日経俳句会第183回例会

豆乳さん「大阪なおみ」で一席

女性が一人もいないという珍しい句会に

日経俳句会は10月16日(水)、令和元年度十月例会(通算183回)を千代田区内神田の日経広告研究所会議室で開いた。列島はこの秋二度目の台風に直撃され、大規模な河川氾濫があちこちで発生した。台風で酷い目に遭った会員はいなかった模様だが、急に寒くなって体調を崩した人や、急用が入った人などが続出、欠席者が目立った。しかも、この句会始まって以来初の女性が一人もいない月例となった。最近では最も多い40人から120句も集まった投句に、初老の男ばかり14人がひっそりと句評を述べ合うという「行く秋」に相応しい寂寥感が漂った。兼題は「行く秋」と「柿」。6句選(欠席選句は5句)の結果、中沢豆乳さんの「菊人形大坂なおみの高島田」が9点で、中嶋阿猿さんの「行く秋や名もなき画家の絵を求む」の8点を僅差で抑え単独1位を獲得した。豆乳さんは入会後初の一席。続いて操さんの「陽の色に染まる軒先柿すだれ」と明生さんの「異国語の飛び交ふ村の吊し柿」が7点。以下6点2句、5点4句、4点8句、3点6句、2点26句、1点34句だった。兼題別の高点句(3点以上)は以下の通り。

「行く秋」

行く秋や名もなき画家の絵を求む      中嶋 阿猿

行く秋の波打ち際のレジ袋         今泉 而云

行く秋に柔らかな光化学賞         旙山 芳之

行く秋や夫婦(めおと)となりし日の遙か  嵐田 双歩

行く秋やどこへともなく荒川線       大倉悌志郎

行く秋や鉛筆で書く紙の音         鈴木 好夫

ゆく秋や声張る路上ミュージシャン     星川 水兎

行く秋や今年また減る同期生        井上庄一郎

「柿」

異国語の飛び交ふ村の吊し柿        加藤 明生

陽の色に染まる軒先柿すだれ        久保田 操

奈良に嫁し今年もつくる柿のジャム     大下 綾子

母からの荷物の隅に柿二つ         向井 ゆり

渋柿を風に晒せば武甲山          嵐田 双歩

成り年の柿賑やかに夕陽浴ぶ        堤 てる夫

柿すべて鳥の餌となり里老いる       岩田 三代

柿食ひて悪ガキのような父の笑み      流合研士郎

「当季雑詠」

菊人形大坂なおみの高島田         中沢 豆乳

秋深し何も語らぬ石舞台          中村 迷哲

曼殊沙華彼の世此の世を隔てをり      廣上 正市

詰将棋解く間の釣瓶落しかな        嵐田 双歩

どんぐりの落ちて胸まで跳ねかへり     金田 青水

行く雲と声交はしたる大花野        大倉悌志郎

爽やかや雲入れ替はる山の空        大下 綾子

文化の日おやじバンドのリハーサル     中嶋 阿猿

《参加者》【出席】嵐田双歩、井上庄一郎、今泉而云、大澤水牛、岡田鷹洋、金田青水、澤井二堂、杉山三薬、谷川水馬、堤てる夫、徳永木葉、中沢豆乳、中村哲、野田冷峰。【投句参加】池村実千代、岩田三代、植村博明、大倉悌志郎、大沢反平、大下綾子、大平睦子、加藤明生、久保田操、斉藤早苗、鈴木好夫、高井百子、高石昌魚、高橋ヲブラダ、中嶋阿猿、荻野雅史、流合研士郎、旙山芳之、廣上正市、深田森太郎、藤野十三妹、星川水兎、政本理恵、水口弥生、向井ゆり、横井定利。  (報告 嵐田双歩)

 

 

 

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