「大暑」と「月見草」を詠む
猛暑響き出席は8人どまり
日経俳句会は令和5年7月例会(通算220回)を7月19日(水)に鎌倉橋の日経広告研究所会議室で開いた。兼題は「大暑」と「月見草」で、39人から116句の投句があった。連日の猛暑とはやり病で体調を崩す人が多く、出席は8人にとどまったが、少人数だけに中身の濃い句評が展開された。欠席選句が29人と多かったため、出席者は7句選(欠席は5句)とした結果、嵐田双歩さんの「大男隣に座る大暑かな」が10点を獲得、堂々の一席となった。二席9点は中村迷哲さんの「夏雲や度胸試しの淵へ跳ぶ」と横井定利さんの「ワコールの水着をつけて八十歳」が分け合い、三席7点には中沢豆乳さんの「天神の絵馬かき鳴らす青嵐」が入った。6点句には大澤水牛さんの「これ以上ぬぐものの無き大暑かな」をはじめ5句が並んだ。以下5点3句、4点3句、3点13句、2点20句、1点30句で、兼題の「大暑」と雑詠に高点句が多かった。なお今月から日経の大阪勤務の社員岡松卓也さんが入会、投句と選句に加わっている。兼題別の高点句(3点以上)は以下の通り。
「大暑」
大男隣に座る大暑かな 嵐田 双歩
これ以上ぬぐものの無き大暑かな 大澤 水牛
老守衛袖もまくらぬ大暑かな 斉藤 早苗
交差点渡りたくない大暑かな 旙山 芳之
新宿に大暑乗っかり揺らぐビル 向井 愉里
飛行機の重たそうなる大暑の日 植村 方円
墨跳ばし大筆奮ふ女子大暑 高井 百子
一歩ずつ大暑を背負ふつづら道 溝口戸無広
大暑来る詰め放題の暑さ詰め 加藤 明生
黙々と大暑の朝の庭掃除 堤 てる夫
一木をおほひ尽せし葛大暑 廣上 正市
「月見草」
姿見の残れる宿や月見草 星川 水兎
ねえ今夜月見草見に行きませう 嵐田 双歩
月見草三線欲しき宵の口 溝口戸無広
またひとつ空き家増えたり月見草 和泉田 守
優しげな夜勤のナース月見草 中沢 豆乳
好きだった人と似ている月見草 旙山 芳之
当季雑詠
夏雲や度胸試しの淵へ跳ぶ 中村 迷哲
ワコールの水着をつけて八十歳 横井 定利
天神の絵馬かき鳴らす青嵐 中沢 豆乳
日傘持つ勇気が我に今一つ 旙山 芳之
孑孑の漢字覚えて甕覗く 今泉 而云
短夜や季題兼題夢の中 加藤 明生
夏涼し女人二人の甲州路 澤井 二堂
打ち水や直ちに乾く庭の石 篠田 朗
おずおずと茅の輪くぐるや異国びと 徳永 木葉
庭に摘む葱紫蘇茗荷冷奴 廣上 正市
よく来たな噺家も言ふ夏盛り 溝口戸無広
《参加者》【出席8人】植村方円、大澤水牛、金田青水、杉山三薬、鈴木雀九、堤てる夫、中村迷哲、向井愉里。【投句参加31人】嵐田双歩、池村実千代、和泉田守、伊藤健史、今泉而云、岩田三代、岡田鷹洋、岡松卓也、荻野雅史、加藤明生、工藤静舟、久保田操、斉藤早苗、澤井二堂、篠田朗、須藤光迷、高井百子、髙石昌魚、高橋ヲブラダ、谷川水馬、徳永木葉、中沢豆乳、中嶋阿猿、中野枕流、野田冷峰、旙山芳之、廣上正市、藤野十三妹、星川水兎、溝口戸無広、横井定利
(報告 中村迷哲)