日経俳句会第203回例会

今年初めての対面句会で「冬隣」と「鮭」を詠む

36人参加、投句108句

日経俳句会の令和3年10月例会(通算203回)は、緊急事態宣言の解除に伴い、内神田の日経広告研究所会議室で今年初の対面句会が実現した。新型コロナの一日当たり新規感染者数は、第五波のピーク時2万6千人近くから3、4百人と二桁近く激減した。この調子で対面句会が続けられればいいのだが。ともあれ、晩秋らしい北風が落ち葉を散らす中、いつもの鎌倉橋の会場に15人が出席、久々に旧交を温めた。兼題は「冬隣」と「鮭」。参加36人から計108句の投句があり、6句選(欠席者5句)の結果、岡田鷹洋さんの「売りに出す終の住処や冬隣」が9点で一席、二席には中村迷哲さんの「仕込み桶洗ふ蔵びと冬隣」が8点。三席も迷哲さんの「十年(ととせ)経てひと還れぬ地鮭帰る」が7点と高点句を連発した。今回は「冬隣」が投句数も多く、高点句も多かった。このほか6点3句、5点1句、4点11句、3点7句、2点22句、1点24句だった。兼題別の高点句(3点以上)は以下の通り。

「冬隣」

売りに出す終の住処や冬隣             岡田 鷹洋

仕込み桶洗ふ蔵びと冬隣              中村 迷哲

人と灯の戻りたる街冬隣              杉山 三薬

半眼の蝦蟇に出くわす冬隣             谷川 水馬

寝間の戸を叩く老猫冬隣              大澤 水牛

餌あさる雀忙しき冬隣               大澤 水牛

そここゝに老人と鳩冬隣              金田 青水

牧草ロールごろんごろんと冬隣           廣上 正市

恋の句を詠むことも無く冬隣            藤野十三妹

浴室に手摺しつらえ冬隣              髙石 昌魚

「鮭」

十年(ととせ)経てひと還れぬ地鮭帰る       中村 迷哲

吊るされて土間睨みをる鮭の群           岩田 三代

 鮭来たる今日は半どん村役場            谷川 水馬
 出刃にぎる鮭の頭を梨割に             須藤 光迷

母の川懐かしむごと鮭跳ねる            徳永 木葉

一途てふ美しき言の葉鮭上る            廣上 正市

当季雑詠

湿原の夕日重たし鳥渡る              加藤 明生

秋晴れでどら焼き二つ買いました          大平 睦子

隣室の光まだあり長き夜              植村 方円

蕎麦刈や地平に雲とコンバイン           谷川 水馬

木犀の香りのつなぐ記憶かな            流合研士郎

住み古りて茸はえたる庭の隅            星川 水兔

秋の蚊にげんまんの指刺されたる          今泉 而云

廃業の貼り紙あせて秋の風             須藤 光迷

萩かざし万葉美人めける妻             中村 迷哲

《参加者》【出席15人】嵐田双歩、今泉而云、植村方円、大澤水牛、岡田鷹洋、金田青水、澤井二堂、杉山三薬、鈴木雀九、高井百子、堤てる夫、徳永木葉、中村迷哲、星川水兎、向井ゆり。【投句参加21人】池村実千代、岩田三代、大沢反平、大平睦子、荻野雅史、加藤明生、工藤静舟、久保田操、篠田朗、須藤光迷、髙石昌魚、高橋ヲブラダ、谷川水馬、中島阿猿、野田冷峰、流合研士郎、旙山芳之、廣上正市、藤野十三妹、水口弥生、横井定利。

(報告・嵐田双歩)

 

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