日経俳句会第192回例会

34人参加「秋の空」「居待月」を詠む

雀九さん「百年の家業」で最高9点、二席に芳之さん「向かいの更地」

日経俳句会の令和2年9月例会(通算192回)は、新型コロナ感染第二波の峠は越えたものの、依然として会議室が使えず7カ月連続のメール句会となった。兼題は「秋の空」と「居待月」。34人から101句の投句があり、9月16日を締め切りにしたメール5句選の結果、鈴木雀九さんの「百年の家業を閉じて居待月」が最高9点に輝いた。二席は旙山芳之さんの「お向かいが更地になりし秋の空」が8点で続き、6点句には「天窓を拭いて四角の秋の空(而云)」「老いてゆく日々の早さや秋の空(十三妹)」「切り上げし仕事の火照り居待月(ゆり)」「開墾のひとちりぢりに蕎麦の花(正市)」「いつの間に石仏かこむ彼岸花(水兎)」の5句が並んだ。このほか5点5句、4点2句、3点12句、2点10句、1点29句だった。兼題別の高点句(3点以上)は以下の通り。

「秋の空」

お向かいが更地になりし秋の空          旙山 芳之

天窓を拭いて四角の秋の空            今泉 而云

老いてゆく日々の早さや秋の空          藤野十三妹

地下鉄の出口小さき秋の空            嵐田 双歩

秋空や棟上式の槌の音              堤 てる夫

アフガンに小麦のみどり秋の空          金田 青水

手を打てば龍が鳴くなり秋の空          大下 明古

ラーメンに行列戻る秋の空            杉山 三薬

やうやうと秋の空なり歯を磨く          髙橋ヲブラダ

川風の今日より軽し秋の空            星川 水兎

秋の空余所行きを着てそこらまで         横井 定利

「居待月」

百年の家業を閉じて居待月            鈴木 雀久

切り上げし仕事の火照り居待月          向井 ゆり

病室の消灯早し居待月              嵐田 双歩

居待月じつと見上げる鬼瓦            中嶋 阿猿

串団子二と三に分け居待月            野田 冷峰

塩辛のほどよくなれて居待月           大澤 水牛

ここだけの話をひとつ居待月           杉山 三薬

客ひとり見送る宵を居待月            水口 弥生

「当季雑詠」

開墾のひとちりぢりに蕎麦の花          廣上 正市

いつの間に石仏かこむ彼岸花           星川 水兎

秋思あり動かぬ雲を飽きもせず          谷川 水馬

柏手の音の強さやいわし雲            池村実千代

夏惜しむ赤く染めたる足の爪           植村 博明

若僧の読経かき消す法師蟬            中嶋 阿猿

様様なマスク行き交ふ敬老日           横井 定利

《参加者34人》嵐田双歩、池村実千代、今泉而云、岩田三代、植村博明、大澤水牛、大沢反平、大下明古、大平睦子、岡田鷹洋、荻野雅史、加藤明生、金田青水、久保田操、斉藤早苗、澤井二堂、杉山三薬、鈴木雀九、高井百子、髙石昌魚、高橋ヲブラダ、谷川水馬、堤てる夫、徳永木葉、中島阿猿、中村迷哲、野田冷峰、旙山芳之、廣上正市、藤野十三妹、星川水兎、水口弥生、向井ゆり、横井定利。

(報告・中村迷哲)

 

 

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