番町喜楽会第223回例会

17人が「冬温し」「餅」を詠む

首位は光迷句「美容院」、二席満智句「会えぬ人」

番町喜楽会は令和6年12月例会(通算第223回)を7日(土)午後6時から東京・九段下の千代田区生涯学習館で開催した。この日からぐんと冷え込み、ようやく冬らしくなった。投句者は17人、投句総数83句といつもと同水準だが、句会出席者が7人にとどまった。その代わり、体調不良だった田中白山さんが元気を取り戻し「ぜひとも選句披講と合評会に出席させてください」と出かけて来た。また、年初から「休会」の今泉而云さんも「久しぶりに番喜会の皆さんに会いたくなった」と現れた。こうして〝特別選句参加者〟が2人加わり、句会は大いに盛り上がった。而云さんは「年が明けたら、番喜会に復帰させていただこうと思う」と、やる気が再燃したようである。

今回の兼題は「冬温し」と「餅」。投句5句、選句6句(欠席者は5句)で句会を行った結果、須藤光迷さんが7点句「冬ぬくし妻いそいそと美容院」で前月に引き続きトップの座を占めた。二席には斉山満智さんの6点句「会えぬ人会えぬまま過ぐ年惜しむ」が入った。三席は5点で、玉田春陽子さんの「冬温し長縄跳びの声そろえ」と金田青水さんの「気まぐれな犬に手を焼く冬帽子」の2句が並んだ。以下、4点が4句、3点5句、2点14句、1点20句だった。兼題別の高点句(3点以上)は次の通り。

「冬温し」

冬ぬくし妻いそいそと美容院             須藤 光迷

冬温し長縄跳びの声そろえ              玉田春陽子

全身であくびする猫冬温し              斉山 満智

小津映画寝ころんで見る冬温し            中村 迷哲

「餅」

焼餅のぷうと息して肩下ろす             嵐田 双歩

焼き餅のぷっと膨れて縮みけり            前島 幻水

あんころも大根おろしも餅が好き           嵐田 双歩

一筆箋添へて越後の餅届く              廣田 可升

当季雑詠

会えぬ人会えぬまま過ぐ年惜しむ           斉山 満智

気まぐれな犬に手を焼く冬帽子            金田 青水

冬紅葉かつて鉄路の眼鏡橋              須藤 光迷

雪催ひセリ場に踊る能登の蟹             徳永 木葉

熊の知恵語るマタギの囲炉裏端            中村 迷哲

 

《参加者》【出席7人】大澤水牛、金田青水、須藤光迷、玉田春陽子、廣田可升、前島幻水、向井愉里。【投句参加10人】嵐田双歩、斉山満智、澤井二堂、高井百子、谷川水馬、堤てる夫、徳永木葉、中村迷哲、星川水兎、山口斗詩子

【特別選句参加】今泉而云、田中白山。  (報告 大澤水牛)

 

 

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日経俳句会第234回例会

正市句「玉砂利」が最高12点、二席9点に迷哲句「回顧展」

37人が「短日」「白菜」を詠む

日経俳句会は令和6年11月例会(通算234回)を11月20日(水)夕に鎌倉橋の日経広告研究所会議室で開いた。冷え込みに雨も加わり、出席は10人にとどまったが、高点句が多く熱気あふれる句会となった。兼題は「短日」と「白菜」。37人から111句の投句があり、6句選(欠席は5句)の結果、廣上正市さんの「玉砂利の音の尖りや今朝の冬」が12点を集め一席に輝いた。二席9点には中村迷哲さんの「回顧展出でて上野の暮早し」が入り、三席7点には嵐田双歩さんの「白菜や母はいつでも割烹着」、岩田千虎さんの「塩つかみ白菜漬ける母若し」と「ちゃん付けで呼ぶ同窓会冬うらら」、和泉田守さんの「捨てかねてめくる古本冬ぬくし」の4句が並んだ。以下、6点2句、5点5句、4点4句、3点9句と高点句が続いた。2点は19句、1点は28句だった。なお旙山芳之さんの定年に伴い、10月から溝口戸無広さんに日経総務局との窓口幹事を務めてもらうことになった。この日、溝口さんが初めて句会に出席し、幹事就任の挨拶をして、拍手で迎えられた。兼題別の高点句(3点以上)は以下の通り。

「短日」

回顧展出でて上野の暮早し              中村 迷哲

母と子のカフェで宿題暮早し             植村 方円

寝坊には日の短さのことのほか            大澤 水牛

短日や窓辺の妻の老いにけり             大沢 反平

短日やテレビ桟敷はもう結び             工藤 静舟

奈良公園巡るゆつたり日の短か            廣上 正市

短日や病院の帰路はや暗し              藤野十三妹

暮早し飯事遊び店仕舞い               久保田 操

短日や遊び足りぬとこねる駄々            須藤 光迷

赤ワインホットでいかが暮早し            谷川 水馬

短日のステンドグラス淡き翳             溝口戸無広

「白菜」

白菜や母はいつでも割烹着              嵐田 双歩

塩つかみ白菜漬ける母若し              岩田 千虎

白菜漬盛っておんなの長ばなし            杉山 三薬

白菜の身に預けくる重さかな             水口 弥生

ママチャリのうしろ白菜まえ子供           横井 定利

白菜や湯気のむこうに笑み三つ            池村実千代

当季雑詠

玉砂利の音の尖りや今朝の冬             廣上 正市

捨てかねてめくる古本冬ぬくし            和泉田 守

ちゃん付けで呼ぶ同窓会冬うらら           岩田 千虎

鳶三羽追ひつ追はれつ冬そこに            大沢 反平

熱々を噛めば汐の香牡蠣フライ            篠田  朗

もんじゃ焼恋しくなりぬ初時雨            須藤 光迷

鰤起し能登の漁港は閉じたまま            徳永 木葉

解体の日取り決まりて冬に入る            中嶋 阿猿

冬の蝶日の差す宙を惜しみけり            溝口戸無広

《参加者》【出席10人】嵐田双歩、池村実千代、植村方円、大澤水牛、金田青水、杉山三薬、中村迷哲、星川水兎、溝口戸無広、向井愉里。【投句参加27人】和泉田守、伊藤健史、岩田千虎、大沢反平、岡田鷹洋、岡松卓也、加藤明生、工藤静舟、久保道子、久保田操、坂部富士子、澤井二堂、須藤光迷、篠田朗、高井百子、高橋ヲブラダ、谷川水馬、堤てる夫、徳永木葉、中沢豆乳、中嶋阿猿、中野枕流、旙山芳之、廣上正市、藤野十三妹、水口弥生、横井定利。    (報告 中村迷哲)

 

 

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酔吟会第171回例会開催

12人が兼題「初冬」と席題「AI(人工知能)」を詠む

首位6点に青水「小さな秋」「胡桃の音」、春陽子「七五三」の3句

5点に双歩「おでん酒」、4点に木葉「白無垢」、水牛「小春日」が並ぶ

酔吟会は令和6年11月例会(通算第171回)を9日午後1時から江東区の芭蕉記念館で開催した。兼題は「初冬」、徳永木葉さんから出題された席題は「AI(人工知能)」。雑詠を含め投句5句、選句6句(うち特選1句)の結果、首位の6点句に、金田青水さんの「はつ冬やほんに小さな秋でした」と「老の掌の胡桃の音や冬日向」の2句が入り、同じく6点句に玉田春陽子さんの「やれ笑へやれ走るなと七五三」が入った。次点の5点句は、嵐田双歩さんの「AIを酔はせてみたしおでん酒」。三席4点句には徳永木葉さんの「初冬の白無垢が行く鳥居下」と大澤水牛さんの「AIにこの小春日はつくれまい」が並んだ。この日の席題「AI」は難問かと思われたが、ふたを開ければ席題の高得点句は5句、一方兼題の「初冬」の句は3句しかなく、時事ネタに強いこの句会の傾向が表れた気もする。兼題別の高点句(3点以上)は次の通り。

「初冬」

はつ冬やほんに小さな秋でした     金田 青水

初冬の白無垢が行く鳥居下       徳永 木葉

切り札をめくればトランプ冬初め    杉山 三薬

「AI(人工知能)」

AIを酔はせてみたしおでん酒     嵐田 双歩

AIにこの小春日はつくれまい     大澤 水牛

深谷葱AI育ちと幟立て        玉田春陽子

答弁はAIまかせ山眠る        廣田 可升

AIに聞けばと言はれ鎌鼬       岩田 千虎

「当季雑詠」

老の掌の胡桃の音や冬日向       金田 青水

やれ笑へやれ走るなと七五三      玉田春陽子

秋の日は晴と決めつけ出で立ちぬ    大澤 水牛

即売所葉付大根泥おまけ        玉田春陽子

短パンに素足の娘炬燵出す       向井 愉里

<句会参加者12人>嵐田双歩、岩田千虎、大澤水牛、岡田鷹洋、金田青水、久保道子、杉山三薬、玉田春陽子、徳永木葉、中村迷哲、廣田可升、向井愉里。

(報告 廣田可升)

 

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番町喜楽会第222回例会を開催

天に光迷「造船所」、地に可升「書店」

16人が「文化の日」と「鯔」を詠む

番町喜楽会は令和6年11月例会(通算第222回)を4日午後6時から東京・九段下の千代田区生涯学習館で開催した。秋晴れの好天となったものの、三連休の行楽日和とあってか、投句16人のうち出席は9人にとどまり、いささか寂しい感じだった。兼題は「文化の日」と「鰡(ぼら)」。雑詠を含め投句5句、選句6句(欠席者は5句)の結果、首位に須藤光迷さんの6点句「造船所失せし運河や鰡飛べり」、次点に廣田可升さんの5点句「またひとつ消える書店や文化の日」が入った。三席は4点で7句が並んだ。3点も7句あった。投句総数は80句だった。兼題別の高点句(3点以上)は次の通り。

「文化の日」

またひとつ消える書店や文化の日      廣田 可升

箸で食べるペペロンチーノ文化の日     廣田 可升

駅ピアノふと足止める文化の日       斉山 満智

歌も絵も下手の横好き文化の日       須藤 光迷

穏やかに生きる幸せ文化の日        徳永 木葉

デジタルの世や虚も実も文化の日      前島 幻水

「鰡(ぼら)」

造船所失せし運河や鰡飛べり        須藤 光迷

鰡飛ぶや日に一便の連絡船         嵐田 双歩

あきらめのつかぬ夕暮れ鰡が跳ぶ      斉山 満智

鰡飛んで都会の川の暮れにけり       玉田春陽子

鰡の群見てをり橋の人の群         嵐田 双歩

「当季雑詠」

障子貼る妻の小言を食らいつつ       須藤 光迷

から松の散るや十勝に雪近し        徳永 木葉

詐欺かしら電話の鳴りてそぞろ寒      山口斗詩子

アメリカの枷解けノーベル平和賞      金田 青水

奥多摩の宿のひと品新豆腐         中村 迷哲

【参加者】<句会出席者9人>大澤水牛、金田青水、須藤光迷、高井百子、田中白山、玉田春陽子、堤てる夫、中村迷哲、向井愉里。<投句参加者7人>嵐田双歩、斉山満智、谷川水馬、徳永木葉、廣田可升、前島幻水、山口斗詩子。

(報告 須藤光迷)

 

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吟行報告・猫招く世田谷をトラムで巡る

いつまで経っても本格的秋の来ない10月19日(土)、番町喜楽会、日経俳句会合同の「世田谷線界隈吟行」を行った。今年3月以来7ヶ月ぶりの吟行で、参加者は11名(嵐田双歩、今泉而云、岩田千虎、大澤水牛、金田青水、須藤光迷、玉田春陽子、中村迷哲、水口弥生、向井愉里、杉山三薬)。午後1時、東急世田谷線下高井戸駅に集合。最初の訪問先、招き猫で有名な豪徳寺目指して乗車。世田谷線は、都電荒川線と並ぶ東京の人気トラム。車体に招き猫をペイントしたり、猫の手吊り革を取り入れたりと、猫観光にも熱心。三つ目の駅、宮の坂で下車。まず、駅構内に展示してある古い世田谷線車両を見学する。車両に乗り込んだ一同、子供の頃に乗った都電、市電を思い出したか、遠い目でしばし回想の時間を過ごす。

振り出しはレトロな電車秋吟行         光迷

身に入むやトラムの座席譲られて        而云

宮の坂駅から5分ほど歩いて豪徳寺。招き猫由来略記「鷹狩りに出た彦根藩当主井伊直孝が、とある寺にさしかかったところ、門前の猫が手招きしているように見えた。寺に入り休んでいると突然の雷雨。猫のおかげで濡れずに済んだ」というお話。今、豪徳寺に鎮座している招き猫は、世間一般のような小判は抱えていない。お金より人の縁を大切にすることらしい。この寺、招き猫に呼び寄せられたのか、とにかく外国人観光客の姿が目立つ。境内に何百と並べられた猫との記念写真の掛け声も、ハイチーズ、ヘイ##、ハーイ??、さまざまな言語が飛び交う。招福殿には奉納の招き猫と猫の絵馬が所狭しと並べられ、インスタ映えする光景。絵馬の中には英語やアラビア語らしい文字も混じり、国際色豊かだ。方丈で売られている招き猫の購入券が自動販売機なのは、外国人に分かりやすいようにだろう。

秋うらら猫が客招ぶ豪徳寺           三代

自販機で招き猫売る秋の寺           水牛

秋吟行土産に小さき招き猫           春陽子

寺奥に井伊家の墓所がある。中でも有名なのは、安政の大獄を主導し、桜田門外の変で暗殺された井伊直弼の墓。その近くで、吟行メンバー一同、水牛さんによる、井伊家をめぐる歴史解説に聞き入る。境内で、ひと足遅れで駆けつけた水口弥生さんと合流。猫看板をバックに嵐田プロによる記念撮影。続いて、徒歩数分の世田谷城址公園に向かう。元々吉良家の屋敷だったというから、ここでも歴史上の名が顔をだす。でも、それは看板の説明だけで、遺跡らしいものは、ほとんど残っていない。赤土が剥き出しの小山を子供達が駆け回る。老人一行、足元が悪い中律儀に歩いて、木の実拾いなどを楽しんだ。地価の高い世田谷のど真ん中にこんな荒れ遺跡。もったいないような気がする。

世田谷に銀杏どんぐり秋探し          愉里

戦国の小さき城跡木の実降る          迷哲

30度近い気温のなか、次の目的地、松蔭神社へおよそ15分で到着。松陰神社の由来は、安政の大獄で獄死した吉田松陰の遺骨を、千住の小塚原から、長州藩下屋敷のあったこの地に改葬したことから、この名の神社が生まれた。土曜日の夕方、我々の他に訪れる人は意外に少ない。境内に設けられた松下村塾の実物大建物もひっそりと佇んでいた。少し離れた松陰の墓を訪れたのは我々だけ。

秋深し松陰享年三十歳             青水

松陰の教えに背き蜜柑もぐ           双歩

次いで、光迷さん推奨の「目青(めあお)不動尊」に向かう。世田谷線終点の三軒茶屋で下車。駅近くにある最勝寺が、別名「目青不動尊」。五色不動のひとつだが訪れる人もない、ひっそり寺。当日三軒茶屋で行われていた「大道芸祭り」の喧騒とは別世界。赤青黄白黒の五色不動といっても、全部知っている人は少ないだろう。目黒の秋刀魚、目白の闇将軍と、白と黒は地名として根を張ったが、他の三色はほぼ無名。寺が商売ベタだったのかも。この目青不動尊で本日の訪問日程は終了。先を急いだせいで、「蕎麦屋石はら」での反省会予約時間まで一時間も余ってしまった。皆で入れる飲食店を探すうち、迷哲さんが横丁の小さな喫茶店を見つけてしばし休憩。予約時間の午後5時、全員蕎麦屋へ移動、打ち上げの食事会が始まる。小粋なつまみと蕎麦で7時過ぎまで歓談した。

暑い秋レトロ喫茶に脚和む           三薬

秋時雨蕎麦懐石の果つる頃           弥生

世田谷線吟行の句会は、いつものようにメール方式で開催。参加者がそれぞれ3句を投句し、5句選の結果、中村迷哲さんの「戦国の小さき城跡木の実降る」が6点を得て一席となった。二席5点には須藤光迷さんの「振り出しはレトロな電車秋吟行」が続き、三席4点には而云、春陽子、弥生さんの3句が並んだ。

(報告 杉山三薬)

 

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日経俳句会第233回例会

迷哲句「子らの声」が10点、二席は木葉句・双歩句が並ぶ

「秋深し」「小鳥来る」を詠む

日経俳句会は10月16日(水)、神田・鎌倉橋の日経広告研究所会議室で10月例会(通算233回)を開いた。10月になっても夏日が続き、この日も曇天ながら蒸し暑い夕刻。急に来られなくなった人があって出席者は9人と少なかったが、坂部さんという現役の方が見学に来てくれて選句に参加、計10人の句会となった。「秋深し」と「小鳥来る」の兼題に、34人から102句の投句があり、6句選(欠席は5句)の結果、一席は中村迷哲さんの10点句「子らの声聞こえぬ団地小鳥来る」、二席は嵐田双歩さんの「太陽の匂ひ束ねて今年藁」と徳永木葉さんの「吊るし鮭鬼の貌して風の中」が9点で並んだ。三席は須藤光迷さんの8点句「尻撫でて行く人もあり青蜜柑」だった。以下、7点2句、6点3句、5点1句、4点6句と特定の句に人気が集まった。その他、3点7句、2点21句、1点25句だった。向井愉里さんの紹介で見学に見えた坂部富士子さんは、日経プラザ&サービスの社員で、現在は日経HR本部に出向中。この日は選句に参加してもらった。兼題別の高点句(3点以上)は以下の通り。

「秋深し」

秋深し向う三軒未亡人                藤野十三妹

刈られたる越後の広さ秋深し             溝口戸無広

ごみ出しの猫背の老爺秋深し             谷川 水馬

秋深し明かりの漏れる製本所             徳永 木葉

秋深し荒砥すべらす鍬と鎌              廣上 正市

秋深し他人の空似とすれ違ひ             植村 方円

秋深し煎餅よりも蒸し饅頭              澤井 二堂

風干しの鮎の色錆び秋深し              中沢 豆乳

秋深し仏の指の少し反り               岩田 千虎

秋深しころんじやだめよころぶなよ          横井 定利

「小鳥来る」

子らの声聞こえぬ団地小鳥来る            中村 迷哲

小鳥来て旅の誘いの二つ三つ             中嶋 阿猿

小鳥来る百年蔵の喫茶店               星川 水兎

小鳥来る万年筆をそつと置く             溝口戸無広

小鳥来る知覧の空へ今日もまた            加藤 明生

当季雑詠

太陽の匂ひ束ねて今年藁               嵐田 双歩

吊るし鮭鬼の貌して風の中              徳永 木葉

尻撫でて行く人もあり青蜜柑             須藤 光迷

金継ぎの碗の温もり秋時雨              中嶋 阿猿

主老いて荒れたる庭や薮枯らし            杉山 三薬

秋さぶや隣家の窓の開かぬまま            廣上 正市

虫の音に包まれてゐる家路かな            溝口戸無広

秋時雨ぽつぽつ語る通夜の席             向井 愉里

《参加者》【出席10人】嵐田双歩、大澤水牛、金田青水、坂部富士子(見学)、篠田朗、杉山三薬、堤てる夫、中村迷哲、星川水兎、向井愉里。【投句参加25人】池村実千代、伊藤健史、岩田千虎、植村方円、大沢反平、岡田鷹洋、岡松卓也、加藤明生、久保道子、久保田操、澤井二堂、須藤光迷、高井百子、高橋ヲブラダ、谷川水馬、徳永木葉、中沢豆乳、中嶋阿猿、中野枕流、旙山芳之、廣上正市、藤野十三妹、溝口戸無広、水口弥生、横井定利。  (報告 嵐田双歩)

 

 

 

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番町喜楽会第221回例会

18人参加、「秋冷」と「新酒」を詠む

秋霖吹き飛ばす佳句あまた

番町喜楽会は令和6年10月例会(通算第221回)を5日午後5時50分から東京・九段下の千代田区生涯学習館で開催した。10月に入っても1日、2日と30度が続くなんとも異常な令和6年だが、3日から雨が降り始め、一転涼しくなった。5日も引き続き雨。「秋霖(しゅうりん)」である。しかしもともと秋霖は9月のものであるはず。今年は夏がひどく長引いたために、秋雨前線が出張るのがずれてしまったようだ。そういえば曼珠沙華も秋彼岸には咲かず、今頃になって満開になっている。政界も「とてもなれないだろう」と言われ続けてきたイシバさんが大逆転で総理大臣になったし、県議会が全会一致で解職決議案を通して辞めさせたパワハラ兵庫県知事が出直し選挙にしゃあしゃあと出馬、もしかしたら当選してしまうかも、などと言われている。世の中なんともおかしくなってきた。この夜の句会の出席者は9人とこじんまりだったが、佳句がたくさん出て、合評会もにぎやかなものとなった。兼題は「秋冷」と「新酒」。投句は18人から89句あり、選句6句で句会を進めた結果、天の位には中村迷哲さんの「秋冷や見知らぬ駅に降りる通夜」が9点獲得で座り、地の位には須藤光迷さんの「悔しかろ新酒つくれぬ能登の蔵」が7点で治った。人の位は5点で向井愉里さんの「久留里まで角打列車新酒酌む」と迷哲さんの「なぜ能登や天に問いたき秋出水」の2句が選ばれた。続く4点句には廣田可升さんの「秋冷の朝五枚刃の剃り心地」と斉山満智さんの「気に入りのぐい呑み出して新酒かな」の2句が並んだ。以下3点7句、2点13句、1点19句と続いた。                       兼題別の高点句(3点以上)は次の通り。

「秋冷」

秋冷や見知らぬ駅に降りる通夜    中村 迷哲

秋冷の朝五枚刃の剃り心地      廣田 可升

秋冷やそろそろできる猫団子     斉山 満智

秋冷を連れて下界へケーブルカー   中村 迷哲

秋冷の鍋を揺らして粉ふきいも    星川 水兎

秋冷や寒い暑いと老夫婦       田中 白山

「新酒」

悔しかろ新酒つくれぬ能登の蔵    須藤 光迷

久留里まで角打列車新酒酌む     向井 愉里

気に入りのぐい呑み出して新酒かな  斉山 満智

新酒酌む椅子の揃はぬ隅の席     玉田春陽子

ありがたや新酒を交はす友のあり   澤井 二堂

「当季雑詠」

なぜ能登や天に問いたき秋出水    中村 迷哲

乳がんの疑い晴れたりカンナ燃ゆ   山口斗詩子

【参加者】(出席9名)大澤水牛、金田青水、須藤光迷、田中白山、玉田春陽子、中村迷哲、廣田可升、前島幻水、向井愉里。(投句参加9名)嵐田双歩、斉山満智、澤井二堂、高井百子、谷川水馬、堤てる夫、徳永木葉、星川水兎、山口斗詩子。 (報告大澤水牛)

 

 

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日経俳句会第232回例会

 

35人参加、「冷やか」と「唐辛子」を詠む

光迷句「別姓」が最高10点、二席7点に4人が並ぶ

日経俳句会は令和6年の9月例会(通算232回)を9月18日(水)夕に鎌倉橋の日経広告研究所会議室で開いた。昼間は残暑が厳しく、出席は11人にとどまったが。高点句が多く充実した句会となった。兼題は「冷やか」と「唐辛子」。35人から105句の投句があり、6句選(欠席は5句)の結果、須藤光迷さんの「別姓に何の支障が秋刀魚焼く」が10点を集め一席となった。二席7点には中嶋阿猿さんの「秋冷の谷より満ちて奥箱根」と溝口戸無広さんの「冷やかや小樽硝子は海の色」、大澤水牛さんの「荒庭にあかあかとあり鷹ノ爪」、横井定利さんの「白湯一杯飲んで出かける敬老日」の4句が並んだ。三席6点には嵐田双歩さんの「冷やかや船屋に寄する波の音」が入ったほか、5点3句、4点8句、3点13句と続き、高点句が30句を数えた。2点は16句、1点は24句だった。なお暑さで体調を崩し投句を休んでいた今泉而云さんが久々に顔を出し、選句に加わった。兼題別の高点句(三点以上)は以下の通り。

「冷やか」

秋冷の谷より満ちて奥箱根              中嶋 阿猿

冷やかや小樽硝子は海の色              溝口戸無広

冷やかや船屋に寄する波の音             嵐田 双歩

冷やかな畳にごろり旅帰り              谷川 水馬

手水舎に掬ふ一勺冷やかに              久保田 操

カウベルに夕冷えまさる山の牧            徳永 木葉

冷やかやガラリ変わったお品書            中沢 豆乳

不用意に座るベンチの冷ゆるかな           水口 弥生

冷やかや芭蕉坐像の隅田風              横井 定利

「唐辛子」

荒庭にあかあかとあり鷹ノ爪             大澤 水牛

干し上げて赤に紅増す唐辛子             篠田  朗

唐辛子吊るし山家の道しるべ             杉山 三薬

朝市や婆の商う鷹の爪                須藤 光迷

知事殿に土産どっさり唐辛子             中沢 豆乳

生き難き世にピンと立つ唐辛子            伊藤 健史

箸で退けやっぱり食べる唐辛子            植村 方円

唐辛子入りの瓜漬け成田山              金田 青水

信濃では蕎麦に南蛮磯五郎              高井 百子

当季雑詠

別姓に何の支障が秋刀魚焼く             須藤 光迷

白湯一杯飲んで出かける敬老日            横井 定利

秋うららお風呂沸いたと電子音            嵐田 双歩

もういいよもういいよねと秋の蝉           久保田 操

写経終へ出でたる庭に秋の蝶             谷川 水馬

秋めくや肺の奥まで風通す              植村 方円

アサギマダラ見よ我が庭の藤袴            高井 百子

雨ごとに色くすみゆく秋の森             溝口戸無広

猛暑日がにじり寄ってく秋彼岸            杉山 三薬

廃校の軒先借りて柿吊す               中沢 豆乳

銀河濃しつまらぬ悩み薄くなる            旙山 芳之

脳外科のCTセーフ夏終る              藤野十三妹

《参加者》【出席11人】嵐田双歩、池村実千代、今泉而云、大澤水牛、金田青水、澤井二堂、篠田朗、杉山三薬、堤てる夫、中村迷哲、向井愉里。【投句参加25人】伊藤健史、岩田千虎、植村方円、大沢反平、岡田鷹洋、岡松卓也、加藤明生、久保道子、久保田操、須藤光迷、高井百子、高橋ヲブラダ、谷川水馬、徳永木葉、中沢豆乳、中嶋阿猿、中野枕流、野田冷峰、旙山芳之、廣上正市、藤野十三妹、星川水兎、溝口戸無広、水口弥生、横井定利。

(報告 中村迷哲)

 

 

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酔吟会第170回例会

 

11人で「身に入む」「稲・米」を詠む

首位7点は席題出題者の三薬さん、次点に4人が並ぶ

酔吟会は令和6年の9月例会(通算第170回)を14日午後1時から江東区の芭蕉記念館で開催した。兼題は「身に入む」、杉山三薬さんから出題された席題は「稲もしくは米」。雑詠を含め投句5句、選句6句(うち特選1句)の結果、首位の7点句に杉山三薬さんの「そぞろ寒娘が米を借りにくる」が入り、席題出題者の面目躍如と大喜び。次点の6点句は、大澤水牛さんの「身に入むや組立トイレ講習会」、嵐田双歩さんの「爪割れて齢身に入む夕べかな」、向井愉里さんの「身に入むやひと月先の再検査」、玉田春陽子さんの「稲刈りて風の見えなくなりにけり」と4句も並ぶ盛況。三席5点句には廣田可升さんの「身に入むや類想類句といふ奈落」、4点句には金田青水さんの「蕎麦屋にて頼む残暑のカツカレー」と続いた。高得点9句のうち、半数以上の5句が兼題の「身に入む」の句となった。会員の高齢化とともに、日常的に身に入む経験が多くなったことの反映だろうか。兼題別の高点句(3点以上)は次の通り。

「身に入む」

身に入むや組立トイレ講習会      大澤 水牛

爪割れて齢身に入む夕べかな      嵐田 双歩

身に入むやひと月先の再検査      向井 愉里

身に入むや類想類句といふ奈落     廣田 可升

身に入むや青シート屋根並ぶ町     徳永 木葉

「稲・米」

そぞろ寒娘が米を借りにくる      杉山 三薬

稲刈りて風の見えなくなりにけり    玉田春陽子

ペダル踏む右も左も稲穂波       廣田 可升

「当季雑詠」

蕎麦屋にて頼む残暑のカツカレー    金田 青水

<句会参加者11人>嵐田双歩、大澤水牛、岡田鷹洋、金田青水、久保道子、杉山三薬、須藤光迷、玉田春陽子、徳永木葉、廣田可升、向井愉里。

(報告 廣田可升)

 

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番町喜楽会第220回例会

 

首位に迷哲、水兎、斗詩子鼎立

19人が「二百十日」と「曼殊沙華」を詠む

番町喜楽会は令和6年9月例会(通算第220回)を2日午後6時半から東京・九段下の千代田区生涯学習館で開催した。台風10号が迷走し気を揉んだものの、晴天となった。ただし、出席者は9人にとどまり、いささか寂しい感じ。兼題は「二百十日(厄日も可)」と「曼殊沙華」。雑詠を含め投句5句、選句6句(欠席者は5句)の結果、首位に中村迷哲さんの「庭の鉢居間にあふれる厄日かな」、星川水兎さんの「残り物チャーハンにして厄日過ぐ」、山口斗詩子さんの「母の裾ぎゅっとにぎりて秋日傘」の3句が並んだ。次点は4点の6句、三席は3点の4句だった。兼題別の高点句(3点以上)は次の通り。

「二百十日(厄日)」

庭の鉢居間にあふれる厄日かな       中村 迷哲

残り物チャーハンにして厄日過ぐ      星川 水兎

田んぼ消ゆ二百二十日の濁流に       金田 青水

二百十日蝉の亡き骸そっと掃く       斉山 満智

掌に欠伸をしまひ厄日過ぐ         玉田春陽子

「曼殊沙華」

高麗人の築きし土手や曼殊沙華       中村 迷哲

奈良明日香石舞台へと曼殊沙華       金田 青水

曼珠沙華ここにカルメン立たせたし     堤 てる夫

つかのまに老いたる団地曼珠沙華      廣田 可升

「当季雑詠」

母の裾ぎゅっとにぎりて秋日傘       山口斗詩子

田畑の相続難し鉦叩            高井 百子

鉦叩き今宵小さな旅支度          星川 水兎

首相候補こんな顔ぶれ秋寂し        堤 てる夫

<句会出席者、9人>池内的中、大澤水牛、金田青水、須藤光迷、田中白山、玉田春陽子、中村迷哲、廣田可升、向井愉里。<投句参加者、10人>嵐田双歩、斉山満智、澤井二堂、高井百子、谷川水馬、堤てる夫、徳永木葉、星川水兎、前島幻水、山口斗詩子。  (報告 須藤光迷)

 

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