楽会の平成29年11月例会(通算145回)は、6日午後6時半から、「渡り鳥」と「冬隣」を兼題として東京・九段下の蕎麦処「丸屋」で行われた。通常、奇数月の会場は千代田区生涯学習館なのだが、イベントで使用できなくなったため振り替えたもの。投句5句、選句6句の結果、最高は谷川水馬さんの「空を嗅ぐホッキョクグマや冬隣」で7点。次席の6点には徳永正裕さんの「初霜の畑に残る菜屑かな」、三席には堤てる夫さんの「冬隣刈田にかかる山の陰」、中村哲さんの「それぞれに故郷のあり鳥渡る」、星川水兎さんの「冬隣肌のぬくみの帯をとく」の3句が5点で並んだ。4点は2句、3点は7句だった。兼題別の高点句(3点以上)は次の通り。

「渡り鳥」

それぞれに故郷のあり鳥渡る       中村  哲

一望の洛中洛外鳥渡る          廣田 可升

一日(ひとひ)ごと賑はふ沼や渡鳥    前島 幻水

夕映えの国会議事堂鳥渡る        今泉 而云

鳥渡るビルの谷間に人流れ        塩田 命水

「冬隣」

空を嗅ぐホッキョクグマや冬隣      谷川 水馬

冬隣刈田にかかる山の陰         堤 てる夫

冬隣肌のぬくみの帯をとく        星川 水兎

ぬる燗を交はす友亡く冬隣        池内 的中

黄昏の両手ポケット冬隣         田中 白山

酒蔵の米蒸すけむり冬隣         徳永 正裕

「雑詠」

初霜の畑に残る菜屑かな         徳永 正裕

秋霖の真田の里は鎮まれり        高井 百子

野を焼きし香りとともに父帰る 星川 水兎

『参加者』(出席18人)嵐田双歩、池内的中、井上啓一、今泉而云、大澤水牛、塩田命水、須藤光迷、高井百子、高瀬大虫、田中白山、谷川水馬、玉田春陽子、堤てる夫、徳永正裕、中村哲、野田冷峰、廣田可升、星川水兎。(投句参加4人)齊山満智、澤井二堂、前島幻水、山口斗詩子     (報告・須藤光迷)

 

 

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