日経俳句会忘年合同句会

 12月15日午後6時半から、年次総会に引き続き「日経俳句会忘年合同句会」が開かれた。兼題は「北風」と「餅」。雑詠1句を含め投句は3句。句会欠席で投句参加者も加えて42名から合計126句が寄せられた。幹事がそれらを選句表に整え、参加者にメールやファックスで送信し、選句5句を送ってもらい、句会では幹事がその結果を発表、高点句から順に感想を述べ合う合評会を行った。
 選句集計の結果は最高点が12点で高石昌魚氏の「一目みて分かる母の字餅届く」。次席が11点で深田森太郎氏の「北風や湖面の皺の伸び縮み」。三席が9点で廣上正市氏の「すっぱりと切られてをりし餅の豆」だった。5点以上獲得の句は以下の通り。
「北風」
 北風や湖面の皺の伸び縮み       深田森太郎
 北風や指さき出して籤を売る      山口 詩朗
 北風や北前船の波止の跡        徳永 正裕

「餅」
 一目みて分かる母の字餅届く      高石 昌魚
 すっぱりと切られてをりし餅の豆    廣上 正市
 故郷の便り絶えけり餅を焼く      大沢 反平
 無造作に餅搗く力士尻に汗       澤井 二堂
 餅食ひて満更の運思ひけり       鈴木 好夫

「雑詠」
 冬帽子鏡の中に父の顔         高石 昌魚
 職辞してふだん着ぬくし十二月     山口 詩朗
 冬晴れや八十過ぎてハンチング     大石 柏人

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平成22年度日経俳句会年次総会

 12月15日午後6時、大手町・日経ビルで日経俳句会の平成22年度年次総会が開かれた。会員36人が出席、(1)22年度の活動報告、(2)23年度活動方針、(3)会計報告、(4)23年度役員選出が報告され、いずれも幹事会提案通り承認された。
 22年度は銀鴎会、水木会、酔吟会合わせて20回の例会・句会、合同句会2回を行った。また、「逆回り奥の細道吟行大会」を4月に新潟県・市振、出雲崎、弥彦などをめぐる「越後路の巻」、10月には秋田県象潟、山形県酒田、鶴岡、羽黒山を回る「出羽路の巻」を実行した。さらに小吟行として「日本橋七福神巡り」(1月)、「横浜三渓園と中華街」(2月)、「目黒庭園美術館と自然教育園」(3月)、「英尾先生墓参と多摩森林科学園の桜」(4月)、「水元公園花菖蒲とスカイツリー、浅草散歩」(6月)、「東京国立博物館庭園茶会と則天武后の書鑑賞」(11月)、「武蔵野・平林寺紅葉狩り」(11月)を実施した。このように22年度は多彩な行事を繰り広げたが、23年度も同様に活動して行く方針が打ち出され、全員の賛同を得た。
 日経俳句会の会計報告では、会費収入、会報売り上げなども順調で、財政状況は好転して黒字基調になり、安定基盤を築ける見通しが立ったことが報告された。
 新年度の役員選出では立候補者が出ず、今年度と同じ顔ぶれで幹事会を構成することが決まった。ただし、京都在住の平山一雄幹事から「なかなか東京に来られない状況なので退任させていただきたい」との強い希望が寄せられたため、同氏の退任を了承した。平山氏は日経俳句会創設時に力を尽くされ、同会の基礎固めと発展に多大な貢献をされたことに対して会員一同から感謝の念を表した。
 23年度の幹事会メンバーは高橋淳(会長)、大澤水牛(幹事長)、今泉恂之介、和泉田守(事務局長)、大平睦子(会計担当)、田中頼子、堤てる夫、徳永正裕、廣上正市、吉野光久の10名。

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時代小説「追憶の旅」を発刊

「追憶の旅」表紙

「追憶の旅」表紙

双牛舎はこのほど竹村陽子著「追憶の旅─公達浪人事柄控」というユニークな時代小説本を発刊しました。著者は脳性マヒという重い障害を持ちながら独学で勉強され、素晴らしい短歌を続々発表、今回長年温めて来られた小説を上梓なさいました。これには銀鴎会・酔吟会会員の山口詩朗さんと同夫人の献身的ご努力があります。病状が進行しキーボードが打てなくなった作者に代わり、山口俊子さんが打ち込んでついに仕上げ、双牛舎代表理事今泉恂之介が校訂作業を引き受け、12月はじめについに立派な本が誕生しました。
5代将軍綱吉の時代の江戸を舞台に、京都で生まれ育った主人公の公達剣士が、公家の姫との悲恋をくぐり抜け、大活躍する物語です。外出もままならず、学校に通うこともできなかった人が、父親の蔵書を読破し、空想をめぐらせ、壮大なロマンを紡ぎ出しました。驚嘆と言うよりほかにない快挙であり、同じような境遇にある人たちには勇気を与え、健常者には頂門の一針となるに違いありません。
ご興味をお持ちの方はぜひご購読下さるよう申し添えます。頒価1500円。双牛舎代表の今泉あるいは大澤にお声をお掛け下さい。

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番町・喜楽会忘年合同句会

第64回番町句会と第18回喜楽会の合同句会が12月4日(土)午後1時から鎌倉橋の日経第二別館会議室で開かれた。前日は風速20数メートルの強風に豪雨が重なる冬の嵐が荒れ狂ったが、この日は朝から雲一つ無い上々の天気。気温も20度近くになる小春日和となった。

番町句会から井上啓一、高井百子、高瀬大虫、高橋楓子、前島厳水、三好六甫、山口詩朗、喜楽会から笹本塘外、須藤光迷、谷川透、玉田春陽子、それに幹事の今泉而雲、大澤水牛の合計13名が参加、今や東京近辺では見ることも稀になった「霜」と、「風呂吹」の兼題句を中心に談論風発の句会を繰り広げた。

投句5句、選句6句で行った句会の結果は最高点が5点で「藍色の夜明けに霜の声を聞く 楓子」「霜の朝湯気立て走る女かな 厳水」「腐葉土に湯気もうもうと霜の朝 水牛」「高望みせず風呂吹に酒二合 啓一」の4句が並び、次いで4点が「作務終えてふろふき拝む朝餉かな 透」の1句だった。さらに3点が5句、2点9句、1点21句と続いた。兼題別に3点以上獲得句を掲げる。

「霜」

藍色の夜明けに霜の声を聞く     高橋 楓子

霜の朝湯気立て走る女かな      前島 厳水

腐葉土に湯気もうもうと霜の朝    大澤 水牛

寝そびれて霜降る夜の山頭火     高橋 楓子

霜晴れや漁師も旗も煌ける      須藤 光迷

霜の朝靴跡はみな駅を向く      今泉 而雲

「風呂吹」

高望みせず風呂吹に酒二合      井上 啓一

作務終えてふろふき拝む朝餉かな   谷川  透

風呂吹の冷めて無言や通夜の客    高瀬 大虫

「雑詠」

黒猫の坂駆けあがる寒さかな     笹本 塘外

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水木会94回例会

水木会の平成22年第10回例会(通算94回)は11月17日(水)午後6時半、日経本社7階会議室で開かれた。「冬めく」と「海鼠」が兼題になった今年最後の例会、出席者は18人、投句参加者は11人で、投句総数は137句と賑わった。7句選句の結果、最高の5点句に5人が並んだ。次席4点は2句、3点が8句、2点14句、1点42句と続いた。

「海鼠は難しくてどう詠めばいいのか分からず、困った」という人が多かった。確かに難しい兼題だったが、蓋を開けてみると5点句5句のうち4句、4点は2句とも海鼠の句が占めた。兼題別、三点以上の高点句は次の通り。

「冬めく」

冬めくや塀の向うの鋏音           広上 正市

陽の当たる席から埋まり冬めきぬ       嵐田 啓明

冬めくや何気なく買ふ湯切り笊        金田 青水

冬めくや万年筆で日記書く          小林 啓子

頬髯のまた欲しくなり冬めきて        須藤 光迷

冬めくや留守電に聞く母の声         横井 定利

「海鼠」

海鼠みて喜怒哀楽をしまひけり        池村実千代

争ひて一日海鼠になってをり         佐々木 碩

抗はず海鼠切らるる暗夜かな         徳永 正裕

何もかも肚に収めし海鼠かな         水口 弥生

出刃研ぐや海鼠じわりと動きけり       大澤 水牛

起も承も転結もなく海鼠かな         広上 正市

国東の海の蒼さの海鼠かな          嵐田 啓明

語るほどおのれもたざる海鼠かな       大下 綾子

「雑詠」

警官に挨拶される夜寒かな          杉山 智宥

<句会出席者> 池村実千代、和泉田守、今泉恂之介、植村博明、大澤水牛、岡崎亘博、久保田操、小林啓子、杉山智宥、須藤光迷、堤てる夫、徳永正裕、広上正市、星川佳子、水口弥生、山口詩朗、横井定利、吉野光久

<投句参加者> 嵐田啓明、大熊万歩、大下綾子、加藤明男、金田青水、佐々木碩、高石昌魚、高橋淳、平山一雄、藤野十三妹、山田明美

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酔吟会第90回例会

酔吟会の平成22年度第6回例会(通算90回)は、11月12日(土)午後1時から、鎌倉橋交差点そばの日経第二別館8階会議室で開かれた。暖かな小春日和となって紅葉の山に出掛ける人も多かったのか、出席者は十二人といつもより少なく、投句が四人となった。

出席者は今泉恂之介、大石柏人、大澤水牛、大沢反平、大平昭生、片野涸魚、金指正風、澤井二堂、星川佳子、藤村詠悟、山口詩朗、吉野光久の各氏。投句参加は原文鶴、黒須烏幸、野田冷峰、藤野十三妹の各氏だった。

兼題は「立冬」と「雑炊」、投句は5句、選句7句で句会を行った結果、最高点は5点で1句、次いで4点が1句。3点7句、2点15句、1点22句だった。兼題別の3点以上獲得句は次の通り。

「立冬」

立冬の午後は日当たるすべり台     今泉恂之介

大手町つんとすまして冬に入る     大澤 水牛

鳥の声少し早口冬に入る        澤井 二堂

立冬の野に双面の道祖神        藤野十三妹

「雑炊」

好き嫌ひ言はず老い来て味噌雑炊    山口 詩朗

雑炊やメリーは気っ風よき姐御     大澤 水牛

「雑詠」

田仕舞の煙の匂ふ駅舎かな       吉野 光久

穏やかな暮しいつまで障子貼る     金指 正風

冬隣り老妓の唄ふ出雲節        藤野十三妹

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東博庭園茶会吟行を開催

11月7日(日)、上野・東京国立博物館庭園で開催された茶会と書の鑑賞会に参加しがてら合同吟行会を行った。当初は番町句会と喜楽会の催事として計画されたが、珍しい機会なので酔吟会、水木会、銀鴎会メンバーにも声をかけたところ、25名参加という大盛況になった。

書家赤池溪舟さん主宰の「くばの会」メンバーが、東博庭園内の茶室応挙館に則天武后の手になる石碑の巨大拓本を飾り、それをもとに会員が書いた作品を展示、それらを鑑賞しながら今泉恂之介氏の講話「則天武后について」を聞き、九条館と転合庵での茶会に臨席、庭園を散策して作句に励んだ。東博庭園には益田鈍翁ゆかりの応挙館をはじめ九条館、小堀遠州の転合庵、原三溪の持ち物であった春草蘆など由緒ある茶室が移築されている。一行はまず九条館で、和服姿も板についたチェコ女性が亭主をつとめる薄茶席に臨んだ。青目玉の美女に「茶の心」を説かれ、掛軸、茶碗、茶杓などお道具類の講釈をされて、皆々目を白黒させるという面白い体験をした。

小春日和の庭園では楓がほんの少々色づきはじめ、常緑の椎の木の陰には真っ赤に紅葉した櫨がのぞく。枯蓮の池には早くもコガモが十数羽到来、縄張り争いか、はたまた伴侶確定の争いか、しきりに騒いでいた。

句会は翌々日までに幹事に各自3句送り、幹事が配信する選句表をもとに5句選句してメール送信する日経俳句会独特の「メール句会」とした。選句集計の結果、最高点は10点で喜楽会の笹本塘外さんが「冬の虫ふと立ち止まる畳かな」で見事金的を射止めた。この句は九条館の薄茶席の寄付きで順を待っている時、座敷の真ん中に不意に現れ出でた虻に目を留めたもの。次席は7点で加沼鬼一さんの「銀杏を踏まじと歩む草履かな」という庭園散策の嘱目。三席は5点で5句が並び、以下、4点4句、3点6句、2点13句、1点20句と続いた。総じて今回吟行は句歴の浅い番町、喜楽両会面々の健闘が光った。3点以上獲得の句は以下の通り。

冬の虫ふと立ち止まる畳かな    笹本 塘外(喜楽会)

銀杏を踏まじと歩む草履かな    加沼 鬼一(番町句会)

山茶花の散りて五畳の庵かな    今泉 而雲(五句会)

陽も陰も風も覚えず浮寝鳥     谷川  透(喜楽会)

蹲の水の底なる秋の果       玉田春陽子(喜楽会)

点茶する背筋正しく冬に入る    徳永 正裕(水木会・酔吟会)

冬立つや異人の亭主茶を説けり   広上 正市(水木会・銀鴎会)

冬に入る水屋に低き声のあり    須藤 光迷(銀鴎会・番町句会)

炉開きや足袋の音さへ華やぎぬ   谷川  透(喜楽会)

茶道説くチェコの女居て今朝の冬  堤 てる夫(水木会・酔吟会)

落葉籠数寄の一部となりにけり   三好 六甫(番町句会)

よくもまあこんな小池に鴨来たる  大澤 水牛(五句会)

少しづつ自己主張してはぜ紅葉   高井 百子(番町句会)

枯蓮や時の流れに身をゆだね    高橋 楓子(番町句会)

拓本に歴史ひもとく冬日和     高橋 楓子(番町句会)

小春日や則天文字のゆるびをり   星川 佳子(水木会・酔吟会)

鈍翁の座敷にひらく狂ひ花     三好 六甫(番町句会)

(参加者)井上啓一、加沼鬼一、高井百子、高橋楓子、前島厳 水、三好六甫、和田紗羅(以上番町句会)、岩澤克惠、笹本塘外、 玉田春陽子、谷川透(以上喜楽会)、植村博明、大下 綾子、堤てる夫、徳永正裕、広上正市、星川佳子(以上水木会)、鈴木好夫、須藤光迷、高瀬大虫(以上銀鴎会)、大石柏 人、野田冷峰(以上酔吟会)、鈴木玲子(特別参加)、今泉而雲、 大澤水牛(以上幹事)の25名。

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第4回逆回り奥の細道・出羽路吟行

日経俳句会恒例のビッグイベント「逆回り奥の細道吟行」も4回目となり、晩秋の陽射しを浴びながら奥の細道最北端出羽路を巡る旅を挙行した。

公式行事は10月23(土)、24(日)一泊二日で秋田県にかほ市象潟から山形県酒田市、鶴岡市(宿泊)、羽黒山を回り、鶴岡市内の芭蕉旧跡を見るコースだったが、前日22日午後象潟入りした「前泊組」、22日夜上野発の寝台特急で23日早暁現地入りの「寝台列車組」、23日朝飛行機で庄内空港に飛び酒田経由で象潟入りした「飛行機組」の3班に分かれるユニークな方式を試みた。各種交通機関のダイヤ調べ、参加者との連絡・調整などで堤てる夫統括幹事の苦労は大変なものだったが、長距離吟行だけに、各人が時間的制約を勘案してコースが選べるこの方式は大成功だった。

「前泊組」(井上庄一郎、大澤水牛、加藤明男の3名。山口詩朗も前泊だったが、別行動で翌朝合流)は22日午後に象潟着、日本海に沈む夕陽風景を堪能、翌早朝にはホテルの露天風呂から日本海に没する満月に眺め入った。

「寝台列車組」(田中頼子、堤てる夫、徳永正裕、野田冷峰、星川佳子)は23日早暁、遊佐駅で普通電車を待つ間に日本海に沈む月を眺めた。小砂川駅で前泊組と合流し、近くの三崎峠を目指し、まだ薄暗い小砂川集落を歩く。突然視界が開けるとそこは岬の突端三崎山公園。朝日に輝く日本海と背後に聳える鳥海山。絶景を心ゆくまで眺め、旧道をくぐり抜ける。これは芭蕉と曾良が歩いた三崎山旧街道で、羽州浜街道最大の難所と言われただけあって鬱蒼と茂る森林の中をごろた石の細道がうねり、歩くには大変だったがなかなかの風情を味わえた。公園入口からバスで象潟駅へ行き、午前10時半、飛行機組(今泉恂之介、澤井二堂、鈴木好夫、鈴木玲子、須藤光迷、高瀬大虫、広上正市、吉野光久)と落ち合った。

これで17名勢揃い。いよいよ正式な吟行を開始。駅前でマイクロバスをチャーターし、「芭蕉が歩いた散歩道」を巡る。稲刈り後の田んぼの中にぽつんぽつんと浮かぶ九十九島を眺め、蚶満寺などを回り、道の駅ねむの丘で西施像越しに日本海を眺め入った。

象潟駅から羽越線ローカル電車で30分ほど、酒田駅に到着。まずは日和山公園に行く。「暑き日を海に入たりもがミ川」「温海山や吹うらかけてゆふ涼み」などの句碑を眺め、旅姿の芭蕉像を仰ぎ、高台から酒田港を見下ろす。公園の入口には大ヒット映画「おくりびと」の葬儀社として使われた古びた洋館が早くも観光名所になっていた。その向かいの海向寺で二体の即身仏を拝観。一体は宝暦5年(1755年)入寂の忠海上人、もう一つは文政5年(1822年)入寂の円明海上人。いずれも生きながら穴の中に籠もって経を唱えながら成仏したという。「生き仏」の顔は飴色にてらてら光り白い歯をのぞかせていた。

この後は三々五々、芭蕉が滞在した不玉(医師伊藤玄順)宅跡、酒田三十六人衆の筆頭鐙屋、「本間様には及びもないがせめてなりたや殿様に」の日本一の大地主本間家本邸、北前船に積み込む庄内米や海産物を格納した山居倉庫などを回った。夕方、酒田駅からまた電車に乗って鶴岡に行き、駅前の東京第一ホテル鶴岡へ。

24日(日)もよく晴れた。ホテル裏から午前7時50分発の羽黒山頂上行きで小一時間田園地帯と樹林を上る。山伏の法螺貝が朗々と響き、ひんやりとした空気の中を出羽三山神社に参拝、2400段の段々坂を下る。途中、芭蕉が宿った南谷別院跡を散策、平将門建立という国宝五重塔や樹齢千年の爺杉、須賀の滝を巡って随神門へ。通常の参拝客はここから延々と石段を登るのだが、我々は逆コースで下りだけ。手抜きもいいところだが、これぞ「逆回り奥の細道」と、皆涼しい顔。

バスで元来た道を戻り、鶴岡公園近くで下車、まずは藤沢周平記念館に行く。鶴岡城内の庄内神社に向かい合い、今年四月に開館したばかり。藤澤周平の足跡、復元した書斎、作品の舞台紹介などがきめ細かく展示されている。日経俳句会にも藤澤フアンが多く、皆々熱心に展示物を見つめた。ここで流れ解散、後は三、四人ずつばらばらになって目指す所に行く。藩校致道館も良かったが、致道博物館がとても見応えがあった。三の丸跡にあった藩主酒井氏の隠居屋敷を中心に明治の洋風建築「旧西田川郡役所」「旧鶴岡警察署」や藁葺きの二階立て民家が移築され、それぞれ中には武家の調度品、明治時代の写真をはじめ家具、農具、漁具などがびっしり展示されていた。古民家の脇や隣接の酒井氏庭園に名残の萩がこぼれるように咲いていたのが印象的だった。

夕闇迫る中を、芭蕉が酒田へ行くために船に乗り込んだ内川乗船場、芭蕉の弟子で庄内藩士の長山重行邸跡などを回り、有志数人、鶴岡駅そばの「庄内酒場三鷹」でだだちゃ豆などつまみながら、出羽路吟行の恙なき完了を祝した。

帰京後、堤幹事が取りまとめ役となり「吟行メール句会」(投句選句とも5句)を行った。人気を集めた句は以下の通り。

満月を呑みて無言の日本海     大澤 水牛

鳥海は視野にあふれて秋の空    今泉恂之介

茶店守る親子三代菊膾       加藤 明男

船絵馬にしのぶ栄華や薄紅葉    須藤 光迷

礎に野菊色添ふ南谷        高瀬 大虫

秋深み即身仏の歯の光り      大澤 水牛

冬近し鎖一頭銹びてをり      田中 頼子

鐙屋の土間も竈も吊るし柿     広上 正市

峠道手を差し伸べる薄かな     星川 佳子

門前の婆ちゃ手向けの秋茄子    吉野 光久

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喜楽会第16回例会

喜楽会の10月例会(通算16回)が10月21日(木)午後7時過ぎから千代田区二番町の番町ハイム・双牛舎で開かれた。この夜の出席者は今泉而雲、大澤水牛、笹本塘外(研一改名)、須藤光迷、谷川透、玉田春陽子の6名、岩澤克恵が投句参加した。

兼題は番町句会と共通の「水澄む」に「菊」。投句5句、選句6句で句会を行った結果、最高点は3点で「菊の香の彼の世へ通ひゆくごとく 而雲」「静さや蓮の実すべて飛び尽くし 水牛」の2句。続く2点がなんと11句もひしめき合い、1点の8句よりも多いというめずらしい結果になった。

「水澄む」

水澄むや鈴の音放つ竿の先      玉田春陽子

おのが身を映すと水の澄みにけり   玉田春陽子

水澄めり蛇籠をつつく居着鴨     大澤 水牛

水澄むや逝く人の生うつくしく    岩澤 克惠

水澄みて白雲ゆらす鯉のむれ     谷川  透

「菊」

菊の香の彼の世へ通ひゆくごとく   今泉 而雲

雨雲に明るき菊のあたりかな     大澤 水牛

菊ほめて偏屈の口ほぐしけり     大澤 水牛

交番の歩哨に立ちし対の菊      玉田春陽子

天晴れて墓それぞれの黄菊哉     笹本 塘外

父の忌を過ぎし墓前や菊日和     岩澤 克惠

「雑詠」

静さや蓮の実すべて飛び尽くし    大澤 水牛

竹林のふとあたたかや朝の秋     笹本 塘外

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水木会第93回例会

水木会の第93回例会が10月20日(水)午後6時半、東京・大手町の日経本社ビル会議室で行われた。このところ朝晩めっきり涼しい、と言うより肌寒く感じられるようになり、風邪を引く人がちらほら出て来た。

この日の出席者は18人、投句参加が9人。兼題は「後の月」と「蟋蟀(こおろぎ)」。投句は3句以上5句以内、選句7句で句会を行った。全投句131句の中の最高点は9点で「歌舞伎座の跡形も無く後の月 定利」。8点句、7点句が無く、6点が「こほろぎも土間の匂ひも祖父の家 恂之介」「コオロギや地デジ地デジと言うなかれ 智宥」「ちちろ虫鳴きて新居の定まれり 啓子」の3句、5点が「鎌倉や五山それぞれ十三夜 てる夫」「虫の音に全山息を合はせたり 万歩」「蟋蟀や三本立ての映画館 定利」の3句だった。以下、4点5句、3点4句、2点15句、1点29句と続いた。3点以上獲得した句は次の通り。

「後の月」

歌舞伎座の跡形も無く後の月     橫井 定利

鎌倉や五山それぞれ十三夜      堤 てる夫

虫の音に全山息を合はせたり     大熊 万歩

銭湯の富士見て帰る良夜かな     大下 綾子

語らふも独り居もよし後の月     吉野 光久

昭和史に栞挟みて後の月       嵐田 啓明

母と臥す畳の匂ひ後の月       橫井 定利

「蟋蟀」

こほろぎも土間の匂ひも祖父の家   今泉恂之介

コオロギや地デジ地デジと言うなかれ 杉山 智宥

ちちろ虫鳴きて新居の定まれり    小林 啓子

蟋蟀や三本立ての映画館       橫井 定利

ひとしきり蟋蟀かまふ猫の昼     今村 聖子

蟋蟀や遠く過ぎ去る救急車      嵐田 啓明

こほろぎやついては消ゆる街路灯   大澤 水牛

蟋蟀も遠慮がちなり通夜の闇     加藤 明男

「雑詠」

ひと電車待つ間のつるべ落としかな  山口 詩朗

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