日経俳句会第210回例会

「夏深し」と「滴り」を詠む

最高8点に「板の間」水兎句、二席に迷哲句と二堂句

日経俳句会は令和4年7月例会(通算210回)を20日(水)に鎌倉橋の日経広告研究所会議室で開いた。コロナ感染が急拡大していることもあり、出席者は13人とやや少なめだったが、暑さを吹き飛ばすような活発なやりとりの句会となった。兼題は「夏深し」と「滴り」。35人から105句の投句があり、6句選(欠席は5句)の結果、星川水兎さんの「板の間にぺたりと座り夏深し」が最高8点に輝いた。二席7点には中村迷哲さんの「葉を丸め受ける滴り山の味」と澤井二堂さんの「猛暑道傘で日陰を持ち歩く」が並び、三席6点には高井百子さん「夏ふかし窓辺に届く草の息」と岩田三代さん「苔つたふ滴り碧き玉となり」、中村迷哲さん「地下壕の滴り聞きし夜のあり」の3句が入った。以下、5点3句、4点6句、3点14句、2点18句、1点32句と続き、全体に点のバラける結果となった。兼題別の高点句(3点以上)は以下の通り。

「夏深し」

板の間にぺたりと座り夏深し         星川 水兎

夏ふかし窓辺に届く草の息          高井 百子

草千里地平遙かに夏深し           髙石 昌魚

ジャングルの朽ちし砲台夏深し        中村 迷哲

胡瓜蔓だらしなく延び夏深む         大澤 水牛

音大き家事を厭へり夏深し          大下 明古

夏深しマスク少女の目の力          杉山 三薬

夏深しノースリーブの薄き胸         流合 水澄

夏闌くやソーラーパネル捨畑に        廣上 正市

「滴り」

葉を丸め受ける滴り山の味          中村 迷哲

苔つたふ滴り碧き玉となり          岩田 三代

地下壕の滴り聞きし夜のあり         中村 迷哲

岩盤に嗚咽のごとく滴れり          向井 愉里

滴りに知らず呼吸を合はせをり        金田 青水

滴りにあひる玩具の浮かぶ里         鈴木 雀久

滴りや摩崖仏の眼涙ぐむ           髙石 昌魚

滴りや俺への弔辞君のはず          旙山 芳之

「当季雑詠」

猛暑道傘で日陰を持ち歩く          澤井 二堂

グローブの革の匂ひや晩夏光         大下 明古

夜濯ぎや男やもめの独り言          加藤 明生

あの人をいい人にして蝉時雨         杉山 三薬

自分らしく生きろといはれ冷奴        嵐田 双歩

水茄子を素手でつまんで相撲観る       植村 方円

浮島のやうに墓所ある青田かな        廣上 正市

駄々こねるパソコンなだめ拭う汗       須藤 光迷

降る雨のやはらかにあれ合歓の花       高井 百子

老鶯の伸び伸びとした声がする        堤 てる夫

投票所空気動かぬ暑さかな          水口 弥生

海鞘は駄目何んと云つても駄目はだめ     横井 定利

《参加者》【出席13人】嵐田双歩、今泉而云、岩田三代、植村方円、大澤水牛、大沢反平、岡田鷹洋、金田青水、篠田朗、杉山三薬、徳永木葉、中村迷哲、向井愉里。【投句参加22人】池村実千代、伊藤健史、大下明古、加藤明生、久保田操、澤井二堂、鈴木雀九、須藤光迷、高井百子、髙石昌魚、高橋ヲブラダ、谷川水馬、堤てる夫、中嶋阿猿、野田冷峰、流合水澄、旙山芳之、廣上正市、藤野十三妹、星川水兎、水口弥生、横井定利。   (報告 中村迷哲)

 

This entry was posted in 句会報告. Bookmark the permalink.

コメントをどうぞ

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

*

次のHTML タグと属性が使えます: <a href="" title=""> <abbr title=""> <acronym title=""> <b> <blockquote cite=""> <cite> <code> <del datetime=""> <em> <i> <q cite=""> <strike> <strong>