最高9点に三代句と朗句、二席は百子句「春人事」
36人が「彼岸」「囀」詠む
日経俳句会は令和5年の三月例会(通算217回)を3月15日(水)に鎌倉橋の日経広告研究所会議室で開いた。季節変わりで忙しかったり体調を崩す人もいて出席は13人だったが、女性会員の高点句が相次ぎ、桜の開花と呼応したような華やかな句会となった。兼題は「彼岸」と「囀」。36人から108句の投句があり、6句選(欠席は5句)の結果、最高9点に岩田三代さんの「故郷へ帰れぬ彼岸重ねけり」と篠田朗さんの「囀や窓を五センチ開けた朝」の2句が並んだ。二席8点は高井百子さんの「見開きの紙面あふれる春人事」、三席7点は池村実千代さんの「山ほどのセーター洗ふ彼岸入り」と中村迷哲さんの「せせらぎに囀交じる峡の宿」がそれぞれ入った。さらに6点に髙石昌魚さんの「小さき手をつなぐ皺の手彼岸道」をはじめ4句が並び、5点4句、4点6句、3点10句と高点句が19句にのぼる活況だった。兼題別の高点句(3点以上)は以下の通り。
「彼岸」
故郷へ帰れぬ彼岸重ねけり 岩田 三代
山ほどのセーター洗ふ彼岸入り 池村実千代
小さき手をつなぐ皺の手彼岸道 髙石 昌魚
よー来たと小豆煮る祖母入彼岸 中村 迷哲
青錆の腕時計巻く彼岸かな 伊藤 健史
戒名のことひそひそと春彼岸 今泉 而云
サーファーの日毎にふえて彼岸かな 須藤 光迷
薄紅に山の膨らむ彼岸過 向井 愉里
入彼岸墓に愛とか絆とか 嵐田 双歩
父母としばしの会話彼岸かな 堤 てる夫
山門を開け放ちてや彼岸来る 溝口戸無広
「囀」
囀や窓を五センチ開けた朝 篠田 朗
せせらぎに囀交じる峡の宿 中村 迷哲
谷越の囀を聞く朝湯かな 大澤 水牛
囀りに覚める実家の長寝かな 向井 愉里
囀りや一日千歩目標に 横井 定利
囀れば上にはカラス下にネコ 杉山 三薬
囀りの聞こえぬと言ふ老いうらら 高井 百子
「当季雑詠」
見開きの紙面あふれる春人事 高井 百子
空の青大地に散らし犬ふぐり 岩田 三代
山笑ふ草食む牛の大あくび 加藤 明生
卒業式初めましてと言いそうに 杉山 三薬
宇宙への夢挫かれて春の塵 須藤 光迷
雛納め妻の背中が丸くなる 旙山 芳之
春愁を丸め飲込むティータイム 久保田 操
スマホだけポッケに入れて春の町 植村 方円
春昼や人みな吾を追ひ抜きて 金田 青水
春キャベツ耳たぶのよな餃子茹で 中嶋 阿猿
絵手紙は貰ふばかりよ葱坊主 今泉 而云
《参加者》【出席13人】嵐田双歩、池村実千代、今泉而云、岩田三代、大澤水牛、岡田鷹洋、金田青水、澤井二堂、篠田朗、杉山三薬、鈴木雀九、中村迷哲、星川水兎。【投句参加23人】伊藤健史、植村方円、大沢反平、荻野雅史、加藤明生、工藤静舟、久保田操、須藤光迷、高井百子、髙石昌魚、高橋ヲブラダ、谷川水馬、堤てる夫、徳永木葉、中沢豆乳、中嶋阿猿、野田冷峰、旙山芳之、藤野十三妹、溝口戸無広、水口弥生、向井愉里、横井定利。
(報告 中村迷哲)