番町喜楽会第201回例会

春陽子さんの「セーターの伸びた袖」がトップ7点

番町喜楽会は令和4年12月の例会(通算第201回)を12月3日、東京・九段下の千代田区生涯学習館で開催した。17人から投句があり、14人が顔を揃えた。兼題は「大雪(たいせつ)」と「冬帽子」。選句は6句(欠席者は5句) で句会を進めた結果、玉田春陽子さんの「セーターの袖の伸びたる余生かな」(7点句)と、中村迷哲さんの「大雪や湯治場に満つ津軽弁」(6点句)、そして須藤光迷さんの「米粒のごと柊の花こぼれ」(5点句)がトップ争いを繰り広げたが、結局、玉田春陽子さんに凱歌が上がり令和4年掉尾を飾る特選トップの座を射止めた。以下、4点句が4句、3点3句、2点11句、1点20句という結果であった。兼題別の高点句(3点以上)は次の通り。

「大雪」

大雪や湯治場に満つ津軽弁             中村 迷哲

大雪や物は試しと赤パンツ             谷川 水馬

大雪や乾布摩擦の父の背な             嵐田 双歩

「冬帽子」

あの人と遠目に知れる冬帽子            廣田 可升

姉妹にて色違いなる冬帽子             須藤 光迷

八ヶ岳愛した友の冬帽子              堤 てる夫

「雑詠」

セーターの袖の伸びたる余生かな          玉田春陽子

米粒のごと柊の花こぼれ              須藤 光迷

再婚の新居はリノベ冬ぬくし            高井 百子

何にでも一家言あり泥鰌鍋             星川 水兎

≪参加者≫【出席14人】嵐田双歩、大澤水牛、金田青水、須藤光迷、高井百子、田中白山、谷川水馬、玉田春陽子、堤てる夫、徳永木葉、中村迷哲、廣田可升、前島幻水、向井愉里。【投句参加3人】池内的中、澤井二堂、星川水兎。

(報告・谷川水馬)

 

 

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日経俳句会第214回例会

36人が「山眠る」「石蕗の花」を詠む

三代句「五浦」が最高8点、二席に雀九句「蹲の杓」

日経俳句会は令和4年11月例会(通算214回)を16日(水)に鎌倉橋の日経広告研究所会議室で開いた。気温の変化で体調を崩す人もあり出席は13人にとどまったが、高点句が続出し充実の句会となった。兼題は「山眠る」と「石蕗の花」。36人から117句の投句があり、6句選(欠席は5句)の結果、岩田三代さんの「海鳴りを聞きて五浦の石蕗の花」が最高8点を獲得。二席7点には鈴木雀九さんの「蹲の杓置く脇に石蕗の花」が続いた。三席6点には岩田三代さん「水底に古き村抱き山眠る」をはじめ、岡田鷹洋さん「山眠る杜氏の仕込み夜もすがら」と「面会日兄と焼き芋分け合ひて」の二句、今泉而云さん「小春日の納屋に動かぬ機織り機」、廣上正市さん「届かずに木守の柿となりにけり」の計5句が並んだ。以下、5点9句、4点5句、3点9句と、高点句が30句にのぼった。そのほかは2点13句、1点20句だった。兼題別の高点句(3点以上)は以下の通り。

「山眠る」

水底に古き村抱き山眠る                  岩田 三代

山眠る杜氏の仕込み夜もすがら               岡田 鷹洋

にびの空木々薄墨に山眠る                 篠田  朗

大仏は俯き加減山眠る                   須藤 光迷

大伽藍ふところに抱き山眠る                徳永 木葉

山眠る顎まで雲を引き寄せて                溝口戸無広

谺さえ返さぬ山の深眠り                  水口 弥生

又ひとり離村したとや山眠る                金田 青水

新味噌を盛る店先や山眠る                 高井 百子

山眠る牛の尿の音響く                   谷川 水馬

幾星霜石仏を抱き山眠る                  中村 迷哲

「石蕗の花」

海鳴りを聞きて五浦の石蕗の花               岩田 三代

蹲の杓置く脇に石蕗の花                  鈴木 雀久

この道は抜けられません石蕗の花              杉山 三薬

信仰を隠れ継ぐ島石蕗の花                 中村 迷哲

このごろはあるじ見かけず石蕗の花             大下 明古

石蕗咲くや寺に往時の境内図                廣上 正市

クレヨンの色濃く塗りし石蕗の花              植村 方円

房総は雨も暖か石蕗の花                  星川 水兎

「当季雑詠」

小春日の納屋に動かぬ機織り機               今泉 而云

面会日兄と焼き芋分け合ひて                岡田 鷹洋

届かずに木守の柿となりにけり               廣上 正市

千歳飴も裾も玉砂利擦りながら               嵐田 双歩

大宇宙星が星食う冬の夜                  徳永 木葉

文化の日最前列でタカラヅカ                旙山 芳之

里山に柿の点描北信濃                   星川 水兎

蓮枯れてアートだよねと若き声               伊藤 健史

大根炊き匂ひ洩れくる老いの家               大澤 水牛

寒暁も老犬戸口で主人待つ                 澤井 二堂

老いの目を擦り見上げる冬の蝕               堤 てる夫

《参加者》【出席13人】嵐田双歩、岩田三代、植村方円、大澤水牛、岡田鷹洋、金田青水、澤井二堂、篠田朗、杉山三薬、鈴木雀九、堤てる夫、中村迷哲、向井愉里。【投句参加23人】池村実千代、伊藤健史、今泉而云、大沢反平、大下明古、加藤明生、工藤静舟、久保田操、須藤光迷、高井百子、髙石昌魚、高橋ヲブラダ、谷川水馬、徳永木葉、中沢豆乳、中嶋阿猿、旙山芳之、廣上正市、藤野十三妹、星川水兎、溝口戸無広、水口弥生、横井定利。

(報告 中村迷哲)

 

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酔吟会第159回例会

 

14人出席、「酉の市」「帰り花」詠む

会場の芭蕉記念館で「俳画の楽しみ」展を鑑賞

酔吟会は11月12日(土)、江東区常盤の「芭蕉記念館」会議室で11月例会(通算159回)を開催した。句会に先立ち同館で開催中の「俳画の楽しみ」展を野呂達矢芭蕉記念館次長のミュージアムトーク付きで鑑賞した。「俳画の楽しみ」展は、俳文学研究者でもある立正大学文学部教授の伊藤善隆氏のコレクションを中心に展示したもので、参加者は興味深く句会前の鑑賞を楽しんだ。この展示会は来年1月22日まで開かれている。俳画に絞った展覧会は珍しく、非常に珍しい作品が多数展示されており、必見の価値がある。

この日の句会出席は14人。恒例により持ち寄った作品を短冊に書くことから例会が始まった。兼題は「酉の市」と「帰り花」。雑詠を含め投句5句、投句総数70句、選句6句で進めた結果、最高点は玉田春陽子さんの8点「古書の値は鉛筆書きや一葉忌」の1句。次席は6点で「帰り花他人の老いはよく分かる」の杉山三薬句。三席5点には「独り居のよいしょと立ちて葱刻む」の今泉而云句、「玉蒟蒻も小さくなるや芋煮会」の高井百子句、「右膝が冬の初めを報せおり」の向井愉里句が並んだ。4点句は無し。3点句には大澤水牛、岡田鷹洋、高井百子、谷川水馬、廣田可升、向井愉里の6句が入った。2点句は10句、1点句は16句だった。兼題別の高点句(3点以上)は次の通り。

「酉の市」

酉の市未だ見ぬ福を値切りをり            高井 百子

境内は異次元迷路酉の市               向井 愉里

「帰り花」

帰り花他人の老いはよく分かる            杉山 三薬

陽の匂ふ子供の髪や帰り花              谷川 水馬

月食を見逃した夜の帰り花              廣田 可升

「当季雑詠」

古書の値は鉛筆書きや一葉忌             玉田春陽子

独り居のよいしょと立ちて葱刻む           今泉 而云

玉蒟蒻も小さくなるや芋煮会             高井 百子

右膝が冬の初めを報せおり              向井 愉里

錆鮎の姿正して焼かれたる              大澤 水牛

マフラーで隠す補聴器老いの見栄           岡田 鷹洋

 

《参加者十四人》嵐田双歩、今泉而云、大澤水牛、岡田鷹洋、金田清水、久保道子、杉山三薬、須藤光迷、高井百子、谷川水馬、玉田春陽子、堤てる夫、廣田可升、向井愉里。

(まとめ 高井百子・廣田可升)

 

 

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日経俳句会・番町喜楽会合同深秋信濃吟行

18人が参加、景色と蕎麦を満喫

番町喜楽会と日経俳句会は合同で、10月30日(日)から一泊二日で信州上田周辺の名所を巡り、新蕎麦を味わう吟行を行った。杉山三薬幹事の提案に、上田在住の堤てる夫・高井百子夫妻が全面協力。18人がマイクロバスをチャーターして、山深い修那羅山の石仏群をはじめ、五島慶太記念館、青木村義民歴史展示室、大法寺の三重塔を見物した。昼食は名店の蕎麦、夜は上田の老舗旅館で信州料理とワイン、地酒を堪能した。翌日は海野宿、小諸、上田城の3コースに分かれて観光、それぞれ句材を得て帰京した。泊りがけの吟行は2019年11月の養老渓谷吟行以来三年ぶり。好天に恵まれ、コロナの憂さを晴らす大満足の吟行となった。吟行を終え恒例のメール句会を実施、18人から54句の投句があった。5句選の結果、星川水兎さんの「木の瘤も拝めば仏秋うらら」が最高8点を獲得。二席7点は廣田可升さんの「義民史に埋まる書棚や冬隣」が占め、三席6点には嵐田双歩さんの「クーポンで美酒酌み交わし秋惜しむ」が入った。このほか5点1句、4点4句、3点7句、2点7句、1点13句で、上位句に点が集まる結果となった。参加者の代表句は以下の通り。

よく晴れて思ひ思ひに拾ふ秋       嵐田 双歩

木の洞に小さき仏や秋の風        今泉 而云

足取りを軽く見せての秋吟行       植村 方円

落葉着る目鼻の欠けし石仏        大澤 水牛

国宝の塔が見守る里の秋         金田 靑水

石仏の顔ににじみし秋憂ひ        澤井 二堂

山澄んで義民偲ばす石仏         杉山 三薬

秋の果を手に手に道の駅あおき      須藤 光迷

エンジンブレイキのバス黄落の道くだる  高井 百子

家々に鈴なりの柿青木村         田中 白山

暮の秋石神仏と睨めつこ         谷川 水馬

海野宿梲(うだつ)に足場冬隣      玉田春陽子

天守閣無き城跡の大銀杏         堤 てる夫

豪商の家は蕎麦屋に秋の蝶        徳永 木葉

格子戸の連なる町屋新酒売る       中村 迷哲

千仏の千様に座し末枯るゝ        廣田 可升

秋晴や旅の始めの地粉蕎麦        星川 水兎

高枝に天狗の気配枯葉落つ        向井 愉里

(まとめ 中村迷哲)

 

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番町喜楽会第200回例会

 

水牛句「席譲る子」が最高6点、二席は水馬句「ママチャリ」

「十一月」と「大根」を詠む

番町喜楽会は令和4年11月の例会(通算第200回)を7日、東京・九段下の千代田区生涯学習館で開催した。18人から投句があり、11人が顔を揃えた。兼題は「十一月」と「大根」。選句6句(欠席者5句)で句会を進めた結果、大澤水牛さんの「はにかみて席譲る子や秋うらら」が6点でトップ、二席5点に谷川水馬さんの「ママチャリの前は大根子は後ろ」が入った。三席は4点で澤井二堂さんの「猫の手の温かき日や十一月」、須藤光迷さんの「月天心終着駅で待つ始発」、前島幻水さんの「子らも来て妻の傘寿の菊の宴」の3句が並んだ。3点が8句で、2点が15句、1点が24句と得点がばらけた。兼題別の高点句(3点以上)は次の通り。

「十一月」

猫の手の温かき日や十一月              澤井 二堂

十一月行きつ戻りつ冬になる             田中 白山

十一月実の落ち終えて木々眠る            田中 白山

列車待つ十一月の足湯かな              谷川 水馬

「大根」

ママチャリの前は大根子は後ろ            谷川 水馬

大根干し海の風良し日和良し             谷川 水馬

鯨肉の潮味浸みる大根煮               中村 迷哲

「当季雑詠」

はにかみて席譲る子や秋うらら            大澤 水牛

月天心終着駅で待つ始発               須藤 光迷

子らも来て妻の傘寿の菊の宴             前島 幻水

祖母が着て母着た晴れ着七五三            池内 的中

コスプレの少女の夜寒渋谷駅             徳永 木葉

(二百回例会に寄せて)

善き人の往き交う句会秋闌ける            堤 てる夫

《参加者》【出席11人】池内的中、今泉而云、大澤水牛、金田青水、須藤光迷、高井百子、田中白山、玉田春陽子、堤てる夫、廣田可升、前島幻水。【投句参加者7人】嵐田双歩、澤井二堂、谷川水馬、徳永木葉、中村迷哲、星川水兎、向井愉里。

(報告 須藤光迷)

 

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日経俳句会第213回例会

36人参加「十月」「黄落」を詠む

光迷句「家族葬」が最高12点、百子句「妻の早足」が9点で続く

日経俳句会は10月19日、令和4年10月例会(通算213回)を鎌倉橋の日経広告研究所会議室で開いた。朝晩寒くなり晩秋にふさわしい夕べ、14人が出席し賑やかな句会となった。「十月」と「黄落」の兼題に36人から108句の投句があり、6句選(欠席は5句)の結果、須藤光迷さんの「家族葬にてとの便り秋時雨」が12点で一席に輝いた。二席は高井百子さんの「秋天や妻の早足追ひつけず」で9点、三席には向井愉里さんの「十月をあれこれ詰めて二段重」が8点で続いた。そのほか、先月入会したばかりの溝口戸無広さんの「十月や空へと続く千枚田」など、3句が6点で並んだ。以下、5点3句、4点3句、3点14句、2点22句、1点24句。4点以上が12句と少なく、まんべんなく得票した。兼題別の高点句(3点以上)は以下の通り。

「十月」

十月をあれこれ詰めて二段重             向井 愉里

十月の昭和の五輪ふと浮ぶ              久保田 操

十月や空へと続く千枚田               溝口戸無広

十月やベッドの脇に予備毛布             大澤 水牛

十月や茶色の上着取り出して             植村 方円

十月の果実に我が身甘やかす             大下 明古

十月や夢百歳へ十五年                岡田 鷹洋

十月や三年ぶりの旅に出る              岩田 三代

十月の窓の明かりの暖かさ              中嶋 阿猿

十月の大気を吸ひて太極拳              中村 迷哲

「黄落」

黄落や踏んだ踏まぬの通学路             伊藤 健史

黄落にくるまれ眠る城趾かな             嵐田 双歩

夕映えの地獄の門に黄落す              須藤 光迷

黄落やゴッホの顔の無精ひげ             谷川 水馬

黄落や横浜日本大通り                廣上 正市

黄落の一葉拾いつ墓地探し              藤野十三妹

黄落の夕陽を掬ふボートかな             星川 水兔

「当季雑詠」

家族葬にてとの便り秋時雨              須藤 光迷

秋天や妻の早足追ひつけず              高井 百子

遺句集を編みて深々寒露の夜             大澤 水牛

蔦巻くや故郷の家は朽ち果てて            工藤 静舟

渡り鳥タワー見ゆると鳴き交はす           今泉 而云

幼子が母呼ぶ道に金木犀               岩田 三代

匂ひくる金木犀を探す路地              久保田 操

お互ひに立派な腹よ秋刀魚焼く            谷川 水馬

ゴム巻きの愛機を放つ天高し             中村 迷哲

《参加者》【出席14人】嵐田双歩、今泉而云、岩田三代、植村方円、大澤水牛、岡田鷹洋、金田青水、篠田朗、杉山三薬、鈴木雀九、堤てる夫、徳永木葉、中村迷哲、星川水兎。【投句参加22人】池村実千代、伊藤健史、大沢反平、大下明古、加藤明生、工藤静舟、久保田操、澤井二堂、須藤光迷、高井百子、髙石昌魚、高橋ヲブラダ、谷川水馬、中沢豆乳、中嶋阿猿、旙山芳之、廣上正市、藤野十三妹、溝口戸無広、水口弥生、向井愉里、横井定利。 (報告 嵐田双歩)

 

 

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第199回番町喜楽会

最高5点に「草相撲」迷哲句

17人参加「穭田」「鹿」を詠む

番町喜楽会は令和4年10月の例会(通算第199回)を1日、東京・九段下の千代田区生涯学習館で開催した。17人から投句があり、15人が顔を揃えた。兼題は「穭田」と「鹿」。選句は6句( 欠席者は5句) で句会を進めた結果、中村迷哲さんの「打っちゃれと客も反身の草相撲」が5点でトップとなり、二席4点には嵐田双歩さんの「姥捨の田ごとの穭うすみどり」をはじめ、須藤光迷、今泉而云、谷川水馬、玉田春陽子、廣田可升さんの6人7句がひしめき合う結果となった。以下、3点が6句、2点が10句、1点が24句であった。兼題別の高点句(3点以上)は次の通り。

「穭田」

姥捨の田ごとの穭うすみどり            嵐田 双歩

穭田や米粉のパンの試食会             須藤 光迷

陽をはじく穭田続く車窓かな            星川 水兎

「鹿」

鹿の立つ丘の稜線夕焼けて             今泉 而云

秩父路や門扉に鹿の皮を干し            玉田春陽子

赤鳥居背にして鹿の家路かな            廣田 可升

売れ筋は鹿肉カレー道の駅             須藤 光迷

「当季雑詠」

打っちゃれと客も反身の草相撲           中村 迷哲

妻と越す七十の坂温め酒              谷川 水馬

声潜め第九をさらふ夜長かな            廣田 可升

恐竜の眠りは深し芒原               須藤 光迷

続柄は「未届の妻」秋入梅             高井 百子

秋の夜妻と取り合ふ万華鏡             谷川 水馬

星月夜二人暮らしの灯の一つ            玉田春陽子

≪参加者≫【出席15人】嵐田双歩、今泉而云、大澤水牛、金田青水、須藤光迷、高井百子、田中白山、谷川水馬、玉田春陽子、堤てる夫、徳永木葉、中村迷哲、廣田可升、前島幻水、向井愉里。【投句参加2人】澤井二堂、星川水兎。

(報告 谷川水馬)

 

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日経俳句会第212回例会

35人参加、「竹の春」と「鰯」を詠む

最高8点に「鰯煮る」水兎句、二席は「京言葉」水馬句

溝口戸無広さんが入会

日経俳句会は令和4年9月例会(通算212回)を21日(水)に鎌倉橋の日経広告研究所会議室で開いた。台風一過の爽やかな秋気の中、13人が出席し、高点続出の句会を楽しんだ。兼題は「竹の春」と「鰯」。35人から105句の投句があり、6句選(欠席は5句)の結果、星川水兎さんの「梅干は三尾に一つ鰯煮る」(原句「二匹」を「三尾」に改作)が最高8点に輝いた。二席7点には谷川水馬さんの「竹の春葉音に交じる京言葉」が入った。三席6点には岩田三代さんの「人住まぬ里を覆ひて竹の春」をはじめ、久保田操さんの「路地裏に一坪ほどの竹の春」と「鰯焼く遠き昭和の夕支度」の2句、植村方円さんの「押し黙る固定電話や長き夜」、中嶋阿猿さんの「スケボーの子の股座から鰯雲」の計5句が並んだ。以下、5点3句、4点7句、3点10句、2点21句、1点23句だった。なお今月から日経大阪本社勤務の溝口知宏(俳号=戸無広)さんが入会し、投句、選句に加わった。兼題別の高点句(三点以上)は以下の通り。

「竹の春」

竹の春葉音に交じる京言葉              谷川 水馬

人住まぬ里を覆ひて竹の春              岩田 三代

路地裏に一坪ほどの竹の春              久保田 操

竹の春古都には古都の時間軸             嵐田 双歩

鋸ひけば青き粉飛ぶ竹の春              伊藤 健史

竿売りの絶えて久しき竹の春             篠田  朗

年甲斐もなきシャツの色竹の春            髙石 昌魚

「鰯」

梅干は三尾に一つ鰯煮る               星川 水兎

鰯焼く遠き昭和の夕支度               久保田 操

海の青まとふ鰯の悲しき目              岩田 三代

鰯焼く土光臨調いま一度               須藤 光迷

大鰯誉められ叩かれつみれ汁             中沢 豆乳

入れ食いの鰯今夜はつみれ鍋             今泉 而云

一山で売られ鰯の目哀しき              徳永 木葉

万を超す鰯渦巻く大水槽               中村 迷哲

「当季雑詠」

押し黙る固定電話や長き夜              植村 方円

スケボーの子の股座から鰯雲             中嶋 阿猿

芋の露かへし幼女にかへる母             大澤 水牛

孫の問ふ何であの雲いわし雲             高井 百子

雲抱きていざよふ月や終電車             徳永 木葉

国葬に国論割るる九月かな              加藤 明生

等々力の渓間に秋気つと走る             金田 青水

爽やかや久方ぶりの理髪店              髙石 昌魚

お隣の領空侵し庭木刈る               旙山 芳之

王冠を乗せし棺や秋薔薇               星川 水兎

天高し窓を磨けば心澄む               溝口戸無広

秋蝶の不意に来てまた何処へと            向井 愉里

《参加者》【出席13人】嵐田双歩、今泉而云、大澤水牛、岡田鷹洋、金田青水、澤井二堂、杉山三薬、鈴木雀九、堤てる夫、徳永木葉、中村迷哲、星川水兎、向井愉里。【投句参加22人】池村実千代、伊藤健史、岩田三代、大沢反平、植村方円、加藤明生、工藤静舟、久保田操、篠田朗、須藤光迷、高井百子、髙石昌魚、高橋ヲブラダ、谷川水馬、中沢豆乳、中嶋阿猿、野田冷峰、旙山芳之、廣上正市、藤野十三妹、溝口戸無広、横井定利。  (報告 中村迷哲)

 

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等々力溪谷・九品仏吟行を開催

9月15日(木)、杉山三薬幹事の発案のもと日経俳句会・番町喜楽会一行11人は等々力溪谷・九品仏を巡る吟行を行った。都会の中らしからぬ等々力溪谷の幽邃な「ハケ」を堪能したあと、九品仏浄真寺の仏たち・大銀杏・大澤家の墓所などをめぐった。歩いたあとは、須藤光迷さん推奨の自由ケ丘・スペインレストランで打ち上げ、秋の一日を大いに楽しんだ。吟行を終えメール句会を実施、各人3句の投句で合計33句。5句選の結果、岩田三代さんの「うそつくな閻魔の声や秋暑し」と徳永木葉さんの「酔ひもせで逆の電車に乗る秋ぞ」が6点を集め最高点に。次いで杉山三薬さんの「はけの水落ちゆくところ渓の秋」、谷川水馬さんの「秋茄子になんと蜂蜜赤ワイン」の2句が4点。3点句は5句あり、大澤水牛さんの「パエージャの鍋底掻いて夜は長し」、金田青水さんが「ハケと云ふ異世界つつむ法師蝉」「豊饒の銀杏垂るる九品佛」の二つ、須藤光迷さんの「相場師の墓広きこと天高し」、玉田春陽子さんの「水引の見て見て見と咲きにけり」が入った。さらに2点5句、1点10句と、合計55点の点数がまんべんなくばらけた。上掲句を除いた参加者の作品は以下の通り。

秋の蚊の阿弥陀如来の手にとまり      嵐田 双歩

いにしへの人眠る崖青みかん        岩田 三代

稚児大師ひっそりと在り彼岸花       大澤 水牛

秋宵の自由が丘満ち足りて         金田 靑水

等々力の沢遊歩するアメンボと       澤井 二堂

秋の季語あるかもパエリア鍋の中      杉山 三薬

溪谷を渡り崖道曼殊沙華          須藤 光迷

付きまとふ秋の蚊払ひ不動尊        谷川 水馬

賽銭に閻魔道説く寺の秋          玉田春陽子

いつどこで秋の藪蚊の刺した痕       徳永 木葉

実を踏みて空を仰げば大銀杏        向井 愉里

(まとめ 徳永木葉)

 

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酔吟会第158回例会

江東区芭蕉記念館で初開催

15人で「秋彼岸」「夜長」詠む

最高7点水牛句「やっぱり九月」、次席てる夫句「蕎麦の花」6点

酔吟会は9月10日(土)、江東区常盤の「芭蕉記念館」の会議室で9月例会を開催した。コロナ禍対応の制限で会場探しに苦労していたが、句会世話役の廣田可升さんの尽力で同館会議室借用の途が開け、この日の初使用となった。隅田川に沿って立つ記念館は、昭和56年の開館、大正、昭和にかけて衆院議員を務め、俳人としても活躍した真鍋儀十氏の資料1200点の寄贈も得た。3階建てのビルは1階の大会議室はじめ各階に展示室、資料室などを配置。和風のくぐり門を入ると、一方に小規模ながら滝を配した日本庭園もある。芭蕉記念館の一帯は、芭蕉が奥の細道に出立するまでの住居であった「採茶庵」(さいと)跡はじめ俳句愛好家には見逃せない史跡が点在する。句会の前のひと時を大小の公園の木陰で大川の風に親しんだ同人もいたようだった。前回例会以来、欠席投句をやめた結果、この日の出席者は15人、兼題は「秋彼岸」と「夜長」で投句は雑詠合わせ一人5句(投句総数75句)、選句6句で進めた結果、最高点は大澤水牛さんの7点「この風はやっぱり九月隅田川」。次席は6点で「蕎麦の花峠越えれば青木村」の堤てる夫句。三席は5点「石磨き石に磨かれ秋の水」の玉田春陽子句だった。続く4点句は金田青水(2句)、春陽子、高井百子、今泉而云の計5句。3点7句、2点7句、1点16句だった。兼題別の高点句(3点以上)は次の通り。

「秋彼岸」

秋彼岸苅田にてなす茣蓙遊山       金田 青水

秋彼岸とうとう更地母の家        高井 百子

不揃ひの餃子を包み秋彼岸        玉田春陽子

秋彼岸バイク和尚のフルフェイス     杉山 三薬

「夜長」

じっくりと煮豚づくりによき夜長     大澤 水牛

すぐ戻りますと張り紙BAR夜長     玉田春陽子

夜長し過去の若気が走馬灯        徳永 木葉

「当期雑詠」

この風はやっぱり九月隅田川       大澤 水牛

蕎麦の花峠越えれば青木村        堤 てる夫

石磨き石に磨かれ秋の水         玉田春陽子

英女王逝くや遥かな秋の虹        今泉 而云

爽やかにあとの一人を皆で待つ      金田 青水

取り壊す家やまず引く烏瓜        今泉 而云

猫じゃらし五分刈り頭陽に透けて     谷川 水馬

大木に添ふ野仏に千草添へ        向井 愉里

【参加者15人】嵐田双歩、今泉而云、大澤水牛、大沢反平、岡田鷹洋、金田青水、久保道子、杉山三薬、須藤光迷、高井百子、谷川水馬、玉田春陽子、堤てる夫、徳永木葉 向井愉里。  (まとめ 高井百子)

 

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