番町喜楽会第234回例会

「日記買ふ」「粕汁」を詠む、首位に可升句「忘れる漢字」

急な寒さに出席5人どまり

番町喜楽会は令和7年12月6日(土)午後6時、東京・九段下の千代田区生涯学習館で第234回例会を開催した。この数日ぐんと冷え込み、東京は朝は4、5℃、日中も10℃と急に冬になった。そのせいもあろうか自身や家族の体調不良で急に欠席という人も出て、出席者わずかに5人と番喜会史上最低を記録した。投句も8人に留まり、句会参加者合計13人、投句総数65句というこじんまりとした句会になった。今回の兼題は「日記買ふ」と「粕汁」。6句選(欠席者は5句)で選句を進めた結果、一席は6点で廣田可升さんの「次々と忘れる漢字日記買ふ」が選ばれた。二席5点は嵐田双歩さんの「あと十年生きると決めて日記買ふ」と「粕汁や夫婦で交す惚け自慢」の二句が独占、三席4点には「来年もやることいっぱい日記買ふ 水牛」と「冬温し手話に異国語あるを知る 光迷」の2句が並んだ。以下3点5句、2点9句、1点16句という結果になった。なお、これまで番喜会に皆勤の徳永木葉さんが緊急用件で投句できなくなったため、幹事の要請で「選句による参加」を果たした。兼題別の高点句(3点以上)は次の通り。

「日記買ふ」

次々と忘れる漢字日記買ふ              廣田 可升

あと十年生きると決めて日記買ふ           嵐田 双歩

来年もやることいっぱい日記買ふ           大澤 水牛

「粕汁」

粕汁や夫婦で交す惚け自慢              嵐田 双歩

粕汁の粕は吉野の旅土産               廣田 可升

粕汁に酔ふたと妻の赤ら顔              廣田 可升

「当季雑詠」

冬温し手話に異国語あるを知る            須藤 光迷

その先は海の端なり石蕗の花             玉田春陽子

猫が来てまた付け直す床暖房             斉山 満智

秋の富士仰ぐホテルで喜寿の宴            堤 てる夫

《参加者》【出席5人】大澤水牛、金田青水、須藤光迷、玉田春陽子、廣田可升。

【投句参加8人】嵐田双歩、斉山満智、高井百子、堤てる夫、中村迷哲、星川水兎、前島幻水、向井愉里。【選句参加】徳永木葉。

(報告 大澤水牛)

 

 

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近江・浪花の芭蕉旧跡巡る東阪合同吟行

芭蕉の旧跡を巡る東阪合同の大阪吟行が11月29、30の一泊二日で実現した。タイトルは大阪吟行だが、初日は琵琶湖周辺を歩き、翌30日に大阪市内散策と句会という段取り。参加は、東京組=嵐田双歩、植村方円、金田青水、杉山三薬、中村迷哲、向井愉里、大阪組=伊藤健史、岡松卓也、高橋ヲブラダの9名。琵琶湖畔周遊には、迷哲さんの後輩で大津在住の日経OB田村雅弘さんが同行して、案内役を務めてくださった。

京都駅新幹線コンコースにある「松葉」という蕎麦屋前に午前十一時すぎに全員集合。昼食に京都の蕎麦を食べた後、JRで琵琶湖畔の唐崎駅へ。天気はこれ以上の晴はない、というぐらいの快晴。駅から普通の住宅街をしばし行くと、「唐崎の松」で知られる唐崎神社に行き着いた。いきなり琵琶湖の景色が広がる。ここで田村雅弘さんと合流した。唐崎神社は「琵琶湖の盲腸」などとも呼ばれる南湖沿いにあるが、それでこのスケールか、と改めて琵琶湖の大きさに驚く。

唐崎にまつ友来たり冬の浜            卓也

冬晴れの琵琶湖に遊ぶ舟と鴨           愉里

電車とバスを乗り継ぎ、全国の日吉・日枝・山王神社の総本宮である日吉大社に向かう。境内に植えられた三千本のモミジが真っ盛りで、関西有数の紅葉の名所に目を奪われた。

山紅葉目を奪われて大社             方円

日短し時刻表手に旅案内             ヲブラダ

次は芭蕉の墓のある義仲寺。境内には、あちこちに芭蕉が植えられていて、季節外れの花を枯らしたところだった。

寺守の軽妙トーク冬ぬくし            迷哲

義仲寺や生き様のあり枯芭蕉           健史

JR膳所駅から大阪へ。御堂筋の芭蕉終焉の地に向かう。終焉の地を示す石碑は車道の中の緑地帯にポツンとある。時間も17時半過ぎ。すでに暗くなっていて、御堂筋の街路樹にイルミネーションが灯されている。通り過ぎるヘッドライトの脇の小さな石碑を見ていると、なんとも無常感を覚える。

翌朝、地下鉄と南海電車を乗り継ぎ住吉大社の向かいにある住吉公園の芭蕉句碑へ。記された「升買て分別かはる月見かな」という句を観賞したあと、大社へ。よう来たな住吉さんの七五三           青水

案内役ヲブラダの勘違いで、新世界を目指して乗ったはずの阪堺鉄道は天王寺へ。次の目的地新世界に行くには、かなり歩く必要がある。

はからずもあべのハルカス冬日差す        三薬

大混雑の天王寺公園を抜けて新世界へ。通天閣は長蛇の列で、上るのは諦めて記念撮影。地下鉄で北浜に行き、昼食を済ませて、いよいよ句会場の大阪市中央公会堂へと向かった。

冬日影昭和のままの新世界            双歩

大阪市中央公会堂は1918年に建てられ、一時老朽化で取り壊しも検討されたが保存・改修工事がなされ、2002年に国の重要文化財に指定されている。ひょっとすると重文での句会は日経俳句会史上、初めてではないだろうか。句会は短冊で投句し、清記、選句・披講する酔吟会方式で実施。三句投句で五句選、うち特選一句とし、双歩さんの司会によりテンポよく進んだ。時間があったので点の入った全句を合評、様々な句評が飛び交い、盛り上がった。健史さん、卓也さんは初めての本格対面句会だったそうだが、楽しまれたのではないだろうか。 (報告 高橋ヲブラダ)

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日経俳句会第244回例会

首位に双歩句「譲られし席」、二席に明生句「親子熊」

「酉の市」と「熊」を詠む

日経俳句会は令和7年11月例会(通算244回)を11月16日(日)午後2時から鎌倉橋の千代田区立スポーツセンター集会室で開いた。小春日日和に誘われて9人が顔を揃え。和気あいあいの句会を楽しんだ。兼題は「酉の市」と「熊」。37人から110句の投句があり、6句選(欠席は5句)の結果、嵐田双歩さんの「譲られし席に温もり冬初め」が11点を獲得し断トツの首位。二席には加藤明生さんの「駆除といふ言葉が哀れ親子熊」が7点で続いた。三席6点には岩田千虎さんの「お多福が姉に似ている大熊手」、中沢豆乳さんの「父の手の温もりうれし酉の市」と「冬隣一抜け二抜けクラス会」、さらに水口弥生さんの「ビル越しの富士のてっぺん冬来る」の4句が並んだ。このほか5点7句、4点6句、3点9句と高点句が28句を数え、2点16句、1点28句だった。兼題別の高点句(3点以上)は以下の通り。

「酉の市」

お多福が姉に似ている大熊手             岩田 千虎

父の手の温もりうれし酉の市             中沢 豆乳

酉の市英語で値切るツアー客             岡田 鷹洋

酉の市メトロ狭しと大熊手              杉山 三薬

とりどりのヒジャブが笑う酉の市           伊藤 誠一

酉の市果てて寂しき裏通り              大沢 反平

酉の市なにはともあれ屋台酒             藤野十三妹

天空へ手打ち抜け行く一の酉             金田 青水

背負はれて笑ふ福神酉の市              中村 迷哲

酉の市いつしか他人事となり             向井 愉里

「熊」

駆除といふ言葉が哀れ親子熊             加藤 明生

冬隣一抜け二抜けクラス会              中沢 豆乳

熊撃たれ更に深まる森の闇              植村 方円

剥製の熊に見張られ蕎麦を食ふ            中嶋 阿猿

熊闊歩マタギ文化の遠くなり             工藤 静舟

襲わねば熊にあげたき庭の柿             高井 百子

腹減らし眠らぬ熊に寝られぬ町            中村 迷哲

熊ゐない千葉のあちこち柿たわわ           嵐田 双歩

熊よ熊里には人の暮らしあり             篠田  朗

穴に入る熊にやりたや一升瓶             藤野十三妹

当季雑詠

譲られし席に温もり冬初め              嵐田 双歩

ビル越しの富士のてっぺん冬来る           水口 弥生

回送の電車ゆるりと冬に入る             植村 方円

初時雨アンモナイトの泳ぐ壁             金田 青水

小夜時雨猫駆け込みし映画館              高橋ヲブラダ

筑波山夕陽のなかの烏瓜               池村実千代

落葉踏む音なきエールやデフ五輪           伊藤 誠一

牡蠣洗い独り酌む夜の北斗星             須藤 光迷

《参加者》【出席9人】嵐田双歩、大澤水牛、金田青水、篠田朗、杉山三薬、徳永木葉、中村迷哲、向井愉里、溝口戸無広。【投句参加28人】池村実千代、和泉田守、伊藤誠一、伊藤健史、岩田千虎、植村方円、大沢反平、岡田鷹洋、岡松卓也、加藤明生、工藤静舟、久保道子、久保田操、坂部富士子、澤井二堂、須藤光迷、高井百子、高橋ヲブラダ、堤てる夫、中沢豆乳、中嶋阿猿、中野枕流、旙山芳之、廣上正市、藤野十三妹、星川水兎、水口弥生、横井定利。

(報告 中村迷哲)

 

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酔吟会第177回例会

11人が「山茶花」「熱燗」を詠む

首位6点は青水「竹箒」、次席5点に5句ひしめく

酔吟会は令和7年11月例会(通算第177回)を8日午後1時から江東区の芭蕉記念館で開催した。兼題は「山茶花」、玉田春陽子さんから出題された席題は「熱燗」。雑詠を含め投句5句、選句6句(うち特選1句)の結果、首位の6点句に金田青水さんの「山茶花は散るままがよし竹箒」が、次点の5点句には嵐田双歩さんの「盛り塩の少し欠けたる時雨かな」および「山茶花や噂話は垣根越し」、大澤水牛さんの「長き夜を三分割の小用かな」、金田青水さんの「アセアンの母子の借着の七五三」、廣田可升さんの「冬ぬくしじゃんけんグリコで帰る子ら」の5句が選ばれた。次いで4点句には、岡田鷹洋さんの「山茶花や母校はブルに潰されて」が、3点句には嵐田双歩さんの「愚痴こぼし熱燗零し指舐めて」、徳永木葉さんの「山茶花の紅を散り敷き苔の庭」および「山茶花や介護バス待つ車椅子」、向井愉里さんの「熱燗の喉に沁み入るひと口め」が並んだ。高得点句11句のうち、約半数の5句を兼題「山茶花」の句が占め、逆に席題の「熱燗」は2句にとどまり、飲兵衛の多い句会としては意外な結果に終わった。暦の上ではこの日は立冬の翌日となるが、まさに小春日と呼びたくなる好天気。芭蕉記念館二階の座敷で、今年最後の句会をゆったりと気分よく終えることが出来た。兼題別の高点句(3点以上)は次の通り。

兼題「山茶花」

山茶花は散るままがよし竹箒      金田 青水

山茶花や噂話は垣根越し        嵐田 双歩

山茶花や母校はブルに潰されて     岡田 鷹洋

山茶花の紅を散り敷き苔の庭      徳永 木葉

山茶花や介護バス待つ車椅子      徳永 木葉

席題「熱燗」

愚痴こぼし熱燗零し指舐めて      嵐田 双歩

熱燗の喉に沁み入るひと口め      向井 愉里

「当季雑詠」

盛り塩の少し欠けたる時雨かな     嵐田 双歩

長き夜を三分割の小用かな       大澤 水牛

アセアンの母子の借着の七五三     金田 青水

冬ぬくしじゃんけんグリコで帰る子ら  廣田 可升

<句会参加者11人>嵐田双歩、岩田千虎、大澤水牛、岡田鷹洋、金田青水、久保道子、杉山三薬、玉田春陽子、徳永木葉、廣田可升、向井愉里。 (報告 廣田可升)

 

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番町喜楽会第233回例会

首位に満智「散歩千歩」、青水「熊ゐる秋」が次点

14人が「立冬」と「落葉」を詠む

番町喜楽会は令和7年11月の例会(通算第233回)を、文化の日の3日午後6時半から東京・九段下の千代田区生涯学習館で開催した。前日が十三夜で暦の上ではまだ晩秋だったが、兼題は「立冬」と「落葉」。14人から68句の投句があった。句会には6人が参加、選句6句(欠席者は5句)の結果、斉山満智さんの「小春日や散歩再開千歩まで」が7点で首位、次点は5点で金田青水さんの「日常に熊ゐる秋の異常かな」、三席には大澤水牛さんの「立冬やいそいそと出す錫ちろり」、須藤光迷さんの「散髪は妻の為すまま秋麗」、高井百子さんの「嘘寒や田畑五反五万円」、星川水兎さんの「良き音を狙い定めて落葉踏む」の4句が4点で並んだ。以下3点2句、2点10句、1点23句とすさまじく票が割れた。兼題別の高点句(3点以上)は次の通り。

「立冬」

立冬やいそいそと出す錫ちろり           大澤 水牛

「落葉」

良き音を狙い定めて落葉踏む            星川 水兎

植物園袋につめて落葉売る             玉田春陽子

「当季雑詠」

小春日や散歩再開千歩まで             斉山 満智

日常に熊ゐる秋の異常かな             金田 青水

散髪は妻の為すまま秋麗              須藤 光迷

嘘寒や田畑五反五万円               高井 百子

冬浅し路地にポン菓子破裂音            玉田春陽子

【句会出席6人】大澤水牛、須藤光迷、玉田春陽子、中村迷哲、廣田可升、向井愉里。【投句参加8人】嵐田双歩、金田青水、斉山満智、高井百子、堤てる夫、徳永木葉、星川水兎、前島幻水。 (報告 須藤光迷)

 

 

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清瀬吟行を開催

10月18日(土)、日経俳句会・番町喜楽会合同で東京清瀬市の清瀬サナトリウム跡地や国立ハンセン病資料館などを巡る「清瀬風立ちぬ吟行」を実施した。参加者は、大澤水牛、金田青水、坂部富士子、中村迷哲、廣田可升、向井愉里、杉山三薬の7人。

昭和6年に東京府清瀬村に設立された「東京府立清瀬病院」と同14年設立の「傷痍軍人東京療養所」を引き継いで、現在の独立行政法人東京病院になった。昭和20年代には府立清瀬病院を中心に十数の結核療養所が設置され、5千人もの患者が治療を受け、俳人の石田波郷、小説家の吉行淳之介、福永武彦、結城昌治などが療養していた。しかし現在は結核で長期療養する患者が減ったせいか、サナトリウムのあった場所は草茫茫の広大な空地で、往時、療養患者の憩いの場であった「桜の園」など、植えられて80数年たち寿命の尽きたソメイヨシノが朽ち折れたまま放置されている。一行はそうした手入れのされていない雑木林、草むら、病院の職員寮などが点在する中をただただ歩く。誰も取らない実をたわわにつけた柿の木や蜜柑の木が寂しげだ。結核療養という性質上、文化遺産とか、歴史遺産というには、憚られるものがあるのだろう。残す、というより、消えて行くのを待つという気配が感じられる。清瀬市などが作っている歴史資料にも「負の遺産」と表現された例が記されている。

次の目的地はもう一つの負の遺産「ハンセン病資料館」。ハンセン病療養所「多摩全生園」に隣接して、一九九三年に設立され、これまでに約五十六万人が来館したという。療養所といえば聞こえは良いが、実態は隔離施設。療養所内を再現したジオラマや、収容された人たちの作った日用品から囲碁将棋をはじめとした趣味の道具類等、一つ一つに患者たちの苦悩や思いがこもっている。一同、そうした展示資料、事実の重さにすっかり圧倒された。館を出た句友たちしばらく無言で帰路についた。吟行目的地としてはおよそ不似合いなものではあったが、実に深い感銘を受けた。

吟行句会はいつものように後日、幹事に三句メール送信し、メールで互選する方式をとった。参加者7人の代表句は次の通り。

折れ朽ちし桜の園の秋の蝶        大澤 水牛

吾が血潮いくらでも吸へ秋やぶ蚊     金田 青水

もぎたての柿を拭きをる句友かな     坂部富士子

秋闌けて思いは重い資料館        杉山 三薬

救癩の重き歴史や秋の園         中村 迷哲

置き去りのベンチのモダン冬隣      廣田 可升

木の実降る緑陰通りそぞろ行く      向井 愉里

(報告 杉山三薬・大澤水牛)

 

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日経俳句会第243回例会

35人参加「後の月」と「とろろ汁」を詠む

首位はヲブラダ句「咽頭がん」、二席に三薬句「千住大橋小橋」

日経俳句会は10月15日(水)、神田・鎌倉橋の日経広告研究所会議室で10月例会(通算243回)を開いた。ようやく涼しくなった途端に、この日は肌寒さを感じるほどの秋の夕。出席者は9人と少なかったものの、いつものように忌憚のない句評もあり、実りある句会となった。「後の月」と「とろろ汁」の兼題に、35人から105句の投句があり、6句選(欠席は5句)の結果、一席は高橋ヲブラダさんの8点句「咽頭がん全て取れたぞとろろ汁」、二席は杉山三薬さんの「十三夜千住に大橋小橋あり」が6点で続いた。三席は、高井百子さんの「生家跡灯籠だけの十三夜」、岩田千虎さんの「溜息も愚痴も呑み込みとろろ汁」、須藤光迷さんの「塗箸の先の剥げたりとろろ汁」、大沢反平さんの「老妻の食の細さよ衣被」、中村迷哲さんの「鳥獣とせめぎ合ふ里秋深し」の5句が5点で並んだ。以下、4点10句、3点14句、2点18句、1点22句だった。

兼題別の高点句(3点以上)は以下の通り。

「後の月」

十三夜千住に大橋小橋あり              杉山 三薬

生家跡灯籠だけの十三夜               高井 百子

万博や残るリングに後の月              伊藤 健史

縁台に君の残り香後の月               中野 枕流

たたら跡渡来の墓や十三夜              廣上 正市

一筋の航跡照らす後の月               岩田 千虎

いつまでも続くおしやべり十三夜           加藤 明生

古書店のビルの狭間に後の月             久保田 操

十三夜塔にぽつんとポンジュース           高井 百子

礎石だけ残る都府楼後の月              中村 迷哲

雲切れて不作の村に後の月              中沢 豆乳

「とろろ汁」

咽頭がん全て取れたぞとろろ汁            高橋ヲブラダ

溜息も愚痴も呑み込みとろろ汁            岩田 千虎

塗箸の先の剥げたりとろろ汁             須藤 光迷

ちさき手ですり鉢おさえとろろ汁           池村実千代

けふもまたする事もなきとろろ汁           伊藤 誠一

分け合いし人思い出すとろろ汁            伊藤 健史

擂鉢は妻が抑へてとろろ汁              大澤 水牛

とろろ汁隅田の川をそばに見て            加藤 明生

すり鉢は孫の支えるとろろ汁             中村 迷哲

当季雑詠

老妻の食の細さよ衣被                   大沢 反平

鳥獣とせめぎ合ふ里秋深し              中村 迷哲

顔洗ふ蛇口の水に遅き秋               岩田 千虎

寛解と手をにぎり合ふ菊日和             金田 青水

庭の柿陽射しを浴びて輝けり             堤 てる夫

秋ともし古事記の謎に迷ひ込む            徳永 木葉

野に還る途中の棚田赤とんぼ             廣上 正市

日本にたまたま生まれ栗ご飯             嵐田 双歩

欲少し米寿迎える豊の秋               岡田 鷹洋

気球より眺むる古墳秋深し              加藤 明生

夜学の灯小百合と学び傘寿なり            中沢 豆乳

《参加者》【出席9人】嵐田双歩、大澤水牛、金田青水、坂部富士子、篠田朗、杉山三薬、中村迷哲、星川水兎、溝口戸無広。【投句参加26人】池村実千代、伊藤誠一、伊藤健史、岩田千虎、植村方円、大沢反平、岡田鷹洋、岡松卓也、加藤明生、工藤静舟、久保道子、久保田操、澤井二堂、須藤光迷、高井百子、高橋ヲブラダ、堤てる夫、徳永木葉、中沢豆乳、中嶋阿猿、中野枕流、旙山芳之、廣上正市、藤野十三妹、向井愉里、横井定利。 (報告 嵐田双歩)

 

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番町喜楽会第232回例会

17人参加、「鰯雲」と「水澄む」を詠む

可升さんの“挑む古城”がトップ6点

番町喜楽会は令和7年10月4日(土)、東京・九段下の千代田区生涯学習館で第232回例会を開催した。朝晩ようやく涼しくなり、ことにこの日は夕方に一雨あって過ごしやすくなったのだが、これまでの異常な猛暑続きで家族や自身の体調に狂いを生じた向きもあり、出席者は7人に止まった。ただし欠席者も全員投句、番喜会常連17人の句が出そろった。今回の兼題は「鰯雲」と「水澄む」。投句総数は82句で、6句選(欠席者は5句)で選句を進めた結果、第一席「天」の位は6点で廣田可升さんの「秋灯下挑む古城は一〇〇〇ピース」。「地」の位5点には嵐田双歩さんの「国東の水澄む磯の兜蟹」、斉山満智さんの「しっぽ立て迎える猫のいない秋」、大澤水牛さんの「百千の嘘を沈めて水澄めり」の3句が並んだ。「人」の位4点には6句がひしめき合い、3点3句、2点10句、1点18句という乱戦模様を呈した。兼題別の高点句(3点以上)は次の通り。

「鰯雲」

生涯の転居いくたび鰯雲               徳永 木葉

能登の海越えて棚田へ鰯雲              須藤 光迷

その下は海なし県や鰯雲               玉田春陽子

電柱は地中化してよ鰯雲               須藤 光迷

鰯雲手足拡げて露天風呂               前島 幻水

「水澄む」

百千の嘘を沈めて水澄めり              大澤 水牛

国東の水澄む磯の兜蟹                嵐田 双歩

水澄むや跡継ぎ募る和紙の里             中村 迷哲

水澄むやダムの底には古き村             星川 水兎

「当季雑詠」

秋灯下挑む古城は一〇〇〇ピース           廣田 可升

しっぽ立て迎える猫のいない秋            斉山 満智

故郷へ喪服いくたび流れ星              廣田 可升

秋冷や夕闇まとふ杉の玉               玉田春陽子

《参加者》【出席7人】大澤水牛、金田青水、須藤光迷、玉田春陽子、中村迷哲、廣田可升、向井愉里。【投句参加10人】嵐田双歩、池内的中、斉山満智、澤井二堂、高井百子、堤てる夫、徳永木葉、星川水兎、前島幻水、山口斗詩子。

(報告 大澤水牛)

 

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日経俳句会第242回例会

女性3人が上位を独占

首位16点に千虎句「夜の森」、二席に十三妹句、三席道子句

日経俳句会は令和7年9月例会(通算242回)を9月21日(日)午後2時から鎌倉橋の千代田区立スポーツセンター和室で開いた。秋らしい陽気になり所用のある人が多かったのか、出席者は9人にとどまったが、徳永木葉さんと中沢豆乳さんが久しぶりに顔を見せ、にぎやかな句会となった。兼題は「秋の水」と「茸」。37人から111句の投句があり、6句選(欠席は5句)の結果、岩田千虎さんの「夜の森きのこ宇宙と交信す」が16点を得て断トツの首位。二席には藤野十三妹さんの「わが老いをさらりと映す秋の水」が12点で続き、三席は久保道子さんの「つるされて五線譜のようあんぽ柿」の11点句。上位3人を女性が占め、いずれも二桁得点というめったにない〝快挙〟となった。このほか7点句に伊藤健史さんの「いきものは小声となりぬ秋の水」と久保道子さんの「うつる空両手ですくう秋の水」が並び、久保さんは投句3句がすべて高点句となった。以下、5点2句、4点7句、3点4句、2点14句、1点29句と、上位句に点が集中した形となった。兼題別の高点句(3点以上)は以下の通り。

「秋の水」

わが老いをさらりと映す秋の水           藤野十三妹

いきものは小声となりぬ秋の水           伊藤 健史

うつる空両手ですくう秋の水            久保 道子

哲学の道に沿ひゆく秋の水             中村 迷哲

執着を流していくや秋の水             中嶋 阿猿

龍神に翳す手のひら秋の水             篠田  朗

秋の水供え遺影に独り言              徳永 木葉

奥入瀬や鏡となりし秋の水             坂部富士子

小魚の輪舞透けたり秋の水             杉山 三薬

「茸」

夜の森きのこ宇宙と交信す             岩田 千虎

舞茸の在り処語らず爺逝けり            廣上 正市

親子連れ図鑑片手の茸狩り             加藤 明生

とりどりに森の香まとい茸汁            和泉田 守

毒キノコ傘艶やかに誘ひ来る            久保田 操

茸採り熊は出ぬかと気もそぞろ           徳永 木葉

きのこじるしいたけえのきぶなしめじ        久保 道子

 

当季雑詠

つるされて五線譜のようあんぽ柿          久保 道子

サラリーマン辞めて十年秋日和           岩田 千虎

着信の履歴消せずに秋彼岸             植村 方円

あるじなき庭にすゝきと思い草           工藤 静舟

葬列に声をかぎりの法師蝉             中沢 豆乳

登高や黄金に染まる甲斐の里            溝口戸無広

《参加者》【出席9人】嵐田双歩、大澤水牛、金田青水、篠田朗、杉山三薬、徳永木葉、中沢豆乳、中村迷哲、溝口戸無広。【投句参加28人】池村実千代、和泉田守、伊藤誠一、伊藤健史、岩田千虎、植村方円、大沢反平、岡田鷹洋、岡松卓也、加藤明生、工藤静舟、久保道子、久保田操、坂部富士子、澤井二堂、須藤光迷、高井百子、高橋ヲブラダ、堤てる夫、中嶋阿猿、中野枕流、旙山芳之、廣上正市、藤野十三妹、星川水兎、水口弥生、向井愉里、横井定利。

(報告 中村迷哲)

 

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酔吟会第176回例会

10人が参加、「新米」「無」を詠む

首位7点に木葉句と春陽子句、二席双歩句、三席に千虎句

酔吟会は令和7年9月例会(通算第176回)を13日(土)午後1時から江東区の古石場文化センターで開催した。兼題は「新米」、杉山三薬さんから出題された席題は「無」。雑詠を含め投句5句、選句6句(うち特選1句)の結果、首位7点句に玉田春陽子さんの「字余りのような八十過ぎの秋」と徳永木葉さんの「病める眼を色無き風にさらしたり」が並び、二席5点句には嵐田双歩さんの「秋彼岸いつまで回る室外機」が選ばれた。三席4点句には岩田千虎さんの「することも無き一日や秋の雲」と徳永木葉さんの「新米や通夜の厨の塩むすび」が続き、3点句には嵐田双歩さんの「今年米少し離れて備蓄米」が入った。いつもの句会では3点句が多く出るのに、今回は1句のみという珍現象となった。

この日は猛暑が一段落したやや過ごしやすい気候で、会場が初めて使用する古石場文化センターということもあり、少し早めに門前仲町駅前に集合し、深川不動堂、富岡八幡宮、親水公園、文化センター内の小津安二郎展示コーナーを巡る、ミニ吟行のような句会となった。兼題別の高点句(3点以上)は次の通り。

「新米」

新米や通夜の厨の塩むすび             徳永 木葉

今年米少し離れて備蓄米              嵐田 双歩

「無」

病める眼を色無き風にさらしたり          徳永 木葉

することも無き一日や秋の雲            岩田 千虎

当季雑詠

字余りのような八十過ぎの秋            玉田春陽子

秋彼岸いつまで回る室外機             嵐田 双歩

《句会参加者10人》嵐田双歩、岩田千虎、大澤水牛、岡田鷹洋、金田青水、杉山三薬、須藤光迷、玉田春陽子、徳永木葉、廣田可升。

(報告 廣田可升)

 

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